JP4147007B2 - ポリイソブチレン系シーリング材用プライマー組成物 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリイソブチレン系シーリング材用プライマー組成物、更に詳しくは、たとえば建築用シーリング材である加水分解性シリル基含有イソブチレン系ポリマーを主成分とするポリイソブチレン系シーリング材に適用され、プライマー成分として固形エポキシ樹脂およびアルキルアルコキシシランを含有することにより、特に多孔質面を有する被施工部材に対しても充分満足できる接着プライマー性能を発揮しうるプライマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来より、建築用シーリング材として、特に耐久性や耐候性に優れる点でシリコーン系シーリング材が使用されているが、最近、これに匹敵する性能を有するものとしてポリイソブチレン系シーリング材が注目されつつある。
ところで、一般に建築用シーリング材のプライマーとしては、大きくシラン系プライマーとウレタン樹脂系プライマーに分けられる。しかして、特に窓ガラス周縁部の施工では、接着界面付近への紫外線の影響が考えられるため、プライマーにおいては高度な耐候接着性が要求される。このため、耐候性に優れるシリコーン系化合物を主成分とするシラン系プライマーが用いられているのが現状である(特開平2−219885号公報参照)。
しかしながら、前述のシリコーン系シーリング材に代えてポリイソブチレン系シーリング材を用いた場合に、かかるシラン系プライマーでは、そのシリコーン系化合物がポリイソブチレン系シーリング材と極性が異なるため、必ずしも良好な接着性は得られない。
【0003】
一方、被施工部材が多孔質面を有する場合、各種の塗装面や窓ガラス用のプライマーを適用しても、上記多孔質面に染み込んだり、接着界面への水浸透の防止能が低いため、多孔質面専用のプライマーが別途必要となる。
従って、被施工部材の種類が異なると、これら部材の取り合いとなる目地においては、種類の異なるプライマーの塗り分けが必要であり、施工プロセスの困難は避けられない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、窓ガラス、塗装面および多孔質面の被施工部材に対しても良好な接着(接着耐候性も含む)発現に寄与しうる汎用プライマーを提供するため鋭意検討を進めたところ、特定の2種のプライマー成分を併用すれば所期目的の汎用プライマーとして使用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、プライマー成分として下記で例示される固形エポキシ樹脂およびアルキルアルコキシシランを含有することを特徴とするポリイソブチレン系シーリング材用プライマー組成物を提供するものである。
【0005】
本発明における上記固形エポキシ樹脂とは、プライマーの使用環境温度範囲内で溶液状態で塗布した際に造膜性を呈する、たとえば60℃以下の温度で固形のエポキシ樹脂を指称する。具体例として、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型が挙げられ、通常分子量400〜6000、エポキシ当量400〜6000程度のものである。
【0006】
なお、本発明にあって、固形エポキシ樹脂の使用に際し、その硬化剤として、アミノアルコキシシラン、たとえばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(α−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(n−ブチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(シクロヘキシル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン等を通常、使用直前に固形エポキシ樹脂の溶液に混合する、いわゆる二液型で使用されてよい。使用量は通常、固形エポキシ樹脂100部(重量部、以下同様)に対して1〜50部、好ましくは5〜40部の範囲で選定すればよい。1部未満では、硬化が不充分で充分な塗膜ができず、また50部を越えても、硬化が充分ではなく脆弱な塗膜しかできず、かつ充分な接着耐水性が得られない傾向にある。
一方、一液型とするには、上記アミノアルコキシシランのアミノ基のケトンブロック体、すなわち、該アミノ基をカルボニル化合物(ケトン化合物、アルデヒド化合物、ジカルボニル化合物など)で縮合反応させたものが使用でき、たとえばN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが市販されている。
【0007】
本発明における上記アルキルアルコキシシランとしては、たとえばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係るポリイソブチレン系シーリング材用プライマー組成物は、プライマー成分として上述の固形エポキシ樹脂およびアルキルアルコキシシランを含有することを特徴とし、通常、これに触媒を加え、有機溶剤に溶解した系で構成される。
ここで、各プライマー成分の量は通常、該プライマー組成物全量中、固形エポキシ樹脂が1〜50%(重量%、以下同様)、好ましくは3〜40%およびアルキルアルコキシシランが0.01〜25%、好ましくは1〜15%となるように選定すればよい。固形エポキシ樹脂の量が1%未満だと、水浸漬後の接着性が不充分であり、また50%を越えると、プライマーが塗布し難い傾向にある。アルキルアルコキシシランの量が0.01%未満だと、ポリイソブチレン系シーリング材との密着性が弱く、また25%を越えると、多孔質部材や金属部材との密着性が弱くなる傾向にある。
【0009】
上記触媒としては、たとえばジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイドなどのスズ系触媒やテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルエチルアセトアセテートなどのチタン系触媒等が挙げられる。触媒量は通常、プライマー組成物全量中0.01〜10%の範囲で選定すればよい。
【0010】
上記有機溶剤としては、たとえばトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
【0011】
また必要に応じて、第3のプライマー成分として、ケイ素原子に結合した水酸基もしくはアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン樹脂(以下、単にオルガノポリシロキサン樹脂と称す)、加水分解性シリル基含有イソブチレン系ポリマー(以下、単にイソブチレン系ポリマーと称す)およびシリケート化合物の群から選ばれる少なくとも1種、又は2種以上、望ましくは3種を適量範囲で添加してもよい。
【0012】
上記オルガノポリシロキサン樹脂は、たとえばその平均単位が式:
【化1】
Figure 0004147007
[式中、Rは1価炭化水素基(たとえばメチル、エチル、プロピルなどのアルキル基;ビニル、アリルなどのアルケニル基;およびこれらの水素原子をハロゲンやシアノ基で置換したもの);
は水素原子またはアルキル基(メチル、エチル、プロピルなど);
aは0.8〜1.8;および
bは1分子中のケイ素原子に結合した水酸基もしくはアルコキシ基の数が1個以上になる値である]
で示されるものであって、通常、ケイ素原子1個当り0.8〜1.8個の1価炭化水素基を有するクロルシランまたはアルコキシシランのそれぞれ1種または2種以上の混合物を水または水と有機溶媒の混在下で加水分解し、副生する塩酸、アルコール等を除去することによって製造することができる。特に水酸基含有オルガノポリシロキサン樹脂が望ましい。
【0013】
上記イソブチレン系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくともイソブチレン単位で構成され[要すれば、イソブチレン単位以外に、イソブチレンと共重合しうる単量体(たとえば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子両末端に加水分解性シリル基、たとえば式:
【化2】
Figure 0004147007
[式中、RとR’は同一もしくは異なって、炭素数1〜5の低級アルキル;およびcは1〜3の整数である]
のアルコキシシリル基を含有し、好ましくは分子量1000〜40000で常温ワックス状ないし高粘度液状のものを指称し、一般に、イニファー法と呼ばれるカチオン重合法で得られる末端官能型イソブチレン系ポリマーを用いることにより製造することができる(特開平8−231758号公報参照)。代表的な市販品としては、式
【化3】
Figure 0004147007
[式中、nは5〜400およびmは5〜400である]
の化学構造を有する、鐘が淵化学工業(株)製の「エピオン」シリーズが例示される。
【0014】
上記シリケート化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランエチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、メチルセロソルブオルソシリケート、n−プロピルオルソシリケートおよびテトラメチルシリケートが挙げられる。
さらに必要に応じて、通常の無機充填材(ヒュームドシリカ、コロイダルシリカなど)、着色剤(ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、染料など)等を適量加えてもよい。
【0015】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1および比較例1〜4
(1)プライマー組成物の調製
下記表1に示す部数の成分を配合し、攪拌混合してプライマー組成物を得る。
(2)接着性試験
下記表2に示す各種の被施工部材に、上記(1)のプライマー組成物を刷毛で塗布し、常温乾燥後、2成分形ポリイソブチレン系シーリング材(サンスター技研(株)製の「ペンギンシール7000」)を10mm厚となるように塗布した後、23℃,50%RH×7日間で養生硬化させた。次いで、該シーリング材の接着性を評価する(JAS S8に準拠した簡易接着性試験)。結果を表2に併記する。
【0016】
○:完全に接着
△:プライマーと被施工部材間で一部剥離
×:プライマーと被施工部材間で全面剥離
▲:シーリング材とプライマー間で剥離
なお、モルタル板については、23℃,50%RH×7日間の養生硬化させたもの、あるいはこれを50℃温水に7日間浸漬させたものについて接着性を評価した。
【0017】
【表1】
Figure 0004147007
表1中、
注1)油化シェルエポキシ(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、「エピコート1007」、分子量2900、エポキシ当量1750〜2200
注2)同社製のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、「エピコート828」、分子量380、エポキシ当量184〜194
注3)i−ブチルトリメトキシシラン
注4)N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン
注5)メチルメタクリレートと酢酸ビニルの共重合体樹脂
【0018】
【表2】
Figure 0004147007
【0019】
実施例2
(1)プライマー組成物の調製(二液型)
それぞれ下記配合(部数)からなる主剤成分と硬化剤成分を得る。
Figure 0004147007
【0020】
(2)接着性試験
主剤成分/硬化剤成分=1:1の比率で混合し、実施例1と同様に7種の被施工部材に対し適用したところ、いずれも実施例1と同様に優れた接着プライマー性能が得られた。
【0021】
【発明の効果】
表2の結果から、本発明(実施例1)は、各種の塗装アルミニウムは勿論のこと、特に多孔質を有するモルタル板に対しても、優れた接着性(接着耐水性を含む)を発揮しうることが認められる。
なお、本発明のプライマー組成物は、主に建築用のポリイソブチレン系シーリング材への適用にその有用性が見られるが、これ以外に、その他のシーリング材、更には種々の接着剤、塗料、コーティング材等のプライマーとしても使用しうることは云うまでもない。

Claims (5)

  1. プライマー成分として固形エポキシ樹脂およびアルキルアルコキシシランを含有し、該固形エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型およびF型エポキシ樹脂の内、分子量400〜6000、エポキシ当量400〜6000の60℃以下の温度で固形のものから選ばれ、かつ溶液状態で存在し、
    第3のプライマー成分として、シリケート化合物を添加し、該シリケート化合物がテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、エチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、メチルセロソルブオルソシリケート、n−プロピルオルソシリケートおよびテトラメチルシリケートから選ばれることを特徴とするポリイソブチレン系シーリング材用プライマー組成物。
  2. 固形エポキシ樹脂の硬化剤として、アミノアルコキシシランを配合した請求項1に記載のプライマー組成物。
  3. 硬化剤として、アミノアルコキシシランのアミノ基のケトンブロック体を用いた、一液型である請求項2に記載のプライマー組成物。
  4. 固形エポキシ樹脂を含有する主剤成分と、アミノアルコキシシランおよびアルキルアルコキシシランを含有する硬化剤成分からなる二液型である請求項2に記載のプライマー組成物。
  5. プライマー組成物全量中、固形エポキシ樹脂1〜50重量%およびアルキルアルコキシシラン0.01〜25重量%である請求項1乃至4のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
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