JP4264695B2 - コンクリートの防食方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物、橋梁等に使用されるコンクリートやモルタルの二酸化炭素による腐食を防ぐ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリートは耐久性に優れた材料として知られている。通常、コンクリート内部の鉄筋はアルカリ環境下にあるため腐食から保護されている。しかしながら、空気中の二酸化炭素の浸透によりコンクリートが中性化すると、内部の鉄筋の腐食が促進される。鉄筋が腐食するとコンクリート構造物の強度が大幅に低下するのみならず、体積膨張によるコンクリートの破壊をももたらすことがある。
コンクリートの保護を目的に従来より塗料が塗布されてきたが、通常使用されるウレタン系やアクリル系の塗料では酸素や二酸化炭素の遮蔽性が充分ではないため、コンクリートの中性化防止や内部鉄筋の腐食防止の効果が不充分であった。
【0003】
例えば、特開平7-118599号公報には、コンクリートの炭酸化防止のための高い二酸化炭素遮蔽性能と結露防止のための高い水蒸気透過性能を有するフッ化ビニルとビニルアルコールとの共重合体からなる塗料用樹脂および塗料が提案されているが、報告されている二酸化炭素透過係数は25℃にて1.6〜138cc-mm/m・day・atmであり、その二酸化炭素遮蔽能力は長期にわたるコンクリートの中性化防止能の発現には充分とは言い難く、充分な効果を発現させるためには厚い塗膜を必要とした。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、コンクリートの中性化や内部鉄筋の腐食を長期にわたって抑制できる優れたコンクリートの防食方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、コンクリートの表面に、皮膜層として特定のエポキシ樹脂と特定エポキシ樹脂硬化剤を主成分として形成される高二酸化炭素バリア性硬化膜層を用いることにより、コンクリートへの二酸化炭素の透過が遮断され、さらには内部鉄筋の腐食が抑制された、極めて防食性に優れたコンクリート構造物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、コンクリートの表面に皮膜層を形成するコンクリートの防食方法であって、該皮膜層がエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、かつ該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける二酸化炭素透過係数が0.1cc-mm/m・day・atm以下であることを特徴とするコンクリートの防食方法に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるコンクリートとは、セメントに、水、砂利、砂等を混合し、セメントの水和反応により硬化して得られるものであり、コンクリート、モルタルの区別無く適用できる。本発明のコンクリートの防食方法はコンクリートのみでなく、内部に鉄筋を含んだ構造物に対しても効果的である。
【0008】
本発明の方法で形成される皮膜層について以下に説明する。本発明における皮膜層はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物により形成され、その23℃、相対湿度60%RHにおける二酸化炭素透過係数が0.1 cc-mm/m・day・atm以下、好ましくは 0.05 cc-mm/m・day・atmであることを特徴としている。ここで二酸化炭素透過係数とは1気圧の二酸化炭素分圧差下で1mm厚のサンプル1平方メートルを24時間かけて透過する二酸化炭素の量を示す値である。
【0009】
また、コンクリートに被覆を施す場合、充分コンクリートが乾燥していれば問題はないが、乾燥が不充分だとコンクリートから蒸発した水分が塗膜を透過できず、コンクリートと塗膜の間で剥離を起こす原因となったり、寒冷地では凍結する問題がある。本発明のエポキシ組成物は0.4〜1.0g・mm/m2・dayと適度な水蒸気透過係数を有し、二酸化炭素の遮蔽性と水蒸気の透過性とのバランスが良好である。
【0010】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、(1)式に示される骨格構造を30重量%以上含有することが好ましい。該骨格構造を30重量%以上にすることにより、良好なガスバリア性が発現する。
【化2】
Figure 0004264695
【0011】
以下に、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるエポキシ樹脂は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれからなるものであってもよいが、高いガスバリア性の発現による高い防錆、防食機能の発現を考慮した場合には芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0014】
さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0015】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。
ここで、前記グリシジルアミン部位は、キシリレンジアミン中のジアミンの4つの水素原子と置換できる、モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位を含む。モノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラ−グリシジルアミン部位の各比率はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主としてテトラグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0016】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましいい。
【0017】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよく、ポリマー被覆鋼材の使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
【0018】
具体的には、ポリアミン類としてはエチレジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルデンジアミンなどの脂環式アミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、エピクロロヒドリンとの変性反応物、およびこれらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、およびこれらのポリアミン類とのとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、炭素数1〜8の一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などが使用できる。
【0019】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0020】
酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらに対応するカルボン酸などが使用できる。
【0021】
高いガスバリア性およびコンクリートとの良好な接着性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン(ポリアミン)
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0022】
また、炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。
【0023】
また、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンと、該ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応における反応比は、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.3〜0.95の範囲が好ましい。
【0024】
反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い二酸化炭素バリア性が発現し、皮膜層が有するコンクリート中性化防止機能や内部鉄筋防食機能が著しく向上する。またコンクリートへの良好な接着強度も得られる。さらに、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂硬化剤を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0025】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0、好ましくは0.8〜2.0の範囲である。
【0026】
皮膜層をコンクリートの表面に形成する場合には、コンクリートの表面の湿潤を助けるために本発明のエポキシ樹脂組成物の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK348、BYK381などがある。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0027】
また、本発明の方法で形成される皮膜層の二酸化炭素バリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。高い二酸化炭素バリア性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0028】
さらに、本発明の方法で形成される皮膜層の接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0029】
さらに、本発明の方法で形成される皮膜層を形成するエポキシ樹脂組成物中には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えばN-エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0030】
本発明の皮膜層の層厚は1〜100μm程度、好ましくは3〜50μmが実用的である。1μm未満であると十分な耐食性が発現せず、100μmを越えるとその膜厚の制御が困難になる。
【0031】
本発明のコンクリートの防食方法を実施する場合には、塗布法、浸漬法、スプレー法等任意の方法の中からコンクリートの形態などに応じて適宜選択できる。塗布法としては、ロール塗布、しごき塗り、刷毛塗り、流し塗りなど公知の方法が採用できる。またこれらの処理後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。樹脂組成物の塗布後、必要に応じて加熱装置により皮膜層の硬化反応を完結させても良い。加熱装置によるコンクリートの加熱方法はドライヤー、高周波誘導加熱、遠赤外線加熱、ガス加熱など従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。加熱処理は到達材温で50〜300℃、好ましくは80〜250℃の範囲で行うことが望ましい。
【0032】
本発明では、前記皮膜層が形成された部分のコンクリートに対して防食効果を有するので、保護したい部分に塗布することで、その部分を防食することができる。塗布をする際には、部分的な塗布でもよいが、防食効果をより高めるためには、コンクリートの全表面に行うことが好ましい。部分的な塗布を行う際には、非塗布部分に他の防食塗料等を併用してもよい。
【0033】
本発明においては、コンクリート表面に直接本発明の特定のエポキシ樹脂被膜を形成させてもよいが、必要に応じて下地調整塗膜を塗布し、その上に本発明のエポキシ樹脂塗膜を形成させても良い。下地調整用塗料には、エチレン酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、アクリルカチオン系エマルジョン等が使用できる。また、本発明においては、本発明のエポキシ樹脂塗膜の上に、耐光性、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐察傷性の付加等、必要に応じて上塗り塗膜を形成させても良い。上塗り樹脂には、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系等が使用される。
【0034】
コンクリートの中性化の評価方法は、コンクリート試験体を切り出して断面を露出させ、フェノールフタレインの呈色反応を利用する方法が一般的である。
【0035】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0036】
エポキシ樹脂硬化剤A
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.50molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0037】
エポキシ樹脂硬化剤B
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.67molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。50℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0038】
コンクリート試験体の作製
ポルトランドセメント600重量部、水360重量部、砂1200重量部を混合したモルタルを10cm×10cm×40cmの型に流し込み、4週間養生後、20℃、相対湿度60%RHの雰囲気下、4週間乾燥した。
【0039】
実施例1
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD-X)を50重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aを33重量部、アクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK348)を0.02重量部加え、よく攪拌した。このエポキシ樹脂組成物を、コンクリート試験体の10cm×40cm面4面中の2面に膜厚約10μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で30分間硬化させ皮膜を形成させた。なお皮膜層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.011 cc-mm/m・day・atmであった。
【0040】
実施例2
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを45重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.009 cc-mm/m・day・atmであった。
【0041】
実施例3
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン340)を35重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.018 cc-mm/m・day・atmであった。
【0042】
比較例1
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.23 cc-mm/m・day・atmであった。
【0043】
比較例2
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン328)を33重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.41 cc-mm/m・day・atmであった。
【0044】
比較例3
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりに変性複素環状アミン(ジャパンエポキシレジン(株)製;エポメートB002)を50重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は2.2 cc-mm/m・day・atmであった。
【0045】
比較例4
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製;エピコート828)を97重量部、エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルのモル比が約2:1のメタキシリレンジアミンとメタクリル酸メチルとの反応生成物(三菱ガス化学(株)製;ガスカミン340)を25重量部およびポリオキシアルキレンアミン(ハンツマン社製;ジェファーミンT-403)を11重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。なお被覆層の23℃、相対湿度60%における二酸化炭素透過係数は0.6 cc-mm/m・day・atmであった。
【0046】
本発明の方法により作製されたコンクリート試験体の防食性能評価を以下の方法で行った。結果を表1に示す。
〈防食性能評価方法〉
コンクリート試験体を温度30℃、相対湿度60%RH、二酸化炭素濃度5%の雰囲気に所定の期間暴露後、断面を切断し、フェノールフタレイン−アルコール溶液を吹きかけ、非変色領域の深さを測定した。結果は、非塗布面の非変色領域深さに対する塗布面の非変色領域深さの比で表した。
【0047】
【表1】
Figure 0004264695
【0048】
【発明の効果】
本発明のコンクリートの防食方法を採用することにより、コンクリートへの二酸化炭素の透過が長期にわたって遮断され、さらには内部鉄筋の腐食が抑制された、極めて防食性に優れたコンクリート構造物を得ることができる。

Claims (4)

  1. コンクリートの表面に皮膜層を形成するコンクリートの防食方法であって、該皮膜層がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化により形成されたものであり、該組成物が(1)式に示される骨格構造を30重量%以上含有し、該皮膜層の23℃、相対湿度60%RHにおける二酸化炭素透過係数が0.1cc-mm/m・day・atm以下であり、かつ該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物であることを特徴とするコンクリートの防食方法。
    (A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
    (B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
    (C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
    Figure 0004264695
  2. 前記二酸化炭素透過係数が0.05cc-mm/m・day・atm以下である請求項1に記載のコンクリートの防食方法。
  3. 前記(B)多官能性化合物がアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体である請求項1記載のコンクリートの防食方法。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のコンクリートの防食方法を使用して製造したエポキシ樹脂組成物被覆コンクリート。
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