JP4138510B2 - ポリアクリロニトリル系炭素繊維シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアクリロニトリル(PAN)系酸化繊維は、不融性があり、難燃性に優れ、一般の有機繊維と同様の引張り伸度を示す。また不活性ガス中で炭素化することにより高強度の炭素繊維が得られることが知られている。
【0003】
PAN系酸化繊維は短綿化され、単独又は他のバインダーと分散混合され、湿式の抄紙により紙状のシートや、乾式の不織布製造方式(ニードルパンチによるフェルトも含む)により不織布状のシートに加工される。更に、これらのシートを不活性ガス中にて炭素化することにより紙状や不織布状の炭素化シートを得ることができる。
【0004】
不織布状の炭素化シートに関しては、特許文献1、2に記載されたものがある。
【0005】
特許文献1には、耐炎繊維(酸化繊維)をフェルト加工した後、1800℃以上で炭素化する記載、電池伝導材用の記載、並びに、PAN系酸化繊維フェルト(厚さ20mm、目付3500g/m2)を窒素雰囲気下、炭素化する記載などがある。
【0006】
しかし、いずれの記載も、厚さの薄い素材の対象ではなく、強度については、ふれられていない。
【0007】
フェルト作製についてはニードルパンチ方式で一般には行われる。しかし、本発明のシートのように薄いシートで且つ用いる酸化繊維の綿長が短い場合は、特許文献1に記載の方法でフェルト(酸化繊維シート)作製を行うと、そのシートはパンチングにより強度低下を招く。
【0008】
なお、特許文献1には、副成分繊維(原料酸化繊維B)を含有させる記述や、樹脂処理、圧縮処理等の記載はない。
【0009】
特許文献2には、PAN系酸化繊維をウォータージェット方式により不織布を作製する記載、並びに、酸化繊維不織布の厚さ、強度の記載がある。しかし、副成分としてより細い繊維含有する記載や、炭素化に関する記述はない。
【0010】
なお、特許文献2には不織布の原料繊維として綿長51mmの耐炎化繊維(酸化繊維)を用いることが記載されている。しかし、この繊維長の酸化繊維を用いて得られる不織布は、強度は高いが、繊維の分散性については綿長の短い湿式抄紙法により得られるシートに劣る。
【0011】
一般に不織布加工に用いられる酸化繊維は綿長25〜75mmの長繊維である。これを用いて得られる乾式の不織布タイプのシートは、綿長の短い(15mm以下)酸化繊維を用いて得られる湿式の紙(抄紙)タイプのシートに比べ、シート強度がより高いが、シート内の繊維の分散性に劣る。一方、湿式抄紙による場合は、酸化繊維の分散性が良く、厚さのバラツキが少ないシートが作り易い。
【0012】
しかし、湿式抄紙により薄型(低目付)のシートを得ようとした場合、強度が低いシートしか得られない。しかも、この低強度シートは、種々の用途に応用できる為、その様な用途に応用するように連続的に後加工を必要とする場合が多く、この場合は後加工時に裂けや切断を生じ易いなど加工性トラブルを生じ易い。
【0013】
湿式抄紙による酸化繊維シートの高強度化のためには、より細い繊維を用いる方が良い。しかし、抄紙に用いる繊維は細くなるほど、その分散性が低下し、繊維同士の絡みが生じ易くなる。この細い酸化繊維を用いた湿式抄紙工程では、繊維の水への分散時に、繊維同士の収束繊維、繊維塊が生じ、得られた酸化繊維シートの炭素化時におけるシートの強度低下や、炭素化後における炭素繊維シートの強度低下を招く。
【0014】
【特許文献1】
特開平2−139464号公報 (特許請求の範囲、実施例1)
【特許文献2】
特開平9−119052号公報 (段落番号[0013])
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、繊維の分散性が良く、厚さのバラツキが少なく、後加工性の良い高強度の薄型の炭素繊維シートを得るために種々検討しているうちに、PAN系酸化繊維シート中の副成分繊維(原料酸化繊維B)として、主成分繊維(原料酸化繊維A)より細い酸化繊維を、所定の範囲に混合組み合わせてシート加工することにより、繊維の分散性が改善された酸化繊維シートを得、得られた酸化繊維シートを樹脂処理し、更に圧縮処理後、出来るだけ張力をかけずに不活性ガス中で焼成・炭素化することにより、上記物性のPAN系炭素繊維シートを得ることができることを知得し、本発明を完成するに到った。
【0016】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決したPAN系炭素繊維シート及びその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0018】
〔1〕 繊維直径CAが8.0〜15.0μmの炭素繊維Aと、繊維直径CBが式1
0.40 < CB/CA < 0.80 式1
を満たす炭素繊維Bとが、均一に分散含有されたポリアクリロニトリル系炭素繊維シートであって、炭素繊維Bの炭素繊維含有率が4〜25質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率が95質量%以上、厚さが0.1〜0.5mm、引っ張り強度が7N/cm以上のポリアクリロニトリル系炭素繊維シート。
【0019】
〔2〕 繊維直径OAが11.0〜25.0μm、繊維長が3〜15mmの酸化繊維Aと、繊維直径OBが式2
0.40 < OB/OA < 0.80 式2
を満たし、繊維長が3〜15mmの酸化繊維Bとが、均一に分散含有されてなり、酸化繊維Bの繊維含有率が4〜25質量%である酸化繊維シートを、樹脂処理後、更に圧縮処理し、厚さを0.1〜1.0mmにした後、不活性ガス中で0.5N/cm以下の張力下、1100〜1700℃の温度で連続的に焼成・炭素化する、繊維直径CAが8.0〜15.0μmの炭素繊維Aと、繊維直径CBが式10.40 < CB/CA < 0.80 式1
を満たす炭素繊維Bとが、均一に分散含有されたポリアクリロニトリル系炭素繊維シートであって、炭素繊維Bの炭素繊維含有率が4〜25質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率が95質量%以上、厚さが0.1〜0.5mm、引っ張り強度が7N/cm以上のポリアクリロニトリル系炭素繊維シートの製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のPAN系炭素繊維シートは、繊維直径CAが8.0〜15.0μmの炭素繊維Aと、繊維直径CBが式1
0.40 < CB/CA < 0.80 式1
を満たす炭素繊維Bとが、均一に分散含有されたポリアクリロニトリル系炭素繊維シートであって、炭素繊維Bの炭素繊維含有率が4〜25質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率が95質量%以上、厚さが0.1〜0.5mm、引っ張り強度が7N/cm以上の炭素繊維シートである。
【0022】
本発明のPAN系炭素繊維シートは、その物性が上記範囲内にあれば、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の製造方法により製造することができる。
【0023】
〔酸化繊維A、B〕
炭素繊維シート原料の酸化繊維A(主成分)、酸化繊維B(副成分)は何れも、PAN系酸化繊維であり、例えば市販のPAN系繊維を空気中、高温で処理することにより環化反応を生じさせ、酸素結合量を増加させて不融化、難燃化させる耐炎化処理によって得られるものを用いることができる。
【0024】
なお、炭素繊維シートの原料として考えられる酸化繊維ついては、PAN系酸化繊維以外に、ピッチ系、フェノール系、レーヨン系等の酸化繊維があるが、PAN系酸化繊維が最も高強度の炭素繊維シートが得られる。
【0025】
酸化繊維Aの繊維直径OAは11.0〜25.0μmである。酸化繊維Aの繊維直径OAが11.0μm未満の場合は、得られる酸化繊維シート及び炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。酸化繊維Aの繊維直径OAが25.0μmを超える場合は、得られる酸化繊維シート及び炭素繊維シートの強度が低下し、所期のシート厚さの薄いものが得られ難いので好ましくない。
【0026】
酸化繊維Bについては、酸化繊維シート中の酸化繊維B含有率が4〜25質量%であり、酸化繊維Aとの直径比OB/OAが0.40〜0.80である。この範囲以外の場合は、所期物性の炭素繊維シートが得られない。
【0027】
酸化繊維A、酸化繊維Bの何れも、その繊維長(カット長)は3〜15mmである。繊維長が3mm未満の場合は、得られる酸化繊維シート及び炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。繊維長が15mmを超える場合は、得られる酸化繊維シートにおける繊維の分散性が低下し、更にこの酸化繊維シートが炭素化されてなる炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。
【0028】
酸化繊維A、酸化繊維Bの何れも、その比重は、特に限定されないが、1.35〜1.45が好ましい。
【0029】
酸化繊維A、酸化繊維Bの何れも、その乾強度は15kgf/mm2(147N/mm2)以上が好ましい。乾強度が15kgf/mm2(147N/mm2)未満の場合は、これら酸化繊維A、Bをシート化して得られる酸化繊維シートの強度低下、更にこの酸化繊維シートが炭素化されてなる炭素繊維シートの強度低下による微粉末発生が増加するので好ましくない。
【0030】
なお、酸化繊維A、酸化繊維Bにおける乾強度は、JIS L 1015により測定される物性値である。
【0031】
〔バインダー繊維〕
炭素繊維シート原料としては必要に応じ、レーヨン繊維、セルローズ繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニール繊維、ポリアミド繊維等のバインダー繊維を、酸化繊維シート中に混合して用いてもよい。
【0032】
酸化繊維シート中のバインダー繊維の含有率は30質量%以下が好ましい。バインダー繊維含有率が30質量%を超える場合は、この酸化繊維シートを炭素化して得られる炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。
【0033】
〔酸化繊維シート〕
上述した酸化繊維A、酸化繊維Bなどの原料酸化繊維は、必要に応じバインダー繊維を加え、シート加工して原料酸化繊維等が均一に分散含有されてなる酸化繊維シートにする。
【0034】
シート加工方法については特に限定はされないが、原料酸化繊維等を湿式抄紙して紙状にする湿式抄紙法、原料酸化繊維等を乾式方式によりウエッブを作製した後ウォータージェット方式により不織布を作製する不織布加工方法等を用いることができる。
【0035】
上記シート加工方法の中でも、繊維長3〜15mmの短繊維の原料酸化繊維についてはシート加工が容易なことから、湿式抄紙法が特に好ましい。
【0036】
酸化繊維シートの厚さは0.20〜0.80mmが好ましい。
【0037】
酸化繊維シートの嵩密度は1.0g/cm3以下が後工程での圧縮処理による厚さコントロールがし易いので好ましい。酸化繊維シートの嵩密度が1.0g/cm3を超えると厚さ低減化に対するコントロールが難しい。
【0038】
〔樹脂処理〕
上述した酸化繊維シートには、圧縮処理する前に、強度向上効果及び厚さ低減効果をより発揮させることを目的として、樹脂処理を行う。樹脂処理により、炭素化時の厚さ復元を抑制し、厚さの薄い素材を得易くなる。
【0039】
樹脂の種類は熱可塑性、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、後工程で高温(100〜350℃)圧縮処理される際に軟化し、繊維間で融着し、かつ焼成炭素化時に僅かでも炭素化し残留する樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリビニルアルーコール(PVA)、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、エポキシ、フェノールノボラック、アラミド、ポリイミド等の樹脂が好ましい。なお、水分散性又は水に溶解性の高いものが取扱性の点でより好ましい。
【0040】
樹脂の付着量は、樹脂の種類や、炭素化後の織物の目標とする硬さにより最適量は異なるが、通常0.2〜10質量%の範囲が好ましい。樹脂の付着量が10質量%を超える場合、焼成炭素化して得られる炭素繊維シートは、柔軟性がなくなり、脆くなるので好ましくない。
【0041】
樹脂処理の方法は浸漬法が好ましい。この方法によれば最も均一に樹脂添着が可能である。樹脂処理時の温度は常温(25℃)〜90℃の範囲が好ましい。
【0042】
〔圧縮処理〕
上述した酸化繊維シートを、樹脂処理後又は処理せずに、100〜350℃の温度下、圧力0.5〜20MPaにて圧縮処理し、圧縮処理後の酸化繊維シートの厚さを0.1〜1.0mmにする。
【0043】
圧縮処理後の酸化繊維シートの厚さが0.1mm未満の場合は、酸化繊維シートの強度が低く炭素化が難しい。圧縮処理後の酸化繊維シートの厚さが1.0mmを超える場合は、所期の薄型炭素繊維シートが得られない。
【0044】
圧縮処理時の温度が100℃未満の場合は、圧縮処理による酸化繊維シートの強度向上効果がない。圧縮処理時の温度が350℃を超える場合は、繊維軟化損傷のためシート強度が低下する。
【0045】
圧縮処理時の圧力が0.5MPa℃未満の場合は、酸化繊維シートの強度向上効果や、厚さの低減効果がない。圧縮処理時の圧力が20MPaを超える場合は、繊維損傷のためシート強度が低下する。
【0046】
この圧縮処理時の温度及び圧力は、樹脂処理時の樹脂の種類及び目標とする炭素繊維シートの厚さにより適宜調整する。
【0047】
〔焼成・炭素化〕
圧縮処理後、酸化繊維シートを、窒素ガス中などの不活性ガス中で0.5N/cm以下の張力下、1100〜1700℃の温度で連続的に焼成・炭素化する。1100〜1700℃の温度での焼成時間は0.5〜20分間が好ましい。
【0048】
焼成時の温度が1100℃未満の場合は、得られる炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。焼成時の温度が1700℃を超える場合は、炭素繊維シートの強度が低下し、微粉末が発生するので好ましくない。
【0049】
以上の本発明製造方法の一例により、前述の本発明のPAN系炭素繊維シートを製造することができる。以下、本発明のPAN系炭素繊維シートについて詳細に説明する。
【0050】
本発明のPAN系炭素繊維シートは、炭素繊維A(主成分)と炭素繊維B(副成分)とが均一に分散含有されてなる炭素繊維シートである。
【0051】
炭素繊維Aの繊維直径CAは8.0〜15.0μmである。炭素繊維Aの繊維直径CAが8.0μm未満の場合は、炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。炭素繊維Aの繊維直径CAが15.0μmを超える場合は、薄層の炭素繊維シートが得られ難いので好ましくない。
【0052】
炭素繊維Bと炭素繊維Aとの直径比CB/CAは0.40〜0.80である。繊維直径比CB/CAが0.40未満の場合、繊維直径比CB/CAが0.80を超える場合の何れの場合も、炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。
【0053】
炭素繊維Bの炭素繊維含有率は4〜25質量%である。炭素繊維Bの炭素繊維含有率が4質量%未満の場合は、炭素繊維Bによる強度向上効果がなく、炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。炭素繊維Bの炭素繊維含有率が25質量%を超える場合は、繊維の分散性低下に伴い炭素繊維シートの強度が低下するので好ましくない。
【0054】
炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率は95質量%以上である。
【0055】
本発明のPAN系炭素繊維シートの厚さは0.1〜0.5mmである。シートの厚さが0.1mm未満の場合は、炭素繊維シートの原料となる酸化繊維シートの強度が低く炭素化が難しい。シートの厚さが0.5mmを超える場合は、所期の薄型炭素繊維シートではない。
【0056】
本発明のPAN系炭素繊維シートの引っ張り強度は7N/cm以上である。引っ張り強度が7N/cm未満の場合は、炭素化前の酸化繊維シートの引っ張り強度も低く、この酸化繊維シートの炭素化時に伸びや切断を生じ易い。炭素繊維シートの後加工(樹脂処理、セラミック塗布処理、カーボンブラック処理など)時に過度な張力がかかると伸びや切断を生じ易い。
【0057】
なお、本発明のPAN系炭素繊維シートの形状は、上記物性を満たすものであれば湿式の抄紙加工による炭素繊維紙、及び乾式の不織布加工による炭素繊維不織布等の何れの形状でもよい。
【0058】
【実施例】
本発明を以下の実施例及び比較例により詳述する。
【0059】
以下の実施例及び比較例の条件により炭素繊維シートを作製した。原料酸化繊維A、原料酸化繊維B、バインダー繊維、酸化繊維シート及び炭素繊維シートの諸物性値を、前述又は以下の方法により測定した。
【0060】
繊維比重:アルキメデス法(溶媒アセトン)により測定した。
【0061】
厚さ:直径30mmの円形圧板で200gfを負荷したとき(2.8kPa)の厚さを測定した。
【0062】
目付:シートの寸法及び120℃での乾燥質量より、単位面積当たりの質量を算出した。
【0063】
嵩密度:上記条件により測定した厚さ及び目付から算出した。
【0064】
炭素繊維シート中の炭素繊維A(主成分)及び炭素繊維B(副成分)の繊維直径、並びに、炭素繊維含有率:
測定対象シートを50mm角にカットし、この50mm角のシートを更に3mm間隔に短冊状にカットした。次いで各短冊の単繊維をピンセットでほぐした後、200mlビーカーに入れ、1vol%のエタノール水溶液を150mlビーカーに入れ、攪拌分散させる。この分散液をスポイトで採取し、繊維をプレパラートの上に載せ、倍率200倍で顕微鏡で顕微鏡写真撮影を行う。この顕微鏡写真より検体数n=100について繊維直径を測定した。繊維直径についてはμm単位で小数1桁まで求めた。
【0065】
この繊維直径について、横軸を繊維直径、縦軸を繊維の個数としてヒストグラムにまとめると、太い繊維(炭素繊維A)のピークと細い繊維(炭素繊維B)のピークとが出現した。
【0066】
このピークの±10%の繊維直径における繊維の個数より、各繊維直径の平均値を算出し、測定対象が炭素繊維の場合はそれぞれ、CAμm及びCBμmとした。
【0067】
炭素繊維Bと炭素繊維Aの質量比は、
(炭素繊維Bの個数×CBの自乗×原料酸化繊維Bの繊維長)/(炭素繊維Aの個数×CAの自乗×原料酸化繊維Aの繊維長)
の式を用いて算出した。
【0068】
炭素繊維Aの繊維含有率、炭素繊維Bの繊維含有率、及び炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率は、以下の方法で求めた。
【0069】
測定対象シート100mm角を120℃、2hrs乾燥、精秤後、熱濃硫酸(80℃)300ml中で30分処理した。次いで、この酸処理シートを放冷した後、H2O25質量%水溶液を100ml加え、1hrs放置した。この放置後のシートを磁性フィルターで濾過し純水で洗浄した。この洗浄後のシートの乾燥質量より炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率を求めた。
【0070】
この炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率と、上記炭素繊維Bと炭素繊維Aの質量比とから、それぞれ炭素繊維B及び炭素繊維Aの繊維含有率を算出した。
【0071】
シートの引張強度;幅20mm,長さ200mmの試験片をつかみ間隔100mm、引張速度100mm/minにて測定した。
【0072】
X線結晶サイズ:広角X線回折測定での2θのピークの半値幅と下記のシェラーの式
X線結晶サイズ(nm)=(k×λ)/β×cosθ
k:装置定数 0.90
λ:X線波長 0.154nm
β:2θ=26.0°付近の最大ピークの半値幅
より求めた。
【0073】
実施例1
表1に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度21.0kgf/mm2(206N/mm2)〕を繊維含有率で95.0質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度22.5kgf/mm2(221N/mm2)〕を繊維含有率で5.0質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.60、厚さ0.6mm、目付120g/cm2、嵩密度0.20g/cm3〕を作製した。
【0074】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.8質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.30mmまで圧縮処理し、目付122g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0075】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0076】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)11.1μmの炭素繊維Aの含有率が94.5質量%、炭素繊維直径(CB)6.5 μmの炭素繊維Bの含有率が5.0質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.59、炭素繊維含有率〔表1中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.5質量%、厚さが0.31mm、目付が74g/m2、嵩密度が0.24g/cm3、引っ張り強度が8N/cm、X線結晶サイズが2.2nmであり、良好な物性の炭素繊維シートであった。
【0077】
実施例2
表1に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)14.9μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度22.4kgf/mm2(220N/mm2)〕を繊維含有率で85.0質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度25.3kgf/mm2(248N/mm2)〕を繊維含有率で15.0質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.61、厚さ0.55mm、目付119g/cm2、嵩密度0.22g/cm3〕を作製した。
【0078】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.5質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.28mmまで圧縮処理し、目付121g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0079】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0080】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)11.0μmの炭素繊維Aの含有率が85.0質量%、炭素繊維直径(CB)6.3μmの炭素繊維Bの含有率が14.9質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.57、炭素繊維含有率〔表1中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.9質量%、厚さが0.28mm、目付が73g/m2、嵩密度が0.26g/cm3、引っ張り強度が15.5N/cm、X線結晶サイズが2.25nmであり、良好な物性の炭素繊維シートであった。
物であった。
【0081】
実施例3
表1に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.0μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度20.5kgf/mm2(201N/mm2)〕を繊維含有率で78.5質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.0μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度26.0kgf/mm2(255N/mm2)〕を繊維含有率で21.5質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.60、厚さ0.53mm、目付115g/cm2、嵩密度0.22g/cm3〕を作製した。
【0082】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.5質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.27mmまで圧縮処理し、目付117g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0083】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0084】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)10.9μmの炭素繊維Aの含有率が78.5質量%、炭素繊維直径(CB)6.4μmの炭素繊維Bの含有率が21.3質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.59、炭素繊維含有率〔表1中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.8質量%、厚さが0.26mm、目付が70g/m2、嵩密度が0.27g/cm3、引っ張り強度が13.5N/cm、X線結晶サイズが2.27nmであり、良好な物性の炭素繊維シートであった。
【0085】
実施例4
表1に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)13.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度24.3kgf/mm2(238N/mm2)〕を繊維含有率で84.9質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)8.9μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度27.4kgf/mm2(269N/mm2)〕を繊維含有率で15.1質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.68、厚さ0.57mm、目付120g/cm2、嵩密度0.21g/cm3〕を作製した。
【0086】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、2.0質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.29mmまで圧縮処理し、目付122g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0087】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0088】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)9.5μmの炭素繊維Aの含有率が85.0質量%、炭素繊維直径(CB)6.4μmの炭素繊維Bの含有率が14.8質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.67、炭素繊維含有率〔表1中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.8質量%、厚さが0.29mm、目付が73g/m2、嵩密度が0.25g/cm3、引っ張り強度が12.5N/cm、X線結晶サイズが2.24nmであり、良好な物性の炭素繊維シートであった。
【0089】
比較例1
表1に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.2μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度19.3kgf/mm2(189N/mm2)〕を繊維含有率で96.8質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.2μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度25.4kgf/mm2(249N/mm2)〕を繊維含有率で3.2質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.61、厚さ0.72mm、目付120g/cm2、嵩密度0.17g/cm3〕を作製した。
【0090】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.5質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.35mmまで圧縮処理し、目付122g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0091】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0092】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)11.2μmの炭素繊維Aの含有率が97.0質量%、炭素繊維直径(CB)6.5μmの炭素繊維Bの含有率が2.8質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.58、炭素繊維含有率〔表1中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.8質量%、厚さが0.38mm、目付が73g/m2、嵩密度が0.19g/cm3、引っ張り強度が5.2N/cm、X線結晶サイズが2.24nmであり、良好な物性の炭素繊維シートではなかった。表1中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0093】
【表1】
【0094】
比較例2
表2に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長7mm、乾強度21.0kgf/mm2(206N/mm2)〕を繊維含有率で71.5質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.0μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度22.5kgf/mm2(221N/mm2)〕を繊維含有率で28.5質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.60、厚さ0.55mm、目付114g/cm2、嵩密度0.21g/cm3〕を作製した。
【0095】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.6質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.30mmまで圧縮処理し、目付122g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0096】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0097】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)10.9μmの炭素繊維Aの含有率が72.7質量%、炭素繊維直径(CB)6.3μmの炭素繊維Bの含有率が27.0質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.58、炭素繊維含有率〔表2中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.7質量%、厚さが0.32mm、目付が73g/m2、嵩密度が0.23g/cm3、引っ張り強度が3.2N/cm、X線結晶サイズが2.20nmであり、良好な物性の炭素繊維シートではなかった。表2中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0098】
比較例3
表2に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.1μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長51mm、乾強度21.0kgf/mm2(206N/mm2)〕を繊維含有率で85.0質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)5.5μmのPAN系酸化繊維〔比重1.38、カット長31mm、乾強度29.3kgf/mm2(287N/mm2)〕を繊維含有率で15.0質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.36、厚さ0.62mm、目付120g/cm2、嵩密度0.19g/cm3〕を作製した。
【0099】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.6質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.35mmまで圧縮処理し、目付122g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0100】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0101】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)11.3μmの炭素繊維Aの含有率が85.0質量%、炭素繊維直径(CB)3.9μmの炭素繊維Bの含有率が14.6質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.35、炭素繊維含有率〔表2中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.6質量%、厚さが0.38mm、目付が74g/m2、嵩密度が0.19g/cm3、引っ張り強度が4.2N/cm、X線結晶サイズが2.22nmであり、良好な物性の炭素繊維シートではなかった。表2中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0102】
比較例4
表2に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)15.2μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長51mm、乾強度19.3kgf/mm2(189N/mm2)〕を繊維含有率で85.0質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)12.5μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長51mm、乾強度24.8kgf/mm2(243N/mm2)〕を繊維含有率で15.0質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.82、厚さ0.59mm、目付121g/cm2、嵩密度0.21g/cm3〕を作製した。
【0103】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、1.7質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.31mmまで圧縮処理し、目付123g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0104】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.2N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0105】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)10.9μmの炭素繊維Aの含有率が85.0質量%、炭素繊維直径(CB)9.3μmの炭素繊維Bの含有率が14.7質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.85、炭素繊維含有率〔表2中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.7質量%、厚さが0.32mm、目付が74g/m2、嵩密度が0.23g/cm3、引っ張り強度が3.5N/cm、X線結晶サイズが2.15nmであり、良好な物性の炭素繊維シートではなかった。表2中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0106】
実施例5
表2に示すように、原料酸化繊維Aとして繊維直径(OA)14.9μmのPAN系酸化繊維〔比重1.39、カット長5mm、乾強度20.0kgf/mm2(196N/mm2)〕を繊維含有率で92.0質量%と、原料酸化繊維Bとして繊維直径(OB)9.0μmのPAN系酸化繊維〔比重1.37、カット長5mm、乾強度26.0kgf/mm2(255N/mm2)〕を繊維含有率で5.0質量%と、バインダー繊維として繊維直径12.0μmのレーヨン繊維(比重1.22)を繊維含有率で3.0質量%とを、水中にて分散させ均一に混綿後、連続的に抄紙し、酸化繊維シート〔原料酸化繊維Aと原料酸化繊維Bとの繊維直径比(OB/OA)0.60、厚さ0.28mm、目付115g/cm2、嵩密度0.41g/cm3〕を作製した。
【0107】
さらに、得られた酸化繊維シートをPVA水溶液(濃度1.0質量%)にて浸漬処理し、2.0質量%添着せしめた後、温度150℃、圧力15MPaにて厚さ0.24mmまで圧縮処理し、目付117g/m2の樹脂・圧縮処理後の酸化繊維シートを得た。
【0108】
この酸化繊維シートを窒素雰囲気下、張力0.1N/cm、1500℃、2分間連続的に焼成・炭素化することによって炭素繊維シートを得た。
【0109】
得られた炭素繊維シートは、炭素繊維直径(CA)11.2μmの炭素繊維Aの含有率が94.8質量%、炭素繊維直径(CB)6.4μmの炭素繊維Bの含有率が5.1質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの繊維直径比(CB/CA)が0.57、炭素繊維含有率〔表2中の炭素繊維(A+B)含有率〕が99.9質量%、厚さが0.25mm、目付が71/m2、嵩密度が0.28g/cm3、引っ張り強度が11.0N/cm、X線結晶サイズが2.00nmであり、良好な物性の炭素繊維シートであった。
【0110】
【表2】
【0111】
【発明の効果】
本発明のPAN系炭素繊維シートは、主成分炭素繊維(炭素繊維A)と副成分炭素繊維(炭素繊維B)とが均一に分散含有されたPAN系炭素繊維シートであって、炭素繊維Aの繊維直径CA、炭素繊維Bと炭素繊維Aとの繊維直径比CB/CA、炭素繊維Bの炭素繊維含有率、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率、厚さ、引っ張り強度などの諸物性が所定範囲にあるので、繊維の分散性が良く、厚さのバラツキが少なく、後加工性の良い高強度の薄型のPAN系炭素繊維シートである。
【0112】
このPAN系炭素繊維シートを製造するに当たっては、本発明の製造方法:PAN系酸化繊維シート中の副成分繊維(原料酸化繊維B)として、主成分繊維(原料酸化繊維A)より細い酸化繊維を、所定の範囲に混合組み合わせてシート加工することにより、繊維の分散性が改善された酸化繊維シートを得、得られた酸化繊維シートを樹脂処理し、更に圧縮処理後、出来るだけ張力をかけずに不活性ガス中で焼成・炭素化することを特徴とする製造方法により、加工時の裂けや切断を生じ易いなど加工性トラブルを生ずることなく、繊維の分散時に、繊維同士の収束繊維、繊維塊が生じ、得られた酸化繊維シートの炭素化時におけるシートの強度低下や、炭素化後における炭素繊維シートの強度低下を招くなど製造時トラブルを生ずることなく、上記PAN系炭素繊維シートを安定して得ることができる。
Claims (1)
- 繊維直径OAが11.0〜25.0μm、繊維長が3〜15mmの酸化繊維Aと、繊維直径OBが式2
0.40 < OB/OA < 0.80 式2
を満たし、繊維長が3〜15mmの酸化繊維Bとが、均一に分散含有されてなり、酸化繊維Bの繊維含有率が4〜25質量%である酸化繊維シートを、樹脂付着量0.2〜10質量%で樹脂処理後、更に圧縮処理し、厚さを0.1〜1.0mmにした後、不活性ガス中で0.5N/cm以下の張力下、1100〜1700℃の温度で連続的に焼成・炭素化する、繊維直径CAが8.0〜15.0μmの炭素繊維Aと、繊維直径CBが式1
0.40 < CB/CA < 0.80 式1
を満たす炭素繊維Bとが、均一に分散含有されたポリアクリロニトリル系炭素繊維シートであって、炭素繊維Bの炭素繊維含有率が4〜25質量%、炭素繊維Aと炭素繊維Bとの合計含有率が95質量%以上、嵩密度が0.24〜0.28g/cm3、厚さが0.1〜0.5mm、引っ張り強度が7N/cm以上のポリアクリロニトリル系炭素繊維シートの製造方法。
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