JP2005168499A - 食品品質改良剤の製造方法及びその方法で製造された食品品質改良剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の食品品質改良剤の製造方法は、小麦タンパク質をpH2.5〜8.0の溶媒に分散させた小麦タンパク質分散液を調製する小麦タンパク質分散液調製工程と、前記小麦タンパク質分散液を温度50〜100℃で2時間〜30日間加熱し加熱処理物を得る加熱処理工程と、を備える。
【選択図】なし
Description
小麦タンパク質の主要成分であるグルテンは、バイタルグルテン(活性グルテン)として利用されている。バイタルグルテンは、小麦粉に水を加えて捏ねてドウを作り、ドウを揉みながら水洗して澱粉質を洗い出して得られる生グルテンを噴霧乾燥し、未変性の状態で粉末化したものである。バイタルグルテンは、パンの体積増大や食感改良、麺類の食感改良、かまぼこ等の水産練り製品の食感改良等を目的として利用されている。
近年では、例えば(特許文献1)に「麺に弾力性を付与するため、小麦グルテンをアルカリ、酸等で分解処理した麺用品質改良剤」が開示されている。
また、(特許文献2)に「グルテンの変性を抑えてα−アミラーゼ活性を除去するため、生グルテンを分散させた分散液を65〜80℃で1〜10分間急速加熱するバイタルグルテンの製造法」が開示されている。
(1)バイタルグルテンは、パン生地に添加すると膨らみが増す効果が得られるが、パンが硬くなる場合があるなど食感において改善の余地があるという課題を有していた。また、添加量によっては蛋白臭が強くなり、風味が損なわれるという課題を有していた。さらに、保水性が乏しいため、蒲鉾などの水分の少ない水産練り製品に添加した場合に弾力をもたらすが、ハンペンのような水分量の多いものではゲル強度が急激に低下するため添加剤としては向かないなど、タンパク質の保水性を生かす用途が限られているという課題を有していた。
(2)(特許文献1)に開示の技術は、グルテンの保水性を向上させ麺の弾力性を向上させる技術であるが、分解処理された麺用品質改良剤は高分子量のグルテンの分子量を低分子量化するため、グルテン網目構造の骨格形成能に乏しくなるとともにグルテンの有用な機能が損なわれるという課題を有していた。
(3)(特許文献2)に開示の技術は、バイタルグルテンの製造法であるが、65〜80℃で1〜10分間の急速加熱によりグルテンの変性を抑えてα−アミラーゼ活性を除去するものであり、グルテンの伸展性等の機能を非加熱品と比べて向上させることができないという課題を有していた。
(4)(特許文献3)に開示の技術で抽出されたグリアジンは粘性と伸展性を示し優れた製パン性を有するが、起泡性、泡末安定性に乏しいという課題を有していた。特に、卵白タンパク質や乳清タンパク質等と比較すると、起泡性、泡末安定性、保水性が著しく低いという課題を有していた。また、酸及びアルコール可溶性のタンパク質なので、中性の水には不溶で用途が限定されるという課題を有していた。
(5)グルテニンは、弾性(硬さ)に富む反面、伸展性には乏しいため、パンに添加した場合にグルテン以上にパンが硬くなるという課題を有していた。また、食品に添加した場合には蛋白臭が強くなり、特に、加熱調理をする場合に顕著になるという課題を有していた。また、小麦タンパク質の中で最も水に対する溶解性に乏しいため、用途が極めて限定されるという課題を有していた。
また、本発明は、小麦製品の生地に伸展性を付与して加工特性を向上させることができるとともに、用途に応じて保水性、起泡力、乳化力、被膜性、増粘、着色、風味及び好ましいテクスチャー等を与えることができ、また国内産小麦の用途を飛躍的に拡大させることができるとともに品質にばらつきがある小麦粉の加工特性を安定化させることができ食品の品質の安定性を高めることができ、さらにかまぼこ等の水産練り製品に添加してテクスチャーを改善することができるとともにハム・ソーセージ等の畜肉製品に添加して結着及び肉汁や脂の分離を防止できる応用性に優れる食品品質改良剤を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の食品品質改良剤の製造方法は、小麦タンパク質をpH2.5〜8.0の溶媒に分散させた小麦タンパク質分散液を調製する小麦タンパク質分散液調製工程と、前記小麦タンパク質分散液を温度50〜100℃で2時間〜30日間加熱し加熱処理物を得る加熱処理工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)加熱処理工程を備えているので、小麦タンパク質を不可逆的に部分変性させることができ、食品に添加することで優れた伸展性を付与できる食品品質改良剤を製造することができる。このことは、加熱処理工程において、小麦タンパク質分散液を温度50〜100℃で2時間〜30日の長時間加熱することにより、完全な変性に至らない小麦タンパク質の部分的な変性が不可逆的にもたらされ、小麦タンパク質の二次構造の部分的な崩壊により分子のフレキシビリティー(柔軟性)が増すために伸展性が向上すると推察している。なお、小麦タンパク質の短時間の加熱による変性については、A. S. Tathamらによってグリアジンの二次構造の変化、α−へリックス構造の崩壊が20℃〜80℃における加熱温度上昇とともに進行していることが明らかとなっており、この加熱による構造変化は可逆的であることを認めている(A. S. Tatham et. al.,Journal of Cereal Science 11 (1990) p.1-13)。
(2)加熱処理工程において、小麦タンパク質の部分変性が不可逆的に起こっているため、長期間保管しても物性が変化することなく保管性に優れる。
(3)小麦タンパク質をpH2.5〜8.0の溶媒に分散させる小麦タンパク質分散液調製工程を備えているので、小麦タンパク質を溶媒中で均一に分散させて加熱処理工程によって部分変性させることができ、収率を高めることができるとともに品質の安定性に優れる。
(4)小麦タンパク質をpH2.5〜8.0の溶媒に分散させるので、得られる食品品質改良剤の酸味を抑制することができ食品に添加した際に食品の風味等を損なわず汎用性に優れるとともに、小麦タンパク質の溶媒への分散性に優れ凝集することなく均一に分散させ、加熱処理工程によって小麦タンパク質を均一に部分変性させることができ均質性に優れる。
(5)得られた加熱処理物は食品に伸展性を付与することができるので、パンや麺類,ケーキ,ドーナツ,クッキー,ビスケット,天ぷら衣,パスタ,ピザ生地,パイ生地,クレープ,たい焼き,まんじゅう,餃子・シュウマイの皮等の小麦製品に添加することにより、生地に伸展性を付与して混合を容易にして生産性に優れるとともに生地の機械耐性を向上させることができる。また、製パンにおいては、比容積を増大させてふっくらとした食感やしっとり感のあるパン製品を製造することができる。また、製麺においては、食感の調節や茹でのびを抑えることができる。
(6)国内産小麦はタンパク質含量が少なく生地にした場合に形成されるグルテンの性質が弱いためうどん用原料等に用途が限られているが、得られた加熱処理物を添加することで生地に伸展性が増大されるため用途をパン等にも拡大でき、国内産小麦の用途を飛躍的に拡大させることができる。
(7)加熱処理物を添加することにより、元々品質にばらつきがある小麦粉の加工特性を安定化させることができ、食品の品質の安定性を高めることができる。
(8)得られた加熱処理物は保水性等を付与することができるので、かまぼこ等の水産練り製品に添加してテクスチャーを改善することができるとともに、ハム・ソーセージ等の畜肉製品に添加して結着効果をもたらし、肉汁や脂の分離も防止することができる。
有機酸又は有機酸のナトリウム塩を用いる場合は、有機酸の濃度は、小麦タンパク質分散液に対して0.01〜5重量%好ましくは0.02〜3重量%が好適である。有機酸の濃度が0.02重量%より低くなるにつれ小麦タンパク質の分散が悪くなる傾向がみられ、濃度が3重量%より高くなるにつれ酸味が強くなるため、用途によっては風味を悪化させるため好ましくない場合が生じたり、有機酸を除去せずに加熱処理物を乾燥した場合に、乾燥物の吸湿性が増すため使用時にべたつく傾向がみられる。特に、有機酸の濃度が0.01重量%より低くなるか5重量%より高くなるにつれ、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)小麦タンパク質が、グリアジンとグルテニンとを含有し、グリアジンを25〜100重量%好ましくは30〜100重量%含有しているので(グルテニンの含有率は0〜75重量%好ましくは0〜70重量%)、グリアジンの含有率に応じてグルテニンがもたらす弾性(硬さ)とグリアジンがもたらす粘性、伸展性を調節でき、添加する食品に要求される特性に柔軟に対応することができる。グルテニンの含有率を多くするにつれ添加した食品の食感は硬くなる傾向にあるため硬さ調節が可能になり、グリアジン含有率を多くするにつれ粘性や伸展性を向上させることができる。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)糖類を添加することよって、小麦タンパク質が溶媒に分散し易くなり作業効率を高めることができるとともに、加熱処理工程において加熱時に小麦タンパク質がゲル化するのを抑制することができる。
(2)糖類が共存することにより、糖類の濃度に依存して小麦タンパク質の熱変性温度を上昇させるので、糖類の添加量を調節することにより小麦タンパク質を変性し難くして、加熱処理工程において小麦タンパク質が完全に変性してしまうのをある程度抑制し歩留を高めるとともに、加熱処理工程における加熱温度や加熱時間の選択の幅を広げることができる。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)小麦タンパク質の遊離アミノ基に親水性の還元糖を修飾するメイラード反応を利用することによって小麦タンパク質の溶解性、乳化性、保水性、熱や食塩濃度に対する泡沫安定性等の熱安定性や耐塩性等を小麦タンパク質単独の場合と比べて向上させ、食品の加工特性、嗜好性、品質の向上等を図る安全な食品品質改良剤や他のタンパク質の代用として幅広く利用でき小麦タンパク質の用途拡大と機能向上を図ることができる。
(2)還元糖の共存下で加熱処理した加熱処理物をパン生地に添加することにより、パン生地を捏ねる際にまとまりが良くなりミキシング時間が短縮できるとともに機械耐性も高めることができ、冷凍生地では冷凍保存時の生地劣化防止を図ることができ焼成後に梨肌が生じるのを抑制できる。
(3)還元糖の共存下で加熱処理した加熱処理物は、水に対する溶解性が増大すると共に加工・調理の際に必要な起泡性や保水性を著しく向上させることができる。これをスポンジケーキ製造時に添加することにより、乳化剤を使用しなくても泡立て時の気泡形成と気泡の保持に寄与し、さらにバッター形成が速くなるためにミキシング時間が短縮できるとともに、焼成後はきめの細かいスポンジ形成が可能になる。また、添加量を変えることによりスポンジの食感が制御できる。
(4)メイラード反応を利用した加熱処理物をパンやスポンジケーキ等の生地に添加することにより、クラスト部分の歯切れを良くすることができる。また、天ぷら衣などの揚げ物に添加するとクリスピー感を向上させ、その持続効果ももたらすことができる。さらに、麺類に添加することにより、こしの改善ができ、茹でのび防止効果をもたらし、食品の付加価値を高めることができる。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)化学的合成品を用いず、食酢、果汁に含まれるクエン酸等の天然の有機酸により小麦タンパク質分散液のpHの調整を行うことができ安全性に優れる。
(2)食酢や果汁の添加により着色や風味着けを行うことができ、食品品質改良剤の用途によっては付加価値を高めることができる。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)加熱処理物から有機酸,アルコール類,糖類,糖類の分解産物,果汁の色素等の低分子量成分を除去することができ、用途によっては好ましくない着色、風味、食味等を除去することができ汎用性を高めることができる。
低分子量成分除去工程では、水溶性画分と不溶性画分に分離する場合が生じるが、両画分を合わせて食品品質改良剤としたり、水溶性画分若しくは不溶性画分のいずれか1種を食品品質改良剤とすることができる。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)食品に伸展性を付与することができるので、パンや麺類,ケーキ,ドーナツ,クッキー,ビスケット,天ぷら衣,パスタ,ピザ生地,パイ生地,クレープ,たい焼き,まんじゅう,餃子・シュウマイの皮等の小麦製品に添加することにより、生地に伸展性を付与して混合を容易にして生産性を向上させるとともに生地の機械耐性を向上させることができる。また、製パンにおいては、比容積を増大させてふっくらとした食感やしっとり感のあるパン製品を製造することができる。また、製麺においては、食感の調節や茹でのびを抑えることができる。さらに、天ぷら衣、ドーナツなどの揚げ物、パン、ケーキ類などの焼成物表面のクリスピー感を向上させることができる。
(2)国内産小麦はタンパク質含量が少なく生地にした場合に形成されるグルテンの性質が弱いためうどん用原料等に用途が限られているが、国内産小麦に添加することで生地に伸展性が増大されるため用途をパン等にも拡大でき、国内産小麦の用途を飛躍的に拡大させることができる。
(3)小麦粉に添加することにより、元々品質にばらつきがある小麦粉の加工特性を安定化させることができ、食品の品質の安定性を高めることができる。
(4)食品に保水性等を付与することができるので、かまぼこ等の水産練り製品に添加してテクスチャーを改善することができるとともに、ハム・ソーセージ等の畜肉製品に添加して結着効果をもたらし、肉汁や脂の分離も防止することができる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)小麦タンパク質を不可逆的に部分変性させることができ、食品に添加することで優れた伸展性を付与できる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(2)加熱処理工程において、小麦タンパク質の部分変性が不可逆的に起こっているため、長期間保管しても物性が変化することなく保管性に優れた食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(3)得られた加熱処理物は食品に伸展性を付与することができるので、パンや麺類,ケーキ,ドーナツ,クッキー,ビスケット,天ぷら衣,パスタ,ピザ生地,パイ生地,クレープ,たい焼き,まんじゅう,餃子・シュウマイの皮等の小麦製品に添加することにより、生地に伸展性を付与して混合を容易にして生産性に優れるとともに生地の機械耐性を向上させることができる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。また、製パンにおいては、比容積を増大させてふっくらとした食感やしっとり感のあるパン製品を製造することができる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。また、製麺においては、食感の調節や茹でのびを抑えることができる。さらに、天ぷら衣、ドーナツなどの揚げ物、パン、ケーキ類などの焼成物表面のクリスピー感を向上させることができる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(4)国内産小麦はタンパク質含量が少なく生地にした場合に形成されるグルテンの性質が弱いためうどん用原料等に用途が限られているが、得られた加熱処理物を添加することで生地に伸展性が増大されるため用途をパン等にも拡大でき、国内産小麦の用途を飛躍的に拡大させることができる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(5)加熱処理物を添加することにより、元々品質にばらつきがある小麦粉の加工特性を安定化させることができ、食品の品質の安定性を高める食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(6)得られた加熱処理物は保水性等を付与することができるので、かまぼこ等の水産練り製品に添加してテクスチャーを改善することができるとともに、ハム・ソーセージ等の畜肉製品に添加して結着効果をもたらし、肉汁や脂の分離も防止できる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)小麦タンパク質が、グリアジンとグルテニンとを含有し、グリアジンを25〜100重量%好ましくは30〜100重量%含有しているので、グリアジンの含有率に応じてグルテニンがもたらす弾性(硬さ)とグリアジンがもたらす粘性、伸展性を調節でき、添加する食品に要求される特性に柔軟に対応することができる応用性に優れた食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)糖類を添加することよって、小麦タンパク質が溶媒に分散し易くなり作業効率を高めることができるとともに、加熱処理工程において加熱時に小麦タンパク質がゲル化するのを抑制することができ歩留が高く品質の安定性に優れた食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(2)糖類が共存することにより、糖類の濃度に依存して小麦タンパク質の熱変性温度を上昇させるので、糖類の添加量を調節することにより小麦タンパク質を変性し難くして、加熱処理工程において小麦タンパク質が完全に変性してしまうのをある程度抑制するとともに、加熱処理工程における加熱温度や加熱時間の選択の幅を広げることができる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)小麦タンパク質の遊離アミノ基に親水性の還元糖を修飾するメイラード反応を利用することによって小麦タンパク質の溶解性、乳化性、保水性、熱や食塩濃度に対する泡沫安定性等の熱安定性や耐塩性等を小麦タンパク質単独の場合と比べて向上させ、食品の加工特性、嗜好性、品質の向上等を図る安全な食品品質改良剤や他のタンパク質の代用として幅広く利用でき小麦タンパク質の用途拡大と機能向上を図ることができる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(2)還元糖の共存下で加熱処理した加熱処理物をパン生地に添加することにより、パン生地を捏ねる際にまとまりが良くなりミキシング時間が短縮できるとともに機械耐性も高めることができ、冷凍生地では冷凍保存時の生地劣化防止を図ることができ焼成後に梨肌が生じるのを抑制できる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(3)還元糖の共存下で加熱処理した加熱処理物は、水に対する溶解性が増大すると共に加工・調理の際に必要な起泡性や保水性を著しく向上させることができる。これをスポンジケーキ製造時に添加することにより、乳化剤を使用しなくても泡立て時の気泡形成と気泡の保持に寄与し、さらにバッター形成が速くなるためにミキシング時間が短縮できるとともに、焼成後はきめの細かいスポンジ形成が可能な食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(4)メイラード反応を利用した加熱処理物をパンやスポンジケーキ等の生地に添加することにより、クラスト部分の歯切れを良くすることができ、食品の付加価値を高めることができる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)食酢、果汁に含まれるクエン酸等の天然の有機酸により小麦タンパク質分散液のpHの調整を行うことができ安全性に優れた食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(2)食酢や果汁の添加により着色や風味着けを行うことができ、食品品質改良剤の用途によっては付加価値を高めることができる食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)加熱処理物から有機酸,アルコール類,糖類,糖類の分解産物,果汁の色素等の低分子量成分を除去することができ、用途によっては好ましくない着色、風味、食味等を除去することができ汎用性に優れた食品品質改良剤が得られる食品品質改良剤の製造方法を提供することができる。
(1)食品に伸展性を付与することができるので、パンや麺類,ケーキ,ドーナツ,クッキー,ビスケット,天ぷら衣,パスタ,ピザ生地,パイ生地,クレープ,たい焼き,まんじゅう,餃子・シュウマイの皮等の小麦製品に添加することにより、生地に伸展性を付与して混合を容易にして生産性を向上させるとともに生地の機械耐性を向上させることができる食品品質改良剤を提供することができる。また、製パンにおいては、比容積を増大させてふっくらとした食感やしっとり感のあるパン製品を製造できる食品品質改良剤を提供することができる。また、製麺においては、食感の調節や茹でのびを抑えることができる食品品質改良剤を提供することができる。さらに、天ぷら衣、ドーナツなどの揚げ物、パン、ケーキ類などの焼成物表面のクリスピー感を向上させることができる。
(2)国内産小麦はタンパク質含量が少なく生地にした場合に形成されるグルテンの性質が弱いためうどん用原料等に用途が限られているが、国内産小麦に添加することで生地に伸展性が増大されるため用途をパン等にも拡大でき、国内産小麦の用途を飛躍的に拡大させることができる食品品質改良剤を提供することができる。
(3)小麦粉に添加することにより、元々品質にばらつきがある小麦粉の加工特性を安定化させることができ、食品の品質の安定性を高めることができる食品品質改良剤を提供することができる。
(4)食品に保水性等を付与することができるので、かまぼこ等の水産練り製品に添加してテクスチャーを改善することができるとともに、ハム・ソーセージ等の畜肉製品に添加して結着効果をもたらし、肉汁や脂の分離も防止することができ応用性に優れた食品品質改良剤を提供することができる。
(実施例1)
小麦タンパク質として粉末状のグルテン45gと、糖類として粉末状のグルコース(還元糖)135gと、を0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)350mLに分散させた小麦タンパク質分散液を得た(小麦タンパク質分散液調製工程)。
次に、小麦タンパク質分散液を密封容器中で60℃にて3日間加熱し、加熱処理物を得た(加熱処理工程)。
加熱処理後、蒸留水に対して透析することにより未反応の糖類等の低分子量成分を除去して水溶性画分を回収した(低分子量成分除去工程)。
次いで、得られた水溶性画分を凍結乾燥して実施例1の食品品質改良剤を得た。
なお、実施例1の食品品質改良剤においてグリアジンに結合した糖類の量(重量)は、フェノール硫酸法により測定したところ、1.4%であることが確認された。水溶性画分は、蒸留水に対して透析し未反応の糖類等の低分子量成分を除去したものであるが、フェノール硫酸法による発色(褐色)が認められたために小麦タンパク質にグルコースが共有結合していることが示された。
実施例1の食品品質改良剤を、タンパク質濃度が0.1%(重量/容量)になるように1/15Mクエン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、1.0mLを試験管(内径15mm)に入れた。次に、撹拌機を用いて24000rpmで1分間撹拌し、気泡を形成させた。撹拌後、気泡の高さを経時的に測定した。
なお、比較例1として、タンパク質濃度が0.1%(重量/容量)になるように1/15Mクエン酸緩衝液(pH7.0)にグルテンを分散させたものについて同様の評価を行った。
図1は気泡の高さの経時変化を示す図である。
図1に示されるように、気泡の高さは、起泡直後から静置60分後にかけて実施例1の食品品質改良剤を用いた場合が比較例1の場合より著しく高く、グルテンの起泡性、泡沫安定性が向上することが認められた。実施例1の食品品質改良剤は、小麦タンパク質に糖類が結合することにより溶解性が向上したために、グルテンの溶解度が低いpH7.0においても優れた起泡特性を示したと考えられる。
次に、実施例1の食品品質改良剤を、タンパク質濃度が1.0%(重量/容量)になるように1/15Mクエン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、1.0mLを試験管(内径15mm)に入れた。次に、撹拌機を用いて24000rpmで1分間撹拌し、気泡を形成させた。撹拌後、気泡の高さを経時的に測定した。
なお、比較例2として、タンパク質濃度が1.0%(重量/容量)になるように1/15Mクエン酸緩衝液(pH7.0)に、卵白中で最も起泡性が高いとされているコンアルブミンを溶解させたものについて同様の評価を行った。また、比較例3として、タンパク質濃度が1.0%(重量/容量)になるように1/15Mクエン酸緩衝液(pH7.0)に、起泡性が高いことで知られている乳清タンパク質を溶解させたものについて同様の評価を行った。
図2は気泡の高さの経時変化を示す図である。
図2に示されるように、実施例1の食品品質改良剤は、起泡性の高いコンアルブミン、乳清タンパク質と比較しても、起泡性、泡沫安定性ともに著しく優れていることが認められた。
次に、実施例1の食品品質改良剤の塩濃度影響下における起泡性について評価した。
実施例1の食品品質改良剤を、タンパク質濃度が0.1%(重量/容量)になるようにNaClを0.2M,0.5M含む1%酢酸緩衝液(pH3.0)にそれぞれ溶解し、1.0mLをそれぞれ試験管(内径15mm)に入れた。次に、撹拌機を用いて24000rpmで1分間撹拌し、気泡を形成させた。撹拌後、気泡の高さを経時的に測定した。
なお、比較例4として、タンパク質濃度が0.1%(重量/容量)になるようにNaClを0.2M,0.5M含む1%酢酸緩衝液(pH3.0)に、グルテンをそれぞれ溶解させたものについて同様の評価を行った。
図3はNaCl無添加の場合の気泡の高さの経時変化を示す図であり、図4は0.2MのNaClを含む場合の気泡の高さの経時変化を示す図であり、図5は0.5MのNaClを含む場合の気泡の高さの経時変化を示す図である。
図3〜5から、NaClの濃度が高くなるにつれ、実施例1のグルテンとグルコースの食品品質改良剤,比較例4のグルテンとも撹拌終了直後(0分後)の起泡の高さが低くなる傾向がみられるが、実施例1の食品品質改良剤では、NaClが0.2Mの場合に攪拌終了直後の気泡高さが18mm、NaClが0.5Mで10mm、であり、比較例4と比べて影響が無く、むしろ起泡性が向上していることが明らかとなった。
また、気泡の安定性については、実施例1のグルテンとグルコースの食品品質改良剤では、NaCl無添加の場合、比較例4よりも低かったが、NaClが0.2〜0.5Mの場合、60分後も3mm以上の気泡高さを保っていた。特に、NaClが0.2Mの場合では、2日後においても8mmの気泡の高さを維持していたため、NaClに対して優れた安定性を発揮していることが分かり、糖類の結合により耐塩性が著しく向上することが明らかとなった。
小麦タンパク質として粉末状のグリアジン8gと、糖類として粉末状のグルコース(還元糖)24gと、を1%酢酸緩衝液(pH3.0)140mLに分散させた後、水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整して小麦タンパク質分散液を得た(小麦タンパク質分散液調製工程)。
次に、小麦タンパク質分散液を密封容器中で58℃にて9日間加熱し、加熱処理物を得た(加熱処理工程)。
加熱処理後、加熱処理物を1%酢酸緩衝液(pH3.0)に分散、溶解させ、蒸留水に対して透析することにより未反応の糖類等の低分子量成分を除去して水溶性画分を回収した(低分子量成分除去工程)。
次いで、得られた水溶性画分を凍結乾燥して実施例2の食品品質改良剤を得た。
なお、実施例2の食品品質改良剤においてグリアジンに結合した糖類の量(重量)は、フェノール硫酸法により測定したところ、27%であることが確認された。水溶性画分は、蒸留水に対して透析し未反応の糖類等の低分子量成分を除去したものであるが、フェノール硫酸法による発色(褐色)が認められたために小麦タンパク質にグルコースが共有結合していることが示された。
保水性は、一定条件下で水分蒸発の程度を測定する方法で知ることができる。そこで、以下の手順により試料溶液を濾紙上に滴下し、この水分の蒸発による重量の変化を経時的に測定して保水性の評価を行った。
まず、実施例2の食品品質改良剤を、タンパク質濃度が10%(重量/容量)になるように1%酢酸緩衝液(pH3.0)に溶解して試料溶液を調製した。
次に、室温23℃、相対湿度42.8%の条件に保たれたフード付き風防型電子天秤の皿の上にプラスチック容器を置き、その上にろ紙をのせ静置した。その後、ろ紙の上に試料溶液を50μL注いで染み込ませて、扉を閉めて密封状態にして所定の放置時間毎に重量を測定し、その測定値から水分残存率を算出した。ここでは、フード付き風防型電子天秤内に飽和炭酸カリウム溶液の入った容器を入れて天秤内の相対湿度を42.8%に保つようにした。
なお、比較例5として、タンパク質濃度が10%(重量/容量)になるように1%酢酸緩衝液(pH3.0)にグリアジンを分散させたものについて同様の評価を行った。また、溶媒である1%酢酸緩衝液(pH3.0)の蒸発についても同様にして測定した。
図6は実施例2の食品品質改良剤、比較例5のグリアジン及び溶媒のみの場合の水分残存率と放置時間との関係を示す図である。
図6より、比較例5のグリアジンを用いた場合の水分残存率は、溶媒である1%酢酸緩衝液を用いた場合の水分残存率とほぼ同じで、60分後には水分残存率が10%以下になったことから、比較例5のグリアジンは保水性が極めて低いことが確認できた。一方、実施例2の食品品質改良剤を用いた場合では、60分経過しても約40%の水分残存率を示し、グルコースの修飾によりグリアジンの保水性が大きく向上したことが明らかとなった。
以上のことから、糖類で小麦タンパク質を修飾することにより、溶解性が向上することに加え保水性も向上するため、保水性向上を目的とした食品品質改良剤として、冷凍パン生地、水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉製品等への利用が期待できることが明らかになった。
(1)小麦タンパク質を溶解性の高いタンパク質に改変して、その起泡性、食塩濃度に対する泡沫安定性、保水性を小麦タンパク質単独の場合と比べて向上させることができ、食品の添加物及び他のタンパク質の代わりとして幅広く利用でき、小麦タンパク質の用途拡大と機能向上を図ることができる。
(2)起泡性や耐塩性に優れた純度の高い小麦タンパク質と還元糖の加熱処理物であるため、溶解性、分散性に優れ、食品加工時の混合や小麦粉製品にいたって生地のまとまりを容易にし、生地物性の改善、加工品の品質改良を可能にする。
実施例3〜10の食品品質改良剤を以下の方法で製造した。
(表1)に示すように、グリアジン、グルテン、グリアジンとグルテンの混合物の小麦タンパク質3.75g又は5g若しくは8.75gを、0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)170mL又は150mL(実施例9)に分散し小麦タンパク質分散液を得た。糖類(グルコース:還元糖)を添加する場合は、ここで小麦タンパク質分散液に12g混合した。密封容器内で、小麦タンパク質分散液に所定温度、所定時間の加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物は冷却し、実施例3〜10の液状の食品品質改良剤とした。これらの食品品質改良剤は室温にて保管した。
グリアジン45gとグルコース135gを0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)350mLに分散して小麦タンパク質分散液を得た後、密封容器内で、小麦タンパク質分散液に60℃にて3日間の加熱処理を行い加熱処理物を得た。加熱処理物は冷却後、蒸留水に対して透析して未反応グルコース等の低分子成分を除去し、凍結乾燥によって乾燥させ、乾燥状態の実施例11の食品品質改良剤を得た。この食品品質改良剤は室温にて保管した。実施例11の食品品質改良剤のグリアジンに結合したグルコースの含量をフェノール硫酸法で定量した結果、1.5%(重量)であった。
(比較例6)
小麦タンパク質分散液を120℃で6時間加熱した以外は、実施例5と同様にして、比較例6の食品品質改良剤を得た。
実施例3〜10、比較例6の食品品質改良剤について、小麦タンパク質の種類と重量、糖類(グルコース)の重量、加熱温度、加熱時間を(表1)にまとめて示す。
次に、実施例3〜11、比較例6の食品品質改良剤を用いて製パン性を評価した。製パンには、通常よく用いられる直捏法(ストレート法)を適用し、市販の製パン機を使用することによりミキシングの均一性、発酵、焼成環境を一定にした。製パン性を評価するためのパンは以下の方法で作成した。
(1)小麦粉(市販の強力粉)246.25g(なお、実施例8,10の食品品質改良剤を用いる場合は245gの小麦粉を用い、実施例9の食品品質改良剤を用いる場合は241.25gの小麦粉を用いた。)、砂糖12g、食塩5g、ショートニング12g、ドライイースト5gの製パン材料を準備した。
(2)市販の自動製パン機(日立製自動ホームベーカリー:H−3C型)のパンケース内に準備した製パン材料と、実施例3〜10,比較例6の食品品質改良剤170mL(実施例9では150mL)とを入れ(但し、食品品質改良剤を添加しない場合には、食品品質改良剤に元々含まれている170mL又は150mLの0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)を添加することで加水を賄うこととする。)、又、実施例11の食品品質改良剤を添加する場合には、実施例11の食品品質改良剤の乾燥物(タンパク質量3.75g)と170mlの蒸留水を入れ、室温一定の条件で、前練り(9分)→ねかし(5分)→後練り(22分)→一次発酵(70分)→ガス抜き(20秒)→二次発酵(70分)→焼成(190℃×63分)→放冷(10分)の製パン工程によりパンを焼成した。
なお、二次発酵及び焼成は、ガス抜き後にパンケース内のハネを除去した状態で行った。焼成後のパンの重量(g)を測定し、あわを用いた置換法により体積を求め、パンの体積をパンの重量で除することにより比容積(cm3/g)を求めた。また、パンの外観を写真に記録した。
また、実施例5及び11の食品品質改良剤を用いて製造したパンについては官能試験を行い、製パン性を評価した。
なお、グルコースを添加した実施例5,7,10、比較例6の食品品質改良剤を用いて製パンする場合は、製パン材料の砂糖12gは添加しなかった。グルコースは砂糖と同様にイーストの栄養源であり、食品品質改良剤中には12gのグルコースが元々含まれ、加熱処理を施してもほとんど全部が未反応グルコースとして存在する。製パン材料として12gの砂糖を用いた場合と12gのグルコースを用いた場合について各々製パンの予備試験を行っており、両者において発酵の段階での生地の大きさ、焼成後のパンの体積、重量、比容積、官能検査とも差が認められなかったため、砂糖をグルコースに置き換えても試験結果に影響を及ぼさないことを確認している。
(実験例1)
図7は実施例3のグリアジンを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図7の右)であり、図8は実施例4のグリアジンを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図8の右)である。
なお、各々の外観写真において、左は比較例として、実施例3、実施例4と同様の製パン試験の条件で、グリアジンを用いた食品品質改良剤の代わりにグリアジン3.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し1.5重量%)を製パン材料に添加した結果である。
体積は、実施例3の食品品質改良剤を添加した場合(図7の右)が2160cm3、比較例の場合(図7の左)が2070cm3、実施例4の食品品質改良剤を添加した場合(図8の右)が2240cm3、比較例の場合(図8の左)が2030cm3であった。
比容積は、実施例3の食品品質改良剤を添加した場合(図7の右)が5.79、比較例の場合(図7の左)が5.52、実施例4の食品品質改良剤を添加した場合(図8の右)が6.10、比較例の場合(図8の左)が5.46であった。
いずれの場合も、実施例の食品品質改良剤を添加した場合に比較例よりもパンの体積および比容積の増大が認められ、内相の柔らかさも増した。焼成前の生地を観察した結果、実施例3,4の食品品質改良剤の添加により発酵の促進は認められなかった。従って、グリアジンを穏和な条件で長時間加熱処理することにより得られた食品品質改良剤は、生地の伸展性を向上させ製パン性を向上させることが認められた。
図9はグリアジンの加熱時間(加熱日数)を変えて作成した種々の食品品質改良剤を用いて作成したパンの比容積と比容積相対値と加熱時間(加熱日数)との関係を示した図である。
ここで、本実験例で用いた食品品質改良剤は、グリアジン3.75gを0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)170mLに分散させた小麦タンパク質分散液を、密封容器内で、60℃で0〜18日間の加熱処理を施したものである。
なお、図9の横軸には加熱時間を示し、縦軸には比容積及びグリアジン3.75g(加熱処理をしていないもの)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)の比容積に対する相対値(比容積相対値)を示した。
図9から明らかなように、加熱時間が長くなるほどパンの比容積、比容積相対値とも増加し、7日後は横ばいとなった。このことより、穏和な条件でグリアジンを長時間加熱することにより、グリアジンの伸展性が向上し、製パン性が向上したことが認められた。
また、ここで用いた食品品質改良剤は、加熱処理終了後2週間以上常温で保管したものであるが、伸展性が保持されたため、グリアジン分子の不可逆的な部分変性が本発明による加熱処理で引き起こされていることが明らかとなった。さらに、すべての試料で腐敗も認められなかったために保存性にも優れていることが明らかとなった。
図10は実施例5のグリアジンとグルコースを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図10の右)であり、図11は比較例6のグリアジンとグルコースを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図11の右)である。
なお、各々の外観写真において、左は、グリアジン3.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し1.5重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(いずれも比較例)である。
体積は、実施例5の食品品質改良剤を添加した場合(図10の右)が2260cm3、比較例の場合(図10の左)が2010cm3、比較例6の食品品質改良剤を添加した場合(図11の右)が1820cm3、比較例の場合(図11の左)が2035cm3であった。
比容積は、実施例5の食品品質改良剤を添加した場合(図10の右)が6.14cm3/g、比較例の場合(図10の左)が5.39cm3/g、比較例6の食品品質改良剤を添加した場合(図11の右)が5.11cm3/g、比較例の場合(図11の左)が5.54cm3/gであった。
実験例3の結果から、60℃で加熱処理を施した実施例5の食品品質改良剤を用いた場合(図10の右)は、パンの膨らみが未処理のグリアジン(比較例)の場合よりも著しく増大し、柔らかさも増したが、120℃で加熱処理してグリアジンを完全に変性させた比較例6の場合(図11の右)は、パンの膨らみは未処理のグリアジン(比較例)の場合(図11の左)より劣ることが認められた。
従って、適度な加熱処理によってグリアジンを部分変性させることによりグリアジンの伸展性を向上させ、パン焼成時の体積増大をもたらすと考えられた。
官能検査は、一対比較法により、実施例5の食品品質改良剤添加区(図10の右のもの、比容積6.14cm3/g、以下Aという)、未処理のグリアジン添加区(図10の左のもの、比容積5.39cm3/g、以下Bという)、小麦タンパク質(グリアジン)無添加区(比容積4.93cm3/g、以下Cという)の3つを内相の柔らかさ、クラストの食感について評価し、検査員8名、各評価点を−3〜+3点で配分して行った。
その結果、内相の柔らかさでは、A(+0.792)、B(+0.125)、C(−0.917)の順で、99%の信頼区間において有意な差で食品品質改良剤添加区が最も柔らかいと判定された。また、クラストの食感は、実施例5の食品品質改良剤を添加したものでクリスピー感が増し、トーストすることにより軽くて歯切れが良くなった。このことは、実施例5の食品品質改良剤がクラストの物性に影響したためと考えられる。
図12は実施例6のグルテンを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図12の右)である。
なお、外観写真において、左は、グルテン3.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し1.5重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)である。
体積は、実施例6の食品品質改良剤を添加した場合(図12の右)が2180cm3、比較例の場合(図12の左)が2023cm3であった。
比容積は、実施例6の食品品質改良剤を添加した場合(図12の右)が5.86、比較例の場合(図12の左)が5.44であった。
実施例6の食品品質改良剤を添加した方が、未処理のグルテンを添加した場合よりパンの体積及び比容積が大きいことが明らかになった。これにより、小麦タンパク質としてグルテンを用いた場合も、グリアジンの場合と同様に60℃で長時間加熱することにより、伸展性が増し製パン性が向上することが認められた。
図13は実施例7のグルテンとグルコースを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図13の右)である。
なお、外観写真において、左は、グルテン3.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し1.5重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)である。
体積は、実施例7の食品品質改良剤を添加した場合(図13の右)が2270cm3、比較例の場合(図13の左)が2018cm3であった。
比容積は、実施例7の食品品質改良剤を添加した場合(図13の右)が6.24、比較例の場合(図13の左)が5.44であった。
グルテンにグルコースを混合して加熱した実施例7の食品品質改良剤を添加した場合の方が、未処理のグルテンを添加した場合より、パンの体積及び比容積が大きいことが確認された。
グルテンの場合もグリアジンの場合と同様にグルコースを混合し60℃で長時間加熱することにより、伸展性が増し製パン性が向上することが認められた。また、クラストのクリスピー感が若干増すことも確認された。これは、グルテンとグルコースの反応物がクラストの物性に影響したためと考えられる。
図14は実施例8のグルテンとグリアジンの混合物を用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図14の右)である。
なお、外観写真において、左の写真は、グルテン2.5gとグリアジン2.5gの混合物(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し2.0重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)である。
体積は、実施例8の食品品質改良剤を添加した場合(図14の右)が2111cm3、比較例の場合(図14の左)が2030cm3であった。
比容積は、実施例8の食品品質改良剤を添加した場合(図14の右)が5.80、比較例の場合(図14の左)が5.43であった。
実施例8の食品品質改良剤を添加した方が比容積が大きいことが確認された。これにより、グルテンにグリアジンを混合して加熱した場合も、60℃で長時間加熱することにより伸展性が増し製パン性が向上することが認められた。また、実施例8の食品品質改良剤は、加熱処理終了後2ヶ月常温で保管したものであるが、加熱により向上した伸展性が保持され、かつ腐敗も認められなかったために保存性に優れていることが明らかとなった。
図15は実施例9のグルテンを用いた食品食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図15の右)である。
なお、外観写真において、左は、グルテン8.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し3.5重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)である。
本実験例では、製パン材料の小麦粉として国産小麦粉(品種:ホクシン、タンパク質含量8.6%)を使用しているが、他の実施例で用いた強力粉とは生地性状が異なり、他の実施例の加水条件(170mL)を適用すると柔らかすぎてべたついた生地(水分量の多い状態)になったため、加水量の検討を行った上で、他の実施例とは加水量が異なる0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)150mLを添加する条件で調製した。また、使用した国産小麦粉はタンパク質含量が低いため、グルテン添加量を強力粉使用時よりも増やし、小麦粉に対し3.5重量%とした。
体積は、実施例9の食品品質改良剤を添加した場合(図15の右)が2240cm3、比較例の場合(図15の左)が1840cm3であった。
比容積は、実施例9の食品品質改良剤を添加した場合(図15の右)が6.42、比較例の場合(図15の左)が5.20であった。
実施例9の食品品質改良剤を添加した方が、未処理のグルテンを添加した場合よりパンの体積及び比容積が大きいことが明らかになった。これに伴い内相の柔らかさも増した。国産小麦粉は、タンパク質含量が低く、且つタンパク質の質も外国産とは異なるため、パンが膨らみにくい、食感が悪いという欠点がある。それを補うためにグルテンを添加したものが製パンに使用されているが、外国産強力粉使用のパンに比べて品質が劣り、改善の余地が残されていた。本発明による食品品質改良剤は、タンパク質含量が低く製パンに不向きな国産小麦粉に対しても利用可能であり、その添加により従来技術以上の製パン性向上効果をもたらすことが認められた。
図16は実施例10のグルテンとグルコースを用いた食品品質改良剤を添加したパンの外観写真(図16の右)である。
なお、外観写真において、中央はグルテン5.0g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し2.0重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)であり、左は製パン材料にグルテンを添加せずに焼成したパン(比較例)である。
本実験例では、製パン材料の小麦粉として、強力粉に全粒粉を30重量%混合したものを使用している。
体積は、実施例10の食品品質改良剤を添加した場合(図16の右)が2200cm3、加熱処理をしていないグルテンを添加した比較例の場合(図16の中央)が1960cm3であり、グルテンを添加していない比較例の場合(図16の左)が2000cm3であった。
比容積は、実施例10の食品品質改良剤を添加した場合(図16の右)が5.96、加熱処理をしていないグルテンを添加した比較例の場合(図16の中央)が5.21であり、グルテンを添加していない比較例の場合(図16の左)が5.33であった。
グルテンにグルコースを混合して加熱した実施例10の食品品質改良剤を添加した場合の方が、未処理のグルテンを添加した場合やグルテン無添加の場合より、パンの体積及び比容積が大きいことが確認された。
全粒粉を添加したパンは栄養学的に優れているものの、全粒粉の添加量が増すとパンの膨らみが悪く、重たくなり、食感も硬くなる傾向がある。全粒粉を30%混合した強力粉にグルテンを添加しないで焼成した場合(図16の左)より、未加熱のグルテンを添加した比較例(図16の中央)の場合の方が、体積・比容積とも小さく製パン性が若干劣っていた。従って、未処理のグルテンの添加によって全粒粉配合生地の製パン性の向上は認められなかったが、グルテンとグルコースを混合し60℃で長時間加熱することにより、生地の伸展性が増し製パン性が向上することが認められた。これは、グルテンとグルコースの反応物が大きく寄与していると考えられる。
図17は実施例11の精製した食品品質改良剤(グリアジンとグルコースを加熱処理後、透析により未反応のグルコースを除去した水溶性画分)を3.81g(粉の全量に対しタンパク質量が1.5重量%)添加したパンの外観写真(図17の右)である。
なお、外観写真において、中央はグリアジン3.75g(加熱処理をしていないもの、小麦粉に対し1.5重量%)を製パン材料に添加して焼成したパン(比較例)であり、左はグリアジンを製パン材料に添加せずに焼成したパン(比較例)である。なお、イーストの栄養源としての材料として砂糖12gをいずれのパンにも添加した。
体積は、実施例11の食品品質改良剤を添加した場合(図17の右)が2380cm3、比較例のグリアジン無添加区(図17の左)が1990cm3、グリアジン添加区(図17の中央)が2100cm3であった。
比容積は、実施例11の食品品質改良剤を添加した場合(図17の右)が6.52、比較例のグリアジン無添加区(図17の左)が5.36、グリアジン添加区(図17の中央)が5.71であった。
グリアジンにグルコースを混合して加熱した実施例11の食品品質改良剤を添加した場合の方が、未処理のグリアジンを添加した場合、グリアジンを添加しなかった場合より、パンの体積及び比容積が大きいことが確認された。
次に、実施例11の食品品質改良剤を用いたパンについて官能検査を行った。
官能検査は、一対比較法により、実施例11の食品品質改良剤添加区(図17の右のもの、以下Aという)、未処理のグリアジン添加区(図17の中央のもの、以下Bという)、小麦タンパク質(グリアジン)無添加区(図17の左のもの、以下Cという)の3つを内相の柔らかさについて評価し、検査員8名、各評価点を−3〜+3点で配分して行った。
その結果、A(+1.542)、B(−0.417)、C(−1.125)の順で、99%の信頼区間の有意差で食品品質改良剤添加区が最も柔らかいと判定された。
実施例11の食品品質改良剤は、精製したグリアジンとグルコースの反応生成物であるが、精製していない実施例5の食品品質改良剤よりも優れた製パン性向上効果を示した。
グリアジン45gとグルコース135gを0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)350mLに分散させた小麦タンパク質分散液に、密封容器内で、60℃にて2日の加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物は冷却後、蒸留水に対して透析して未反応グルコース等の低分子成分を除去し、凍結乾燥によって乾燥させ、乾燥状態の実施例12の食品品質改良剤を得た。この食品品質改良剤は室温にて保管した。実施例12の食品品質改良剤のグリアジンに結合したグルコースの含量をフェノール硫酸法で定量した結果、2.6%(重量)であった。
実施例12のグリアジンとグルコースを用いた食品品質改良剤を天ぷら衣に添加した場合の効果について評価した。
天ぷら衣の評価は、薄力粉を用いて揚げた天かすを作成し、この天かすを5名の検査員が食した際に感じるクリスピー感を評価することで行った。
天かすは、薄力粉19gに1.027g(タンパク質含量1g、粉の全量に対し5重量%)の実施例12の食品品質改良剤を混合したものを、蒸留水3に対し全卵1の割合(重量)で混合し、4℃に保った液40gに軽く混ぜて均一に分散させたものを、180℃のサラダ油に雫状に静かに滴下させて1分間揚げて作成した。揚げた天かすは、油を充分に切り室温まで冷却した後、ラップフィルムで覆った容器内で室温にて保管した。
なお、比較例として、食品品質改良剤を加えない薄力粉20gを用いた以外は同様の方法で作成した天かすのクリスピー感も評価した。
従って、実施例12の食品品質改良剤の添加により天ぷら衣のクリスピー感の持続効果が認められた。
実施例1のグルテンとグルコースを用いた食品品質改良剤(グルコース含量1.4%(重量))を添加したスポンジケーキを焼成し、得られたスポンジケーキの形状及びスポンジの物性を測定した。
スポンジケーキの材料としては、薄力粉120g、砂糖120g、全卵120g、実施例1の食品品質改良剤1.1gを蒸留水48gに溶解させた水溶液(タンパク質濃度2.3重量/体積%)を用いた。
スポンジケーキの焼成は共立て法で行った。全卵と砂糖を卓上型ミキサー(Sunbeam 12 Speed Mixmaster)を用いて、品温30℃を保持しながら5分間攪拌(速度目盛5)した。これに食品品質改良剤を含む水溶液の半分量を加えて、品温30℃を保持しながら2分間攪拌(速度目盛9)した。さらに、食品品質改良剤を含む水溶液の残り半分量を加えて、品温30℃を保持しながら3分間攪拌(速度目盛9)した。次に、薄力粉を加えて、ヘラで切るように85回軽く攪拌してバッターを得た。直径10.5cmの型枠4個に得られたバッター70gをそれぞれ流し込み、オーブン(三菱オーブンレンジRO−LF9)で180℃にて18分焼成した。冷却後スポンジケーキの体積、重量、比容積を求めた。
スポンジケーキは室温にて密封容器中で2日保管後、卓上型物性測定器(山電TPU−2S)を用いて硬さを測定した。各スポンジケーキを下からの高さ15mmに水平に切り、中央部から縦20mm、横20mm、高さ15mmに切り取ったもの6個を、硬さ測定用のサンプルとして用いた。硬さは、円筒形直径40mmのプランジャーを用い、クリアランス10mm、スピード5mm/秒の条件で測定した。
なお、食品品質改良剤を蒸留水に溶解させた水溶液を用いる代わりに、蒸留水48gを用いた以外は同様にして、食品品質改良剤を添加しないバッターを生成しスポンジケーキを焼成した。これを比較例とした。
従って、食品品質改良剤を添加することにより起泡性が向上し、バッター中に気泡がより多く含まれていることが確認された。
スポンジケーキの重量(g)は、実施例1の食品品質改良剤を添加した場合が61.25g、比較例の場合が60.75gであった。
スポンジケーキの比容積(cm3/g)は、実施例1の食品品質改良剤を添加した場合が3.65cm3/g、比較例の場合が3.39cm3/gであった。
スポンジケーキの高さ(mm)は、実施例1の食品品質改良剤を添加した場合が35.3mm、比較例の場合が34.0mmであった。
スポンジケーキの硬さ(N)は、各サンプル6個の平均値から求めた結果、実施例1の食品品質改良剤を添加した場合が6.10N、比較例の場合が8.17Nであった。
従って、実施例1の食品品質改良剤を添加することによりスポンジケーキの体積、比容積、高さが増大し、気泡をより多く含み膨らみが増大することが確認された。また、硬さの測定より、実施例1の食品品質改良剤を添加することによりスポンジケーキが柔らかくなることが認められた。
なお、実施例1の食品品質改良剤を添加する代わりにグルテン1.1gを添加した場合は、バッター比重が0.42(g/cm3)となり気泡をさらに多く含む結果が得られたが、気泡の保持力が弱く、焼成後はスポンジケーキ中央が陥没して形状を保てず、スポンジ状の生地も形成されなかった。従って、実施例1の食品品質改良剤の品質改良効果は、グルテンにグルコースが共有結合したことによって発揮されることが明らかとなった。
グルテン45gとグルコース135gを0.1%酢酸緩衝液(pH4.0)350mLに分散させた小麦タンパク質分散液を、密封容器内で、60℃にて2日の加熱処理を行い、加熱処理物を得た。加熱処理物は冷却後、蒸留水に対して透析して未反応グルコース等の低分子成分を除去し、可溶性画分を凍結乾燥によって乾燥させ、乾燥状態の実施例13の食品品質改良剤を得た。この食品品質改良剤は室温にて保管した。実施例13の食品品質改良剤のグルテンに結合したグルコースの含量をフェノール硫酸法で定量した結果、2.5%(重量比)であった。
実施例13のグルテンとグルコースを用いた食品品質改良剤を添加したうどんを作成し、作成されたうどんの表面の性状及び食感について評価した。
うどんは、中力粉99gに実施例13の食品品質改良剤を1.026g(タンパク質含量1g、粉の全量に対し1重量%)を添加した混合物に、食塩3gを42gの蒸留水に溶解させた食塩水を徐々に加えながら20分間捏ねて混捏生地を得た後、混捏生地を丸めてラップフィルムに包み、室温で30分間静置して熟成させた。熟成後、生地を伸ばして麺切機(Imsperia SP150)にて厚さ3mm、幅4mmの麺線とし、生うどんを得た。生うどんは、沸騰した湯で10分間茹でた後水洗して粗熱を取った。
なお、食品品質改良剤を添加した混合物の代わりに、中力粉100gを使用した以外は同様に製造したうどん(比較例7、無添加区)、食品品質改良剤を添加した混合物の代わりに、中力粉99gにグルテン1gを添加した混合物を使用した以外は同様に製造したうどん(比較例8、グルテン添加区)を比較例とした。
官能検査は、一対比較法により、実施例13の食品品質改良剤を添加した食品品質改良剤添加区(以下Aという)、グルテン添加区(以下Bという)、無添加区(以下Cという)の3つを茹でたうどんについて、検査員8名、各評価点を−3〜+3点で配分して評価した。
その結果、表面の滑らかさでは、A(+1.125)、B(−0.667)、C(−0.458)の順で、食品品質改良剤添加区が最も滑らかであると判定された。但し、AとB及びAとCの間では99%の信頼区間で有意差が認められたが、BとCの間では有意差は認められなかった。
硬さでは、B(+0.708)、C(−0.208)、A(−0.500)の順でグルテン添加区が最も硬く、食品品質改良剤添加区が最も柔らかいと判定された。但し、AとB及びBとCの間では99%の信頼区間で有意差が認められたが、AとCの間では有意差は認められなかった。
こしの強さでは、A(+0.333)、B(+0.292)、C(−0.625)の順で食品品質改良剤添加区が最もこしが強いと判定された。但し、AとC及びBとC間では99%の信頼区間で有意差が認められたが、AとBの間では有意差は認められなかった。
以上より、実施例13のグルテンとグルコースを用いた食品品質改良剤をうどんに添加することによって、麺表面をより滑らかにし、食感においては、表層を柔らかくしてこしを強くするような改善効果をもたらすことが認められた。
さらに、実験例12で得られた各うどんを、沸騰したお湯で5分間さらに茹でることにより、麺伸びの防止効果について検討した。その結果、比較例7のうどんは伸びた状態でこしが失われていた。比較例8のうどんでは若干伸びが防止されたものの、比較例7と差が殆ど認められなかった。一方、実施例13の食品品質改良剤を添加したうどんでは、こしが残っており麺伸び防止効果が認められた。
Claims (7)
- 小麦タンパク質をpH2.5〜8.0の溶媒に分散させた小麦タンパク質分散液を調製する小麦タンパク質分散液調製工程と、前記小麦タンパク質分散液を温度50〜100℃で2時間〜30日間加熱し加熱処理物を得る加熱処理工程と、を備えていることを特徴とする食品品質改良剤の製造方法。
- 前記小麦タンパク質が、グリアジンとグルテニンとを含有し、前記グリアジンを25〜100重量%好ましくは30〜100重量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の食品品質改良剤の製造方法。
- 前記小麦タンパク質分散液調製工程において、前記小麦タンパク質分散液に糖類の一種以上を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の食品品質改良剤の製造方法。
- 前記糖類が、還元糖であることを特徴とする請求項3に記載の食品品質改良剤の製造方法。
- 前記小麦タンパク質分散液調製工程において、前記溶媒のpHが、食酢,果汁の1種以上で調整されていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の食品品質改良剤の製造方法。
- 前記加熱処理工程で得られた前記加熱処理物から低分子量成分を除去する低分子量成分除去工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1に記載の食品品質改良剤の製造方法。
- 請求項1乃至6の内いずれか1に記載の製造方法で製造されていることを特徴とする食品品質改良剤。
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