JP4158224B2 - 振動溶着用樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、成形性品表面外観、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れた溶着用樹脂組成物に関し、更には溶融成形後の2つ以上の成形品を振動溶着して得られる中空成形体などに適したナイロン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン樹脂は、その優れた射出成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐摩耗性などを利して、自動車、機械部品の分野で射出成形品として広範に利用されている。上記分野でのナイロン樹脂の開発経緯は基本的には金属材料からの代替が主体であり、軽量化、防錆化などの利点の多い部品から実用化が進んできた。更に最近はナイロン樹脂材料の高性能化および成形加工技術の進展に伴って、大型且つ複雑形状で、従来技術では樹脂化が困難とされてきた部品へのナイロン樹脂の適用が検討されるようになっている。このような難度の高い部品を樹脂化するためには射出成形や押し出し成形、ブロー成形などの単独成形技術だけでは不十分で、切削、接着、溶着などの後加工技術をを組み合わせることが必要となる。しかし、従来のナイロン樹脂材料の設計はかかる後加工への適用性まで考慮したものとは言えず、たとえば2つ以上のパーツからなるガラス繊維強化ナイロン樹脂成形品を振動溶着法などによって溶着して用いる場合には特に部品が大型の場合、溶着部分の強度が不十分であるために使用が制限されるのが現状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来のナイロン樹脂における問題点であった振動溶着性の改良を課題とし、更に成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐摩耗性、成形品表面平滑性などナイロン樹脂本来の特性にも均衡して優れた振動溶着に適したナイロン樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく検討した結果、ガラス繊維強化ナイロン樹脂においてシリコーン系化合物を含み、必要に応じて、銅化合物および含有されるガラス繊維の長さ分布を特定の範囲に制御することにより目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0005】
即ち本発明は、
(1)「(A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(B)シリコーン系化合物0.1〜50重量部、及び(C)平均繊維径5〜15μmのガラス繊維10〜150重量部からなる振動溶着用樹脂組成物。」
(2)「(B)シリコーン系化合物が、オイル状シリコーン系化合物である前記(1)記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(3)「(B)シリコーン系化合物の添加量が0.1〜30重量部である前記(1)〜(2)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。」
【0006】
(4)「さらに(D)銅化合物を、生成する樹脂組成物成形品を振動溶着法で溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率を向上せしめるに足る量で含む前記(1)〜(3)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(5)「(D)銅化合物の添加量が、(A)ナイロン樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部である前記(4)に記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(6)「銅化合物が1価の銅化合物である前記(4)、(5)いずれかに記載の溶着用樹脂組成物。」
(7)「1価の銅化合物がハロゲン化第1銅である前記(6)記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(8)「樹脂組成物中のガラス繊維の重量平均繊維長が100〜400μmの範囲にあってかつ繊維長が60μm以下のガラス繊維の割合が全ガラス繊維の10〜50重量%を占める前記(1)〜(7)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。」
【0007】
(9)「ナイロン樹脂が融点200℃以上の脂肪族ナイロン樹脂の中から選ばれた少なくとも1種である前記(1)〜(8)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(10)「ナイロン樹脂がナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種である前記(9)記載の振動溶着用樹脂組成物。」
(11)「共重合ナイロンがナイロン6成分とナイロン66成分からなる共重合体である前記(10)記載の振動溶着用樹脂組成物。」
【0008】
(12)「共重合ナイロンがナイロン6成分98〜80重量%およびナイロン66成分2〜20重量%からなる共重合体またはナイロン66成分98〜80重量%およびナイロン6成分2〜20重量%からなる共重合体である前記(11)記載の振動溶着用樹脂組成物。」
【0009】
(13)「(A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(B)潤滑剤0.1〜50重量部、(C)平均繊維径5〜15μmのガラス繊維10〜150重量部、(D)銅化合物0.01重量部以上を溶融混練する、あるいは(B)成分のみを外添することによる振動溶着用樹脂組成物の製造方法。」
(14)「(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の混練を行った段階で組成物中のガラス繊維の繊維長分布が前記(8)に記載の条件を満たす前記(13)記載の振動溶着用樹脂組成物の製造方法。」
(15)「前記(1)〜(12)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる成形品。」
(16)「前記(1)〜(12)いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる成形品を振動溶着してなる成形体。」
提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0011】
本発明で用いられる(A)ナイロン樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6ーアミノカプロン酸、11ーアミノウンデカン酸、12ーアミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、εーアミノカプロラクタム、ωーラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2ーメチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4ー/2,4,4ートリメチルヘキサメチレンジアミン、5ーメチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3ービス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4ービス(アミノメチル)シクロヘキサン、1ーアミノー3ーアミノメチルー3,5,5ートリメチルシクロヘキサン、ビス(4ーアミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3ーメチルー4ーアミノシクロヘキシル)メタン、2,2ービス(4ーアミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2ークロロテレフタル酸、2ーメチルテレフタル酸、5ーメチルイソフタル酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0012】
本発明において、とくに有用なナイロン樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2ーメチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0013】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタラミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、振動溶着性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0014】
これらナイロン樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0015】
本発明において用いられる(B)シリコーン系化合物とは、ナイロン樹脂に配合することで潤滑性を示すものである。
【0016】
本発明で用いられるシリコーン系化合物とは、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物である。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらの併用などが知られているが、これら公知のシリコーン系化合物を特に制限なく使用できる。また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されたシリコーンも使用可能である。シリコーンはその架橋の程度などからシリコーンオイル、シリコーンエラストマ、シリコーンレジンに分類される。それらシリコーン系化合物に関しては、「シリコーン材料ハンドブック」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)発行・編集、1993年8月発行)の記載を参照すればよい。
【0017】
本発明のシリコーン系化合物としてはそのいずれも使用可能であるが、化合物の具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルなどのオイル状シリコーン類が溶着強度向上のためには好ましい。また、シリコーンオイルの無機微粉末坦持物、微粉末化されたシリコーンエラストマ、シリコーンレジン(例えば東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、“トレフィル”F,E、Rシリーズ)や超高分子量のシリコーンポリマーを高濃度で分散させたペレット(例えば東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、シリコーンコンセントレート“BY27”シリーズ)は、分散性もよくまた作業性にも優れており溶着強度向上にも有効である。
【0019】
かかる(B)シリコーン系化合物 ( 以下、潤滑剤という場合がある。の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)潤滑剤0.1〜50重量部の範囲が選択され、特に0.1〜30重量部の範囲が好ましい。潤滑剤量が0.1重量部未満では、得られる樹脂組成物の振動溶着性が不十分であり、また50重量部を越えると溶融成形時の揮散や耐熱性の低下などの悪影響が顕在化するため好ましくない。
【0020】
本発明においては(C)成分として用いられるガラス繊維はナイロン樹脂との溶融混練後の状態、特に1回の溶融混練を受けた状態で重量平均繊維長100〜400μm、且つ繊維長60μm以下のガラス繊維の割合が全ガラス繊維中10〜50重量%の範囲に制御されていることが好ましい。なぜならば繊維長60μm以下のガラス繊維が特定量存在することによりナイロン樹脂組成物の成形品を振動溶着させた場合に高い溶着強度が得られるからである。この理由は必ずしも明確ではないが、摩擦熱で溶融したマトリクス樹脂層中のガラス繊維の振動による配向挙動に影響を与えることが一因と考えられる。
【0021】
ガラス繊維の好ましい重量平均繊維長および60μm以下のガラス繊維の割合は各々120〜300μmおよび15〜40重量%の範囲である。ガラス繊維の重量平均繊維長が上記の範囲より短いと樹脂組成物の強度が低下するので好ましくなく、一方上記範囲より長いと成形品外観、振動溶着性が低下するので好ましくない。また、60μm以下のガラス繊維の割合が上記範囲より少ないと振動溶着性の低下を招くので好ましくなく、逆に上記範囲より多いと機械強度への悪影響が出るので好ましくない。
【0022】
かかる繊維長分布を有するガラス繊維強化ナイロン樹脂組成物を1回の溶融混練工程で得ることが生産効率上好ましく、それを実現するための効率的な方法の一例としてストランド長1mm以上のガラス繊維と繊維長20〜500μmのガラス繊維を適正な割合の混合物として原料に使用する方法を挙げることができる。また、ストランド長の異なるガラス繊維を2種以上併用する際には、用いるガラス繊維の平均径が2μm以上異なる種類のものを使用することも好ましい方法である。
【0023】
本発明の樹脂組成物中の全ガラス繊維含有量はナイロン樹脂100重量部に対して10〜150重量部の範囲であり、20〜80重量部の範囲が更に好ましい。
【0024】
本発明で用いられる(D)成分の銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2ーメルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどとの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。
【0025】
銅化合物の添加量は生成する樹脂組成物の成形品を振動溶着法で溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率を向上せしめるに足る量であるが、これには通常ナイロン樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が求められ、さらに0.015〜2重量部の範囲であることが好ましい。銅化合物の添加量が0.01重量部に満たないと溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率が不足となる傾向があり、逆に3重量部を越える量の添加では溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。
【0026】
本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0027】
本発明においては上記の特定のガラス繊維以外にも繊維状/非繊維状無機強化材を添加することも可能であり、それら強化剤の具体例としては、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状/非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0028】
さらに、本発明のナイロン樹脂組成物には、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、着色剤、などの添加剤を添加することができる。
【0029】
本発明のナイロン樹脂組成物の調製方法は特定の方法に限定されないが、具体的且つ効率的な例として原料のナイロン樹脂およびガラス繊維の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して用いるナイロン樹脂の融点に応じて220〜330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0030】
この溶融混練において、好ましいガラス繊維長分布を実現するためには、たとえば2軸押し出し機で溶融混練する場合にガラス繊維の一部を樹脂原料フィーダーからナイロン樹脂と共に供給し、残りのガラス繊維を押し出し機の先端部分のサイドフィーダーから供給してガラス繊維の受けるせん断履歴を制御する方法や原料として用いるガラス繊維を異なる繊維長のものとする方法などが挙げられる。
【0031】
本発明において銅化合物の添加は上記溶融混練過程のいずれでなされても良い。また潤滑剤の添加は、上記溶融過程で行われても、その他の成分を押し出し機中で溶融混連した後にタンブラー等を用いて外添しても良い。
【0032】
このようにして得られた本発明のナイロン樹脂組成物は、耐熱性、成形製品表面外観、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れたものであり、射出成形や押し出し成形、ブロー成形で得られた成形品を振動溶着法などによって溶着して用いる場合に特に有用であり、この利点を生かしてたとえば自動車のインテークマニホールドなどの吸気系部品、ウォーターインレット、ウォーターアウトレットなどの冷却系部品、フューエルインジェクション、フューエルデリバリーパイプなどの燃料系部品、オイルタンクなどの容器類といった中空形状部品用などに好適に用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、実施例及び比較例中に示された配合割合は全て重量部である。
【0034】
また、以下の実施例において材料強度、流動性、振動溶着強度の評価は、次の方法により行った。
[繊維長分布] 樹脂組成物約1gを電気炉中で燃焼させて樹脂成分を除去し、得られたガラス繊維を顕微鏡写真で撮影し、各々のガラス単繊維の長さを測定することによって求めた。
【0035】
[材料強度] 以下の標準方法に従って測定した。
引張強度 :ASTM D638
曲げ弾性率 :ASTM D790
[流動性] 幅10mm、厚さ2mm、全長600mmの渦巻き形状を有するスパイラルフロー測定金型を用い、射出成形温度250℃(ナイロン66系は280℃)、射出成形圧力30kgf/cm2 、金型温度80℃の条件下で材料を射出成形した際に金型内を流れた距離を測定して流動性の指標とした。流動長が長いほど流動性が良好であることを示す。
【0036】
[振動溶着強度測定]
溶着強度評価に用いた試験片の形状は図1、図2に示すとおりである。また、図1に示す試験片の溶着面には、幅1.5mm、高さ2.5mmのリブを設けてあり、溶着の際には摩擦によりリブが溶融して接合される。図1、図2に示す形状の試験片を成形し、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて以下の条件で溶着した。
振動数 : 240Hz
加圧力 : 70kgf
振幅 : 1.5mm
溶着代 : 1.5mm
溶着によって得られた中空成形品の形状を図3に示す。得られた中空成形品中に水を充填し、水槽中にて中空成形品に内圧をかけ、破裂時の圧力を溶着強度とした。
また、溶着した試験片を加熱オーブン中で150℃/10時間処理した後の溶着強度を測定し、その強度保持率を算出した。
【0037】
[実施例1〜7、比較例1〜2]
ナイロン樹脂、潤滑剤、ガラス繊維および銅化合物を表1に示すように混合し、日本製鋼所製TEX30型2軸押し出し機を用いてシリンダー温度250〜280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(金型温度80℃)により各種試験片を調製した。各サンプルの流動性、材料強度、溶着強度などを測定した結果は表1に示すとおりであった。なおここで表中のナイロン樹脂の種類は、N6は相対粘度2.70のナイロン6、N6/66は融点217℃相対粘度2.65のナイロン6/66共重合体、N66は相対粘度2.90のナイロン66を表す。
【0038】
また、(c−1)はジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SH200)、(c−2)はアミノ変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SF8417)、(c−3)は超高分子量のシリコーンポリマーの高濃度含有物(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、シリコーンコンセントレートBY27−105)、(c−4)は微粉末化されたシリコーンエラストマ、シリコーンレジン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、“トレフィル”E602)を表す。
耐熱材の種類は、CuIはヨウ化第1銅、KIはヨウ化カリウムを表す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜7および比較例1〜2より本発明の組成物は、流動性、材料強度のバランスに優れ、溶着強度も高く、特にアニーリング後の溶着部強度が優れた実用価値の高いものである。
また、実施例4、5よりガラス繊維をストランド長1.5mmのものと0.2mmのものを併用した本発明の組成物は、流動性、溶着強度に優れ、特に溶着部強度が優れた実用価値の高いものである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のナイロン樹脂組成物は、耐熱性、流動性、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れたものであり、射出成形や押し出し成形、ブロー成形で得られた成形品を振動溶着法などによって溶着して用いる場合に特に有用であり、この利点を生かしてたとえば自動車のインテークマニホールドなどの吸気系部品、ウォーターインレット、ウォーターアウトレットなどの冷却系部品、フューエルインジェクション、フューエルデリバリーパイプなどの燃料系部品、オイルタンクなどの容器類といった中空形状部品用などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で使用した溶着強度測定用試験片の形状を示す平面図である。
【図2】 実施例で使用した溶着強度測定用試験片の形状を示す平面図である。
【図3】 試験片を溶着することにより得られた中空成形品の形状を示す平面図である。
Claims (16)
- (A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(B)シリコーン系化合物0.1〜50重量部、及び(C)平均繊維径5〜15μmのガラス繊維10〜150重量部からなることを特徴とする振動溶着用樹脂組成物。
- (B)シリコーン系化合物が、オイル状シリコーン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (B)シリコーン系化合物の添加量が0.1〜30重量部であることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- さらに、(D)銅化合物を、生成する樹脂組成物の成形品を振動溶着法で溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率を向上せしめるに足る量で含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (D)銅化合物の添加量が、(A)ナイロン樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部であることを特徴とする請求項4記載の振動溶着用樹脂組成物。
- 銅化合物が1価の銅化合物であることを特徴とする請求項4、5いずれかに記載の溶着用樹脂組成物。
- 1価の銅化合物がハロゲン化第1銅であることを特徴とする請求項6記載の振動溶着用樹脂組成物。
- 樹脂組成物中のガラス繊維の重量平均繊維長が100〜400μmの範囲にあってかつ繊維長が60μm以下のガラス繊維の割合が全ガラス繊維の10〜50重量%を占めることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- ナイロン樹脂が融点200℃以上の脂肪族ナイロン樹脂の中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- ナイロン樹脂がナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項9記載の振動溶着用樹脂組成物。
- 共重合ナイロンがナイロン6成分とナイロン66成分からなる共重合体であることを特徴とする請求項10記載の振動溶着用樹脂組成物。
- 共重合ナイロンがナイロン6成分98〜80重量%およびナイロン66成分2〜20重量%からなる共重合体またはナイロン66成分98〜80重量%およびナイロン6成分2〜20重量%からなる共重合体であることを特徴とする請求項11記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(B)シリコーン系化合物0.1〜50重量部、(C)平均繊維径5〜15μmのガラス繊維10〜150重量部、及び(D)銅化合物0.01重量部以上を溶融混練する、あるいは(B)成分のみを外添し他成分は溶融混練することにより振動溶着用樹脂組成物を製造することを特徴とする振動溶着用樹脂組成物の製造方法。
- (A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の混練を行った段階での組成物中のガラス繊維の繊維長分布が請求項8記載の条件を満たすことを特徴とする請求項13記載の振動溶着用樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜12いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1〜12いずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる成形品を振動溶着してなる成形体。
Priority Applications (1)
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