JP4130880B2 - 壁装材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装材として使用される壁紙等の壁装材に関するものであり、詳しくは、防火性能(難燃性)に優れた壁装材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅の壁面や天井に使用される壁装材としての壁紙は、火災に対する安全性の面から、難燃性が要求され、建築基準法で一定の難燃性が義務づけられている場合が多い。このため従来の壁紙は、難燃性能に応じて不燃材料、準不燃材料、難燃材料に分類され、それぞれの難燃性能に応じた構成材料の選定や配合処方が取られてきた。また壁紙は、従来防火壁装材料として通則認定の中で紙壁紙、織物壁紙、ビニル壁紙、化学繊維壁紙、無機質壁紙、特定壁紙の6種類に分類され、さらに下地基材に張り合わされた状態で防火性能(難燃性能)が評価され、下地基材との組み合わせで検定級別に防火性能が区分されてきた。例えば、ビニル壁紙の場合は、検定級別が2級、4級、5級に区分され、下地基材に直張りした場合の2級の防火性能は、下地基材が不燃材料、不燃石膏ボード、準不燃材料のいずれの組み合わせも準不燃の性能が必要となり、また無機質壁紙の検定級別は1級、2級に区分され、下地基材に直張りした場合の1級の防火性能は、下地基材が不燃材料(不燃石膏ボードを含む全ての不燃材料)の時不燃、金属または準不燃材料の時準不燃の性能が必要となる。尚、通則認定とは、国土交通省より委託を受けた日本壁装協会(旧壁装材料協会)が、建築基準法ならびに関連法規により定めた防火材料の業界に関わる認定基準であり、この中に防火壁装材料としての基本原則が技術基準として規定されていた。
【0003】
このような背景から、壁紙を構成する素材の中で壁紙用裏打紙が重要な役割を果たしてきた。壁紙用裏打紙は、壁紙の施工性を高めるだけでなく、難燃性能も要求され、ビニル壁紙には難燃紙が、無機質壁紙には無機質紙が多く用いられてきた。特に不燃の防火性能を満たした無機質壁紙は、不燃紙と呼ばれる無機質紙をベースに、化粧層として塩化ビニル樹脂等からなる樹脂層を一定の範囲内で形成したものが多く製品化されている。また難燃紙あるいは不燃紙の区分は、通則認定における技術基準で定められており、それらの難燃性は、JIS A 1322に規定された試験方法により評価されたものであることが義務づけられていた。
【0004】
さらに壁装材の防火性能は、不燃材料の場合、昭和45年建設省告示第1828号第3に規定された方法により、準不燃材料および難燃材料については、昭和51年建設省告示第1231号第2に規定された方法によって表面試験を行い、所要の性能を満たしていることが必要であった。
【0005】
しかしながら、平成10年6月に建築基準法が改正され、従来の通則認定制度から個別認定制度へと切り替わり、通則認定で取り決められていた検定級別や、それに付随した規制がなくなり、個々の責任において自由な製品設計が可能となった。さらには防火性能を評価する試験方法が、前記建設省告示の表面試験からISO 5660 part1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験に切り替わり、これにより防火性能を評価する判定条件も、従来の表面試験では主に温度、時間、面積と発煙係数であったものが、改正後の発熱性試験では総発熱量と最高発熱速度に変更になった。
【0006】
通則認定制度の廃止は、それに付随した各種の制約条件が取り除かれ新たな技術開発をもたらすことになるが、特に不燃材料としての壁装材の開発には、防火性能のみならずコストダウン、意匠性および施工性の改善が必要となる。
【0007】
従来の壁装材の中で不燃材料として製品化されている壁紙は、前記通則認定による分類では紙壁紙、織物壁紙、無機質壁紙、特定壁紙の4種類であった。特に無機質壁紙は、下地基材が不燃石膏ボードの場合も不燃材料として認定されているため有利な存在である。不燃石膏ボードは、他の不燃材料としての下地基材(以下不燃基材)と違って、その施工性の良さから使用される場合が多い。従って、不燃材料としての壁装材を開発する場合は、従来の無機質壁紙と同様に不燃石膏ボードも含めた全ての不燃基材に適応することが求められている。
【0008】
前述の如く従来の無機質壁紙は、不燃紙と呼ばれる無機質紙をベースに、化粧層として塩化ビニル樹脂等からなる樹脂層を一定の範囲内で形成したものが代表的である。前記不燃紙は、セルロースパルプのごとき有機繊維と難燃性の無機繊維と無機粉体とを湿式抄紙して、無機繊維と無機粉体とを合計した無機物質を80質量%以上含有させたものが一般に使用されている。これは前記通則認定の技術基準に規定された「有機物質の含有量が質量比で20%以下であること」によるものである。さらに前記無機質壁紙は、前記不燃紙の質量が壁装材質量の51%以上であり、前記化粧層の有機物質の質量が80g/m以下であることも同時に規定されていた。
【0009】
このため前記無機質壁紙に用いられる不燃紙は、含有する無機質分が多いことからその製造に技術を要すると共に生産性が悪く、壁紙用基材(壁紙用裏打紙)としての強度、壁紙としての施工性を確保するためにビニル壁紙等に用いられる難燃紙と比較して質量をアップせざるを得なくコスト高になっていた。また、前記無機質壁紙は、意匠性、特にボリューム感の必要性から可能な限り不燃紙の質量と化粧層の樹脂量を増加して製品化をはかってきたためコストがアップし、さらには壁紙としての風合いが硬くなり施工性が低下するという問題を含んでいる。
【0010】
一方、含有する無機成分が少ない原紙は、壁紙裏打紙とするためには、難燃剤を含浸・塗布したり、無機成分を含有したコート剤を塗布する等の処理が必要とされ、製造工程が煩雑になるばかりでなく、コストアップになっていた(例えば、特開平1−266298号公報、同2−221496号公報、同2−243337号公報、同3−161598号公報、同3−199500号公報、同4−50400号公報、同4−126239号公報、同4−281099号公報、同6−73700号公報、同6−287892号公報、同10−195792号公報、同11−36197号公報、等)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、建築基準法の改正により自由な製品設計が可能となり、同時に防火性能を評価する試験方法が改正されたことに伴い、従来技術における問題点に着目してなされたものである。その課題とするところは、従来の無機質壁紙にみられるように、ボリューム感を出すために高コストとなり、しかも施工性が良くないという問題点を解消し、しかも不燃石膏ボードを含めた全ての不燃基材に対して不燃の性能を有する壁装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、建築基準法改正に伴い新たに制定された防火性能を評価する試験方法、すなわちISO 5660 part1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験を繰り返し行った結果、建築基準法改正前に指定されていた表面試験では効果のあった有機系難燃剤が、改正後の発熱性試験では殆ど効果が無く、壁装材の防火性能が壁装材の全質量中に含有される有機物質の質量によってほぼ決定され、さらに壁紙用裏打紙の全質量中に含有される有機物質の質量を一定の範囲内に抑さえ、化粧層の樹脂量を増加させることで、上記目的を達成し得る壁装材が得られることを見いだし、ここに本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明による壁装材は、内添された無機物質の含有率が30〜50質量%であり、坪量が65〜90g/mである壁紙用裏打紙に樹脂層を積層してなる壁装材であって、前記壁装材中の有機物質の質量が170g/m以下であることを特徴とするものである。
【0013】
【発明実施の形態】
図1は、本発明による壁装材の実施態様の断面図を模式的に示すものであり、内添された無機物質を30〜50質量%含有する壁紙用裏打紙1の表面に樹脂層2が積層され、樹脂層2の表面側に凹凸模様3が形成されている。尚、図2は、樹脂層2の上にさらに合成樹脂フィルム層4が積層された本発明による壁装材の断面図を示すものである。
【0014】
本発明における壁紙用裏打紙1(以下裏打紙1という)に用いられるパルプには特に制限はないが、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、その他の木材パルプなどが使用でき、これら1種または2種以上のパルプを適宜選択混合して用いても良い。また、合成繊維または無機繊維の1種または2種以上をパルプ中に混合することにより、原紙1の寸法安定性を向上させることができる。
【0015】
本発明の裏打紙1に用いられる無機物質は、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、カオリンクレー、焼成カオリン、焼成クレー、ケイ酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、ホワイトカーボン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機粉体から、原紙の隠蔽性、強度、厚み、コスト等を考慮して適宜選定され、1種または2種以上をパルプ中に混合して用いられる。また前記無機粉体の中で結晶水または構造水を含んだものは、カオリン、クレー、カオリンクレー、ケイ酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムであり、これらの無機粉体は、加熱により結晶水または構造水を放出し、吸熱分解するため自己消化性があるので、他の無機粉体に比べて若干防火性能が向上する。従って、無機粉体を選定する場合は、一般的に製紙用に用いられ、かつ結晶水を保有した水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの混合比率を高めるのが好ましい。
【0016】
裏打紙1中に内添される無機物質の含有率は、30〜50質量%の範囲である必要があり、坪量は65〜90g/mの範囲である必要がある。無機物質の含有率が30質量%未満、もしくは裏打紙1の坪量が90g/mを超えると裏打紙1中の有機物質の質量が増加し、壁装材の防火性能を確保する為に化粧層としての樹脂層の質量を減らさざるを得ないことになり壁装材のボリューム感が損なわれ、さらに裏打紙1の質量が90g/mを超えるとコストがアップし好ましくない。また裏打紙1の無機物質の含有率が50質量%を超えたり、もしくは坪量が65g/m未満になると裏打紙1の強度低下が起こり、さらに無機物質の含有率が50質量%を超えると、裏打紙1の地合いが悪くなるだけでなく、無機物質の定着歩留まり低下を防止するため多量の薬剤を使いかえってコストアップになり好ましくない。
【0017】
本発明で用いる裏打紙1は、無機物質の含有率と坪量とを上述した一定の範囲内に設定し、それ自体で防火性能を具えている。そのため、難燃剤処理または無機物質コート処理を施さずに使用することができる。
【0018】
裏打紙1を製造するに際しては、前記パルプと無機物質とを混合し、紙力増強剤、歩留向上剤、サイズ剤、バインダー等のウエットエンド添加剤を適宜選択し、通常の抄造方法によって抄紙する。ウエットエンド添加剤としては、カチオン性またはアニオン性高分子化合物からなる紙力増強剤、カチオン性またはアニオン性高分子化合物からなる歩留向上剤、ベントナイトクレーのような無機化合物からなる歩留向上助剤、ロジン系、スチレンアクリル系、スチレンアミド系、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、繊維状熱溶融型ビニロン、ラテックスエマルジョンの様なバインダーおよびその他の抄紙薬品が適宜選択して用いられる。前記紙力増強剤としては、カチオン化でんぷん、カチオン性またはアニオン性ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、カチオン変性グアーガム、カチオン変性ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また前記カチオン性またはアニオン性高分子化合物からなる歩留向上剤としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、酸化でんぷん等を挙げることができる。
【0019】
本発明の壁装材は、上記のようにして得られた裏打紙1の表面に樹脂層2を積層してなるが、その際使用される樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂またはオレフィン系樹脂等が好適に使用される。塩化ビニル樹脂には、可塑剤、安定剤、発泡剤、減粘剤その他の有機系添加剤および炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪砂、タルク、シリカ類、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、二酸化チタン等の無機粉体を混合し、カレンダー成形法、コーティング法、スクリーン印刷法等により裏打紙1の表面にシート状もしくは絵柄模様状に樹脂組成物として積層する。また、オレフィン系樹脂としては、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体及びこれらと他のオレフィン系樹脂の混合物が好ましく、これらの樹脂には、中和剤、分散剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、その他の有機系添加剤及び炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪砂、タルク、シリカ類、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、二酸化チタン等の無機粉体を用途に応じて適宜選択混合し、カレンダー成形法、押出成形法、コーティング法、スクリーン印刷法等により裏打紙1の表面にシート状もしくは絵柄模様状に樹脂組成物として積層する。尚、前記樹脂材料に混合する無機粉体の種類及び添加量は、作業性、コスト、発泡性、壁装材の物性、壁装材のボリューム感等を考慮して決定されるが、裏打紙1に混合された無機粉体と同様防火性能が若干向上するという意味で水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の結晶水を保有した無機粉体の混合比率を高めるのが好ましい。
【0020】
本発明の壁装材は、目的とする防火性能を確保するため壁装材全質量中の有機物質の質量(以下有機質量)を170g/m以下に設定する必要がある。有機質量が170g/mを超えると、建築基準法で定められた発熱性試験で、総発熱量が基準値を超えてしまう。このため壁装材を構成する樹脂層2の有機質量は、壁装材の有機質量の上限値170g/mから裏打紙1の有機質量の下限値32.5g/mを減じた質量137.5g/m以下に設定することが必要である。尚、樹脂層2上には、後述の如く、必要に応じて絵柄模様や合成樹脂フィルム層4を積層させるため、この場合の樹脂層2の有機質量は、絵柄模様又は合成樹脂フィルム層4の有機質量を減じた質量以下に設定することが必要である。
【0021】
樹脂層2上に形成される絵柄模様は、適宜、印刷インキ(非発泡性インキ)及び/または水性エマルジョン樹脂を主成分とした発泡性インキ、塩化ビニルペースト樹脂を主成分とした発泡性インキ等を用いて、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等にて形成することができる。
【0022】
また、合成樹脂フィルム層4は、本発明の壁装材に防汚性能を付与させることを目的としたものである。合成樹脂フィルム層4に用いられる合成樹脂フィルムとしては、アクリルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムなどが挙げられ、熱接着もしくは接着剤を介して樹脂層2上に積層される。尚、樹脂層2上に絵柄模様を形成させる場合は、非発泡性インキにより絵柄模様を形成させてから合成樹脂フィルム層4を積層することが好ましい。
【0023】
本発明における壁装材の凹凸模様3は、裏打紙1上、または裏打紙1上に積層された樹脂層2上に、前述の如き発泡性インキを絵柄模様状に塗布乾燥した後、熱風または赤外線照射等で加熱発泡させる方法、裏打紙1上に形成された樹脂層2上に、発泡抑制インキを用いて絵柄模様状に塗布乾燥した後、熱風または赤外線照射等で絵柄模様以外の樹脂層を加熱発泡させるケミカルエンボス法、裏打紙1上に積層された樹脂層2を熱風または赤外線照射等で加熱溶融または加熱発泡させた後、エンボスロールを樹脂層2の表面側に圧接させるメカニカルエンボス法等により形成される。また合成樹脂フィルム層4を積層する場合は、樹脂層2上に合成樹脂フィルム4を積層した後、熱風または赤外線照射等で加熱溶融あるいは加熱発泡させ、エンボスロールを用いて凹凸模様3を形成させても良いし、樹脂層2を熱風または赤外線照射等で加熱溶融あるいは加熱発泡させた後、エンボスロールを用いて合成樹脂フィルム4の積層と凹凸模様3の形成を同時に行っても良い。
【0024】
尚、本発明の壁装材は、表面が平滑な壁装材として用いられる場合もある。例えば、クリーンルーム等には防塵壁紙と呼ばれ、帯電防止性能を備えた表面が平滑な壁装材が使用される。クリーンルームは埃を嫌うため埃の溜まりやすい凹凸模様は好ましくなく、平滑であることが要求される。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に記述するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0026】
[実施例1]
NBKPを離解後、常法により300mlcsfまで叩解し、無機粉体として平均粒子径1μmに粉砕調整した焼成カオリン(エンゲルハード社製、商品名:ANSILEX)を裏打紙中含有率40質量%となるように添加し、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名:アラフィックス100)を0.5質量%、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(伯東化学(株)製、商品名:ポリマスターR−623)を0.005質量%、さらに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(荒川化学工業(株)製、商品名:CS−280)を0.25質量%添加して紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機で抄紙し、坪量70g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0027】
[実施例2]
NBKPを離解後、常法により300mlcsfまで叩解し、無機粉体として水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名:ハイジライトH−42、平均粒子径:1μm)を裏打紙中含有率40質量%となるように添加し、実施例1と同様にパルプ抄紙薬品、及び歩留向上剤を加えて紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機で抄紙し、坪量70g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0028】
[実施例3]
実施例1で得られた壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機質量が123g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み130μ、全有機質量165g/mの壁装材原料シートを得た。
【0029】
次いでこの壁装材原料シート上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様を形成した後、赤外線照射装置を備えた発泡エンボス機にて発泡及びエンボスを同時に行い、図1に示す構成の厚さ0.70mmの壁装材を得た。
【0030】
【表1】
Figure 0004130880
【0031】
[実施例4]
実施例2で得られた壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機質量が123g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み130μ、全有機質量165g/mの壁装材原料シートを得た。
【0032】
次いでこの壁装材原料シート上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様を形成した後、実施例3と同様にして発泡及びエンボスを同時に行い、図1に示す構成の厚さ0.70mmの壁装材を得た。
【0033】
[実施例5]
実施例1で得られた壁紙用裏打紙の表面に、表2の樹脂組成2で示される樹脂組成物を、有機質量が123g/mになるようカレンダー成形法によりシート化して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み195μ、全有機質量165g/mの壁装材原料シートを得た。
【0034】
次いでこの壁装材原料シート上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様を形成した後、実施例3と同様にして発泡及びエンボスを同時に行い、図1に示す構成の厚さ0.80mmの壁装材を得た。
【0035】
[実施例6]
実施例1で得られた壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機質量が108g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み112μ、全有機質量150g/mの壁装材原料シートを得た。
【0036】
次いでこの壁装材原料シート上に、水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様を形成し、さらに合成樹脂フィルムとして厚さ12μ、質量15g/mの接着剤付きエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム((株)クラレ製、商品名:エバール)を熱接着により積層させ、全有機質量165g/mの合成樹脂フィルム付き壁装材原料シートを得た。この壁装材原料シートを実施例1と同様にして発泡及びエンボスを同時に行い、図2に示す構成の厚さ0.55mmの壁装材を得た。
【0037】
【表2】
Figure 0004130880
【0038】
[比較例1]
壁紙用裏打紙の坪量を変えた以外は実施例1と同様にして、坪量50g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0039】
[比較例2]
NBKPを離解後、常法により300mlcsfまで叩解し、無機粉体として平均粒子径1μmに粉砕調整した焼成カオリン(商品名:ANSILEX)を裏打紙中含有率60質量%となるように添加し、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(商品名:アラフィックス100)を1.0質量%、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(商品名:ポリマスターR−623)を0.01質量%、さらに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:CS−280)を0.5質量%添加して紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機で抄紙し、坪量70g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0040】
[比較例3]
NBKPを離解後、常法により300mlcsfまで叩解し、無機粉体として平均粒子径1μmに粉砕調整した焼成カオリン(商品名:ANSILEX)を裏打紙中含有率10質量%となるように添加し、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(商品名:アラフィックス100)を0.5質量%、歩留向上剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(商品名:ポリマスターR−623)を0.005質量%、さらに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:CS−280)を0.25質量%添加して紙料を調製した。この紙料を長網抄紙機で抄紙し、坪量70g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0041】
この壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機質量が102g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み107μ、全有機質量165g/mの壁装材原料シートを得た。
【0042】
この壁装材原料シートを実施例3と同様にして絵柄模様を形成し、さらに発泡及びエンボスを同時に行って図1に示す構成の厚さ0.48mmの壁装材を得た。
【0043】
[比較例4]
壁紙用裏打紙の坪量を変えた以外は実施例1と同様にして、坪量100g/mの壁紙用裏打紙を得た。
【0044】
この壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機質量が105g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み110μ、全有機質量165g/mの壁装材原料シートを得た。
【0045】
この壁装材原料シートを実施例3と同様にして絵柄模様を形成し、さらに発泡及びエンボスを同時に行って図1に示す構成の厚さ0.56mmの壁装材を得た。
【0046】
[比較例5]
実施例1で得られた壁紙用裏打紙の表面に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機物質の質量が138g/mになるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、樹脂層の厚み146μ、全有機質量180g/mの壁装材原料シートを得た。
【0047】
この壁装材原料シートを実施例3と同様にして絵柄模様を形成し、さらに発泡及びエンボスを同時に行って図1に示す構成の厚さ0.75mmの壁装材を得た。
【0048】
[比較例6]
建築基準法改正前の通則認定で規定されていた有機質分20質量%、坪量150g/mの不燃紙(無機質紙:水酸化アルミニウム80質量%含有)上に、表1の樹脂組成1で示される樹脂組成物を、有機物質の質量が80g/m以下で、かつ樹脂組成物の質量が壁装材質量の49%以下になるようコーティング法により塗布して樹脂層を積層し、壁装材原料シートを得た。この時の樹脂層の厚みは85μで、全有機質量は110g/mであった。
【0049】
この壁装材原料シートを実施例3と同様にして絵柄模様を形成し、さらに発泡及びエンボスを同時に行って市販の無機質壁紙と同構成の厚さ0.40mmの壁装材を得た。
【0050】
前記実施例1〜6および比較例1〜6で得られた壁紙用裏打紙又は壁装材について、裏打紙の強度、裏打紙の隠蔽性、裏打紙のサイズ度、裏打紙の地合い、裏打紙のコスト、壁装材のボリューム感、壁装材の施工性、壁装材の防火性、壁装材の防汚性を以下の試験方法及び評価基準に従って評価した。
【0051】
(試験方法及び評価基準)
1.裏打紙の強度
JIS P−8113、P−8116により引張り強度、及び引き裂き強度を測定し、下記の評価基準に従って評価した。
○:壁装材の裏打紙として十分使用できる。
△:壁装材の裏打紙として使用するには、やや不十分である。
×:壁装材の裏打紙としては使用できない。
【0052】
2.裏打紙の隠蔽性
JIS P-8113により不透明度を測定し、下記の評価基準に従って評価した。
○:壁装材の裏打ち紙として十分使用できる。
△:壁装材の裏打ち紙として使用するには、やや不十分である。
×:壁装材の裏打ち紙としては使用できない。
【0053】
3.裏打紙のサイズ度
JIS P-8122によりサイズ度を測定し、下記の評価基準に従って評価した。
○:壁装材の裏打ち紙として十分使用できる。
△:壁装材の裏打ち紙として使用するには、やや不十分である。
×:壁装材の裏打ち紙としては使用できない。
【0054】
4.裏打紙の地合い
裏打紙の表面に塩化ビニルペースト塗料を塗布、乾燥した壁装材原料シート上に、グラビア印刷機にて水性インキを塗布し、印刷適性を目視にて評価した。
○:印刷適性は良い。
△:印刷適性がやや悪い。
×:印刷適性が悪い。
【0055】
5.裏打紙のコスト
市販のビニル壁紙用難撚紙(坪量:70g/m)とコストを比較した。
◎:難燃紙に比べてやや安い。
○:難燃紙に比べてほぼ同等のコストである。
×:難燃紙に比べてやや高い。
【0056】
6.壁装材のボリューム感
壁装材の厚みをシックネスゲージを用いて測定し、下記の評価基準に従って壁装材のボリューム感を評価した。
○:壁装材の厚みが0.65mm以上であった。
△:壁装材の厚みが0.50mm以上0.65mm未満であった。
×:壁装材の厚みが0.50mm未満であった。
【0057】
7.壁装材の防火性能
建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第2条第九号及び同法施行令第108条の2(不燃材料)の規定に適合するかどうかを確認する為、指定された試験(ISO 5660 part1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験)を行い、下記の判定基準に基づいて評価した。尚、試験には不燃基材として他の不燃基材に比較して最も性能の出にくい厚さ12.5mmの不燃石膏ボード(吉野石膏(株)製)を使用した。
〈判定基準〉
▲1▼加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m以下であること。
▲2▼加熱開始後20分間、最高発熱速度が、10秒以上継続して200kw/mを超えないこと。
〈評価基準〉
◎:総発熱量及び最高発熱速度とも適合していた(合格)。
○:総発熱量及び最高発熱速度とも適合していたが、総発熱量又は最高発熱速度の何れかがやや高めであった(合格)。
△:最高発熱速度は適合していたが、総発熱量が不適合であった(不合格)。
×:総発熱量及び最高発熱速度のいずれも不適合であった(不合格)。
【0058】
8.壁装材の施工性
社内試験により施工時の不陸隠蔽性とカール状態を下記の評価基準に従って評価した。
▲1▼不陸隠蔽性試験:厚さ0.1mm、直径3cmの円形に切り取った粘着テープを下地に張り付け不陸隠蔽性試験用基材とする。この基材上に壁装材を張り付け24時間放置後、粘着テープの跡を目視にて観察し評価する。
▲2▼カール試験:通常より50%濃度が低い施工糊を用い、通常より20%少ない量で壁装材に塗布して30分間放置する(オープンタイム30分)。その後下地に壁装材を張り付け、カール状態を24時間目視にて観察し評価する。
〈評価基準〉
○:不陸隠蔽性とカール状態とも良好であった。
△:不陸隠蔽性又はカール状態の何れかが悪かった。
×:不陸隠蔽性とカール状態とも悪かった。
【0059】
9.壁装材の防汚性
日本ビニル工業会・ビニル建装部会制定の「汚れ防止商品 性能表示規定」に基づいて試験を行い、下記の評価基準に従って評価した。
◎:全ての汚染物に対して汚れ防止性能が基準を満たしていた。
○:汚染物によっては汚れ防止性能が基準を満たしていない物があった(一般的ビニル壁紙と同等の性能)。
×:全ての汚染物に対して汚れ防止性能が基準を満たしていなかった。
【0060】
【表3】
Figure 0004130880
【0061】
【表4】
Figure 0004130880
【0062】
裏打紙についてみると、表3に示す如く、本発明の実施例3〜6で使用する壁紙用裏打紙である実施例1及び実施例2は強度、隠蔽性、サイズ度、地合いについて優れており満足し得るものであった。これに対して、実施例1の条件で坪量のみを低くした裏打紙である比較例1は、強度、隠蔽性、地合いが劣り、無機物質の含有率を増加させた裏打紙である比較例2は、強度、サイズ度、地合いが劣った。また、比較例4で使用した坪量を増加させた裏打紙はコスト高になる結果であった。
【0063】
壁装材についてみると、表3に示す如く、実施例3から実施例5の壁装材は、ボリューム感、防火性能、施工性につき全て優れており満足し得るものであった。防汚性については、一般的ビニル壁紙と同等であった。合成樹脂フィルムを積層させた実施例6も防火性能、施工性は優れている。ボリューム感はやや低下するが、防汚性が大きく改善される。
一方、裏打紙中の有機質量の多い比較例3及び比較例4は、積層させる樹脂層が薄くなるため壁装材のボリューム感が劣り、壁装材の全有機質量を増加させた比較例5は、防火性能が劣り不合格という結果であった。尚、参考までに市販の無機質壁紙を評価した比較例6は、不燃紙のコストが高く、壁装材とした場合、ボリューム感と施工性が劣っていた。
【0064】
表4は、壁装材の防火性能を比較する為に発熱性試験の試験項目である総発熱量と最高発熱速度の実測値(平均値)を抜粋して示したものである。これを見ると、裏打紙中の無機物質を実施例3の焼成カオリンから結晶水を持つ水酸化アルミニウムに変えた実施例4の方が総発熱量及び最高発熱速度とも僅かに低くなっていた。さらに、水酸化アルミニウムを増加させた不燃紙を用いた比較例6も同様に低くなっており、特に合格値に対する効果寄与率では、総発熱量に効果が見られた。また、原紙上に積層する樹脂層の樹脂材料を実施例3の塩化ビニル樹脂からエチレン・α−オレフィン系共重合体(オレフィン系樹脂)に変えた実施例5の数値を比較すると、総発熱量には殆ど差はなく、最高発熱速度に大きな差が見られるものの不合格になるにはまだ十分余裕があることが分かる。さらに、有機物質を増加させた比較例5は、総発熱量で不合格になっているものの、最高発熱速度は樹脂材料を変えた実施例5よりも低くなっている。これは建築基準法で定められた発熱性試験において、総発熱量は有機物質の種類ではなく総質量の影響を受け、最高発熱速度は有機物質の種類に影響されることを示している。すなはち本実施例及び比較例により、壁装材の防火性能が、主に有機物質の総質量で制限されることが示された。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の壁装材は、壁紙用裏打紙の坪量と無機物質の含有率を一定の範囲内に設定し、さらに壁装材中の全有機質量の上限を設定することで、従来の無機質壁紙の持つ欠点、すなわち高コストでボリューム感が無く、施工性が悪いという欠点を解消することができ、かつ不燃石膏ボードを含めた全ての不燃基材において不燃の防火性能をもたらすことができる。
【0066】
さらに、必要に応じて合成樹脂フィルムを積層することで壁装材の防汚性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の壁装材の実施例を示す模式的断面図である。
【図2】合成樹脂フィルムが積層された本発明の壁装材の実施例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1:壁紙用裏打紙
2:樹脂層
3:凹凸模様
4:合成樹脂フィルム

Claims (6)

  1. 内添された無機物質の含有率が30〜50質量%であり、坪量が65〜90g/mである壁紙用裏打紙に樹脂層を積層してなる壁装材であって、前記壁装材中の有機物質の質量が170g/m以下であることを特徴とする表面が平滑な、あるいは凹凸模様を有する壁装材。
  2. 前記無機物質が、結晶水または構造水を含む無機物質であることを特徴とする請求項1に記載の壁装材。
  3. 前記壁紙用裏打紙に積層された樹脂層が、塩化ビニル樹脂またはオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の壁装材。
  4. 前記樹脂層の表面に、印刷加工により絵柄模様が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁装材。
  5. 前記樹脂層の表面に、合成樹脂フィルム層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の壁装材。
  6. 前記壁紙用裏打紙は、難燃剤処理又は無機物質コート処理がなされていないものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁装材。
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