JP3566619B2 - 魚釣用電動リール - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプールを釣糸巻取可能状態とフリー回転可能状態とに切り換えるためのクラッチ機構を有する魚釣用電動リールに係わり、特に、クラッチ駆動用モータを使用してクラッチ機構を動作させる魚釣用電動リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、釣糸繰出中にスプールの回転を停止させて釣糸巻取可能状態へ復帰させるクラッチ機構を備えた種々の魚釣用リールが知られている。
【0003】
例えば特開平3−187333号公報には、スプールを回転駆動させるスプール駆動用モータとは別個にクラッチ駆動用モータを設け、このクラッチ駆動用モータの回転動力でクラッチ機構を動作させてスプールを釣糸巻取可能状態(クラッチON状態)とフリー回転可能状態(クラッチOFF状態)とに切り換え可能な魚釣用電動リールが開示されている。
【0004】
また、特開平4−66042号公報や特開平6−311834号公報には、スプール駆動用モータとは別個に設けられたクラッチ駆動用モータやアクチュエータ等によってクラッチのON/OFFを切り換えることができる魚釣用電動リールが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スプール駆動用モータとは別にクラッチ駆動用モータを設ける構成では、スプール駆動用モータを収容するための収容部とクラッチ駆動用モータを収容するための収容部とが別々に形成される。すなわち、スプール駆動用モータを収容するためにリール本体内に確保される空間から離れた異なる空間部位に、全く別個のハウジングによってクラッチ駆動用モータを収納するための収容部が形成される。そのため、リール全体が大型化してしまうという不具合がある。
【0006】
一方、アクチュエータによってクラッチのON/OFFを切り換える構成では、クラッチ機構が複雑になるため、僅かな寸法誤差がクラッチの作動に影響を及ぼすとともに、組み立てやメンテナンスがしずらくなる。また、落下等の衝撃でアクチュエータの固定部がずれると、クラッチの作動不良が引き起こされる。
【0007】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リール本体の大型化およびクラッチ機構の複雑化を招くことなく、クラッチ機構のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる魚釣用電動リールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体の両側板間に回転自在に支持されたスプールと、このスプールを回転駆動させるスプール駆動用モータと、このスプール駆動用モータを収容する収容部と、スプールをフリー回転状態と釣糸巻取り状態の両状態に切換え可能で且つクラッチ駆動用モータにて駆動されるクラッチ機構とを備えた魚釣用電動リールにおいて、前記クラッチ駆動用モータを前記スプール駆動用モータの収容部内に併設して収容可能としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、手動ハンドル60が取り付けられたハンドル軸50を支持するリール本体2を備えている。リール本体2の左右フレーム4a,4b間には、スプール軸6が軸受を介して回転可能に支持されており、このスプール軸6を囲繞するようにスプール8が配置されている。なお、左右フレーム4a,4bには、左右側板10a,10bが取り付けられている。
【0011】
図1および図2に示されるように、左右フレーム4a,4b間には、スプール8(スプール軸6)よりも前側(釣糸繰出方向側)に、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23とが保持されている。スプール駆動用モータ12およびクラッチ駆動用モータ23は、モータ収容部100内に併設されている。モータ収容部100は筒状の収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとから成る。収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bは、締結部材110によって互いに連結されて、左右フレーム4a,4b間に組み込まれている。蓋ケース100Bが連結される収容ケース本体100Aの一方側の開口は、収容ケース本体100Aと一体に形成された端壁106によって閉塞されている。収容ケース本体100Aの他方側の開口は、収容ケース本体100Aに対して着脱自在な蓋板108によって閉塞されている。
【0012】
収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとが連結されて蓋板108が収容ケース本体100Aに取り付けられた図示の状態では、スプール駆動用モータ12を収容するための第1の収容空間104が蓋板108と端壁106との間に形成され、クラッチ駆動用モータ23を収容するための第2の収容空間105が端壁106と蓋ケース100Bとの間に形成される。すなわち、このような構成において、端壁106はモータ収容部100内を第1の収容空間104と第2の収容空間105とに仕切る仕切り板を形成するとともに、これらの収容空間104,105内に収容されたモータ12,23はリール1の幅方向に沿って互いに直列的に配列される。
【0013】
スプール駆動用モータ12はその左右両側に駆動軸12a,12bを有している。スプール駆動用モータ12の右駆動軸12bは、スプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11を介して、端壁106に回転可能に支持されている。この場合、一方向クラッチ11は、スプール8を釣糸巻取り方向に回転させるためにスプール駆動用モータ12が正転駆動される時にはその右駆動軸12bの正転を許容するとともに、右駆動軸12bにこれを逆転させる力が作用する時(具体的には、手動ハンドル60を回転操作してスプール8を釣糸巻取方向に回転させる時)にはその力に抗する。
【0014】
スプール駆動用モータ12の左駆動軸12aは連動歯車機構に連結されている。連動歯車機構は、左駆動軸12aと一体に回転する駆動歯車17と、この駆動歯車17に噛合した中間歯車19と、この中間歯車19に噛合したスプール駆動用歯車14とを備えており、スプール駆動用歯車14は、スプール軸6の一端側(左フレーム4a側)に回り止め嵌合されている。なお、中間歯車19は、左フレーム4aに回り止めされた固定軸21に回転可能に支持されている。
【0015】
モータ12,23の上方側には、スプール8に対して釣糸を平行に巻回させるレベルワインド機構(図示せず)が配置されている。このレベルワインド機構は、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた時に、或いは、後述するハンドル操作によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた時に、その回転運動に連動して駆動することができるように構成されている。
【0016】
スプール軸6の他端側(右フレーム4b側)には、第1および第2の遊星ギヤ機構16,18から成る減速機構20が設けられており、この減速機構20は、スプール駆動用モータ12の正転時のスプール軸6の回転運動を、第1の遊星ギヤ機構16で減速させた後、更に、第2の遊星ギヤ機構18で減速させてスプール8に伝達するように構成されている。
【0017】
図5に示すように、第1の遊星ギヤ機構16は、スプール軸6に回り止め嵌合された第1の太陽歯車22と、この第1の太陽歯車22に噛合した複数の第1の遊星歯車24と、これら第1の遊星歯車24が常時噛合するようにスプール8の端面に刻設された内歯歯車26とを備えている。複数の第1の遊星歯車24はそれぞれ第1のキャリア32に支持されており、この第1のキャリア32はスプール軸6に対してフリー回転可能に支持されている。
【0018】
第2の遊星ギヤ機構18は、第1のキャリア32に固定された第2の太陽歯車28と、この第2の太陽歯車28に噛合した複数の第2の遊星歯車30とを備えており、複数の第2の遊星歯車30は内歯歯車26に常時噛合するようになっている。また、複数の第2の遊星歯車30はそれぞれ第2のキャリア34に支持されており、この第2のキャリア34はスプール8に取り付けられたブラケット36に嵌合し且つ軸受37を介してスプール軸6に回転可能に支持されている。なお、ブラケット36は、軸受39を介して、右フレーム4bに回転可能に支持されている。
【0019】
スプール軸6の他端側において、右フレーム4bと右側板10bとの間には、後述するクラッチ操作機構13によって駆動操作(クラッチON/OFF切換制御)されるクラッチ機構40が配置されている。クラッチ機構40は、スプール軸6に沿ってスライド可能で且つ減速機構20(具体的には、第2のキャリア34)に対して係合または非係合されるピニオン42を備えている。
【0020】
本実施形態において、ピニオン42は、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御によって、減速機構20(第2のキャリア34)を介して間接的にスプール軸6に係合または非係合されるようになっているが、例えばスプール軸6の他端側に減速機構20が配置されていない魚釣用両軸受型リール(図示しない)では、クラッチ機構40のON/OFF切換制御によってピニオン42が直接的にスプール軸6に係合または非係合するようになっていても良い。
【0021】
ピニオン42には、その外周面に円周溝42aが形成されている。また、この円周溝42aにはスライド片44が係合している。スライド片44は、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御によって、ピニオン42をスプール軸6に沿ってスライドさせる。
【0022】
スライド片44は、スプール軸6の軸方向に沿って延びる一対のガイド棒46(図3および図4参照)にガイドされながら、スプール軸6に沿ってスライドする。スライド片44をスプール軸6に沿ってスライドさせるための構成として、クラッチ機構40には、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御に連動して一定方向D1,D2にスライド可能なスライドプレート48が設けられている。スライドプレート48の表面には、スライド片44と係合してこれをスプール軸6に沿ってスライドさせる傾斜カム48aが形成されている。また、スライドプレート48の端部には長孔48bが形成されている。
【0023】
なお、スライドプレート48には、位置決め保持用バネ(図示しない)が取り付けられており、この位置決め保持用バネの付勢力によって、スライドプレート48をクラッチON状態(図3〜図5参照)とクラッチOFF状態(図示せず)に夫々位置決め保持させることができるようになっている。
【0024】
図1にも示されるように、ピニオン42には、ハンドル軸50に取り付けられたドライブギヤ52が噛合しており、このドライブギヤ52とハンドル軸50との間には、実釣時にスプール8から釣糸(図示しない)が繰り出された際、スプール8に所望のドラグ力を与えることが可能な周知のドラグ機構54が配置されている。
【0025】
なお、実釣時に、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた際、これに連動してハンドル軸50が回転するのを防止するために、ハンドル軸50には、逆転防止機構が設けられている。
【0026】
この逆転防止機構は、外周面にラチェット爪56aが所定ピッチで形成されたラチェット56と、ラチェット爪56aに対して一定の付勢力で常時係合しているストッパ58とを備えており、ラチェット56は、ハンドル軸50に回り止め嵌合されている。
【0027】
このような逆転防止機構によれば、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させる際には、ラチェット56がa方向(図4参照)に回転するため、ラチェット爪56aとストッパ58との係合により、スプール駆動用モータ12の回転に連動してハンドル軸50が回転することが防止される。したがって、モータ10の動力は減速機構20を介してスプール8のみに伝達される。これに対し、手動ハンドル60を回転操作して、スプール8を釣糸巻取方向に回転させる場合には、ラチェット56がb方向(図4参照)に回転するため、手動ハンドル60の回転操作に連動して、ハンドル軸50を回転させることができる。
【0028】
クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aはクラッチ操作機構13に連結されている。図2に詳しく示されるように、クラッチ操作機構13は、クラッチ駆動用モータ23が正転した時に、駆動軸23aから出力される駆動力を利用して、クラッチ機構40を駆動操作(クラッチON/OFF切換制御)し、ピニオン42を減速機構20(第2のキャリア34)に対して係合または非係合させることができるように構成されている。
【0029】
具体的には、クラッチ操作機構13は、駆動軸23aの回転運動を減速してクラッチ機構40側に伝達するクラッチ作動用の第1および第2の遊星ギヤ機構110,112とを備えている。第1の遊星ギヤ機構110は、駆動軸23aに回り止めされた第1の太陽歯車72と、この第1の太陽歯車72に噛合した複数の第1の遊星歯車74と、これら第1の遊星歯車74が常時噛合する内歯歯車76とを備えており、内歯歯車76は支持フレーム78を介して右フレーム4bに固定されている。
【0030】
一方、第2の遊星ギヤ機構112は、駆動軸23aに対してフリー回転可能に支持された第2の太陽歯車80と、この第2の太陽歯車80に噛合した複数の第2の遊星歯車82とを備えており、複数の第2の遊星歯車82は内歯歯車76に常時噛合するようになっている。
【0031】
複数の第1の遊星歯車74は、夫々、第1のキャリア84に回転自在に支持されており、この第1のキャリア84は第2の太陽歯車80に連結されてこれと一体で回転されるようになっている。また、複数の第2の遊星歯車82は、夫々、第2のキャリア86に回転自在に支持されており、この第2のキャリア86は,第2の太陽歯車80に設けられたボス部80aに回転可能に支持されており、スライドプレート48の長孔48bと係合するピン111を有している。
【0032】
次に、前述したクラッチ操作機構13によってクラッチ機構40をON/OFF切換制御する動作について説明する。
【0033】
リール本体2の表面(釣り人に対向する面)に搭載された操作パネル190(図3参照)を操作すると、クラッチ操作機構13によってクラッチ機構40がON/OFF切換制御される。すなわち、クラッチON状態(ピニオン42が減速機構20の第2のキャリア34に係合した状態;釣糸巻取可能状態)と、クラッチOFF状態(ピニオン42が第2のキャリア34に非係合した状態;スプール8のフリー回転可能状態)とに自動的または選択的に切り換えられる。
【0034】
まず、スライドプレート48の傾斜カム48aがスライド片44と係合してこれをスプール軸6に沿ってスライドさせた状態、すなわち、クラッチ機構40がクラッチOFF状態に切換制御されている状態では、ピニオン42が減速機構20の第2のキャリア34に対して非係合状態となっているため、スプール8は、フリー回転可能状態に維持される。この状態において、釣糸は、仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0035】
なお、本実施形態では、スライドプレート48の位置を検出するための位置検出装置が設けられている。この位置検出装置は、図3および図4に示されるように、スライドプレート48に取り付けられた磁石130,130と、磁石130,130と対向し得るリール本体4の部位に設けられた磁気センサ131とから成り、クラッチON/OFFの両状態におけるスライドプレート48の位置を磁気的に検出することにより、クラッチ駆動用モータ23にこれを停止させるための停止信号を送出する。これにより、クラッチのON/OFF両状態が保持される。
【0036】
釣糸が所望量繰り出された(例えば、仕掛けが所望の棚に到達した)時、操作パネル190をON操作すると、クラッチ駆動用モータ23が正転し、その時の回転運動が駆動軸23aに出力される。駆動軸23aの駆動力は、第1の遊星ギヤ機構110で減速された後、続いて、第2の遊星ギヤ機構112で減速される。まず、第1の遊星ギヤ機構110に伝達された駆動軸23aの駆動力は、第1の太陽歯車72に伝達され、この第1の太陽歯車72を所定の方向に回転させる。この時、第1の太陽歯車72の回転運動によって、複数の第1の遊星歯車74は、自転しながら同時に、内歯歯車76に沿って公転する。
【0037】
複数の第1の遊星歯車74は、第1のキャリア84に回転自在に支持されているため、複数の第1の遊星歯車74が自転しながら公転すると、その公転運動に引きずられて、第1のキャリア84が回転する。この時、第1のキャリア84の回転運動は、第2の遊星ギヤ機構112に伝達される。
【0038】
第2の遊星ギヤ機構112に伝達された第1のキャリア84の回転運動は、この第1のキャリア84に連結された第2の太陽歯車80に伝達され、この太陽歯車80を所定の方向に回転させる。この時、第2の太陽歯車80の回転運動によって、複数の第2の遊星歯車82は、自転しながら同時に、内歯歯車76に沿って公転する。
【0039】
複数の第2の遊星歯車82は、第2のキャリア86に回転自在に支持されているため、複数の第2の遊星歯車82が自転しながら公転すると、その公転運動に引きずられて、第2のキャリア86が180°回転する。第2のキャリア86が180°回転すると、その回転に伴ってピン111が180°回転する。この時、ピン111は、長穴48aに沿って摺動しながら、同時に、第2のキャリア86の回転運動を矢印D2方向(図4参照)の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。
【0040】
このようにスライドプレート48が矢印D2方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aから離脱するとともに、スライド片52を付勢している付勢手段(図示せず)によって元の位置まで軸方向にスライドする。そのため、ピニオンギヤ42が第2のキャリヤ34に対して係合し、クラッチON状態(図3〜図5参照)に切り換えられるとともに、このクラッチON状態は前記位置検出装置の検出信号に基づいてクラッチ駆動用モータ23が停止されることにより保持される。
【0041】
なお、本実施形態では、スライドプレート48の移動位置を検出することによりクラッチ駆動用モータ23の回転を180°毎に停止制御しているが、この制御を実現するための他の方法としては、例えば、クラッチ駆動用モータ23の回転数を電気的または磁気的にカウントする方法や、クラッチ駆動用モータ23への電流値の出力状態を監視してこの電流値が所定値を越えた場合に電流出力を停止する方法等を挙げることができる。また、本実施形態では、クラッチ駆動用モータ23の正転のみでクラッチ機構40の切換えを行なっているが、クラッチ駆動用モータ23の回転方向は限定されず、クラッチ駆動用モータ23の逆転のみでクラッチ機構40を切換えることも可能であり、また、クラッチ駆動用モータ23の正逆回転でクラッチ機構40の切換えを行なっても良いことは言うまでもない。
【0042】
クラッチ操作機構13によってクラッチ機構40がクラッチON状態(釣糸巻取可能状態)に切り換えられている状態で、例えば操作パネル190の操作によってスプール駆動用モータ12を正転させると、その正転運動が左駆動軸12aおよび右駆動軸12bに夫々出力される。左駆動軸12aの駆動力は連動歯車機構に伝達され、右駆動軸12bは一方向クラッチ11の作用によりフリーに回転できる。
【0043】
連動歯車機構に伝達された左駆動軸12aの駆動力は、駆動歯車17から中間歯車19を介してスプール駆動用歯車14に伝達され、スプール軸6を釣糸繰出方向(釣糸巻取方向とは逆方向)に回転させる。そして、このスプール軸6の回転運動は、減速機構20(第1の遊星ギヤ機構16、第2の遊星ギヤ機構18)を介してスプール8に伝達される。
【0044】
第1の遊星ギヤ機構16に伝達されたスプール軸6の回転運動は、スプール軸6に回り止め嵌合された第1の太陽歯車22を釣糸繰出方向に回転させる。この時、第1の太陽歯車22に噛合している複数の第1の遊星歯車24は、釣糸巻取方向に自転しながら同時に、第1の太陽歯車22の回りを釣糸繰出方向に公転する。
【0045】
この状態において、複数の第1の遊星歯車24の自転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を、第1の遊星ギヤ機構16によって減速させた状態で釣糸巻取方向に回転させることができる。
【0046】
また、複数の第1の遊星歯車24が釣糸繰出方向に公転すると、その公転運動に引きずられて、これら第1の遊星歯車24を支持している第1のキャリア32が釣糸繰出方向に回転し、その回転運動は、第2の遊星ギヤ機構18に伝達される。
【0047】
第2の遊星ギヤ機構18に伝達された第1のキャリア32の回転運動は、この第1のキャリア32に連結した第2の太陽歯車28に伝達されて、この第2の太陽歯車28を釣糸繰出方向に回転させる。この時、第2の太陽歯車28に噛合し且つ第2のキャリア34に支持されている複数の第2の遊星歯車30には、これら第2の遊星歯車30を釣糸巻取方向に自転させながら同時に、第2の太陽歯車28の回りを釣糸繰出方向に公転させる力が働き、その公転運動によって、第2のキャリア34には、釣糸繰出方向に回転させる力が作用する。
【0048】
しかしながら、前述した逆転防止機構によってハンドル軸50の回転が規制されているため、このハンドル軸50にドライブギヤ52を介して連結したピニオン42の回転も規制される。この結果、このピニオン42が係合した第2のキャリア34は、回転することなく一定位置に静止した状態に維持される。
【0049】
したがって、第2の太陽歯車28が釣糸繰出方向に回転した時、第2のキャリア34に支持された複数の第2の遊星歯車30は、第2の太陽歯車28の回りを公転することなく、一定位置で釣糸巻取方向に自転する。
【0050】
この状態において、複数の第2の遊星歯車28の自転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を、第2の遊星ギヤ機構18によって減速させた状態で釣糸巻取方向に回転させることができる。
【0051】
このように、スプール軸6の回転運動を減速機構20(第1の遊星ギヤ機構16、第2の遊星ギヤ機構18)を介してスプール8に伝達して、このスプール8を釣糸巻取方向に回転させている間、同時に、レベルワインド機構(図示しない)が駆動することによって、釣糸をスプール8に対して平行に巻回させることができる。
【0052】
なお、スプール駆動用モータ12を停止させて、手動ハンドル60を回転操作した場合、手動ハンドル60の回転運動は、ハンドル軸6からドラグ機構54を介してドライブギヤ52に伝達された後、ピニオン42から減速機構20(具体的には、第2のキャリア34)に伝達され、この第2のキャリア34を釣糸巻取方向に回転させる。
【0053】
第2のキャリア34には、複数の第2の遊星歯車30が支持されているため、第2のキャリア34が釣糸巻取方向に回転すると、この回転運動は、複数の第2の遊星歯車30から第2の太陽歯車28を介して第1のキャリア32に伝達された後、この第1のキャリア32に支持されている複数の第1の遊星歯車24を介して第1の太陽歯車22に伝達され、この第1の太陽歯車22を釣糸巻取方向(スプール駆動用モータ12による回転方向と逆方向)に回転させようとする。
【0054】
しかしながら、第1の太陽歯車22が回り止め嵌合したスプール軸6は、連動歯車機構14,17,19を介してスプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11に連結されて、その回転が停止(規制)された状態になっているため、第1の太陽歯車22は、回転することはない。したがって、複数の第1の遊星歯車24は、非回転状態の第1の太陽歯車22の回りを自転しながら釣糸巻取方向に公転する。
【0055】
この時、複数の第1の遊星歯車24の回転運動は、ロスなく内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を釣糸巻取方向に回転させることができる。この間、同時に、レベルワインド機構が駆動することによって、釣糸をスプール8に対して平行に巻回させることができる。
【0056】
このように、クラッチ機構40がクラッチON状態にある時、操作パネル190をOFF操作すると、再びクラッチOFF状態にセットできる。すなわち、操作パネル190をOFF操作した場合には、再び、クラッチ駆動用モータ23が正転し、その時の回転運動が駆動軸23aに出力され、駆動軸23aの駆動力がクラッチ操作機構13に伝達される。
【0057】
クラッチ操作機構13に伝達された駆動軸23aの駆動力は、前述したように、第1および第2の遊星ギヤ機構110,112で減速された後、クラッチ機構40に伝達され、スライドプレート48を矢印D1方向にスライドさせる。スライドプレート48が矢印D1方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aによって、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)に抗して持ち上げられ(一対のガイド棒46に沿って軸方向にスライドし)、ピニオンギヤ42がキャリヤ34に対して非係合状態となる。これにより、スプール8はフリー回転可能状態に維持され、この状態において、釣糸は仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用電動リール1では、収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとから成る1つのモータ収容部100の内部空間が端壁106によって2つの収容空間104,105に仕切られ、一方の収容空間104内にスプール駆動用モータ12が収容されるとともに、他方の収容空間105内にクラッチ駆動用モータ23が収容されている。すなわち、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とで端壁106を共用し、スプール駆動用モータ12を収容するためにリール本体2内に確保した空間部内に、クラッチ駆動用モータ23を収納するための収容領域を形成している(クラッチ駆動用モータ23をスプール駆動用モータ12の収容部内に併設して収容可能とした)。したがって、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とをリール本体2内の異なる個所で別個のハウジングにより別々に形成する従来とは異なり、リール本体2内においてモータ収容部が占める空間を小さくすることができるため、2つのモータ12,23をリール本体2内に配置しても、リール本体2が大型化するのを防ぐことが可能になる。
【0059】
また、本実施形態では、クラッチ機構40をスプール駆動用モータ23のみによって動作させているため、すなわち、クラッチ機構40を動作させるためにモータ23以外の他のアクチュエータを使用していないため、クラッチ機構40の複雑化を招くことがなく、クラッチ機構40のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる。
【0060】
図6〜図10は本発明の第2の実施形態を示している。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分については、以下、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
図6および図7に示すように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1Aにおいて、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23は、スプール8内にこれと同軸的に配置されている。具体的には、2つのモータ12,23は、スプール8内に配設され且つ軸受260を介してスプール8の一端側を回転可能に支持する1つのモータ収容ケース250内に直列的に配列されて収容されている。
【0062】
モータ収容ケース250は、左フレーム4aと一体に形成されており、その内部空間が仕切り板251によって第1の収容空間104と第2の収容空間105とに区画されている。この場合、第1の収容空間104にはスプール駆動用モータ12が収容され、第2の収容空間105にはクラッチ駆動用モータ23が収容されている。また、モータ収容ケース250は、第1の収容空間104側の端部が閉じられており、第2の収容空間105側の端部が開口している。そして、この開口は、モータ収容ケース250に対して着脱自在な蓋板255によって閉塞されている。
【0063】
スプール駆動用モータ12の左駆動軸12aは、スプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11を介して、仕切り板251に回転可能に支持されている。また、スプール駆動用モータ12の右駆動軸12aは減速機構20に連結されている。さらに、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aは、後述するクラッチ操作機構13Aに連結されている。
【0064】
図6および図10に示されるように、スプール駆動用モータ12の右駆動軸12aに回り止め固定された回転部材231と右側板10bとの間には、スプール駆動用モータ12の左右駆動軸12a,12bと同軸上に固定軸145が回転不能に支持されている。
【0065】
減速機構20は、第1および第2の遊星ギヤ機構16,18から成り、スプール駆動用モータ12の正転駆動時に右駆動軸12b(回転部材231)の回転運動を第1の遊星ギヤ機構16で減速させた後、更に、第2の遊星ギヤ機構18で減速させてスプール8に伝達するように構成されている。
【0066】
図10に詳しく示すように、第1の遊星ギヤ機構16は、回転部材231と一体化され且つ後述する第2の太陽歯車355に回転可能に支持された第1の太陽歯車350と、この第1の太陽歯車350に噛合した複数の第1の遊星歯車351と、これら第1の遊星歯車351が常時噛合するようにスプール8の端面に刻設された内歯歯車352とを備えている。
【0067】
また、第2の遊星ギヤ機構18は、後述する第2のキャリア362に回転可能に支持された第2の太陽歯車355と、この第2の太陽歯車355に噛合した複数の第2の遊星歯車357とを備えており、複数の第2の遊星歯車357は内歯歯車352に常時噛合するようになっている。
【0068】
複数の第1の遊星歯車351はそれぞれ第1のキャリア360に支持されており、この第1のキャリア360は第2の太陽歯車355と一体回転するよう連結されている。また、複数の第2の遊星歯車357はそれぞれ第2のキャリア362に支持されており、この第2のキャリア362はスプール8に取り付けられたブラケット364に回転可能に保持されている。なお、ブラケット364は軸受365を介して右フレーム4bに回転可能に支持されている。
【0069】
また、スプール8をフリー回転状態と釣糸巻取り状態に切換可能なクラッチ機構40は、固定軸45に沿ってスライド可能なピニオン42を備えており、減速機構20(第2のキャリア362)に対して係合または非係合させることができるようになっている。
【0070】
ピニオン42には、その外周面に円周溝42aが形成されており、この円周溝42aには、後述するクラッチのON/OFF切換操作によってピニオン42を固定軸145に沿ってスライドさせることが可能なスライド片44が係合している。このスライド片44は、クラッチプレート48の摺動によって、固定軸45の軸方向に延出した一対のガイド棒46にガイドされながら、固定軸45の軸方向にスライドされる。
【0071】
次に、クラッチ操作機構13Aの構成について説明を加える。
【0072】
図6および図7に示されるように、クラッチ操作機構13Aは、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aに連結されており、モータ23が正転した時に、駆動軸23aの駆動力を利用して、クラッチ機構40を制御(クラッチON/OFF切換制御)し、ピニオン42を減速機構20(第2のキャリア362)に対して係合又は非係合させることができるように構成されている。
【0073】
具体的には、クラッチ操作機構13Aは、駆動軸23aに連結されてこれと一体に回転する駆動力伝達軸200と、この駆動力伝達軸200の回転運動を減速してクラッチ機構40に伝達し且つこのクラッチ機構40を制御するフロント側およびリア側の遊星ギヤ機構とを備えている。
【0074】
フロント側の遊星ギヤ機構は、駆動力伝達軸200に回り止めされた第1の太陽歯車72と、この第1の太陽歯車72に噛合した複数の第1の遊星歯車74と、これら第1の遊星歯車74が常時噛合する内歯歯車76とを備えており、内歯歯車76は、支持フレーム278を介して左フレーム4aに固定されている。
【0075】
リア側の遊星ギヤ機構は、駆動力伝達軸200に対してフリー回転可能に支持された第2の太陽歯車80と、この第2の太陽歯車80に噛合した複数の第2の遊星歯車82とを備えており、複数の第2の遊星歯車82は、内歯歯車76に常時噛合するようになっている。
【0076】
複数の第1の遊星歯車74は、夫々、第1のキャリア84に回転自在に支持されており、この第1のキャリア84は、第2の太陽歯車80に連結されている。また、複数の第2の遊星歯車82は、夫々、第2のキャリア86に回転自在に支持されており、この第2のキャリア86は、駆動力伝達軸200に回り止めされたギヤ201に連結されている。
【0077】
ギヤ201は、連動ギヤ202を介してクラッチ連動軸204に連結されている。クラッチ連動軸204は、左フレーム4aから右フレーム4bに亘って延出しており、このクラッチ連動軸204の延出端部(右フレーム4b側の部分)には、クラッチ機構40に連結された円形プレート206が取り付けられている。具体的には、円形プレート206には、1個のボス291が突設されており、このボス291がクラッチ機構40のスライドプレート48の長穴48aに係合している。
【0078】
次に、上記構成の魚釣用リール1Aの実釣時における動作を説明する。
例えば、図8〜図10に示されるクラッチON状態で、操作パネル190上の対応する操作スイッチを押すと、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aが正転し、駆動軸23aの駆動力がクラッチ制御機構13Aからギヤ201を介して連動ギヤ202に伝達され、クラッチ連動軸204を所定方向に回転させる。クラッチ連動軸204が回転すると、この回転に伴って円形プレート206とこれに突設されたボス291とが180°回転する。この時、ボス291が、スライドプレート48の長穴48bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート201の回転運動を、矢印D1方向の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。
【0079】
スライドプレート48が矢印D1方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aによって、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)に抗して持ち上げられ(一対のガイド棒46に沿って軸方向にスライドし)、ピニオンギヤ42がキャリヤ362に対して非係合状態となる。これにより、スプール8はフリー回転可能状態に維持され、この状態において、釣糸は仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0080】
一方、このクラッチOFF状態からクラッチON状態へ切換える場合には、操作パネル190上の対応する操作スイッチを押せば良い。これにより、クラッチ駆動用モータ22の駆動軸23aは、前述したクラッチON状態からクラッチOFF状態への切換時と同じ方向に回転し、円形プレート206とこれに突設されたボス291とをにさらに180°回転させる。したがって、ボス291は、長穴48bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート206の回転運動を、矢印D2方向の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。このようにスライドプレート48が矢印D2方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aから離脱するとともに、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)によって元の位置まで軸方向にスライドする。そのため、ピニオンギヤ42がキャリヤ362に対して係合し、クラッチON状態(図4参照)に切り換えられる。
【0081】
また、クラッチON状態で魚の当たりを待ち、魚が当たった場合には、手動ハンドル60を回転操作するか、または、スプール駆動用モータ12を正転駆動させることによって釣糸をスプール8に均一に巻き取ることができる。
【0082】
クラッチON状態で手動ハンドル60を例えば右フレーム4b側から見て時計回りに回転操作すると、ピニオン42およびこれに嵌合されたキャリヤ362が反時計回りに回転駆動される。この時、遊星歯車357は反時計回りに自転すると共に公転し、内歯歯車352を反時計回りに増速した状態で回転駆動する。これにより、スプール8は、釣糸巻取り方向に回転駆動される。なお、内歯歯車352の反時計回りの回転駆動により、第1の太陽歯車350は時計回りに回転しようとするが、その回転駆動はモータ12の反対側に位置する一方向クラッチ11によって規制される。
【0083】
また、手動ハンドル60によらず、スプール駆動用モータ12を正転駆動(時計回り)させると、第1の太陽歯車350は時計回りに回転駆動される。この回転駆動により、遊星歯車351は、反時計回りに回転すると共に時計回りに公転し、第2の太陽歯車355が時計回りに回転する。この回転方向では、前述した逆転防止機構によってハンドル軸50の回転が規制されているため、ハンドル軸50にドライブギヤ52を介して連結したピニオンギヤ42の回転(時計回りの回転)も規制される。その結果、ピニオンギヤ42が係合した第2のキャリア362は、回転することなく一定位置に静止した状態に維持される。
【0084】
したがって、第2の太陽歯車355が時計回りに回転した際、第2のキャリア362に回転可能に支持された複数の遊星歯車357は、第2の太陽歯車355の回りを公転することなく一定位置で反時計回りに自転する。
【0085】
この状態において、複数の遊星歯車357の反時計回りの回転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車352に減速されて伝達され、この内歯歯車352を反時計回りに回転させる。そして、これに伴ってスプール8は、釣糸巻取方向(反時計回り)に回転する。この結果、釣糸は、図示しない釣糸案内機構を介してスプール8に均一に巻き取られる。なお、このような電動巻取時には、前記逆転防止機構が機能しているため、手動ハンドル60が連動して高速で回転することはない。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用電動リール1Aでは、スプール8内に配設された1つのモータ収容ケース250の内部空間が仕切り板251によって2つの収容空間104,105に仕切られ、一方の収容空間104内にスプール駆動用モータ12が収容されるとともに、他方の収容空間105内にクラッチ駆動用モータ23が収容されている。すなわち、スプール駆動用モータ12を収容するためにリール本体2に確保したモータ収容ケース250内に、仕切り板251を用いてクラッチ駆動用モータ23を収納するための収容領域が形成されている(クラッチ駆動用モータ23をスプール駆動用モータ12の収容部内に併設して収容可能とした)。したがって、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とをリール本体2内の異なる個所で別個のハウジングにより別々に形成する従来とは異なり、リール本体2が大型化するのを防ぐことが可能になる。
【0087】
図11は第1の実施形態の変形例を示している。この変形例において、モータ収容部100には、その内部を第1の収容空間104と第2の収容空間105とに仕切る端壁106が設けられていない。すなわち、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23は、モータ収容部100内の区画されていない連続する1つの空間S内に一括して収容されている。ただし、この場合、スプール駆動用モータ12に対してクラッチ駆動用モータ23を位置決めするため、連結部材400によってスプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23とが着脱可能に連結される。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
第1の実施形態では、モータ収容部100の両側からそれぞれモータ12,23を対応する収容空間104,105内に組み込む必要があるが、この変形例の構成では、連結部材400によって互いに連結された2つのモータ12,23を1つのユニットとしてモータ収容部100に一度に組み込むことができるため、モータの組み込み性が向上する。
【0089】
図12はモータ12,23の配列に関する変形例を示している。この図はモータ収容部100を右側板10bまたは左側板10a側から見た側断面図であり、モータ12,23は、それぞれのモータ12,23の外面に沿った外形を有する共通のハウジング410内に、互いに並列の関係をもって配列されている。この場合、ハウジング410の内部空間は仕切られていない。
【0090】
各モータ12,23を互いに隣接する別々のハウジング内に収容した場合には、図中二点鎖線で示されるようにモータ収容部が本変形例の形態に比べて大きくなってしまう。本変形例は共通のハウジング410内に2つのモータ12,23を一括して収容したことにより、モータ収容部をコンパクトにでき、ひいてはリールの小型化を図ることが可能になる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の魚釣用電動リールによれば、リール本体の大型化およびクラッチ機構の複雑化を招くことなく、クラッチ機構のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの一部断面を有する正面図である。
【図2】図1の魚釣用電動リールをその幅方向に沿う平面で切断した要部断面図である。
【図3】図1の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た部分断面図である。
【図4】図1の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た断面図である。
【図5】クラッチON状態におけるクラッチ機構の横断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの正断面図である。
【図7】図6の魚釣用電動リールをその幅方向に沿う平面で切断した要部断面図である。
【図8】図6の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た部分断面図である。
【図9】図6の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た断面図である。
【図10】クラッチON状態におけるクラッチ機構の横断面図である。
【図11】第1の実施形態の変形例に係る要部断面図である。
【図12】モータの配列に関する変形例を示す側断面図である。
【符号の説明】
1,1A…魚釣用電動リール
2…リール本体
8…スプール
10a,10b…側板
12…スプール駆動用モータ
23…クラッチ駆動用モータ
40…クラッチ機構
100…モータ収容部(収容部)
106…端壁(仕切り)
250…モータ収容ケース(収容部)
251…仕切り板(仕切り)
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプールを釣糸巻取可能状態とフリー回転可能状態とに切り換えるためのクラッチ機構を有する魚釣用電動リールに係わり、特に、クラッチ駆動用モータを使用してクラッチ機構を動作させる魚釣用電動リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、釣糸繰出中にスプールの回転を停止させて釣糸巻取可能状態へ復帰させるクラッチ機構を備えた種々の魚釣用リールが知られている。
【0003】
例えば特開平3−187333号公報には、スプールを回転駆動させるスプール駆動用モータとは別個にクラッチ駆動用モータを設け、このクラッチ駆動用モータの回転動力でクラッチ機構を動作させてスプールを釣糸巻取可能状態(クラッチON状態)とフリー回転可能状態(クラッチOFF状態)とに切り換え可能な魚釣用電動リールが開示されている。
【0004】
また、特開平4−66042号公報や特開平6−311834号公報には、スプール駆動用モータとは別個に設けられたクラッチ駆動用モータやアクチュエータ等によってクラッチのON/OFFを切り換えることができる魚釣用電動リールが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スプール駆動用モータとは別にクラッチ駆動用モータを設ける構成では、スプール駆動用モータを収容するための収容部とクラッチ駆動用モータを収容するための収容部とが別々に形成される。すなわち、スプール駆動用モータを収容するためにリール本体内に確保される空間から離れた異なる空間部位に、全く別個のハウジングによってクラッチ駆動用モータを収納するための収容部が形成される。そのため、リール全体が大型化してしまうという不具合がある。
【0006】
一方、アクチュエータによってクラッチのON/OFFを切り換える構成では、クラッチ機構が複雑になるため、僅かな寸法誤差がクラッチの作動に影響を及ぼすとともに、組み立てやメンテナンスがしずらくなる。また、落下等の衝撃でアクチュエータの固定部がずれると、クラッチの作動不良が引き起こされる。
【0007】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リール本体の大型化およびクラッチ機構の複雑化を招くことなく、クラッチ機構のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる魚釣用電動リールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体の両側板間に回転自在に支持されたスプールと、このスプールを回転駆動させるスプール駆動用モータと、このスプール駆動用モータを収容する収容部と、スプールをフリー回転状態と釣糸巻取り状態の両状態に切換え可能で且つクラッチ駆動用モータにて駆動されるクラッチ機構とを備えた魚釣用電動リールにおいて、前記クラッチ駆動用モータを前記スプール駆動用モータの収容部内に併設して収容可能としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、手動ハンドル60が取り付けられたハンドル軸50を支持するリール本体2を備えている。リール本体2の左右フレーム4a,4b間には、スプール軸6が軸受を介して回転可能に支持されており、このスプール軸6を囲繞するようにスプール8が配置されている。なお、左右フレーム4a,4bには、左右側板10a,10bが取り付けられている。
【0011】
図1および図2に示されるように、左右フレーム4a,4b間には、スプール8(スプール軸6)よりも前側(釣糸繰出方向側)に、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23とが保持されている。スプール駆動用モータ12およびクラッチ駆動用モータ23は、モータ収容部100内に併設されている。モータ収容部100は筒状の収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとから成る。収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bは、締結部材110によって互いに連結されて、左右フレーム4a,4b間に組み込まれている。蓋ケース100Bが連結される収容ケース本体100Aの一方側の開口は、収容ケース本体100Aと一体に形成された端壁106によって閉塞されている。収容ケース本体100Aの他方側の開口は、収容ケース本体100Aに対して着脱自在な蓋板108によって閉塞されている。
【0012】
収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとが連結されて蓋板108が収容ケース本体100Aに取り付けられた図示の状態では、スプール駆動用モータ12を収容するための第1の収容空間104が蓋板108と端壁106との間に形成され、クラッチ駆動用モータ23を収容するための第2の収容空間105が端壁106と蓋ケース100Bとの間に形成される。すなわち、このような構成において、端壁106はモータ収容部100内を第1の収容空間104と第2の収容空間105とに仕切る仕切り板を形成するとともに、これらの収容空間104,105内に収容されたモータ12,23はリール1の幅方向に沿って互いに直列的に配列される。
【0013】
スプール駆動用モータ12はその左右両側に駆動軸12a,12bを有している。スプール駆動用モータ12の右駆動軸12bは、スプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11を介して、端壁106に回転可能に支持されている。この場合、一方向クラッチ11は、スプール8を釣糸巻取り方向に回転させるためにスプール駆動用モータ12が正転駆動される時にはその右駆動軸12bの正転を許容するとともに、右駆動軸12bにこれを逆転させる力が作用する時(具体的には、手動ハンドル60を回転操作してスプール8を釣糸巻取方向に回転させる時)にはその力に抗する。
【0014】
スプール駆動用モータ12の左駆動軸12aは連動歯車機構に連結されている。連動歯車機構は、左駆動軸12aと一体に回転する駆動歯車17と、この駆動歯車17に噛合した中間歯車19と、この中間歯車19に噛合したスプール駆動用歯車14とを備えており、スプール駆動用歯車14は、スプール軸6の一端側(左フレーム4a側)に回り止め嵌合されている。なお、中間歯車19は、左フレーム4aに回り止めされた固定軸21に回転可能に支持されている。
【0015】
モータ12,23の上方側には、スプール8に対して釣糸を平行に巻回させるレベルワインド機構(図示せず)が配置されている。このレベルワインド機構は、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた時に、或いは、後述するハンドル操作によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた時に、その回転運動に連動して駆動することができるように構成されている。
【0016】
スプール軸6の他端側(右フレーム4b側)には、第1および第2の遊星ギヤ機構16,18から成る減速機構20が設けられており、この減速機構20は、スプール駆動用モータ12の正転時のスプール軸6の回転運動を、第1の遊星ギヤ機構16で減速させた後、更に、第2の遊星ギヤ機構18で減速させてスプール8に伝達するように構成されている。
【0017】
図5に示すように、第1の遊星ギヤ機構16は、スプール軸6に回り止め嵌合された第1の太陽歯車22と、この第1の太陽歯車22に噛合した複数の第1の遊星歯車24と、これら第1の遊星歯車24が常時噛合するようにスプール8の端面に刻設された内歯歯車26とを備えている。複数の第1の遊星歯車24はそれぞれ第1のキャリア32に支持されており、この第1のキャリア32はスプール軸6に対してフリー回転可能に支持されている。
【0018】
第2の遊星ギヤ機構18は、第1のキャリア32に固定された第2の太陽歯車28と、この第2の太陽歯車28に噛合した複数の第2の遊星歯車30とを備えており、複数の第2の遊星歯車30は内歯歯車26に常時噛合するようになっている。また、複数の第2の遊星歯車30はそれぞれ第2のキャリア34に支持されており、この第2のキャリア34はスプール8に取り付けられたブラケット36に嵌合し且つ軸受37を介してスプール軸6に回転可能に支持されている。なお、ブラケット36は、軸受39を介して、右フレーム4bに回転可能に支持されている。
【0019】
スプール軸6の他端側において、右フレーム4bと右側板10bとの間には、後述するクラッチ操作機構13によって駆動操作(クラッチON/OFF切換制御)されるクラッチ機構40が配置されている。クラッチ機構40は、スプール軸6に沿ってスライド可能で且つ減速機構20(具体的には、第2のキャリア34)に対して係合または非係合されるピニオン42を備えている。
【0020】
本実施形態において、ピニオン42は、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御によって、減速機構20(第2のキャリア34)を介して間接的にスプール軸6に係合または非係合されるようになっているが、例えばスプール軸6の他端側に減速機構20が配置されていない魚釣用両軸受型リール(図示しない)では、クラッチ機構40のON/OFF切換制御によってピニオン42が直接的にスプール軸6に係合または非係合するようになっていても良い。
【0021】
ピニオン42には、その外周面に円周溝42aが形成されている。また、この円周溝42aにはスライド片44が係合している。スライド片44は、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御によって、ピニオン42をスプール軸6に沿ってスライドさせる。
【0022】
スライド片44は、スプール軸6の軸方向に沿って延びる一対のガイド棒46(図3および図4参照)にガイドされながら、スプール軸6に沿ってスライドする。スライド片44をスプール軸6に沿ってスライドさせるための構成として、クラッチ機構40には、クラッチ操作機構13によるクラッチ機構40のON/OFF切換制御に連動して一定方向D1,D2にスライド可能なスライドプレート48が設けられている。スライドプレート48の表面には、スライド片44と係合してこれをスプール軸6に沿ってスライドさせる傾斜カム48aが形成されている。また、スライドプレート48の端部には長孔48bが形成されている。
【0023】
なお、スライドプレート48には、位置決め保持用バネ(図示しない)が取り付けられており、この位置決め保持用バネの付勢力によって、スライドプレート48をクラッチON状態(図3〜図5参照)とクラッチOFF状態(図示せず)に夫々位置決め保持させることができるようになっている。
【0024】
図1にも示されるように、ピニオン42には、ハンドル軸50に取り付けられたドライブギヤ52が噛合しており、このドライブギヤ52とハンドル軸50との間には、実釣時にスプール8から釣糸(図示しない)が繰り出された際、スプール8に所望のドラグ力を与えることが可能な周知のドラグ機構54が配置されている。
【0025】
なお、実釣時に、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させた際、これに連動してハンドル軸50が回転するのを防止するために、ハンドル軸50には、逆転防止機構が設けられている。
【0026】
この逆転防止機構は、外周面にラチェット爪56aが所定ピッチで形成されたラチェット56と、ラチェット爪56aに対して一定の付勢力で常時係合しているストッパ58とを備えており、ラチェット56は、ハンドル軸50に回り止め嵌合されている。
【0027】
このような逆転防止機構によれば、スプール駆動用モータ12によってスプール8を釣糸巻取方向に回転させる際には、ラチェット56がa方向(図4参照)に回転するため、ラチェット爪56aとストッパ58との係合により、スプール駆動用モータ12の回転に連動してハンドル軸50が回転することが防止される。したがって、モータ10の動力は減速機構20を介してスプール8のみに伝達される。これに対し、手動ハンドル60を回転操作して、スプール8を釣糸巻取方向に回転させる場合には、ラチェット56がb方向(図4参照)に回転するため、手動ハンドル60の回転操作に連動して、ハンドル軸50を回転させることができる。
【0028】
クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aはクラッチ操作機構13に連結されている。図2に詳しく示されるように、クラッチ操作機構13は、クラッチ駆動用モータ23が正転した時に、駆動軸23aから出力される駆動力を利用して、クラッチ機構40を駆動操作(クラッチON/OFF切換制御)し、ピニオン42を減速機構20(第2のキャリア34)に対して係合または非係合させることができるように構成されている。
【0029】
具体的には、クラッチ操作機構13は、駆動軸23aの回転運動を減速してクラッチ機構40側に伝達するクラッチ作動用の第1および第2の遊星ギヤ機構110,112とを備えている。第1の遊星ギヤ機構110は、駆動軸23aに回り止めされた第1の太陽歯車72と、この第1の太陽歯車72に噛合した複数の第1の遊星歯車74と、これら第1の遊星歯車74が常時噛合する内歯歯車76とを備えており、内歯歯車76は支持フレーム78を介して右フレーム4bに固定されている。
【0030】
一方、第2の遊星ギヤ機構112は、駆動軸23aに対してフリー回転可能に支持された第2の太陽歯車80と、この第2の太陽歯車80に噛合した複数の第2の遊星歯車82とを備えており、複数の第2の遊星歯車82は内歯歯車76に常時噛合するようになっている。
【0031】
複数の第1の遊星歯車74は、夫々、第1のキャリア84に回転自在に支持されており、この第1のキャリア84は第2の太陽歯車80に連結されてこれと一体で回転されるようになっている。また、複数の第2の遊星歯車82は、夫々、第2のキャリア86に回転自在に支持されており、この第2のキャリア86は,第2の太陽歯車80に設けられたボス部80aに回転可能に支持されており、スライドプレート48の長孔48bと係合するピン111を有している。
【0032】
次に、前述したクラッチ操作機構13によってクラッチ機構40をON/OFF切換制御する動作について説明する。
【0033】
リール本体2の表面(釣り人に対向する面)に搭載された操作パネル190(図3参照)を操作すると、クラッチ操作機構13によってクラッチ機構40がON/OFF切換制御される。すなわち、クラッチON状態(ピニオン42が減速機構20の第2のキャリア34に係合した状態;釣糸巻取可能状態)と、クラッチOFF状態(ピニオン42が第2のキャリア34に非係合した状態;スプール8のフリー回転可能状態)とに自動的または選択的に切り換えられる。
【0034】
まず、スライドプレート48の傾斜カム48aがスライド片44と係合してこれをスプール軸6に沿ってスライドさせた状態、すなわち、クラッチ機構40がクラッチOFF状態に切換制御されている状態では、ピニオン42が減速機構20の第2のキャリア34に対して非係合状態となっているため、スプール8は、フリー回転可能状態に維持される。この状態において、釣糸は、仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0035】
なお、本実施形態では、スライドプレート48の位置を検出するための位置検出装置が設けられている。この位置検出装置は、図3および図4に示されるように、スライドプレート48に取り付けられた磁石130,130と、磁石130,130と対向し得るリール本体4の部位に設けられた磁気センサ131とから成り、クラッチON/OFFの両状態におけるスライドプレート48の位置を磁気的に検出することにより、クラッチ駆動用モータ23にこれを停止させるための停止信号を送出する。これにより、クラッチのON/OFF両状態が保持される。
【0036】
釣糸が所望量繰り出された(例えば、仕掛けが所望の棚に到達した)時、操作パネル190をON操作すると、クラッチ駆動用モータ23が正転し、その時の回転運動が駆動軸23aに出力される。駆動軸23aの駆動力は、第1の遊星ギヤ機構110で減速された後、続いて、第2の遊星ギヤ機構112で減速される。まず、第1の遊星ギヤ機構110に伝達された駆動軸23aの駆動力は、第1の太陽歯車72に伝達され、この第1の太陽歯車72を所定の方向に回転させる。この時、第1の太陽歯車72の回転運動によって、複数の第1の遊星歯車74は、自転しながら同時に、内歯歯車76に沿って公転する。
【0037】
複数の第1の遊星歯車74は、第1のキャリア84に回転自在に支持されているため、複数の第1の遊星歯車74が自転しながら公転すると、その公転運動に引きずられて、第1のキャリア84が回転する。この時、第1のキャリア84の回転運動は、第2の遊星ギヤ機構112に伝達される。
【0038】
第2の遊星ギヤ機構112に伝達された第1のキャリア84の回転運動は、この第1のキャリア84に連結された第2の太陽歯車80に伝達され、この太陽歯車80を所定の方向に回転させる。この時、第2の太陽歯車80の回転運動によって、複数の第2の遊星歯車82は、自転しながら同時に、内歯歯車76に沿って公転する。
【0039】
複数の第2の遊星歯車82は、第2のキャリア86に回転自在に支持されているため、複数の第2の遊星歯車82が自転しながら公転すると、その公転運動に引きずられて、第2のキャリア86が180°回転する。第2のキャリア86が180°回転すると、その回転に伴ってピン111が180°回転する。この時、ピン111は、長穴48aに沿って摺動しながら、同時に、第2のキャリア86の回転運動を矢印D2方向(図4参照)の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。
【0040】
このようにスライドプレート48が矢印D2方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aから離脱するとともに、スライド片52を付勢している付勢手段(図示せず)によって元の位置まで軸方向にスライドする。そのため、ピニオンギヤ42が第2のキャリヤ34に対して係合し、クラッチON状態(図3〜図5参照)に切り換えられるとともに、このクラッチON状態は前記位置検出装置の検出信号に基づいてクラッチ駆動用モータ23が停止されることにより保持される。
【0041】
なお、本実施形態では、スライドプレート48の移動位置を検出することによりクラッチ駆動用モータ23の回転を180°毎に停止制御しているが、この制御を実現するための他の方法としては、例えば、クラッチ駆動用モータ23の回転数を電気的または磁気的にカウントする方法や、クラッチ駆動用モータ23への電流値の出力状態を監視してこの電流値が所定値を越えた場合に電流出力を停止する方法等を挙げることができる。また、本実施形態では、クラッチ駆動用モータ23の正転のみでクラッチ機構40の切換えを行なっているが、クラッチ駆動用モータ23の回転方向は限定されず、クラッチ駆動用モータ23の逆転のみでクラッチ機構40を切換えることも可能であり、また、クラッチ駆動用モータ23の正逆回転でクラッチ機構40の切換えを行なっても良いことは言うまでもない。
【0042】
クラッチ操作機構13によってクラッチ機構40がクラッチON状態(釣糸巻取可能状態)に切り換えられている状態で、例えば操作パネル190の操作によってスプール駆動用モータ12を正転させると、その正転運動が左駆動軸12aおよび右駆動軸12bに夫々出力される。左駆動軸12aの駆動力は連動歯車機構に伝達され、右駆動軸12bは一方向クラッチ11の作用によりフリーに回転できる。
【0043】
連動歯車機構に伝達された左駆動軸12aの駆動力は、駆動歯車17から中間歯車19を介してスプール駆動用歯車14に伝達され、スプール軸6を釣糸繰出方向(釣糸巻取方向とは逆方向)に回転させる。そして、このスプール軸6の回転運動は、減速機構20(第1の遊星ギヤ機構16、第2の遊星ギヤ機構18)を介してスプール8に伝達される。
【0044】
第1の遊星ギヤ機構16に伝達されたスプール軸6の回転運動は、スプール軸6に回り止め嵌合された第1の太陽歯車22を釣糸繰出方向に回転させる。この時、第1の太陽歯車22に噛合している複数の第1の遊星歯車24は、釣糸巻取方向に自転しながら同時に、第1の太陽歯車22の回りを釣糸繰出方向に公転する。
【0045】
この状態において、複数の第1の遊星歯車24の自転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を、第1の遊星ギヤ機構16によって減速させた状態で釣糸巻取方向に回転させることができる。
【0046】
また、複数の第1の遊星歯車24が釣糸繰出方向に公転すると、その公転運動に引きずられて、これら第1の遊星歯車24を支持している第1のキャリア32が釣糸繰出方向に回転し、その回転運動は、第2の遊星ギヤ機構18に伝達される。
【0047】
第2の遊星ギヤ機構18に伝達された第1のキャリア32の回転運動は、この第1のキャリア32に連結した第2の太陽歯車28に伝達されて、この第2の太陽歯車28を釣糸繰出方向に回転させる。この時、第2の太陽歯車28に噛合し且つ第2のキャリア34に支持されている複数の第2の遊星歯車30には、これら第2の遊星歯車30を釣糸巻取方向に自転させながら同時に、第2の太陽歯車28の回りを釣糸繰出方向に公転させる力が働き、その公転運動によって、第2のキャリア34には、釣糸繰出方向に回転させる力が作用する。
【0048】
しかしながら、前述した逆転防止機構によってハンドル軸50の回転が規制されているため、このハンドル軸50にドライブギヤ52を介して連結したピニオン42の回転も規制される。この結果、このピニオン42が係合した第2のキャリア34は、回転することなく一定位置に静止した状態に維持される。
【0049】
したがって、第2の太陽歯車28が釣糸繰出方向に回転した時、第2のキャリア34に支持された複数の第2の遊星歯車30は、第2の太陽歯車28の回りを公転することなく、一定位置で釣糸巻取方向に自転する。
【0050】
この状態において、複数の第2の遊星歯車28の自転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を、第2の遊星ギヤ機構18によって減速させた状態で釣糸巻取方向に回転させることができる。
【0051】
このように、スプール軸6の回転運動を減速機構20(第1の遊星ギヤ機構16、第2の遊星ギヤ機構18)を介してスプール8に伝達して、このスプール8を釣糸巻取方向に回転させている間、同時に、レベルワインド機構(図示しない)が駆動することによって、釣糸をスプール8に対して平行に巻回させることができる。
【0052】
なお、スプール駆動用モータ12を停止させて、手動ハンドル60を回転操作した場合、手動ハンドル60の回転運動は、ハンドル軸6からドラグ機構54を介してドライブギヤ52に伝達された後、ピニオン42から減速機構20(具体的には、第2のキャリア34)に伝達され、この第2のキャリア34を釣糸巻取方向に回転させる。
【0053】
第2のキャリア34には、複数の第2の遊星歯車30が支持されているため、第2のキャリア34が釣糸巻取方向に回転すると、この回転運動は、複数の第2の遊星歯車30から第2の太陽歯車28を介して第1のキャリア32に伝達された後、この第1のキャリア32に支持されている複数の第1の遊星歯車24を介して第1の太陽歯車22に伝達され、この第1の太陽歯車22を釣糸巻取方向(スプール駆動用モータ12による回転方向と逆方向)に回転させようとする。
【0054】
しかしながら、第1の太陽歯車22が回り止め嵌合したスプール軸6は、連動歯車機構14,17,19を介してスプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11に連結されて、その回転が停止(規制)された状態になっているため、第1の太陽歯車22は、回転することはない。したがって、複数の第1の遊星歯車24は、非回転状態の第1の太陽歯車22の回りを自転しながら釣糸巻取方向に公転する。
【0055】
この時、複数の第1の遊星歯車24の回転運動は、ロスなく内歯歯車26に伝達され、この内歯歯車26を釣糸巻取方向に回転させる。この結果、内歯歯車26が刻設されたスプール8を釣糸巻取方向に回転させることができる。この間、同時に、レベルワインド機構が駆動することによって、釣糸をスプール8に対して平行に巻回させることができる。
【0056】
このように、クラッチ機構40がクラッチON状態にある時、操作パネル190をOFF操作すると、再びクラッチOFF状態にセットできる。すなわち、操作パネル190をOFF操作した場合には、再び、クラッチ駆動用モータ23が正転し、その時の回転運動が駆動軸23aに出力され、駆動軸23aの駆動力がクラッチ操作機構13に伝達される。
【0057】
クラッチ操作機構13に伝達された駆動軸23aの駆動力は、前述したように、第1および第2の遊星ギヤ機構110,112で減速された後、クラッチ機構40に伝達され、スライドプレート48を矢印D1方向にスライドさせる。スライドプレート48が矢印D1方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aによって、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)に抗して持ち上げられ(一対のガイド棒46に沿って軸方向にスライドし)、ピニオンギヤ42がキャリヤ34に対して非係合状態となる。これにより、スプール8はフリー回転可能状態に維持され、この状態において、釣糸は仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用電動リール1では、収容ケース本体100Aと蓋ケース100Bとから成る1つのモータ収容部100の内部空間が端壁106によって2つの収容空間104,105に仕切られ、一方の収容空間104内にスプール駆動用モータ12が収容されるとともに、他方の収容空間105内にクラッチ駆動用モータ23が収容されている。すなわち、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とで端壁106を共用し、スプール駆動用モータ12を収容するためにリール本体2内に確保した空間部内に、クラッチ駆動用モータ23を収納するための収容領域を形成している(クラッチ駆動用モータ23をスプール駆動用モータ12の収容部内に併設して収容可能とした)。したがって、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とをリール本体2内の異なる個所で別個のハウジングにより別々に形成する従来とは異なり、リール本体2内においてモータ収容部が占める空間を小さくすることができるため、2つのモータ12,23をリール本体2内に配置しても、リール本体2が大型化するのを防ぐことが可能になる。
【0059】
また、本実施形態では、クラッチ機構40をスプール駆動用モータ23のみによって動作させているため、すなわち、クラッチ機構40を動作させるためにモータ23以外の他のアクチュエータを使用していないため、クラッチ機構40の複雑化を招くことがなく、クラッチ機構40のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる。
【0060】
図6〜図10は本発明の第2の実施形態を示している。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分については、以下、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
図6および図7に示すように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1Aにおいて、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23は、スプール8内にこれと同軸的に配置されている。具体的には、2つのモータ12,23は、スプール8内に配設され且つ軸受260を介してスプール8の一端側を回転可能に支持する1つのモータ収容ケース250内に直列的に配列されて収容されている。
【0062】
モータ収容ケース250は、左フレーム4aと一体に形成されており、その内部空間が仕切り板251によって第1の収容空間104と第2の収容空間105とに区画されている。この場合、第1の収容空間104にはスプール駆動用モータ12が収容され、第2の収容空間105にはクラッチ駆動用モータ23が収容されている。また、モータ収容ケース250は、第1の収容空間104側の端部が閉じられており、第2の収容空間105側の端部が開口している。そして、この開口は、モータ収容ケース250に対して着脱自在な蓋板255によって閉塞されている。
【0063】
スプール駆動用モータ12の左駆動軸12aは、スプール駆動用モータ12の逆回転を防止する一方向クラッチ11を介して、仕切り板251に回転可能に支持されている。また、スプール駆動用モータ12の右駆動軸12aは減速機構20に連結されている。さらに、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aは、後述するクラッチ操作機構13Aに連結されている。
【0064】
図6および図10に示されるように、スプール駆動用モータ12の右駆動軸12aに回り止め固定された回転部材231と右側板10bとの間には、スプール駆動用モータ12の左右駆動軸12a,12bと同軸上に固定軸145が回転不能に支持されている。
【0065】
減速機構20は、第1および第2の遊星ギヤ機構16,18から成り、スプール駆動用モータ12の正転駆動時に右駆動軸12b(回転部材231)の回転運動を第1の遊星ギヤ機構16で減速させた後、更に、第2の遊星ギヤ機構18で減速させてスプール8に伝達するように構成されている。
【0066】
図10に詳しく示すように、第1の遊星ギヤ機構16は、回転部材231と一体化され且つ後述する第2の太陽歯車355に回転可能に支持された第1の太陽歯車350と、この第1の太陽歯車350に噛合した複数の第1の遊星歯車351と、これら第1の遊星歯車351が常時噛合するようにスプール8の端面に刻設された内歯歯車352とを備えている。
【0067】
また、第2の遊星ギヤ機構18は、後述する第2のキャリア362に回転可能に支持された第2の太陽歯車355と、この第2の太陽歯車355に噛合した複数の第2の遊星歯車357とを備えており、複数の第2の遊星歯車357は内歯歯車352に常時噛合するようになっている。
【0068】
複数の第1の遊星歯車351はそれぞれ第1のキャリア360に支持されており、この第1のキャリア360は第2の太陽歯車355と一体回転するよう連結されている。また、複数の第2の遊星歯車357はそれぞれ第2のキャリア362に支持されており、この第2のキャリア362はスプール8に取り付けられたブラケット364に回転可能に保持されている。なお、ブラケット364は軸受365を介して右フレーム4bに回転可能に支持されている。
【0069】
また、スプール8をフリー回転状態と釣糸巻取り状態に切換可能なクラッチ機構40は、固定軸45に沿ってスライド可能なピニオン42を備えており、減速機構20(第2のキャリア362)に対して係合または非係合させることができるようになっている。
【0070】
ピニオン42には、その外周面に円周溝42aが形成されており、この円周溝42aには、後述するクラッチのON/OFF切換操作によってピニオン42を固定軸145に沿ってスライドさせることが可能なスライド片44が係合している。このスライド片44は、クラッチプレート48の摺動によって、固定軸45の軸方向に延出した一対のガイド棒46にガイドされながら、固定軸45の軸方向にスライドされる。
【0071】
次に、クラッチ操作機構13Aの構成について説明を加える。
【0072】
図6および図7に示されるように、クラッチ操作機構13Aは、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aに連結されており、モータ23が正転した時に、駆動軸23aの駆動力を利用して、クラッチ機構40を制御(クラッチON/OFF切換制御)し、ピニオン42を減速機構20(第2のキャリア362)に対して係合又は非係合させることができるように構成されている。
【0073】
具体的には、クラッチ操作機構13Aは、駆動軸23aに連結されてこれと一体に回転する駆動力伝達軸200と、この駆動力伝達軸200の回転運動を減速してクラッチ機構40に伝達し且つこのクラッチ機構40を制御するフロント側およびリア側の遊星ギヤ機構とを備えている。
【0074】
フロント側の遊星ギヤ機構は、駆動力伝達軸200に回り止めされた第1の太陽歯車72と、この第1の太陽歯車72に噛合した複数の第1の遊星歯車74と、これら第1の遊星歯車74が常時噛合する内歯歯車76とを備えており、内歯歯車76は、支持フレーム278を介して左フレーム4aに固定されている。
【0075】
リア側の遊星ギヤ機構は、駆動力伝達軸200に対してフリー回転可能に支持された第2の太陽歯車80と、この第2の太陽歯車80に噛合した複数の第2の遊星歯車82とを備えており、複数の第2の遊星歯車82は、内歯歯車76に常時噛合するようになっている。
【0076】
複数の第1の遊星歯車74は、夫々、第1のキャリア84に回転自在に支持されており、この第1のキャリア84は、第2の太陽歯車80に連結されている。また、複数の第2の遊星歯車82は、夫々、第2のキャリア86に回転自在に支持されており、この第2のキャリア86は、駆動力伝達軸200に回り止めされたギヤ201に連結されている。
【0077】
ギヤ201は、連動ギヤ202を介してクラッチ連動軸204に連結されている。クラッチ連動軸204は、左フレーム4aから右フレーム4bに亘って延出しており、このクラッチ連動軸204の延出端部(右フレーム4b側の部分)には、クラッチ機構40に連結された円形プレート206が取り付けられている。具体的には、円形プレート206には、1個のボス291が突設されており、このボス291がクラッチ機構40のスライドプレート48の長穴48aに係合している。
【0078】
次に、上記構成の魚釣用リール1Aの実釣時における動作を説明する。
例えば、図8〜図10に示されるクラッチON状態で、操作パネル190上の対応する操作スイッチを押すと、クラッチ駆動用モータ23の駆動軸23aが正転し、駆動軸23aの駆動力がクラッチ制御機構13Aからギヤ201を介して連動ギヤ202に伝達され、クラッチ連動軸204を所定方向に回転させる。クラッチ連動軸204が回転すると、この回転に伴って円形プレート206とこれに突設されたボス291とが180°回転する。この時、ボス291が、スライドプレート48の長穴48bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート201の回転運動を、矢印D1方向の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。
【0079】
スライドプレート48が矢印D1方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aによって、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)に抗して持ち上げられ(一対のガイド棒46に沿って軸方向にスライドし)、ピニオンギヤ42がキャリヤ362に対して非係合状態となる。これにより、スプール8はフリー回転可能状態に維持され、この状態において、釣糸は仕掛けの自由落下によってスプール8から繰り出される。
【0080】
一方、このクラッチOFF状態からクラッチON状態へ切換える場合には、操作パネル190上の対応する操作スイッチを押せば良い。これにより、クラッチ駆動用モータ22の駆動軸23aは、前述したクラッチON状態からクラッチOFF状態への切換時と同じ方向に回転し、円形プレート206とこれに突設されたボス291とをにさらに180°回転させる。したがって、ボス291は、長穴48bに沿って摺動しながら同時に、円形プレート206の回転運動を、矢印D2方向の直線運動に変換してスライドプレート48に伝達する。このようにスライドプレート48が矢印D2方向にスライドすると、これに伴い、スライド片44は、傾斜カム48aから離脱するとともに、スライド片44を付勢している付勢手段(図示せず)によって元の位置まで軸方向にスライドする。そのため、ピニオンギヤ42がキャリヤ362に対して係合し、クラッチON状態(図4参照)に切り換えられる。
【0081】
また、クラッチON状態で魚の当たりを待ち、魚が当たった場合には、手動ハンドル60を回転操作するか、または、スプール駆動用モータ12を正転駆動させることによって釣糸をスプール8に均一に巻き取ることができる。
【0082】
クラッチON状態で手動ハンドル60を例えば右フレーム4b側から見て時計回りに回転操作すると、ピニオン42およびこれに嵌合されたキャリヤ362が反時計回りに回転駆動される。この時、遊星歯車357は反時計回りに自転すると共に公転し、内歯歯車352を反時計回りに増速した状態で回転駆動する。これにより、スプール8は、釣糸巻取り方向に回転駆動される。なお、内歯歯車352の反時計回りの回転駆動により、第1の太陽歯車350は時計回りに回転しようとするが、その回転駆動はモータ12の反対側に位置する一方向クラッチ11によって規制される。
【0083】
また、手動ハンドル60によらず、スプール駆動用モータ12を正転駆動(時計回り)させると、第1の太陽歯車350は時計回りに回転駆動される。この回転駆動により、遊星歯車351は、反時計回りに回転すると共に時計回りに公転し、第2の太陽歯車355が時計回りに回転する。この回転方向では、前述した逆転防止機構によってハンドル軸50の回転が規制されているため、ハンドル軸50にドライブギヤ52を介して連結したピニオンギヤ42の回転(時計回りの回転)も規制される。その結果、ピニオンギヤ42が係合した第2のキャリア362は、回転することなく一定位置に静止した状態に維持される。
【0084】
したがって、第2の太陽歯車355が時計回りに回転した際、第2のキャリア362に回転可能に支持された複数の遊星歯車357は、第2の太陽歯車355の回りを公転することなく一定位置で反時計回りに自転する。
【0085】
この状態において、複数の遊星歯車357の反時計回りの回転運動は、スプール8の端面に刻設された内歯歯車352に減速されて伝達され、この内歯歯車352を反時計回りに回転させる。そして、これに伴ってスプール8は、釣糸巻取方向(反時計回り)に回転する。この結果、釣糸は、図示しない釣糸案内機構を介してスプール8に均一に巻き取られる。なお、このような電動巻取時には、前記逆転防止機構が機能しているため、手動ハンドル60が連動して高速で回転することはない。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用電動リール1Aでは、スプール8内に配設された1つのモータ収容ケース250の内部空間が仕切り板251によって2つの収容空間104,105に仕切られ、一方の収容空間104内にスプール駆動用モータ12が収容されるとともに、他方の収容空間105内にクラッチ駆動用モータ23が収容されている。すなわち、スプール駆動用モータ12を収容するためにリール本体2に確保したモータ収容ケース250内に、仕切り板251を用いてクラッチ駆動用モータ23を収納するための収容領域が形成されている(クラッチ駆動用モータ23をスプール駆動用モータ12の収容部内に併設して収容可能とした)。したがって、スプール駆動用モータ12を収容するための収容部とクラッチ駆動用モータ23を収容するための収容部とをリール本体2内の異なる個所で別個のハウジングにより別々に形成する従来とは異なり、リール本体2が大型化するのを防ぐことが可能になる。
【0087】
図11は第1の実施形態の変形例を示している。この変形例において、モータ収容部100には、その内部を第1の収容空間104と第2の収容空間105とに仕切る端壁106が設けられていない。すなわち、スプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23は、モータ収容部100内の区画されていない連続する1つの空間S内に一括して収容されている。ただし、この場合、スプール駆動用モータ12に対してクラッチ駆動用モータ23を位置決めするため、連結部材400によってスプール駆動用モータ12とクラッチ駆動用モータ23とが着脱可能に連結される。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
第1の実施形態では、モータ収容部100の両側からそれぞれモータ12,23を対応する収容空間104,105内に組み込む必要があるが、この変形例の構成では、連結部材400によって互いに連結された2つのモータ12,23を1つのユニットとしてモータ収容部100に一度に組み込むことができるため、モータの組み込み性が向上する。
【0089】
図12はモータ12,23の配列に関する変形例を示している。この図はモータ収容部100を右側板10bまたは左側板10a側から見た側断面図であり、モータ12,23は、それぞれのモータ12,23の外面に沿った外形を有する共通のハウジング410内に、互いに並列の関係をもって配列されている。この場合、ハウジング410の内部空間は仕切られていない。
【0090】
各モータ12,23を互いに隣接する別々のハウジング内に収容した場合には、図中二点鎖線で示されるようにモータ収容部が本変形例の形態に比べて大きくなってしまう。本変形例は共通のハウジング410内に2つのモータ12,23を一括して収容したことにより、モータ収容部をコンパクトにでき、ひいてはリールの小型化を図ることが可能になる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の魚釣用電動リールによれば、リール本体の大型化およびクラッチ機構の複雑化を招くことなく、クラッチ機構のON/OFF切換えを電動で良好に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの一部断面を有する正面図である。
【図2】図1の魚釣用電動リールをその幅方向に沿う平面で切断した要部断面図である。
【図3】図1の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た部分断面図である。
【図4】図1の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た断面図である。
【図5】クラッチON状態におけるクラッチ機構の横断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの正断面図である。
【図7】図6の魚釣用電動リールをその幅方向に沿う平面で切断した要部断面図である。
【図8】図6の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た部分断面図である。
【図9】図6の魚釣用電動リールのクラッチ機構を右側板側から見た断面図である。
【図10】クラッチON状態におけるクラッチ機構の横断面図である。
【図11】第1の実施形態の変形例に係る要部断面図である。
【図12】モータの配列に関する変形例を示す側断面図である。
【符号の説明】
1,1A…魚釣用電動リール
2…リール本体
8…スプール
10a,10b…側板
12…スプール駆動用モータ
23…クラッチ駆動用モータ
40…クラッチ機構
100…モータ収容部(収容部)
106…端壁(仕切り)
250…モータ収容ケース(収容部)
251…仕切り板(仕切り)
Claims (3)
- リール本体の両側板間に回転自在に支持されたスプールと、このスプールを回転駆動させるスプール駆動用モータと、このスプール駆動用モータを収容する収容部と、スプールをフリー回転状態と釣糸巻取り状態の両状態に切換え可能で且つクラッチ駆動用モータにて駆動されるクラッチ機構とを備えた魚釣用電動リールにおいて、
前記クラッチ駆動用モータを前記スプール駆動用モータの収容部内に併設して収容可能としたことを特徴とする魚釣用電動リール。 - 前記スプール駆動用モータと前記クラッチ駆動用モータは、前記収容部内において互いに直列的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
- 前記収容部内には、前記スプール駆動用モータと前記クラッチ駆動用モータとの間に仕切りが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
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