JP3579319B2 - 魚釣用リール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプールを釣糸巻取可能状態とフリー回転可能状態とに切り換えるためのクラッチ機構を有する魚釣用リールに係わり、特に、クラッチ駆動用モータを使用してクラッチ機構を動作させる魚釣用リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、釣糸繰出中にスプールの回転を停止させて釣糸巻取可能状態へ復帰させるクラッチ機構を備えた種々の魚釣用リールが知られている。
【0003】
例えば特開平3−187333号公報には、スプールを回転駆動させるスプール駆動用モータとは別個にクラッチ駆動用モータを設け、このクラッチ駆動用モータの回転動力でクラッチ機構を動作させてスプールを釣糸巻取可能状態(クラッチON状態)とフリー回転可能状態(クラッチOFF状態)とに切り換え可能な魚釣用電動リールが開示されている。
【0004】
また、特開平4−66042号公報や特開平6−311834号公報には、スプール駆動用モータとは別個に設けられたクラッチ駆動用モータやアクチュエータ等によってクラッチのON/OFFを切り換えることができる魚釣用電動リールが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した3つの公報のいずれも、クラッチ駆動用モータ等の正・逆回転でクラッチのON/OFFを切り換えるものであるため、モータへの給電方向を変換するための変換手段が必要となり、制御が複雑になるという問題がある。また、前記変換手段を形成する電子部品や回路も特別な構成となるため、リールの製造コストが高くなるとともに、リールの大型化・重量化を招いてしまう。
【0006】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構造および制御でクラッチ機構を動作させてスプールを釣糸巻取可能状態とフリー回転可能状態とに切り換えることができる魚釣用リールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、リール本体の両側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記スプールをフリー回転可能状態と釣糸巻取可能状態とに切換可能で且つクラッチ駆動用モータによって駆動されるクラッチ機構とを備えた魚釣用リールにおいて、前記クラッチ機構は、前記クラッチ駆動用モータの一方向の回転運動をクラッチプレートの摺動する直線運動に変換することで切換操作可能としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明おいて、前記クラッチ駆動用モータと別個に設けられ、前記スプールを回転駆動させるスプール駆動用モータと、前記スプール駆動用モータの回転運動を減速して前記スプールに伝達する減速機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用リール1は、電動リールであり、左右両側に側板4a,4bが取り付けられたリール本体4を有している。リール本体4には、図中向かって右側に、手動ハンドルHが取り付けられている。また、リール本体4の上側には操作パネル93が設けられている。また、左側板4aと右側板4bとの間には、釣糸が巻回されるスプール8が回転自在に支持されている。
【0010】
スプール8の内部には、スプール8を回転駆動させるためのスプール駆動用モータ10が収容されている。この場合、スプール駆動用モータ10は、スプール8と同軸に配置されている。スプール駆動用モータ10の左駆動軸10aには、スプール駆動用モータ10の逆回転を防止するための一方向クラッチ90が連結されており、また、右駆動軸10bには減速機構40が連結されている。
【0011】
一方向クラッチ90は、スプール駆動用モータ10が右側板4b側から見て時計回りに回転(正転駆動)した時に、フリー回転状態(駆動軸10a,10bを自由に回転させる状態)となってスプール8の巻き取り駆動を可能とし、手動ハンドルHで巻き取り操作された時に、駆動軸10a,10bの回転が阻止されて手動ハンドルHの動力がスプール8に伝達されるように設定構成されている。なお、以下において、時計回り、反時計回りとは、全て右側板4b側から見たものとする。
【0012】
スプール駆動用モータ10の右駆動軸10bに回り止め固定された回転部材3と右側板4bとの間には、スプール駆動用モータ10の左右駆動軸10a,10bと同軸上に固定軸45が回転不能に支持されている。
【0013】
減速機構40は、第1および第2の遊星ギヤ機構41,42から成り、スプール駆動用モータ10の正転駆動時に右駆動軸10b(回転部材3)の回転運動を第1の遊星ギヤ機構41で減速させた後、更に、第2の遊星ギヤ機構42で減速させてスプール8に伝達するように構成されている。
【0014】
図4に示すように、第1の遊星ギヤ機構41は、回転部材3と一体化され且つ後述する第2の太陽歯車55に回転可能に支持された第1の太陽歯車50と、この第1の太陽歯車50に噛合した複数の第1の遊星歯車51と、これら第1の遊星歯車51が常時噛合するようにスプール8の端面に刻設された内歯歯車52とを備えている。
【0015】
また、第2の遊星ギヤ機構42は、後述する第2のキャリア62に回転可能に支持された第2の太陽歯車55と、この第2の太陽歯車55に噛合した複数の第2の遊星歯車57とを備えており、複数の第2の遊星歯車57は内歯歯車52に常時噛合するようになっている。
【0016】
複数の第1の遊星歯車51はそれぞれ第1のキャリア60に支持されており、この第1のキャリア60は第2の太陽歯車55と一体回転するよう連結されている。また、複数の第2の遊星歯車57はそれぞれ第2のキャリア62に支持されており、この第2のキャリア62はスプール8に取り付けられたブラケット64に回転可能に保持されている。なお、ブラケット64は軸受65を介して右フレーム4bに回転可能に支持されている。
【0017】
また、スプール8をフリー回転状態と釣糸巻取り状態に切換可能なクラッチ機構は、固定軸45に沿ってスライド可能なピニオン48を備えており、減速機構42(第2のキャリア62)に対して係合または非係合させることができるようになっている。
【0018】
ピニオン48には、その外周面に円周溝48aが形成されており、この円周溝48aには、後述するクラッチのON/OFF切換操作によってピニオン48を固定軸45に沿ってスライドさせることが可能なスライド片52が係合している。このスライド片52は、クラッチプレート72の摺動によって軸方向に移動される。
【0019】
図2および図3に詳しく示すように、スライド片52は、固定軸45の軸方向に延出した一対のガイド棒46にガイドされながら、固定軸45の軸方向にスライドするようになっている。また、クラッチプレート72は、矢印D1,D2方向に摺動自在にフレームに支持されており、その表面には、スライド片52と係合する傾斜カム72aが形成されている。また、クラッチプレート72の端部には長孔72bが形成されている。
【0020】
図1および図2に示されるように、魚釣用リール1のリール本体4の内部には、スプール8よりも前方側(操作パネル93側)であって、釣糸をスプール8に平行巻きするレベルワインド機構の釣糸案内環(図示せず)の下側(真下あるいは斜め下方も含む)に、前記クラッチ機構を動作させるためのクラッチ駆動用モータ2が収容されている。このクラッチ駆動用モータ2の駆動軸には円形プレート91が固定されており、円形プレート91には、クラッチプレート72の長孔72bと係合するボス91aが突設されている。
【0021】
図1に示されるように、ピニオンギヤ48には、ハンドル軸54に取り付けられたドライブギヤ56が噛合しており、このドライブギヤ56とハンドル軸54との間には、実釣時にスプール8を釣糸繰出方向へ回転させる際に、スプール8の回転に所望の制動力を与えることが可能な周知のドラグ機構58が配置されている。
【0022】
また、ハンドル軸54の基端部には、スプール駆動用モータ10によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた際に、これに連動してハンドル軸54が回転しないように、逆転防止機構が設けられている。
【0023】
この逆転防止機構は、外周面にラチェット爪60aが所定ピッチで形成されたラチェット60と、ラチェット爪60aに対して一定の付勢力で常時係合しているストッパ162とを備えており、ラチェット60は、ハンドル軸54に回り止め嵌合されている。
【0024】
このような逆転防止機構によれば、スプール駆動用モータ10によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させる際には、ラチェット爪60aにストッパ162が係合することによって、スプール駆動用モータ10の回転に連動してハンドル軸54が回転するのを防止することができ、スプール駆動用モータ10の動力が減速機構40を介してスプール8に伝達される(図2および図3において、反時計回りの回転)。これに対して、手動ハンドルHの回転操作によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させる際には、手動ハンドルHの回転操作に連動してハンドル軸54を回転させることができる(図2および図3において、時計回りの回転)。
【0025】
次に、上記構成の魚釣用リール1の実釣時における動作を説明する。
まず、リール本体4の上側(釣り人に対向する面)に搭載された操作パネル93を操作すると、クラッチON状態(ピニオン48が減速機構42の第2のキャリア62に係合した状態;釣糸巻取可能状態)と、クラッチOFF状態(ピニオン48が第2のキャリア62に非係合した状態;スプール8のフリー回転可能状態)とを選択的に切り換えることができる。すなわち、クラッチ機構をON/OFF切換制御することができる。
【0026】
例えば、図2および図3に示されるクラッチON状態で、操作パネル93上の対応する操作スイッチを押すと、クラッチ駆動用モータ2の駆動軸が一方向に回転し、この回転に伴って円形プレート91とこれに突設されたボス91aとが矢印R方向(図2および図3参照)に180°回転する。この時、ボス91aが、長穴72bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート91の回転運動を、矢印D1方向の直線運動に変換してクラッチプレート72に伝達する。
【0027】
クラッチプレート72が矢印D1方向にスライドすると、これに伴い、スライド片52は、傾斜カム72aによって、スライド片52を付勢している付勢手段(図示せず)に抗して持ち上げられ(一対のガイド棒46に沿って軸方向にスライドし)、ピニオンギヤ48がキャリヤ62に対して非係合状態となる。これにより、スプール8はフリー回転可能状態に維持され、この状態において、釣糸は仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0028】
なお、本実施形態では、クラッチプレート72の位置を検出するための位置検出装置が設けられている。この位置検出装置は、図2および図3に示されるように、クラッチプレート72に取り付けられた磁石72cと、磁石72cと対向するリール本体4の部位に設けられた磁気センサ80,80とから成り、クラッチOFF状態におけるクラッチプレート72の位置を磁気的に検出することにより、クラッチ駆動用モータ2にこれを停止させるための停止信号を送出する。これにより、クラッチOFF状態が保持される。
【0029】
一方、このクラッチOFF状態からクラッチON状態へ切換える場合には、操作パネル93上の対応する操作スイッチを押せば良い。これにより、クラッチ駆動用モータ2の駆動軸は、前述したクラッチON状態からクラッチOFF状態への切換時と同じ方向に回転し、円形プレート91とこれに突設されたボス91aとを矢印R方向(図2および図3参照)にさらに180°回転させる。したがって、ボス91aは、長穴72bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート91の回転運動を、矢印D2方向の直線運動に変換してクラッチプレート72に伝達する。このようにクラッチプレート72が矢印D2方向にスライドすると、これに伴い、スライド片52は、傾斜カム72aから離脱するとともに、スライド片52を付勢している付勢手段(図示せず)によって元の位置まで軸方向にスライドする。そのため、ピニオンギヤ48がキャリヤ62に対して係合し、クラッチON状態(図4参照)に切り換えられるとともに、このクラッチON状態は前記位置検出装置の検出信号に基づいてクラッチ駆動用モータ2が停止されることにより保持される。
【0030】
なお、本実施形態では、クラッチプレート72の移動位置を検出することによりクラッチ駆動用モータ2の回転を180°毎に停止制御しているが、この制御を実現するための他の方法としては、例えば、モータ2の回転数を電気的または磁気的にカウントする方法や、モータ2への電流値の出力状態を監視してこの電流値が所定値を越えた場合に電流出力を停止する方法等を挙げることができる。
【0031】
また、クラッチON状態で魚の当たりを待ち、魚が当たった場合には、手動ハンドルHを回転操作するか、または、スプール駆動用モータ10を正転駆動させることによって釣糸をスプール8に均一に巻き取ることができる。
【0032】
クラッチON状態で手動ハンドルHを時計回りに回転操作すると、ピニオン48およびこれに嵌合されたキャリヤ62が反時計回りに回転駆動される。この時、遊星歯車157は反時計回りに自転すると共に公転し、内歯歯車52を反時計回りに増速した状態で回転駆動する。これにより、スプール8は、釣糸巻取り方向に回転駆動される。なお、内歯歯車52の反時計回りの回転駆動により、第1の太陽歯車50は時計回りに回転しようとするが、その回転駆動は、モータ10に対して反対側に位置する一方向クラッチ90によって規制される。
【0033】
また、手動ハンドルHによらず、スプール駆動用モータ10を正転駆動(時計回り)させると、第1の太陽歯車50は時計回りに回転駆動される。この回転駆動により、遊星歯車51は、反時計回りに回転すると共に時計回りに公転し、第2の太陽歯車55が時計回りに回転する。この回転方向では、前述した逆転防止機構によってハンドル軸54の回転が規制されているため、ハンドル軸54にドライブギヤ56を介して連結したピニオンギヤ48の回転(時計回りの回転)も規制される。その結果、ピニオンギヤ48が係合した第2のキャリア62は、回転することなく一定位置に静止した状態に維持される。
【0034】
したがって、第2の太陽歯車55が時計回りに回転した際、第2のキャリア62に回転可能に支持された複数の遊星歯車57は、第2の太陽歯車55の回りを公転することなく一定位置で反時計回りに自転する。
【0035】
この状態において、複数の遊星歯車57の反時計回りの回転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車52に減速されて伝達され、この内歯歯車52を反時計回りに回転させる。そして、これに伴ってスプール8は、釣糸巻取方向(反時計回り)に回転する。この結果、釣糸は、図示しない釣糸案内機構を介してスプール8に均一に巻き取られる。なお、このような電動巻取時には、前記逆転防止機構が機能しているため、手動ハンドルHが連動して高速で回転することはない。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用リール1は、クラッチ機構をクラッチ駆動用モータ2の一方向の回転で切り換え操作することができるため、モータ2への給電方向を変換するための変換手段が不要となり、制御が簡単になる。また、前記変換手段を形成する電子部品や回路も不要となるため、リールの製造コストを低く抑えることができるとともに、リールの小型化・軽量化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態において、クラッチ駆動用モータ2は、スプール8よりも前方側(操作パネル93側)であって、釣糸をスプール8に平行巻きするレベルワインド機構の釣糸案内環(図示せず)の下側に設けられている。したがって、レベルワインド機構の下側のデッドスペースを有効利用できるとともに、前記釣糸案内環によってしごかれる釣糸の水滴がモータ2のケースに落ちてモータ2を積極的に冷却することができる。
【0038】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、本発明を電動リールに適用した例を示しているが、非電動リール(手動リール)に適用することも可能である。また、前述した実施形態では、スプール駆動用モータ10がスプール8内に収容されている例が示されているが、スプール駆動用モータ10がスプール8の外側に設けられていても良い。また、クラッチ駆動用モータ2の配置位置は、リール本体4の側板4a,4b間でも、また、側板4b内でも良く、クラッチ機構に連結できる位置であればどのような位置であっても良い。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の魚釣用リールによれば、簡単な構造および制御でクラッチ機構を動作させてスプールを釣糸巻取可能状態とフリー回転可能状態とに切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの後側から見た断面図である。
【図2】図1の魚釣用リールのクラッチ機構を右側板側から見た断面図である。
【図3】図2のクラッチ機構の拡大図である。
【図4】図1の魚釣用リールの減速機構の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…魚釣用リール
2…クラッチ駆動用モータ
4…リール本体
4a,4b…側板
10…スプール駆動用モータ
14…減速機構
Claims (2)
- リール本体の両側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記スプールをフリー回転可能状態と釣糸巻取可能状態とに切換可能で且つクラッチ駆動用モータによって駆動されるクラッチ機構とを備えた魚釣用リールにおいて、
前記クラッチ機構は、前記クラッチ駆動用モータの一方向の回転運動をクラッチプレートの摺動する直線運動に変換することで切換操作可能であることを特徴とする魚釣用リール。 - 前記クラッチ駆動用モータと別個に設けられ、前記スプールを回転駆動するスプール駆動用モータと、
前記スプール駆動用モータの回転運動を減速して前記スプールに伝達する減速機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
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