JP4147370B2 - 塗布膜の乾燥方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗布膜の乾燥方法及び装置に係り、特に、光学補償シート等の製造において、長尺状支持体に有機溶剤を含む塗布液を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置において視野角特性を改善するために、一対の偏光板と液晶セルとの間に位相差板として光学補償シートを設けている。長尺状の光学補償シートの製造法は特開平9−73081号公報に開示されており、長尺状の透明フィルムの表面に配向膜形成用樹脂を含む塗布液を塗布してからラビング処理を行なって配向膜を形成し、その配向膜の上に液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液を塗布し、塗布した塗布膜を乾燥する方法が開示されている。
【0003】
特開平9−73081号公報に開示されている液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液の乾燥方法は、該配向膜上に液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液を塗布してから正規の乾燥装置で乾燥するまで室内空調条件下で初期乾燥を行なって主として塗布液中の有機溶剤を蒸発させるようにしている。
【0004】
この方法で製造された光学補償シートには、塗布膜1面上に乾燥過程において、図4に示したようなブロードな斑A(細い線で示す)とシャープな斑B(太い線で示す)の2種類の斑(ムラ)A、Bが発生し、場合によって製品の得率を下げるという問題がある。
【0005】
この2種類の斑A、Bについて解析を行なった結果、ブロードな斑Aは図5に示すように液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液膜2の層の厚みが薄くなっていることが分かった。図5の符号3は長尺状支持体、4は配向膜層である。一方、シャープな斑Bが発生している配向部5(濃色部)の配向方向6は、図6に示すように、他の正常な配向方向7の配向部8と比べてずれていることが分かった。
【0006】
このような初期乾燥で発生する斑(ムラ)A、Bに対して、有効な対策として一般的に行なわれている方法としては、塗布液を高濃度化したり、増粘剤を添加したりすることで塗布液の粘度を増加させ、これにより、塗布直後の塗布膜面の乾燥風による流動を抑制することで斑の発生を防止する方法がある。別の方法としては、高沸点溶媒を用いることにより、塗布直後の塗膜面の乾燥風による流動が発生してもレベリング効果が生じることで斑の発生を防止する方法がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布液の濃度を高濃度化したり、増粘剤を添加したりすることで塗布液の粘度を増加する方法は、高速塗布により超薄層な塗布膜を形成する超薄層精密塗布を行なうことができないという欠点がある。また、塗布液粘度が増加するほど限界塗布速度(安定塗布できる塗布速度の限界)が低下するので、粘度の増加と共に高速塗布が不可能になるので、生産効率が極端に悪化するという欠点がある。
【0008】
一方、高沸点溶媒を用いる方法は、乾燥時間の増大、及び塗布膜中に残留する残留溶剤量の増大をもたらし、それだけ乾燥時間がかかるので生産効率が悪化するという欠点がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、塗布液の粘度等の物性や溶媒の種類を変更することなく塗布膜を均一に乾燥できる乾燥方法及び装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、走行する長尺状支持体に有機溶剤を含む塗布液を塗布して形成した塗布膜の乾燥方法において、前記塗布直後に乾燥ゾーンを設けて、前記走行する長尺状支持体の乾燥される塗布膜面のみを囲むと共に、前記乾燥ゾーンを前記長尺状支持体の走行方向に直交する複数の仕切板で仕切ることにより、乾燥風の流れをコントロールするための複数の分割ゾーンに分割し、前記分割ゾーンごとに前記長尺状支持体幅方向の一方端側から他方端側に流れる一方向流れの乾燥風を発生させたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記目的を達成するために、走行する長尺状支持体に塗布機により有機溶剤を含む塗布液を塗布して形成した塗布膜の乾燥装置において、前記塗布機の直後に設けられ、前記走行する長尺状支持体の乾燥される塗布膜面のみを囲む乾燥ゾーンを形成する乾燥装置本体と、前記乾燥ゾーンを前記長尺状支持体の走行方向に直交する複数の仕切板で仕切ることにより、乾燥風の流れをコントロールするための複数の分割ゾーンと、前記分割ゾーンごとに前記長尺状支持体幅方向の一方端側から他方端側に流れる一方向流れの乾燥風を発生させる一方向気流発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、塗布後、好ましくは塗布直後に乾燥ゾーンを設けたことで、乾燥ゾーン外からの強さや方向の不均一な風が、有機溶剤を多く含み塗布液が流動し易い状態の塗布膜面に当たらないようにできると共に、塗布膜面から蒸発した有機溶剤が塗布膜面を覆う乾燥環境が形成される。この乾燥環境下で、長尺状支持体幅方向の一方端から他方端に流れる1方向流れの規則的な乾燥風を発生させると、塗布膜面近傍の有機溶剤濃度を常に一定に維持した状態で塗布膜の乾燥を行なうことができるので、乾燥時における上記した2種類の斑(ムラ)の発生を防止でき、均一な乾燥を行なうことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面により本発明の塗布膜の乾燥方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0014】
図1は、本発明の塗布膜の乾燥装置の側面図であり、また、図2は図1を上方から見た平面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように本発明の塗布膜の乾燥装置10は、主として、走行する長尺状支持体12(以下、「ウエブ12」と言う)を通過させて塗布膜の乾燥が行なわれる乾燥ゾーン14を形成する乾燥装置本体16と、乾燥ゾーン14内にウエブ12幅方向の一方端側から他方端側に流れる一方向流れの乾燥風を発生させる一方向気流発生手段18とで構成される。この乾燥装置10は、走行するウエブ12に有機溶剤を含む塗布液を塗布する塗布機20の直後に設けられる。
【0016】
塗布機20としては、例えば、ワイヤーバー20Aを備えたバー塗布装置を使用することができ、複数のバックアップローラ22、24、26に支持されて走行するウエブ12の下面に塗布液が塗布されて塗布膜が形成される。
【0017】
乾燥装置本体16は、塗布機20の直後に設けられ、走行するウエブ12の塗布膜面側(ウエブの下面側)に沿った長四角な箱体状に形成され、箱体の各辺のうちの塗布膜面側の辺(箱体の上辺)が切除されている。これにより、走行するウエブ12の乾燥される塗布膜面を囲む乾燥ゾーン14が形成される。乾燥ゾーン14は、乾燥装置本体16を、ウエブ12の走行方向に直交した複数の仕切板28、28…で仕切ることにより、複数の分割ゾーン14A、14B、14C、14D、14E、14F、14G(本実施例では7つの分割ゾーン)に分割される。この場合、乾燥ゾーン14を分割する仕切板28の上端と、ウエブ12に形成された塗布膜面との距離は、0.5mm〜12mmの範囲が好ましく、更に好ましくは1mm〜10mmの範囲である。また、乾燥ゾーン14には一方向気流発生手段18(図2参照)が設けられる。
【0018】
一方向気流発生手段18は、主として、乾燥装置本体16の両側辺の一方側に形成された吸込口18A、18B、18C、18D、18E、18F、18Gと、他方側に吸込口18A〜18Gに対向して形成された排気口18H、18I、18J、18K、18L、18M、18Nと、排気口18H〜18Nに接続された排気手段18P、18Q、18R、18S、18T、18U、18Wとで構成される。これにより、排気手段18P〜18Wを駆動させることにより、吸込口18A〜18Gから分割ゾーン14A〜14Gに吸い込まれたエアが排気口18H〜18Nから排気されるので、各分割ゾーン14A〜14Gには、ウエブ12幅方向の一方端側(吸込口側)から他方端側(排気口側)に向けて一方向に流れる乾燥風が発生する。この一方向気流発生手段18は、排気手段18P〜18Wにより、分割ゾーン14A〜14Gごとに個々に排気量を制御できるようになっている。吸込口18A〜18Gから吸い込まれる乾燥風としては、温度・湿度が空調された空調風が好ましい。
【0019】
また、乾燥装置本体16の幅はウエブ12の幅よりも大きくなるように形成して、乾燥ゾーン14の両側の開放部分を整風板32で蓋をした整風部分を設けるようにした。この整風部分は、吸込口18A〜18Gから塗布膜端までの距離と、塗布膜端から排気口18H〜18Nまでの距離を確保すると共に、乾燥風が吸込口18A〜18Gのみから乾燥ゾーン14内に吸い込まれ易くするもので、乾燥ゾーン14に急激な乾燥風の流れを作らないようにしたものである。この整風部分、即ち整風板32の長さとしては、吸込口側及び排気口側ともに、50mm以上150mm以下の範囲が好ましい。
【0020】
各分割ゾーン14A〜14Gのうち、特に塗布機に一番近い分割ゾーン14Aは、ウエブ12に塗布液が塗布された直後に、乾燥ゾーン14外の新鮮な空気、例えば上記した空調風が乾燥ゾーン14に入り込みにくくすることが重要である。この為には、塗布機20に隣接するように分割ゾーン14Aを配置することや前記した整風板32の他に、塗布機20のワイヤーバー20Aの位置と、バックアップローラ24の位置を調整し、ウエブ12が分割ゾーン14Aの直近を走行するようにして、ウエブ12で分割ゾーン14Aの開放部をあたかも蓋をするように構成することが好ましい。
【0021】
また、ウエブ12を挟んで、乾燥装置本体16の反対側位置には、前記空調風等の風により、ウエブ12の安定走行が阻害されないように遮蔽板34が設けられる。
【0022】
次に、上記の如く構成された乾燥装置10の作用を説明する。
【0023】
尚、ウエブ12は、予め塗布された配向膜形成用樹脂をラビング処理して配向膜となる層を有するものであると共に、塗布液は液晶性ディスコティック化合物を含む有機溶剤性塗布液の例で説明する。
【0024】
バックアップローラ22、24、26に支持され走行するウエブ12に塗布機20のワイヤーバー20Aで塗布液を塗布した直後、乾燥装置10によって塗布膜面の初期乾燥が行なわれる。この初期乾燥は、塗布直後、遅くとも5秒以内の塗布直後に乾燥風による乾燥を開始することが好ましい。
【0025】
この初期乾燥において、塗布直後の塗布膜面は有機溶剤が十分に含まれた状態にあり、特に有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布した直後の初期乾燥では有機溶剤の蒸発の分布(ゆらぎ)によって塗布膜面に温度分布が発生する。これが原因で表面張力の分布が発生し、塗布膜面内で塗布液の流動が起き、乾燥の遅い部分の塗布膜が薄くなり、ブロードな斑(ムラ)Aとなる。
【0026】
また、液晶性ディスコティック化合物の配向方向は、配向膜形成用樹脂の表面をラビング処理して決めているが、初期乾燥においてラビング方向と異なる風向きの風速が速い場合、風が合流する場合、風の渦が発生している場合等の風が塗布膜面に当たることで塗布膜面の一部に配向方向のずれを生じさせ、これがシャープな斑(ムラ)Bの原因となる。
【0027】
このことから、初期乾燥時における塗布膜面の斑(ムラ)A、Bを防止するためには、塗布してから塗布膜面における塗膜液の流動が停止するまでの初期乾燥の間、外部からの不均一な風が塗布膜面に当たるのを阻止すると共に、塗布膜面近傍の有機溶剤濃度を常に一定に保つことが重要になる。
【0028】
そこで、本発明では、ウエブ12に塗布液を塗布した直後、初期乾燥を行なうために上記構成の乾燥装置10を設けた。即ち、塗布直後に乾燥ゾーン14を形成したことで、乾燥ゾーン14外の強さや方向の不均一な風が、有機溶剤を多く含み塗布液が流動し易い状態の塗布膜面に当たらないようにできる。これにより、塗布膜面に当たった風の勢いで塗布膜面の配向方向がずれることが原因で発生するシャープな斑(ムラ)Bを防止し、均一な乾燥を行なうことができる。
【0029】
また、乾燥ゾーン14を設けたことで、塗布膜面から蒸発した有機溶剤が塗布膜面を覆う乾燥環境が形成される。この乾燥環境下で、排気手段18P〜18Wを駆動させると、吸込口18A〜18Gから分割ゾーン14A〜14Gに吸い込まれたエアが排気口18H〜18Nから排気されるので、各分割ゾーン14A〜14Gには、ウエブ幅方向の一方端側(吸込口側)から他方端側(排気口側)に向けて一方向に流れる乾燥風が発生する。これにより、塗布膜面が有機溶剤で覆われた状態のまま、蒸発した有機溶剤を含む乾燥エアが排気口18H〜18Nから排気されて次第に乾燥される。この場合、排気手段18P〜18Wの排気量が大き過ぎると、塗布膜面を有機溶剤が均等に覆わなくなるので、排気手段18P〜18Wの排気量を調整して、排気量が大きくなりすぎないようにする必要がある。これにより、塗布膜面近傍における有機溶剤濃度を均等にできるので、塗布膜面の各部分から有機溶剤を均等に蒸発させることができる。従って、塗布膜面からの有機溶剤の蒸発分布が原因で発生するブロードな斑(ムラ)Aを防止し、均一な乾燥を行なうことができる。
【0030】
この場合、ウエブ12が乾燥ゾーン14を走行することで、乾燥ゾーン14の入口側と出口側における塗布膜面近傍の有機溶剤濃度が異なる場合があるが、乾燥ゾーン14を、複数の分割ゾーン14A〜14Gに分割したことで解消することができる。即ち、7分割された各分割ゾーン14A〜14Gに設けた各排気手段18P〜18Wの排気量を制御して、各分割ゾーン14A〜14Gを流れる乾燥風の風速を調整することにより、乾燥ゾーン14の入口側と出口側における塗布膜面近傍の有機溶剤濃度の異なりを解消することができる。これにより、塗布膜面には、ブロードな斑(ムラ)Aもシャープな斑(ムラ)Bもともに発生しない良好な乾燥を行なうことができる。
【0031】
更に、乾燥風の流れをコントロールするために仕切板28の上端と塗布膜面との間隔を0.5mm〜12mmとし、塗布膜面が仕切板28に当たらない範囲においてできるだけ狭くすることにより各分割ゾーン14A〜14Gに設けた各排気手段18P〜18Wの個々の排気精度をアップさせることができる。また、乾燥ゾーン14の両側部のウエブの下に整風板32を設けて吸込口18A〜18Gから流入してくる風、及び排気口18H〜18Nから排気される風を整流することで塗布膜面を流れる溶剤を含んだ風の流れが一様になるようにした。尚、乾燥風としては、乾燥装置10が設置された、例えば空調室等の空調風を使用することができるが、塗布液に含有される有機溶剤と同じ溶剤を含む風を、乾燥装置本体16の吸込口18A〜18Gから吸い込ませるようにしてもよい。或いは、排気手段18P〜18Wにより排気される乾燥風の一部を吸込口18A〜18Gから吸い込ませてもよい。
【0032】
本発明で使用されるウエブ12としては、一般に幅0.3〜5m、長さ45〜10000m、厚さ5〜200μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフィルム、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートした紙、アルミニウム、銅、錫等の金属箔等、或いは帯状基材の表面に予備的な加工層を形成させたものが含まれる。更に、前記したウエブ12には、光学補償シート塗布液、磁性塗布液、写真感光性塗布液、表面保護、帯電防止あるいは滑性用塗布液等がその表面に塗布され、乾燥された後、所望する長さ及び幅に裁断されるものも含まれ、これらの代表例としては、光学補償シート、各種写真フィルム、印画紙、磁気テープ等が挙げられる。
【0033】
塗布液の塗布方法として、上記したバーコーティング法の他、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法及びスライドコーティング法を使用することができる。特にバーコーティング法、エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法が好適に使用できる。
【0034】
また、本発明において同時に塗布される塗布液の塗布層の数は単層に限定されるものではなく、必要に応じて同時多層塗布方法にも適用できる。
【0035】
【実施例】
図3は、光学補償シートの製造工程に、本発明の乾燥装置10を組み込んだものであり、乾燥装置10の各排気手段18P〜18Wの排気量を調整した場合の効果を、製造された光学補償シートの斑(ムラ)の発生状況との関係で調べた。
【0036】
乾燥装置10の各排気手段18P〜18Wの排気量については、表1の1〜3の3実施例について行い、各実施例において各分割ゾーン14A〜14Gを流れる乾燥風の風速を表1に示した。
【0037】
先ず、光学補償シートの製造工程について説明すると、図3のように送出機40で送り出されたウエブ12は複数のガイドローラ42、42…によって支持されながらラビング処理装置44、塗布機20そして、初期乾燥を行なう本発明の乾燥装置10、本乾燥を行なう乾燥ゾーン46、加熱ゾーン48、紫外線ランプ50を通過して巻取機52で巻き取られる。
【0038】
ウエブ12としては、厚さ100μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フイルム(株)製)を使用した。そして、ウエブ12の表面に、長鎖アルキル変性ポバール(MP−203、クラレ(株)製)の2重量パーセント溶液をフィルム1m2 当り25ml塗布後、60°Cで1分間乾燥させて造られた配向膜用樹脂層を形成したウエブ12を、18m/分で搬送走行させながら、樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成した。ラビング処理におけるラビングローラ54の押しつけ圧力は、配向膜樹脂層の1cm2 当たり98Pa(10k gf/cm2 )とすると共に、回転周速を5.0m/秒とした。
【0039】
そして、配向膜用樹脂層をラビング処理して得られた配向膜上に、塗布液としては、ディスコティック化合物TE−8の(3)とTE−8の(5)の重量比で4:1の混合物に、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製造)を前記混合物に対して1重量パーセント添加した混合物の40重量%メチルエチルケトン溶液とする液晶性化合物を含む塗布液を使用した。ウエブ12を走行速度18m/分で走行させながら、この塗布液を配向膜上に、塗布液量がウエブ1m2 当り5mlになるようにワイヤーバー20Aで塗布した。そして、塗布直後に、本発明の乾燥装置10を使用して初期乾燥を行なった。
【0040】
また、乾燥ゾーン14を7分割する仕切板28の上端と塗布膜面との間隔は5〜9mmの範囲に設定して行なった。また、本発明の乾燥装置10で初期乾燥されたウエブ12は、100°Cに調整された乾燥ゾーン46及び、130°Cに調整された加熱ゾーン48を通過させてネマチック相を形成した後、この配向膜及び液晶性化合物が塗布されたウエブ12を連続搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプ50により紫外線を照射した。
【0041】
尚、表1の、斑の発生状況において、×は斑が発生したことを示し、○は斑が発生しなかったことを示す。
【0042】
【表1】
その結果、表1から分かるように、各分割ゾーンの風速を全て同じ0.5m/秒とした実施例1では、ブロード斑Aが発生し、シャープ斑Bは発生しなかった。また、塗布機20に近い分割ゾーン14Aの風速を1.0m/秒、次の分割ゾーン14Bの風速を1.5m/秒とし、それ以後の分割ゾーン14C〜14Gの風速を0.5m/秒とした実施例2は、ブロード斑A及びシャープ斑Bともに発生せず、良好な結果であった。また、分割ゾーン14Aの風速を1.0m/秒、次の分割ゾーン14Bの風速を1.5m/秒とし、分割ゾーン14C、Dの風速を0.5m/秒とし、分割ゾーン14E、F、Gとした実施例3は、ブロード斑A及びシャープ斑Bともに発生し、最も悪い結果であった。
【0043】
このように、塗布直後に乾燥装置10を設置すると共に、乾燥ゾーンを分割し個々の排気手段で最適風速に設定することは、初期乾燥過程で発生する斑(ムラ)を抑制するために効果的であることが分かった。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の塗布膜の乾燥方法及び装置によれば、塗布直後の初期乾燥過程で発生する斑(ムラ)を抑制でき、均一な乾燥ができる。従って、従来のように、塗布液の粘度等の物性や溶媒の種類を変更する必要がないので、使用できる塗布液の種類の幅や溶剤の種類の幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乾燥装置の側面図
【図2】本発明の乾燥装置の平面図
【図3】光学補償シートの製造工程に、本発明の乾燥装置を組み込んだ工程図
【図4】従来の乾燥方式で発生した斑(ムラ)発生状況図
【図5】ブロードな斑(ムラ)を説明する説明図
【図6】シャープな斑(ムラ)を説明する説明図
【符号の説明】
10…乾燥装置、12…ウエブ、14…乾燥ゾーン、14A〜14G…分割ゾーン、16…乾燥装置本体、18…一方向気流発生手段、18A〜18G…吸込口、18H〜18N…排気口、18P〜18W…排気手段、20…塗布機、22、24、26…バックアップローラ、28…仕切板、32…整風板、A…ブロードな斑、B…シャープな斑
Claims (12)
- 走行する長尺状支持体に有機溶剤を含む塗布液を塗布して形成した塗布膜の乾燥方法において、
前記塗布直後に乾燥ゾーンを設けて、前記走行する長尺状支持体の乾燥される塗布膜面のみを囲むと共に、
前記乾燥ゾーンを前記長尺状支持体の走行方向に直交する複数の仕切板で仕切ることにより、乾燥風の流れをコントロールするための複数の分割ゾーンに分割し、
前記分割ゾーンごとに前記長尺状支持体幅方向の一方端側から他方端側に流れる一方向流れの乾燥風を発生させたことを特徴とする塗布膜の乾燥方法。 - 前記分割ゾーンごとに前記一方向に流れる乾燥風の風速を調整することを特徴とする請求項1に記載の塗布膜の乾燥方法。
- 前記乾燥風は、前記有機溶剤と同一の溶剤ガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布膜の乾燥方法。
- 前記長尺状支持体は、予め塗布された配向膜形成用樹脂をラビング処理して配向膜となる層を有するものであると共に、前記塗布液は液晶性ディスコティック化合物を含むものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の塗布膜の乾燥方法。
- 走行する長尺状支持体に塗布機により有機溶剤を含む塗布液を塗布して形成した塗布膜の乾燥装置において、
前記塗布機の直後に設けられ、前記走行する長尺状支持体の乾燥される塗布膜面のみを囲む乾燥ゾーンを形成する乾燥装置本体と、
前記乾燥ゾーンを前記長尺状支持体の走行方向に直交する複数の仕切板で仕切ることにより、乾燥風の流れをコントロールするための複数の分割ゾーンと、
前記分割ゾーンごとに前記長尺状支持体幅方向の一方端側から他方端側に流れる一方向流れの乾燥風を発生させる一方向気流発生手段と、を備えたことを特徴とする塗布膜の乾燥装置。 - 前記一方向気流発生手段は、
前記乾燥装置本体の側面に形成され、前記長尺状支持体幅方向の前記一方端側と前記他方端側にそれぞれ形成された開口部と、
前記他方端側開口部に接続された排気手段と、を備えたことを特徴とする請求項5の塗布膜の乾燥装置。 - 前記乾燥ゾーンごとに、前記一方向気流発生手段の排気量を個別に制御可能としたことを特徴とする請求項5又は6記載の塗布膜の乾燥装置。
- 前記乾燥ゾーンは、前記塗布膜の面を囲むように形成されると共に、該乾燥ゾーンに配設された前記仕切板の上端と前記塗布膜面との間隔は0.5〜12mmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項7の塗布膜の乾燥装置。
- 前記乾燥ゾーンの前記一方端側開口部からは前記有機溶剤と同一の溶剤ガスを含む乾燥風が吸い込まれることを特徴とする請求項6〜8の何れか1記載の塗布膜の乾燥装置。
- 前記長尺状支持体は、予め塗布された配向膜形成用樹脂をラビング処理して配向膜となる層を有するものであると共に、前記塗布液は液晶性ディスコティック化合物を含むものであることを特徴とする請求項5〜9の何れか1記載の塗布膜の乾燥装置。
- 請求項1〜4の何れか1の塗布膜の乾燥方法を用いて光学補償フィルムを製造する光学補償フィルムの製造方法。
- 請求項5〜10の何れか1の塗布膜の乾燥装置を用いて光学補償フィルムを製造する光学補償フィルムの製造装置。
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