JP4611094B2 - アルデヒド類吸着壁紙 - Google Patents
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Description
このような樹脂壁紙においてVOCであるアルデヒド類を吸着する方法として、従来、
(1)施工面(壁部に施工するボード、接着材、断熱材等)から室内へのアルデヒド類の放散を抑えるために、裏打紙の裏面にアルデヒド吸着層(アルデヒド吸着剤を含浸または塗布させた層)を設け、裏打紙の表面側に上記の装飾層を設ける(特開平10−296918号公報、特開平10−329274号公報)、
(2)空気中のアルデヒドを効率的に吸着するために、アルデヒド吸着層を、空気と直接接触する壁紙の最表面(最上層)に設ける(特開平11−48413号公報)、
(3)アルデヒド吸着剤を上記の装飾層中に混在させる(特開平10−100334号公報)、等が提案されている。
まず、アルデヒド類吸着剤を配合したアルデヒド類吸着層を壁紙の最上層ではなく、裏打紙の表面上に設け、該アルデヒド類吸着層上に設けた装飾層から、この吸着層を部分的に露出させることで、空気中のアルデヒド類を捕捉・吸着させるという新たな手法に着目した。
アルデヒド類吸着層に、多孔質の無機粒子を特定の割合で配合することで、アルデヒド類吸着剤がこの無機粒子と結合し、好適なアルデヒド類吸着機能を得ることができ、特に平均粒子径が0.8〜20μmの無機粒子を配合することで、該吸着剤が裏打紙に浸透することを効果的に防止できるため、該吸着剤の少ない使用量に拘わらず高いアルデヒド類吸着能を得られる。
さらに、アスペクト比が8以上の無機粒子を用いることで、上記の露出部を設けるにも拘わらず、オープンタイム(壁紙の裏面に塗布した糊が乾燥せず、施工が可能な時間)をより長く確保できることをみいだし、本発明を完成するに至った。
このとき前記無機粒子には、平均粒子径が0.8〜20μmのものが好ましく、また、裏打紙の裏面に熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
これらのパルプには、寸法安定性を向上させるために、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維や、ガラス繊維等の無機繊維を混合することもできる。
アルデヒド吸着性能をコントロールする条件としては、アルデヒド類吸着層の露出面積、アルデヒド類吸着剤の種類及びその配合量、アルデヒド類吸着層の塗工量、などがあるが、このうちアルデヒド類吸着層の露出面積が10%に満たない場合は、空気中のアルデヒド類を十分に吸着することが困難となり、70%を超えると、仕上り後の装飾層の触感や高級感に欠けるうえ、アルデヒド類の吸着量に伴う吸着剤の黄変が目立つため、本発明では上記の露出面積とするものであり、より好ましい露出面積としては20〜50%であり、この範囲であれば、通常の壁紙とほぼ同等の装飾層を形成することができる。また、アルデヒド類吸着剤の種類及びその配合量、アルデヒド類吸着層の塗工量に関しては、アルデヒド類吸着層の露出面積に応じて、充分にアルデヒド吸着性能を発揮できるように適宜決定すれば良い。
このアルデヒド類吸着層は、アルデヒド類吸着剤を含有してさえいればアルデヒド吸着性能を発揮できるものと考えられるが、その吸着性能は、裏打紙表面上に存在するアルデヒド類吸着剤が多いほど高くなる。
この多孔質の無機粒子が、アルデヒド類吸着剤と物理的に結合してアルデヒド類吸着剤が裏打紙内部へ浸透するのを防止し、裏打紙表面上にアルデヒド類吸着剤を保持することができる。この結果、該吸着剤を少量使用するにも拘わらず、高いアルデヒド類吸着能を確保することができる。
本発明におけるアルデヒド類吸着剤と多孔質無機粒子との併用によるアルデヒド類吸着層は、極めて高いアルデヒド類吸着能を有することができる。
無機粒子の含有量が、10重量%に満たないと、アルデヒド類吸着剤が多孔質の無機粒子と十分に結合できず、裏打紙に浸透する分が増えてしまい、80重量%を超えるとこの効果が飽和するのみならず、塗工液中におけるアルデヒド類吸着剤や他の添加剤との均一な混合作業が難しくなると共に、アルデヒド類吸着層が欠落しやすくなり、その上に設けられる装飾層の接着性にも問題となるために好ましくない。
このような平均粒子径を持つ無機粒子であれば、無機粒子添加によるアルデヒド類吸着剤の裏打紙への浸透がより一層防止され、アルデヒド類吸着剤の少量使用にも拘わらず、高いアルデヒド類吸着能を得るという本発明の目的を効果的に達成することができる。
多孔質の無機粒子の平均粒子径が0.8μmに満たないと、アルデヒド類吸着剤と結合しても裏打紙の繊維間を通り抜け、裏打紙の表面上に残り難い虞がある。20μmを超えると、アルデヒド類吸着層の表面が荒れてしまい、特にアルデヒド類吸着層の厚みを20μm以下程度に薄くした場合にアルデヒド類吸着層の表面の平滑性が著しく低くなるため、装飾層の形成に不都合が生じる虞がある。
このアミン基をもつ有機化合物としては、例えば、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、5−ヒドロキシプロピレン尿素、5−メトキシプロピレン尿素、5−メチルプロピレン尿素、パラバン酸(グリオキザールモノウレイン)、4,5−ジメトキシプロピレン尿素、ヒドラジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ジシアンジアミド、2−ヒドラゾベンゾチアゾール、もしくはその誘導体、等のアミン類、アミド類、イミド類、などが挙げられ、中でも、尿素系及びヒドラジン系の有機化合物が、アルデヒド類吸着性能上、好ましい。
上記のバインダー成分は、水または有機溶剤等の溶媒に分散させた、例えばエマルジョンタイプ等の状態のものを好ましく使用でき、この樹脂固形分は、塗工条件等により適宜選択すればよい。
アルデヒド類吸着剤が少なすぎると、空気中のアルデヒド類を吸着する効果が充分に得られず、多すぎても、アルデヒド類の吸着効果が飽和するばかりでなく、無機粒子と結合しないアルデヒド類吸着剤が多くなり、裏打紙内部へ浸透する事態が発生することとなるため、効率的ではない。
この塗料化する際の方法は、何ら制限されるものではないが、本発明では、アルデヒド類吸着性能を良好に発現させるために該吸着剤と物理的に結合する無機粒子を、アルデヒド類吸着層中に均一に分散させることが重要である。
このためには、例えば、予めアルデヒド類吸着剤と無機粒子のみをブレンダー、ヘンシェルミキサー、ディスパー、ディゾルバー、等の装置で混合して、両者を十分に結合させておき、これを他の添加剤とともに所定量のバインダー成分を含むエマルジョン等に加え、上記と同様の装置で混合する方法であってもよいし、あるいは、所定量のバインダー成分を含むエマルジョン等に、所定量の無機粒子、アルデヒド類吸着剤、他の添加剤を同時に加え、上記のような装置で一気に混合する方法であってもよい。
塗工量が3g/m2未満では、塗工ムラが生じるばかりでなく、充分な吸着性能が得られず、15g/m2より多いと、塗工層の厚みが大きくなり、壁紙として巻取り等を行う際に不都合が生じる。
裏打紙への塗工は、裏打紙の抄紙装置に組み込まれているオンマシーンコーティング方式や、裏打紙の抄紙工程後に、各種コーターによるオフマシーンコーティング方式に何れであってもよい。
この装飾層は、通常の樹脂製壁紙における装飾層と同様のものであって、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などからなる装飾層であり、これら合成樹脂に、可塑剤、安定剤、着色剤、充填材、難燃剤、防カビ剤、発泡剤、熱膨張性マイクロカプセル等を必要に応じて適宜の量で添加した樹脂材料を原料として形成される。
また、これらの層は、非発泡の層でも、発泡した層であってもよいし、非発泡層と発泡層との組み合わせであってもよく、ケミカルエンボスやメカニカルエンボスによる凹凸意匠が施されていてもよい。
厚みが0.1mm未満では、美麗な装飾層を形成することが困難であり、2.0mmより厚いと、壁紙として取扱にくいものとなってしまう。
また、空気中のアルデヒド類を吸着しても、黄変する吸着剤は装飾層に部分的に覆われており、装飾層にアルデヒド類吸着剤を含んでいないので、黄変が目立たず、装飾層における初期の色彩が良好に維持できる。
したがって、アルデヒド類吸着剤は壁紙の最表層である装飾層に含まれていないため、装飾層の発泡に関する弊害がなく、美麗な装飾層を形成することができる。
さらに、本発明の壁紙は、装飾層が部分的にしか形成されておらず、アルデヒド類吸着層で薄く覆われた裏打紙が部分的に露出することになるため、より高い通気性および透湿性能を有する。従って、本発明の壁紙を、アルデヒド類の吸着性能を有する下地材(石膏ボードなど)に施工した場合には、この下地材自体の吸着性能をも生かすことができ、アルデヒド類吸着層における吸着性能との相乗的な効果を得ることができる。
本発明では、裏打紙の表面にアルデヒド類吸着層を設けており、このアルデヒド類吸着層は、無機粒子を含むため、塗料調整の際に分散剤などの界面活性成分を用いることがある。しかし、界面活性成分を含んだ塗料を裏打紙に塗工した場合、裏打紙のサイズ度が著しく低下する傾向があり、その結果、壁紙を壁面に貼着する際に、壁紙の裏面に塗布する施工糊の水分が裏打紙に浸透し易くなるため、施工糊が乾燥し易く、オープンタイムを十分に確保できない虞がある。これを回避するために、裏打紙の裏面に熱可塑性樹脂層を設けることで、裏打紙の裏面の水分に対するバリア性を向上させ、オープンタイムを充分に確保することが可能となる。
なお、オープンタイムの調整法としては、上記のように樹脂層を裏面に設けることの他に、施工糊を乾燥性の少ないものにする等の方法を採ることもできる。
該塗料は、エマルジョンタイプ、溶剤タイプのいずれでもよい。
塗工量が0.5g/m2未満では、オープンタイムを調整するには不十分であり、4.0g/m2を超えると、オープンタイムを調整するには過剰の塗工量となり、また、壁紙全体の重量が増し壁紙自体の取扱性が低下する。
(1)少ない吸着剤量にもかかわらず、高い吸着性能を確保することができ、
(2)アルデヒド類の吸着によるアルデヒド類吸着層の黄変が目立たず、
(3)発泡が阻害されずに美麗な装飾層を形成することができ、
(4)アルデヒド類の吸着性能を有する下地材(石膏ボードなど)の吸着性能との相乗的効果を得ることができる、
などの効果を有し、ホルムアルデヒドのようなVOCを低減させる壁紙として好適である。
図1に示すように、坪量90g/m2の裏打紙1の表面に、バインダー、多孔質の無機粒子、アルデヒド類吸着剤をそれぞれ表1に示す割合でラボミキサーにて均一に攪拌分散して得られた組成物を、エアーナイフ式コーターにより塗工した後に乾燥し、アルデヒド類吸着層2を形成した。
次に、上記により得られたアルデヒド類吸着層2上に、表2に示す配合からなる装飾層3を、該装飾層3からアルデヒド類吸着層2が表1に示す割合で露出するように(乾燥時120g/m2となるように)ロータリースクリーンプリンターにて塗工し、140℃の温度で乾燥後、220℃の温度にて加熱発泡して、アルデヒド類吸着壁紙10を得た。
結果を表1に併せて示す。
上記テトラバック内の、上記ガスを入れた直後と24時間後の、アセトアルデヒド濃度を測定し、低減量を率として記載した。
(2)オープンタイムの評価基準:得られた壁紙10の裏面に、施工用接着剤(ヤヨイ化学工業社製 商品名“ルーアマイルド”の6割希釈<ルーアマイルド10に対して水6(重量比)を加えたもの>)を、壁紙用自動糊付け機を使用して約140g/m2となるよう塗布し、塗布面が内側になるように折り畳んだ。
30分毎に接着剤の乾燥具合を確認し、接着剤により裏打紙同士が接着し、それを剥がしたときに少なくとも一方の裏打紙の層間剥離が発生する、或いは接着剤が乾燥して施工できる状態でなくなるまでの時間を測定し、下記基準で評価した。
○;120分以上
△;90〜120分
×;90分未満
バインダー、無機粒子、アルデヒド類吸着剤の各配合量は、乾燥時での重量%を示す。
(使用原料)
バインダー:完全ケンカ型ポリビニルアルコール
無機粒子:珪酸アルミニウム
アルデヒド類吸着剤:(株)オーシカ製 商品名“ディアムッシュFC−7”
数字は、重量部を示す。
(使用原料)
DOP:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル
ADCA:アゾジカルボンアミド
また、各実施例、0比較例において、アルデヒド類濃度低減率の評価方法と同様な方法にて、常時アセトアルデヒドガスを供給した状態で、アルデヒド類吸着剤の吸着力が飽和状態となるまでアセトアルデヒドガスを吸着させて、各試料のアルデヒド類吸着層と装飾層を含めた外観評価を実施したところ、各試料のアセトアルデヒド吸着層には黄変が発生したが、比較例2においては全体的に変色しているように感じた。実施例6も多少変色しているようであったが、壁紙としてまだ使用できる程度のものであった。その他のものは特に変色を感じない程度であった。
アルデヒド類吸着層を裏打紙上に形成せずに、実施例3と同量のアルデヒド類吸着剤を装飾層3に混合する以外は、他の実施例と同様にして壁紙を作製し、この壁紙における(1)アルデヒド類濃度低減率を実施例1〜8、参考例1〜5、及び比較例1〜6と同様の基準で評価するとともに、(2)装飾層の発泡状況を下記方法にて評価した。
裏打紙1の裏面に下記組成の熱可塑性合成樹脂を固形分換算で2.0g/m2塗工した以外は、参考例3と同様にして壁紙を作製し、この壁紙における(1)アルデヒド類濃度低減率、(2)施工可能時間(オープンタイム)を実施例1〜8、参考例1〜5、及び比較例1〜6と同様の基準で評価した。
さらに、本発明によるアルデヒド類吸着壁紙は、装飾層に露出部を設けてあるため、アルデヒド類の吸着性能を有する下地材(石膏ボードなど)の吸着性能との相乗的効果を得ることもできる。
従って、本発明によるアルデヒド類吸着壁紙は、一般家屋、オフィスビル、店舗用建物、商業施設、公共施設、その他各種の建築物において幅広く使用することができる。
1 裏打紙
2 アルデヒド類吸着層
3 装飾層
Claims (3)
- 裏打紙の表面にアミン基をもつ有機化合物を配合したアルデヒド類吸着層と装飾層とをこの順で有し、
前記装飾層からの前記アルデヒド類吸着層の露出面積が10〜70%であり、
前記アルデヒド類吸着層が、アスペクト比が8以上である多孔質の無機粒子を該吸着層全重量の10〜80重量%の割合で含むことを特徴とするアルデヒド類吸着壁紙。 - 無機粒子の平均粒子径が0.8〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のアルデヒド類吸着壁紙。
- 裏打紙の裏面に熱可塑性樹脂層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルデヒド類吸着壁紙。
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