JP4129343B2 - 麺類の品質改良剤及び麺類の製造法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、麺類の品質改良剤及び麺類の製造法に関する。さらに詳しくは、卵白の酵素加水分解物を含有する麺類の品質改良剤及びこの品質改良剤を用いることにより、食感が改良された麺類を提供する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
麺類は、小麦粉、かんすい、食塩、水といった比較的簡単な原料から作られるが、そのおいしさは、非常に繊細であり、食感に負うところが大きい。これら麺類は、調理後において、適度の硬さ、弾力(粘弾性)、歯ごたえ及び滑らかさ(つるみ感)があり、喉ごしが良い食感でかつ湯伸びしにくいものが望まれており、さらに調理後、保存や流通により喫食するまでに時間のあるもので、特に問題となっている茹で伸びについても生じにくいものが望まれている。
これらの麺類を作るために、小麦粉、澱粉の選択、配合の調整、工程の改良、製麺機械の開発が行われたり(特開平5−316978)、リン酸塩類、乳化剤、増粘多糖類等の食品添加物や卵白やグルテンなどの食品素材を添加したり(特開昭54−76846、特開平7−107934)、いろいろな試みがなされていくらかの効果をあげているが、十分ではなく、麺類の食感をさらに向上させる品質改良剤及び製造方法の確立が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、麺類の食味を損なうことなく、適度の硬さ、弾力(粘弾性)、歯ごたえ及び滑らかさ(つるみ感)があり、喉ごしが良い食感でかつ湯伸び、茹で伸びしにくく、さらに茹で時間、また即席麺の場合であれば復元時間が短縮された麺類の品質改良剤及び麺類の製造法を提供するものであり、特に従来、食感形成が困難であった麺の粘り(粘性)を改良することを課題とする。また、調理後すぐに食するものだけでなく、調理麺、生タイプ即席麺(以下LL麺)、冷凍麺、即席麺などの麺類においても、その製造時や保管後にも改良された食感が維持できる麺類を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究した結果、卵白の酵素加水分解物を添加することにより、目的とする効果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、卵白の酵素加水分解物を含有する麺類の品質改良剤及びこの品質改良剤を添加することを特徴とする麺類の製造法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における卵白とは、全卵より卵黄を除去したもののことであるが、殻付卵を割卵したもの、凍結卵白を解凍したもの及びこれらを濃縮したもの、卵白粉末を水で戻したもののいずれであっても良く、特に限定されるものではないが、加工性の点から生卵白液または冷凍卵白液が好ましい。
一般的に原料蛋白質が大豆、小麦、乳など卵白以外の蛋白質の場合、その酵素加水分解物が強い苦味を呈し、麺類の食味を著しく劣化させることから好ましくない。
【0006】
本発明で用いる酵素は、植物、動物または細菌由来のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)であれば特に限定されるものではないが、Bacillus属の菌体より抽出されたプロテアーゼが苦味の生成が少なく好ましい。さらに好ましくは、酵素がBacillus lichenniformis, Bacillus thermoproteolyticus Rokko, Bacillus subtills からなる群より選ばれる1種以上の菌体より抽出されたプロテアーゼが良い。
【0007】
プロテアーゼ処理の条件は特に限定するものではないが、pH7以上10以下で加水分解温度が55℃以上65℃以下であることが好ましい。酵素加水分解物の分解度は特に限定するものではないが、好ましくはアミノ基量が原料蛋白質の7倍以上20倍以下になるまで分解されており、且つ酵素加水分解物の平均アミノ酸鎖長が2以上で、遊離アミノ酸含量が20%以下のものが好ましい。さらに好ましくは、酵素加水分解物の平均アミノ酸鎖長が2以上15以下が良い。アミノ基量が原料蛋白質の7倍未満または20倍を越えると、麺類の品質改良効果が弱くなる。また、本発明でいうアミノ基量とは、蛋白または蛋白加水分解物の末端及びリジン残基のアミノ基量である。アミノ基量及び平均アミノ酸鎖長、遊離アミノ酸含量はホルモール滴定法、TNBS発色法、またはニンヒドリン発色法等により測定することができる。一般に調味料用途等で用いられる蛋白質の塩酸加水分解物は、遊離アミノ酸の含量が高く、麺の食味を著しく損ねるという点で問題がある。
【0008】
本発明の麺類品質改良剤とは、蛋白質の酵素加水分解物を有効成分として含有するもので、該分解物単品もしくは必要に応じて他の品質改良剤と併用することができる。他の品質改良剤としては、通常、用いられる麺の品質改良剤であれば特に限定されるものではないが、好ましくは卵白、卵黄、鶏卵(全卵)、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、乳蛋白、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タラガム、プルラン、ペクチン、及びこれらの分解物、さらに大豆多糖類、澱粉、澱粉分解物、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンなどが挙げられ、好ましくは、卵白、卵黄、鶏卵(全卵)が良く、さらに好ましくは、卵白が良い。卵白の中でも粉末品で、ゲル強度が高いもの及び10%水溶液のpHが9以上であるものが最も好ましい。さらに、これらの品質改良剤の1種または2種以上を本発明の蛋白質の酵素加水分解物と併用することが出来るものである。
【0009】
本発明における卵白粉末のゲル強度が高いとは、10%濃度の卵白粉末水溶液を塩化ビニリデンチューブに詰めて、90℃で30分間加熱凝固させる。次に、この卵白ゲルをレオメーター(直径5mmの平板プランジャー、上昇速度6cm/分)によって測定した破断強度が350g/cm2以上のことをいう。
本発明における卵白粉末のpHとは、10%濃度の卵白粉末水溶液をpHメーターにて測定した値をいう。
本発明における麺類品質改良剤の剤形は特に限定されるものではなく、粉末混合物、液体混合物、のいずれでもよく、スプレードライ品、平皿乾燥品、フリーズドライ品、それらのブレンド品、水溶液等のいずれであっても良く、好ましくはスプレードライ品、平皿乾燥品、フリーズドライ品などの粉末乾燥品が良く、さらに好ましくはスプレードライ品が良い。
【0010】
本発明において、麺類とは、小麦粉またはその他の穀粉及びその他の原材料に加水混練して製麺したものを指し、麺類を特に限定するものではない。例えば、うどん、中華麺、皮類、和そば、素麺、冷や麦、冷麺、ビーフン、きしめん、マカロニ、スパゲッティ等が挙げられる。麺類の形態は特に限定されるものではないが、生麺、茹で麺、蒸し麺、生タイプ即席麺(LL麺)、即席麺、乾麺、冷凍麺のいずれであってもよい。
麺類の常法による製造方法としては、小麦粉または小麦粉にそば粉等の原料を混合した粉末に、食塩または、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸塩等の塩類を溶解した水溶液を混合し、ミキサーにて数分間混捏してそぼろ状の生地を得る。このそぼろ状の生地を複合機により麺帯とし、圧延段階を繰り返した後、切刃にて切り出し麺線を得る。この製麺の際の混捏や麺帯形成時に生地を真空状態にすることも出来、またエクストルーダー等により生地を押し出し成形することも出来る。以上の手順により得られた麺線をそのまま包装したり、沸騰水もしくは蒸気等にて加熱したのち、流水にて水洗冷却し包装したり、冷凍し包装したり、また加熱α化後熱風、油揚げにて乾燥を行ったりする。LL麺の様に長期保存を目的とする場合は、酸処理、包装後、蒸熱殺菌等を行う。
【0011】
本発明における蛋白質の酵素加水分解物が麺類品質改良剤中に有効成分として添加される量は、小麦粉等の粉体原料に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜2重量%が良い。0.01%未満では、麺類品質改良効果が不十分であり、10%を越えると食感がパサつき、えぐ味が発生し著しく麺類の食味を低下させる。
卵白の酵素加水分解物を麺に添加することにより、麺類の保水性が改善され、粘りが強く、しなやかな弾力性のある食感が得られる。通常卵白を麺に添加すると弾力性は向上するが、粘りに欠けた食感になることがある。しかしながら、卵白の酵素加水分解物は、自身の保水性の高さにより、小麦粉の粘弾性を向上させる様な働きがある。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特記しない限り重量%を示す。
【0012】
【実施例】
実施例
液卵白1000gに3N−クエン酸溶液を添加してpH8.5に調整し、オリエンターゼ22BF(Bacillus subtillus由来:阪急バイオインダストリー(株)製)を7g添加し60℃にて10時間反応した。90℃15分加熱して酵素を失活し、pHを7.0に調整後、噴霧乾燥して本発明品1を得た。本発明品1のアミノ基量をTNBS法にて測定した結果、分解前の17.6倍であった。
【0013】
試験例1
準強力粉1000gに対し、実施例の卵白の酵素加水分解物10g、粉末かんすい10g、食塩10g、水330g、99%エタノール20gを配合し、ミキサーで15分間混捏し、常法により圧延、切出し(最終麺帯厚1.4mm、切歯#20角)を行って得られた中華麺120gをポリ袋で密封し、20℃で24時間麺線熟成を行い、本発明品の生中華麺を得た。
【0014】
試験例2
試験例1の生中華麺の製造に際し、実施例の卵白の酵素加水分解物10gの代わりに、卵白の酵素加水分解物6gとゲル強度420g/cm2の卵白粉末4gを併用添加すること以外は、同様にして本発明品の生中華麺を得た。
【0015】
試験例3
試験例1の生中華麺の製造に際し、実施例の卵白の酵素加水分解物10gの代わりに、卵白の酵素加水分解物6gと10%水溶液のpHが9.3の卵白粉末4gを併用添加すること以外は、同様にして本発明品の生中華麺を得た。
【0016】
比較例1
実施例の卵白の酵素加水分解物を加えない以外は、同様にして生中華麺を得た。
【0017】
比較例2
実施例の卵白の酵素加水分解物10gの代わりにゲル強度420g/cm2の未分解の卵白粉末10gを添加すること以外は、同様にして生中華麺を得た。
【0018】
比較例3
液卵白1000gに20%酢酸溶液100mlを添加してpH4.0に調整し、サンプローゼを1.2g添加し50℃にて48時間酵素作用を行わせた。ついでこれを80℃15分加熱して酵素を失活し、遠心分離してその上澄み液を噴霧乾燥して比較品3を得た。
試験例の生中華麺の製造に際し、実施例の卵白の酵素加水分解物10gの代わりに、ここで得られた比較品3の卵白の酵素加水分解物10gを添加すること以外は、同様にして生中華麺を得た。
【0019】
比較例4
大豆蛋白(フジプロR:不二製油(株)製)100gを900gの水に溶解してpH8.0に調整し、アルカラーゼ(Bacillus inchenniformis 由来:ノボノルディスクバイオインダストリー(株)製)を4g添加し65℃にて12時間反応した。87℃30分加熱して酵素失活し、pHを7.0に調整後、噴霧乾燥し比較品4を得た。比較品4のアミノ基量はTNBS法にて測定した結果、分解前の乾燥大豆蛋白の15.5倍であった。
試験例の生中華麺の製造に際し、実施例の卵白の酵素加水分解物10gの代わりに、ここで得られた比較品4の大豆蛋白の酵素加水分解物10gを添加すること以外は、同様にして生中華麺を得た。
(評価方法)
上記の試験例1〜3及び比較例1〜4で得られた生中華麺を沸騰水中で2分30秒茹で上げ、ラーメンスープの入ったどんぶりに移し、パネラー20人にて、麺のかたさ(弾性)、粘り(粘性)、伸び、食味について評価した。
かたさ(弾性)、粘り(粘性)、伸び、食味の評価は、極めて良いものを10点、かなり良いものを9点、やや良いものを8点、普通を7点、やや悪いものを6点、かなり悪いものを5点、極めて悪いものを4点とし、パネラー20人の平均値で示した。
その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1から明らかなように本発明品は比較品に比べ、麺のかたさ(弾性)及び粘り(粘性)に優れ、伸びの抑制についても良好であり、食味の影響についても問題がなかった。
【0022】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下のとおりである。
(1)卵白の酵素加水分解物を含有することを特徴とする麺類の品質改良剤。
(2)酵素がBacillus属の菌体より抽出されたプロテアーゼである(1)記載の麺類の品質改良剤。
(3)酵素がBacillus lichenniformis, Bacillus thermoproteolyticus Rokko,Bacillus subtills からなる群より選ばれる1種以上の菌体より抽出されたプロテアーゼである(1)記載の麺類の品質改良剤。
(4)卵白の酵素加水分解物のアミノ基量が、原料卵白の7倍以上20倍以下である(1)記載の麺類の品質改良剤。
(5)平均アミノ酸鎖長が2以上である(1)記載の麺類の品質改良剤。
【0023】
(6)平均アミノ酸鎖長が2以上15以下である(1)記載の麺類の品質改良剤。
(7)プロテアーゼによる加水分解温度が55℃以上65℃以下、反応時のpHが7以上10以下である請求項1記載の麺類の品質改良剤。
(8)(1)〜(7)いずれか記載の麺類の製造の際に添加する卵白の酵素加水分解物と併用して配合することの出来る他の品質改良剤としては、卵白、卵黄、鶏卵(全卵)、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、乳蛋白、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タラガム、プルラン、ペクチン、及びこれらの分解物、さらに大豆多糖類、澱粉、澱粉分解物、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンなどがある。
(9)(1)〜(7)いずれか記載の麺類品質改良剤を添加することを特徴とする麺類の製造法。
(10)(1)〜(7)いずれか記載の麺類品質改良剤と卵白粉末を併用することを特徴とする麺類の製造法。
【0024】
(11)(10)記載の卵白粉末の10%水溶液のゲル強度が350g/cm2以上であることを特徴とする麺類の製造法。
(12)(10)記載の卵白粉末の10%水溶液のpHが9以上であることを特徴とする麺類の製造法。
(13)卵白の酵素加水分解物が麺類品質改良剤中に有効成分として添加される量は、小麦粉等の粉体原料に対して0.01〜10重量%である(1)〜(7)記載の麺類の品質改良剤及び(9)、(10)いずれか記載の製造方法。
(14)卵白の酵素加水分解物が麺類品質改良剤中に有効成分として添加される量は、小麦粉等の粉体原料に対して0.1〜5重量%である(1)〜(7)記載の麺類の品質改良剤及び(9)、(10)いずれか記載の製造方法。
(15)卵白の酵素加水分解物が麺類品質改良剤中に有効成分として添加される量は、小麦粉等の粉体原料に対して0.3〜2重量%である(1)〜(7)記載の麺類の品質改良剤及び(9)、(10)いずれか記載の製造方法。
【0025】
【発明の効果】
本発明により得られた麺類は、食味を損なうことなく、適度の硬さ、弾力(粘弾性)、歯ごたえ及び滑らかさがあり、喉ごしが良く、良好な粘り(粘性)を持つ食感でかつ湯伸び、茹で伸びしにくく、さらに茹で時間、また即席麺の場合であれば復元時間が短縮されたものであり、本発明は麺類の加工適性,調理適性の改善に効果が大であり、食品産業に大いに貢献できるものである。
Claims (2)
- 卵白をBacillus属の菌体より抽出されたプロテアーゼを使用し、pH7以上〜10以下の条件で酵素分解された卵白の酵素加水分解物であって、卵白の酵素加水分解物のアミノ基量が、原料卵白の7倍以上20倍以下である卵白の酵素加水分解物を含有することを特徴とする麺類の食感改良剤。
- 請求項1記載の食感改良剤を添加することを特徴とする麺類の製造法。
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