JP4139743B2 - アルミニウムにおける非金属介在物の測定装置 - Google Patents

アルミニウムにおける非金属介在物の測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウムにおける非金属介在物の測定装置に関し、特に鋳造現場などにおいてリアルタイムで且つ容易に測定できる測定装置に関する。尚、本明細書において単に「アルミニウム」と記載する場合は、アルミニウム合金も含んでいる。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金中には、不純物である非金属介在物、不必要な金属元素、あるいは特定の金属元素による偏析組織などが含まれている。例えば非金属介在物は、アルミニウム合金の鋳造材などにおける破壊の起点となり、強度や伸びを低下させる原因となる。このため、鋳造工程の前に、アルミニウムの溶湯に対してフラックスによる除滓処理や静置処理を施して、非金属介在物を除去している。
ところで、一般にアルミニウムの金属組織を観察する場合、そのサンプルを鏡面研磨し且つ腐食処理して光学顕微鏡などにより観察している。係る観察方法では、サンプルが鏡面研磨されているため、観察すべき面に段差がない。
【0003】
しかしながら、上記鏡面研磨および腐食処理をサンプルに施す観察方法は、事前の手間を要すると共に、例えば鋳造工程で鋳造すべきアルミニウムの金属組織を容易且つ迅速に観察することができない、という問題があった。
上記問題を解決するため、前述したアルミニウムの溶湯から非金属介在物の除去処理をした後、係る溶湯中の非金属介在物の残留量を、鋳造工程の現場で簡易且つ予備的に測定する方法として、いわゆるKモールド法が行われている。
係るKモールド法は、アルミニウムの溶湯の一部を採取し、これを板状のキャビティを有する鋳型に鋳込み、得られた板状で且つ直方体の鋳片からなるサンプルをその幅方向に沿って割り、得られた破断面を肉眼または光学顕微鏡で観察して、非金属介在物の総数を計測する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
実公昭52−17449号公報(第1,2頁、第1,2図)
【0005】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、前記Kモールド法では、サンプルにおける凹凸のある破断面があるため、係る破断面に光を直接照らすと影や光ムラが生じるため、非金属介在物の計測が不安定になり易い。しかも、係る計測を作業者が肉眼で行っているため、個人差によるバラツキが生じ易く、信頼性を欠く、という問題があった。
本発明は、以上に説明した従来の技術における問題点を解決し、現場などにおいてリアルタイムで容易且つ正確に測定できるアルミニウムの金属破断面における非金属介在物の測定装置を提供する、ことを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用ならびに発明の効果】
本発明は、上記課題を解決するため、金属破断面に対して間接照明による反射光をランダムに照射する、ことに着想して成されたものである。
【0007】
即ち、本発明のアルミニウムにおける非金属介在物の測定装置(請求項1)は、破断面を有するアルミニウムのサンプルを係る破断面を上向きにして配置するテーブルと、係るテーブルの上方に位置し断面半円形で且つ下向きの凹形反射面を有する反射ドームと、係る反射ドームの凹形反射面の内側縁に沿って配置された発光ダイオードからなる光源と、上記反射ドームの頂部付近に明けた開口部の上方に配置したCCDカメラからなる撮像手段と、係る撮像手段で撮像された画像をカラー濃淡処理し且つ所定のしきい値により2値化処理を行って上記アルミニウム中の非金属介在物の有無を判定する演算手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、上記光源から凹形反射面によりランダムに反射した光がアルミニウムの破断面に照射されるため、上記撮像手段により撮像される画像には、破断面の微細な凹凸による陰影や光ムラやハレーションなどが生じなくなる即ち、上記間接照明の光は、上記凹形反射面に反射してアルミニウムの破断面をランダムな方向から照射し、上記撮像手段により撮像される画像には、破断面の微細な凹凸による陰影や光ムラなどが生じなくなる
【0009】
しかも、比較的小型の発光ダイオード(LED)を光源として用いるため、前記反射ドームの凹形反射面の内周縁にコンパクトに取り付けられると共に、当該発光ダイオードから発光される高輝度で指向性の強い光が、凹形反射面に反射した際に、当該光源により遮蔽される事態を防ぐことも容易となる
その結果、係る画像をカラー濃淡処理および2値化処理することで、上記破断面を介してアルミニウム中の非金属介在物の検出を正確に行うことが可能となる
【0010】
尚、前記テーブルは、少なくとも平坦な表面を有するものであれば良い
また、前記演算手段には、上記カラー濃淡処理や2値化処理などが可能な演算素子、上記しきい値や輝度や前記所定の画素数を記録した記憶素子、および画像の入力・出力部(インターフェース)などを併有する例えばコンピュータが用いられる
更に、前記カラー濃淡処理、2値化処理、輝度(しきい値)による判定、画素数の測定、および画素数の比較は、上記演算手段中でプログラム化されている
加えて、前記発光ダイオードには、酸素と窒素とをドーブしたGa−Pによる赤色光および緑色光、Ga−Asによる赤外光、あるいは青色光を発光するものも含まれる
【0011】
また、本発明には、前記反射ドームは、前記テーブルから立設する支柱に昇降自在に取付られている、アルミニウムにおける非金属介在物の測定装置(請求項2)も含まれる
【0012】
更に、本発明には、前記撮像手段のCCDカメラは、前記反射ドームの上方で且つ前記支柱に昇降自在に取付られている、アルミニウムにおける非金属介在物の測定装置(請求項3)も含まれる
【0013】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明によるアルミニウムにおける非金属介在物の測定装置1を示す正面図、図1(B)は、これに用いる反射ドームDを示す垂直断面図である。
係る測定装置1は、図1(A),(B)に示すように、破断面hを有するアルミニウムのサンプルS(図示せず)を係る破断面hを上向きにして配置するテーブルTと、係るテーブルTの上方に位置し断面ほぼ半円形で且つ下向きの凹形反射面2を有する反射ドームDと、係る反射ドームDの凹形反射面2の内側縁に沿って配置された発光ダイオード(光源)4と、上記反射ドームDの頂部付近に明けた開口部6の上方に配置したCCDカメラ(撮像手段)10と、を含む。
【0014】
図1(A)に示すように、反射ドームDは、テーブルTから立設する支柱8に図示しない金具を介して昇降可能に取り付けられ、且つ係る反射ドームDの上方にはCCDカメラ10が上記カメラ支柱8に昇降可能に取り付けられている。
反射ドームDは、図1(B)に示すように、断面ほぼ半円形の外周面3およびこれと相似形で下向きに開口する凹形反射面2を有する。係る凹形反射面2は、所定の曲率でカーブした鏡面である。この凹形反射面2の内周縁に沿って取り付けたリング5には、上向き且つ内外2列で突出する多数の発光ダイオード4がリング状に配置されている。係る発光ダイオード4は、例えば、赤色光を発光する。
【0015】
また、図1(B)に示すように、上記反射ドームDの頂部付近には、平面視が四角形(正方形または長方形)あるいは円形の開口部6が開設されている。
図1(A),図2に示すように、係る開口部6の上方には、CCDカメラ10が位置し、その光学レンズを内蔵する入光筒12は、開口部6を介して、テーブルTの表面上に配置したアルミニウムのサンプルSの破断面hに指向している。
係るサンプルSは、例えば、アルミニウムの溶湯を半連続鋳造する直前において、係る溶湯の一部を採取し、例えば前記Kモールド法用の鋳型で鋳造した板状で直方体の鋳片を、その幅方向に沿って複数の位置で割って分割したもので、得られた破断面hを上向きにしてテーブルTの表面上に配置したものである。
【0016】
更に、図1(A)に示すように、CCDカメラ10から延びたケーブルKは、パーソナルコンピュータ(演算手段)14に接続されている。係るコンピュータ14は、図3に示すように、画像入力部20、中央演算素子(CPU)22、記憶部(ROM/RAM)24、および画像出力部26を備えている。
画像入力部20は、上記CCDカメラ10からケーブルKを介して送信された画像信号を受け入れる。中央演算素子22は、得られた画像のカラー濃淡処理、2値化処理、輝度(しきい値)による金属介在物か否かの判定、画素数の測定、および所定の画素数との画素数の比較を行う。
この際、必要な輝度などのしきい値や所定の画素数は、記憶部24から逐次引き出される。中央演算素子22による結果は、画像出力部26を経て、図1(A),図3に示すように、モニタ16の表示画面18に表示され、且つ必要に応じて図示しないプリンタにより印刷される。
【0017】
ここで、以上のような測定装置1を用いたアルミニウムの非金属介在物の測定方法について説明する。
図2,4に示すように、テーブルTの表面の所定の位置に、測定すべきアルミニウムのサンプルSを、その破断面hを上向きにして配置する(ステップS1)。係るサンプルSは、約700℃に保持されたアルミニウムの溶湯の一部を前述したKモールド法用の鋳型により得た板状の鋳片を割ったものである。
次に、図2中の実線の矢印で示すように、多数の発光ダイオード4から発光された赤色光(光)Lを、反射ドームDの凹型反射面2に反射させて、これらのランダムな方向に反射した赤色光Lを間接照明として、サンプルSの破断面hに照射する(図4中のステップS2)。
【0018】
この際、破断面hには、ランダムな方向から赤色光Lが当たるため、係る破断面hの微細な凹凸による陰影、光ムラ、ハレーションなどの発生を防止できる。
係る状態で、図2中の一点鎖線の矢印で示すように、サンプルSの破断面hを、反射ドームDの開口部6を介して、入光筒12からCCDカメラ10内の電荷素子に撮像する(図4中のステップS3)。得られた画像信号は、ケーブルKを介してコンピュータ14の画像入力部20から中央演算素子22に送信される。
係る中央演算素子22では、破断面hの画像に対してカラー濃淡処理および2値化処理が施される。係るカラー濃淡処理は、破断面hの画像における各部分の色調を、例えば、白=0〜黒=255(8ビット)の濃度値で白黒の濃淡化する処理である。また、上記2値化処理は、画像各部の輝度を、予め記憶部24から引き出した輝度のしきい値と比較して、高輝度グループと低輝度グループとに区分する(図4中のステップS4)。
【0019】
次いで、前記画像において前記輝度のしきい値よりも輝度が高い部分を、非金属介在物と判定し且つ係る部分の画素数を測定する(図4中のステップS5)。
更に、係る画像部分の測定された画素数が、予め測定対象であるアルミニウム中において非金属介在物である場合に必要最小限の画素数(所定の画素数)よりも小さい場合は、画像の当該部分を非金属介在物として認識しないように訂正される(図4中のステップS6)。これにより、以上の光学的分析方法における測定誤差を、解消することが可能となる。尚、上記所定の最小画素数は、例えば画像全体の画素数が24万画素である場合、数10画素のレベルである。また、係る最小画素数も、例えば必要に応じて記憶部24から送信するようにしても良い。
【0020】
この結果、前記画像の元となった破断面hにおける非金属介在物の有無およびその総数を、正確且つ迅速に測定でき、しかも現場にても容易に操作できる。
また、以上の各ステップS1〜S6は、前記サンプルSにおける複数の破断面hについて順次連続して行える。これにより、図1(A)に示すように、各破断面hごとに撮像した各画像(1〜n)ごとにおける非金属介在物の総数およびこれらの画像全体における非金属介在物の平均値(av)を、モニタ16の表示画面18に表示することができる。
【0021】
その結果、測定された複数の破断面hごとの非金属介在物の総数およびこれら全体の非金属介在物の平均値が、測定対象のアルミニウムにおける許容範囲内にある場合は、前記アルミニウムの溶湯をそのまま図示しない半連続鋳造装置の鋳型内に鋳込むことにより、所要の純度または合金成分であるアルミニウムのスラブやビレットなどの鋳造材をロスなく確実に得ることができる。
一方、上記許容範囲を外れている場合は、前記アルミニウムの溶湯を半連続鋳造することなく、公知のアルミニウム精製工程に送り、非金属介在物の除去処理をした後、その一部を採取したサンプルにつき前述した測定方法を再度行う。
従って、前記測定装置1を用いるアルミニウムにおける非金属介在物の測定方法によれば、アルミニウムの溶湯をロスなく安定して各種の鋳造材にすることでき、鋳造工程のコストを低減することにも寄与し得る。
【0022】
本発明は、以上において説明した形態に限定されるものではない。
例えば、前記テーブルT上に、等間隔に複数の凹部を有するスライド式ホルダを配置し、複数のサンプルSを、係るホルダの各凹部に破断面hを上向きにして個別に挿入し、当該ホルダをマニュアル操作または図示しないガイドレール上に沿って自動送りすることで、各破断面hを順次撮像することも可能である。
また、前記カラー濃淡処理した後に行う2値化処理に用いるしきい値は、前記輝度に限らず、明度または濃度値を用いることも可能である。
更に、しきい値よりも輝度などが高いか、または低い画像部分を、アルミニウム合金などにおける偏析部分あるいは不要な金属元素の結晶と判定することも可能である。
【0023】
また、前記測定装置1において、前記反射ドームDに明ける開口部6は、その頂部付近に限らず、当該ドームDの任意の位置に開設しても良い。この場合、係る開口部6の上方または斜め上方にCCDカメラ10などの撮像手段を配置するものとする。
更に、図1(A)に示した本発明の測定装置1におけるテーブルT、反射ドームD、およびCCDカメラ10などの位置は相対的であり、前記サンプルSをクリップやホルダなどで支持しつつテーブルT上に配置可能であれば、任意の傾きにして用いることも可能である。
また、前記コンピュータ14やモニタ16は、テーブルT上ではなく、別の位置に配置しても良い。
更に、演算手段は、前記コンピュータ14に限らず、同様な機能を発揮するコントローラなどの制御機器を用いることも可能である。
尚、本発明の前記測定装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更すること可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の測定装置を示す正面図、(B)は反射ドームの垂直断面図。
【図2】上記測定装置におけるテーブル上のサンプルと反射ドームと撮像手段との関係を示す概略図。
【図3】上記測定装置における演算手段などを示す概略図。
【図4】上記測定装置を用いた測定方法における複数のステップを示す流れ図。
【符合の説明】
1……………測定装置
2……………凹形反射面
4……………発光ダイオード(光源)
6……………開口部
10…………CCDカメラ(撮像手段)
14…………パーソナルコンピュータ(演算手段)
T……………テーブル
S……………サンプル
h……………破断面
D……………反射ドーム
L……………赤色光(光)

Claims (3)

  1. 破断面を有するアルミニウムのサンプルを係る破断面を上向きにして配置するテーブルと、
    上記テーブルの上方に位置し断面半円形で且つ下向きの凹形反射面を有する反射ドームと、
    上記反射ドームの凹形反射面の内側縁に沿って配置された発光ダイオードからなる光源と、
    上記反射ドームの頂部付近に明けた開口部の上方に配置したCCDカメラからなる撮像手段と、
    上記撮像手段で撮像された画像をカラー濃淡処理し且つ所定のしきい値により2値化処理を行って上記アルミニウム中の非金属介在物の有無を判定する演算手段と、を含む、
    ことを特徴とするアルミニウムにおける非金属介在物の測定装置。
  2. 前記反射ドームは、前記テーブルから立設する支柱に昇降自在に取付られている、
    請求項1に記載のアルミニウムにおける非金属介在物の測定装置。
  3. 前記撮像手段のCCDカメラは、前記反射ドームの上方で且つ前記支柱に昇降自在に取付られている、
    請求項2に記載のアルミニウムにおける非金属介在物の測定装置。
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