JP4145618B2 - 最適ゴルフクラブシャフト選定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、最適ゴルフクラブシャフト選定方法に関し、詳しくは、ゴルフクラブスイング中のシャフトの変形挙動を解析すると共に、ゴルファーのスイングを分類し、ゴルファーにとって最適なゴルフクラブ、特に、ヘッドスピードが速くなるゴルフクラブを選定するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルファーのスイングフォームは千差万別であるため、各ゴルファーにとって最適なゴルフクラブはそれぞれ異なっている。使用するゴルフクラブによりスコアに影響が出ることから、自分に合ったゴルフクラブを探し出すことはゴルファーにとって重要視されている。
【0003】
ゴルファーにとって最適なゴルフクラブとしては、種々の要因が挙げられるが、特に大きな飛距離が得られることが要求され、よってスイング時のヘッドスピードが速くなるようなゴルフクラブが望まれている。従来、飛距離が得られるクラブを選定するためには、ゴルフ場及び練習場等で、実際にボールを打って飛距離、打ち出し方向等を計測することでクラブの適否を経験的、感覚的に判断している。
【0004】
その他、スイング画像によりスイングフォームをチェックする、あるいは、シャフトにひずみゲージ等のセンサーを取り付け、シャフトのしなり具合を計測する等によりゴルフクラブの挙動等を計測し、ゴルファーに最適な条件を調査する種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許第3243210号のスイング中のゴルフシャフトしなり挙動解析システムでは、ゴルフシャフトに取り付けた4ヶ所のひずみゲージにより測定したひずみの時系列と、シャフトに静的荷重を与えることによって求めたシャフトのEI分布を用いて、シャフトの曲げ・曲率分布の変化率(時間微分)を含むしなり挙動を求めている。
【0006】
また、特許第3243209号のゴルフクラブシャフトの調子の判定方法、その方法に表現される特性を特徴としたゴルフシャフトでは、特許第3243210号のしなり挙動解析システムを用いて、シャフトに発生する曲げモーメント分布を求め、多変量解析、クラスター分析によりゴルファーにスイングパターンを分類し、調子を判定している。
【0007】
具体的には、以下の▲1▼、▲2▼に示す手法により調子を判定している。
▲1▼インパクト手前のスイング方向の曲げモーメント分布とシャフトのEI分布からシャフトの曲率分布の変化率を解析し、シャフトを3等分あるいは等分した場合、全体の曲率分布の変化率に対するチップ・バット・中間の曲率分布の変化率の割合(動的なフレキシブル・レシオ:DFR Ratio)によって
(i)DFR Ratio Tip>20% →先調子
DFR Ratio Tip<20% →手元・中調子
(ii)DFR Ratio Butt/DFR middle>1.2 手元調子
DFR Ratio Butt/DFR middle<1.2 中調子と判別する。また、曲率分布の変化率のピーク位置(動的なキックポイント)によって調子を判別する。
【0008】
▲2▼インパクト手前のトウダウン方向の最大曲げモーメント分布、あるいは、トップオブスイングやコック解放時付近の最大曲げモーメント分布、シャフトのEI分布から求まる曲率分布によってシャフトの特性を明確にする。
【0009】
従来までの調子を判定するシステム(順式や逆式のフレックスの比・静的座屈による最大撓み位置・静的荷重を負荷することによる各部の曲率)では「調子」の性能が官能評価とは一致しない場合があったが、これらの手法によって、スイング中のシャフトの調子と官能評価が一致するようなゴルフシャフトの調子判定方法を開示している。
【0010】
【特許文献1】
特許第3243210号
【0011】
【特許文献2】
特許第3243209号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許第3243210号では、スイング中のしなり挙動を解析することができるが、ヘッドスピードが速くなるようなゴルフクラブシャフトを判定するまでには至らず、ゴルファーに最適なゴルフクラブシャフトを選定できないという問題がある。
【0013】
また、上記特許第3243209号では、動的なシャフト変形挙動を解明することで、シャフトの調子とフィーリングとの関係が官能評価と一致するとされているものの、具体的な官能評価と動的シャフト変形挙動(曲率分布の変化率)との関係が示されていない。よって、ヘッドスピードが速くなるようなゴルフクラブシャフトを判定するまでには至らず、ゴルファーに最適なゴルフクラブシャフトを選定できないという問題がある。
【0014】
さらに、特許第3243209号、特許第3243210号で記載されているEI分布の測定方法では、撓み量yを計測装置によって求め、シャフト軸方向の距離xとyの最小自乗法によりyとxの近似式を算出し、シャフト先端に付加したモーメントと上記近似式からEI分布を計算している。
【0015】
しかし、この方法では、EI分布の測定対象が既知の鉄の棒の場合は、既知EI分布と計測EI分布は良く一致するが、ゴルフシャフト、特に、図10に示すように、FRP製のシャフト(A〜Cの3種類)について、上記記載方法でEI分布を測定すると、最小自乗法の近似の次数によって、チップ・バット部のEI分布が発散してしまい、正確にEI分布を求められないことがある。
【0016】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、ゴルファーにとってヘッドスピードが速くなるようなゴルフクラブシャフトを判定可能とし、ゴルファーに最適なゴルフクラブシャフトを選定できる最適ゴルフクラブシャフト選定方法を提供することを課題としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、複数プリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製のシャフトにヘッドを取り付け、シャフトにはシャフト挙動測定手段となるひずみゲージを長さ方向に間隔をあけた4箇所以上取り付けた挙動解析用のゴルフクラブを設け
該ゴルフクラブのシャフトのEI分布は、複合材料の積層方向の平均応力を定義して積層材の等価弾性定数に置き換えた理論からなる複合材料に関する積層理論を用い、シャフトを等分割あるいは複数の要素に分けてEIを求めるシャフトEI算出手段により算出しており、
上記挙動解析用のゴルフクラブを用いたゴルファーのスイング中に、上記ひずみゲージで測定したひずみ量から上記シャフトに生じる曲げモーメントを計算し、
上記取得した曲げモーメントと、該シャフトの上記EIの分布と、撓み方向の変位、シャフト軸方向の距離、シャフト内径、プリプレグ積層体の厚み、および歪み量を用いた撓み曲線の微分方程式よりシャフトの変形形状を求め、該変形形状よりシャフトのスイング中の変形挙動を解析し、
上記変形挙動より、ゴルファーのスイングパターンを、腕ターン、ボディターン、コック有、コック無の4つのスイングパターンのうちのいずれか1つのスイングパターンに分類し、
上記分類したスイングパターンに適したEI分布を有するゴルフクラブシャフトを、上記ゴルファーに最適なシャフトとして選定することを特徴とする最適ゴルフクラブシャフト選定方法を提供している。
上記本発明の最適ゴルフクラブシャフト選定方法は、上記のように、スイング中のシャフトの変形挙動を測定するシャフト挙動測定手段と、シャフトのEI分布を算出するシャフトEI算出手段を用い、さらに、スイング中のシャフトの変形形状を計算するシャフト形状計算手段とを有する第1解析システムと、ゴルファーのスイングを解析分類するスイング分類手段を有する第2解析システムとを用い、
上記スイング中の上記シャフトの変形挙動を解析すると共に、上記ゴルファーのスイングを分類し、上記ゴルファーにとってヘッドスピードが最適なシャフトを選定している。
【0018】
シャフトの変形挙動及びシャフトのEI分布を測定・算出し、シャフトの変形形状を計算すると共に、ゴルファーのスイングの特徴を把握した上で、ゴルファーに最適なシャフトを選定している。このため、各ゴルファーのスイング軌道に応じて、シャフトが適切に変形し、インパクト時にヘッドの重心深度相当分のシャフト先端にスイング方向に十分な撓みが生じるような、ヘッドスピードが速くなるゴルフクラブシャフトを選定することができる。
【0019】
具体的には、本発明は、鋭意研究の結果、以下のことを見出したことに基づくものである。ヘッドスピードは、シャフトの撓み速度と手元の速度の2つが大きな要因となることを解明し、シャフトの撓み速度が最大になるのは、ヘッドの重心が最下点になるときである、即ち、重心深度相当分だけスイング方向に変形していればヘッドスピードが最も速くなることを解明した。スイングによってシャフト変形方向が異なるので、ヘッド重心がインパクトで最下点になるのもシャフトにより異なることとなるため、スイングパターンによって最適なシャフトが異なることとなる。
【0020】
また、手元速度は、ゴルファーのスイングパターンに依存し、インパクト前に手元速度が急激に低下する場合や、逆に急激に上昇する場合がある。手元速度が低下する場合、ヘッドスピードのピークで打つためには柔らかいシャフトが最適シャフトとなる。一方、手元速度が上昇する場合、ヘッドスピードのピークで打つためには硬いシャフトが最適シャフトとなる。
【0022】
上記のように、本発明では、シャフト挙動測定手段によりスイング中のシャフトに生じるひずみ量を測定し、上記シャフト形状計算手段によりインパクト時の変形形状を計算すると共に、上記シャフト分類手段によりゴルファーのスイングの特徴を抽出し、ヘッドスピードが速いシャフトを選定している。即ち、撓み曲線の方程式等を用いて、シャフトの撓み量を計算することで、シャフトの変形形状を計算している。
【0023】
シャフトに生じるひずみ量を測定するとシャフトの挙動を容易かつ正確に把握することができる。また、打球の飛距離や打球方向への影響が大きいインパクト時の変形形状を計算し、より精度の高い選定を可能にしている。
【0024】
上記のように、シャフトは繊維強化樹脂製とし、該シャフトにひずみゲージを4箇所以上取り付け、該各箇所に生じるひずみを測定し、上記ひずみの測定データから上記シャフトに生じる曲げモーメントを計算すると共に、複合材料に関する積層理論を用いて上記EI分布を算出し、
上記第1解析システムにより、撓み曲線の微分方程式、上記曲げモーメント、上記EI分布を用いてシャフト変形形状を計算し、シャフトの変形挙動を解析している。
【0025】
カーボン繊維等の強化繊維と熱硬化性樹脂等の樹脂中に含浸させたプリプレグの積層体等からなる繊維強化樹脂製のシャフトにおいて、複合材料に関する積層理論を用いてEI分布を算出しているため、より正確なEI分布を得ることができ、解析精度を向上することができる。ひずみゲージは複数個が良いが精度を高めるには4個以上が良く、シャフトの軸方向にできるだけ均等に、少なくともチップ側とバット側の両端に配置されるのが好ましく、有線あるいは無線により検知した電圧信号を送信することができる。ひずみゲージは、非常に軽量で小さいため、ゴルファーにとってスイング時に違和感もなく、測定から検知された信号を処理する時間も短い。ライバー、アイアン、パター用等、全ての種類のゴルフクラブシャフトの解析が可能である。
【0026】
複合材料に関する積層理論とは、積層からなる材料(複合材料)のプライ(巻き付け)によって弾性定数は異なるので、応力は一様にならないことを考慮し、プライ間の平均応力を定義することによって多方向の積層材の等価弾性定数に置き換えた理論である。これによれば、シャフトを等分割(あるいは複数の要素)に分けてEIを求めることができ、チップ、バット部についても、シャフト軸方向のEIを補間せずに求めているので、他の部分(シャフト中央部)と同様の扱いで計算できる。よって、シャフトのチップ(ヘッド)側、バット(グリップ)側端部のEIが発散しないEI分布を求めることができる。
【0027】
さらに詳述すると積層理論とは、以下の2つの仮定の基に成り立つ理論である。
▲1▼積層板は対称である。従って、プライの配向角や弾性係数は積層板の中央面に対して対称である。
▲2▼ひずみは積層板の厚さを通じて一定である。これは、積層板の厚みが長さ・幅に対して小さいためである。
積層理論では、以上の仮定を基に、「積層板はプライによって弾性定数は異なるので応力分布は一様でない。従って、平均応力を定義すると容易になる。」という考えに基づき弾性定数を求めている。
【0028】
積層方向の平均応力は下記の式1、積層1枚についての応力は斜向座標系での応力−ひずみの関係より下記の式2で求められる。また、図1(A)に積層材料SSの積層方向を示す。プリプレグをシャフトにした時のシャフト軸方向を方向1、方向1に垂直方向を方向2、せん断方向を方向6としている。厚み方向Z、厚みはhとしている。Qとは斜向軸系の工学的定数である。
【0029】
【式1】
Figure 0004145618
【0030】
【式2】
Figure 0004145618
【0031】
式2を式1へ代入すると下記の式3が得られ、ひずみは仮定より定ひずみであるため以下のように変形され面内の合応力が得られる。
【0032】
【式3】
Figure 0004145618
【0033】
斜向軸系の工学的定数Qと弾性係数の関係は単軸引張試験を想定すると明確となる。図1(B)に示す積層材料において、等価弾性係数Eを求めるために下記の関係を得る。
【0034】
【式4】
Figure 0004145618
【0035】
式4を式3に代入し、また一様平均な応力が積層材に生じている(つまりプライ配向角=0degの等方性材料)ので下記の関係が得られる。A11、A12はQ11、Q12の加算である。EIを考える場合は、各プライの工学的定数の断面二次モーメントを掛け、加算することで積層材の等価EIを計算できる。
【0036】
【式5】
Figure 0004145618
【0037】
上記スイング分類手段により、ゴルファーのスイングを、腕ターンあるいはボディターン、コック有あるいはコック無から選択される4つのパターンに分類している。ゴルファーのスイングをこのようなパターンに分類することで、各ゴルファーのスイングの特徴別に適したゴルフクラブシャフトの選定を行うことができる。
【0038】
上記スイング分類はスイング時のシャフトに生じるひずみの時系列データを用いて行うことができる。ひずみの時系列データを用いてスイングパターンを分類するためには、ひずみの波形データとスイング分類との相関関係を把握する必要がある。
なお、DLT法等を用いたスイング画像処理データを用いてスイング分類することもできる。画像処理を用いてスイングパターンを分類するためには、人体各部(頭・首・肩・肘・手首・腰)等の複数箇所とシャフトの挙動を計測する必要がある。
【0039】
上記ゴルファーがスイングした際の、三次元あるいは二次元座標系における手首関節角度の変化量によりコックの有無を判定し、上記ゴルファーのスイング時のダウンスイング開始時刻からインパクトまでの三次元あるいは二次元座標系における頭・手首・左腰の変位量からボディターンと腕ターンを判定することができる。
【0040】
なお、予めレッスンプロ等のスイング診断の結果により、コックの有無の判定及びボディターンと腕ターンの判定との相関得ることができる。このように事前に診断した相関関係と照合することで、判定精度をより高めることができる。
【0041】
発明の最適ゴルフクラブシャフト選定方法では、曲げ剛性分布等の特性が異なるシャフトの中からゴルファーに最適なゴルフクラブシャフトを選定することができる。このため、選定されたゴルフクラブシャフトは、各ゴルファーにとって使いやすく、容易に大きな飛距離が得られるため、非常に有用なものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の最適ゴルフクラブシャフト選定方法の第1実施形態を図面を参照して説明する。
最適ゴルフクラブシャフト選定方法は、スイング中のシャフトの変形挙動を測定するシャフト挙動測定手段と、シャフトのEI分布を算出するシャフトEI算出手段と、スイング中のシャフトの変形形状を計算するシャフト形状計算手段とを有する第1解析システムと、ゴルファーのスイングを解析分類するスイング分類手段を有する第2解析システムとを用い、スイング中のシャフトの変形挙動を解析すると共に、ゴルファーのスイングを分類し、ゴルファーにとってヘッドスピードが最適なシャフトを選定している。
【0043】
具体的には、シャフト挙動測定手段によりスイング中のシャフトに生じるひずみ量を測定し、シャフト形状計算手段によりインパクト時の変形形状を計算すると共に、シャフト分類手段によりゴルファーのスイングの特徴を抽出し、ヘッドスピードが速いシャフトを選定するものである。
【0044】
以下、最適シャフトの選定までの手順について説明する。
挙動解析を行うシャフトを準備する。図2に示すように、シャフト1は、カーボン繊維を強化繊維としたプリプレグの積層体からなり、小径側先端にヘッド2が取り付けられ、大径端側にグリップ3が取り付けられている。シャフト1には、ひずみゲージG(G1〜G4)が4箇所貼り付けられている。具体的には、ヘッド取付端から85mmの位置に第1ひずみゲージG1、さらに200mmずつ間隔をあけて第2ひずみゲージG2、第3ひずみゲージG3、第4ひずみゲージG4がシャフト1の長軸方向の同一軸線上の同面でスイング方向に対して垂直な面に貼り付けられ、スイング時にシャフト1に生じるひずみを測定可能な構成としている。
【0045】
ひずみゲージGで検出された電圧信号は、ブリッジボックスとアンプを介して動ひずみ計に送信され(図示せず)、コンピュータに取り込まれ、シャフト1の各ひずみ測定箇所の電圧信号を入力できる。スイング測定終了後、キャリブレーションを行うことによって、電圧をひずみに変換し、図3に示すように、各測定箇所でのひずみの時系列をシャフト挙動測定手段で計測している。図中、ひずみ(strain)のグラフが0に近い側からG1、G2、G3、G4のデータとしている。
【0046】
次に、複合材料に関する積層理論、即ち、複合材料の材料定数算出方法で用いられる積層理論を用いてシャフトのEI分布を算出する。
具体的には、実測にて繊維軸系のヤング率・ポアソン比を求める。また、以下に繊維軸系の応力−ひずみの関係式を示す。これは、単軸縦方向、単軸横方向、縦方向せん断方向についてのひずみと応力の関係について、線形弾性材料に限定することで、重ね合わせを行うことで求めている。
【0047】
【式6】
Figure 0004145618
【0048】
式中、σは応力、Eは縦弾性係数、mは1/(1−νν)で表される定数、εはひずみ、νはポアソン比を示す。xは引張方向、yは圧縮方向、Sはせん断方向を指す。
【0049】
即ち、斜向軸系のひずみをひずみ変換則、斜向軸系の応力を応力逆変換則でそれぞれ斜向軸系と繊維軸系の関係を算出し、上記の応力−ひずみ関係式に代入することによって、繊維軸系の応力−ひすみ関係を求める。
また、繊維軸系の応力−ひずみ関係から斜向軸系の材料定数を決定し、積層されるプリプレグ1枚分の剛性を求める。
上記方法で繊維材であるプリプレグ毎の斜向軸系の材料定数を決定し、積層理論によってシャフトEI算出手段によりEI分布を算出する。
即ち、繊維軸系とは実測で求めた軸系に相当し、例えば、引張試験をした場合の軸系になる。斜向軸系とは、1枚のプリプレグを巻きつけた場合の軸系(シャフト長手方向を軸とする)になる。
【0050】
そして、上記ひずみの測定データから測定各箇所においてシャフトに生じる曲げモーメントを計算する。撓み方向の変位をy、シャフト軸方向の距離をx、曲げモーメントをM、曲げ剛性をEI、ひずみをε、シャフト内径をrとすると、下記の撓み曲線の微分方程式が得られる。プリプレグを巻きつけると周方向に不均一な厚みになるのでrを均一化して求めている。
【0051】
【式7】
Figure 0004145618
【0052】
曲げモーメントMをxを変数とする2次式で近似し、最小自乗近似によって下記式の係数a、b、cを算出する。
【0053】
【式8】
Figure 0004145618
【0054】
算出された曲げモーメントMの近似式を撓み曲線の微分方程式に代入し、1回積分することによって、撓み角度θ、2回積分することによって、撓み量yを算出する(ただし、グリップ部の撓み・撓み角度は0とする拘束条件を付加)。
【0055】
【式9】
Figure 0004145618
【0056】
撓み曲線の微分方程式、上記曲げモーメント、上記EI分布を用いてシャフト形状計算手段によりシャフト変形形状を計算し、第1解析システムにより、シャフトの変形挙動を解析する。このようにして、シャフトの変形形状を時々刻々算出している。
具体的には、図4において、スイング中のシャフトの変形形状の時間変化を示している。図中の右側から順にインパクトから1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms前としている。このように、シャフト各部の撓み量を計算することでシャフトの変形形状を把握している。
【0057】
スイング分類手段を有する第2解析システムによりスイングパターンを分類する。具体的には、ゴルファーのスイングを、腕ターンあるいはボディターン、コック有あるいはコック無の4つのパターンに分類している。
【0058】
スイングパターンを分類するために、ゴルファーの人体各部(頭・首・肩・肘・手首・腰等)とシャフトの動きを計測する。このような画像を計測する方法としてDLT法を用いる。具体的には、図5に示すように、2台の同期したカメラC1、C2によってスイングを測定し、各カメラ毎の人体各部の2次元座標を求め、既知の空間上の点(コントロールポイント)でカメラのキャリブレーションを行うことによって三次元座標を算出する手法である。図6(A)(B)(C)に手首のポインティング結果を各軸(X軸、Y軸、Z軸)毎に示す。各プロットを5次式で近似しデータを補正した。
【0059】
これらゴルファーがスイングした際の座標値から、三次元あるいは二次元座標系における手首関節角度の変化量によりコックの有無を判定する。
具体的には、まず、人体各部を正面(XZ平面)に投影し、肘−手首ベクトル、シャフト−手首ベクトルから、その間の手首関節角度を求める。そして、コック解放からインパクト時までの手首関節角度の角度変化が60deg以上であればコック有り、60deg未満ではコック無しと判定する。この判定に60degという数値を用いたのは事前にレッスンプロのスイング診断の結果によるコックの有無の判定と相関が高かったためである。
【0060】
次に、スイングがボディターンか腕ターンかを判定する方法について説明する。
ゴルファーのスイング時のダウンスイング開始時刻からインパクトまでの三次元あるいは二次元座標系における頭・手首・左腰の変位量から求められる(腰部変位量)/(頭部変位量)、(左腰変位量)の2つのパラメータにより判定している。上記左腰変位量とは左側の腰の位置がダウンスイング開始位置からインパクト位置までの座標上の変化量を指す。
【0061】
例えば(腰部変位量)/(頭部変位量)の値が12以上であれば腕ターンと判定し、(左腰変位量)の値が250以下であれば腕ターンと判定する。(腰部変位量)/(頭部変位量)と(左腰変位量)のどちらもが腕ターンと判断されない場合はボディターンと判定する。この判定に(腰部変位量)/(頭部変位量)の値が12、(左腰変位量)の値が250という数値を用いたのは、事前にレッスンプロのスイング診断の結果によるボディターン・腕ターンの判定と相関が高かったためである。
【0062】
これらの解析結果に基づき、ヘッドスピードが速くなるシャフトを選定する。第1解析システム、第2解析システムによって4つのスイング分類に分け、これら4つの分類と、それに適した曲げ剛性分布を有するシャフトとの関係を以下に示す。
【0063】
シャフトのチップからの距離が、0〜200mmまでの部分をA(先)、200〜400mm(先よりの中央)までの部分をB、400〜600mm(中央)までの部分をC、600〜800mm(手元よりの中央)までの部分をD、800〜1000mm(手元)までの部分をEとして、各部分のEIをそれぞれ以下のように設定している。
【0064】
1.ボディターン・コック有りの場合
E部分の剛性を高くし、D部分の剛性を低くする。(後述する実施例のシャフト▲2▼のようなシャフト)
2.ボディターン・コック無しの場合
E部分の剛性を高くし、B・C・D部分の剛性をチップ先端から徐々に高くする。(後述する実施例のシャフト▲5▼のようなシャフト)
3.腕ターン・コック有りの場合
シャフトの剛性(フレックス)を低くする。例えば、シャフトの硬さをS→Rにする。(後述する実施例のシャフト▲4▼のようなシャフト)
4.腕ターン・コック無しの場合
E部分の剛性を低くする。(後述する実施例のシャフト▲3▼のようなシャフト)あるいは、E部分の剛性を高くし、B・C・D部分の剛性をチップ先端から徐々に高くする。(後述する実施例のシャフト▲5▼のようなシャフト)
【0065】
このように各分類毎に選定されるヘッドスピードが最適なシャフトは、そのシャフトの変形形状がインパクト時にヘッドスピードが最適になる形状になっている。具体的には、ヘッドの重心深度相当分のシャフト先端に撓みが生じているので、ゴルファーにとってヘッドスピードが速くなる最適なゴルフシャフトを提供することができる。
【0066】
このように、ゴルファーのスイングを画像処理、シャフトの変形をひずみゲージによって測定することで、ゴルファーのスイングを分類し、分類毎にヘッドスピードが最適なシャフトを選定することができる。
【0067】
また、上記のように最適ゴルフクラブシャフト選定方法を用いて選定されたゴルフクラブシャフトは、シャフトの変形挙動に加え、ゴルファーのスイングを考慮しているため、ゴルファーのヘッドスピードが速くなり、非常に大きな飛距離を得ることができる。
【0068】
また、スイング分類は、上記のようにDLT法を用いたスイング画像処理データを用いても良いが、以下に示すように、スイング時のシャフトに生じるひずみの時系列データを用いて行っている
【0069】
上記4つのスイング分類と、ひずみの波形データに基づくシャフトの変形挙動の関係を以下に示す。
図7、8に示すように、画像によるスイング分類とシャフトに生じるひずみの時系列(上記実施形態のように4箇所にひずみゲージを取り付けた場合)の関係から、ボディターンと腕ターン、コックの有無はそれぞれ1対1の関係になっていることがわかる。なお、ゲージ番号とCHの番号は一致している。図中、ひずみ(strain)のグラフが0に近い側から1ch、2ch、3ch、4chのデータとしている。
【0070】
1.ボディターン・コック有りの場合
ひずみのピークが2つで、最初のピークが大きい。
2.ボディターン・コック無しの場合
ひずみのピークが3つ。
3.腕ターン・コック有りの場合
ひずみのピークが2つで、最初のピークが小さい。
4.腕ターン・コック無しの場合
ひずみのピークが1つ、あるいは、インパクト前のピークがかなり小さい。
従って、この関係を利用すれば、画像処理ではなく、ひずみの時系列結果からもスイング分類を行うことができる。
【0071】
以下、本発明の最適ゴルフクラブシャフト選定方法の実施例について詳述する。
図9に示すように5パターンのEI(曲げ剛性)分布を示すシャフト(シャフト(1)〜シャフト(5))を準備した。
【0072】
まず、テスター9名(A〜I)について、シャフト▲1▼の剛性分布を有する基準シャフトにヘッドを取り付けスイングし、各テスター毎にヘッドスピードを測定した。
【0073】
次に、上記第1実施形態と同様に、画像によるスイングの測定、及びシャフトのひずみを測定し、スイング分類を行うことによってヘッドスピードが速くなるシャフトを選定した。また、選定結果を確認するために、シャフト▲2▼〜シャフト▲5▼についても各テスターがスイングし、ヘッドスピードを測定した。
各テスター毎のスイング分類の判定結果と各シャフトでのヘッドスピードの測定結果を下記の表1に示す。
【0074】
【表1】
Figure 0004145618
【0075】
表1に示すように、テスターA〜Cのスイングは、ボディターン・コック有であるため、本システムの解析結果によれば、シャフト▲2▼が最適となるはずであり、実際のヘッドスピードの測定結果は、この解析結果と一致していた。また、テスターD、Eのスイングは、腕ターン・コック有であるため、本システムの解析結果によれば、シャフト▲4▼が最適となるはずであり、実際のヘッドスピードの測定結果は、この解析結果と一致していた。
【0076】
テスターF、Gのスイングは、ボディターン・コック無であるため、本システムの解析結果によれば、シャフト▲5▼が最適となるはずであり、実際のヘッドスピードの測定結果は、この解析結果と一致していた。また、テスターH、Iのスイングは、腕ターン・コック無であるため、本システムの解析結果によれば、シャフト▲3▼あるいはシャフト▲5▼が最適となるはずであり、実際のヘッドスピードの測定結果は、この解析結果と一致していた。
【0077】
このように、各テスター全てにおいて、スイング分類によって分類毎に最適と判断されたシャフトが、5本のシャフトの中で最もヘッドスピードが速くなっているシャフトであることが確認できた。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、シャフトの変形挙動及びシャフトのEI分布を算出し、ゴルファーのスイング時のシャフトの変形形状を計算すると共に、ゴルファーのスイングの特徴を把握した上で、ゴルファーに最適なシャフトを選定している。このため、各ゴルファーのスイング軌道に応じて、シャフトが適切に変形し、ヘッドの重心深度相当分のシャフト先端にスイング方向へ十分な撓みが生じるような、ヘッドスピードが速くなるゴルフクラブシャフトを選定することができる。また、複合材料に関する積層理論を用いてEI分布を算出しているため、より正確なEI分布を得ることができ、解析精度を向上することができる。
【0079】
よって、各ゴルファーは、練習場や販売店等での試打の繰り返しを行うことなく、自分のスイングに適したゴルフクラブシャフトを的確に選定できるため、ゴルフ選びのための無駄なコストや時間を低減することができる。
【0080】
さらに、本発明の選定方法で選定したゴルフクラブシャフトは、ゴルファーのヘッドスピードが速くなるようなシャフトであるため、容易に大きな飛距離を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)(B)は積層理論の説明図である。
【図2】 ゴルフクラブシャフトへのひずみゲージの取り付け状況を示す図である。
【図3】 スイング中にシャフトに生じるひずみの時刻歴データを示す図である。
【図4】 シャフトの変形形状の計算結果を示す図である。
【図5】 DLT法による測定状況を示す図である。
【図6】 (A)(B)(C)は、DLT法による手首のポインティング結果を示す図である。
【図7】 スイング分類(ボディターン)とひずみの波形データに基づくシャフト挙動の関係を示す図である。
【図8】 スイング分類(腕ターン)とひずみの波形データに基づくシャフト挙動の関係を示す図である。
【図9】 シャフトのEI分布を示す図である。
【図10】 従来のEI分布の計算結果を示す図である。
【符号の説明】
1 シャフト
2 ヘッド
3 グリップ

Claims (2)

  1. 複数プリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製のシャフトにヘッドを取り付け、シャフトにはシャフト挙動測定手段となるひずみゲージを長さ方向に間隔をあけた4箇所以上取り付けた挙動解析用のゴルフクラブを設け
    該ゴルフクラブのシャフトのEI分布は、複合材料の積層方向の平均応力を定義して積層材の等価弾性定数に置き換えた理論からなる複合材料に関する積層理論を用い、シャフトを等分割あるいは複数の要素に分けてEIを求めるシャフトEI算出手段により算出しており、
    上記挙動解析用のゴルフクラブを用いたゴルファーのスイング中に、上記ひずみゲージで測定したひずみ量から上記シャフトに生じる曲げモーメントを計算し、
    上記取得した曲げモーメントと、該シャフトの上記EIの分布と、撓み方向の変位、シャフト軸方向の距離、シャフト内径、プリプレグ積層体の厚み、および歪み量を用いた撓み曲線の微分方程式よりシャフトの変形形状を求め、該変形形状よりシャフトのスイング中の変形挙動を解析し、
    上記変形挙動より、ゴルファーのスイングパターンを、腕ターン、ボディターン、コック有、コック無の4つのスイングパターンのうちのいずれか1つのスイングパターンに分類し、
    上記分類したスイングパターンに適したEI分布を有するゴルフクラブシャフトを、上記ゴルファーに最適なシャフトとして選定することを特徴とする最適ゴルフクラブシャフト選定方法。
  2. 上記スイングパターンの分類は、スイング時のシャフトに生じるひずみの時系列データを用いて行っている請求項1に記載の最適ゴルフクラブシャフト選定方法。
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