JP4250714B2 - 食品用品質改良剤 - Google Patents

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Description

本発明は、改質グルテン粉末および該粉末を含む食品に関する。
グルテンは、穀類特有の粘質性の蛋白質であり、古くから焼麸、生麸、水産練り製品、パン類、めん類などの食品の原料として用いられている。
グルテンは、通常、小麦粉から小麦澱粉を製造する際の副産物として得られる。例えば、小麦粉に水を加えて練り、得られた混練物を水洗することによって、水中に小麦澱粉が懸濁する。他方、水に懸濁せずに、残留した固形の塊がグルテン(生グルテン)であり、懸濁液から分離回収することによって得られる。このような生グルテンは、通常、約60〜70質量%の水分を含む。グルテンは、通常、生グルテンの冷凍物、あるいは生グルテンを乾燥粉末化してグルテン粉末として流通され、食品に利用されている。
ところで、現在、上記グルテンを用いた食品の食感を改良することが検討されている。例えば、グルテン含有食品であるパンは、パンの内相組織の改良、風味の改良のために油脂を添加することが知られているが、油脂は同時にグルテンのドウ形成を遅らせるため、パンに充分なボリュームを与えることができないなどの問題がある。このような問題に対して、特許文献1には、予めグルテン中に油脂を10〜70重量%となるように含有させて乾燥させた油脂含有グルテン粉末を添加することによって、油脂によるドウ形成阻害を抑制し、食品の風味および食感を向上させることが記載されている。
一般に、グルテン含有食品、例えば、麺類などをロングライフ化するためには静菌を目的としてpHを4.2以下に調整することが行われている。しかし、このような条件下では、グルテンが有するS−S結合が酸によって切断され、食感を保持することが困難であるという問題点がある。
このように、種々の食品および種々の条件下、例えば、低pH条件下、油脂が共存する条件下などにおいても、好適な食感を与えるグルテンの加工品およびそれを含有するグルテン含有食品が望まれている。
特開平11−225685号公報
本発明は、優れた食感を有するグルテン含有食品を調製し得る改質グルテン粉末および該粉末を含む食品を提供することを目的とする。好ましくは、さらに上記優れた食感が低pH下においても保持される改質グルテン粉末および該粉末を含む食品を提供することを目的とする。
本発明の改質グルテン粉末は、生グルテンと増粘剤とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。
好ましい実施態様においては、上記増粘剤は、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、キチン、およびキトサンからなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明はまた、上記改質グルテン粉末を含む食品を提供する。
本発明の改質グルテン粉末は、生グルテンと増粘剤とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られるため、硬さ、ねばり、滑らかさなどの優れた食感を有する食品を得ることができる。上記効果は、グルテン粉末と増粘剤とを粉体混合した場合には得られない優れた効果である。特に、所定の増粘剤を用いることによって、改質グルテン粉末中のグルテンが耐酸性を有するため、ロングライフ用食品などの低pHの食品においても上記食感を保持することが可能になる。
本発明の改質グルテン粉末は、生グルテンと増粘剤とを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。また、本発明の食品は、上記改質グルテン粉末を含む。
(生グルテン)
本発明において、生グルテンとは、例えば、穀類から直接、洗浄法、抽出法などの当業者が通常行う方法によって得られる、乾燥、粉末化などの処理を受けていないグルテン(プロラミンとグルテリンとの混合物)あるいは一旦、乾燥、粉末化した粉末グルテンに水を加えて混練したものであって、粘弾性を有する塊をいう。この生グルテンは、通常、水分を約60質量%〜70質量%含有する。
本発明に用いられる生グルテンの原料としては、小麦、ライ麦などの穀類が用いられる。好ましくは小麦である。上記穀類には、タンパク質であるグルテンが豊富に含有される。グルテンは、S−S結合を含むため弾力性に富むことが知られており、種々の食品の食感に重要な役割を果たしている。
洗浄法は、例えば、小麦粉などの穀粉に少量の溶媒(例えば、水)を加えて練った生地(ドウ)を、上記溶媒で洗浄すること、あるいは多量の溶媒中でさらに練ることによって行われる。この方法により、澱粉が溶媒中に懸濁して除去され、グルテンが粘弾性の塊として得られる。上記溶媒としては、通常、水が用いられるが、希リン酸ナトリウム溶液、食塩水などを用いてもよい。
抽出法は、例えば、上記ドウに希酢酸−エタノール混合液などを加えて、グルテンを溶解させ、澱粉を不溶物として分別することによって行われる。
(増粘剤)
本発明に用いられる増粘剤は、所望する食感に応じて適宜選択すればよく、特に制限はない。このような増粘剤としては、例えば、ペクチン、タマリンド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、キチン、キトサン、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、およびタマリンドシードガムが挙げられる。改質グルテン粉末が優れた耐酸性を有し、酸性下においても特に優れた食感を有する点から、好ましくはペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、キチン、キトサンなどの電荷を有する増粘剤であり、さらに好ましくはペクチンである。これらの増粘剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ペクチンとタマリンドとの混合物を用いることによって得られる改質グルテン粉末は、耐酸性を有するとともに、食パンにしっとり感を与える、菓子にサクサク感およびボリュームを与えるなどの良好な食感を与えることが可能である。
(その他の成分)
本発明の改質グルテン粉末は、優れた食感および該食感の保持を損なわない範囲で、必要に応じて、油脂類などのその他の成分を含有し得る。油脂類としては、牛脂、豚脂、魚油などの動物油脂;ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、米油、サフラワー油、コーン油、紅花油、ピーナッツ油、綿実油、中鎖トリグリセライドなどの植物油脂などが挙げられる。
(改質グルテン粉末)
本発明の改質グルテン粉末は、上記の生グルテン、増粘剤、および必要に応じてその他の成分を混練し、乾燥、粉砕することによって得られる。
混練工程において、生グルテンと増粘剤との割合に特に制限はない。好ましくは、生グルテン100質量部に対して、増粘剤を0.01質量部〜30質量部、より好ましくは0.01質量部〜5質量部である。混練は、例えば、ニーダー、ミキサーなどを用いて行われる。
次いで、上記混練物を乾燥する。乾燥方法は、真空乾燥、凍結乾燥などの当業者が通常行う乾燥方法であれば特に制限はない。品質保持の点から、60℃以下の乾燥または凍結乾燥が好ましく用いられる。短時間で乾燥させる点からは真空乾燥が好ましく、例えば50℃〜60℃にて乾燥され得る。
得られた乾燥物を粉砕する。粉砕は、例えば、ミル、ブレンダーなどの当業者が通常用いる機械または道具により行われ得る。粉砕物の粒径は、用いる食品に応じて適宜設定すればよく特に制限はない。生グルテンを取り扱う作業性の点から凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥の場合、凍結させた後、予め粉砕機などで粉砕してから乾燥してもよい。粉砕後、あるいは凍結乾燥の場合は乾燥後、粒径を均一にするために篩い分けなどを行ってよい。このようにして、本発明の改質グルテン粉末が得られる。
本発明の改質グルテン粉末は、従来のグルテン粉末に比べて、食品に硬さ、ねばり、滑らかさなどの優れた食感を付与する。この効果は、グルテン粉末と増粘剤とを単に粉体混合した場合には得られない優れた効果である。さらにペクチンなどの電荷を有する増粘剤を用いることによって、改質グルテン粉末中のグルテンが耐酸性を有するため、低pHの食品においても、上記の優れた食感を有効に保持することができる。
(改質グルテン粉末含有食品)
上記本発明の改質グルテン粉末は、グルテン粉末を含む食品の該グルテンに代えて、あるいは該グルテンに加えて食品中に含有させることができる。このような本発明の改質グルテン粉末含有食品は、例えば、従来のグルテン粉末の代わりに、改質グルテン粉末を用いること以外は、当業者が通常用いる製造方法により得ることができる。このような食品としては、例えば、パン、菓子、麺(そば、うどん、中華麺など)、餃子の皮などの小麦粉製品、ハム、ソーセージなどの畜肉加工製品、およびかまぼこ、魚肉ソーセージなどの水産加工製品が挙げられる。
本発明の改質グルテン粉末含有食品は、上記食品の種類に応じて当業者が通常用いる成分および該成分を含有する食品素材を含み得る。このような成分および該成分を含有する食品素材としては、次の食品素材あるいは化合物が挙げられる:油脂類;小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉など)、トウモロコシ粉、ポテトフラワー、そば粉などの穀粉;ナトリウム塩(例えば、食塩)、カリウム塩(例えば、かん粉である炭酸カリウム)、カルシウム塩、マグネシウム塩などの塩;乾燥卵白、乳アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの動植物性タンパク質;馬鈴薯澱粉、コーン澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉およびこれらの加工澱粉;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどの乳化剤;デキストリン、還元デキストリン、砂糖、乳糖、オリゴ糖、サイクロデキストリンなどの糖質;リン酸、炭酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸などの有機酸および無機酸ならびにそれらの塩;グルタミン酸、グリシン、アラニン、シスチン、システイン、アルギン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびその塩;動植物性タンパク質のペプチド、加水分解物などのタンパク質分解物;天然調味料、抗菌成分などの動植物性抽出物など。
本発明の食品に含有される改質グルテン粉末の割合は、所望の食品に応じて設定すればよく、特に制限はない。
本発明の食品は、上記改質グルテン粉末を含むため、従来のグルテン粉末を用いた食品に比べて、硬さ、ねばり、滑らかさなどの優れた食感を有する。さらに、所定の増粘剤を含む改質グルテン粉末を用いると、上記食品の性質が酸性であっても、改質グルテン粉末中のグルテンが耐酸性を有するため、グルテンのS−S結合が切断されることによる分解を抑制でき、上記の優れた食感を保持することができる。したがって、ロングライフ食品などの低pH(例えばpH4.2以下)の食品として好適に利用できる。さらに、従来まで食感の保持が困難であった酸性食品、例えば、果実類を練り込んだロングライフ用のパンなどとして製造され得る。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:ペクチン含有改質グルテン粉末)
小麦粉100質量部に、水70質量部を加えて混練して生地(ドウ)得た。このドウを水洗して澱粉を除去し、小麦グルテン(生グルテン)を得た。この生グルテン100質量部にペクチン0.1質量部を加えて、横型二軸ニーダーを用いてよく混合した。混合物を凍結乾燥した後、粉砕してペクチン含有改質グルテン粉末を得た。
(実施例2:キサンタンガム含有改質グルテン粉末)
ペクチンの代わりに、キサンタンガムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてキサンタンガム含有改質グルテン粉末を得た。
(実施例3:改質グルテン粉末含有中華麺の製造)
準強力粉100質量部と実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末1質量部とを麺用横型ミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて充分混合した後、さらに、水34質量部、粉末かんすい(炭酸ナトリウム60質量部と炭酸カリウム40質量部との混合粉末)2質量部、および食塩1質量部を加えて12分間混合して生地を得た。この生地を二段式製麺機(福田麺機株式会社製)を用いて、複合工程2回、室温熟成工程1時間、圧延工程4回、および切刃20番角を用いた切断工程を経て中華麺を得た。圧延工程において、麺の肌荒れを調べた。結果を表1に示す。得られた中華麺は、その後、冷蔵庫で1日間保管した。
(実施例4:改質グルテン粉末含有中華麺の製造)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、実施例2で得られたキサンタンガム含有改質グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例3と同様にして中華麺を得、麺の肌荒れを調べた。結果を表1に示す。得られた中華麺は、その後、冷蔵庫で1日間保管した。
(比較例1)
ペクチンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤非含有グルテン粉末を得た。次いで、ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、上記の増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例3と同様にして中華麺を得、麺の肌荒れを調べた。結果を表1に示す。得られた中華麺は、その後、冷蔵庫で1日間保管した。
(比較例2)
比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末100質量部とペクチン0.3質量部とを混合してペクチン粉体混合グルテン粉末を得た。次いで、ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、上記のペクチン粉体混合グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例3と同様にして中華麺を得、麺の肌荒れを調べた。結果を表1に示す。得られた中華麺は、その後、冷蔵庫で1日間保管した。
(比較例3)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして中華麺を得、麺の肌荒れを調べた。結果を表1に示す。得られた中華麺は、その後、冷蔵庫で1日間保管した。
(中華麺の評価)
冷蔵庫で1日間保管した実施例3および4、ならびに比較例1〜3で得られた5種類の中華麺をそれぞれ、沸騰水中で2分45秒間茹でた。湯切り後、茹でられた中華麺をスープの入った容器に入れた後、被験者に試食させた。食感(硬さ、ねばり、および滑らかさ)および上記の中華麺製造時の麺の肌荒れについて官能評価を行った。官能評価は、比較例3の中華麺(グルテン粉末非含有中華麺)の各項目をそれぞれ5点として、各中華麺を1〜10の10段階で評価した。結果を表1に示す。
さらに、湯切りした直後および湯切り10分後の各中華麺について、レオメーター(EzTest、株式会社島津製作所製)を用いて以下のようにして切断試験を行った。切断試験は、平行に配置された2本の麺線を直角に切断するように、麺線の上方から直径0.1mmのピアノ線を20mm/分の速度で下降させ、麺線が切断されるまでの間の最大荷重(mN)を測定した。結果を表2に示す。なお表2中の数値は、5回測定して得られた値の平均値を示す。
Figure 0004250714
表1の結果から、実施例3および4の改質グルテン粉末含有中華麺は、比較例1〜3の改質グルテン粉末非含有中華麺に比べて、食感に優れ、ほぐれ性も高い水準にあることがわかる。これらのことは、改質グルテン粉末を食品に含有させることによって、優れた食感が得られることを示す。
Figure 0004250714
表2の結果から、実施例3および4の改質グルテン粉末含有中華麺は、比較例1〜3の改質グルテン粉末非含有中華麺に比べて、湯切り直後において最大荷重が高く、さらに湯切り10分後においても高いことがわかる。これらのことは、改質グルテン粉末を含有する食品が、改質グルテン粉末を含有しない食品に比べて、良好な食感を維持することを示す。
(実施例5:改質グルテン粉末含有ロングライフうどんの製造)
中力粉100質量部と実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末1質量部とを麺用横型ミキサーを用いて充分混合した後、さらに、水36質量部および食塩2質量部を加えて12分間混合して生地を得た。この生地を二段式製麺機を用いて、複合工程2回、室温熟成工程1時間、圧延工程4回、および切刃8番角を用いた切断工程を経て生うどんを得た。得られた生うどんを、まず、沸騰水中で10分間茹で、1分間流水冷却して水切りした。次いで、2質量%乳酸水溶液に浸漬した後、水切りした。この茹でうどん200gとサラダ油4gとを混合した後、耐熱性ポリ袋に入れ、90℃にて45分間加熱殺菌を行い、ロングライフうどん(LLうどん)を得た。このLLうどんは、その後、冷蔵庫で1ヶ月間保管した。
(比較例4)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてLLうどんを得た。得られたLLうどんは、その後、冷蔵庫で1ヶ月間保管した。
(比較例5)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例2で得られたペクチン粉体混合グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてLLうどんを得た。得られたLLうどんは、その後、冷蔵庫で1ヶ月間保管した。
(比較例6)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例5と同様にしてLLうどんを得た。得られたLLうどんは、その後、冷蔵庫で1ヶ月間保管した。
(ロングライフうどん(LLうどん)の評価)
冷蔵庫で1ヶ月間保管した実施例5および比較例4〜6で得られた4種類のLLうどんをそれぞれ、沸騰水中で1分30秒間茹でた。沸騰水中での麺のほぐれ性について官能評価を行った。さらに、湯切り後、茹でられたLLうどんをスープの入った容器に入れた後、被験者に試食させ、食感(硬さ、ねばり、および滑らかさ)について官能評価を行った。官能評価は、比較例6のLLうどん(グルテン粉末非含有LLうどん)の各項目をそれぞれ5点として、各中華麺を1〜10の10段階で評価した。結果を表3に示す。
湯切りした直後の各LLうどんについて、レオメーター(EzTest、株式会社島津製作所製)を用いて、以下のようにして切断試験を行った。切断試験は、1本の麺線を直角に切断するように、麺線の上方から直径0.1mmのピアノ線を20mm/分の速度で下降させ、麺線が切断されるまでの間の最大荷重(mN)を測定した。結果を表4に示す。なお表4中の数値は、5回測定して得られた値の平均値を示す。
Figure 0004250714
表3の結果から、実施例5の改質グルテン粉末含有LLうどんは、比較例4〜6の改質グルテン粉末非含有LLうどんに比べて、沸騰水中でのほぐれ性および食感に優れていることがわかる。一般に、LLうどん(pH4.2以下)などの酸性食品においてはグルテンが劣化し易いが、改質グルテン粉末を含有させることによって、長期保存しても優れた食感が保持されていた。
Figure 0004250714
表4の結果から、実施例5の改質グルテン粉末含有LLうどんは、比較例4〜6の改質グルテン粉末非含有LLうどんに比べて、湯切り直後において最大荷重が高く、改質グルテン粉末を含有することによって、酸性食品を長期保存しても優れた食感が保持されることがわかる。
(実施例6:改質グルテン粉末含有かまぼこの製造)
すり身100質量部を、ビーターを取り付けた縦型万能ミキサー(株式会社品川工業所製)を用いて1分間ミキシングした。さらに、食塩を2.8質量部加えて20分間ミキシングした。これとは別に、実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末0.5質量部、馬鈴薯澱粉8質量部、砂糖3質量部、グルタミン酸ナトリウム1質量部、およびサラダキープ蒲鉾用NT(奥野製薬工業株式会社製、グリシン・酢酸ナトリウム製剤)0.5質量部を水40質量部に添加した分散液を予め調製した。この分散液を上記のミキシングしたすり身に全量添加し、さらに20分間ミキシングした。得られた混合物120gを、縦12.5cmおよび横5.0cmの板に載せて成形し、さらにラップで表面を覆い、35℃にて1時間保管した。この成形品をさらに85〜90℃にて25分間蒸した後、常温まで冷却し、かまぼこを得た。このかまぼこは、その後、5℃にて24時間保管した。
(比較例7)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてかまぼこを得た。得られたかまぼこは、その後、5℃にて24時間保管した。
(比較例8)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例2で得られたペクチン粉体混合グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてかまぼこを得た。得られたかまぼこは、その後、5℃にて24時間保管した。
(比較例9)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例6と同様にしてかまぼこを得た。得られたかまぼこは、その後、5℃にて24時間保管した。
(かまぼこの評価)
5℃にて24時間保管した実施例6および比較例7〜9で得られた4種類のかまぼこをそれぞれ厚さ2cmにカットし、食感(硬さ)について官能評価を行った。官能評価は、比較例9のかまぼこ(グルテン粉末非含有かまぼこ)を5点として、各かまぼこを1〜10の10段階で評価した。結果を表5に示す。
さらに、厚さ2cmにカットした常温下の各かまぼこについて、レオメーター(EzTest、株式会社島津製作所製)を用いて以下のようにして破断試験を行った。破断試験は、ステージ面にかまぼこのカットした面の一方が接するようにかまぼこを配置し、直径7mmの先端球形治具を60mm/分の速度で下降させ、かまぼこが破断するまでの間の最大荷重(mN)を測定した。結果を表5に併せて示す。なお表5中の数値は、5回測定して得られた値の平均値を示す。
Figure 0004250714
表5の結果から、実施例6の改質グルテン粉末含有かまぼこは、比較例7〜9の改質グルテン粉末非含有かまぼこに比べて、硬さが増し、良好な食感が得られることがわかる。このように、実施例6の改質グルテン粉末を用いた場合は、比較例8のペクチンとグルテン粉末との粉体混合物を用いた場合に比べても、硬さが増し、良好な食感であることが明らかであった。
(実施例7:改質グルテン粉末を含有する餃子の皮の製造)
中力粉50質量部、準強力粉50質量部、および実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末1質量部を麺用横型ミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて充分混合した後、さらに、水34質量部、食塩1質量部、およびクエン酸0.4質量部を加えて12分間混合して生地を得た。この生地を二段式製麺機(福田麺機株式会社製)を用いて、複合工程2回、室温熟成工程1時間、および圧延工程4回を経て厚さ0.8mmの麺帯を得た。この麺帯を直径90mmの円形に型抜きして餃子の皮を得た。この餃子の皮を適当に破砕し、破砕物が10質量%となるようにイオン交換水に添加した水溶液のpHは4.5であった。この餃子の皮は、その後、10℃にて24時間保管した。
(比較例10)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例7と同様にして餃子の皮を得た。この餃子の皮を適当に破砕し、破砕物が10質量%となるようにイオン交換水に添加した水溶液のpHは4.5であった。得られた餃子の皮は、その後、5℃にて24時間保管した。
(比較例11)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例2で得られたペクチン粉体混合グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例7と同様にして餃子の皮を得た。この餃子の皮を適当に破砕し、破砕物が10質量%となるようにイオン交換水に添加した水溶液のpHは4.5であった。得られた餃子の皮は、その後、5℃にて24時間保管した。
(比較例12)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例7と同様にして餃子の皮を得た。この餃子の皮を適当に破砕し、破砕物が10質量%となるようにイオン交換水に添加した水溶液のpHは4.5であった。得られた餃子の皮は、その後、5℃にて24時間保管した。
(餃子の皮の評価)
5℃にて24時間保管した実施例7および比較例10〜12で得られた4種類の餃子の皮を常温に戻し、レオメーター(EzTest、株式会社島津製作所製)を用いて以下のようにして破断試験を行った。破断試験は、各餃子の皮を直径30mmの穴の開いたステージに固定し、直径7mmの先端球形治具を20mm/分の速度で下降させ、餃子の皮が破断するまでの間の最大荷重(mN)および破断するまでのステージから餃子の皮の伸び(mm)を測定した。結果を表6に併せて示す。なお表6中の数値は、5回測定して得られた値の平均値を示す。
Figure 0004250714
表6の結果から、実施例7の改質グルテン粉末を含有する餃子の皮は、比較例10〜12の改質グルテン粉末を含有しない餃子の皮に比べて、伸展性が良好であることがわかる。一般に生地を酸性にすると、グルテンの構造が破壊され、伸展性が悪くなることが知られている。上記のように、本発明の改質グルテン粉末は、生地を酸性(pH4.5)にした場合も、良好な伸展性を有することがわかる。
(実施例8:改質グルテン粉末含有ライ麦パンの製造)
ライ麦粉40質量部、中力粉60質量部、砂糖2質量部、食塩2質量部、イースト3質量部、ショートニング5質量部、粉末サワー種5質量部、実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末2質量部、および水57質量部を、フックを取り付けた縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製)を用いて、低速で3分間、中速で4分間ミキシングを行い生地を得た。この生地を30分間保持した後(フロアータイム)、分割し、それぞれを籠に入れた。生地の入った籠をホイロにいれて36℃、72%湿度の条件下にて30分間保持し、その後、オーブンを用いて220℃にて40分間焼成してライ麦パンを得た。このライ麦パンは、冷却後、ポリ袋に入れ常温で3日間保管した。
(比較例13)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてライ麦パンを得た。得られたライ麦パンは、冷却後、ポリ袋に入れ常温で3日間保管した。
(比較例14)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例2で得られたペクチン粉体混合グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてライ麦パンを得た。得られたライ麦パンは、冷却後、ポリ袋に入れ常温で3日間保管した。
(比較例15)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例8と同様にしてライ麦パンを得た。得られたライ麦パンは、冷却後、ポリ袋に入れ常温で3日間保管した。
(ライ麦パンの評価)
常温にて3日間保管した実施例8および比較例13〜15で得られた4種類のライ麦パンの食感(しっとり感)について官能評価を行った。官能評価は、比較例15のライ麦パン(グルテン粉末非含有ライ麦パン)を5点として、各ライ麦パンを1〜10の10段階で評価した。結果を表7に示す。
Figure 0004250714
表7の結果から、実施例8の改質グルテン粉末を含有するライ麦パンは、パサつき(老化した食感)が抑えられるだけでなく、しっとり感を有する良好な食感であることがわかる。これに対して、比較例13および14の改質グルテン粉末以外のグルテンを含有するライ麦パンは、パサつきが抑えられる傾向にあるものの、実施例8のライ麦パンに比べてしっとり感の劣るものであった。
(実施例9:改質グルテン粉末含有食パンの製造)
強力粉100質量部、砂糖5質量部、食塩2質量部、脱脂粉乳3質量部、イースト2質量部、イーストフード0.1質量部、実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末2質量部、および水67質量部を、フックを取り付けた縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製)を用いて、低速で4分間、中低速で5分間、および高速で1分間ミキシングを行った。さらに、ショートニング6質量部を添加して、低速で3分間、中低速で2分間、および高速で1分間ミキシングを行い、生地を得た。ミキシングの際の生地の伸展性について、目視にて評価した。評価基準は、上記ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、上記と同様にミキシングした場合の評価を5点として、1〜10の10段階で評価した。結果を表8に示す。
次いで、得られた生地を28℃、80%湿度の条件下にて60分間発酵した後、分割し、さらに28℃にて30分間保持した(フロアータイム)。発酵した生地を成形後、パンケースに詰め、このパンケースをホイロにいれて38℃、80%湿度の条件下にて60分間保持した。その後、オーブンを用いて220℃にて40分間焼成して食パンを得た。この食パンは、冷却後、ポリ袋に入れ、常温で24時間保管した。
(実施例10:改質グルテン粉末含有食パンの製造)
実施例1の生グルテン100質量部にペクチン0.1質量部およびタマリンド0.1質量部を加えて、横型二軸ニーダーを用いてよく混合した。混合物を凍結乾燥した後、粉砕してペクチンおよびタマリンド含有改質グルテン粉末を得た。
実施例9のペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、上記ペクチンおよびタマリンド含有改質グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、ミキシングの際の生地の伸展性についての評価を行い、食パンを製造した。得られた食パンは、冷却後、ポリ袋に入れ、常温で24時間保管した。なお、生地の伸展性の評価結果は、表8に示す。
(比較例16)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、ミキシングの際の生地の伸展性についての評価を行い、食パンを製造した。得られた食パンは、冷却後、ポリ袋に入れ、常温で24時間保管した。なお、生地の伸展性の評価結果は、表8に示す。
(比較例17)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いずに、実施例9と同様にして、ミキシングの際の生地の伸展性についての評価を行い、食パンを製造した。得られた食パンは、冷却後、ポリ袋に入れ、常温で24時間保管した。なお、生地の伸展性の評価結果は、表8に示す。
(食パンの評価)
常温にて24時間保管した実施例9および10、ならびに比較例16および17で得られた4種類の食パンの食感(軽さおよびしっとり感)について、軽さを評価する場合は上記食パンをトーストにして、しっとり感を評価する場合はさらに15℃にて4日間保管した食パンを用いて官能評価を行った。官能評価は、比較例17の食パン(グルテン粉末非含有食パン)を5点として、各食パンを1〜10の10段階で評価した。結果を表8に示す。
Figure 0004250714
表8の結果から、実施例9および10の改質グルテン粉末を用いた場合は、ミキシング時の生地の伸展性が良好であり、得られた食パンの食感(軽さおよびしっとり感)も良好であった。特に、ペクチン含有改質グルテンを用いた場合(実施例9)は、食パンに軽い食感を与え、ペクチンおよびタマリンド含有改質グルテンを用いた場合(実施例10)は、食パンにしっとり感を与えることがわかる。これに対して、比較例16の増粘剤非含有グルテン粉末を用いた場合は、ミキシング時に生地の伸展性が弱くなる傾向にあり、得られた食パンの食感についても、実施例9および10の食パンに比べて劣った。なお、15℃に保管した対照食パンは、澱粉の老化が進み、しっとり感がなく、パサついた食感であった。
(実施例11:改質グルテン粉末含有リーフパイの製造)
強力粉50質量部、薄力粉50質量部、食塩2.4質量部、実施例1で得られたペクチン含有改質グルテン粉末2質量部、および水51質量部を、フックを取り付けた縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製)を用いて、低速で2分間ミキシングを行った。さらに、ショートニング2質量部を添加して、低速で1分間および中低速で2分間ミキシングを行い、生地を得た。得られた生地をラップで包み、冷蔵庫で30分間ねかした。予めシート状に伸ばしたバター500gを用意しておき、これを上記生地1kgで包んだ後、リバースシート(株式会社鎌田機械製作所製)を用いて3ツ折を2回および4ツ折を2回行い、厚さが5mmのシート状に成形した。このシートをリーフ上に型抜きし、オーブンを用いて200℃にて10分間焼成してリーフパイを得た。このリーフパイは、冷却後、ポリ袋にいれて常温にて24時間保管した。
(実施例12:改質グルテン粉末含有リーフパイの製造)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、実施例10で得られたペクチンおよびタマリンド含有改質グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてリーフパイを得た。リーフパイは、冷却後、ポリ袋にいれて常温にて24時間保管した。
(比較例18)
ペクチン含有改質グルテン粉末の代わりに、比較例1で得られた増粘剤非含有グルテン粉末を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてリーフパイを得た。リーフパイは、冷却後、ポリ袋にいれて常温にて24時間保管した。
(比較例19)
ペクチン含有改質グルテン粉末を用いなかったこと以外は、実施例11と同様にしてリーフパイを得た。リーフパイは、冷却後、ポリ袋にいれて常温にて24時間保管した。
(リーフパイの評価)
常温にて24時間保管した実施例11および12、ならびに比較例18および19で得られた4種類のリーフパイについて、外観(ボリューム感)および食感(サクサク感)を官能評価を行った。官能評価は、比較例19のリーフパイ(グルテン粉末非含有リーフパイ)の外観および食感をそれぞれ5点として、各リーフパイを1〜10の10段階で評価した。結果を表9に示す。
Figure 0004250714
表9の結果から、実施例11および12の改質グルテン粉末を用いたリーフパイは、比較例18の増粘剤非含有グルテン粉末を用いたリーフパイおよび比較例19のグルテン非含有リーフパイに比べてボリュームがあり、良好な外観を有することがわかる。さらに食感についても、サクサク感(軽い食感)が良好であった。これらの中で、特に、実施例11のペクチン含有改質グルテン粉末を用いたリーフパイのサクサク感が良好であり、優れた食感であった。
本発明の改質グルテン粉末を用いると、硬さ、ねばり、滑らかさなどの優れた食感を有する食品を得ることができる。上記効果は、市販のグルテン粉末と増粘剤とを粉体混合した場合には得られない優れた効果である。特に、所定の増粘剤を用いることによって、改質グルテン粉末中のグルテンが耐酸性を有するため、低pHの食品においても上記食感を保持することが可能になる。本発明の改質グルテン粉末は、特に低pH条件のグルテン含有食品に有用である。

Claims (3)

  1. 生グルテンとペクチンとを混練し、乾燥、粉砕することによって得られる改質グルテン粉末からなる、グルテン含有食品用品質改良剤。
  2. 前記混練の際にタマリンドをさらに含む、請求項に記載のグルテン含有食品用品質改良剤。
  3. 請求項1または2に記載のグルテン含有食品用品質改良剤を含む、食品。
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