JP4397853B2 - 魚釣用電動リール - Google Patents

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本発明は、リール本体に回転自在に取り付くスプールを巻取り駆動するスプール駆動モータを備えた魚釣用電動リールに関する。
船釣り等、深場の魚層を対象とした魚釣りを行う場合、魚釣用電動リールが広く使用されている。
従来周知のように魚釣用電動リールは、スプール駆動モータの駆動でスプールを回転させて釣糸の巻取りを行うもので、特許文献1に開示されるように昨今の魚釣用電動リールには、釣場の状況(例えば、対象魚の大きさや種類,魚とのファイトやヒット数)に応じた釣糸の巻取り操作を行うべく、リール本体に変位可能に装着したモータ出力調節体(調節レバー)の操作でスプール駆動モータのモータ出力を調節して、釣糸の巻取り速度を変化させる電気式変速装置を備えたものが知られている。
また、特許文献2には上述の如き電気式変速装置に加え、スプール駆動モータのモータ軸と、このモータ軸の回転(スプール駆動モータの駆動力)をスプールに伝達する複数枚のギヤからなる動力伝達機構との間に、ギヤ比の異なる高速用歯車伝達機構と低速用歯車伝達機構とを動力伝達可能に連結し、リール本体の操作パネル上に設けた変速スイッチの操作でスプール駆動モータの回転方向を正逆両方向へ切り換えることにより、高速用歯車伝達機構と低速用歯車伝達機構のいずれか一方を選択的に動力伝達可能として、スプールの回転速度を高速状態と低速状態とに切り換える機械式変速装置を備えた魚釣用電動リールが開示されている。
図5は上記機械式変速装置とこれに連結する遊星歯車減速機構,動力伝達機構の動力伝達経路を説明する模式図を示し、図中、1はスプール駆動モータ3のモータ軸5に回り止め嵌合されたピニオンで、スプール駆動モータ3は正逆両方向へ回転可能に構成されている。そして、ピニオン1に低速用歯車伝達機構7の低速用入力歯車9と、高速用歯車伝達機構11の高速用入力歯車13が個別に噛合しており、低速用入力歯車9は第1の回転軸15に一方向クラッチ17を介して回転可能に支持され、高速用入力歯車13は、第2の回転軸19に一方向クラッチ21を介して回転可能に支持されている。
而して、一方向クラッチ17,21は、力を伝達するその回転方向が互いに逆向きに設定されており、低速用入力歯車9側の一方向クラッチ17は、スプール駆動モータ3が正転(図5に於ける時計回りの回転;以下、同様)して低速用入力歯車9が逆転(図5に於ける反時計回りの回転;以下、同様)すると、その楔作用で低速用入力歯車9の回転力を回転軸15に伝達し、これとは逆に高速用入力歯車13側の一方向クラッチ21は、スプール駆動モータ3が逆転して高速用入力歯車13が正転すると、その楔作用で高速用入力歯車13の回転力を回転軸19に伝達させるようになっている。
そして、上記回転軸15に低速用出力歯車23が回り止め嵌合されると共に、他方の回転軸19に高速用出力歯車25が回り止め嵌合されて、これらは互いに噛合している。そして、回転軸15の突出端側に遊星歯車減速機構27の太陽歯車29が回り止め嵌合されており、遊星歯車減速機構27は、当該太陽歯車29と、セットプレートに形成された内歯31と、これらに噛合する複数の遊星歯車33とを備え、遊星歯車33はキャリア35に回転可能に支持されている。そして、キャリア35に、動力伝達機構37の駆動歯車39が回り止め嵌合されており、動力伝達機構37は当該駆動歯車39と、図示しないスプール軸に取り付くスプール軸駆動歯車41と、これらに噛合する連結歯車43とで構成されている。
機械式変速装置45はこのように構成されているから、変速スイッチの操作でスプール駆動モータ3が逆転すると、前記一方向クラッチ21の楔作用で高速用入力歯車13の回転が回転軸19に伝わり、これに回り止め嵌合された高速用出力歯車25が正転してこれと噛合する低速用出力歯車23が逆転するため、低速用出力歯車23が回り止め嵌合された回転軸15が逆転する。
この結果、回転軸15の回転速度は高速用出力歯車25と低速用出力歯車23とのギヤ比に対応した大きさだけ増速されて低速状態より速い速度で回転し、増速されたスプール駆動モータ3の回転力が回転軸15から太陽歯車29へと伝達され、遊星歯車減速機構27,動力伝達機構37を介してスプール軸へと伝達される。
一方、スプール駆動モータ3が正転すると、一方向クラッチ17のみが低速用入力歯車9の回転を回転軸15に伝えるため、回転軸15は、モータ軸5の回転速度及びピニオン1と低速用入力歯車9とのギヤ比に対応して低速用入力歯車9と共に高速状態より遅い速度で回転し、この回転力が回転軸15から太陽歯車29へと伝達され、遊星歯車減速機構27,動力伝達機構37を介してスプール軸へと伝達される。
このように従来の機械式変速装置45は、スプール駆動モータ3の正転で低速の動力伝達状態に切り換わり、スプール駆動モータ3の逆転で高速の動力伝達状態に切り換わるようになっている。
特許第2977978号公報 特開2001−148978号公報
しかし、上述した機械式変速装置45は、高速用歯車伝達機構11による高速駆動時(高速での動力伝達時)に、増速した回転を高速用出力歯車25に噛合する低速用歯車伝達機構7の低速用出力歯車23に伝達することから、低速用出力歯車23がモータ回転数を超える増速回転となるため、これらの噛み合い音が大きくなって釣人に不快感を与えると共に、低速用出力歯車23やその支持部に大きな負荷がかかってこれらが摩耗し易くなる等の課題が残されていた。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、上述の如き機械式の変速装置を備えた魚釣用電動リールに改良を加え、高速駆動時の静音化を図り、併せて歯車とその支持部の保護を図った魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、リール本体に回転自在に支持されたスプールを巻取り駆動し、正逆両方向へ回転可能なスプール駆動モータと、当該スプール駆動モータの出力部と当該出力部の回転をスプールに伝達する動力伝達機構との間に連結され、スプール駆動モータの回転方向の切換えで、スプールへのスプール駆動モータの動力伝達を高速動力伝達状態と低速動力伝達状態とに切り換える機械式の変速装置とを備えた魚釣用電動リールに於て、上記スプール駆動モータの出力部と機械式の変速装置の入力部との間に、遊星歯車減速機構を装着したことを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、スプール駆動モータの出力部と機械式の変速装置の入力部との間に遊星歯車減速機構を装着して、スプール駆動モータの回転(回転速度)を当該遊星歯車減速機構で一度減速させて機械式の変速装置に入力させるように構成したので、従来に比し高速駆動時の歯車の噛み合い音が低減できて静音化が図れると共に、歯車やその支持部への負荷の軽減によって耐久性の向上が図れる利点を有する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図4は請求項1に係る発明の一実施形態を示し、図1に於て、51,53はフレーム55の左右に取り付く側板で、両側板51,53とフレーム55とで本実施形態に係る魚釣用電動リール(以下、「電動リール」という)57のリール本体59が構成され、両側板51,53間にスプール軸61を介してスプール63が回転可能に支持されている。
スプール軸61はスプール63の軸心を貫通し、その側板51側の一端が、フレーム55に一体的に取り付く第1のセットプレート(支持板)65に軸受67を介して回転可能に支持されている。そして、スプール軸61の側板51側に、動力伝達機構69のスプール軸駆動歯車71が回り止め嵌合されている。
スプール63は、スプール駆動モータ73の駆動とハンドル75の巻取り操作で巻取り方向へ回転して釣糸が巻回されるようになっており、スプール駆動モータ73は、スプール63前方のフレーム55に一体成形された筒状のモータケース77内に収納されている。
そして、側板51側のリール本体59内に第1の遊星歯車減速機構79と機械式変速装置81,前記スプール軸駆動歯車71を含む複数の歯車からなる動力伝達機構69が、スプール駆動モータ73のモータ軸(スプール駆動モータの出力部)83とスプール軸61との間に順次装着されており、スプール駆動モータ73の回転(回転速度)が遊星歯車減速機構79,機械式変速装置81で減速/変速されて、動力伝達機構69からスプール軸61に伝達されるようになっている。
図2は遊星歯車減速機構79,機械式変速装置81及び動力伝達機構69の拡大断面図、図3及び図4は遊星歯車減速機構79と機械式変速装置81,動力伝達機構69の動力伝達経路を説明する模式図を示す。
図中、85はモータ軸83に回り止め嵌合された遊星歯車減速機構79の太陽歯車で、スプール駆動モータ73は正逆両方向へ回転可能に構成され、これに伴い、図3及び図4の如く太陽歯車85も正,逆両方向へ回転する。
図2に示すように遊星歯車減速機構79は、上記太陽歯車85と、モータ軸83が貫通するフレーム55の凹部87の内周に形成された内歯89(金属材で別体形成して、モータケース77に一体化することが好ましい)と、当該内歯89と太陽歯車85とに噛合する複数の遊星歯車91とを備え、遊星歯車91は支軸93を介してプレート状のキャリア95に回転可能に支持され、キャリア95はモータ軸83に回転可能に支持されたピニオン97に一体化している。
そして、図3の如くスプール駆動モータ73が正転(図3に於ける時計回りの回転;以下、同様)して太陽歯車85が同方向へ回転すると、遊星歯車91が反時計回りに自転し乍ら太陽歯車85の周囲を公転してキャリア95を時計回りへ回転させ、これと一体のピニオン97が同方向へ回転するようになっている。
また、図4の如くスプール駆動モータ73が逆転(図4に於ける反時計回りの回転;以下、同様)して太陽歯車85が同方向へ回転すると、遊星歯車91が時計回りに自転し乍ら太陽歯車85の周囲を公転してキャリア95を反時計回りに回転させ、これと一体のピニオン97が同方向へ回転するようになっている。
そして、上記ピニオン97に低速用歯車伝達機構99の低速用入力歯車(機械式変速装置81の入力部)101と、高速用歯車伝達機構103の高速用入力歯車(機械式変速装置81の入力部)105が個別に噛合しており、機械式変速装置81は、この低速用歯車伝達機構99と高速用歯車伝達機構103とで構成されている。
機械式変速装置81の入力部を構成する低速用入力歯車101と高速用入力歯車105は、外径が同一でピニオン97とのギヤ比が同一に設定されており、低速用入力歯車101は第1の回転軸107に一方向クラッチ109を介して回転可能に支持され、高速用入力歯車105は、第2の回転軸111に一方向クラッチ113を介して回転可能に支持されている。
而して、一方向クラッチ109,113は、力を伝達するその回転方向が互いに逆向きに設定されており、図4に示すように低速用入力歯車101側の一方向クラッチ109は、低速用入力歯車101が正転(時計回りの回転)すると、その楔作用で低速用入力歯車101の回転力を回転軸107に伝達し、低速用入力歯車101が逆転(反時計回りの回転)すると、その回転力を回転軸107に伝達しないように構成されている。
一方、これとは逆に高速用入力歯車105側の一方向クラッチ113は、図3に示すように高速用入力歯車105が逆転すると、その楔作用で高速用入力歯車105の回転力を回転軸111に伝達し、高速用入力歯車105が正転すると、その回転力を回転軸111に伝達させないようになっている。
そして、図2及び図3に示すように第1の回転軸107に小径の低速用出力歯車115が回り止め嵌合されると共に、第2の回転軸111に大径の高速用出力歯車117が回り止め嵌合されており、これらは互いに噛合している。そして、回転軸111の突出端側に、動力伝達機構69の駆動歯車119が回り止め嵌合されている。
尚、図2に示すように回転軸107,111は、前記凹部87の開口部内周に一体的に回り止め装着した環状の支持部材121に夫々の一端側が回転可能に支持されている。そして、第1の回転軸107の他端側は、低速用出力歯車115と動力伝達機構69との間に配置されてフレーム55に取り付く第2のセットプレート123に回転可能に支持され、第2の回転軸111は当該セットプレート123を挿通して、その突出端側に前記駆動歯車119が回り止め嵌合されている。
図1乃至図3に示すように動力伝達機構69は、前記スプール軸駆動歯車71と上記駆動歯車119、そして、スプール軸駆動歯車71と駆動歯車119との間に配置されてこれらに噛合する大径の連結歯車125とで構成されている。そして、図2に示すように連結歯車125は、セットプレート65に設けた筒状の支持部127に軸受129を介して回転可能に支持されているが、連結歯車125の中央に設けた筒状部131の内周に、セットプレート123に軸支される一方向クラッチ133の外輪135が回り止め嵌合されており、ハンドル75の巻取り操作時に一方向クラッチ133の楔作用で連結歯車125の回転が阻止されて、その反力でハンドル75の駆動力が後述する遊星歯車減速機構(動力伝達機構)137を介してスプール63に伝達されるようになっている。
そして、図1に示すようにスプール軸61は、スプール63の中央を貫通してその他端側が側板53内に突出し、その突出端に、スプール駆動モータ73の駆動力とハンドル75操作の回転力をスプール63に伝達させる第2の遊星歯車減速機構137が装着されている。
従来と同様、この遊星歯車減速機構137は、スプール軸61の突出端に取り付けられた太陽歯車139とこれに噛合する複数の遊星歯車141、そして、スプール63の一端に刻設された内歯歯車143からなり、内歯歯車143と太陽歯車139に遊星歯車141が噛合している。そして、遊星歯車139は支軸145を介してキャリア147に取り付けられており、キャリア147はスプール63に取り付けたブラケット149に嵌合し、軸受151を介してスプール軸61に回転可能に支持されている。
また、図1中、75は既述した釣糸巻取り操作用のハンドルで、当該ハンドル75は側板53に回動可能に挿着したハンドル軸153の側板53外突出端に連結されており、ハンドル軸153にはラチェット155が側板53内で固着され、更にドライブギヤ157が回転可能に取り付けられている。そして、ドライブギヤ157とハンドル軸153は、ハンドル軸153に装着した周知のドラグ装置159で摩擦結合されており、ドラグ力調節レバー161の操作でドラグ装置159のドラグ力が調節できるようになっている。
そして、既述したようにハンドル75の巻取り操作時に、一方向クラッチ133の楔作用でスプール軸駆動歯車71に噛合する連結歯車125の回転が阻止されるため、ハンドル75の回転力が遊星歯車減速機構137からスプール63に伝達されて、スプール63が巻取り方向へ回転するようになっている。
また、図示しないが上記ラチェット155には、ばねで付勢された周知の係止爪が係止しており、斯様にラチェット155に係止爪が係止してスプール63の逆転止めが図られている。
更に、本実施形態に係る電動リール57には、既述した機械式変速装置81に加え、特許第2977978号公報で開示された電動リールと同様の電気式変速装置が装着されており、図1に示すようにハンドル75側の側板53の側部前方に形成された筒状部163に、レバー形状のモータ出力調節体(以下、「パワーレバー」という)165が、リール本体59の前後方向へ所定の角度(例えば、125°の範囲)に亘って回転操作可能に取り付けられている。
パワーレバー165は、筒状部163に内蔵されたポテンショメータ167の操作軸169に連結され、パワーレバー165の回転操作によるポテンショメータ167の抵抗値の変化が、リール本体59上部の制御ボックス171内に装着したマイクロコンピュータに入力されている。
そして、マイクロコンピュータのCPUは、パワーレバー165の変位量に応じたパルス信号のデューティ比として、モータ駆動電流通電時間率をスプール駆動モータ73のモータ駆動回路中に接続したスィッチング素子で可変制御して、スプール駆動モータ73のモータ出力を増減調節するようになっている。
一方、図1に示すように側板53の側部後方には、側板53内に装着された周知のクラッチ機構173を操作するクラッチレバー175が下方向へ押圧操作可能に取り付けられており、当該クラッチレバー175の押圧操作で、クラッチ機構173がクラッチON状態からクラッチOFF状態に切り換わるようになっている。
そして、このクラッチOFF状態でハンドル75を巻取り方向へ回転させると、図示しない周知の復帰機構を介してクラッチ機構173がクラッチON状態に復帰するように構成されており、このクラッチレバー175とハンドル75のクラッチON/OFFの切換え操作で、スプール63が釣糸巻取り状態とスプールフリー状態とに切り換わって、スプール63へのスプール駆動モータ73やハンドル75の回転力が伝達/遮断されるようになっている。
また、図1中、177はスプール63の回転数とその回転方向を検出する回転検出手段で、当該回転検出手段177は、セットプレート65に装着されたホール素子やリードスイッチからなる回転検出センサ179と、これに対向してスプール63の一端側周縁部に固着された複数のマグネット181とで構成されており、回転検出センサ179はマイクロコンピュータに接続されている。
而して、マイクロコンピュータのCPUは、特開平5−103567号公報で開示された糸長計測プログラムと同様、回転検出センサ179から出力されるスプール63の正転,逆転の判定信号を取り込んで釣糸の繰出しか巻取りかを判定すると共に、回転検出センサ179から取り込むスプール63の回転パルス信号をカウントして、この計数値を基にマイクロコンピュータのROMに記憶された糸長計算式を演算実行するようになっている。
そして、CPUは、その演算結果(糸長)を制御ボックス171の操作パネル183上に設けた表示器185に表示させるようになっており、釣人は斯かる表示を確認し乍ら、所定の水深に仕掛けを繰り出したり、ハンドル75やパワーレバー165の操作で釣糸を巻き取ることが可能である。
更に、図1に示すように操作パネル183上には、表示器185に隣接してハンドル75側に変速HI/LOWスイッチ187が装着されており、変速HI/LOWスイッチ187はマイクロコンピュータに接続されている。
そして、変速HI/LOWスイッチ187を押圧操作すると、マイクロコンピュータは先ず、スプール駆動モータ73を図3の如く正転方向へ回転させ、以後、変速HI/LOWスイッチ187の押圧操作に応じ、スプール駆動モータ73の回転を正逆両方向へ交互に切り換えるように構成されており、このスプール駆動モータ73の正逆両方向への切換制御で、機械式変速装置81が、低速用歯車伝達機構99による低速動力伝達状態と高速用歯車伝達機構103による高速動力伝達状態とに交互に切り換わるようになっている。そして、変速HI/LOWスイッチ187による機械式変速装置81の高速動力伝達状態と低速動力伝達状態の切換え制御に応じ、前記表示器185に「HI」,「LOW」の文字が表示されるようになっている。
本実施形態に係る電動リール57はこのように構成されており、クラッチレバー175のクラッチOFF操作で釣糸がスプール63から繰り出され、また、ハンドル75の巻取り方向への回転操作やクラッチレバー175のクラッチON操作でクラッチ機構173がクラッチON状態に復帰し、パワーレバー165によるスプール駆動モータ73の巻取り駆動やハンドル75の巻取り操作でスプール63に釣糸が巻回され、釣糸の繰出しや巻取りに伴い、回転検出手段177の検出値を基に糸長が計測されて表示器185に表示されるが、パワーレバー165の操作で駆動制御されるスプール駆動モータ73の回転が、遊星歯車減速機構79で予め減速されて機械式変速装置81に伝達される。
そして、変速HI/LOWスイッチ187の押圧操作で、機械式変速装置81が低速用歯車伝達機構99による低速動力伝達状態と高速用歯車伝達機構103による高速動力伝達状態とに切り換わる。
即ち、変速HI/LOWスイッチ187が操作されると、マイクロコンピュータは先ず、スプール駆動モータ73の回転を高速用歯車伝達機構103を介してスプール63に伝達させるべく、モータ駆動回路に指令を送出して、図3の如くスプール駆動モータ73を正転させる。
このとき、スプール駆動モータ73は、パワーレバー165の操作量に応じたモータ出力で回転駆動し、パワーレバー165がモータ停止状態にあるとき、変速HI/LOWスイッチ187を操作してもスプール駆動モータ73は駆動しない。
而して、斯様にスプール駆動モータ73が正転すると、図3に示すように遊星歯車減速機構79の太陽歯車85が同方向へ回転し、遊星歯車91が反時計回りに自転し乍ら太陽歯車85の周囲を公転してキャリア95を時計回りに回転させ、これと一体のピニオン97が減速されて同方向へ回転する。
そして、ピニオン97の正転に伴い、これに噛合する低速用入力歯車101と高速用入力歯車105が共に逆転し、高速用歯車伝達機構103側の一方向クラッチ113の楔作用で高速用入力歯車105の回転が回転軸111に伝わる。そして、低速用歯車伝達機構99側の一方向クラッチ109は低速用入力歯車101の回転を回転軸107に伝えず、回転軸111が、モータ軸83の回転速度とピニオン97と高速用入力歯車105とのギヤ比に対応した回転速度で高速用入力歯車105と共に逆転する。
斯様に回転軸111が逆転すると、これに回り止め嵌合された高速用出力歯車117が同方向へ回転し、回転軸111の回転は動力伝達機構69の駆動歯車119へ伝達され、動力伝達機構69を介してスプール軸61へと伝達される。
このとき、高速用出力歯車117の回転は、これに噛合する低速用出力歯車115を介して回転軸107に伝達されるが、一方向クラッチ109の作用で回転軸107は空回り状態となる(高速用歯車伝達機構103だけが高速動力伝達状態として機能し、低速用歯車伝達機構99は機能しない)。
そして、この高速動力伝達状態で変速HI/LOWスイッチ187を操作すると、マイクロコンピュータはモータ駆動回路に指令を送出してスプール駆動モータ73を一旦停止させた後、図4の如くスプール駆動モータ73を逆転させる。
而して、斯様にスプール駆動モータ73が逆転すると、遊星歯車減速機構79の太陽歯車85が同方向へ回転し、遊星歯車91が時計回りに自転し乍ら太陽歯車85の周囲を公転してキャリア95を反時計回りに回転させ、これと一体のピニオン97が減速されて同方向へ回転する。
ピニオン97の逆転に伴い、これに噛合する低速用入力歯車101と高速用入力歯車105が共に正転し、低速用歯車伝達機構99側の一方向クラッチ109の楔作用で低速用入力歯車101の回転が回転軸107に伝わる。そして、高速用歯車伝達機構103側の一方向クラッチ113は高速用入力歯車105の回転を回転軸111に伝えず、回転軸107が、モータ軸83の回転速度とピニオン97と低速用入力歯車101とのギヤ比に対応した回転速度で低速用入力歯車101と共に正転する。
このように回転軸107が正転すると、これに回り止め嵌合された低速用出力歯車115が同方向へ回転し、これに噛合する高速用出力歯車117が逆転して回転軸111が同方向へ回転するが、回転軸111の回転速度は低速用出力歯車115と高速用出力歯車117との間のギヤ比により、高速状態に比し減速された状態で動力伝達機構69の駆動歯車119へ伝達され、動力伝達機構69を介してスプール軸61へと伝達される。
以後、機械式変速装置81は、変速HI/LOWスイッチ187の押圧操作に応じ、高速用歯車伝達機構103による高速動力伝達状態と、低速用歯車伝達機構99による低速動力伝達状態とに交互に切り換わることとなる。
このように本実施形態は、スプール駆動モータ73とスプール軸61との間に、遊星歯車減速機構79,機械式変速装置81,動力伝達機構69を順次配置して、スプール駆動モータ73の回転駆動力をスプール軸61に伝達させるに当たり、先ず、遊星歯車減速機構79で一度スプール駆動モータ73の回転を減速させて機械式変速装置81に入力させるように構成すると共に、高速動力伝達状態での回転駆動時に、低速用出力歯車115を介在させず高速用歯車伝達機構103だけを機能させて低速用歯車伝達機構99を機能させない構成としたので、図5の従来例に比し高速駆動時の歯車の噛み合い音が低減できて静音化が図れると共に、低速用出力歯車115やその支持部への負荷の軽減により、耐久性の向上が図れることとなった。
請求項1の一実施形態に係る電動リールの一部切欠き平面図である。 図1に示す電動リールの要部拡大断面図である。 高速動力伝達状態に於ける遊星歯車減速機構と機械式変速装置,動力伝達機構の動力伝達経路を説明する模式図である。 低速動力伝達状態に於ける遊星歯車減速機構と機械式変速装置,動力伝達機構の動力伝達経路を説明する模式図である。 従来の機械式変速装置と遊星歯車減速機構,動力伝達機構の高速動力伝達状態での動力伝達経路を説明する模式図である。
符号の説明
51,53 側板
55 フレーム
57 電動リール
59 リール本体
61 スプール軸
63 スプール
69 動力伝達機構
71 スプール軸駆動歯車
73 スプール駆動モータ
75 ハンドル
79 第1の遊星歯車減速機構
81 機械式変速装置
83 モータ軸(出力部)
85,139 太陽歯車
89,143 内歯
91,141 遊星歯車
95,147 キャリア
97 ピニオン
99 低速用歯車伝達機構
101 低速用入力歯車
103 高速用歯車伝達機構
105 高速用入力歯車
107 第1の回転軸
109,113,133 一方向クラッチ
111 第2の回転軸
115 低速用出力歯車
117 高速用出力歯車
119 駆動歯車
125 連結歯車
137 第2の遊星歯車減速機構
165 パワーレバー
173 クラッチ機構
175 クラッチレバー
177 回転検出手段
185 表示器
187 変速HI/LOWスイッチ

Claims (1)

  1. リール本体に回転自在に支持されたスプールを巻取り駆動し、正逆両方向へ回転可能なスプール駆動モータと、
    当該スプール駆動モータの出力部と当該出力部の回転をスプールに伝達する動力伝達機構との間に連結され、スプール駆動モータの回転方向の切換えで、スプールへのスプール駆動モータの動力伝達を高速動力伝達状態と低速動力伝達状態とに切り換える機械式の変速装置とを備えた魚釣用電動リールに於て、
    上記スプール駆動モータの出力部と機械式の変速装置の入力部との間に、遊星歯車減速機構を装着したことを特徴とする魚釣用電動リール。
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