JPH05277435A - ポリオレフイン溶射防食被覆鋼材 - Google Patents

ポリオレフイン溶射防食被覆鋼材

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JPH05277435A
JPH05277435A JP10566692A JP10566692A JPH05277435A JP H05277435 A JPH05277435 A JP H05277435A JP 10566692 A JP10566692 A JP 10566692A JP 10566692 A JP10566692 A JP 10566692A JP H05277435 A JPH05277435 A JP H05277435A
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JP
Japan
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group
steel material
polyolefin
epoxy
coating
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JP10566692A
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English (en)
Inventor
Toshiyuki Sasaki
俊幸 佐々木
Shinichi Funatsu
真一 船津
Makoto Kaga
眞 加賀
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Nippon Paint Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた重防食被覆層をもつポリオレフイン溶
射防食被覆鋼材を提供する。 【構成】 (A)グリシジル基をもつビスフエノール型エ
ポキシ樹脂、(B) アルコキシシリル基とグリシドキシ基
またはグリシジル基をもつエポキシシラン化合物、(C)
アルコキシシリル基と1分子中に2個以上の活性水素を
もつアミノシラン化合物、(D)(C)成分を除くエポキシ硬
化剤、の成分中少なくとも (A)と(B) おびび/または
(C) を含む組成のプライマー層2とポリオレフイン溶射
被覆層3を鋼材1面に形成したポリオレフイン溶射防食
被覆鋼材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフイン溶射に
よる重防食被覆が施されたポリオレフイン溶射防食被覆
鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフイン系樹脂は他の樹脂塗料に
比べて塗膜性能、絶縁抵抗を初めとする防食性が かに
優れているため、鋼材に対する防食被覆材料の1つとし
て有用されている。従来、ポリオレフイン系樹脂を鋼材
に被覆形成するためには、押し出し被覆、シート貼り付
け、流動浸漬、静電粉体塗装等の手段が用いられている
が、それぞれに制約がある。すなわち、押し出し被覆や
シート貼り付けでは複雑形状物への被覆化が不可能とな
り、流動浸漬では予熱に高温を要するうえ、加熱炉の大
きさ、コスト等により被覆鋼材の寸法が制限される。ま
た、静電粉体塗装は薄膜塗装法であって、厚膜の塗装に
は適合しない。このような理由から、複雑形状物に対す
る重防食被覆についてはウレタン塗料等の塗装によって
対処されている。
【0003】近年、プラスチック溶射装置が開発され、
ポリオレフイン系樹脂の溶射被覆もおこなわれるように
なった。この場合には被覆対象となる鋼材を予熱処理し
なければならないとされていたが、特公平2−22710 号
公報や特公平3−16191 号公報には鋼材を予熱せずにポ
リオレフイン系樹脂を粉体溶射塗装する方法が提案され
ている。これらの塗装法では、鋼材面に予め特定の接着
性プライマーを塗布したのちに粉体プラスチックを溶射
塗装する手段が採られているが、鋼材と被覆材料との密
着力が押し出し被覆等と比べてかなり小さくなるという
問題がある。
【0004】一方、特開昭55−75471 号公報には乾燥ま
たは湿潤した平滑性被着体面もしくは多孔性被着体面に
弾性シーリング材を強力に接着させるためのプライマー
として、(A) エポキシ樹脂、(B) エポキシ樹脂用硬化
剤、(C) けい素原子に結合したエポキシ基含有1価有機
残基もしくはメタクリル基含有1価有機残基と、けい素
原子に結合したアルコキシ基、水酸基もしくはハロゲン
原子とを有する有機けい素化合物、(D) 分子中に−N基
もしくは−ON基を有する有機けい素化合物、を必須成
分とする組成物が提案されている。しかしながら、該発
明ではプライマー成分を溶射手段と組み合わせて鋼材の
重防食目的に被覆することについては意図されていな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】鋼材とポリオレフイン
樹脂との密着性が鋼材を予熱しない場合に不十分となる
のは、予熱なしの溶射では予熱ありの場合に比べて溶射
時に樹脂に与えられる熱量が少なくなって濡れ性や反応
性が減退するためと考えられる。したがって、溶射火炎
を大きくしてポリオレフイン樹脂が溶融化するために十
分な熱量を与えれば密着性の向上を図ることができるこ
とになるが、このような方法を採ると溶射火炎による樹
脂の劣化が大きくなって、密着力の改善は期待できても
重防食被覆として充分な物性が確保できない問題が生じ
る。
【0006】本発明は、特定のアルコキシシリル基を含
有するエポキシ樹脂系プライマーを被覆形成することに
より鋼材に対するポリオレフイン系樹脂の溶射濡れ性お
よび反応性を向上させたもので、その目的は予熱なしの
溶射により優れた密着性ならびに物性の重防食被覆層を
備える高性能なポリオレフイン溶射防食被覆鋼材を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるポリオレフイン溶射防食被覆鋼材は、
下記の (A)〜(D) 成分を、(A),(B)および(C) 、(A),
(B),(C) および(D) 、(A) および(C) 、(A),(C) および
(D) 、もしくは(A),(B) および(D) のいずれかにより成
分組合せした混合物を主成分とし、1種または2種以上
のアルコキシシラン化合物のアルコキシシリル基の濃度
が樹脂および硬化剤固形分に対し0.01〜0.3mol/100g
で、且つエポキシ基と活性水素の反応当量が0.6/1 〜1.
4/1 の範囲にある組成を有するプライマー層を下地処理
を施した鋼材に被覆形成し、その上面にポリオレフイン
溶射被覆層を形成してなることを構成上の特徴とする。 (A)1分子中に1〜2個のグリシジル基を有するビスフ
エノール型エポキシ樹脂 (B)1価、2価または/および3価のアルコキシシリル
基を有し、グリシドキシ基またはグリシジル基を有する
エポキシシラン化合物 (C)1価、2価または/および3価のアルコキシシリル
基を有し、1分子中に2個以上の活性水素を有するアミ
ノシラン化合物 (D) (C)成分を除くエポキシ樹脂硬化剤
【0008】本発明のプライマー組成となる (A)成分
は、ビスフエノールA、ビスフエノールF、ビスフエノ
ールAD等のビスフエノール類とエピクロルヒドリン等
のエピハロヒドリン類の縮合反応により合成される。通
常、1分子あたり2個のグリシジル基を有するビスフエ
ノール類のグリシジルエーテルを主成分としており、こ
れ以外に1分子あたり1個のグリシジル基を有するモノ
グリシジルエーテルを少量含むエポキシ樹脂である。該
エポキシ樹脂は、下記の一般式により示される(式中、
R1、R2は水素、メチル基、エチル基またはCF3 を示し、
n は0〜9である)。
【0009】
【化1】
【0010】このエポキシ樹脂は、例えば「エピコー
ト」〔油化シェルエポキシ(株)製〕、「エポトート」
〔東都化成(株)製〕、「アラルダイト」(チバガイギ
ー社製)、「エピクロン」〔大日本インキ化学工業
(株)製〕、「エポミック」〔三井石油化学(株)製〕
などの商品名で市販されている。ビスフエノールAから
誘導されるエポキシ樹脂は「エピコート828 」、ビスフ
エノールFから誘導されるエポキシ樹脂は「エピコート
807 」であり、ビスフエノールADから誘導されるエポ
キシ樹脂としては「エポミックR710H 」が挙げられる。
【0011】本発明で用いることができるエポキシ樹脂
は、エポキシ当量が 180〜2500、数平均分子量が 320〜
3000のものが適当である。例えば油化シェルエポキシ
(株)製のエポキシ樹脂であれば、「エピコート828 」は
n=0、平均分子量380 、エポキシ当量 184〜194 、
「エピコート1001」は n=2.0 、平均分子量900 、エポ
キシ当量 450〜500 、「エピコート1004」は n=3.7 、
平均分子量1400、エポキシ当量 900〜1000、「エピコー
ト1007」は n=8.8 、平均分子量2900、エポキシ当量17
50〜2100である。本発明の目的により好適なエポキシ当
量の範囲は 180〜1500である。エポキシ当量が 180未満
では分子中のグリシジル基が1分子あたり1個のものが
多くなるためプライマー被膜の架橋密度が低くなり、耐
水性が発現しない。またエポキシ当量が1500〜2500では
耐水性は満足する反面、硬化反応が緩慢となって十分に
硬化した被膜を得るために高温下での加熱硬化が必要と
なる。エポキシ当量が2500以上になると架橋間分子量が
大きくなる関係で架橋密度が低くなり、耐水性が得られ
なくなる。なお、分子量の異なるビスフエノール型エポ
キシ樹脂を2種以上併用してもよい。
【0012】上記のビスフエノール型エポキシ樹脂に
は、架橋密度を高めて耐熱性や高温時の物性を確保する
ため、必要に応じてノボラック型エポキシ樹脂、フエノ
ールノボラック型エポキシ樹脂またはクレゾールノボラ
ック型エポキシ樹脂のような多官能エポキシ樹脂を併用
することができる。
【0013】(B) 成分となるグリシドキシ基またはグリ
シジル基を有するエポキシシラン化合物は、モノエポキ
シシランとして下記の一般式(式中、R3はグリシドキシ
基またはグリシジル基、R4はアルキル基またはフエニル
基、R5は炭素数1〜6の有機残鎖、n は0または1)で
示されるものである。
【0014】
【化2】
【0015】モノエポキシシランのうち3価のアルコキ
シシリル基を有するものとしては、具体的にグリシドキ
シメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリ
エトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシ
シラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グ
リシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルトリアセトキシシラン、δ−グリシドキシ
ブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルト
リエトキシシラン、グリシジルメチルトリメトキシシラ
ン、グリシジルメチルトリエトキシシラン、β−グリシ
ジルエチルトリメトキシシラン、β−グリシジルエトキ
シトリエトキシシラン、γ−グリシジルプロピルトリメ
トキシシラン、γ−グリシジルプロピルトリエトキシシ
ラン、γ−グリシジルプロピルトリ(メトキシエトキ
シ)シラン、γ−グリシジルプロピルトリアセトキシシ
ラン等が挙げられる。2価のアルコキシシリル基を有す
るものとしては、グリシドキシメチル(エチル)ジメト
キシシラン、グリシドキシメチル(フエニル)ジメトキ
シシラン、グリシドキシメチル(ビニル)ジメトキシシ
ラン、グリシドキシメチル(ジメチル)メトキシシラ
ン、β−グリシドキシエチル(メチル)ジメトキシシラ
ン、β−グリシドキシエチル(ジメチル)メトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシ
ラン等を挙げることができる。また、1価のアルコキシ
シリル基を有するものとしては、γ−グリシドキシプロ
ピル(ジエチル)メトキシシラン、γ−グリシドキシプ
ロピル(ジメチル)メトキシシラン、δ−グリシドキシ
ブチル(エチル)ジメトキシシラン、δ−グリシドキシ
ブチル(ジメチル)メトキシシラン等が挙げられるが、
好ましくはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
等を適用することである。
【0016】本発明のプライマー組成を構成する (C)成
分のアミノシラン系硬化剤は、下記の一般式(式中、R6
は水素、アルキル基、フエニル基またはアミノアルキル
基、R7は2価の炭化水素、R8はアルキル基、フエニル基
またはアルコキシル基、R9は炭素数1〜6の有機残鎖を
表す)で示されるものである。
【0017】
【化3】
【0018】この種のアミノシラン化合物としては、γ
−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシ
ラン、アミノエチルトリエトキシシラン、γ−(アミノ
エチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ア
ミノプロピルメチルメトキシシラン、β−ポリエチレン
テトラアミントリメトキシシラン、β−ポリエチレンテ
トラアミントリメトキシシラン等がある。また、これら
のアミノシラン類を酸アミドないしはカルボン酸ジエス
テルやフエニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジル
エーテル等のモノエポキシで変性しても、活性水素が2
個以上残存する範囲内であれば何ら差し支えない。本発
明の目的には、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピ
ルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミ
ノプロピルメチルジメトキシシラン等が好適に使用され
る。
【0019】(D) 成分は上記の (C)成分を除くエポキシ
樹脂硬化剤で、脂肪族アミンアダクト、芳香族アミンア
ダクト、複素環式アミンアダクト、ポリアミド樹脂の1
種もしくは2種以上の混合物が用いられる。このうち脂
肪族アミンアダクトとしては、ジエチレントリアミン、
トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、
ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチルアミノ、プロ
ピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリ
エーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン、ビス(4
−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−
3メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ビスアミノ
メチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂肪族
アミン類を2官能のエポキシ化合物や1官能のエポキシ
化合物と一部反応させたものが挙げられる。芳香族アミ
ンアダクトとしては、ジアミノジフエニルメタン、アニ
リン−ホルマリン縮合物、m−フエニレンジアミン、ジ
アミノジフエニルスルホン、トルエンジアミン等の芳香
族アミン類を2官能または1官能のエポキシ化合物と一
部反応させたものが挙げられる。複素環式アミンアダク
トとしては、N−アミノピペラジン、ビスアミノプロピ
ルポリテトラヒドロフランオレインアミン、3,9−ビ
ス(3−アミノプロピル)2,4,8,10テトラオキサ
スピロ[5,5]ウンデカン等の複素環式ジアミン類に2官
能または1官能のエポキシ化合物を一部反応させたもの
を挙げることができる。また、ポリアミド樹脂は、前記
の脂肪族、芳香族または複素環式のアミン等に、脂肪族
の2量体を一部反応させたものである。このほか、脂肪
族、芳香族または複素環式のアミンアダクトに一部脂肪
酸の2量体を反応させたものでもよい。
【0020】本発明のプライマー組成物は、ベース樹脂
としてビスフエノール型エポキシ樹脂を必須成分とし、
ベース樹脂および硬化剤の少なくとも一方にアルコキシ
シリル基を含有させる点に特徴付けられる。したがっ
て、主成分は次の5種類の成分組合せから選択される。 (A),(B) および(C) 成分の混合物 (A),(B),(C) および(D) 成分の混合物 (A) および(C) 成分の混合物 (A),(C) および(D) 成分の混合物 (A),(B) および(D) 成分の混合物
【0021】また、本発明ではプライマー中に含まれる
1種または2種以上のアルコキシシラン化合物のアルコ
キシシリル基の濃度が樹脂および硬化剤固形分に対して
0.01〜0.30mol/100gであることが要件となる。この濃度
が0.01mol/100gを下廻ると、予熱なしでは十分な接着強
度が得らず、0.30mol/100gを越えると初期の接着強度は
十分となるものの、耐水性試験後の接着強度の低下が著
しくなる。より好ましい範囲は0.02〜0.25mol/100g、更
に最適な範囲は0.10〜0.20mol/100gである。
【0022】さらに本発明のプライマー組成物は、エポ
キシ樹脂のエポキシ基とアミノ化合物の活性水素の反応
当量が0.6/1 〜 1.4/1の範囲にあることが要件となる。
この反応当量が0.6/1 未満になると親水性のアミノ基が
未反応状態で多く残留するため耐水性が悪化し、他方、
1.4/1 を越えると未反応エポキシ樹脂の残留が多くな
り、架橋密度の低くなるために耐水性が減退する。
【0023】上記の組成からなるプライマー成分には、
必要に応じて着色顔料、体質顔料、防錆顔料等を分散し
てもよい。通常は必要ではないが、有機溶媒を用いて所
望の粘度に調整することもできる。また、エポキシ基、
アミノ基またはアルコキシシリル基と反応しない限りに
おいて、表面調整剤、硬化促進剤あるいは消泡剤等の添
加剤を加えることも差し支えない。プライマー組成物に
顔料等の分散化が必要な成分を配合する場合には、エポ
キシ成分とアミン成分の一方または両方に加えることが
でき、分散は通常用いられるロールミル、サンドグライ
ンドミル、ボールミル等が適用される。分散の粒度につ
いては、必要に応じて所望の範囲に設定すればよい。
【0024】本発明の基材となる鋼材は、例えば流体輸
送用鋼管、構造用鋼管などの鋼管類、鋼矢板、鋼管矢板
のような土木用鋼材類、H型鋼あるいはこれから構成さ
れる各種構造部材、平板類などであるが、これらに限定
されるものではない。
【0025】これら鋼材は所定の下地処理を施したの
ち、上記したプライマー組成物を塗布してプライマー層
を被覆形成し、その上面にポリレフイン溶射被覆層を形
成して本発明のポリオレフイン溶射防食被覆鋼材を得
る。溶射用のポリオレフイン粉体は、溶射火炎による劣
化を防止するために適切な酸化防止剤を含有し、かつ溶
射火炎によって十分に溶融するものであれば特に限定は
なく、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−
ヘキセン等の単一重合体のほか、接着性を改善するため
に酢酸ビニル、アクリル酸、無水マレイン酸等とエチレ
ン、プロピレン等のオレフイン類とを共重合させた接着
性ポリオレフイン粉体が好ましく使用される。
【0026】図1は、本発明によるポリオレフイン溶射
防食被覆鋼材の被覆形態を模式的に示した略断面図で、
1は鋼材、2はプライマー層、3はポリオレフイン溶射
被覆層である。プライマー塗装は、鋼材1をサンドブラ
スト、グリットブラスト等の下地処理により清浄化した
のちにおこなう。その塗装方法、塗装膜厚については特
に限定されないが、通常はスプレー、刷毛、ローラー等
で乾燥膜厚が10〜100μm になるように塗装される。プ
ライマー層2が硬化したら、ポリオレフイン粉体を溶射
し、ポリオレフイン溶射被覆層3を形成する。プライマ
ー層2の硬化は常温でも十分に可能であるが、必要に応
じ熱風等で強制的に硬化させてもよい。また、粉体溶射
に際しては事前に鋼材1を予熱する必要ないが、冬季の
低温環境などでポリオレフイン溶射層3の十分な溶融が
達成されないときには若干加熱することが好ましい結果
を与える。この場合の鋼材加熱温度は、50〜200 ℃の範
囲に設定することが望ましい。ポリオレフイン層3を形
成するための溶射方法にもとくに限定はないが、例えば
特公昭63−31719 号公報に記載されている空気とプロパ
ンの混合ガスによって形成した溶射火炎中に冷却エアゾ
ーンを設けた粉体溶射装置を用いる際には、以下の条件
を適用することが好ましい。 燃焼空気圧/プロパンガス圧: 2.5〜4.5 冷却空気圧/プロパンガス圧: 3.3〜5.5 ( 燃焼空気圧+冷却空気圧) /プロパンガス圧: 6.5〜
9.5 ノズルから鋼材までの距離: 200〜800mm ポリオレフイン溶射被覆層3の膜厚については特に限定
されないが、好ましくは2mm以上、より好ましくは2〜
5mmである。
【0027】
【作用】本発明のプライマー組成を構成する (A)成分、
すなわちグリシジル基を有するエポキシ樹脂は、常温な
いし中温 (約10〜100 ℃) 下で活性水素を有するアミノ
化合物と良好に硬化反応を進行させるために機能する。
脂環式のエポキシ化合物のような他のエポキシ樹脂では
常温ないし中温において通常のアミン系硬化剤により硬
化反応を進行させることができず、本発明の目的には適
合しなくなる。またビスフエノール型エポキシ−アミン
の硬化樹脂は極めて強靭で鋼材との接着性が良好であ
り、130 ℃以上に予熱するとポリオレフイン溶射層と十
分に接着させることができる。しかしながら、従来技術
においては予熱せずにポリオレフインを溶射した場合に
実用に耐える接着強度は得られない。
【0028】本発明ではプライマー組成中に存在するア
ルコキシシリル基が、予熱しなくても溶射により到達す
る温度でプライマーの活性点がポリオレフインの活性点
と十分に相互作用を営むために有効機能し、この作用を
介して密着性が極めて向上する。すなわち、アルコキシ
シリル基は原子径の大きなけい素原子に極性の大きなア
ルコキシ基が結合しており、プライマー表面で他の官能
基に比較して高い自由度を有しており、これが大きな極
性と相俟ってポリオレフインの活性点と強固な結合を形
成するものと考えられる。
【0029】この場合、1つのけい素原子に結合するア
ルコキシ基の数は1〜3個の範囲にあれば足りる。ま
た、アルコキシシリル基はプライマーに固定されていな
ければ接着強度は現出せず、ビスフエノールのエポキシ
あるいはアミン系エポキシ樹脂硬化剤との反応点を有し
ていなければならない。これらの反応点として、グリシ
ドキシ基、グリシジル基またはアミノ基が有効に作用す
る。
【0030】したがって、本発明で特定された (A)〜
(D) 成分と成分組合せは目的とする効果を達成するため
に必須の要件で、同時にアルコキシシリル基の濃度なら
びにエポキシ基と活性水素の反応当量を一定範囲に設定
したプライマー組成物による塗装とポリオレフイン溶射
塗装を施すことにより優れた耐水性と長期間に亘り剥離
現象を生じない安定したポリオレフイン溶射防食被覆鋼
材の提供が可能となる。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比しなが
ら具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に
限定されるものではない。
【0032】実施例1〜16、比較例1〜7 (1) プライマー組成物の調製 下記の (A)〜(D) 成分を適宜に成分組合せて混合し、表
1(実施例)および表2(比較例)に示す組成(配合比
=重量部)のプライマー組成物を調製した。 (A) 成分−ビスフエノール型エポキシ樹脂:(平均分子
量=数平均分子量) (A-1) エポキシ当量190 、平均分子量380 、重合度0.0
「エピコート828 」〔油化シェルエポキシ(株)製〕 (A-2) エポキシ当量460 、平均分子量900 、重合度2.0
「エピコート1001」〔油化シェルエポキシ(株)製〕 (A-3) エポキシ当量950 、平均分子量1400、重合度3.7
「エピコート1004」〔油化シェルエポキシ(株)製 (A-4) エポキシ当量1900、平均分子量2900、重合度8.8
「エピコート1007」 (B) 成分−モノエポキシシラン化合物: (B-1) γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(分子量236)「SH6040」〔東レ・ダウコーニング・シリ
コーン(株)製〕 (B-2) γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラ
ン(分子量236)「SH6023」〔東レ・ダウコーニング・シ
リコーン(株)製〕
【0033】(C) 成分−アミノシラン化合物: (C-1) γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメ
トキシシラン(分子量222,活性水素数3)「SH6020」
〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕 (C-2) γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチル
ジメトキシシラン(分子量206,活性水素数3)「SH602
3」〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕 (C-3) N−フエニル−γ−アミノプロピルトリメトキシ
シラン(分子量322,活性水素数1)「KBM-573 」〔信越
化学工業(株)製〕 (D) 成分−エポキシ樹脂硬化剤: 脂肪族アミンアダクト(活性水素数50〜60) 「ニッペエ
ポキシプライマーPE172 硬化剤) 〔日本ペイント(株)
製〕
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】(2) 塗装の条件 グリットブラストによる下地処理を施した鋼板( 150×
75×9mmおよび 300×100 ×9mm) に表1および表2の
プライマー組成物を乾燥膜厚が50μm になるようにエア
レススプレーで塗布し、室温下に3日間放置してプライ
マー層を硬化させたのち、無水マレイン酸とエチレンの
共重合体である接着性ポリエチレン粉体〔「EB02B 」宇
部興産 (株) 製〕を膜厚3mmに溶射した。溶射機には、
空気とプロパンガスとの混合ガスによって炎を燃焼さ
せ、溶射火炎中に冷却エアゾーンを設けた粉体溶射装置
〔小野田セメント(株)製「CCT300」〕を用い、次の溶
射条件で溶射塗装をおこなった。 プロパンガス圧: 0.4〜0.5 kgf/cm2 燃焼空気圧: 1.4〜1.8 kgf/cm2 冷却空気圧: 1.8〜2.2 kgf/cm2 ノズルから鋼材までの距離: 450〜650mm 粉体吐出量: 140〜220 g/min.
【0037】(3) 塗膜性能の評価試験 上記の塗装を施した試験片につき、初期 (浸漬前) 、60
℃×60日塩水浸漬後および60℃×60日温水浸漬後におけ
る各ピール試験、60℃×5日および25℃×60日後におけ
る陰極剥離試験をおこなった。その結果を表3〜表6に
示した。なお、試験には次の測定方法を用いた。
【0038】ピール強度試験:DIN30670 に準拠し、
試験片の被覆層に鋭利なカッターで1cm幅の帯状に鋼材
に達する切り目を入れ、試験片に対し90度の角度になる
ように引張り試験〔試験機「テンシロン」東洋ボールド
ウイン(株)製〕をおこない、接着強度を測定する。 陰極剥離試験:試験片の被覆層に直径5mmの素地に達す
る穴をあけ、3%食塩水中でカーボン電極を用いてAg/A
gCl 電極と鋼材の電位差が−1.5Vになるように印加電圧
を加え、液温を25℃および60℃に保持する。処理後に鋼
材面のポリエチレン被覆層を強制的に除去し、初期の穴
周囲からの剥離幅を測定する。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】表3は成分組合せを変動させた場合の評価
結果を対比したものである。本発明の要件を満たす実施
例1〜5は良好な結果を示したが、アルコキシシリル基
を含有しない比較例1、活性水素が1個のアミノシラン
化合物を用いた比較例2ではピール強度と耐陰極剥離性
が大きく後退している。表4はアルコキシシリル基の濃
度を変えた場合の評価結果を対比したものである。濃度
範囲が0.01〜0.3mol/100g 内にある実施例6〜9では良
好な結果を示したが、濃度が低い比較例3では初期ピー
ル強度、耐水試験後のピール強度が低下し、濃度が過剰
な比較例4、5では耐水試験後のピール強度、耐陰極剥
離性が不十分となる。表5はエポキシ−アミンの反応当
量を変えた場合の評価結果を対比したものである。本発
明の範囲内では良好な結果を示しているが、範囲を外れ
た比較例6、7では耐水試験後のピール強度、耐陰極剥
離性が低下していることが認められる。表6は本発明の
範囲内でエポキシ樹脂を変えた実施例であるが、いずれ
も良好な結果が得られている。
【0044】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によればベース樹
脂または硬化剤の少なくとも一方に特定のアルコキシシ
リル基を含有するエポキシ系樹脂プライマー層とポリオ
レフイン溶射被覆層とを鋼材面に形成することにより重
防食被覆として十分な性能をもつ苛酷な海洋環境等でも
充分な耐久性を有するポリオレフイン溶射防食被覆鋼材
を提供することが可能となる。そのうえ、予熱なしのポ
リオレフイン溶射で密着性のよい被膜形成ができ、複雑
形状の鋼材被覆も円滑におこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオレフイン溶射防食被覆鋼材の被
覆形態を模式的に示した略断面図である。
【符号の説明】 1 鋼材 2 プライマー層 3 ポリオレフイン溶射被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B32B 15/08 103 7148−4F (72)発明者 加賀 眞 東京都品川区南品川4丁目1番15号 日本 ペイント株式会社東京事業所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の (A)〜(D) 成分を、(A),(B) およ
    び(C) 、(A),(B),(C) および(D) 、(A) および(C) 、
    (A),(C) および(D) 、もしくは(A),(B) および(D) のい
    ずれかにより成分組合せした混合物を主成分とし、1種
    または2種以上のアルコキシシラン化合物のアルコキシ
    シリル基の濃度が樹脂および硬化剤固形分に対し0.01〜
    0.30mol/100gで、且つエポキシ基と活性水素の反応当量
    が 0.6/1〜1.4/1 の範囲にある組成を有するプライマー
    層を下地処理を施した鋼材に被覆形成し、その上面にポ
    リオレフイン溶射被覆層を形成してなることを特徴とす
    るポリオレフイン溶射防食被覆鋼材。 (A)1分子中に1〜2個のグリシジル基を有するビスフ
    エノール型エポキシ樹脂 (B)1価、2価または/および3価のアルコキシシリル
    基を有し、グリシドキシ基またはグリシジル基を有する
    エポキシシラン化合物 (C)1価、2価または/および3価のアルコキシシリル
    基を有し、1分子中に2個以上の活性水素を有するアミ
    ノシラン化合物 (D) (C)成分を除くエポキシ樹脂硬化剤
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