JP2004042031A - 金属の防錆方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属の表面に皮膜層を形成する金属の防錆方法であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける酸素透過係数が2 ml−mm/m2・day・MPa以下であることを特徴とする金属の防錆方法、および該防錆方法を使用して製造した有機被覆鋼板。
【選択図】 無
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、家電、建材、橋梁等に使用される鋼板、鋼材に関し、防錆・耐食効果が高く、かつ環境・人体に有害なクロム、鉛、カドミウム、水銀等の重金属を全く含まない防錆方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家電製品用、自動車用、建材用等に用いられる鋼板・鋼材には、従来より亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食(防錆)性を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板・鋼材が広く用いられている。この方法は耐食性に優れ、比較的容易に行うことができる経済的な方法である。
【0003】
しかし、クロメート処理法は6価クロムを使用するものであり、処理工程においてクロム酸塩が人体に悪影響を与えること、廃水処理後のクロムスラッジの廃棄処理が困難であること、処理後の製品から6価クロムが溶出する恐れがあること等、種々の問題を有している。
このため、各種鋼板の錆の発生を防止するために、クロメート処理によらない無公害な処理技術が数多く提案されている。例えば、タンニン酸を使用する方法(例えば、特許文献1参照。)や水系樹脂と多価フェノールカルボン酸の混合組成物を用いる方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。しかしながら、これらの従来技術は酸素や水などの腐食因子に対するバリア性が十分なものではなく、長期にわたる耐食性が十分なものではなかった。これらの問題を解決する方法として、エポキシ樹脂などの皮膜形成有機樹脂とヒドラジン誘導体との反応生成物を皮膜とする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、確かにエポキシ樹脂はウレタン樹脂やアクリル樹脂などの他の熱硬化性樹脂に比べ比較的高い酸素バリア性を示すものの、そのレベルは十分なものではなく、さらに長期にわたる鋼板・鋼材の非クロム系防錆・防食方法が要求されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭51−71233号公報
【特許文献2】
特開平8−325760号公報
【特許文献3】
特開2000−119879号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記問題点を解決し、皮膜中にクロム等の重金属を含むことなく著しく優れた耐食性が発現する鋼板・鋼材等の金属の防錆方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、鋼板や鋼材などの金属の表面に、皮膜層として特定のエポキシ樹脂と特定エポキシ樹脂硬化剤を主成分として形成される高酸素バリア性硬化膜層を用いることにより、金属への酸素の透過が遮断され、幅広い温度や湿度環境下で防錆、防食性能に著しく優れた有機被覆鋼板・鋼材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、金属の表面に皮膜層を形成する金属の防錆方法であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける酸素透過係数が2 ml−mm/m2・day・MPa以下であることを特徴とする金属の防錆方法、および該防錆方法を使用して製造した有機被覆鋼板に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、金属としては鉄、鋼、亜鉛、銅、錫、鉛など一般に公知のものが、またその形態についても公知の形態が適用され得るが、炭素鋼、低合金鋼等を形鋼、鋼板、鋼管杭、原油・重質油輸送用、天然ガス輸送用の鋼管、金属缶などに加工した鋼材であり、屋内、屋外、地中、海水中等で使用される鋼材が好ましい。またこれらの鋼材としては、冷延鋼、熱延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、電気亜鉛めっき鋼、溶融合金化亜鉛めっき鋼、アルミめっき鋼、アルミ−亜鉛合金化めっき鋼、ステンレス鋼など一般に公知の鋼材が使用できる。鋼材は、使用前に、必要により公知の方法(例えば、ショットブラスト処理、グリッドブラスト処理、サンドブラスト処理等の物理的手段、または酸洗、アルカリ脱脂等の化学的手段、あるいはそれらの組み合わせ)で表面処理をすることができる。また、下地処理として必要に応じてリン酸亜鉛処理を行うことも可能であるが、リン酸亜鉛処理を省略した場合には、工程が1つ省略され経済的である。
【0009】
本発明の方法で形成される皮膜層について以下に説明する。本発明における皮膜層はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物により形成され、その23℃、相対湿度60%RHにおける酸素透過係数が2 ml−mm/m2・day・MPa以下、好ましくは1 ml−mm/m2・day・MPaであることを特徴としている。ここで酸素透過係数とは1MPaの酸素分圧差下で1mm厚のサンプル1平方メートルを24時間かけて透過する酸素の量を示す値である。
【0010】
また、前記エポキシ樹脂組成物中は、(1)式に示される骨格構造を30重量%以上含有することが好ましい。該骨格構造を30重量%以上にすることにより、良好なガスバリア性が発現する。
【化2】
【0011】
以下に、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるエポキシ樹脂は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現による高い防錆、防食機能の発現を考慮した場合には芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0014】
さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0015】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。
ここで、前記グリシジルアミン部位は、キシリレンジアミン中のジアミンの4つの水素原子と置換できる、モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位を含む。モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位の各比率はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主としてテトラ−グリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が得られる。
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましいい。
【0016】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよく、ポリマー被覆鋼材の使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
【0017】
具体的には、ポリアミン類としてはエチレジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロロヒドリンとの反応生成物、およびこれらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、およびこれらのポリアミン類とのとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、炭素数1〜8の一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などが使用できる。
【0018】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0019】
酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらに対応するカルボン酸などが使用できる。
【0020】
高いガスバリア性および金属との良好な接着性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン(ポリアミン)
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0021】
また、炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。
【0022】
また、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンと、該ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応における反応比は、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.3〜0.95の範囲が好ましい。
【0023】
反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性が発現し、皮膜層の防錆、防食機能が著しく向上する。また金属への良好な接着強度も得られる。さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂硬化剤を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0024】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0、好ましくは0.8〜2.0の範囲である。
【0025】
皮膜層を金属の表面に形成する場合には、金属の表面の湿潤を助けるために本発明のエポキシ樹脂組成物の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK348、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0026】
また、本発明の方法で形成される皮膜層の酸素バリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。高い酸素バリア性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0027】
さらに、本発明の方法で形成される皮膜層の金属に対する接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0028】
さらに、本発明の方法で形成される皮膜層を形成するエポキシ樹脂組成物中には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えばN−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0029】
本発明の皮膜層の層厚は1〜100μm程度、好ましくは3〜50μmが実用的である。1μm未満であると十分な耐食性が発現せず、100μmを越えるとその膜厚の制御が困難になる。
【0030】
本発明の防錆方法を実施する場合には、塗布法、浸漬法、スプレー法等任意の方法の中から金属の形態などに応じて適宜選択できる。塗布法としては、ロール塗布、しごき塗り、刷毛塗り、流し塗りなど公知の方法が採用できる。またこれらの処理後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。樹脂組成物の塗布後、必要に応じて加熱装置により皮膜層の硬化反応を完結させても良い。加熱装置による金属の加熱方法はドライヤー、高周波誘導加熱、遠赤外線加熱、ガス加熱など従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。加熱処理は到達材温で50〜300℃、好ましくは80〜250℃の範囲で行うことが望ましい。
【0031】
【実施例】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0032】
エポキシ樹脂硬化剤A
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.50molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0033】
エポキシ樹脂硬化剤B
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.67molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0034】
本発明の方法により作製された塗装鋼板の防錆性能を以下の方法で評価した。結果を表1および表2に示す。
【0035】
<防錆性能評価方法1>
実施例1
冷間圧延鋼板(40×150×6.0mm)をグリッドブラスト処理した。メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD−X)を50重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aを33重量部、アクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK348)を0.02重量部加え、よく攪拌した。このエポキシ樹脂組成物を、鋼板の表面に膜厚約90μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で30分間硬化させ皮膜を形成させた。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は0.25 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は54.3重量%であった。
【0036】
実施例2
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを45重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は0.20 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は55.6重量%であった。
【0037】
実施例3
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン340)を35重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は0.40 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は53.5重量%であった。
【0038】
比較例1
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は4.2 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は20.6重量%であった。
【0039】
比較例2
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン328)を33重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は8.4 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は20.4重量%であった。
【0040】
比較例3
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりに変性複素環状アミン(ジャパンエポキシレジン(株)製;エポメートB002)を50重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は36 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は0.0重量%であった。
【0041】
比較例4
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン340)を25重量部およびポリオキシアルキレンアミン(ハンツマン社製;ジェファーミンT−403)を11重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数は12 ml−mm/m2・day・MPa、皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は14.6重量%であった。
【0042】
塗装した鋼板について、塗板の非塗装部分を錆止め塗料で被覆して35℃の環境下で塩水噴霧(JIS K 5400に準拠)を行い、塗膜外観を目視判定により4段階で評価した。
Ex:全く変化無し、G:1,2点の点錆、F:3,4点の点錆、P:5点以上点錆
【0043】
【表1】
【0044】
<防錆性能評価方法2>
実施例4
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD−X)を50重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aを33重量部、アクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製; BYK348)を0.02重量部加え、よく攪拌した。これを冷間圧延鋼板(40×150×6.0mm)表面に膜厚約40μmになるようバーコーターを用いて塗布し、120℃で10分および180℃で8分硬化させ皮膜を形成させた。皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は54.3重量%であった。
【0045】
実施例5
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製; ガスカミン340)を35重量部用いた以外は実施例7と同様の方法で作製した。皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は53.5重量%であった。
【0046】
比較例5
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製; エピコート828)を50重量部、メタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製; ガスカミン328)を13重量部、変性複素環状アミン(ジャパンエポキシレジン(株)製; エポメートB002)を6重量部用いた以外は実施例7と同様の方法で作製した。皮膜層(エポキシ樹脂硬化物)中の骨格構造(1)の含有率は14.6重量%であった。
【0047】
実施例4、5および比較例5で得られた塗装鋼板について、塗板の非塗装部分を錆止め塗料で被覆し、塗装部分において対角線上に傷を入れた後、35℃の環境下で塩水噴霧(JIS K 5400に準拠)を行い、傷からの錆の進行距離(mm)を計測した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明は、製造時の処理液や製品中の皮膜成分中に6価クロムを全く含まず、かつ高酸素バリア性エポキシ樹脂組成物を使用することで金属への酸素の透過を著しく遮断しており、金属に対する防錆、防食性能に著しく優れた非クロム系防錆方法である。本発明の防錆方法を使用することにより、例えば建材、電気機器、缶材、自動車、橋梁等に使用される鋼材の使用寿命の長期化が可能となる。
Claims (9)
- 金属の表面に皮膜層を形成する金属の防錆方法であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける酸素透過係数が2 ml−mm/m2・day・MPa以下であることを特徴とする金属の防錆方法。
- 前記酸素透過係数が1 ml−mm/m2・day・MPa以下である請求項1に記載の金属の防錆方法。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の金属の防錆方法。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂および/またはビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜3のいずれかに記載の金属の防錆方法。
- 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたテトラグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜3のいずれかに記載の金属の防錆方法。
- 前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物である請求項1〜6のいずれかに記載の金属の防錆方法。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体 - 前記(B)多官能性化合物がアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体である請求項7に記載の金属の防錆方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の金属の防錆方法を使用して製造した有機被覆鋼板。
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