JP4136991B2 - 魚釣用電動リール - Google Patents

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本発明は、リール本体に回転自在に取り付くスプールを巻取り駆動するスプール駆動モータを備えた魚釣用電動リールに関する。
船釣り等、一般に深場の魚層を対象とした魚釣りを行う場合、魚釣用電動リール(以下、「電動リール」という)が広く使用されている。
従来周知のようにこの電動リールは、スプール駆動モータ(以下、「スプールモータ」という)の駆動でスプールを回転させて釣糸の巻取りを行うもので、特許文献1に開示されるように昨今の電動リールには、釣場の状況(例えば、対象魚の大きさや種類,魚とのファイトやヒット数)に応じた釣糸の巻取り操作を行うべく、リール本体に変位可能に装着したモータ出力調節体(調節レバー)の操作でスプールモータへの電流量を制御することにより、モータ出力を調節して釣糸の巻取り速度を変化させる電気式変速装置が知られており、釣人は状況に応じモータ出力調節体を操作して、実釣に即した釣糸の巻取り操作を行っている。
しかし、この電気式変速装置は、スプールモータの駆動力をスプールに伝達させる歯車動力伝達機構のギヤ比の設定条件によって低回転時のトルクが不足したり、高速巻取り性能が劣る等の課題が残されていた。
そこで、斯かる不具合を解決するため、特許文献2には上述した電気式変速装置に加え、スプールモータのモータ軸とこのモータ軸の回転をスプールに伝達する動力伝達機構との間に、ギヤ比の異なる高速用減速歯車機構と低速用減速歯車機構とを動力伝達可能に連結し、リール本体の操作パネル上に設けた高速モードスイッチと低速モードスイッチの操作でスプールモータの回転方向を変えることにより、高速用減速歯車機構と低速用減速歯車機構のいずれか一方を選択的に動力伝達可能として、スプールの回転速度を変化させる機械式変速装置を備えた電動リールが開示されている。
特許第2977978号公報 特開2001−148978号公報
而して、実際の釣場に於て巻取り操作を行う場合、状況に応じた迅速な変速操作が要求される。
しかし乍ら、電気式変速装置と機械式変速装置を備えた特許文献2の電動リールにあっては、高速モードスイッチと低速モードスイッチの押圧操作で機械式変速装置の切換えを行い、また、リール本体に装着したモータ出力調節体の変位操作で、別途電気式変速装置の出力調節を行わなければならないため、変速操作が煩わしく時間がかかり、魚との対応が遅れて魚の動きに適切に対応できずに魚をバラシてしまう虞があった。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、電気式変速装置と機械式変速装置を備えた電動リールに改良を加え、状況に応じた両変速装置の迅速且つ適切な変速操作を可能とした電動リールを提供することを目的とする。
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、リール本体に回転可能に支持されたスプールを巻取り駆動するスプールモータと、スプールの駆動系に装着され、当該スプールへのスプールモータの動力伝達を高速状態と低速状態とに切り換える機械式変速装置と、リール本体に変位可能に装着したモータ出力調節体の操作で、スプールモータへの電流量を制御してモータ出力を増減調節する電気式変速装置とを備えた電動リールに於て、
上記モータ出力調節体の変位操作範囲内の操作で、機械式変速装置を高速状態と低速状態とに切換え可能としたことを特徴とする。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電動リールに於て、モータ出力調節体は、所定の範囲に亘ってリール本体に回転可能に取り付き、当該モータ出力調節体の所定量の回転操作位置で機械式変速装置が低速状態から高速状態に切り換わり、当該回転操作位置の前半側回転操作領域が、機械式変速装置の低速状態に於ける電気式変速装置のモータ出力増減調節範囲で、上記回転操作位置の後半側回転操作領域が、機械式変速装置の高速状態に於ける電気式変速装置のモータ出力増減調節範囲であることを特徴とする。
請求項1及び請求項2に係る発明によれば、モータ出力調節体の変位操作でスプールモータのモータ出力を調節し乍ら、モータ出力調節体の変位操作範囲内の操作で機械式変速装置を高速状態と低速状態とに切り換えることができるので、釣人は特別の意識をせずに一つのモータ出力調節体の変位操作によって機械式変速と電気式変速の両操作が可能となり、この結果、釣糸の巻取り速度時に魚の動きに対し迅速且つ適切な変速操作が可能となって、魚を不用意にバラシてしまう等のトラブルを回避することが可能となった。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図9は請求項1及び請求項2の第一実施形態に係る電動リールを示し、図1に於て、1はリール本体3のフレーム、5,7は当該フレーム1の左右に取り付く側板で、両側板5,7間にスプール軸9を介してスプール11が回転可能に支持されている。
スプール軸9はスプール11の軸心を貫通し、その側板5側の一端が、フレーム1に一体的に取り付く第1のセットプレート13に軸受15を介して回転可能に支持されている。そして、この一端側に、後述する動力伝達機構17のスプール軸駆動歯車19が回止め嵌合されている。
スプール11は、スプールモータ21の駆動とハンドル23の巻取り操作で巻取り方向に回転して釣糸が巻回されるようになっており、図1及び図2に示すようにスプールモータ21は、スプール11前方のフレーム1に一体成形された筒状のモータケース25内に収納されている。
そして、側板5側のリール本体3内に、スプールモータ21の回転力をスプール軸9に伝達する機械式変速装置27と第1の減速機構29、そして、前記スプール軸駆動歯車19を含む複数の歯車からなる動力伝達機構17が、スプールモータ21のモータ軸(モータ出力部)31とスプール軸9との間に順次装着されており、スプールモータ21の回転力がこれらの機械式変速装置27や減速機構29,動力伝達機構17で変速/減速されて、スプール軸9に伝達されるようになっている。
図3は機械式変速装置27と減速機構29の拡大断面図、図4は機械式変速装置27と減速機構29,動力伝達機構17の歯車の回転方向を説明する模式図を示し、図中、33はモータ軸31に回止め嵌合されたピニオンで、スプールモータ21は正逆両方向へ回転し、これに伴い、図4乃至図6に示すようにピニオン33も正,逆両方向へ回転する。
そして、上記ピニオン33に低速用減速歯車機構35の低速用歯車37と、高速用減速歯車機構39の高速用歯車41が個別に噛合しており、機械式変速装置27は、この低速用減速歯車機構35と高速用減速歯車機構39とで構成されている。
低速用歯車37と高速用歯車41は、その外径が同一(ピニオン33とのギヤ比が同一)に設定されており、図3及び図4に示すように低速用歯車37は、第1の回転軸43に一方向クラッチ45を介して回転可能に支持され、高速用歯車41は、第2の回転軸47に一方向クラッチ49を介して回転可能に支持されている。そして、第1の回転軸43は、フレーム25と減速機構29のキャリア51との間に軸受53,55を介して回転可能に支持され、第2の回転軸47は、前記セットプレート13の内側に配された第2のセットプレート57とフレーム1との間に軸受59,61を介して回転可能に支持されている。
而して、上記一方向クラッチ45,49は、力を伝達するその回転方向が互いに逆向きに設定されており、低速用歯車37側の一方向クラッチ45は、低速用歯車37が逆転(図4及び図5に於ける反時計回りの回転;以下、同様)すると、その楔作用で低速用歯車37の回転力を回転軸43に伝達し、低速用歯車37が正転(図6に於ける時計回りの回転;以下、同様)すると、その回転力を回転軸43に伝達しないように構成されている。
一方、これとは逆に高速用歯車41側の一方向クラッチ49は、高速用歯車41が正転すると、その楔作用で高速用歯車41の回転力を回転軸47に伝達し、高速用歯車41が逆転すると、その回転力を回転軸47に伝達させないように構成されている。
そして、第1の回転軸43に小歯車63が回止め嵌合され、第2の回転軸47に大歯車65が回止め嵌合されており、これらは互いに噛合し、回転軸43に減速機構29の太陽歯車67が回止め嵌合されている。
図3に示すように減速機構29は、回転軸43に回り止め嵌合された太陽歯車67と、セットプレート57と太陽歯車67との間に配置されて、セットプレート57に形成された内歯69と太陽歯車67とに夫々噛合する複数の遊星歯車71とを備え、遊星歯車71は支軸73を介してキャリア51に回転可能に支持され、キャリア51は軸受75,77を介してセットプレート13,57との間で回転可能に支持されている。
そして、キャリア51に、動力伝達機構17の駆動歯車79が回り止め嵌合されている。
図1及び図4に示すように動力伝達機構17は、既述したスプール軸駆動歯車19と上記駆動歯車79、そして、スプール軸駆動歯車19と駆動歯車79との間に配置されてこれらに噛合する大歯車81とで構成されている。そして、図3に示すように大歯車81は、セットプレート13に設けた筒状の支持部83に軸受85を介して回転可能に支持されているが、大歯車81の中央に設けた筒状部86の内周には、セットプレート57に軸支された一方向クラッチ87の外輪89が回止め嵌合されており、ハンドル23の巻取り操作時に当該一方向クラッチ87の楔作用で大歯車81の回転が阻止されて、その反力でハンドル23の駆動力が、後述する減速機構91からスプール11に伝達されるようになっている。
そして、図1に示すようにスプール軸9は、スプール11の中央を貫通してその他端側が側板7内に突出し、その突出端に、スプールモータ21の回転力を減速し、ハンドル23操作の回転力をスプール11に伝達させる第2の減速機構(動力伝達機構)91が装着されている。
従来と同様、この減速機構91は、スプール軸9の突出端に取り付けられた太陽歯車93とこれに噛合する複数の遊星歯車95、そして、スプール11の一端に刻設された内歯歯車97等からなり、内歯歯車97に遊星歯車95が噛合している。
そして、遊星歯車95は支軸99を介してキャリア101に取り付けられており、キャリア101はスプール11に取り付けたブラケット103に嵌合し、軸受105を介してスプール軸9に回転可能に支持されている。
また、図1中、23は既述した釣糸巻取り操作用のハンドルで、当該ハンドル23は側板7に回動可能に挿着したハンドル軸107の側板外突出端に連結されており、ハンドル軸107にはラチェット109が側板7内で固着され、更にドライブギヤ111が回転可能に取り付けられている。そして、ドライブギヤ111とハンドル軸107は、ハンドル軸107に装着した従来周知のドラグ装置113で摩擦結合されており、ドラグ装置113はドラグ力調節レバー115の操作でドラグ力が調節できるようになっている。
そして、既述したようにハンドル23の巻取り操作時に、一方向クラッチ87の楔作用でスプール軸駆動歯車19に噛合する大歯車81の回転が阻止されるため、ハンドル23の回転力がスプールモータ21側の第2の減速機構91を介してスプール11に伝達されて、スプール11が巻取り方向に回転するようになっている。
また、図示しないが上記ラチェット109には、周知の図示しないばねで付勢された係止爪が係止しており、斯様にラチェット109に係止爪が係止してスプール11の逆転止めが図られている。
そして、本実施形態に係る電動リール116も、既述した機械式変速装置27に加え、特許文献1で開示された電動リールと同様の電気式変速装置が装着されており、図1及び図2に示すようにハンドル23側の側板7の側部前方に、レバー形状のモータ出力調節体(以下、「パワーレバー」という)117がハンドル23と同方向へ回転操作可能に取り付けられている。
パワーレバー117は、側板7内に装着したポテンショメータ119の操作軸121に連結されており、パワーレバー117の回転操作によるポテンショメータ119の抵抗値の変化が、リール本体3上部の制御ボックス123内に装着したマイクロコンピュータに入力されている。そして、マイクロコンピュータは、パワーレバー117の操作量に応じたパルス信号のデューティ比としてスプールモータ21への駆動電流通電時間率を可変制御して、スプールモータ21のモータ出力をモータ停止状態から高出力値まで連続的に増減調節するようになっているが、本実施形態は、このパワーレバー117の操作で、既述した機械式変速装置27が低速用減速歯車機構35による低速状態と、高速用減速歯車機構39による高速状態とに交互に切り換わるようになっている。
即ち、図2に示すようにパワーレバー117は、側板7の側部前方にモータ停止位置Aから最大操作位置Bに亘って120°の操作角で回転操作可能に取り付けられており、実線で示すようにパワーレバー117がモータ停止位置Aにあるとき、スプールモータ21は停止状態にある。
そして、パワーレバー117をモータ停止位置Aからリール本体3の前方(最大操作位置B方向)へ60°回転操作した中間回転操作位置Cで、機械式変速装置27が低速状態から高速状態に切り換わるように構成されており、この中間回転操作位置Cの前半側回転操作領域、即ち、図2中、A〜C間の操作領域(以下、「低速域」という)に於て、マイクロコンピュータは、パワーレバー117の操作量に応じスプールモータ21を一例としてデューティ比0〜100%で駆動制御してモータ出力を増減調節すると共に、スプールモータ21の回転力を低速用減速歯車機構35を介して低速状態でスプール11に伝達させるべく、スプールモータ21を正転方向へ駆動させるようになっている。
而して、斯様にスプールモータ21が正転すると、既述した機械式変速装置27の構成から、図4及び図5に示すようにピニオン33に噛合する低速用歯車37と高速用歯車41が共に逆転するが、一方向クラッチ45のみが低速用歯車37の回転を回転軸43に伝えるため、回転軸43はモータ軸31の回転速度及びピニオン33と低速用歯車37とのギヤ比に対応して、低速用歯車37と共に図6の高速状態より遅い速度で回転し、このスプールモータ21の回転力が回転軸43から減速機構29の太陽歯車67へと伝達されて、この減速機構29から動力伝達機構17を介してスプール軸9へと伝達される。
従って、この低速域では、パワーレバー117の操作で駆動制御されるスプールモータ21の回転力が、低速用減速歯車機構35を介してスプール11に伝達されることとなる。
一方、ポテンショメータ119には、パワーレバー117の操作量に応じた操作軸121の回転角を検出する角度センサ(図示せず)が取り付けられており、角度センサの検出信号はマイクロコンピュータに入力されている。
そして、マイクロコンピュータは角度センサの検出信号を基に、パワーレバー117の操作角が60°を超えて中間回転操作位置Cの後半側回転操作領域、即ち、図2中、C〜B間の操作領域(以下、「高速域」という)に入ったと判断すると、パワーレバー117の操作量に応じスプールモータ21を一例としてデューティ比50〜100%で駆動制御してモータ出力を増減調節すると共に、スプールモータ21の回転力を高速用減速歯車機構39を介して高速状態でスプール11に伝達させるべく、正転していたスプールモータ21を一旦停止させて逆転方向へ再駆動させるようになっている。
而して、斯様にスプールモータ21が逆転すると、図6に示すようにピニオン33に噛合する低速用歯車37と高速用歯車41が共に正転し、高速用減速歯車機構39側の一方向クラッチ49の楔作用で高速用歯車41の回転が回転軸47に伝わる。そして、低速用減速歯車機構35側の一方向クラッチ45は低速用歯車37の回転を回転軸43に伝えず、回転軸47が、モータ軸31の回転速度とピニオン31と高速用歯車41とのギヤ比に対応した回転速度で高速用歯車41と共に正転する。
このように回転軸47が正転すると、これに回り止め嵌合された大歯車65が正転してこれと噛合する小歯車63が逆転するため、小歯車63が回り止め嵌合された回転軸43が逆転し、この時、回転軸47の回転速度は大歯車65と小歯車63とのギヤ比に対応した大きさだけ増幅されて小歯車63から回転軸43に伝えられる。
このため、回転軸43は低速状態より速い速度で回転し、増幅されたスプールモータ21の回転力が回転軸43から減速機構29の太陽歯車67へと伝達されて、減速機構29から動力伝達機構17を介してスプール軸9へと伝達される。
従って、この高速域では、パワーレバー117の操作で駆動制御されるスプールモータ21の回転力が、高速用減速歯車機構39を介してスプール11に伝達されることとなる。
図7は既述した低速域と高速域に於けるパワーレバー117の操作量に応じた釣糸の巻取り速度を示すもので、図示するように低速域でスプールモータ21がデューティ比100%で駆動しても、スプールモータ21の回転力が低速用減速歯車機構35を介してスプール11に伝達される構造上、巻取り速度は高速域に比し低速となる。
一方、図1及び図2に示すように側板7の側部後方には、側板7内に装着された周知のクラッチ機構125を操作するクラッチレバー127が下方向へ押圧操作可能に取り付けられており、当該クラッチレバー127の押圧操作で、クラッチ機構125がクラッチONからクラッチOFFに切り換わるようになっている。
そして、このクラッチOFF状態でハンドル23を巻取り方向へ回転させると、図示しない周知の復帰機構を介してクラッチ機構125がクラッチON状態に復帰するように構成されており、このクラッチレバー127のクラッチON/OFFの切換え操作でスプール11が釣糸巻取り状態と釣糸繰出し状態とに切り換わって、スプール11へのスプールモータ21やハンドル23の回転力が伝達/遮断されるようになっている。
また、図1中、129はスプール11の回転数とその回転方向を検出する回転検出手段で、当該回転検出手段129は、セットプレート13に装着された一対のリードスイッチ131と、これに対向してスプール11の一端側周縁部に固着された複数のマグネット133とで構成されており、リードスイッチ131はマイクロコンピュータのCPUに接続されている。
而して、CPUは、特開平5−103567号公報で開示された糸長計測プログラムと同様、リードスイッチ131から出力されるスプール11の正転,逆転の判定信号を取り込んで釣糸の繰出しか巻取りかを判定すると共に、リードスイッチ131から取り込むスプール11の回転パルス信号をカウントして、この計数値を基にマイクロコンピュータのROMに記憶された糸長計算式を演算実行するようになっている。
そして、CPUはその演算結果(糸長)を、制御ボックス123の操作パネル135上に設けた表示器137に表示させるようになっており、釣人は斯かる表示を確認し乍ら、所定の水深に仕掛けを繰り出したり、ハンドル23やパワーレバー117の操作で釣糸を巻き取ることが可能である。
更に、図1に示すように操作パネル135上には、表示器137に隣接してハンドル23側にリセットスイッチ141と棚メモスイッチ143が上下に装着されており、これらはマイクロコンピュータ19に接続されている。
棚メモスイッチ143は棚位置の設定に使用するもので、既述したように釣糸の繰出しや巻取りに伴い、CPUがリードスイッチ131から取り込むスプール11の回転パルス信号を基に糸長を求めて表示器137に表示させるが、図8に示すように表示器137の上カラ表示部145に水面からの仕掛けの水深が、そして、棚カラ表示部147に棚からの仕掛けの距離が上下2段に並列して大きく表示されるようになっている。
そして、実釣の開始時に、釣糸が竿先から水面まで繰り出された処で釣人がリセットスイッチ141を操作すると、上カラ表示部145の表示値が「0.0」にリセットされるようになっている。
この後、釣人が釣糸を繰り出していくと、スプール11の回転に伴い、CPUで演算,計測された糸長値が上カラ表示部145に表示されるが、釣糸が例えば95.5m繰り出された処で釣人が棚メモスイッチ143を操作すると、棚カラ表示部147に「0.0」が表示されて棚位置が設定され、以後、図9に示すように棚位置から例えば15mの釣糸の巻取りに伴う仕掛けの距離と水面からの繰出し量(水深)が、棚カラ表示部147と上カラ表示部145に夫々表示されるようになっている。
そして、図8及び図9に示すように表示器137の左下には、HI/LOW表示部149が設けられており、パワーレバー117による機械式変速装置27の高速状態と低速状態の切換えが、HI/LOW表示部149に「HI」と「LOW」の文字で表示されるようになっている。
本実施形態に係る電動リール116はこのように構成されているから、クラッチレバー127のクラッチOFF操作で釣糸がスプール11から繰り出され、パワーレバー117によるスプールモータ21の巻取り駆動やハンドル23の巻取り操作でスプール11に釣糸が巻回され、釣糸の繰出しや巻取りに伴い、回転検出手段129の検出値を基に糸長が計測されて表示器137に糸長が表示されるが、図2に示すパワーレバー117の低速域と高速域の切換え操作で、機械式変速装置27が低速用減速歯車機構35による低速状態と、高速用減速歯車機構39による高速状態とに切り換わる。
そして、低速域で、マイクロコンピュータは、スプールモータ21を図4及び図5の如く正転方向へ駆動して、パワーレバー117の操作に応じたデューティ比0〜100%の範囲でモータ出力を増減調節し乍ら、スプールモータ21の回転力を低速用減速歯車機構35を介して減速機構29,動力伝達機構17,スプール軸9,減速機構91へと伝達させてスプール11を回転させることとなる。
また、パワーレバー117の操作量に応じた操作軸121の回転角を角度センサが検出しており、マイクロコンピュータは、角度センサの検出信号を基にパワーレバー117の操作角が60°を超えて図2の高速域に入ったと判断すると、正転していたスプールモータ21を一旦停止させて逆転方向へ再駆動して、パワーレバー117の操作に応じたデューティ比50〜100%の範囲でモータ出力を増減調節し乍ら、スプールモータ21の回転力を高速用減速歯車機構39を介して減速機構29,動力伝達機構17,スプール軸9,減速機構91へと伝達させてスプール11を回転させることとなる。
そして、図8及び図9に示すように、パワーレバー117による機械式変速装置27の切換えが、HI/LOW表示部149に「HI」と「LOW」の文字で表示される。
このように本実施形態によれば、パワーレバー117の回転操作でスプールモータ21のモータ出力を調節し乍ら、パワーレバー117の回転操作範囲内の操作で機械式変速装置27を高速状態と低速状態とに切り換えることができるので、釣人は特別の意識をせずに一つのパワーレバー117の回転操作によって機械式変速と電気式変速の両操作が可能となり、この結果、釣糸の巻取り速度時に魚の動きに対し迅速且つ適切な変速操作が可能となって、魚を不用意にバラシてしまう等のトラブルを回避することが可能となった。
尚、上記実施形態では、パワーレバー117の回転操作量を角度センサで検出したが、その他の方法として、例えばパワーレバー117にマグネットを装着すると共に、側板7側の中間回転操作位置Cに当該マグネットでONとなるリードスイッチを装着し、パワーレバー117が中間回転操作位置Cを通過する度にリードスイッチがONとなって、その信号を入力したマイクロコンピュータが、機械式変速装置27を交互に低速状態と高速状態とに切り換えるように構成してもよい。
図10は請求項1及び請求項2の第二実施形態に係る電動リール151を示し、本実施形態は、既述したパワーレバー117に代え、モータ出力調節体にスライドスイッチを用いたもので、以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、上記第一実施形態と同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
図10に示すように表示器137に隣接させて側板7の上部に、パワースイッチ153がガイド溝155に沿ってリール本体3の前後方向へモータ停止位置Aから最大操作位置Bまでスライド可能に装着されている。
そして、パワースイッチ153をモータ停止位置Aからリール本体3の前方(最大操作位置B方向)へ半分スライド操作した中間スライド操作位置Cで、第一実施形態と同様、機械式変速装置27が低速状態から高速状態に切り換わるように構成されている。そして、この中間スライド操作位置Cの前側スライド操作領域、即ち、図中、A〜C間(前半側移動操作領域)の低速域で、マイクロコンピュータが、パワースイッチ153のスライド操作量に応じスプールモータ21をデューティ比0〜100%で駆動制御してモータ出力を増減調節すると共に、スプールモータ21の回転力を低速用減速歯車機構35を介してスプール11に伝達させるべく、スプールモータ21を正転方向へ駆動させるようになっている。
また、前記ガイド溝155には、位置センサ(図示せず)が中間スライド操作位置Cに装着されており、位置センサの検出信号はマイクロコンピュータに入力されている。
そして、マイクロコンピュータは位置センサの検出信号を基に、パワースイッチ153が操作されて中間スライド操作位置Cの後側スライド操作領域、即ち、図中、C〜B間(後半側移動操作領域)の高速域に入ったと判断すると、第一実施形態と同様、パワースイッチ153のスライド操作量に応じスプールモータ21をデューティ比50〜100%で駆動制御してモータ出力を増減調節すると共に、スプールモータ21の回転力を高速用減速歯車機構39を介して高速状態でスプール11に伝達させるべく、正転していたスプールモータ21を一旦停止させて逆転方向へ再駆動させるようになっている。
従って、第一実施形態と同様、低速域では、パワースイッチ153のスライド操作で駆動制御されるスプールモータ21の回転力が、低速用減速歯車機構35を介してスプール11に伝達され、高速域では、パワースイッチ153のスライド操作で駆動制御されるスプールモータ21の回転力が、高速用減速歯車機構39を介してスプール11に伝達されることとなる。
このため、本実施形態によっても、パワースイッチ153のスライド操作でスプールモータ21のモータ出力を調節し乍ら、パワースイッチ153のスライド操作範囲内の操作で機械式変速装置27を高速状態と低速状態とに切り換えることができるので、釣人は一つのパワースイッチ153のスライド操作によって機械式変速と電気式変速の両操作が可能となり、この結果、釣糸の巻取り速度時に魚の動きに対し迅速且つ適切な変速操作が可能となって、魚を不用意にバラシてしまう等のトラブルを回避することが可能である。
図11は請求項1及び請求項2に係る電動リールの第三実施形態を示し、特許第3159637号公報には、パワーレバーによる電気式変速装置に加え、スプールモータの回転力を減速する減速機構の駆動系統の一部を切換え部材(手動による外部操作体)の操作でON/OFFして噛み合うギヤ比を変化させることにより、スプールの回転速度を機械的に高速状態と低速状態に切り換える機械式変速装置を備えた電動リールが開示されているが、本実施形態は、斯かる切換え部材に代え、図示するように減速機構157の内歯歯車159の外周に設けたラチェット爪歯161に係合する変速切換ストッパ163を、マイクロコンピュータによるソレノイド165の駆動制御で作動させるようにしたもので、変速切換ストッパ163は、トーションスプリング167のバネ力で常時ラチェット爪歯161に係合する方向に付勢されている。
そして、スプールモータ169の回転力を低速状態でスプールに伝達させる場合、マイクロコンピュータはソレノイド165を作動させ、当該ソレノイド165で変速切換ストッパ163を二点鎖線で示すようにバネ力に抗して反時計方向へ回転させて、ラチェット爪歯161から離間させることで内歯歯車159をフリー状態とするようになっている。
一方、スプールモータ169の回転力を高速状態でスプールに伝達させる場合、マイクロコンピュータはソレノイド165の作動を停止するもので、ソレノイド165が停止すると、トーションスプリング167のバネ力で変速切換ストッパ163がラチェット爪歯161に係合し、内歯歯車159の回転が停止して減速機構157が高速状態に切り換わるようになっている。
尚、その他の機械的な構造は特許第3159637号公報の電動リールと同様であるためそれらの構造説明は省略する。
そして、図1の実施形態と同様、本実施形態に係る電動リール171も、図示しないパワーレバーの回転操作範囲内の操作で、減速機構157が既述した低速状態と高速状態とに切り換わると共に、パワーレバーの低速域と高速域で、夫々、モータ出力がパワーレバーの操作に応じ第一実施形態と同様にデューティ制御されるようになっている。
而して、本実施形態によっても、図1の実施形態と同様、一つのパワーレバーの回転操作によって機械式変速と電気式変速の両操作が可能となるため、所期の目的を達成することが可能で、魚の動きに対し迅速且つ適切な変速操作が可能となって、魚を不用意にバラシてしまう等のトラブルを回避することが可能となる。
尚、低速域または高速域でのパワーレバー117やパワースイッチ153の操作による出力調節範囲や変速位置は、低速用減速歯車機構35や高速用減速歯車機構39のギヤ比の設定,モータ特性,リールのサイズやパワー設定等を考慮して適宜条件設定されるもので、例えば低速域でデューティ比0〜90%,高速域でデューティ比40〜100%に条件設定したり、パワーレバー117の変速操作角を40°としたり、その他、色々な条件設定が可能である。
請求項1及び請求項2の第一実施形態に係る電動リールの要部切欠き平面図である。 図1に示す電動リールの側面図である。 図1に示す電動リールの要部拡大断面図である。 機械式変速装置と減速機構,動力伝達機構の歯車の回転方向を説明する模式図である。 機械式変速装置と減速機構の歯車の回転方向を説明する模式図である。 機械式変速装置と減速機構の歯車の回転方向を説明する模式図である。 パワーレバーの操作量に応じた巻取り速度の変化を示すグラフである。 表示器の表示状態の説明図である。 表示器の表示状態の説明図である。 請求項1及び請求項2の第二実施形態に係る電動リールの平面図である。 請求項1及び請求項2の第三実施形態に係る電動リールの要部断面図である。
符号の説明
3 リール本体
5,7 側板
9 スプール軸
11 スプール
17 動力伝達機構
19 スプール軸駆動歯車
21,169 スプールモータ
23 ハンドル
27 機械式変速装置
29,91,157 減速機構
31 モータ軸
33 ピニオン
35 低速用減速歯車機構
37 低速用歯車
39 高速用減速歯車機構
41 高速用歯車
43,47 回転軸
45,49,87 一方向クラッチ
63 小歯車
65,81 大歯車
67 太陽歯車
79 駆動歯車
116,151,171 電動リール
117 パワーレバー
125 クラッチ機構
127 クラッチレバー
129 回転検出手段
137 表示器
141 リセットスイッチ
143 棚メモスイッチ
149 HI/LOW表示部
153 パワースイッチ
159 内歯歯車
161 ラチェット爪歯
163 変速切換ストッパ
165 ソレノイド
167 トーションスプリング

Claims (2)

  1. リール本体に回転可能に支持されたスプールを巻取り駆動するスプール駆動モータと、
    スプールの駆動系に装着され、当該スプールへのスプール駆動モータの動力伝達を高速状態と低速状態とに切り換える機械式変速装置と、
    リール本体に変位可能に装着したモータ出力調節体の操作で、スプール駆動モータへの電流量を制御してモータ出力を増減調節する電気式変速装置とを備えた魚釣用電動リールに於て、
    上記モータ出力調節体の変位操作範囲内の操作で、機械式変速装置を高速状態と低速状態とに切換え可能としたことを特徴とする魚釣用電動リール。
  2. モータ出力調節体は、所定の範囲に亘ってリール本体に回転可能に取り付き、当該モータ出力調節体の所定量の回転操作位置で、機械式変速装置が低速状態から高速状態に切り換わり、
    上記回転操作位置の前半側回転操作領域が、機械式変速装置の低速状態に於ける電気式変速装置のモータ出力増減調節範囲で、
    上記回転操作位置の後半側回転操作領域が、機械式変速装置の高速状態に於ける電気式変速装置のモータ出力増減調節範囲であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
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