JP4253946B2 - 振動溶着用樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、成形品表面外観、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れた溶着用樹脂組成物に関し、更には2つ以上の溶融成形品を振動溶着して得られる中空成形体などに適したナイロン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン樹脂は、その優れた成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐摩耗性などを利用して、自動車、機械部品の分野で広範に利用されている。この分野でのナイロン樹脂の開発経緯は基本的には金属材料からの代替が主体であり、軽量化、防錆化などの利点の多い部品から実用化が進んできた。更に最近はナイロン樹脂材料の高性能化および成形加工技術の進展に伴って、大型且つ複雑形状で従来技術では樹脂化が困難とされてきた部品へのナイロン樹脂の適用が検討されるようになっている。
【0003】
このような難度の高い部品を樹脂化するためには射出成形や押し出し成形、ブロー成形などの単独成形技術だけでは不十分であり、切削、接着、溶着などの後加工技術を組み合わせることが必要となる。しかし、従来のナイロン樹脂材料の設計はかかる後加工への適用性まで考慮したものとは言えず、たとえば2つ以上のパーツからなるガラス繊維強化ナイロン樹脂成形品を振動溶着法や射出溶着法などによって溶着して用いる場合、特に部品が大型の場合には溶着部分の強度が不十分であるために使用が制限されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来のナイロン樹脂における問題点であった振動溶着性の改良を課題とする。特に振動溶着時の溶着条件が変化しても安定的に高い溶着部強度を発現し、製造安定性の向上を具現せしめる改良が課題である。更に成形性、耐熱性、強靱性、耐オイル・ガソリン性、耐摩耗性、成形品表面平滑性などナイロン樹脂本来の特性に優れ、かつ振動溶着に適したナイロン樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく検討した結果、ガラス繊維強化ナイロン樹脂において特定の構造を有するポリアルキレングリコールのビス不飽和脂肪酸エステルを添加することにより目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0006】
即ち本発明は、
(1) (A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(B)下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステル0.1〜30重量部、及び(C)ガラス繊維10〜150重量部を配合してなる振動溶着用樹脂組成物、
【化2】
(ここで、n、mは0又は1以上の自然数でかつn+m=5〜100である。)
(2) (B)成分の、ポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステルの添加量が0.1〜10重量部である前記(1)記載の振動溶着用樹脂組成、
【0007】
(3) (A)成分のナイロン樹脂がナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種である前記(1)または(2)記載の振動溶着用樹脂組成物、
(4) (A)成分のナイロン樹脂が(a)ナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種のナイロン樹脂99〜50重量%および(b)前記(a)以外の高級ナイロンおよび半芳香族ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種のナイロン樹脂1〜50重量%を含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物、
(5) (A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(D)変性エチレン/α−オレフィン系共重合体0.1〜50重量部をさらに配合してなる前記(1)〜(4)のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物、
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる樹脂成形品、
(7) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる樹脂成形品を振動溶着してなる樹脂成形体、
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0009】
本発明で用いられる(A)ナイロン樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0010】
本発明において、とくに有用なナイロン樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0011】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン610、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタラミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、溶着性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0012】
また、混合物として用いる場合、(a)ナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれる少なくとも1種のナイロン樹脂99〜50重量%、好ましくは98.5〜70重量%、及び、(b)前記(a)以外のナイロン樹脂、例えば、ナイロン610、ナイロン612などの高級ナイロンおよびナイロン6T/6、ナイロン6T/12、ナイロン6T/66、ナイロン66/6I、ナイロン66/6T/6I、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/M5Tなどの半芳香族ナイロンの中から選ばれる少なくとも1種のナイロン樹脂1〜50重量%、好ましくは1.5〜30重量%からなるような形で用いることが溶着性の点で好ましい。
これらナイロン樹脂の重合度はとくに制限ないが、通常は1%の98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0013】
本発明においてポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステルとして使用される化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
上記式中、n、mは0又は1以上の自然数でかつn+m=5〜100である。n+mは好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜30である。
とりわけ好ましいものとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはエチレングリコール/プロピレングリコール共重合体のビスオレイン酸エステルを挙げることができ実用上好適である。
【0014】
かかる(B)ポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステルの配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステル0.1〜30重量部の範囲が選択され、特に0.1〜20重量部の範囲が好ましい。添加量が0.1重量部未満では、得られる樹脂組成物の振動溶着性が不十分であり、また30重量部を越えると溶融成形時の揮散や耐熱性の低下などの悪影響が顕在化するため好ましくない。
【0015】
本発明の(C)成分として用いられるガラス繊維は、一般の樹脂強化用に用いるものなら特に制限はなく、例えば長繊維タイプや単繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバ−などから選択して用いることができる。繊維径についても制限はないが5〜15μmの範囲のものが好適に用いられる。これらのガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などや熱硬化性樹脂で被覆あるいは収束されていてもよく、シラン系、チタネ−ト系カップリング剤、その他の表面処理剤で処理されているものが特に好適に用いられる。本発明の樹脂組成物中の全ガラス繊維含有量はナイロン樹脂100重量部に対して10〜150重量部の範囲であり、20〜80重量部の範囲が更に好ましい。
【0016】
本発明の(D)成分として用いられる変性エチレン/α−オレフィン系共重合体は、不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物で変性されたエチレン/α−オレフィン共重合体であり、このように変性したエチレン/α−オレフィン共重合体を用いると、少量の添加量でも振動溶着強度の向上に極めて優れるという特徴を示し、好ましい態様の一つである。
【0017】
ここでいうエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数6〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。
【0018】
更に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
【0019】
また、本発明において、(D)変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の変性剤として使用される不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる化合物の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などである。これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸または無水マレイン酸が好適である。
【0020】
これらの官能基含有成分をエチレン/α−オレフィン系共重合体に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるチレン/α−オレフィン系共重合体と官能基含有オレフィン化合物を共重合せしめたり、未変性エチレン/α−オレフィンに官能基含有オレフィン化合物をラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性エチレン/α−オレフィン系共重合体中のオレフィンモノマ全体に対して好ましくは0.001〜40モル%、より好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であることが適当である。
【0021】
本発明で用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体の製造方法については特に制限はなく、ラジカル重合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合、アニオン重合、メタロセン触媒を用いた配位重合などいずれの方法でも用いることができる。
【0022】
かかる(D)変性エチレン/α−オレフィン系共重合体の配合量は、(A)ナイロン樹脂100重量部に対し、(D)変性エチレン/α−オレフィン系共重合体0.1〜50重量部の範囲が選択され、好ましくは0.1〜30重量部、特に好ましくは0.5〜30重量部である。変性エチレン/α−オレフィン系共重合体量が0.1重量部未満では、得られる樹脂組成物の振動溶着性が不十分であり、また50重量部を越えると溶融成形時の流動性の低下や耐熱性、機械強度の低下などの悪影響が顕在化するので所期の目的達成が困難である。
【0023】
本発明では必要に応じ銅化合物を添加することが可能であり、それら銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどとの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。
【0024】
銅化合物の添加量は生成する樹脂組成物の成形品を振動溶着法で溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率を向上せしめるに足る量であるが、これには通常ナイロン樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が求められ、好ましくは0.015〜2重量部、特に好ましくは0.02〜2重量部の範囲である。銅化合物の添加量が0.01重量部に満たないと溶着した後アニーリングした際の溶着部強度保持率が不足となる傾向があり、逆に3重量部を越えると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。
【0025】
本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムなどを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。これには通常ナイロン樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲であることが好ましく、さらに0.05〜3重量部の範囲であることが特に好ましい。
【0026】
本発明においては上記の特定のガラス繊維以外にも繊維状/非繊維状無機強化材を添加することも可能であり、それら強化剤の具体例としては、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状/非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0027】
さらに、本発明のナイロン樹脂組成物には、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、着色剤、などの添加剤を添加することができる。
【0028】
本発明のナイロン樹脂組成物の調製方法は特定の方法に限定されないが、具体的且つ効率的な例として原料のナイロン樹脂およびガラス繊維の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して用いるナイロン樹脂の融点に応じて220〜330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0029】
このようにして得られた本発明のナイロン樹脂組成物は、耐熱性、成形製品表面外観、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れたものであり、射出成形や押し出し成形、ブロー成形で得られた成形品を振動溶着法などによって溶着して用いる場合に特に有用である。ここでいう振動溶着法とは、2個以上の樹脂成形品の接触面を溶融させ、この溶融面どうしを接着する方法の1つであり、例えば、複数の成形品の接合面どおしを上下に圧接させた状態で横方向に振動を与え、発生する摩擦熱によって溶着させる方法である。
【0030】
特に本発明のナイロン樹脂組成物は、振動溶着時の加圧力の3倍の変化に対して、溶着強度の変化率が15%以内とすることができ、溶着条件が変化しても安定的に高い溶着部強度を発現し、製造安定性を向上させることができる。この点から、振動溶着時の加圧力の3倍の変化に対する溶着強度の変化率は10%以内、好ましくは8%以内、特に好ましくは5%以内である。
【0031】
以上のような利点を生かした本発明のナイロン樹脂組成物は、たとえば自動車のインテークマニホールドなどの吸気系部品、ウォーターインレット、ウォーターアウトレットなどの冷却系部品、フューエルインジェクション、フューエルデリバリーパイプなどの燃料系部品、オイルタンクなどの容器類といった中空形状部品用などに好適に用いることができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、実施例及び比較例中に示された配合割合は全て重量部である。
また、以下の実施例において材料強度、流動性、振動溶着強度の評価は、次の方法により行った。
【0033】
(1)材料強度
以下の標準方法に従って測定した。
引張強度 :ASTM D638
曲げ弾性率 :ASTM D790
(2)流動性
幅10mm、厚さ2mm、全長600mmの渦巻き形状を有するスパイラルフロー測定金型を用い、射出成形温度をナイロン樹脂(配合量の多い種類)の融点+20℃、射出成形圧力30kgf/cm2G、金型温度80℃の条件下で材料を射出成形した際に金型内を流れた距離を測定して流動性の指標とした。流動長が長いほど流動性が良好であることを示す。
【0034】
(3)振動溶着性
溶着強度評価に用いた試験片の形状は図1、図2に示すとおりである。また、図1に示す試験片の溶着面には、幅1.5mm、高さ2.5mmのリブを設けてあり、溶着の際には摩擦によりリブが溶融して接合される。図1、図2に示す形状の試験片を成形し、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて以下の条件で溶着した。
振動数: 240Hz
加圧力: 100kgf(10kg/cm2)、又は300kgf(30kg/cm2)
振幅 : 1.5mm
溶着代: 1.5mm
溶着によって得られた中空成形体の形状を図3に示す。
加圧力100kgfで振動溶着して得られた中空成形体、及び、加圧力300kgfで振動溶着して得られた中空成形体のそれぞれについて、次の方法で溶着強度を測定した。
中空成形体の中に水を充填し、水槽中にて中空成形体に内圧をかけ、破裂時の圧力を溶着強度とする。
得られた溶着強度から、振動溶着時の加圧力の3倍増加時の溶着強度変化率(加圧力依存性の変化率)を下記式により求める。
[加圧力依存性の変化率]=[|加圧力100kgf溶着品の溶着強度−加圧力300kgf溶着品の溶着強度|÷加圧力100kgf溶着品の溶着強度]×100(%)
更に、加圧力100kgfで溶着した試験片を加熱オーブン中で150℃/10時間処理した後の溶着部強度を上記と同様に測定し、その強度保持率を算出した。
【0035】
実施例及び比較例ではナイロン樹脂、ポリアルキレングリコールのビス不飽和脂肪酸エステルおよび変性エチレン/α−オレフィン系共重合体として以下のものを用いた。
<ナイロン樹脂>
(N6):融点225℃、相対粘度2.70のナイロン6樹脂、
(N66):融点265℃、相対粘度2.90のナイロン66樹脂、
(N6/66):融点217℃、相対粘度2.65のナイロン6/66共重合体、
(N610):融点225℃、相対粘度2.70のナイロン610樹脂、
(6T/12):融点300℃、相対粘度2.50のナイロン6T/12共重合体。
<ポリアルキレングリコールのビス不飽和脂肪酸エステル>
ポリエチレングリコール(分子量600)のビスオレイン酸エステル。
<変性エチレン/α−オレフィン系共重合体>
エチレン/1−ブテン共重合体100部、無水マレイン酸1部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.1部を混合し、2軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で溶融押出して得られた変性エチレン/1−ブテン共重合体。
【0036】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
ナイロン樹脂、ポリアルキレングリコールのビス不飽和脂肪酸エステル、ガラス繊維(繊維径13μm)、変性エチレン/α−オレフィン系共重合体および銅化合物を表1〜3に示すように混合し、日本製鋼所製TEX30型2軸押出機を用いてシリンダー温度250〜300℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、射出成形(金型温度80℃)により各種試験片を調製した。各サンプルの流動性、材料強度、溶着強度などを測定した結果は表1〜3に示すとおりであった。
耐熱材として用いた銅化合物のCuIはヨウ化第1銅、KIはヨウ化カリウムをそれぞれ表す。
また、比較例で用いたポリアルキレングリコールの種類は、(b−1)ポリエチレングリコール(分子量600)、(b−2)ポリエチレングリコール(分子量600)のビス安息香酸エステルを表す。
実施例1〜10と比較例1〜4との対比より、本発明の組成物は、流動性と材料強度のバランスに優れ、特に溶着強度が高く、且つ振動溶着時の加圧力の変化に対して安定した高い溶着強度を有し、アニーリング後の溶着部強度も優れた実用価値の高いものであった。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のナイロン樹脂組成物は、耐熱性、流動性、寸法安定性、振動溶着性が均衡して優れたものであり、射出成形や押し出し成形、ブロー成形で得られた成形品を振動溶着法などによって溶着して用いる場合に特に有用であり、この利点を生かしてたとえば自動車のインテークマニホールドなどの吸気系部品、ウォーターインレット、ウォーターアウトレットなどの冷却系部品、フューエルインジェクション、フューエルデリバリーパイプなどの燃料系部品、オイルタンクなどの容器類といった中空形状部品用などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の溶着強度評価で用いた試験片の1つの形状を示す図であって、Aは平面図、Bは正面図、Cは右側面図、Dは底面図である。
【図2】 実施例の溶着強度評価で用いた試験片の他の1つの形状を示す図であって、Aは平面図、Bは正面図、Cは右側面図である。
【図3】 実施例の溶着強度評価で用いた2つの試験片(図1、図2)を溶着することにより得られた中空成形体の形状を示す図であって、Aは平面図、Bは正面図、Cは右側面図である。
【符号の説明】
1:リブ
a:溶着面
Claims (7)
- (B)成分の、ポリアルキレングリコールのビスオレイン酸エステルの添加量が0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (A)成分のナイロン樹脂が、ナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (A)成分のナイロン樹脂が、(a)ナイロン66、ナイロン6およびそれらを主成分とする共重合ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種のナイロン樹脂99〜50重量%および(b)前記(a)以外の高級ナイロンおよび半芳香族ナイロンの中から選ばれた少なくとも1種のナイロン樹脂1〜50重量%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- (A)ナイロン樹脂100重量部に対して、(D)変性エチレン/α−オレフィン系共重合体0.1〜50重量部をさらに配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる樹脂成形品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の振動溶着用樹脂組成物からなる樹脂成形品を振動溶着してなる樹脂成形体。
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