JP5278645B2 - 塗布物の製造装置および製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は塗布物の製造装置および製造方法に関するものである。特に、塗布液に有機溶剤を含み膜厚精度として誤差1%以下の膜厚ムラが製品上欠陥として認識される光学フィルム等の製造において使用される。
近年ウェットコーティング技術を利用して製造される光学フィルム製品には、膜厚精度として誤差1%以下を要求されるような製品が増えてきている。そのような光学フィルムの製造では、一般的に塗布液の溶媒として有機溶剤を使用することが多いが、有機溶剤は水に比べると蒸発速度が速く、塗布後の乾燥過程において精密に乾燥しないと、風紋のようなムラを生じせしめることが知られている。
従来は塗布膜の乾燥効率を上げることを目的とする技術が多く、例えば特許文献1には走行する基材の両面に熱風を当てる方法が提案されているが、この方法では熱風を塗布膜面に当てるためムラが発生し、高い膜厚精度を要求される製品では用いることができない。
一方で、精密な塗膜の形成のために乾燥効率よりも精密に乾燥することに重きをおいた技術も提案されている。例えば、特許文献2では乾燥初期に膜面の乾燥風の風速を低くすることが提案されている。
また、特許文献3では乾燥時の雰囲気溶剤濃度を飽和状態にして極力乾燥速度を抑えることで結果的に精密な乾燥を行なうことも提案されている。
しかし、これらの方法は乾燥速度を遅くすることでムラのない面状を達成しようとするものであり、生産性が落ちるという欠点が存在する。
そこで、少しでも乾燥速度を上げるために蒸発した溶剤を効率的に除去しながら乾燥する方法として、特許文献4では走行する基材を囲み基材搬送部と溶剤除去部に分割して蒸発した溶剤を溶剤除去部の横風で常に除去しながら乾燥する方法が提案されている。この方法は基材搬送部を基材近傍に狭く区切っていることが特徴である。
また、特許文献5では横風で除去するのではなく、凝縮板に蒸発した溶剤を凝縮させて除去する方法が提案されている。
また、乾燥速度を上げるために乾燥風を整流化しながら横風を直接走行する基材に当てる方法も提案されている。しかし、例えば特許文献6に記載の方法では、特に乾燥初期の塗液粘度が1.5倍まで上昇するまでは風を当てないことを前提としており、乾燥速度を飛躍的に向上させることはできない。
これらの方法は、乾燥速度を大気中に放置したいわゆる自然乾燥の乾燥速度よりも上げることができず、飛躍的な生産性の向上ができないことが問題になる。
特開2002−59074号公報 特開2003−126768号公報 特開2002−320898号公報 特開2003−93954号公報 特表2002−515585号公報 特開2005−81256号公報
本発明における課題は、わずかな乾燥ムラの発生を抑制しながら少なくとも自然乾燥よりも乾燥速度を早く維持でき、面性と生産性を向上することができ、かつ、低コストの塗布物の製造装置および製造方法を提供することである。
請求項1に記載の発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
前記乾燥装置は、少なくとも
前記基材の塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する側に設置された前側板と、前記塗布膜を搬出する側に設置された後側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有し、かつ、前記塗布膜の搬送方向に1ゾーン以上配置されている乾燥ゾーンと、
前記搬入口と搬出口とを備え、塗布膜を搬送する塗布膜搬送部と、
各乾燥ゾーンの右側板または左側板のいずれかに設けられた排気口と、
前記排気口を介して乾燥ゾーン内の空気を排気する排気手段と、
各乾燥ゾーンの前記排気口と対向する位置に設けられ、その内部に複数の孔を有する平板状部材を1枚以上配置した整流構造と、
前記整流構造と給気口を介して接続され、かつ屈曲部分を有し、屈曲部分出口と給気口の間の直線部分の長さL0が、Dを管径、Reをレイノルズ数として
L0≦(10〜40)D/5 (層流時)
L0≦(0.065ReD)/5 (乱流時)
で表される給気部と、
給気部に接続され、給気部および整流構造を介して乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、
を備えることを特徴とする塗布物の製造装置である。
請求項2に記載の発明は、前記塗布装置の塗布部から前記塗布膜を最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口までの塗布膜搬送距離が0.2m以上〜0.8m以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載
の塗布膜の製造装置である。
請求項3に記載の発明は、前記基材の塗布膜を形成した側に設置された乾燥装置の天板と、
前記天板と前記塗布膜との天板側間隙の高さL1と、
前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された乾燥装置の底板と、
前記底板と前記基材との底板側間隙の高さL2と、
を有し、
高さL1と高さL2が、L1≦L2の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布物の製造装置である。
請求項4に記載の発明は、前記天板と底板との距離が10mm以上〜100mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
請求項5に記載の発明は、前記給気口の内径は、前記整流構造の複数の孔を有する平板状部材が配置されている部分の内径と同じかそれより小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
請求項6に記載の発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布物の製造方法において、
前記乾燥装置は、少なくとも前記基材の塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する側に設置された前側板と、前記塗布膜を搬出する側に設置された後側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有し、
かつ前記乾燥装置は、前記塗布膜の搬送方向に沿って複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
前記搬送中の帯状の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
次に、塗布液を塗布し塗布膜を形成した前記基材を前記乾燥装置の搬入口へ塗布膜を搬送する搬送工程と、
次に、前記乾燥装置の搬入口から塗布膜を搬入する搬入工程と、
次に、屈曲部分を有し屈曲部分出口と給気口の間の直線部分の長さL0が、Dを管径、Reをレイノルズ数として
L0≦(10〜40)D/5 (層流時)
L0≦(0.065ReD)/5 (乱流時)
で表される給気部と、内部に複数の孔を有する平板状部材を1枚以上配置した整流構造を介して前記各乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、各乾燥ゾーン内の空気を排気する排気手段と、を有し、前記基材に形成した塗布膜を乾燥ゾーン内で搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
次に、前記乾燥装置の搬出口から塗布膜を搬出する工程と、
を有することを特徴とする塗布物の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、前記塗布工程の塗布部から前記塗布膜を最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口までの塗布膜搬送距離が0.2m以上〜0.8m以下の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の塗布膜の製造方法である。
請求項に記載の発明は、前記基材の塗布膜を形成した側に設置された乾燥装置の天板と、
前記天板と前記塗布膜との天板側間隙の高さL1と、
前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された乾燥装置の底板と、
前記底板と前記基材との底板側間隙の高さL2と、
を有し、高さL1と高さL2が高さL1≦高さL2の関係を満たすことを特徴とする請求項またはに記載の塗布物の製造方法である。
請求項に記載の発明は、前記天板と底板との距離が10mm以上〜100mm以下の範囲であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の塗布物の製造方法である。
請求項10に記載の発明は、前記給気口の内径は、前記整流構造の複数の孔を有する平板状部材が配置されている部分の内径と同じかそれより小さいことを特徴とする請求項のいずれかに記載の塗布物の製造方法である。
本発明における塗布物の製造装置および製造方法を使用することにより、わずかな乾燥ムラの発生をも抑制しながら少なくとも自然乾燥よりも乾燥速度を早く維持でき、より低コストで面性と生産性を向上することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の塗布物の製造装置を側面から見たときの側面断面図で、図2はそのうち乾燥装置2の部分を上から見た上面概略図である。図1は、図2中のB−B’線で切った断面図である。
まず、塗布装置1aの塗布部1bにおいて基材4上に塗布膜が塗布される。塗布膜が形成された基材4は乾燥装置2内に搬送される。
乾燥装置2は、天板11、底板12、右側板15a、左側板15bに囲まれた空間内に、複数の乾燥ゾーンを備えている。図1には乾燥ゾーン3a〜3eの5ゾーンの場合を示すが、ゾーン数は適宜変更可能である。各乾燥ゾーン3a〜3eは、搬入口と搬出口とを有し、塗布膜を搬送する塗布膜搬送部6、給気口9および排気口10と、給気口9を介して整流構造22および塗布膜搬送部6に空気を強制的に給気する給気手段(不図示)と、排気口10および排気部10aを介して塗布膜搬送部6から空気を強制的に排気する排気手段(不図示)とを備えている。塗布膜が最初に搬送される乾燥ゾーン3aには乾燥装置2への搬入口13が、塗布膜が最後に搬送される乾燥ゾーン3eには乾燥装置2からの搬出口14が備えられている。
図3は、図1の乾燥装置2のA−A’断面概略図である。給気部8は給気手段に近い側から順に、給気手段側直線部28、屈曲部25、給気口側直線部26を備えた中空の筒状構造であり、給気手段が供給した空気を、給気口9から整流構造22へ送り込むようになっている。その際、給気手段側直線部28内部の空気の流れ18aの速度分布は、中央部付近で早く、給気手段側直線部28内壁面付近では遅くなる。
ここで、屈曲部25を設けておくと、その内壁面に空気の流れ18aがぶつかり速度を減じるので、空気の流れ18aの速度分布を打ち消して比較的一様な状態に近づけることができる。図3では、給気部8の屈曲部25として、90°曲げた箇所を1つ配置した場合を示しているが、屈曲部25の曲げ角度や箇所数は適宜選択可能である。
更に、給気口側直線部26の長さを短くすることにより、空気の流れ18aが圧損部材24(後述)に到達するまでに、速度分布が再発生しないようにする構造となっている。そのためには給気口側直線部26の長さは、下記の式で表される助走距離Lの1/5以下とすることが望ましい。ここで助走距離とは、流路において流体の主流方向と垂直な方向に関して均一な速度の流体が、一定の速度分布となるまでに必要とする区間をいい、
乱流時の助走距離L=(10〜40)D
層流時の助走距離L=0.065ReD
で示される。ただし、Re:レイノルズ数、D:給気手段側直線部28の管径、である。Lとして、給気手段側直線部28の手前で、管内が乱流状態の場合は乱流時の値を、層流状態の場合は層流時の値を用いる。
給気部8の給気口側直線部26と、整流構造22給気口側連結部27aは、給気口9で接続されている。整流構造22は、給気口9の側から順に、前述の給気口側連結部27a、整流構造主要部27b、乾燥装置側連結部27cを備えた中空の筒状構造であり、そのうち整流構造主要部27bにはそれぞれ1個以上の圧損部材24および整流部材23が配置されている。
給気口側連結部27aは、図2に示すように基材4の面内方向には放射状に広がる構造を持つことが望ましい。給気口側連結部27aが放射状に広がることにより、圧損部材24に到達する前の空気の流れ18aの速度分布の一様性を保つことができる。
整流構造主要部27bに配置される圧損部材24および整流部材23としては、次のような部材を選択することが望ましい。まず、給気口9側に配置される圧損部材24としては、給気される気流をわざと乱して速度分布を打ち消すために、直径の大きな孔を有し、かつ開口率が小さい板状の部材を配置する。圧損部材24の次に配置される整流部材としては、直径の小さな孔を有し、かつ開口率が大きい板状の部材を配置する。ここで、開口率とは、(孔の開口部の面積/板状部材の面積)×100(%)で表される値である。
空気の流れ18bの速度分布を打ち消すための圧損部材24としては、金網、パンチングメタル等、複数の孔を形成した板状部材を用いることができる。好ましい構成としては孔径1〜10mm、開口率10〜30%程度の条件になる。ただし、塗布膜搬送部6内の空気の流れ、および、蒸発した有機溶剤の流れを制御する機能を有するものであれば、孔の開口形状や孔の開口率等は特に制限されるものではない。また、圧損部材24の配置枚数は適宜選択可能であり、その材質としては耐溶剤性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。
空気の流れ18bの整流化を行うための整流部材23としては、金網、メッシュ、ハニカム等、複数の孔を形成した板状部材を用いることができる。好ましい構成としては孔径0.1〜2mm、開口率40〜99%程度の条件になる。整流部材23の配置枚数は適宜選択可能であるが、枚数を重ねるほどに速度ムラを抑える効果は大きくなる。また、その材質としては、耐溶剤性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。
整流構造主要部27bと乾燥装置2の乾燥ゾーン(図3では3b)は、乾燥装置側連結部27cによって接続されている。整流構造主要部27bまでの筒状構造の内径は乾燥ゾーン3bの高さよりも大きいため、乾燥装置側連結部27cは、27bと3b側面を隙間ができないように接続している。
以上、給気口9から整流構造22へ送り込まれた空気の流れ18bは、整流構造22を通過して乾燥装置2の各乾燥ゾーン(図3では3b)に送り込まれるようになっている。
整流構造22を通過してきた空気の流れ18bは、塗布膜搬送部6内へ導かれ、更に排気手段によって塗布膜搬送部6内から排気される。したがって、塗布膜搬送部6内では整流構造22側から排気口10に向って空気の流れ18cが発生しており、塗布膜搬送部6内を搬送される塗布膜5から蒸発した有機溶剤は、空気の流れ18cとともに排気口10を介して塗布膜搬送部6内から排気される。
このとき、基材4に形成した塗布膜5と天板の高さL1と、基材4と底板12との底板側間隙の高さL2が、L1≦L2の関係になっていることが好ましい。L1≦L2の関係を満たすとき、外乱となる風は基材4と底板12との間に流れ込むのが主流になるため、塗布膜5面に外乱となる風が当たり難く、面性と生産性を向上することができる。
また、天板11と底板12との距離は、整流機構22側からの給気量と排気口10からの排気量を少なく保ち、かつ、乾燥速度を速めるために、ある程度空気の流れ18cが発生する空間を制約する必要がある。そこで天板11と底板12との距離は10mm以上〜100mm以下の範囲が好ましい。10mm未満では基材4が搬送されたときに天板11または底板12への接触などトラブルの原因となるため好ましくない。また、100mmより高くすると乾燥速度を速めるために給気量と排気量を増加させる必要があり、給気手段および排気手段の増設やエネルギーコストの増加などコスト面の問題があり好ましくない。
塗布装置1aと乾燥装置2は、塗布部1bと搬入口13との間の距離である塗布膜搬送距離7が0.2m以上〜0.8m以下の範囲となるように連結することが望ましい。塗布膜搬送距離7が0.8mより大きくなると自然に乾燥していく領域が無視できなくなり、自然乾燥によるムラが生じるため好ましくない。また、0.2m未満であると基材4を搬入する搬入口13において外気を遮断してしまうため好ましくない。
図1〜2において、基材4に形成された塗布膜5は、最初に搬入する乾燥ゾーン3aの搬入口13から最初の乾燥ゾーン3a内へ搬入され、最後に搬出する乾燥ゾーン3eの搬出口14から乾燥ゾーン3d外へ搬出される。図1では、乾燥ゾーン3a〜3eの5ゾーンが直線的に配置されているが、これは本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではない。また、隣接する各乾燥ゾーンは直線的に配置されていても、屈折して配置されていてもよい。
各乾燥ゾーン(3a〜3e)どうしの間に、仕切りとなるような部材は、配設しなくてもよい。また図1〜2では、各乾燥ゾーン(3a〜3e)に整流構造22と排気口10が1個ずつ配置されているが、これは本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではなく、各乾燥ゾーンに対して配置される整流構造22および排気口10の個数に制限はない。
本発明における塗布装置1aは、グラビア、ワイヤーバー、ダイ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における乾燥ゾーンは、乾燥ゾーン外から吹き込む風や塵等の外乱を防止するためにある程度密封された箱型の形状をしている。塗布膜5を搬入する搬入口13と、塗布膜5を搬出し搬入口13に対向して設置された搬出口14と、基材4の塗布膜5を形成した側に設置された天板11と、基材4を挟んで天板11と対向して設置された底板12と、塗布膜5の搬送方向に向って右側であり、塗布膜5の幅方向に設置された右側板15aと、右側板と対向して設置された左側板15bとで構成されている。ここで、搬送される基材4に対し、重力方向上面側に塗布膜5が形成されているか、下面側に塗布膜5が形成されているかは関係ない。
また図2は、右側板15aの全面に整流構造22が配設されていて、整流構造22が右側板15aを兼ねるような構造の場合を示したものとなっているが、整流構造22の内径に対して各乾燥ゾーン3a〜3eの搬送方向の長さが十分長い場合などには、例えば平板状の右側板15aを各乾燥ゾーンに配設することが必要になる場合もありえる。
同じく図2では、左側板15bの全面に排気部10aが配設されていて、排気部10aが左側板15bを兼ねるような構造の場合を示したものとなっているが、排気部10aの乾燥装置2との接続箇所の内径に対して、各乾燥ゾーン3a〜3eの搬送方向の長さが十分長い場合などには、例えば平板状の左側板15bを各乾燥ゾーンに配設することが必要になる場合もありえる。
ここで、整流構造22の整流構造主要部27bの内径(基材面に対し垂直方向の内径)は、乾燥装置2の天板1と底板12との距離(基材面に対し垂直方向)より大きい事が望ましい。こうすることで、整流構造22側と排気口10の間に発生する空気の流れ18cが、乾燥ゾーンの天板11と底板12との間に一様に発生し、安定的に塗布膜5から揮発する有機溶剤を除去することができる。これは、本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではない。
また図3では、排気部10aの排気口10の内径(基材面に対し垂直方向の内径)を乾燥装置2の天板1と底板12との距離(基材面に対し垂直方向)より大きくした場合を示しているが、排気口10の内径の大きさは特に限定すべき事項ではなく、適宜設定可能である。
本発明における給気手段、または、排気手段、または、その両方、のいずれかより選ばれる気流発生手段としては、給気手段および排気手段の出力(給気出力D1および排気出力D2)に応じて、塗布膜搬送部内の空気の流れを調節することができるブロアを用いることができるが、これに限定されるものではない。
本発明における乾燥装置2の長さ(基材の搬送方向)は、特に制約すべき事項ではない。乾燥装置2の長さは塗布膜が乾燥するかどうかで決定されるものであり、製品によって異なるものである。ただし、本発明では、50cm以上100m以下程度の一般的な長さの乾燥装置2を用いている。
また、本発明における乾燥ゾーンの長さ(基材の搬送方向)としては、30cm以上30m以下程度のものを用いている。
本発明における基材4の搬送速度は制約すべき事項ではないが、10m/min以上100m/min以下程度の一般的な速度が好ましい。
本発明における乾燥装置2は、塗布膜中の有機溶剤の蒸発速度を安定化し、わずかな乾燥ムラの発生を抑制することができるため、その効果が最も現れるのは乾燥初期である。乾燥装置の全長すべてが本発明の乾燥装置2によるものではなく、基材に形成された塗布膜を最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口を含む乾燥初期段階のみに本発明の乾燥装置2を導入することも可能である。その場合、図1に示すように、前半部に第一乾燥装置として本発明の乾燥装置2を導入し、後半部に第二乾燥装置21として公知の乾燥装置を導入してもよい。
第二乾燥装置21としては、スリットノズルやパンチングメタルから基材に形成された塗布膜に温度を上昇させた噴流を当てるような方式を導入しても良いし、クイックリターン方式のノズルや基材の搬送方向に平行流を流す方式のノズルから熱風を噴出する方式でも良い。また、片面だけでなく両面から加熱手段を設けても良い。市販されているいかなる乾燥装置を使用しても本発明の効果をさまたげるものではない。
さらに、図1には本発明の乾燥装置2と公知の第二乾燥装置21をそれぞれの装置として独立させる場合を示しているが、一つの乾燥装置の中で、前半部が本発明の乾燥装置による方式をとり、後半部が公知の乾燥装置に基づく方式をとる場合でも本発明の効果は変わらない。
本発明の塗布膜の乾燥装置および乾燥方法、これらを用いた塗布物の製造装置および製造方法は、様々な製品に対して用いることができるが、近年需要が伸びている光学フィルムのようなこれまで以上にムラに対する許容余地の少ない製品に効果的である。
ここで、光学フィルムとは、透過光や反射光の方向、位相、偏光面等を制御するフィルムであり、例えば、液晶やプラズマディスプレイなどの表示装置の最表面またはその内側に使用されるフィルムであり、反射防止フィルム、防眩性フィルム、光学補償フィルム、光拡散フィルムなどが挙げられる。
また、本発明に用いられる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール・ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン・オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、1種、または、2種類以上の混合物として用いてよいが、これらに限定されるものではない。
本発明の塗布液に用いられるバインダーとしては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂等には光重合開始剤が含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線が照射された際にラジカルを発生するものであればよく、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化単量体10〜80質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましくい。
本発明に用いられる基材としては、用途によって様々なものを使用することができる。基材を構成する成分としては、例えば、アセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フルイム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、基材は、単層からなっていても複数層からなっていてもよい。なお、基材の厚さは一般的に10μm以上500μm以下のものが用いられる。
給気口9の内径45mm、屈曲部25の曲率半径45mm、給気口側直線部26の距離50mmの給気部8を、圧損部材24を配置した整流構造22に接続し、送風量2.25m/minとした。
圧損部材24として、開口率20%、孔径1mm、厚さ1mm、搬送方向の長さ1000mmのパンチングメタルを用いた。
この時、給気口側連結部27aにおいては、気流の速度分布が一様になった。
一方、給気口9の内径45mm、屈曲部25の曲率半径45mm、給気口側直線部26の距離500mmの給気構造を用いた所、速度分布が表れた。
図6は、給気口側直線部26の長さが50mm、500mmの場合の圧損部材上流側の流速分布である。50mmの時、速度分布が搬送方向に対し均一になる事がわかる。
気流の速度分布を圧損部材到達前に一様に近くすることで、より圧力損失の低い(開口率の高い)部材で速度分布を打ち消すことが出来るようになり、ファンの駆動能力を下げられるなどのコストダウンを図る事ができる。
本発明の塗布物の製造装置の側面断面図(B−B’断面) 本発明の乾燥装置の上面図 本発明の乾燥装置のA−A’断面概略図 圧損部材上流側の流速分布図
符号の説明
1a 塗布装置
1b 塗布部
2 乾燥装置
3a〜3e 乾燥ゾーン
4 基材
5 塗布膜
6 塗布膜搬送部
7 塗布膜搬送距離
8 給気部
9 給気口
10 排気口
10a 排気部
11 天板
12 底板
13 最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口
14 最後に搬出する乾燥ゾーンの搬出口
15a 右側板
15b 左側板
18a 整流構造22内での空気の流れ
18b 塗布膜搬送部6内での空気の流れ
21 第二乾燥装置
22 整流構造
23 整流部材
24 圧損部材
25 屈曲部
26 給気口側直線部
27a 給気口側連結部
27b 整流構造主要部
27c 乾燥装置側連結部
28 給気手段側直線部

Claims (10)

  1. 搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
    前記乾燥装置は、少なくとも
    前記基材の塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する側に設置された前側板と、前記塗布膜を搬出する側に設置された後側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有し、かつ、前記塗布膜の搬送方向に1ゾーン以上配置されている乾燥ゾーンと、
    前記搬入口と搬出口とを備え、塗布膜を搬送する塗布膜搬送部と、
    各乾燥ゾーンの右側板または左側板のいずれかに設けられた排気口と、
    前記排気口を介して乾燥ゾーン内の空気を排気する排気手段と、
    各乾燥ゾーンの前記排気口と対向する位置に設けられ、その内部に複数の孔を有する平板状部材を1枚以上配置した整流構造と、
    前記整流構造と給気口を介して接続され、かつ屈曲部分を有し、屈曲部分出口と給気口の間の直線部分の長さL0が、Dを管径、Reをレイノルズ数として
    L0≦(10〜40)D/5 (層流時)
    L0≦(0.065ReD)/5 (乱流時)
    で表される給気部と、
    給気部に接続され、給気部および整流構造を介して乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、
    を備えることを特徴とする塗布物の製造装置。
  2. 前記塗布装置の塗布部から前記塗布膜を最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口までの塗布膜搬送距離が0.2m以上〜0.8m以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の塗布膜の製造装置。
  3. 前記基材の塗布膜を形成した側に設置された乾燥装置の天板と、
    前記天板と前記塗布膜との天板側間隙の高さL1と、
    前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された乾燥装置の底板と、
    前記底板と前記基材との底板側間隙の高さL2と、
    を有し、
    高さL1と高さL2が、L1≦L2の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布物の製造装置。
  4. 前記天板と底板との距離が10mm以上〜100mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
  5. 前記給気口の内径は、前記整流構造の複数の孔を有する平板状部材が配置されている部分の内径と同じかそれより小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
  6. 搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布物の製造方法において、
    前記乾燥装置は、少なくとも前記基材の塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する側に設置された前側板と、前記塗布膜を搬出する側に設置された後側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有し、
    かつ前記乾燥装置は、前記塗布膜の搬送方向に沿って複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
    前記搬送中の帯状の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
    次に、塗布液を塗布し塗布膜を形成した前記基材を前記乾燥装置の搬入口へ塗布膜を搬送する搬送工程と、
    次に、前記乾燥装置の搬入口から塗布膜を搬入する搬入工程と、
    次に、屈曲部分を有し屈曲部分出口と給気口の間の直線部分の長さL0が、Dを管径、Reをレイノルズ数として
    L0≦(10〜40)D/5 (層流時)
    L0≦(0.065ReD)/5 (乱流時)
    で表される給気部と、内部に複数の孔を有する平板状部材を1枚以上配置した整流構造を介して前記各乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、各乾燥ゾーン内の空気を排気する排気手段と、を有し、前記基材に形成した塗布膜を乾燥ゾーン内で搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
    次に、前記乾燥装置の搬出口から塗布膜を搬出する工程と、
    を有することを特徴とする塗布物の製造方法。
  7. 前記塗布工程の塗布部から前記塗布膜を最初に搬入する乾燥ゾーンの搬入口までの塗布膜搬送距離が0.2m以上〜0.8m以下の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の塗布膜の製造方法。
  8. 前記基材の塗布膜を形成した側に設置された乾燥装置の天板と、
    前記天板と前記塗布膜との天板側間隙の高さL1と、
    前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された乾燥装置の底板と、
    前記底板と前記基材との底板側間隙の高さL2と、
    を有し、高さL1と高さL2が高さL1≦高さL2の関係を満たすことを特徴とする請求項6または7に記載の塗布物の製造方法。
  9. 前記天板と底板との距離が10mm以上〜100mm以下の範囲であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の塗布物の製造方法。
  10. 前記給気口の内径は、前記整流構造の複数の孔を有する平板状部材が配置されている部分の内径と同じかそれより小さいことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の塗布物の製造方法。
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