JP4128074B2 - 核酸の増幅方法 - Google Patents

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    • C12Q1/6844Nucleic acid amplification reactions
    • C12Q1/6853Nucleic acid amplification reactions using modified primers or templates

Description

技術分野
本発明は、臨床分野において有用な標的核酸の検出方法及び遺伝子工学分野において有用なDNAの合成方法に関し、鋳型となる核酸の増幅方法および該方法で増幅された標的核酸の検出方法に関する。
背景技術
遺伝子工学分野の研究においてDNAの合成は種々の目的に使用される。このうちオリゴヌクレオチドのような短鎖のDNAの合成を除けば、そのほとんどはDNAポリメラーゼを利用した酵素的方法により実施されている。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)があるが、それは米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,800,159号に詳細に記述されている。もう一つの例としては、トレンズ イン バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology)第10巻、146〜152頁(1992)に記載の当該方法と逆転写酵素反応を組合わせた逆転写PCR法(RT−PCR法)が挙げられる。上記の方法の開発により、DNAから、若しくはRNAから目的とする領域を増幅することが可能になった。
これらのDNA合成方法は、目的とするDNA領域を増幅させるために例えば、二本鎖鋳型DNAの一本鎖への解離(変性)、一本鎖鋳型DNAへのプライマーのアニーリング、プライマーからの相補鎖合成(伸長)の3つのステップからなる反応により、もしくは、”シャトルPCR”(『PCR法最前線』、「蛋白質核酸 酵素」別冊、第41巻、第5号、425頁〜428頁(1996))と呼ばれる、前述の3ステップ反応のうちプライマーのアニーリングおよび伸長のステップを同一温度で行なう2ステップ反応により実施される。
さらに、別法としては、1989年6月14日に公開された欧州特許出願第320,308号に記述されているリガーゼ連鎖反応(LCR;ligase chain reaction)法、あるいはPCRプロトコールズ(PCR Protocols,Academic Press.Inc.,1990)245〜252頁に記述されている転写増幅システム(TAS;transcription−based amplification system)法が挙げられる。上記4法は、次の増幅サイクルのための一本鎖標的分子を再生するために、高温から低温の反応を何回も繰り返す必要がある。このように温度によって反応が制約されるため、反応系は不連続な相またはサイクルで行なう必要がある。
従って、上記の方法には広い温度範囲で、かつ、厳密な温度調整を経時的に行なうことのできる高価なサーマルサイクラーを使用することが必要となる。また、該反応は、2種類〜3種類の温度条件で行なうため設定温度にするために要する時間が必要であり、そのロス時間はサイクル数に比例して増大していく。
そこで、上記問題点を解決すべく等温状態で実施可能な核酸増幅法が開発された。例えば、特公平7−114718号に記載の鎖置換型増幅(SDA;strand displacement amplification)法、自立複製(3SR;self−sustained sequence replication)法、日本国特許番号第2650159号に記載の核酸配列増幅(NASBA;nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(transcription−mediated amplification)法、日本国特許番号第2710159号に記載のQβレプリカーゼ法、さらに米国特許番号第5,824,517号、国際公開第99/09211号パンフレット、国際公開第95/25180号パンフレットあるいは、国際公開第99/49081号パンフレット等に記載の種々の改良SDA法が挙げられる。米国特許番号第5,916,777号には等温状態でのオリゴヌクレオチドの酵素的合成方法が記載されている。これらの等温核酸増幅法またはオリゴヌクレオチド合成法の反応においては、プライマーの伸長や、一本鎖伸長生成物(または元の標的配列)へのプライマーのアニーリングや、それに続くプライマーの伸長は、一定温度で保温された反応混合物中で同時に起こる。
これらの等温核酸増幅法のうち最終的にDNAが増幅される系、例えば、SDA法は、DNAポリメラーゼと制限エンドヌクレアーゼを介する二本鎖の置換による、試料中の標的核酸配列(およびその相補鎖)の増幅法であるが、該方法では、増幅に使用するプライマーは4種類必要であり、その内の2種類は、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含むように構築する必要がある。また、該方法では、DNA合成のための基質として、修飾されたデオキシリボヌクレオチド3リン酸、例えばα位のリン酸基の酸素原子が硫黄原子(S)に置換された(α−S)デオキシリボヌクレオチド3リン酸を大量に用いる必要があり、ルーチンワークで反応を行なう遺伝子検査等においては、そのランニングコストが深刻な問題となってくる。さらに該方法では、増幅されたDNA断片中に上記の修飾ヌクレオチド、たとえば(α−S)デオキシリボヌクレオチドが含まれるため、例えば、増幅後のDNA断片を制限酵素長多型(RFLP;restriction enzyme fragment length polymorphism)解析に供しようとする場合に、該断片が制限酵素で切断できないことがある。
また、米国特許番号第5,824,517号記載の改良SDA法は、RNAとDNAから構成され、少なくとも3’末端にDNAが配置された構造を必須要件とするキメラプライマーを使用するDNA増幅方法である。また、国際公開第99/09211号パンフレットに記載の改良SDA法は、3’突出末端を生じさせる制限酵素が必要である。また、国際公開第95/25180号パンフレットに記載の改良SDA法は、少なくとも2組のプライマー対を必要とする。さらに、国際公開第99/49081号パンフレットに記載の改良SDA法は、少なくとも2組のプライマーと少なくとも1種類の修飾デオキシリボヌクレオチド3リン酸を必要とする。一方、米国特許番号第5,916,777号は、オリゴヌクレオチドを合成するために、3’末端にリボヌクレオチドを有するプライマーを使用してDNAを合成し、反応終了後にエンドヌクレアーゼによりプライマー伸長鎖中のプライマーと伸長鎖の間にニックをいれて分離させ、テンプレートを消化し、さらにプライマーを回収して再利用するというものである。該方法では、プライマーを再利用する際には反応系よりプライマーを単離したうえで鋳型を再度アニーリングさせる必要がある。また、国際公開第00/28082号パンフレットに記載のLAMP(Loop−mediated Isothermal Amplification)法は増幅に4種類のプライマーを必要とし、また、増幅産物は増幅の標的とされた領域が繰り返された、サイズの一定しないDNAである。
上記のように従来の等温核酸増幅法はまだまだ種々の問題をかかえており、低ランニングコストで、かつ結果的に得られたDNA断片をさらに遺伝子工学的な処理に使用することが可能な核酸の増幅方法が求められていた。
発明の目的
本発明の主な目的は、キメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用するDNA合成反応により試料中の標的核酸の高感度、特異的に増幅する標的核酸の増幅方法、該方法によって得られた増幅断片の検出方法、該増幅方法を用いた標的核酸の製造方法及びこれらの方法に用いるキメラオリゴヌクレオチドプライマーを提供することにある。
発明の概要
本発明者らは鋭意研究の結果、リボヌクレオチドが3’末端又は3’末端側に配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマー、エンドリボヌクレアーゼ、およびDNAポリメラーゼの存在下に目的とする領域のDNAを増幅する方法を見出し、優れた遺伝子増幅反応系を構築し、本発明を完成するに至った。該方法は、キメラオリゴヌクレオチドプライマーを用いる核酸増幅方法であり、本願明細書ではICAN(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)法と称する。
本発明の第1の発明は、標的核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる核酸、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも1種類のプライマー、およびRNaseHを混合して反応混合物を調製する工程;ここで該プライマーは、鋳型となる核酸の塩基配列に実質的に相補的であり、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有し、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマーであり;および、
(b)反応産物を生成するのに充分な時間、反応混合物をインキュベートする工程、
を包含することを特徴とする核酸の増幅方法に関する。
本発明の第1の発明においては、さらに鋳型となる核酸の塩基配列に実質的に相同な配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーを含有する反応混合物を使用することができる。
本発明の第2の発明は、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる核酸を該核酸の塩基配列に実質的に相補的な少なくとも1種類のプライマーとDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、二本鎖核酸を合成する工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
(b)RNaseHの存在下、前記工程で得られる二本鎖核酸を鋳型とし、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、置換鎖と二本鎖核酸を合成する工程;および、
(c)(b)工程で得られる二本鎖核酸が鋳型として(b)工程に再利用される工程;
を包含することを特徴とする核酸の増幅方法に関する。
本発明の第3の発明は、少なくとも2種類のプライマーを使用する、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる核酸を該核酸の塩基配列に実質的に相補的な少なくとも1種類のプライマーとDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成する工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され;
(b)RNaseHの存在下、前記工程で得られる二本鎖核酸を鋳型とし、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、置換鎖と二本鎖核酸を合成する工程;
(c)(b)工程で得られる二本鎖核酸が鋳型として(b)工程に再度利用される工程;
(d)(b)工程で得られる置換鎖を鋳型として(a)工程で使用されたプライマーとは異なる少なくとも1種のプライマーとDNAポリメラーゼにより処理して、置換鎖に相補的なプライマー伸長鎖を合成する工程;ここで該(a)工程で使用されたプライマーとは異なるプライマーは置換鎖の塩基配列に実質的に相補的で、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され;
(e)RNaseHの存在下、前記工程で得られる二本鎖核酸を鋳型とし、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、置換鎖と二本鎖核酸を合成する工程;および、
(f)(e)工程で得られる二本鎖核酸が鋳型として(e)工程に再度利用される工程;
を包含することを特徴とする核酸の増幅方法に関する。
本発明の第2、3の発明においては、DNAポリメラーゼとして鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用することができる。
本発明の第4の発明は、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
(b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
(c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、鋳型とプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸を得る工程;
を包含することを特徴とする標的核酸の増幅方法に関する。
本発明の第5の発明は、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
(b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
(c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖がアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
を包含することを特徴とする標的核酸の増幅方法に関する。
本発明の第6の発明は、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
(b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;
(c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
(d)(c)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;および、
(e)(d)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸が(d)工程で再利用される工程;
を包含することを特徴とする標的核酸の増幅方法に関する。
本発明の第7の発明は、核酸を増幅する方法において、
(a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
(b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;
(c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
(d)(c)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、鋳型とプライマー伸長鎖よりなる二本鎖核酸を得る工程;
(e)(d)工程で得られる鋳型とプライマー伸長鎖よりなる二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
(f)(e)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して置換鎖を合成する工程;
を包含することを特徴とする標的核酸の増幅方法に関する。
第4〜7の発明に使用されるエンドヌクレアーゼとしては、エンドリボヌクレアーゼ、例えばRNaseHのようなエンドリボヌクレアーゼを使用することができる。
RNaseHを使用する上記の第1〜7の発明においては、大腸菌、サーモトガ属、サーマス属、ピロコッカス属、アルカエオグロバス属、バチルス属等の細菌に由来するRNaseHが使用されることができる。
上記の第1〜第7の発明において、標的核酸の塩基配列中の特異的増幅に適した領域としては200bp以下の鎖長の領域が例示される。
本発明の第1〜第7の発明には、下記一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーを用いることができる。
一般式:5’−dN−N−dN−3’
(a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
該キメラオリゴヌクレオチドプライマーとしては、cが0であるプライマー、ならびにヌクレオチドアナログがデオキシリボイノシンヌクレオチド、あるいはデオキシリボウラシルヌクレオチドであり、修飾リボヌクレオチドが(α−S)リボヌクレオチドであるプライマーが例示される。さらにこれらのキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用する場合には、当該プライマーに適したDNA伸長反応温度でDNA伸長反応が実施される。
上記の第1〜第7の発明の増幅方法は、鋳型となる核酸と該核酸の塩基配列に実質的に相補的なキメラオリゴヌクレオチドプライマーを、当該核酸と当該プライマーのアニーリングを増強する物質を含有するアニーリング溶液中でアニーリングさせる工程を包含することができる。上記のアニーリング溶液としてはスペルミジン及び/又はプロピレンジアミンを含有するものが例示される。当該アニーリング処理は、鋳型となる核酸と該核酸の塩基配列に実質的に相補的なキメラオリゴヌクレオチドプライマーを含有するアニーリング溶液を90℃以上で保温した後、増幅反応が実施される温度以下に冷却して行うことができる。
第1〜第7の発明の増幅反応は、ビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有する緩衝液中で実施することができる。
上記の第1〜第7の発明においては、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとして、例えば、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルスステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス(Bacillus cardotenax)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼを使用できる。
第1〜第7の発明の一態様として、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしてバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼとして大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHを使用する態様が挙げられる。該RNaseHとしては大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHが例示される。
第1〜第7の発明にはエンドヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを使用することができる。当該DNAポリメラーゼとしてはバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼが使用でき、該DNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質の存在下に増幅反応を実施することができる。BcaDNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質としてはマンガンイオンが例示される。
第1〜第7の発明の標的核酸の増幅方法は、DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質の存在下で実施することができる。DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質としてはホスホノギ酸が例示される。
本発明の第1〜第7の発明は、一本鎖または二本鎖のDNAを鋳型として実施することができ、鋳型となる核酸が二本鎖DNAである場合には、これを一本鎖DNAにする工程の後に増幅反応を実施することができる。
上記の鋳型となる核酸はRNAを鋳型とした逆転写反応によって得られたcDNAであってもよく、RNAを鋳型とした逆転写反応によってcDNAを合成する工程の後に増幅反応を実施する態様が例示される。当該逆転写反応には逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼを使用することができ、例えば、逆転写反応と鋳型に相補的な伸長鎖の合成とを、逆転写酵素活性と鎖置換活性とを有する1種のDNAポリメラーゼにより実施することができる。このようなDNAポリメラーゼとしては、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、もしくは、バチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼが例示される。
上記の第1〜第7の発明において、その増幅反応は等温条件下に行なうことができ、また、デオキシウリジン3リン酸またはその誘導体のようなデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログの存在下に行うことができる。
本発明の第8の発明は、核酸増幅用組成物であって、
(a)鋳型となる核酸を該核酸の塩基配列に実質的に相補的な少なくとも1種類のプライマー;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置されている、
(b)エンドヌクレアーゼ;および、
(c)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用組成物、に関する。
本発明の第9の発明は、核酸増幅用組成物であって、
(a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な少なくとも2種類のプライマー;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され;
(b)エンドヌクレアーゼ;および、
(c)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用組成物に関する。
本発明の第10の発明は、鋳型となる核酸、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも1種類のプライマー、およびエンドヌクレアーゼを混合して得られる核酸増幅用組成物であって、該プライマーが鋳型となる核酸の塩基配列に実質的に相補的であり、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有し、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマーである組成物に関する。
本発明の第11の発明は、鋳型となる核酸、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも2種類のプライマー、およびエンドヌクレアーゼを混合して得られる核酸増幅用組成物であって、該プライマーが鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的であり、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有し、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマーである組成物に関する。
上記の本発明の第8〜11の発明の組成物に含有されるプライマーとしては、下記一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーが挙げられる。
一般式:5’−dN−N−dN−3’
(a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
該キメラオリゴヌクレオチドプライマーとしては、cが0であるプライマー、ならびにヌクレオチドアナログがデオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシウラシルヌクレオチドであり、修飾リボヌクレオチドが(α−S)リボヌクレオチドであるプライマーが例示される。
上記の第8〜第11の発明の組成物は核酸の増幅反応に適した緩衝成分を含有することができ、例えば、ビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有することができる。
上記の第8〜11の発明としては、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとして大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼを含有する組成物が挙げられる。また、エンドヌクレアーゼとしては、エンドリボヌクレアーゼ、例えばRNaseHのようなエンドリボヌクレアーゼを使用することができる。上記RNaseHとしては大腸菌(Escherichia coli)、サーモトガ(Thermotoga)属、サーマス(Thermas)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、アルカエオグロバス(Archaeoglobus)属、バチルス(Bacillus)属等の細菌に由来のものが例示される。
第8〜11の発明の組成物の一態様としては、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしてバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼとして大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHを含有するするものが挙げられる。該RNaseHとしては大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHが例示される。
第8〜11の発明の組成物はエンドヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを含有するものであってもよい。当該DNAポリメラーゼとしてはバチルスカルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼが使用でき、該DNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質を共存させることができる。BcaDNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質としてはマンガンイオンが例示される。
第8〜11の発明の組成物は、DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質を含有することができる。DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質としてはホスホノギ酸が例示される。さらに、当該組成物はデオキシウリジン3リン酸またはその誘導体のようなデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログを含むことができる。
本発明の第12の発明は、上記の第1〜3の発明の核酸の増幅方法に使用する核酸増幅用組成物であって、
(a)RNaseH;および、
(b)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用組成物に関する。
また、本発明の第13の発明は、上記の第4〜7の発明の核酸の増幅方法に使用する核酸増幅用組成物であって、
(a)エンドヌクレアーゼ;および、
(b)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用組成物に関する。
第13の発明の組成物に使用されるエンドヌクレアーゼはエンドリボヌクレアーゼであることができ、例えば、RNaseHが例示される。
RNaseHを含有する第12、13の発明の組成物には、RNaseHとして大腸菌由来RNaseH、サーモトガ属細菌由来RNaseH、サーマス属細菌由来RNaseH、ピロコッカス属細菌由来RNaseH、アルカエオグロバス属由来RNaseH、及びバチルス属細菌由来RNaseHから選択されるRNaseHを使用することができる。
第12、13の発明の組成物は、さらに核酸増幅反応に適した緩衝成分を含有することができ、例えば、ビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有するものが例示される。
上記の第12、13の発明としては、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとして大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼを含有する組成物が挙げられる。また、エンドヌクレアーゼとしては、エンドリボヌクレアーゼ、例えばRNaseHのようなエンドリボヌクレアーゼを使用することができる。上記RNaseHとしては大腸菌、サーモトガ属、サーマス属細菌由来RNaseH、ピロコッカス属、アルカエオグロバス属、バチルス属等の細菌に由来のものが例示される。
第12、13の発明の組成物の一態様としては、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしてバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼとして大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHを含有するするものが挙げられる。該RNaseHとしては大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHが例示される。
第12、13の発明の組成物はエンドヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを含有するものであってもよい。当該DNAポリメラーゼとしてはバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼが使用でき、該DNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質を共存させることができる。BcaDNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質としてはマンガンイオンが例示される。
第12、13の発明の組成物は、DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質を含有することができる。DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質としてはホスホノギ酸が例示される。さらに、当該組成物はデオキシウリジン3リン酸またはその誘導体のようなデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログを含むことができる。
本発明の第14の発明は、本発明の第1〜3の発明の核酸の増幅方法に使用する核酸増幅用キットであって、
(a)RNaseH;および、
(b)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用キットに関する。
本発明の第15の発明は、本発明の第4〜7の発明の核酸の増幅方法に使用する核酸増幅用キットであって、
(a)エンドヌクレアーゼ;および、
(b)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
を含有することを特徴とする核酸増幅用キットに関する。
第15の発明のキットにおいては、エンドヌクレアーゼとしてエンドリボヌクレアーゼを使用することができ、例えばRNaseHが例示される。
RNaseHを含有する上記の第14、15の発明のキットとしては、大腸菌由来RNaseH、サーモトガ属細菌由来RNaseH、サーマス属細菌由来RNaseH、ピロコッカス属細菌由来RNaseH、アルカエオグロバス属由来RNaseH、及びバチルス属細菌由来RNaseHから選択されるRNaseHを含有するキットが例示される。
第14、15の発明のキットは、さらに核酸増幅反応に適した緩衝液を含有してもよく、例えばビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有することができる。また、鋳型となる核酸と該核酸の塩基配列に実質的に相補的なプライマーのアニーリングを増強する物質を含有するアニーリング溶液を含有する物であってもよく、当該アニーリング溶液としてはスペルミジン及び/又はプロピレンジアミンを含有するものが例示される。
本発明の第14、15の発明のキットに含有される鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしては、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼが例示される。
第14、15の発明のキットの一態様としては、バチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼと大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHとを含有するキットが例示される。該RNaseHとしては大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHが挙げられる。
本発明の第14、15の発明のキットはエンドヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを含有するものであってもよい。当該DNAポリメラーゼとしてはバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼが使用でき、該DNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質を含有させることができる。BcaDNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を発現させる物質としてはマンガンイオンが例示される。
第14、15の発明のキットは、DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質を含有することができる。DNAポリメラーゼの逆転写活性を阻害する物質としてはホスホノギ酸が例示される。さらに、当該キットはデオキシウリジン3リン酸またはその誘導体のようなデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログを含むことができる。
本発明の第16の発明は、本発明の第1〜3の発明の核酸の増幅方法に使用する核酸増幅用キットであって、パッケージされた形態において、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びRNaseHの使用を指示した指示書を含むことを特徴とする核酸増幅用キットに関する。
本発明の第17の発明は、本発明の第4〜7の発明の核酸の増幅方法に使用されるキットであって、パッケージされた形態において、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼの使用を指示した指示書を含むことを特徴とする核酸増幅用キットに関する。
本発明の第18の発明は、包装材と該包装材に封入された核酸増幅用試薬からなる製造品であって、該核酸増幅用試薬が鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及び/又はRNaseHを含有し、該包装材に賦されたラベル又は該包装材に添付された指示書に前記核酸増幅用試薬が等温での核酸増幅に使用できることが表示してなる核酸増幅用試薬の製造品に関する。
本発明の第19の発明は、包装材と該包装材に封入された核酸増幅用試薬からなる製造品であって、該核酸増幅用試薬が鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼを含有し、該包装材に賦されたラベル又は該包装材に添付された指示書に前記核酸増幅用試薬が等温での核酸増幅に使用できることが表示してなる、核酸増幅用試薬の製造品に関する。
本発明の第20の発明は、試料中の標的核酸を検出するための方法であって、
(a)本発明の第1〜7の発明の核酸の増幅方法により核酸を増幅する工程;及び
(b)(a)工程により増幅された標的核酸を検出する工程;
を包含することを特徴とする標的核酸の検出方法に関する。
本発明の第20の発明の検出方法においては、得られる増幅核酸を検出用プローブを用いて検出する工程を包含することができる。当該プローブはあらかじめ標識物質により標識されているプローブであってもよく、例えば、消光状態になるような距離で配置された2種類以上の蛍光物質で標識されたRNAプローブを使用することができる。
本発明の第21の発明は、上記の第20の発明に使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。当該キメラオリゴヌクレオチドプライマーとしては、例えば下記一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーが挙げられる。
一般式:5’−dN−N−dN−3’
(a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
該キメラオリゴヌクレオチドプライマーとしては、cが0であるプライマー、ならびにヌクレオチドアナログがデオキシリボイノシンヌクレオチド、あるいはデオキシリボウラシルヌクレオチドであり、修飾リボヌクレオチドが(α−S)リボヌクレオチドであるプライマーが例示される。
本発明の第21の発明のプライマーとしては、病原微生物検出用、疾病関連遺伝子検出用のプライマーが挙げられ、腸管出血性大腸菌、ボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌、結核菌、クラミジア、パピローマウイルス、C型肝炎ウイルス、ウイロイド等の病原性微生物検出用のキメラオリゴヌクレオチドプライマーも本発明に包含される。
本発明の第22の発明は、配列表の配列番号31〜34、47、48、51〜53、64〜72、84、85、113、114、130、131でそれぞれ表される核酸配列を有する腸管出血性大腸菌検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第23の発明は、配列表の配列番号59、60、119、120、122、123でそれぞれ表される核酸配列を有するウイロイド検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第24の発明は、配列表の配列番号116、117でそれぞれ表される核酸配列を有するボツリヌス菌検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第25の発明は、配列表の配列番号96、97でそれぞれ表される核酸配列を有するパピローマウイルス検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第26の発明は、配列表の配列番号101〜102、138〜139、200〜201、205〜206でそれぞれ表される核酸配列を有するC型肝炎ウイルス検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第27の発明は、配列表の配列番号136、137でそれぞれ表される核酸配列を有する黄色ブドウ球菌検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第28の発明は、配列表の配列番号155〜156、159〜162、194〜195でそれぞれ表される核酸配列を有する結核菌検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第29の発明は、配列表の配列番号157〜158、203〜204でそれぞれ表される核酸配列を有するクラミジア検出用キメラオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
本発明の第30の発明は、上記の本発明の第1〜5の発明の核酸の増幅方法に使用されるキットであって、第21〜29の発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを含有することを特徴とする核酸増幅用キットに関する。
本発明の第31の発明は、上記の本発明の第20の発明の標的核酸の検出方法に使用されるキットであって、第21〜29の発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを含有することを特徴とする標的核酸の検出用キットに関する。
本発明の第32の発明は、本発明の第20の発明の標的核酸の検出方法に使用されるプローブに関する。
本発明の第33の発明は、本発明の第1〜7の発明の核酸の増幅方法により増幅された核酸にハイブリダイズするプローブに関する。
本発明の第34の発明は、本発明の第21〜29の発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーから選択されるプライマーで増幅される領域にハイブリダイズするプローブに関する。
第32〜34の発明のプローブはあらかじめ標識物質により標識されているプローブであってもよく、例えば、消光状態になるような距離で配置された2種類以上の蛍光物質で標識されたRNAプローブであることができる。
本発明の第35の発明は、本発明の第20の発明の標的核酸の検出方法に使用されるキットであって、本発明の第32〜34の発明のプローブを含有することを特徴とする。
本発明の第36の発明は、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用し、鋳型交換反応を行う工程を包含する核酸の増幅方法に関する。
本発明の第36の発明に使用される、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしては、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼが例示される。
本発明の第37の発明は、核酸を所定の領域に整列させた核酸固定物を作製するための方法であって、
(a)上記の本発明の第1〜7の発明の核酸の増幅方法によって固定化すべき核酸を増幅する工程;および、
(b)(a)工程で増幅された核酸を所定の領域に整列させて固定化する工程;
を包含することを特徴とする核酸固定物の作製方法に関する。
本発明の第38の発明は、上記の第37の発明の方法で作製された、核酸を所定の領域に整列させた核酸固定物に関する。
本発明の第39の発明は、核酸を大量に製造する方法であって、
(a)上記の本発明の第1〜7の発明の核酸の増幅方法によって核酸を増幅する工程;及び、
(b)(a)工程で増幅された核酸を採取する工程;
を包含することを特徴とする核酸の大量製造方法に関する。
本発明の第40の発明は、核酸を増幅するための方法であって、
(a)増幅しようとする配列を含むDNAあるいはRNAを複製し、鋳型となる核酸を調製する工程;及び、
(b)(a)で得られた鋳型となる核酸を第1〜7の発明の核酸の増幅方法で増幅する工程;
を包含することを特徴とする核酸の増幅方法に関する。
本発明の第41の発明は、核酸の塩基配列を決定するための方法であって、第1〜第7、39、40の発明の方法の、核酸を増幅する工程を包含することを特徴とする核酸の塩基配列の決定方法に関する。
発明の詳細な説明
本明細書においてデオキシリボヌクレオチド(本明細書中ではdNとも記載する)とは、糖部分がD−2−デオキシリボースで構成されたヌクレオチドのことをいい、例えば、塩基部分にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを有するものが挙げられる。さらに、7−デアザグアノシン等の修飾塩基を有するデオキシリボヌクレオチドやデオキシイノシンヌクレオチドのようなデオキシリボヌクレオチドアナログも上記のデオキシリボヌクレオチドに包含される。
本明細書においてリボヌクレオチド(本明細書中ではNとも記載する)とは、糖部分がD−リボースで構成されたヌクレオチドのことをいい、塩基部分にアデニン、シトシン、グアニン、ウラシルを有するものが挙げられる。さらに、当該リボヌクレオチドには修飾リボヌクレオチドが包含され、例えばα位のリン酸基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた修飾リボヌクレオチド[(α−S)リボヌクレオチド、(α−S)Nとも記載する]やこの他の誘導体等も含まれる。
本明細書においてキメラオリゴヌクレオチドプライマーとは、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含有するプライマーのことを言う。該プライマーはヌクレオチドアナログおよび/または修飾ヌクレオチドを含有していてもよい。
本発明に使用するキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、該プライマーの3’末端又は3’末端側にリボヌクレオチドを配置し、本発明の方法において核酸鎖が伸長でき、エンドヌクレアーゼで切断でき、鎖置換反応を行うことができるものであれば、いずれもが本発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーに包含される。
本明細書において3’末端側とは、核酸、例えば、プライマーにおいてその中央より3’末端にかけての部分を指す。同様に5’末端側とは、核酸においてその中央より5’末端にかけての部分を指す。
本明細書においてエンドヌクレアーゼとは、鋳型核酸にアニーリングした上記キメラオリゴヌクレオチドプライマーよりDNAの伸長を行って生成した二本鎖DNAに作用して、該プライマーのリボヌクレオチド部分を特異的に切断するものであればよい。
本明細書においてDNAポリメラーゼとは、DNA鎖を鋳型として新たなDNA鎖を合成する酵素のことを言い、天然型のDNAポリメラーゼの他、前記活性を有する変異体酵素も包含される。当該酵素としては、例えば鎖置換(Strand displacement)活性を有するDNAポリメラーゼ、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有していないDNAポリメラーゼ、逆転写酵素活性やエンドヌクレアーゼ活性を併せ持つDNAポリメラーゼが挙げられる。
本明細書において「鎖置換活性」とは、鋳型となる核酸配列に従ってDNA複製を行う際、DNA鎖を置き換えながら進行し、鋳型鎖にアニーリングしている相補鎖を遊離させる、即ち鎖置換(strand displacement)することができる活性のことをいう。また、本明細書においては、鎖置換により鋳型となる核酸配列から遊離したDNA鎖のことを「置換鎖」と称する。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明に使用するキメラオリゴヌクレオチドプライマー
本発明の方法において使用されるプライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド及びヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである。該プライマーには未修飾リボヌクレオチドおよび/または修飾リボヌクレオチドを含有するオリゴリボヌクレオチドプライマーも含まれる。
本発明の方法において使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸の塩基配列の一部に実質的に相補的な塩基配列を有し、使用される条件において、DNA鎖の伸長に寄与することができ、さらに、その3’末端又は3’末端側にリボヌクレオチドが配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマーである。当該プライマーは通常、増幅しようとする領域の上流、すなわち鋳型核酸上の増幅しようとする領域に対応する塩基配列の3’側部分に相補的に設計される。なお、ここで「実質的に相補的な塩基配列」とは、使用される反応条件において鋳型となるDNAにアニーリング可能な塩基配列を意味する。
本発明の方法において使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは1以上の修飾リボヌクレオチドを含有するものであってもよい。即ち、本明細書においてリボヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、エンドヌクレアーゼにより認識あるいは切断されるものであれば、未修飾リボヌクレオチドおよび/または修飾リボヌクレオチドのいずれであってもよく、そのような未修飾あるいは修飾リボヌクレオチドのいずれもが包含される。すなわち、本発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーには、当該プライマーの機能を失わない範囲で未修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチドを使用することができ、さらにこれらを組合せて使用することができる。このような修飾リボヌクレオチドとしては、特に限定するものではないが、たとえば、リン酸基に結合する酸素原子が硫黄原子に置換された(α−S)リボヌクレオチドや、リボースの2位の水酸基がメトキシ基に置換されたリボヌクレオチドが挙げられる。このような修飾リボヌクレオチドを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、例えば、米国特許第5,003,097号記載の硫化反応試薬(グレンリサーチ社製)を用いた方法で調製した(α−S)リボヌクレオチド3リン酸、あるいは2−OMe−RNA−CE ホスホアミダイド試薬(グレンリサーチ社製)を用いて作製することができる。
また、エンドヌクレアーゼによる切断に耐性を付与するような性質の修飾リボヌクレオチドを含有し、本発明の増幅方法に使用できるキメラオリゴヌクレオチドプライマーを設計してもよく、この様なプライマーは、増幅反応工程におけるエンドヌクレアーゼの切断位置を制御し得る点において有用である。
本発明の方法で使用するキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、増幅後のDNA断片を一本鎖もしくは二本鎖のいずれの形態で得たいかによって1種類もしくは2種類を使い分けることができる。すなわち、一本鎖DNAが望まれる場合には1種類のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを、また、二本鎖が望まれる場合には2種類のプライマーが使用される。
本発明の方法において使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、特に限定するものではないが、約12ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの長さのものが好ましい。さらに好ましくは、約15ヌクレオチドから約40ヌクレオチドの長さのプライマーである。その塩基配列は使用される反応条件において鋳型核酸にアニーリングするように、実質的に鋳型核酸に相補的な配列であることが好ましい。該プライマーは、後に示す段階で使用されるエンドヌクレアーゼにより認識される配列を3’末端又は3’末端側に含む。
本発明を何ら限定するものではないが、例えば、下記一般式で表す構造をもつオリゴヌクレオチドを本発明のDNA合成方法にプライマーとして使用することができる。
一般式:5’−dN−N−dN−3’
(a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
例えば、上記一般式においてa=11以上の任意の整数で、b=1、c=0のキメラオリゴヌクレオチドプライマー、b=2、c=0のキメラオリゴヌクレオチドプライマー、b=3〜5、c=0のキメラオリゴヌクレオチドプライマー、さらにb=2、c=0〜5のキメラオリゴヌクレオチドプライマー等がいずれも本発明に好適に使用できる。即ち、本発明の方法に用いるキメラオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端又は3’末端側のリボヌクレオチドの長さは、好ましくは1mer〜15mer、さらに好ましくは、1mer〜10mer、特に好ましくは1mer〜5merである。また、上記一般式中のcの数は、特に限定はなく、本発明の方法に使用できる数を選択すればよいが、通常5以下が好適であり、4、3、2、1、の順に反応結果が良く、特にc=0の場合が最も反応効率がよい。
本発明に使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、該プライマーよりDNAポリメラーゼで伸長されたDNA鎖(プライマー伸長鎖)に含まれるリボヌクレオチド含有部位がエンドヌクレアーゼで認識あるいは切断されるような構造を有しており、当該リボヌクレオチドはその3’末端又は3’末端側に配置されている。本発明を特に限定するものではないが、例えば、鋳型核酸にアニーリングした、上記の一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーよりDNAの伸長を行って生成した二本鎖DNAにRNaseHを作用させた場合には、上記キメラオリゴヌクレオチドプライマーのリボヌクレオチド部分が切断され、上記オリゴヌクレオチドプライマーと伸長により合成されたDNA鎖の間にニックの入った二本鎖DNAが生じる。さらに、該ニックの入った部位からDNAポリメラーゼにより鎖置換反応がおこる。従って、プライマーの3’末端から核酸鎖を伸長させることができ、エンドヌクレアーゼにより切断されることができ、そしてDNAポリメラーゼにより鎖置換反応ができるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは全て本発明の方法に使用することができる。さらに、本発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーには、その3’末端がDNAポリメラーゼによる伸長が不可能な形に修飾されており、エンドヌクレアーゼによる切断によって生じた3’末端からDNAの伸長が行われるものが包含される。
また、上記キメラオリゴヌクレオチドプライマーの5’末端側にはRNAポリメラーゼのプロモーター配列を含んでいてもよい。該RNAポリメラーゼとしては、T7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼが例示される。
さらに本発明の方法において使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーはヌクレオチドアナログやその他の物質を含有するものであってもよい。即ち、本発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーには、DNAポリメラーゼによってその3’末端からポリメラーゼ伸長反応せしめる、プライマーの機能を失わない範囲で1以上のヌクレオチドアナログを含有させることができ、さらに、当該ヌクレオチドアナログは複数の種類のものを組合せて使用することができる。該ヌクレオチドアナログとしては、特に限定はされないが、例えば、デオキシイノシンヌクレオチド、デオキシウラシルヌクレオチドあるいは7−デアザグアニンのような修飾塩基を有するヌクレオチドアナログ、リボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログ等を使用することができる。また、本発明に使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、上記の機能を保持する範囲内で種々の修飾、例えば標識化合物等の付加がなされたデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチドアナログを含有してもよい。
ヌクレオチドアナログのプライマーへの導入は、プライマー自身の高次構造形成の抑制、鋳型とのアニーリング形成の安定化の観点からも有効である。さらに、同様の目的でリボヌクレオチドをプライマーに導入しても良い。特に限定するものではないが、非特異的なエンドヌクレアーゼ(RNase)によるプライマーの分解を防ぐ観点からは、例えば、(α−S)リボヌクレオチドのような修飾リボヌクレオチドが好適に使用できる。
これらのキメラオリゴヌクレオチドプライマーは、任意の核酸配列を持つように、例えばアプライド バイオシステムズ社(ABI社、Applied Biosystems Inc.)のDNAシンセサイザー394型を用いて、ホスホアミダイト法により合成できる。また、別法としてリン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスホネート法等があるが、いかなる方法で合成されたものであっても良い。
(2)本発明に使用されるエンドヌクレアーゼ
本発明に使用されるエンドヌクレアーゼとは、鋳型核酸にアニーリングした上記(1)に記載のキメラオリゴヌクレオチドプライマーよりDNAの伸長を行って生成した二本鎖DNAに作用して、鎖置換反応が起こるように伸長鎖を切断しうるものであればよい。即ち、上記の二本鎖DNAのうちのキメラオリゴヌクレオチドプライマー部分にニックを生成しうる酵素である。特に限定されるものではないが、例えば、本発明にはリボヌクレアーゼが使用でき、特にDNAとRNAとから形成された二本鎖核酸のRNA部分に作用するエンドリボヌクレアーゼH(RNaseH)が好適に使用できる。また、該リボヌクレアーゼには、上記作用を有するものであれば、常温性から耐熱性のリボヌクレアーゼのいずれもが好適に本発明に使用できる。例えば、下記実施例に示すように、約50℃〜約70℃での反応では大腸菌(E.coli)由来のRNaseHが本発明の方法に使用することができる。また、本発明の方法においては、耐熱性のリボヌクレアーゼも好適に使用できる。該耐熱性リボヌクレアーゼとしては、特に限定はされないが、例えば市販のHybridaseTM Thermostable RNaseH(エピセンターテクノロジーズ社製)の他、好熱性バチルス属細菌、サーマス属細菌、ピロコッカス属細菌、サーモトガ属細菌、アルカエオグロバス属細菌等由来のRNaseH等も好適に使用できる。さらに、該リボヌクレアーゼは、天然体および変異体のいずれもが好適に使用できる。なお、本願明細書に記載されているRNaseHの酵素単位は、実施例中の参考例に示した酵素単位測定方法に基づいて表示された数値である。
また、上記RNaseHは、本発明の方法に使用できるものであれば特に限定はなく、例えば、種々のウイルス、ファージ、原核、真核生物由来のいずれであってもよい。さらに、細胞性RNaseHあるいはウイルス性RNaseHのいずれであってもよい。例えば、上記細胞性RNaseHとしては大腸菌RNaseHIが、ウイルス性RNaseHとしてはHIV−1が例示される。本発明の方法においてRNaseHは、I型、II型、III型のいずれもが使用できる。特に限定はされないが、例えば大腸菌由来RNaseHI、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHIIが好適である。
また、本発明の方法に使用するエンドヌクレアーゼ、例えば、RNaseHの切断反応の効率は上記プライマーの3’末端近傍の塩基配列に左右され、所望のDNAの増幅効率に影響することが考えられるので、使用するRNaseHに最適なプライマーをデザインすることは当然のことである。
本明細書において使用されている「ニックを入れる」もしくは「ニッキング」という語は、二本鎖核酸の一方の鎖の内部を切断することを意味する。たとえば、RNaseHはDNAとリボヌクレオチドを含むDNAとのハイブリッド二本鎖核酸に作用し、二本鎖のうちのリボヌクレオチドを含む鎖のリボヌクレオチド部分を選択的に切断することにより、当該ハイブリッド二本鎖核酸にニックを入れる。
(3)本発明に使用されるDNAポリメラーゼ
本発明には、DNAの鎖置換(strand displacement)活性を有するDNAポリメラーゼを使用することができる。また、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものが特に好適に使用することができる。
本発明において、「鎖置換活性」とは、鋳型となる核酸配列に従ってDNA複製を行う際、DNA鎖を置き換えながら進行し、鋳型鎖にアニーリングしている相補鎖を遊離させる、即ち鎖置換(strand displacement)することができる活性のことをいう。また、本明細書においては、鎖置換により鋳型となる核酸配列から遊離したDNA鎖のこと「置換鎖」と称する。
本発明に使用されるDNAポリメラーゼは、上記の鎖置換活性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、バチルス カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下、B.caと称す)やバチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus、以下B.stと称す)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体や、大腸菌(以下、E.coliと称す)由来のDNAポリメラーゼIのラージ フラグメント(クレノウ断片)等が挙げられる。また、本発明に使用できるDNAポリメラーゼは、常温性から耐熱性のいずれのものも好適に使用できる。
B.caは生育至適温度が約70℃である好熱性細菌であり、この細菌由来のBca DNAポリメラーゼは、DNA依存DNAポリメラーゼ活性、RNA依存DNAポリメラーゼ活性(逆転写活性)、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが知られている。上記の酵素は、その本来の起源より精製して取得されたもの、あるいは遺伝子工学的に生産された組み換え蛋白質の何れであっても良い。また、該酵素は、遺伝子工学的あるいはその他の手法によって置換、欠失、付加、挿入等の改変を加えたものであっても良く、このような酵素の例として、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたBca DNAポリメラーゼであるBcaBEST DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)等が挙げられる。
なお、DNAポリメラーゼの中には、特定の条件でエンドヌクレアーゼ活性、例えば、RNaseH活性を有するものが知られている。このようなDNAポリメラーゼを本発明の方法に用いることができる。すなわち、該DNAポリメラーゼをRNaseH活性が発現されるような条件下、例えばMn2+の存在下で使用する態様が挙げられる。該態様においては、上記RNaseHを添加することなく本発明の方法を実施することができる。本発明者らは、Mn2+を含有する緩衝液中で上記のBca DNAポリメラーゼがRNaseH活性を示すことを初めて明らかにし、Bca DNAポリメラーゼ以外の酵素を含有しない反応液中で本発明の核酸増幅法が実施できることを実証した。なお、上記の態様はBca DNAポリメラーゼに限定されるものではなく、RNaseH活性を併せ持つことが知られている公知のDNAポリメラーゼ、例えばサーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のTth DNAポリメラーゼも本発明に使用することができる。
(4)本発明に使用される反応バッファーの組成
本発明に使用される反応バッファーには、緩衝成分、マグネシウム塩やその他の金属塩、dNTPを含有するものが使用される。また、使用する酵素の金属要求性等に応じて塩の種類及び濃度を最適化するのは当然のことである。緩衝成分は、特に限定はないが、例えば、ビシン、トリシン、ヘペス、トリス、リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)が好適に使用できる。特にビシン、トリシン、ヘペス、あるいはリン酸塩を緩衝成分として含有するバッファーが本発明に好適である。特に限定はされないが、例えば、反応温度が高い場合は、温度変化によるpHの変化が少ないビシン緩衝液が好ましく、また使用するRNaseHの種類によってはヘペス緩衝液が好ましい場合がある。従って、反応温度、使用するエンドヌクレアーゼあるいはDNAポリメラーゼ等によって、最適な緩衝液を選択すればよい。該緩衝成分の最終濃度は5mM〜100mMの範囲、特に好ましくは20mM〜50mMの範囲であり、またpH6.0〜9.5、特に好ましくはpH7.0〜9.2の範囲のものが使用される。例えば、22mM〜46mMのトリシンを含有するpH7.5〜9.2のバッファー、あるいは25mM〜50mMのリン酸カリウムを含有するpH7.0〜8.0のバッファーが好適に使用できる。また、マグネシウム塩としては、特に限定はないが、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムあるいは硫酸マグネシウムが好適に使用でき、その濃度は、最終濃度で1mM〜20mM、特に好ましくは2mM〜10mMの範囲である。また、DNA伸長反応の基質となるdNTPs(dATP、dCTP、dGTP、dTTP混合物)は、最終濃度で、それぞれ0.1mM〜3.0mM、特に好ましくは0.2mM〜1.2mMの範囲である。使用するプライマーの量は、反応液量50μl当たり1pmol〜1000pmolの範囲であり、特に10pmol〜150pmolの範囲が好ましい。さらに、反応液中には増幅反応の安定化等を目的とした添加物を共存させることができ、それぞれ最終濃度として0.1%以下のウシ血清アルブミン(BSA)、10%以下のジメチルスルホキシド(DMSO)、4mM以下のプトレスシン2塩酸塩あるいは0.01%以下のプロピレンジアミンを添加してもよい。この他、NMP(1−メチル−2−ピロロリジノン)、グリセロール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよび/またはホルムアミドを含んでもよく、これらの有機溶媒の添加により、オリゴヌクレオチドプライマーの非特異的なアニーリングが軽減されることが期待される。
さらに、DNAポリメラーゼが有している逆転写活性を阻害するような物質、例えばホスホノギ酸(PFA、Phosphonoformic acid)を添加して本発明の方法を実施してもよい。逆転写活性を阻害する物質を添加した場合には、標的核酸以外の非特異的な産物の増幅が低減される。
さらにオリゴヌクレオチドプライマーの非特異的なアニーリングを軽減させる別の態様としては、本発明の検出方法、増幅方法あるいは製造方法において、増幅反応に先立って、鋳型となる核酸と本発明で使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング処理を行うことが効果的である。該処理はアニーリングを増強する物質、例えばスペルミン、スペルミジン等のポリアミン類やプロピレンジアミンを含有するアニーリング溶液を使用して実施することが好ましい。上記のポリアミン類を含有するアニーリング溶液としては塩を含有するものが好適に使用でき、特に限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等とポリアミン類とを含有するアニーリング溶液が挙げられる。
アニーリング処理は、通常、プライマー、鋳型となる核酸を含有する上記のアニーリング溶液を、2本鎖核酸が変性する温度、例えば、90℃以上で保持した後、本発明の方法に使用される反応温度以下まで冷却して実施される。
アニーリング処理の工程の後、上記混合液にさらに必要な他の成分、例えばDNAポリメラーゼ、RNaseH、dNTP等を添加して本発明の核酸増幅反応が開始される。
エンドヌクレアーゼは、例えば、大腸菌由来のRNaseHならば、反応液量50μl当たり3〜200Uの範囲が好ましく、特に15U〜60Uの範囲が好適である。同様に、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来RNaseHならば、反応液量50μlあたり3〜200Uの範囲、さらに好ましくは4〜40Uの範囲である。また、DNAポリメラーゼは、例えば、BcaBEST DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)ならば、反応液量50μl当たり0.5U〜100Uの範囲、特に1U〜22Uの範囲が好ましい。
本発明の方法においてエンドヌクレアーゼとDNAポリメラーゼを組み合わせる場合、特に限定はされないが、例えば大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来のRNaseH及びBcaBEST DNAポリメラーゼの組み合わせが好適である。さらに、上記エンドヌクレアーゼ及びDNAポリメラーゼはいずれもその種類によって好適に使用できるユニット数が異なる場合が予想される。その際には、検出感度の向上あるいは増幅産物量を指標にして、使用されるバッファーの組成ならびに酵素の添加量を調整すればよい。いずれの場合においても、使用する酵素の種類にあわせて反応バッファーの組成等を至適化するのは当然のことである。
(5)本発明の核酸の増幅方法
本発明の方法は、上記(1)に示されたオリゴヌクレオチドプライマーを少なくとも1種類使用し、さらに上記(2)に示されたエンドヌクレアーゼおよび上記(3)に示されたDNAポリメラーゼを組合わせて実施することができる。また、上記のようにRNaseH活性を有するDNAポリメラーゼをRNaseH活性が発現するような条件で使用することができる。
当該方法では、伸長反応の基質となるヌクレオチド3リン酸としてPCR法等に使われるdNTP、すなわちdATP、dCTP、dGTP、dTTPの混合物が好適に使用できる。また、dUTPを基質として用いてもよい。さらに、当該dNTPは、使用されるDNAポリメラーゼの基質となる限りにおいては、dNTP(デオキシリボヌクレオチド3リン酸)のアナログ、たとえば7−デアザ−dGTP、dITPの3リン酸等を含んでいてもよい。また、dNTPあるいはdNTPアナログの誘導体を使用してもよく、官能基を有する誘導体、例えばアミノ基を有するdUTPを含んでいてもよい。当該方法では、キメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用するが、当該プライマーは、例えば、DNA合成機等を用いて通常の合成方法と同様に調製することができる。さらに、本発明の方法においては、上記キメラオリゴヌクレオチドプライマーと通常のオリゴヌクレオチドプライマーを組み合わせて使用することもできる。
本発明の方法においては、使用される酵素の活性が反応中に低下するおそれのある場合には、反応の途中で当該酵素をさらに添加することができる。特に限定するものではないが、例えば、大腸菌由来のRNaseHを使用する反応の途中で該RNaseHをさらに添加してもよい。添加する酵素は、反応開始時に反応液中に含まれる酵素と同じものでもよいし、同じ作用を示す異なる種類の酵素であってもよい。すなわち、反応途中で添加することにより、検出感度の向上あるいは増幅産物量の増大等の効果が得られるならば、添加する酵素の種類及び該酵素の性質には何ら限定はない。
本発明の方法において鋳型となる核酸、すなわちDNAまたはRNAは、当該核酸を含む可能性のあるあらゆる試料から調製、あるいは単離したものでもよい。さらに、上記試料を直接、本発明の核酸増幅反応に使用してもよい。このような核酸を含む試料には特に限定はないが、例えば、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液、組織(例えば、癌組織、リンパ節等)、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物及び細菌培養物等)のような生体由来試料、ウイロイド、ウイルス、細菌、カビ、酵母、植物及び動物のような核酸含有試料、ウイルス又は細菌のような微生物が混入もしくは感染している可能性のある試料(食品、生物学的製剤等)、あるいは土壌、排水のような生物を含有する可能性のある試料が挙げられる。また、前記試料等を公知の方法で処理することによって得られる核酸含有調製物であっても良い。該調製物としては、例えば細胞破砕物やそれを分画して得られる試料、該試料中の核酸、あるいは特定の核酸分子群、例えば、mRNAを富化した試料等が本発明に使用できる。さらに上記試料中に含まれる核酸が公知方法で増幅されたDNAあるいはRNA等の核酸等も好適に使用できる。
これら材料からの核酸含有調製物の調製には特に限定はなく、例えば、界面活性剤による溶解処理、超音波処理、ガラスビーズを用いた振盪撹拌、フレンチプレスの使用等により行うことができる。幾つかの例においては、さらに操作を加えて核酸を精製することが有利である(例えば、内在性ヌクレアーゼが存在するとき)。これらの例において、核酸の精製はフェノール抽出、クロマトグラフィー、イオン交換、ゲル電気泳動または密度勾配遠心分離等の公知方法により実施される。
RNA由来の配列を有する核酸を増幅したい場合には、当該RNAを鋳型とした逆転写反応によって合成されたcDNAを鋳型として本発明の方法を実施すればよい。本発明の方法に適用することができるRNAには、逆転写反応に使用されるプライマーが作製可能なものであれば特に制限はなく、試料中の全RNAの他、mRNA、tRNA、rRNA等のRNA分子群、あるいは特定のRNA分子種が挙げられる。
上記の逆転写反応に使用されるプライマーは、使用される反応条件において鋳型RNAにアニールするものであれば特に限定されるものではない。該プライマーは、特定の鋳型RNAに相補的な塩基配列を有するプライマー(特異的プライマー)の他、オリゴdT(デオキシチミン)プライマーやランダムな配列を有するプライマー(ランダムプライマー)であっても良い。逆転写用プライマーの長さは、特異的なアニーリングを行う観点から、好ましくは6ヌクレオチド以上であり、更に好ましくは9ヌクレオチド以上であり、オリゴヌクレオチドの合成の観点から、好ましくは100ヌクレオチド以下であり、更に好ましくは30ヌクレオチド以下である。さらに、逆転写用プライマーとして、逆転写後のcDNAを鋳型とした本発明の核酸増幅法を行う際に鎖置換反応のためのプライマーとして使用可能なキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用することができる。このようなプライマーは、上記(1)に記載された性質を有し、かつRNAからの逆転写反応に使用できるものであれば特に限定はない。
上記の逆転写反応に使用される酵素としては、RNAを鋳型としたcDNA合成活性を有するものであれば特に限定はなく、例えばトリ骨髄芽球症ウイルス由来逆転写酵素(AMV RTase)、モロニーネズミ白血病ウイルス由来逆転写酵素(MMLV RTase)、ラウス関連ウイルス2逆転写酵素(RAV−2 RTase)等、種々の起源の逆転写酵素が挙げられる。このほか、逆転写活性を併せ持つDNAポリメラーゼを使用することもできる。また、本発明の目的のためには、高温で逆転写活性を有する酵素が好適であり、例えばサーマス属細菌由来DNAポリメラーゼ(Tth DNAポリメラーゼ等)、好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼ等を使用できる。特に限定はないが、例えば、好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼが好ましく、B.st由来DNAポリメラーゼ(Bst DNAポリメラーゼ)、さらにBca DNAポリメラーゼが好ましい。例えば、Bca DNAポリメラーゼは、逆転写反応にマンガンイオンを必要とせず、また、高温条件下で鋳型RNAの二次構造形成を抑制しながらcDNAを合成することができる。上記の逆転写酵素活性を有する酵素も、当該活性を有している範囲において天然体、変異体のいずれもが使用できる。
また、別の態様としては、増幅しようとする塩基配列を含むDNAあるいはRNAをあらかじめ複製した後、本発明の方法の鋳型となる核酸として用いてもよい。該複製の方法としては、特に限定はされないが、増幅しようとする塩基配列を含む核酸断片を挿入したベクターで適当な宿主を形質転換させた後、得られた形質転換体を培養して、上記増幅しようとする塩基配列を含む核酸断片を挿入したベクターを抽出して使用する方法が例示される。該ベクターは、宿主内で安定して複製されるものであれば特に限定はなく、例えば、pUC系、pBluescript系、pGEM系、コスミド系、ファージ系のいずれもが好適に使用できる。また、宿主は、使用されるベクターを保持することができるものであれば特に限定はなく、例えば、培養が容易な大腸菌等が例示される。
さらに、上記複製の方法の別の態様としては、増幅しようとする塩基配列を含む核酸断片を鋳型としてRNAポリメラーゼで該塩基配列を有するRNAを転写した後、該RNAをそのまま、あるいは逆転写反応によりcDNAとして本発明の方法の鋳型に用いてもよい。上記の増幅しようとする塩基配列を含む核酸断片はRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有していれば特に限定はなく、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するベクターに挿入されたものでもよいし、末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するアダプターあるいはカセットをライゲーションさせたものでもよいし、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するプライマーと適切な鋳型を用いて酵素的に合成したものであってもよい。すなわち、上記の増幅しようとする塩基配列を含む核酸断片を、上記のように配置されたRNAポリメラーゼのプロモーター配列を用いて、RNAの形で複製、増幅することができる。上記ベクターは、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するものであれば特に限定はなく、例えば、pUC系、pBluescript系、pGEM系、コスミド系、ファージ系のいずれもが好適に使用できる。また、該ベクターは、環状のままあるいは直鎖状に処理したもののいずれもが好適に使用できる。さらに、上記の複製、増幅方法に用いられるRNAポリメラーゼは特に限定はなく、例えば、SP6 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼあるいはT3 RNAポリメラーゼ等が好適に使用できる。
上記方法により単離したゲノムDNAやPCRフラグメントのような二本鎖DNA、および全RNA若しくはmRNAから逆転写反応で調製されたcDNAのような一本鎖DNAのいずれもが本発明において鋳型DNAとして好適に使用できる。上記二本鎖DNAの場合は、一本鎖DNAに変性する工程(デネーチャー)を施したもの及び一本鎖DNAに変性する工程を施さないもののいずれもが好適に使用できる。
また、鋳型がPCR増幅産物のような直鎖状2本鎖DNAにおいては、本発明の方法に用いるプライマーがアニーリングする位置を、該DNAの末端から約50塩基程度内側に設定することにより、前述のデネーチャーの工程を行わなくても本発明の核酸の増幅方法を行うことができる場合がある。RNA由来の配列を有する核酸の増幅を目的とする場合には、RNAを鋳型とした逆転写反応によって得られたRNA−cDNA二本鎖核酸を、RNaseHを含有する本発明の増幅用反応液に加えることにより、RNA鎖を分解して一本鎖cDNAとし増幅反応を開始することができる。さらに、本発明のDNAの合成方法に逆転写酵素活性と鎖置換活性とを有するDNAポリメラーゼを使用することにより、RNAを鋳型とした逆転写反応と、当該反応によって生成したcDNAを鋳型にしたDNA増幅反応とを1種類のDNAポリメラーゼで行なうことができる。
上記鋳型の長さは、標的配列がその断片中に完全に含まれるか、または標的配列の十分な部分が少なくとも断片中に存在することにより、プライマー配列の十分な結合を提供するようなものがよい。
本発明の方法では、特に限定するものではないが、鋳型DNAが二本鎖DNAの場合にはそれらを変性して一本鎖にすることにより鋳型DNA鎖へのプライマーの結合を可能にさせることができる。二本鎖DNAが変性する温度、例えば約95℃で保持することは好ましい変性法である。他の方法はpHの上昇を含むが、オリゴヌクレオチドプライマーを標的物に結合させるためには、増幅反応時にpHを低下させる必要がある。上記のような二本鎖を一本鎖DNAに変性する工程、もしくは、鋳型がRNAの場合、逆転写反応によりcDNA(一本鎖DNA)を調製する工程の後、等温条件下において、連続的に核酸が増幅される。
ここで、「連続的に」とは、反応温度、反応液組成の変更を伴わずに反応が進行していることを意味する。また、本明細書において「等温」とは、酵素および核酸鎖が上記各工程において機能する、実質的に一定の温度条件のことを意味する。
本発明の核酸増幅反応は、例えば、クレノウ断片のような常温性DNAポリメラーゼを使用することにより常温(例えば37℃)でも実施できるが、耐熱性を有する酵素(エンドヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ)を使用して高温、例えば50℃以上で、さらに例えば60℃以上で実施することができる。この場合、プライマーの非特異的なアニーリングが抑制され、DNA増幅の特異性が向上し、また鋳型DNAの二次構造が解消されることによりDNAポリメラーゼの伸長性も向上する。さらに該方法においては、逆転写反応および核酸の増幅を連続して行なう態様も可能であり、上記反応に逆転写酵素を組み合わせて、あるいは逆転写活性を有するDNAポリメラーゼを使用して、RNA由来の配列を有するDNAを増幅することができる。
本発明を特に限定するものではないが、本発明の各態様において、好ましくは、まず一本鎖の鋳型DNAに該DNAに相補的なキメラオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングさせる。次にDNAポリメラーゼの作用により、当該プライマーの3’末端より鋳型DNAの残りの配列に沿って鋳型DNAに相補的なDNA(プライマー伸長鎖)を伸長させて二本鎖DNAを合成する。エンドヌクレアーゼは当該二本鎖DNAに作用してプライマー伸長鎖のプライマー部分からの新たなDNAの伸長を開始させる。本発明の一つの態様においては、エンドヌクレアーゼは上記の二本鎖DNAにニックを入れるニッキング酵素として作用するか、あるいはキメラオリゴヌクレオチドプライマーと鋳型DNAの二本鎖DNA構造を変化させるが、本願発明は理論によって限定はされない。さらに、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼがニックの入った二本鎖DNAのニックの3’末端からDNA鎖を再伸長して新たなプライマー伸長鎖を生成し、同時にニックの3’末端から下流のDNAを遊離させる。こうして先に合成されたプライマー伸長鎖が新たなプライマー伸長鎖に置換される。
本発明の核酸増幅方法は、鋳型核酸に相補的なキメラオリゴヌクレオチドプライマーと、置換鎖に相補的なもう1種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーの2種のプライマーを使用して実施することができる。この場合、一方のプライマーは鋳型となるDNA鎖に結合して鎖置換反応を起し、そして他方のプライマーは上記の鎖置換反応によって遊離した置換鎖に結合し、新たな鎖置換反応を開始する。この態様を使用すると、各反応産物が他のプライマーのための鋳型として機能できることは明らかである。このように鋳型量が増加することにより、非直線的に増幅産物が増加していく。
二本鎖DNAを鋳型に用いて本発明の核酸増幅方法を実施する場合には、二本鎖のそれぞれにアニーリングするキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより、両方の鎖を増幅反応の鋳型とすることができる。二本鎖DNAを変性した後に反応を開始する場合には、変性する前または後に、キメラオリゴヌクレオチドプライマー、4種のデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)、DNAポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを反応液に添加する。熱処理により二本鎖DNAを変性し、かつ耐熱性の酵素を使用しない場合には、変性後に酵素を添加することが好ましい。
二本鎖の鋳型DNAと2種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用する本発明の核酸増幅方法の態様においては、反応の条件等にもよるが、各プライマーから伸長反応中のそれぞれの鋳型−伸長鎖中間体の間で鋳型の交換が起こり、合成されたプライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸を生成することがある。この二本鎖核酸は両端にキメラオリゴヌクレオチドプライマーを有しており、次いでその両端から再び鎖置換による相補鎖伸長反応を開始することができる。この反応の結果、一端にプライマーの配列を有する増幅産物が生成される。さらに、この反応中に鋳型の交換が起こった場合には前妃と同様な二本鎖核酸が再度生成される。
本発明により、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用し、鋳型交換反応を行う工程を包含する核酸の増幅方法が提供される。当該鋳型交換反応においては、鋳型となる二本鎖核酸と、それぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーと、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼの存在下に、該鋳型に相補的な2種のプライマー伸長鎖が合成される。該プライマー伸長鎖の合成の途中において、プライマー伸長鎖のそれぞれの鋳型から他方のプライマー伸長鎖への鋳型の交換が起こる。
ここで、鋳型交換反応とは、2本鎖核酸の両側からの鎖置換反応による相補鎖の合成が行われる際に、DNAポリメラーゼがその鋳型を交換し、他方のDNAポリメラーゼが新規に合成してきた相補鎖をそれぞれ鋳型として、以降の相補鎖合成を行うことを言う。言い換えれば、鋳型となる2本鎖核酸をそれぞれのプライマー及び鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼで処理し、該鋳型に相補的な伸長鎖を生成せしめる反応において、該伸長鎖を合成中に、DNAポリメラーゼがプライマー伸長鎖を、当初の鋳型から、他方のプライマー伸長鎖へと能動的に鋳型をスイッチングせしめる反応を言う。DNAポリメラーゼが鋳型交換反応を行う能力を有することは、特に限定するものではないが、例えば後述の実施例32に記載の方法によって確認することができる。
本発明には、鎖置換反応中に上記の鋳型交換反応を行う能力を有するDNAポリメラーゼが好適に使用でき、例えば、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失したBca DNAポリメラーゼの変異体酵素が特に好適に使用される。当該酵素はBcaBEST DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)として市販されており、また、該酵素の遺伝子を含有する大腸菌、Escherichia coli HB101/pUI205(FERM BP−3720)(平成3年5月10日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託)より日本特許第2978001号に記載の方法によって調製することもできる。
本発明を特に限定するものではないが、本発明の核酸の増幅方法の反応様式は、例えば以下のように考察される。
本発明の核酸を増幅する方法においては、鋳型となる二本鎖核酸を、RNaseHの存在下、それぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のキメラオリゴヌクレオチドプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖が合成され、鋳型交換反応により、合成されたプライマー伸長鎖同士がアニーリングして成る二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に前記2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得ることができ、後者の二本鎖核酸は鋳型として再利用される。
プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位はRNaseHで切断され、当該二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換が行われ、鋳型交換反応により、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に前記2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得ることができる。
また鋳型交換反応が起こらない場合は鋳型とプライマー伸長鎖から成る2種の二本鎖核酸を得ることができる。
上記の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換が行われ、鋳型交換反応により、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、及び鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に前記2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得ることができ、2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸は鋳型として再利用される。
また鋳型交換反応が起こらない場合は鋳型とプライマー伸長鎖から成る2種の二本鎖核酸を得ることができる。
この2種の二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位はRNaseHで切断され、当該二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列が伸長され鎖置換が行われる。
また本発明の核酸を増幅する方法においては、鋳型となる二本鎖核酸を、RNaseHの存在下、それぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のキメラオリゴヌクレオチドプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖が合成され、鋳型交換反応が起こらない場合は、鋳型とプライマー伸長鎖よりなる2種の二本鎖核酸が得られる。
また、本発明の増幅方法において、キメラオリゴヌクレオチドプライマー伸長鎖のリボヌクレオチド含有部位が切断される際に、当該切断によって生じる5’側の断片(プライマー部分)がリボヌクレオチドを含有しないように切断される場合がある。こうして生じたプライマー部分から伸長されたプライマー伸長鎖はもはやエンドヌクレアーゼにより切断されず、この結果、末端にプライマーの配列を有する増幅産物が生成される。
上記のように、本発明の核酸増幅方法においてはプライマーの配列を含まない増幅産物の他、一端、もしくは両端にプライマーの配列を有する産物が生成しうる。これらの産物も本発明にいう増幅産物に包含される。
本発明の核酸の増幅方法の一例を図33〜36に示す。すなわち図33〜図36は本発明の核酸の増幅方法における核酸の増幅の例を示す図である。
図33〜図36で示される核酸の増幅の例においては、二本鎖核酸である鋳型DNA、当該鋳型DNAの塩基配列の情報に基づいて合成された一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマー(図中キメラオリゴヌクレオチドプライマーは、その3’末端に3個のリボヌクレオチドを有している。図中リボヌクレオチドを白丸で示す)、鎖置換活性を有する鎖置換型DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)、DNA−RNAハイブリッド部位を切断するリボヌクレアーゼであるRNaseH、および伸長鎖に取り込まれる基質であるdNTPの存在下での核酸の増幅の例が示されている。
図33に示すように、鋳型DNAの塩基配列の情報に基づいて合成された一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーは鋳型DNAの特定部分にアニーリングし、ステップ1に示すように、鎖置換反応により各キメラオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端からDNA鎖が伸長する。
次に、図34に示すように、上流側と下流側から伸長してきたプライマー伸長鎖は、ステップ2に示す鋳型交換反応により、ある割合で元の鋳型から離れ、その3’部分でプライマー伸長鎖同士がアニーリングする。このアニーリングした伸長鎖同士がさらに互いの相補鎖を伸長し、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAを形成する。また、置換鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAに、前出一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーがアニーリングした二本鎖DNAが生成する。これは図34の出発物質として利用される。
図34に示した、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAは、図35のステップ3に示すように、RNaseHの作用によって当該二本鎖DNAのDNA/RNAハイブリッド部分の、キメラオリゴヌクレオチドプライマーに由来するRNAを含む片方の鎖のみが切断され、二本鎖DNAに切れ目(ニック)が導入される。
引き続き図35のステップ4に示すように、二本鎖DNAの切れ目の部分から鎖置換反応が起こり、DNAが伸長する。次いで図35のステップ5に示すように、ある割合で図34のステップ2と同様に鋳型交換反応がおこり、増幅生成物であるプライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAが生成する。
また、置換鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAに前出一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーがアニーリングした二本鎖DNAが生成する。
次に、図36に示すように、図35に示した置換鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAに、前出一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーがアニーリングした二本鎖DNAでは、鎖置換反応により各キメラオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端からDNA鎖が伸長する。ついでステップ2、およびステップ5と同様な鋳型交換反応がある割合で起こり、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAが生成する。当該二本鎖DNAは図35のステップ3に戻り、再度ステップ3以降の反応が開始される。また、置換鎖同士がアニーリングした二本鎖DNAに前出一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーがアニーリングした二本鎖DNAが生成し、図36の出発物質として利用される。これらの結果、これらの二本鎖核酸の生成が繰り返される連鎖反応が生じ、一対のキメラオリゴヌクレオチドプライマーによって挟まれた領域が特異的に増幅産生される。
キメラオリゴヌクレオチドを使用する本発明の核酸増幅方法においては、増幅領域が連なった重合体を生成する場合がある。このような重合体は増幅領域が複数個、いずれも同じ向きに連なったものであり、電気泳動による増幅産物の解析ではラダー状のバンドとして確認される。当該重合体の生成は、増幅される領域、該領域のサイズ、その隣接領域、使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーの塩基配列あるいは反応の条件等により影響を受けることが考えられている。
上記の重合体は、増幅領域を複数個含むものである。当該重合体は、例えば適切なプローブとのハイブリダイゼーションによって多数のプローブとハイブリダイズし、当該重合体が強いシグナルを発生することから、増幅領域を含む核酸の検出を目的とする場合に有用である。また、制限酵素消化等を組み合わせて、重合体より増幅領域、またはその一部をモノマーとして得ることもできる。
本発明に使用されるDNAポリメラーゼは、プライマー部分の3’末端から下流への伸長鎖合成に伴い、先に伸長されたDNA鎖の置換を行う必要がある。そして重要なことは置換鎖を分解する可能性のある5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を示さないことである。このようなDNAポリメラーゼ、例えば大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのエキソヌクレアーゼ欠損変異体であるクレノウ断片、BstDNAポリメラーゼ由来の同様の断片(ニューイングランドバイオラブス社製)、B.ca由来のBcaBEST DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)が有用である。シークエネース1.0およびシークエネース2.0(米国バイオケミカル社)、ジーン(Gene)第97巻、13〜19頁(1991)記載のT5DNAポリメラーゼおよびφ29 DNAポリメラーゼも使用することができる。通常は5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼであっても、その活性が適当な阻害剤の添加により阻害することが可能な場合は、本発明のDNA合成方法に使用できる。
本発明の核酸の増幅方法は、変温で行ってもよく、又は等温で行ってもよい。ここで変温とは、各工程の反応を妨げない範囲で各工程の反応温度を変化させることを意味する。すなわち、例えば、プライマーのアニーリング、相補鎖の合成反応、相補鎖のニッキング、そして置換反応のそれぞれに適した温度に変化させる場合のことをいう。
次に等温とは、各工程の反応温度を変化させず、各工程が実質的に一定の温度で行われることを意味する。いずれの場合においても、最適の反応条件となるように温度を設定するのは当然である。
本発明の核酸の増幅方法の1つの特徴としては、核酸の合成方法において温度を上げ下げする必要がないことにある。即ち、本発明は等温での核酸の合成方法を提供する。従来の多くの核酸増幅法は、温度を上下することにより合成鎖から標的物を解離する必要があり、例えばサーマルサイクラーのような特別な反応装置を必要とするが、本発明の方法においては一定温度を保持できる装置のみでも実施することができる。このように、本発明の方法は、単一の温度で実施することができる。好ましくは、プライマーの非特異的なアニーリングが低減され、かつ鋳型となる核酸にプライマーが特異的にアニーリングするように反応温度、ストリンジェンシーのレベルを設定して実施される。特に限定するものではないが、上記のように耐熱性の酵素を用いて本発明の方法を高温条件下で行う事ができる。さらに、反応の効率を高く保つ観点から、本発明の方法は使用する酵素の活性が十分に保持される適当な温度で行うことが好ましい。従って、使用する酵素にもよるが、好ましい反応温度は、約20℃〜約80℃であり、さらに好ましくは約30℃〜約75℃であり、特に好ましくは、約50℃〜約70℃である。特に高温条件下で反応を行う場合には、常温で反応を行う場合よりも鎖長の長いプライマーを使用することが好ましい。各反応温度に適したプライマーの配列及び長さの設定については、例えば、そのTm値を参考にしてもよく、あるいは市販のプライマー設計ソフト、例えば、OLIGOTM Primer Analysis software(宝酒造社製)を使用してもよい。例えば、本発明の方法において反応温度を55℃から60℃あるいは65℃に設定した場合、該方法に使用するプライマーの長さとしては、特に限定するものではないが、例えば12ヌクレオチド〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは14ヌクレオチド〜50ヌクレオチドの長さ、さらに好ましくは15ヌクレオチド〜40ヌクレオチドの長さのプライマーが使用できる。このように反応温度を上げることの効果としては、鋳型DNAの二次構造を解消できることが挙げられ、GC含量の高い鋳型核酸を使用した場合にも所望の核酸が増幅される。また、長鎖長の領域を増幅する場合においても同様の効果がある。該効果は、約60bp〜約20kbpの範囲で、さらに約110bp〜約4.3kbpの範囲で、特に約130bp〜約1500bpの範囲で認められる。
さらに、鋳型となる核酸のGC含量に応じて反応温度を調節し、増幅効率を向上させることができる。例えば、鋳型となる核酸としてGC含量の低いものを使用する場合には、増幅する鎖長やプライマーのTm値にもよるが、50〜55℃で本発明の増幅反応を行うことができる。
また、本発明の方法において、逆転写酵素活性を持つDNAポリメラーゼ、例えば、BcaBEST DNAポリメラーゼを使用した場合、RNAからcDNAを調製する工程(逆転写反応)を含むRNA由来の核酸の増幅を簡便に実施することができる。また、RNAからcDNAを調製する工程を独立させて行い、その生成物(cDNA)を本発明の方法に鋳型DNAとして使用することもできる。
いずれの場合においても、本発明の方法においては、適当な方法、例えば酵素を失活させたり反応温度を低下させて反応を停止させるか、または基質のうちのいずれか一つが使い尽くされるかのいずれかまで繰り返される。
本発明の核酸の増幅方法は、核酸の増幅を利用した種々の実験操作、例えば核酸の検出、標識、塩基配列の決定に使用することができる。
また、本発明の核酸の増幅方法は、in situ核酸増幅方法、DNAチップのような固相担体上での核酸増幅方法あるいは多種類の領域を同時に増幅するマルチプレックス核酸増幅方法として使用することができる。
本発明の核酸の増幅方法の特徴の一つとして、一本鎖のDNAを調製することが可能なことが挙げられる。この目的のためには、1種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用する方法のみならず、2種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用する方法を使用することもできる。例えば、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる場合は、一方のオリゴヌクレオチドプライマー量を他方の量に対して過剰にして増幅反応を行なう、いわゆるアシンメトリック(非対称)−PCR法において採用される方法と同様のプライマー比率によって行なうことができる。当該プライマー比率は、特に限定されるものではないが、1:10〜1:500の範囲で好適に使用でき、特に好ましくは1:10〜1:100の範囲である。この結果、一方の鎖を置換した産物の量が、他方の鎖を置換した産物の量に比べて過剰になる。
本発明の核酸の増幅方法によれば実質的にその相補鎖を含有しない一本鎖のDNAを調製することができ、例えば、DNAチップのような核酸固定化物を作製するための一本鎖DNA、標的核酸検出のための一本鎖DNAプローブ、または長鎖PCR法のためのメガプライマーを容易にしかも短時間に作製することができる。また、本発明の方法を使用することにより、センス配列のみ、あるいはアンチセンス配列のみを選択して増幅させることが可能である。従って、本発明はセンス配列あるいはアンチセンス配列を有する核酸の製造方法としても有用である。
また、本発明の方法は、ビシン、トリシン、ヘペス、リン酸塩あるいはトリス緩衝液中で行うことにより微量の鋳型となる核酸からでも所望の核酸配列領域を増幅することができる。
さらに、本発明の核酸の増幅方法には経時的な温度調節が可能な反応装置を使用する必要がないため、大容量の反応液を使用して増幅反応を実施することができる。したがって、例えば医薬用途等に使用される核酸の工業的大量製造が可能である。
本発明の核酸の増幅方法において使用するプライマーの利用効率は、ほぼ100%であり、従来の方法、例えばPCR法の利用効率に比べて5倍〜10倍高くすることができる。
また、本発明の核酸増幅方法は、鋳型となる核酸の塩基配列に忠実に増幅産物を生成することができる。本発明の方法におけるDNA合成の誤りの頻度を得られた増幅産物の塩基配列を解析することによって確認したところ、高い忠実度で核酸を増幅できることが知られているLA−PCR法と本発明の方法のそれぞれで得られた増幅産物中に見出された誤りの頻度は同程度であった。すなわち、本発明の方法はLA−PCR法に匹敵する忠実度を有している。
(6)本発明の標的核酸の検出方法および該方法のためのキット
本発明の核酸の増幅方法を使用することにより、試料中の標的核酸の検出を行うことができる。当該検出方法は、
(a)上記の本発明の核酸の増幅方法により、標的核酸を増幅する工程;および、
(b)上記工程により増幅された標的核酸を検出する工程;
を包含する。
上記(a)行程において、RNAを鋳型とする場合は、逆転写反応と核酸増幅反応を1段階で行ってもよい。特に限定はされないが、逆転写酵素と鎖置換型DNAポリメラーゼの組み合わせとして例えば、AMV RTase、MMLV RTaseあるいはRAV−2 RTaseとBca DNAポリメラーゼの組み合わせが好適に使用できる。
上記方法は試料中に存在する特定の遺伝子の検出、定量に利用することができる。すなわちDNAまたはRNA等の核酸を含む可能性のあるあらゆる試料から特定の遺伝子を検出、定量することができる。前述の試料としては、特に限定はないが、例えば、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液、組織(例えば、癌組織、リンパ節等)、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物及び細菌培養物等)のような生体由来試料、ウイロイド、ウイルス、細菌、カビ、酵母、植物及び動物のような核酸含有試料、ウイルス又は細菌のような微生物が混入もしくは感染している可能性のある試料(食品、生物学的製剤等)、あるいは土壌、排水のような生物を含有する可能性のある試料から特定の遺伝子を検出、定量することができる。さらに例えば、ウイロイド、ウイルス、カビ、細菌あるいはその他の微生物等由来の特定の遺伝子をターゲットとすることにより、該遺伝子の存在の有無によって上記の微生物の存在を検出、定量等に利用することができる。特に、病原性の微生物の検出方法は衛生、環境分野で有用である。さらに、生物の遺伝子型の判別や遺伝子の発現状態を調べるために本発明の方法を使用することもできる。特に疾病関連遺伝子、例えば細胞の癌化に関連する遺伝子等の検出、発現状態の確認は医療分野において有用である。上記検出法のための鋳型として使用される核酸は、RNAあるいはDNAのいずれもが好適に使用できる。
さらに、本発明の標的核酸の検出方法により、標的核酸上の塩基配列の違いを判別することができる。この態様においては、使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端部分が、標的とされる塩基配列の判別しようとする特定の塩基付近に位置するように、たとえば、該塩基とプライマーの3’末端の塩基とが水素結合を形成するようにプライマーが設計される。このようなキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅反応を実施した場合、プライマーの3’末端部分の塩基配列と鋳型の塩基配列との間にミスマッチが存在する場合には標的核酸からの増幅が起こらず、増幅産物の生成が見られない。当該方法により、点突然変異、一塩基置換(Single nucleotide polymorphysm、SNP)のような遺伝子上の特定の塩基についての情報を得ることが可能である。
本発明の標的核酸の検出方法は、核酸を含有する試料より直接、標的核酸を増幅することにより実施することができる。この場合、増幅される標的核酸の鎖長には、特に限定はないが、感度よく標的核酸を検出する観点からは、例えば200bp以下、さらに好ましくは150bp以下の領域が有効である。該増幅鎖長となるように本発明のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを設定することにより、高感度に試料中の標的核酸を検出することができる。
さらに、本発明の検出方法では、前述の(4)で例示したような、ビシン、トリシン、ヘペス、リン酸塩あるいはトリス緩衝成分を含有する反応バッファー、及びスペルミジンやプロピレンジアミンを含有するアニーリング溶液の使用により、微量の核酸試料からもさらに高感度に標的核酸を検出することができる。この場合、使用するエンドヌクレアーゼとDNAポリメラーゼは特に限定はされないが、例えば大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来のRNaseH及びBcaBEST DNAポリメラーゼの組み合わせが好ましい。特に、上記エンドヌクレアーゼ及びDNAポリメラーゼはともにその種類によって好適に使用できるユニット数が異なる場合が予想されるが、その際には検出感度の向上あるいは増幅産物量の増加を指標にして、該バッファーの組成および酵素の添加量を調整すればよい。
本発明の検出方法においては、標的核酸の増幅の際に、dUTPを基質として取り込ませることができる。したがって、dUTPを基質に用いた場合には、ウラシル N−グリコシダーゼ(uracil N−glycosidase:UNG)を利用して増幅産物を分解し、増幅産物のキャリーオーバーを防止することができる。
上記(b)工程には公知の核酸検出方法、例えば電気泳動により特定のサイズの反応産物を検出する方法や、プローブとのハイブリダイゼーションによる検出等を使用することができる。さらに、磁気ビーズ等を組み合わせた検出方法も好適に使用できる。上記電気泳動による検出には、通常、エチジウムブロマイド等の蛍光物質が使用されるが、プローブとのハイブリダイゼーションを組み合わせてもよい。また、プローブは放射性同位元素による標識の他、ビオチンや蛍光物質のような非放射性の標識を施したものが使用できる。この他、上記(a)工程において標識ヌクレオチドを使用することにより、増幅産物に標識ヌクレオチドを取り込ませて検出を容易にすることや該標識を利用した検出用シグナルの増強を行うことができ、さらに蛍光偏光法、蛍光エネルギー転移等を利用した検出を行うことも可能である。さらに、適切な検出系を構築することにより、標的核酸を自動的に検出することや、あるいは標的核酸の定量を行うことが可能である。また、ハイブリッドクロマト法による肉眼検出法も好適に使用できる。
消光状態になるような距離で配置された2種類以上の蛍光物質で標識されたリボヌクレオチド(RNA)プローブを本発明の検出方法に使用することができる。当該プローブは蛍光を発することはないが、これに相補的な標的核酸由来の増幅DNAにアニーリングした場合、RNaseHは該プローブを分解する。この結果、プローブ上の蛍光物質間の距離が増大して蛍光が発せられるようになり、標的核酸の存在を知ることができる。RNaseHを使用して本発明の核酸の増幅方法が実施された場合には、その反応液中に上記のプローブを添加するだけで標的核酸を検出することができる。当該プローブの標識に使用される蛍光物質としては、例えば、6−FAM(6−carboxyfluorescein)とTAMRA(N,N,N’,N’−tetramethyl−6−carboxyrhodamine)との組み合わせが好適に使用できる。
さらに、本発明は前記の標的核酸の検出方法に使用されるプローブを提供する。本発明のプローブは、上記の本発明の核酸の増幅方法により増幅された核酸に通常のハイブリダイゼーションの条件において標的核酸にハイブリダイズし得るものであれば特に限定はないが、増幅産物を特異的に検出する観点からは、例えば厳密な条件として当業者に知られている条件でハイブリダイズするものが好ましい。前記、厳密なハイブリダイゼーション条件は、例えば1989年、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第2版(Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed.)に記載されている。具体的な厳密な条件としては、例えば以下の条件を挙げることができる。すなわち、0.5%SDS、5×デンハルツ[Denhardt’s、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400]及び100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)中で、使用するプローブのTm値より約25℃低い温度で4時間〜一晩保温を行う条件を言う。前記プローブは、標的核酸の検出を容易にするために上記のような標識を付されたものを使用することができる。
本発明の核酸の増幅方法の等温下における増幅方法においては、サーマルサイクラーのような装置を必要としない。また本発明の増幅方法では、使用するプライマーを1種類もしくは2種類と従来法よりも少なくすることができる。dNTPのような試薬もPCR等で用いられるものを流用できるため、ランニングコストを従来法よりも低くすることができる。そのため、ルーチンワークを行なっている遺伝子検査等の分野で好適に使用できる。さらに、本発明の方法はPCR法よりも短時間により多くの増幅産物を得られることから、簡便、迅速、高感度な遺伝子検出方法として利用することができる。
ゲノムレベルの遺伝子解析においては、大量の塩基配列を解析するために反応系を微量化し、さらに集積度を高める試みがなされている。その手段の一つとして、最先端の超微細加工技術を駆使して、ゲノム解析の基本プロセス、例えば、DNAの細胞からの抽出、DNA増幅反応、電気泳動、ハイブリダイゼーション、目的DNAの検出等のプロセスを数cm角〜指先大のマイクロチップ上に集積化したものが開発されている。該システムはマイクロチップ、あるいはナノチップと呼ばれている。
このようなシステムにおける遺伝子増幅反応として現在はPCR法が考えられているが、該方法は経時的に温度の上昇、下降を繰り返す温度制御のための手段を必要とするため、システムが複雑なものとなる。これに対し、等温条件下で核酸を増幅できる本発明の方法はシステムの単純化が可能であり、上記のような集積化されたシステムでの利用に非常に好適である。さらに、本発明の技術を利用してさらに高い集積度のシステムの構築が可能となる。
(7)本発明のキット
本発明は、前述の本発明の核酸の増幅方法、または本発明の核酸の検出方法に使用されるキットを提供する。1つの実施態様において、該キットは、パッケージされた形態において、鎖置換反応におけるDNAポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼの使用のための指示書を含むことを特徴とする。さらに、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼならびに鎖置換反応用緩衝液を含むキットは本発明の方法に好適に使用される。あるいは、市販の鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼを指示書に従って選択し、使用してもよい。さらに、RNAを鋳型とする場合の逆転写反応用試薬を含んでもよい。DNAポリメラーゼは、上記(3)記載の本発明に使用されるDNAポリメラーゼから選択することができる。また、エンドヌクレアーゼは、上記(2)記載のエンドヌクレアーゼから選択することができる。さらに、該鎖置換反応用緩衝液は、上記(4)記載の反応バッファー組成を有するものが好適に使用できる。
上記「指示書」とは、当該キットの使用方法、例えば鎖置換反応用試薬液の調製方法、推奨される反応条件等を記載した印刷物であり、パンフレットまたはリーフレット形式の取り扱い説明書のほか、キットに添付されたラベル、キットが納められたパッケージ等に記載されたものを含む。さらに、インターネットのような電子媒体を通し、開示、提供された情報も含まれる。
さらに、本発明のキットにおいては、前述の(4)で例示したような、ビシン、トリシン、ヘペス、リン酸塩あるいはトリス緩衝成分を含有する反応バッファー、及びアニーリング溶液が含まれていてもよい。また、鎖置換能を有するDNAポリメラーゼやRNaseHが含まれていてもよい。さらに、修飾されたデオキシリボヌクレオチドあるいはデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログを含有していてもよい。
さらに、標的核酸の検出方法に使用されるキットは、上記の指示書、増幅反応のための試薬類の他、標的核酸の増幅に適したキメラオリゴヌクレオチドプライマー、増幅された標的核酸を検出するための試薬、例えばプローブ等を含むものであってもよい。
また、本発明のキットは、上記の本発明に使用されるキメラオリゴヌクレオチドプライマー及び/又は本発明のプローブを含有するキットも包含する。
(8)本発明の組成物
本発明は、前述の本発明の核酸の増幅方法、または本発明の核酸の検出方法に使用される組成物を提供する。該組成物としては、例えば、上記(2)に記載のエンドヌクレアーゼならびに上記(3)に記載のDNAポリメラーゼを含有するものが挙げられる。さらに、増幅反応を行うための成分として、緩衝成分やマグネシウム塩、dNTP等を含んでいてもよい。さらに、修飾されたデオキシリボヌクレオチドあるいはデオキシヌクレオチド3リン酸のアナログを含有していてもよい。緩衝成分やその他の添加物としては上記の(4)に記載されたものを使用することができる。
特に好適な態様としては、本発明の核酸増幅方法に適した組成で上記の各種成分が含有された組成物を挙げることができ、該組成物は適切な鋳型とキメラオリゴヌクレオチドプライマーを添加するのみで増幅反応を実施することができる。さらに、増幅対象があらかじめ明らかである場合には、当該増幅対象の増幅に適したキメラオリゴヌクレオチドプライマーを含有する組成物が好適である。
(9)本発明の核酸を所定の領域に整列させた核酸固定化物とその製造方法
DNAチップは、多数の異なる遺伝子あるいはDNAの断片をスライドグラス等の固相担体上の所定の領域あるいは所定の位置に整列させて固定化した核酸固定化物であり、DNAマイクロアレイ(DNAアレイ)とも呼ばれる。DNAチップは、試料より調製した核酸試料、好ましくは標識された核酸試料と接触させてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸試料中に存在する、DNAチップ上の所定の領域に整列させて固定化されたDNAと相補的な配列を有する核酸の存在を調べる目的で使用される。試料中の多数の核酸を一度の操作で検出、定量できることから、DNAチップは遺伝子の発現解析や変異あるいは多型解析を飛躍的に加速させる手段として非常に有用である。二本鎖核酸が所定の領域に整列させて固定化されたDNAチップは適切な変性処理の後にハイブリダイゼーション工程に使用されるが、検出しようとする標的核酸に相補的な一本鎖DNAが所定の領域に整列させて固定化されたDNAチップは、標的核酸の検出に特に好適である。
上記のように、本発明の方法により所望のDNAを一本鎖の状態で増幅することができる。増幅物の精製方法に限定はないが、イソプロパノール沈殿による精製が好ましい。こうして得られたDNA、特に好ましくは実質的にその相補鎖を含有しない一本鎖のDNAは、DNAチップ上に固定するDNA断片として好適に使用できる。即ち、本発明の方法は、DNAチップ作製において所定の領域に整列させて固定化するDNAを調製する方法として好適に使用できる。こうして得られたDNAを所定の領域に整列させて固定する担体は不溶性のものであれば特に限定はなく、ガラス、プラスチック等で作製された板状の担体の他、ニトロセルロースやナイロン製の膜状の担体が好適に使用される。また、その固定化にあたっては公知の核酸固定化方法が使用できる。上記のDNAはそのまま担体に固定化を行う他、適当なリンカーを介して、または複数分子のDNAをライゲーションさせたうえで固定化してもよい。さらに、本発明の製造方法においては、増幅された核酸に修飾されたデオキシリボヌクレオチドを取り込ませることができるため、該修飾基を用いて当該核酸固定化物を作製することができる。
本発明の方法により増幅されたDNAを所定の領域に整列させて固定化した核酸固定化物、例えばDNAチップを試料より調製された標的核酸を含む可能性のある核酸試料と接触させ、ハイブリダイゼーションを実施することにより、当該核酸固定化物上の核酸とハイブリダイズした標的核酸を検出、定量することができる。特に、本発明の方法により増幅された一本鎖のDNAを所定の領域に整列させて固定化したDNAチップは、従来よりも簡便な操作で、かつ、高感度、高再現性での標的核酸の検出を可能とする。
(10)本発明の核酸の大量製造方法
上記のように、本発明の一態様により等温で実施可能な核酸の増幅方法が提供される。該方法は、増幅しようとする核酸の鋳型となる核酸の他、反応に必要な各種成分を混合して等温条件下で反応させることにより、所望の核酸を製造することができる。PCR法では反応混合物の温度を経時的に変化させる必要があるため、反応のスケールは温度制御が可能な容量(通常、200μl以下)に限られ、スケールアップは困難である。一方、当該方法にはこのような制約はなく、反応混合物の容量を増加させることにより大量の核酸を製造することが可能である。本発明の方法においては、特に限定はされないが、例えば200μlを越える量が好適であり、好ましくは300μl以上、特に好ましくは500μl以上である。当該方法は1分子の鋳型から多数の相補鎖分子が合成され、さらにこれらの相補鎖分子を鋳型とした核酸の合成も可能であることから、鋳型ならびにプライマーを適切に設定することにより、所望の核酸を効率よく、大量に製造することができる。さらにまた、当該方法がPCR法のような特殊な装置、頻繁な温度変化を必要としないことは設備、エネルギーのコスト面からも有利であり、工業的な核酸の大量製造方法としても優れている。
さらに、本発明の製造方法では、前述の(4)で例示したような反応バッファー及びアニーリング溶液の使用により、微量の鋳型核酸からも目的とする核酸配列を増幅し、製造することができる。この場合、使用するエンドヌクレアーゼとDNAポリメラーゼは特に限定はされないが、例えば大腸菌由来のRNaseH及びBcaBEST DNAポリメラーゼの組み合わせが好ましい。さらに、上記エンドヌクレアーゼ及びDNAポリメラーゼはともにその種類によって好適に使用できるユニット数が異なる場合が予想されるが、その際には増幅産物量の最大を指標にして、該バッファーの組成および酵素の添加量を調整すればよい。
また、本発明の方法は、上記のDNAチップに固定化するためのDNA断片のような多種類、かつ大量のDNA断片を供給する方法として有用である。すなわち、1つの態様としては、単純な反応工程でDNA断片を大量に得ることができ、別の態様としては限られた種類のプライマーを使用して非常に多種類のDNA断片を得ることができる。後者は、本発明の方法の鋳型となる核酸を公知の核酸増幅方法、例えばPCR法等であらかじめ増幅する工程を組み合わせて実施することができる。例えば、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)第24巻、19号、3778〜3783頁(1996)に記載のタグ配列を有するランダムプライマーを使用して核酸を増幅する方法あるいは、ジェノミックス(Genomics)第13巻、718〜725頁(1992)に記載の縮重プライマー(Degenerate primer)を用いたDOP−PCR(Degenerate Oligonucleotide−Primed PCR)法に基づき、限られた種類のプライマーを使用してあらゆる種類の鋳型核酸を増幅することができる。さらに、前述のランダムプライマーや縮重プライマーに付加されたタグ配列にあわせて本発明の核酸の増幅方法に使用されるプライマーを設計すれば、上記の工程で作成されたあらゆる鋳型核酸について1もしくは数種類のプライマーで本発明の核酸増幅反応を実施することができる。このように、適切な鋳型核酸の調製工程と本発明の方法を組み合わせれば、多種類のDNA断片を従来よりも安価で、大量に供給することができる。
核酸を含有する医薬としては、細胞内において有用なポリペプチドを発現させるための二本鎖DNA、目的の遺伝子の発現を抑制するための一本鎖アンチセンスDNA等があり、これらは適切な手段、例えばリポソーム等の遺伝子導入用担体を使用して生体に投与される。本発明の核酸の製造方法は、上記のような医薬用途等の一本鎖、もしくは二本鎖の核酸を大量に製造するための方法として好適である。さらに、本発明の方法では、例えば生体内での分解を抑制するようなdNTPのアナログを含有する核酸を製造することも容易である。
本発明において増幅されたDNA断片は通常のヌクレオチドにより構成されるため、例えば、増幅されたDNAはその内部の制限酵素部位を用いて適当なベクターにサブクローニングすることができる。さらにRFLPのような制限酵素を用いた処理をすることも問題なくでき、遺伝子検査の分野においても広く利用できる。また、増幅断片中にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を組込んでおけば、増幅断片を鋳型としてRNAを合成し、例えば、合成されたRNAをプローブとして使用可能である。当然ながら、通常のdNTPの代わりに蛍光標識されたdNTPを使用して本発明の核酸増幅方法を実施することにより、蛍光標識されたDNAプローブを作製することができる。
本発明の核酸の増幅方法の特徴を以下に列挙する。
1.少ない鋳型量より、大量の核酸を増幅することができる。2種のプライマーを使用した場合には増幅産物は2次関数的に増加する。
2.等温でも実施でき、その場合サーマルサイクラーのような装置を必要としない。このため、容易に反応容量をスケールアップすることができる。
3.通常、増幅反応は1または2種のキメラオリゴヌクレオチドプライマーと2種の酵素(DNAポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼ)で実施される。
4.1分子のプライマーより多数のDNA鎖が合成されるため、プライマー量が増幅産物量を制限することがない。さらに、プライマー使用効率が約100%とPCR法に比べて極めて高い。
5.一本鎖、二本鎖のDNAを目的に応じ選択的に増幅することができる。
6.増幅反応に(α−S)dNTPのようなdNTPアナログを必要としないため、試薬コストが安価である。また、dNTPアナログを含有しない、天然型の核酸を取得することが可能である。
7.核酸複製方法と組み合わせることにより、安価で大量のDNA増幅断片を供給することができる。
8.本発明の検出方法は、従来法と比較して同等以上の検出感度を有する。さらに、同じ検出感度であれば、従来法よりも短時間で検出することができる。
9.マイクロチップ、ナノチップにおける核酸の増幅、検出の自動化、微量化、高集積化に適した方法である。
以上のように、本発明の方法は遺伝子の検出、工業的スケールでの核酸製造のいずれにも適した方法である。
実施例
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
参考例1 好熱菌バチルス カルドテナックス由来のRNaseHの調製
トリプトン(ディフコラボラトリーズ社製)0.2%、酵母エキス(ディフコラボラトリーズ社製)1.5%を含む培地(pH6.5)100mlにバチルスカルドテナックスYT−G株(Bucillus caldotenax YT−G、ドイッチェ ザムルンク フォン ミクロオルガニスメンより購入:DSM406)を植菌し、60℃で140分間振とう培養し、この培養液を前培養液とした。ついで、同組成の培地3リットルに前培養液30mlを接種し、通気量2.5リットル/分、攪拌数250回転/分、温度60℃で5時間培養した。
培養液を遠心分離(5000×g、15分)し、集菌した。湿菌重量402gの菌体を10mM メルカプトエタノール、0.5M NaCl、1mM EDTA、20μM PAPMSFを含む50mMトリス−HCl緩衝液(pH75)1000mlに懸濁し、MINI−Lab(APV GAULIN/RANNIE社製)にて菌体を破砕後、遠心分離で細胞残渣を除き、上清を回収した。
得られた上清液に終濃度が0.1%となるようにポリエチレンイミン溶液を加え、攪拌後、1時間放置し、遠心分離にて上清を回収した。この上清液に50%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、遠心分離で得られた沈殿を10mMメルカプトエタノール、0.1mM EDTA、50mM NaCl、10%グリセロールを含む20mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)に溶解し、同緩衝液に対して透析した。同緩衝液で平衡化した280mlのDE52カラム(ワットマン社製)に透析試料を負荷し、非吸着画分を集めた。
さらに平衡化に用いた緩衝液420mlで洗浄し、洗浄画分を集めた。DE52カラムクロマトグラフィーでの非吸着画分と洗浄画分を混合し、10mM メルカプトエタノール、0.1mM EDTA、50mM NaCl、10%グリセロールを含む20mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化した240mlのP−11カラム(ワットマン社製)に負荷した。その後、0〜0.5M NaClを含む平衡化緩衝液で溶出させた。
得られた活性画分を透析チューブに入れ、固体のポリエチレングリコール20000上に置き、4℃で脱水濃縮した。次に、5mM メルカプトエタノール、0.5mM EDTA、30mM NaCl、50%グリセロールを含む25mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化した300mlのSuperdex G−200カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に、この酵素濃縮液を負荷した。平衡化に用いた緩衝液で溶出させ、活性画分を得た。10mM メルカプトエタノール、0.1mM EDTA、50mM NaCl、10%グリセロールを含む20mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化した15mlのHeparin−Sepharoseカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に活性画分を負荷し、0〜0.5M NaClを含む平衡化緩衝液で溶出させた。
得られた活性画分を10mM メルカプトエタノール、0.1mM EDTA、50mM NaCl、10%グリセロールを含む20mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化した5mlのHitrap−SPカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に負荷し、0〜0.5M NaClを含む平衡化緩衝液で溶出させた。得られた活性画分を、再度5mMメルカプトエタノール、0.5mM EDTA、30mM NaCl、50%グリセロールを含む25mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化した300mlのSuperdex G−200カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に負荷し、得られた活性画分をRNaseH標品(酵素液)とした。
耐熱性RNaseH活性は、次の方法により測定した。
ポリ(rA)及びポリ(dT)(ともにアマシャム ファルマシア バイオテク製)1mgをそれぞれ1mM EDTAを含む40mM トリス−HCl(pH7.7)1mlに溶解し、ポリ(rA)溶液及びポリ(dT)溶液を調製した。
次に、4mM MgCl、1mM DTT、0.003%BSA、4%グリセロールを含む40mM トリス−HCl(pH7.7)に、終濃度20μg/mlとなるポリ(rA)溶液、終濃度30μg/mlとなるポリ(dT)溶液を加え、37℃で10分間反応後、4℃に冷却し、ポリ(rA)−ポリ(dT)溶液を調製した。
ポリ(rA)−ポリ(dT)溶液100μlに酵素液1μlを加え、40℃で10分間反応させ、0.5M EDTA 10μlを加えて反応を停止させた後、260nmの吸光度を測定した。対照として、上記反応液に0.5M EDTA10μlを加えた後、40℃で10分間反応させ、吸光度を測定した。その後、EDTA非存在下で反応させ求めた吸光度から対照の吸光度を引いた値(吸光度差)を求めた。すなわち、酵素反応によってポリ(rA)−ポリ(dT)ハイブリッドから遊離したヌクレオチドの濃度を吸光度差から求めた。RNaseHの1単位は、1nmolのリボヌクレオチドが遊離したのに相当するA260を10分間に増加させる酵素量とし、下記の式に従って算出した。なお、酵素液を希釈した場合は、下記式の値を希釈率で補正した。
単位(unit)=〔吸光度差×反応液量(ml)〕/0.0152
参考例2 バチルス カルドテナックス RNaseHII遺伝子のクローニング
(1)バチルス カルドテナックス ゲノムDNAの調製
バチルス カルドテナックス YT−G株(DSM406)を60mlのLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、pH7.2)に植菌し、65℃、20時間培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し集菌した。得られた菌体を2mlの25%ショ糖、50mM トリス−HCl(pH8.0)に懸濁し、0.2mlの10mg/ml塩化リゾチーム(ナカライテスク社製)水溶液を加えて、20℃で1時間反応させた。反応終了後、この反応液に12mlの150mM NaCl、1mM EDTA、20mM トリス−HCl(pH8.0)、0.1mlの20mg/mlプロテイナーゼK(宝酒造社製)及び1mlの10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を加え、37℃で1時間保温した。
次いで2.1mlの5M NaClと2mlのCTAB−NaCl溶液〔10%セチルトリメチルアンモニウムブロミド(ナカライテスク社製)、0.7M NaCl〕を加えてよく混合し、65℃で10分間保温した。これに等量のクロロホルム/イソアミルアルコール混合液(24:1、v/v)を加えて10分間緩やかに混合した後、10分間遠心(10000×g)を行った。遠心終了後、得られた上清に等量の100mM トリス−HCl(pH8.0)飽和フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合液(25:24:1、v/v)を加えて10分間緩やかに混合した後、更に10分間遠心(10000×g)を行った。遠心終了後、得られた上清に0.6容の2−プロパノールを加え、生じた糸状の沈殿をガラス棒で巻き取った。これを70%エタノール水溶液で洗浄し、風乾した後に0.5mlのTE緩衝液に溶解してゲノムDNA溶液を得た。
(2)RNaseHII遺伝子中央部のクローニング
様々な生物由来のRNaseHIIのアミノ酸配列間で保存されている部分のうち、モチーフIとモチーフIII〔バイオケミストリー(Biochemistry)、第38巻、第605−608頁(1999)〕をもとにして配列表の配列番号1及び2記載のオリゴヌクレオチドBsuII−3とオリゴヌクレオチドBsuII−6を合成した。
上記参考例2−(1)で調製したバチルス カルドテナックス ゲノムDNA溶液1μlを鋳型にして、100pmolのBsuII−3及び100pmolのBsuII−6をプライマーに用い、100μlの容量でPCRを行った。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラ タック ポリメラーゼ(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、45℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとして、50サイクル行った。反応終了後、反応液にフェノール処理とエタノール沈殿を行ってDNAを精製した。得られたDNAをT4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いてDNAの末端を平滑化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅された約0.4kbのDNA断片をゲルから回収した。得られた約0.4kb DNA断片を、SmaI(宝酒造社製)で消化したpUC119(宝酒造社製)にT4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いて連結し、大腸菌JM109を形質転換した。この形質転換体を培養し、約0.4kbのDNAが挿入されたプラスミド21−12を得た。
(3)RNaseII遺伝子上流部分のクローニング
上記参考例2−(2)で得たプラスミド21−12の約0.4kbの挿入断片の塩基配列を決定し、それをもとに配列表の配列番号3及び4記載のオリゴヌクレオチドRNII−S1とオリゴヌクレオチドRNII−S2を合成した。
参考例2−(1)で調製したバチルス カルドテナックス ゲノムDNAをBamHI(宝酒造社製)で消化し、得られたBamHI消化物とSau3AIカセット(宝酒造社製)をT4 DNAリガーゼで連結し、これを鋳型、RNII−S2を1次PCRのプライマー、RNII−S1を2次PCRのプライマーとして、タカラ LA PCR イン ビトロ クローニング キット(宝酒造社製)に添付のプロトコールに従って操作を行った。フェノール処理とエタノール沈殿によって2次PCR液からDNAを精製し、T4 DNAポリメラーゼを用いてこのDNAの末端を平滑化し、その後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅した約1.5kbのDNA断片をゲルから回収した。得られた約1.5kbのDNA断片を、SmaIで消化したpUC119にT4 DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌JM109を形質転換した。
この形質転換体を培養し、約1.5kbのDNAが挿入されたプラスミドB25N16を得た。
(4)RNaseII遺伝子全域のクローニング
参考例2−(3)で決定したプラスミド21−12の約0.4kbの挿入断片の塩基配列をもとに配列表の配列番号5及び6記載のオリゴヌクレオチドRNII−S5とオリゴヌクレオチドRNII−S6を合成した。
参考例2−(2)で調製したプラスミド21−12を鋳型に、RNII−S5とRNII−S6をプライマーとしてPCRを行った。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラ EXタック ポリメラーゼ(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒を1サイクルとして、25サイクル行った。反応終了後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅した約0.3kbのDNA断片をゲルから回収した。得られた約0.3kbのDNA断片をDIGハイプライム(ロシュ ダイアグノスティックス社製)でジゴキシゲニン標識した。
上記のジゴキシゲニン標識DNAをプローブとして、参考例2−(1)で調製したバチルス カルドテナックス ゲノムDNAをHindIII(宝酒造社製)、SacI(宝酒造社製)による消化、及びHindIIIとSacIの2重消化をそれぞれ行い、得られた消化物とサザンハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションと検出はDIGルミネッセント デテクションキット(ロシュ ダイアグノスティックス社製)を添付のプロトコールに従って用いた。その結果、HindIII消化では約4.5kb断片、SacI消化では約5.8kb、HindIIIとSacIの2重消化では約1.3kbのDNA断片がプローブとハイブリダイズした。
上記結果に基づき、バチルス カルドテナックス ゲノムDNAをHindIII消化してアガロースゲル電気泳動を行い、約4.5kb付近のDNAをゲルから回収した。得られたDNA断片をSacIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、1.3kb付近のDNAをゲルから回収した。このDNAを、HindIIIとSacIで消化したpUC19(宝酒造社製)にT4 DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌HB101を形質転換した。
得られた形質転換体をハイボンドNTM(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)にレプリカし、上記のジゴキシゲニン標識プローブを用いて、常法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行った。こうして得られた陽性クローンからプラスミドpRHB1を調製した。
次に、pRHB1に挿入されたDNAの塩基配列を決定し、それから予想されるアミノ酸配列を枯草菌のRNaseHIIのアミノ酸配列と比較したところ、pRHB1中のDNAは開始コドンから約40bpを欠いていることが予想された。そこで以下のようにして完全長のRNaseH遺伝子を構築した。
参考例2−(3)で調製したB25N16をHindIIIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行った後、約160bpのDNA断片をゲルから回収した。得られた約160bpのDNA断片を、上記で調製したpRHB1のHindIII消化物にT4 DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌HB101を形質転換した。得られた形質転換体からプラスミドを調製した。
次に、予想される開始コドン周辺の塩基配列をもとにして、配列表の配列番号7記載のオリゴヌクレオチドRNII−Ndeを合成し、上記で得られた形質転換体から調製したプラスミドを鋳型とし、RNII−NdeとRNII−S6をプライマーとして、PCRを行った。この時に約0.7kbのDNA断片が増幅するプラスミドを選択し、このプラスミドをpRHB11とした。
こうして得られたプラスミドpRHB11に挿入されたDNA断片の塩基配列を決定した。その結果を解析したところ、RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。この塩基配列を配列表の配列番号8に示す。また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号9に示す。
なお、プラスミドpRHB11で形質転換された大腸菌HB101は、
Escherichia coli JM109/pRHB11と命名、表示され、平成12年9月5日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−7655として寄託されている。
(5)バチルス カルドテナックス RNaseHII遺伝子の発現
pRHB11又はpRHB1で形質転換された大腸菌HB101を100μg/mlのアンピシリンを含む5mlのLB培地に植菌し、37℃で1晩振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を0.5mlのTE緩衝液に懸濁して超音波破砕し、遠心分離によって上清を得、これを菌体粗抽出液とした。
10mM トリス−HCl(pH8.0)、1mM ジチオスレイトール(ナカライテスク社製)、0.003%ウシ血清アルブミン(フラクションV、シグマ社製)、4%グリセロール、20μg/mlポリ(dT)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)、30μg/mlポリ(rA)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を混合し、37℃で10分間保温した。これをRNaseH活性を測定するための基質液として使用した。
100μlの基質液に1μlの1M MnClを加えて40℃で保温し、これに10μlの10倍希釈した菌体粗抽出液を加えて反応を開始した。40℃で30分間反応を行った後、10μlの0.5M EDTAを加えて反応を停止し、260nmにおける吸光度を測定した。その結果、pRHB1を保持する大腸菌HB101から調製した菌体粗抽出液で反応させたときに比べて、pRHB11を保持する大腸菌HB101から調製した菌体粗抽出液で反応させたときに明らかに260nmにおける吸光度の値が高かった。よって、pRHB11はRNaseH遺伝子を含んでおり、このpRHB11を保持する大腸菌でRNaseH活性を発現することが明らかになった。
(6)精製RNaseHII標品の調製
参考例2−(4)で得られたpRHB11で形質転換された大腸菌HB101を100μg/mlのアンピシリンを含む1リットルのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を52.3mlのソニケーションバッファー〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、2mM 2−メルカプトエタノール、10%グリセロール、2mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を60℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpmで10分間の遠心分離を行い、上清を集め、50.0mlの熱処理上清液を得た。
この溶液をバッファーC〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、2mM 2−メルカプトエタノール、10%グリセロール〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。素通りしたRNaseHII画分51mlをバッファーCで平衡化したRESOURSE Sカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて0〜500mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約240mM NaClのところに溶出されたRNaseII画分を得た。このRNaseII画分3.0mlを2回に分けて50mM NaClを含むバッファーCで平衡化したPD−10カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、得られた溶出液7.0mlを50mM NaClを含むバッファーCで平衡化したHiTrap−heparinカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて50〜550mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約310mM NaClのところに溶出されたRNaseII画分を得た。このRNaseII画分4.4mlをセントリコン−10(アミコン社製)を用いた限外ろ過により濃縮し、280μlの濃縮液を100mM NaCl、0.1mM EDTAを含む50mM トリス−HCl(pH8.0)で平衡化したSuperdex200ゲルろ過カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、同じバッファーで溶出を行った結果、RNaseHIIは、35キロダルトンの分子量に相当する位置に溶出された。この分子量は、RNaseHIIが1量体として存在する場合に相当する。こうして溶出されたRNaseHIIをBcaRNaseHII標品とした。
上記で得られたBcaRNaseHII標品を用いて、以下の方法により酵素活性を測定した。
BcaRNaseHII標品1μlに40℃であらかじめインキュベーションした反応液〔20mM ヘペス−水酸化カリウム(pH7.8)、0.01%牛血清アルブミン(宝酒造社製)、1%ジメチルスルホキシド、10mM 塩化マンガン、20μg/mlポリ(dT)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)、30μg/mlポリ(rA)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)〕100μlを添加し、40℃で10分間反応さた後、0.5M EDTA(pH8.0)10μlで反応を停止し、260nmの吸収を測定した。
その結果、Bca RNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例3 バチルス カルドテナックス RNaseHIII遺伝子のクローニング
(1)RNaseHIII遺伝子断片のクローニング
バチルス サブチリスのRNaseHIIIのアミノ酸配列〔バイオケミストリー:Biochemistry、第38巻、第605−608頁(1999)〕について、他の生物由来のRNaseIIIのアミノ酸配列とのホモロジーを調べ、これらの間でよく保存されている領域のアミノ酸配列からRNaseHIIIをコードする遺伝子を探索するための配列表の配列番号10〜13記載のプライマーBsuIII−1、BsuIII−3、BsuIII−6、BsuIII−8を合成した。
参考例2−(1)で調製したバチルス カルドテナックス ゲノムDNA 200ngを鋳型にし、100pmolのBsuIII−1及び100pmolのBsuIII−8をプライマーにして、50μlの容量で1回目のPCRを行った。更にその反応液1μlを鋳型として100pmolのBsuIII−3及び100pmolのBsuIII−6をプライマーに用いて100μlの容量で2回目のPCRを行った。この2回のPCRでのDNAポリメラーゼには、タカラタック ポリメラーゼ(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、1回目のPCRは94℃で30秒、45℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとして、25サイクル行い、2回目は30サイクル行なった。
増幅して得られた約450bpのDNA断片をT4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いて末端を平滑化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、増幅された約450bpのDNA断片を回収した。得られた約450bpのDNA断片を、SmaI(宝酒造社製)で消化したpUC119(宝酒造社製)にT4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)を用いて連結し、大腸菌JM109を形質転換した。該形質転換体を培養し、約450bpのDNA断片が挿入されたプラスミドpBCA3204を得た。
(2)サザンハイブリダイゼーション法によるRNaseHIII遺伝子のクローニング
参考例3−(1)で得られたpBCA3204に挿入されたDNA断片の塩基配列を決定し、得られた配列もとに、配列表の配列番号14及び15記載のプライマーRNIII−S3及びBcaRNIII−3を合成した。このプライマーRNIII−S3及びBcaRNIII−3を用いて、pBCA3204を鋳型にし、100μlの容量でPCRを行なった。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラZタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは98℃で0秒、55℃で0秒、72℃で20秒を1サイクルとして、30サイクル行った。反応終了後、フェノール−クロロホルム抽出、続いてエタノール沈殿を行った。そして、アガロースゲル電気泳動を行い、約0.4kbのDNA断片をゲルから回収した。得られた約0.4kbのDNA断片をDIG DNA標識キット(ベーリンガー マンハイム社製)で標識し、プローブを調製した。
参考例2−(1)で調製したバチルス カルドテナックス ゲノムDNA 20μgをBamHI、EcoRI、HindIII、PstI、XbaI(すべて宝酒造社製)で、それぞれ完全消化した後、その半分量をアガロース電気泳動した。アガロースゲルからDNAを0.4N 水酸化ナトリウムをもちいてナイロンメンブレンにトランスファーした後、120℃で30分間固定した。次に、メンブレンを30mlハイブリダイゼーションバッファー〔43.4g/リットル塩化ナトリウム、17.6g/リットル クエン酸ナトリウム、1%ブロッキング剤(ベーリンガー マンハイム社製)、0.1%N−ラウロイルサルコシン、0.02%ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)〕の入ったシールドバック中で、60℃、4時間プレインキュベーションした後、プローブを含むハイブリダイゼーションバッファー5mlの入ったシールドバック中で、60℃、16時間インキュベーションした。
次に、メンブランを50mlの0.1%SDSをふくむ2×SSC(17.5g/リットル NaCl、8.8g/リットル クエン酸ナトリウム)中、室温で2回、50mlの0.1%SDSを含む0.5×SSC(4.3g/リットル 塩化ナトリウム、1.9g/リットル クエン酸ナトリウム)中、45℃で2回洗浄した後、DIG核酸検出キット(ベーリンガーマンハイム社製)を用いて、プローブと相補的な配列を持った約8kbのEcoRI断片、約4.5kbのPstI断片、約1kbのHindIII断片を検出した。
PstIで完全消化したバチルス カルドテナックス ゲノムDNAの残り半分量をアガロース電気泳動し、約4.5kbのPstI断片をゲルから回収した。次に、このDNA断片と、PstI消化した後アルカリフォスファターゼ(宝酒造社製)を用いて脱リン酸化したプラスミドベクターpTV119Nとをライゲーションし、大腸菌JM109を形質転換した。
プライマーRNIII−S3及びBcaRNIII−3を用いて、コロニーを鋳型にし、50μlの容量でPCRを行ない、RNaseHIII遺伝子を持つと考えられるコロニーを選択した。 このPCRには、タカラZタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは98℃で0秒、55℃で0秒、72℃で20秒を1サイクルとして、30サイクル行った。この結果、No.88のコロニーに目的の遺伝子が含まれていることがわかった。
次に、このNo.88のコロニーからプラスミドを調製し、これを鋳型にプライマーRN−N(宝酒造社製)およびBcaRNIII−3又はプライマーM4(宝酒造社製)及びRNIII−S3を用いてPCRを行い、RNaseHIII遺伝子の全長が含まれているかどうかを調べた。その結果、RNaseHIIIの全長が含まれていることが分かり、このプラスミドをpBCA3P88とした。
(3)RNaseHIII遺伝子を含むDNA断片の塩基配列の決定
参考例3−(2)で得られたプラスミドpBCA3P88の挿入DNA断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定した。
得られた塩基配列の結果を解析したところ、RNaseHIIIのN末端アミノ酸配列を有するオープンリーディングフレームが見出された。このオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号16に、また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号17にそれぞれ示す。
(4)RNaseHIIIを発現させるためのプラスミドの構築
参考例3−(2)に記載のプラスミドpBCA3P88を鋳型にし、上記得られたRNaseHIIIのオープンリーディングフレームの周辺の配列を参考として設定した配列表の配列番号18記載のBcaRNIIINde及びM13プライマーM4(宝酒造社製)を用いて、100μlの容量でPCRを行なった。PCRでのDNAポリメラーゼはパイロベストDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分を1サイクルとして、30サイクル行った。この結果増幅した約4kbのDNA断片をNdeI(宝酒造社製)で消化し、アガロース電気泳動を行い、約1.4kbのNdeI断片をゲルから回収した。得られた約1.4kbのDNA断片を、NdeI消化した後アルカリフォスファターゼ(宝酒造社製)を用いて脱リン酸化したpTV119Nd(pTV119NのNcoIサイトをNdeIサイトに変換したもの)とライゲーションを行い、大腸菌JM109を形質転換した。
次に、NdeI断片中のRNaseHIII遺伝子がpTV119Ndベクターのlacプロモーター下流につながったプラスミドをスクリーニングするためコロニーを鋳型にし、プライマーRN−N(宝酒造社製)およびBcaRNIII−3を用いて、50μlの容量でPCRを行ない、RNaseHIII遺伝子を持つと考えられるコロニーを選択した。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラZタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは98℃で0秒、55℃で0秒、72℃で20秒を1サイクルとして、30サイクル行った。この結果、No.2のコロニーがNdeI断片中のRNaseHIII遺伝子がpTV119Ndベクターのlacプロモーター下流につながったプラスミドであることが分かり、このプラスミドをpBCA3Nd2とした。
さらに該プラスミド中の挿入DNA断片の塩基配列をジデオキシ法で確認したところ、開始コドンをGTGからATGに変換したこと以外、PCRに起因する変異のないことを確認した。
なお、プラスミドpBCA3Nd2で形質転換された大腸菌JM109は、Escherichia coli JM109/pBCA3Nd2と命名、表示され、平成12年9月5日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERMBP−7653として寄託されている。
(5)精製RNaseHIII標品の調製
参考例3−(4)で得られたpBCA3Nd2で形質転換された大腸菌JM109を100μg/mlのアンピシリンを含む2リットルのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を39.6mリットルのソニケーションバッファー〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、2mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を60℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpmで10分間の遠心分離を行い、上清を集め、39.8mlの熱処理上清液を得た。
この熱処理上清液をバッファーA〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。
素通りしたRNaseHIII画分45mlをバッファーB〔50mM トリス−HCl(pH7.0)、1mM EDTA〕2リットルを外液として、2時間の透析を3回行なった。透析後の酵素液55.8mlをバッファーBで平衡化したRESOURSE Sカラム(ファルマシア ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて0〜500mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約105mM NaClのところに溶出されたRNaseHIII画分を得た。
この画分7.0mlにNaCl濃度が150mMになるように1M NaClを含むバッファーBを添加し、150mM NaClを含むバッファーBで平衡化したHiTrap−heparinカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供した。その結果、RNaseHIIIはHiTrap−heparinカラムを素通りした。
素通りしたRNaseHIII画分7.5mlをセントリコン−10(アミコン社製)を用いた限外ろ過により濃縮し、190μlの濃縮液を100mM NaCl、0.1mM EDTAを含む50mM トリス−HCl(pH7.0)で平衡化したSuperdex200ゲルろ過カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、同じバッファーで溶出を行った結果、RNaseHIIIは、33キロダルトンの分子量に相当する位置に溶出された。この分子量は、RNaseHIIIが1量体として存在する場合に相当する。
こうして溶出されたRNaseHIIIをBca RNaseHIII標品とした。
上記で得られたBca RNaseHIII標品を用いて、以下の方法により酵素活性を測定した。
Bca RNaseHIII標品1μlに40℃であらかじめインキュベーションした反応液〔20mM ヘペス−水酸化カリウム(pH7.8)、0.01%牛血清アルブミン(宝酒造社製)、1%ジメチルスルホキシド、4mM酢酸マグネシウム、20μg/mlポリ(dT)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)、30μg/mlポリ(rA)(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)〕100μlを添加し、40℃で10分間反応さた後、10μ10.5M EDTA(pH8.0)で反応を停止し、260nmの吸収を測定した。その結果、Bca RNaseHIII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例4 ピロコッカス フリオサスのRNaseHII遺伝子のクローニング
(1)ピロコッカス フリオサス ゲノムDNAの調製
トリプトン(ディフコラボラトリーズ社製)1%、酵母エキス(ディフコラボラトリーズ社製)0.5%、可溶性でんぷん(ナカライテスク社製)1%、ジャマリンS・ソリッド(ジャマリンラボラトリー社製)3.5%、ジャマリンS・リキッド(ジャマリンラボラトリー社製)0.5%、MgSO 0.003%、NaCl 0.001%、FeSO・7HO 0.0001%、CoSO 0.0001%、CaCl・7HO 0.0001%、ZnSO 0.0001%、CuSO・5HO 0.1ppm、KAl(SO 0.1ppm、HBO0.1ppm、NaMoO・2HO 0.1ppm、NiCl・6HO 0.25ppmの組成の培地2リットルを2リットル容のメジュウムボトルにいれ、120℃、20分間殺菌した後、窒素ガスを吹き込み、溶存酸素を除去し、これにピロコッカス フリオサス(Pyrococcus furiosus、ドイッチェ ザムルンク フォン ミクロオルガニスメンより購入:DSM3638)を接種して、95℃、16時間静置培養した後、遠心分離によって菌体を得た。
次に、得られた菌体を4mlの25%ショ糖、50mM トリス−HCl(pH8.0)に懸濁し、0.4mlの10mg/ml塩化リゾチーム(ナカライテスク社製)水溶液を加えて、20℃で1時間反応させた。反応終了後、この反応液に24mlの150mM NaCl、1mM EDTA、20mM トリス−HCl(pH8.0)、0.2mlの20mg/mlプロテイナーゼK(宝酒造社製)及び2mlの10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を加え、37℃で1時間保温した。反応終了後、フェノール−クロロホルム抽出、続いてエタノール沈殿を行い、約1mgのゲノムDNAを調製した。
(2)RNaseHII遺伝子のクローニング
ピロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)の全ゲノム配列が公開されており〔DNA リサーチ(DNA Reseaich),第5巻、第55−76頁(1998)〕、RNaseHIIのホモログをコードする遺伝子(PH1650)が1つ存在することが明らかになっている(配列表の配列番号19、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 ホームページ:http://www.nite.go.jp/)。
そこで、このPH1650遺伝子と一部公開されているピロコッカス フリオサスのゲノム配列(University of Utah,Utah Genome Centerホームページ:http://www.genome.utah,edu/sequence.html)でホモロジー検索をおこなった。その結果、非常にホモロジーの高い配列が見つかった。得られた配列をもとにプライマー1650Nde(配列番号20)及び1650Bam(配列番号21)を合成した。
参考例4−(1)で得たピロコッカス フリオサス ゲノムDNA 200ngを鋳型にして、20pmolの1650Nde及び20pmolの1650Bamをプライマーに用い、100μlの容量でPCRを行った。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラExタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとし、30サイクル行った。増幅した約0.7kbのDNA断片をNdeI及びBamHI(ともに宝酒造社製)で消化し、得られたDNA断片をプラスミドベクターpET3a(ノバジェン社製)のNdeI及びBamHI間に組込んだプラスミドpPFU220を作製した。
(3)RNaseHII遺伝子を含むDNA断片の塩基配列の決定
参考例4−(2)で得られたpPFU220の挿入DNA断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定した。
得られた塩基配列の結果を解析したところ、RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。このオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号22に示す。また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号23に示す。
なお、プラスミドpPFU220で形質転換された大腸菌JM109は、Escherichia coli JM109/pPFU220と命名、表示され、平成12年9月5日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERMBP−7654として寄託されている。
(4)精製RNaseHII標品の調製
参考例4−(2)で得られたpPFU220で大腸菌HMS174(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換し、得られたpPFU220を含む大腸菌HMS174(DE3)を100μg/mlのアンピシリンを含む2LのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を66.0mlのソニケーションバッファー〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、2mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を60℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpmで10分の遠心分離を行い、上清を集め、61.5mlの熱処理上清液を得た。
この熱処理上清液をバッファーA〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。
素通りしたRNaseHII画分60.0mlをバッファーAで平衡化したRESOURSE Sカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて0〜500mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約150mM NaClのところに溶出されたRNaseHII画分を得た。このRNaseHII画分2.0mlをセントリコン−10(アミコン社製)を用いた限外ろ過により濃縮し、250μlの濃縮液を100mM NaCl、0.1mM EDTAを含む50mM トリス−HCl(pH8.0)で平衡化したSuperdex200ゲルろ過カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、同じバッファーで溶出を行った結果、RNaseHIIは、17キロダルトンの分子量に相当する位置に溶出された。この分子量は、RNaseHIIが1量体として存在する場合に相当する。
こうして溶出されたRNaseHIIをPfu RNaseHII標品とした。
上記で得られたPfu RNaseHII標品を用いて、参考例3−(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果、Pfu RNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例5 サーモトガ マリティマ RNaseHII遺伝子のクローニング(1)サーモトガ マリティマ ゲノムDNAの調製
トリプトン1%、酵母エキス0.5%、可溶性でんぷん 1%、ジャマリンS・ソリッド 3.5%、ジャマリンS・リキッド 0.5%、MgSO 0.003%、NaCl 0.001%、FeSO・7HO 0.0001%、CoSO 0.0001%、CaCl・7HO 0.0001%、ZnSO 0.0001%、CuSO・5HO 0.1ppm、KAl(SO 0.1ppm、HBO 0.1ppm、NaMoO・2HO 0.1ppm、NiCl・6HO 0.25ppmの組成の培地2リットルを2リットル容のメディウムボトルにいれ、120℃、20分間殺菌した後、窒素ガスを吹き込み、溶存酸素を除去し、これにサーモトガ マリティマ(Thermotoga maritima、ドイッチェ ザムルンク フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツレンGmbHより購入:DSM3109)を接種して、85℃、16時間静置培養した。
次に、遠心分離によって培地300ml相当分の菌体を集め、3mlのTE緩衝液〔10mM トリス−HCl(pH7.5)、1mM EDTA〕に懸濁し、150μlの10%ラウリル硫酸ナトリウム(ナカライテスク社製)水溶液及び15μlの20mg/mlプロテイナーゼK(宝酒造社製)を加えて37℃で1時間保温した。反応終了後、0.5mlの5M NaClを加えてよく混合した後、0.4mlのCTAB−NaCl溶液〔10%セチルトリメチルアンモニウムブロミド(ナカライテスク社製)、0.7M NaCl〕を加えてよく混合し、65℃で10分間保温した。これに1.5mlのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液(24:1、v/v)を加えて10分間緩やかに混合した後、5分間遠心(20000×g)を行った。遠心終了後、得られた上清に等量の100mMトリス−HCl(pH8.0)飽和フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合液(25:24:1、v/v)を加えて10分間緩やかに混合した後、更に5分間遠心(20000×g)を行った。遠心終了後、得られた上清に0.6容の2−プロパノールを加え、で5分間遠心(10000×g)して得られた沈殿を、70%エタノール水溶液で洗浄し、風乾した後に200μlのTEに溶解してゲノムDNA溶液を得た。
(2)RNaseHII遺伝子のクローニング
サーモトガ マリティマ ゲノムDNAを鋳型としたPCRを行うことによりRNaseH遺伝子を含む増幅DNA断片を得るため、サーモトガ マリティマ ゲノムDNAの塩基配列
(http://www.tigr.org/tdb/CMR/btm/htmls/SplashPage.html)のうちRNaseHII遺伝子と同定されている部分の塩基配列をもとにして、配列表の配列番号24〜27記載のオリゴヌクレオチド915−F1、915−F2、915−R1及び915−R2を合成した。
上記参考例5−(1)で調製したサーモトガ マリティマ ゲノムDNAを鋳型として、915−F1と915−R1、915−F1と915−R2、915−F2と915−R1又は915−F2と915−R2をプライマー対とし、それぞれPCRを行った。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラExタックを添付のプロトコールに従って用い、PCRは95℃で0.5分、55℃で0.5分、72℃で1.5分を1サイクルとして、25サイクル行った。反応終了後、各PCR反応物をアガロースゲル電気泳動に供し、約0.7kbの増幅されたDNA断片を抽出精製した。915−F1と915−R1及び915−F1と915−R2のプライマー対で増幅したDNAは、HindIIIとXbaI(ともに宝酒造社製)で消化し、HindIIIとXbaIで消化したpUC19にT4DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌JM109を形質転換した。この形質転換体を培養し、約0.7kbのDNAが挿入されたプラスミドDNAを調製した。その結果、915−F1と915−R1から増幅したDNAが挿入されたプラスミドNo.1とNo.2、915−F1と915−R2から増幅したDNAが挿入されたプラスミドNo.3とNo.4を得た。
また、915−F2と915−R1及び915−F2と915−R2のプライマー対で増幅したDNAをNcoI(宝酒造社製)とXbaIで2重消化し、NcoIとXbaIで2重消化したpTV119N(宝酒造社製)にT4 DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌JM109に形質転換した。
この形質転換体を培養し、約0.7kbのDNAが挿入されたプラスミドDNAを調製した。その結果、915−F2と915−R1から増幅したDNAが挿入されたプラスミドNo.5とNo.6、915−F2と915−R2から増幅したDNAが挿入されたプラスミドNo.7を得た。
なお、プラスミドNo.7で形質転換された大腸菌JM109は、
Escherichia coli JM109/pTM−RNHと命名、表示され、平成12年9月5日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERMBP−7652として寄託されている。
(3) サーモトガ マリティマ RNaseHII遺伝子の発現
プラスミドNo.1〜7又はpUC19で形質転換された大腸菌JM109を100μg/mlのアンピシリンを含む5mlのLB培地(トリプトン10g/リットル、酵母エキス5g/リットル、NaCl 5g/リットル、pH7.2)に植菌し、37℃で振盪培養した。660nmにおける吸光度が0.5になったときに終濃度が1mMになるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを加え、更に1晩振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって菌体を集め、1mlのTE緩衝液に懸濁し、超音波破砕した。これを80℃で10分間熱処理し、遠心によって得た上清を菌体粗抽出液とした。得られた菌体粗抽出液を用いて、参考例2−(5)に記載の方法で、吸光度を測定した。その結果、pUC19を保持する大腸菌JM109から調製した粗抽出液で反応させたときに比べて、プラスミドNo.3、5、6及び7を保持する大腸菌JM109から調製した菌体粗抽出液は、MnCl存在下で反応させたとき、明らかに260nmにおける吸光度の値が高かった。よって、プラスミドNo.3、5、6及び7はRNaseH遺伝子を含んでおり、これらのプラスミドを保持する大腸菌でRNaseH活性を発現することが明らかになった。
こうして大腸菌内でRNase活性の発現していることが明らかとなったプラスミドに挿入されたDNA断片の一部の塩基配列を決定した。得られた塩基配列の結果を解析したところ、RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。このオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号143に示す。また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号144に示す。このプラスミドNo.7に挿入されたDNA断片の一部の塩基配列にPCR時に生じたと思われる塩基置換が1箇所認められ、その箇所のアミノ酸残基が変化していることが分かった。
(4)精製RNaseHII標品の調製
参考例5−(2)で得られたpTM−RNHを大腸菌JM109に形質転換し、得られたpTM−RNHを含む大腸菌JM109を100μg/mlのアンピシリンを含む1リットルのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を31.0mlのソニケーションバッファー〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、2mM 2−メルカプトエタノール、10%グリセロール、2mM フェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を70℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpm、10分の遠心分離を行い、上清を集め、32.0mlの熱処理上清液を得た。
この熱処理上清液をバッファーC〔50mM トリス−HCl(pH8.0)、2mM 2−メルカプトエタノール、10%グリセロール〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。素通りしたRNaseHII画分32.5mlをバッファーCで平衡化したRESOURSE Sカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて0〜500mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約240mM NaClのところに溶出されたRNaseII画分を得た。このRNaseII画分2.0mlを50mM NaClを含むバッファーCで平衡化したPD−10カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、得られた溶出液3.5mlを50mM NaClを含むバッファーCで平衡化したHiTrap−heparinカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて50〜550mM NaCl直線濃度勾配により溶出した。その結果、約295mMNaClのところに溶出されたRNaseII画分を得た。このようにして溶出されたRNaseHIIをTma RNaseHII標品とした。
上記で得られたTma RNaseHII標品を用いて、参考例2−(6)に記載の方法で酵素活性を測定した結果、Tma RNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例6 ピロコッカス ホリコシイのRNaseHII遺伝子のクローニング
(1)ピロコッカス ホリコシイ ゲノムDNAの調製
トリプトン(ディフコラボラトリーズ社製)1%、酵母エキス(ディフコラボラトリーズ社製)0.5%、可溶性でんぷん(ナカライテスク社製)1%、ジャマリンS・ソリッド(ジャマリンラボラトリー社製)3.5%、ジャマリンS・リキッド(ジャマリンラボラトリー社製)0.5%、MgSO 0.003%、NaCl 0.001%、FeSO・7HO 0.0001%、CoSO 0.0001%、CaCl・7HO 0.0001%、ZnSO 0.0001%、CuSO・5HO 0.1ppm、KAl(SO 0.1ppm、HBO 0.1ppm、NaMoO・2HO 0.1ppm、NiCl・6HO 0.25ppmの組成の培地2リットルを2リットル容のメジュウムボトルにいれ、120℃、20分間殺菌した後、窒素ガスを吹き込み、溶存酸素を除去し、これにピロコッカス ホリコシイ OT3(Pyrococcus horikoshii、理化学研究所より購入:JCM9974)を接種して、95℃、16時間静置培養した後、遠心分離によって菌体を得た。
次に、得られた菌体を4mlの25%ショ糖、50mMトリス−HCl(pH8.0)に懸濁し、0.4mlの10mg/ml塩化リゾチーム(ナカライテスク社製)水溶液を加えて、20℃で1時間反応させた。反応終了後、この反応液に24mlの150mM NaCl、1mM EDTA、20mMトリス−HCl(pH8.0)、0.2mlの20mg/mlプロテイナーゼK(宝酒造社製)及び2mlの10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を加え、37℃で1時間保温した。
反応終了後、フェノール−クロロホルム抽出、続いてエタノール沈殿を行い、約1mgのゲノムDNAを調製した。
(2)RNaseHII遺伝子のクローニング
ピロコッカス ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)は全ゲノム配列が公開されており〔DNA リサーチ(DNA Research)、第5巻、第55−76頁(1998)〕、RNaseHIIのホモログをコードする遺伝子(PH1650)が1つ存在することが明らかになっている(配列番号145、独立行政法人製品評価センター ホームページ:http://www.nite.go.jp/)。
そこで、このPH1650遺伝子(配列番号145)の配列をもとにプライマーPhoNde(配列番号146)及びPhoBam(配列番号147)を合成した。
参考例6−(1)で得たピロコッカス ホリコシイ ゲノムDNA 100ngを鋳型にして、20pmolのPhoNdeNde及び20pmolのPhoBamをプライマーに用い、100μlの容量でPCR行った。PCRでのDNAポリメラーゼはタカラExタック(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとし、40サイクル行った。増幅した約0.7kbのDNA断片をNdeI及びBamHI(ともに宝酒造社製)で消化し、得られたDNA断片をプラスミドベクターpET3a(ノバジェン社製)のNdeI及びBamHI間に組込んだプラスミドpPHO238を作製した。
(3)RNaseHII遺伝子を含むDNA断片の塩基配列の決定
参考例6−(2)で得られたpPHO238の挿入DNA断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定した。
得られた塩基配列の結果を解析したところ、RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。このオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号148に示す。また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号149に示す。
なお、プラスミドpPHO238で形質転換された大腸菌JM109は、Escherichia coli JM109/pPHO238と命名、表示され、平成13年2月22日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−7692として寄託されている。
(4)精製RNaseHII標品の調製
参考例6−(2)で得られたpPHO238で大腸菌HMS174(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換し、得られたpPHO238を含む大腸菌HMS174(DE3)を100μg/mlのアンピシリンを含む1リットルのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を34.3mlのソニケーションバッファー〔50mMトリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、2mMフェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を80℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpmで10分の遠心分離を行い、上清を集め、33.5mlの熱処理上清液を得た。
この熱処理上清液をバッファーA〔50mMトリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。
素通りしたRNaseHII画分35.0mlををバッファーB〔50mMトリス−HCl(pH7.0)、1mM EDTA〕2Lを外液として、2時間の透析を3回行なった。透析後の酵素液34.5mlをバッファーBで平衡化したRESOURSE Sカラム(ファルマシア ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて0〜500mM NaCl直線濃度勾配により溶出し、約155mM NaClのところに溶出されたRNaseHII画分を得た。
この画分4.0mlにNaCl濃度が50mMになるようにバッファーBを添加し、50mM NaClを含むバッファーBで平衡化したHiTrap−heparinカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて50〜550mM NaCl直線濃度勾配により溶出した。その結果、約160mM NaClのところに溶出されたRNaseHII画分を得た。
このRNaseHII画分6.9mlをセントリコン−10(アミコン社製)を用いた限外ろ過により濃縮し、250μlの濃縮液を2回に分けて100mM NaCl、0.1mM EDTAを含む50mMトリス−HCl(pH7.0)で平衡化したSuperose6ゲルろ過カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、同じバッファーで溶出を行った結果、RNaseHIIは、24.5キロダルトンの分子量に相当する位置に溶出された。この分子量は、RNaseHIIが1量体として存在する場合に相当する。
こうして溶出されたRNaseHIIをPhoRNaseHII標品とした。
上記で得られたPhoRNaseHII標品を用いて、参考例3−(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果、PhoRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例7 アルカエオグロバス フルギダスのRNaseHII遺伝子のクローニング
(1)アルカエオグロバス フルギダス ゲノムDNAの調製
アルカエオグロバス フルギダス(Archaeoglobus fulgidus、ドイッチェ ザムルンク フォン ミクロオルガニスメン ウント ツェルクルツレンGmbHより購入:DSM4139)8ml相当分の菌体を集め、100μlの25%ショ糖、50mMトリス−HCl(pH8.0)に懸濁し、20μlの0.5M EDTA、10μlの10mg/ml塩化リゾチーム(ナカライテスク社製)水溶液を加えて、20℃で1時間反応させた。反応終了後、この反応液に800μlの150mM NaCl、1mM EDTA、20mMトリス−HCl(pH8.0)、10μlの20mg/mlプロテイナーゼK(宝酒造社製)及び50μlの10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を加え、37℃で1時間保温した。反応終了後、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿、風乾した後に50μlのTEに溶解してゲノムDNA溶液を得た。
(2)RNaseHII遺伝子のクローニング
アルカエオグロバス フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)は全ゲノム配列が公開されており〔ネイチャー(Nature)、第390巻、第364−370頁(1997)〕、RNaseHIIのホモログをコードする遺伝子(AF0621)が1つ存在することが明らかになっている(配列番号150、http://www.tigr.org/tdb/CMR/btm/htmls/SplashPage.html)。
そこで、このAF0621遺伝子(配列番号150)の配列をもとにプライマーAfuNde(配列番号151)及びAfuBam(配列番号152)を合成した。
参考例7−(1)で得たアルカエオグロバス フルギダス ゲノムDNA30ngを鋳型にして、20pmolのAfuNde及び20pmolのAfuBamをプライマーに用い、100μlの容量でPCRを行なった。PCRでのDNAポリメラーゼはパイロベストDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を添付のプロトコールに従って用い、PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとし、40サイクル行った。増幅した約0.6kbのDNA断片をNdeI及びBamHI(ともに宝酒造社製)で消化し、得られたDNA断片をプラスミドベクターpTV119Nd(pTV119NのNcoIサイトをNdeIサイトに変換したもの)のNdeI及びBamHI間に組込んだプラスミドpAFU204を作製した。
(3)RNaseHII遺伝子を含むDNA断片の塩基配列の決定
参考例7−(2)で得られたpAFU204の挿入DNA断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定した。
得られた塩基配列の結果を解析したところ、RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。このオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号153に示す。また、該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号154に示す。
なお、プラスミドpAFU204で形質転換された大腸菌JM109は、Escherichia coli JM109/pAFU204と命名、表示され、平成13年2月22日(原寄託日)より日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−7691として寄託されている。
(4)精製RNaseHII標品の調製
参考例7−(2)で得られたpAFU204で大腸菌JM109を形質転換し、得られたpAFU204を含む大腸菌JM109を100μg/mlのアンピシリンを含む2リットルのLB培地に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によって集めた菌体を37.1mlのソニケーションバッファー〔50mMトリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、2mMフェニルメタンスルフォニルフルオライド〕に懸濁し、超音波破砕機にかけた。この破砕液を12000rpmで10分間の遠心分離を行い、得られた上清を70℃、15分間の熱処理にかけた。その後、再度12000rpmで10分の遠心分離を行い、上清を集め、40.3mlの熱処理上清液を得た。
この熱処理上清液をバッファーA〔50mMトリス−HCl(pH8.0)、1mM EDTA〕で平衡化したRESOURSE Qカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Qカラムを素通りした。
バッファーAで平衡化したRESOURSE Sカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)を用いてクロマトグラフィーを行なった。その結果、RNaseHIIはRESOURSE Sカラムを素通りした。
素通りしたRNaseHII画分40.0mlを50mM NaClを含むバッファーB〔50mMトリス−HCl(pH7.0)、1mM EDTA〕2Lを外液として、2時間の透析を3回行なった。透析後の酵素液40.2mlを50mM NaClを含むバッファーBで平衡化したHiTrap−heparinカラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、FPLCシステムを用いて50〜550mM NaCl直線濃度勾配により溶出した。その結果、約240mM NaClのところに溶出されたRNaseHII画分を得た。
このRNaseHII画分7.8mlをセントリコン−10(アミコン社製)を用いた限外ろ過により濃縮し、約600μlの濃縮液を4回に分けて100mM NaCl、0.1mM EDTAを含む50mMトリス−HCl(pH7.0)で平衡化したSuperose6ゲルろ過カラム(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)に供し、同じバッファーで溶出を行った結果、RNaseHIIは、30.0キロダルトンの分子量に相当する位置に溶出された。この分子量は、RNaseHIIが1量体として存在する場合に相当する。
こうして溶出されたRNaseHIIをAfuRNaseHII標品とした。
上記で得られたAfuRNaseHII標品を用いて、参考例3−(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果、AfuRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。
参考例8
本発明の方法に使用される大腸菌由来RNaseHのユニット数は、以下の方法で測定した。
(1)使用する試薬液の調製
力価測定用反応液:最終濃度がそれぞれ40mM トリス−塩酸(pH7.7、37℃)、4mM 塩化マグネシウム、1mM DTT、0.003% BSA、4%グリセロール、24μM ポリ(dT)になるように滅菌水で調製した。
ポリ[8−H]アデニル酸溶液:370kBqのポリ[8−H]アデニル酸溶液を200μlの滅菌水に溶解した。
ポリアデニル酸溶液:ポリアデニル酸を3mMになるように滅菌超純水で希釈した。
酵素希釈液:最終濃度がそれぞれ25mM トリス−塩酸(pH7.5、37℃)、5mM 2−メルカプトエタノール、0.5mM EDTA(pH7.5、37℃)、30mM 塩化ナトリウム、50%グリセロールになるように滅菌水で調製した。
熱変性子牛胸腺DNAの調製:子牛胸腺DNA200mgをTEバッファー100mlに懸濁し、膨潤させた。該溶液のUV260nmの吸光度を測定し、1mg/mlの濃度に滅菌超純水で希釈した。次に、該溶液を100℃で10分間加熱後、氷浴中で急冷した。
(2)活性測定方法
上記(1)で調製した力価測定用反応液985μlにポリ[8−H]アデニル酸溶液7μlを加え37℃で10分間保持した。次にポリアデニル酸を最終濃度が24μMになるように8μl加え、さらに37℃で5分間保持した。このようにしてポリ[8−H]rA−ポリdT反応液1000μlを調製した。次に、該反応液200μlを分取し、30℃で5分間保持した後、任意の希釈系列で希釈した酵素液1μlを加え、これらの反応液を経時的に50μlずつサンプリングして、後の測定に用いた。酵素添加からサンプリングまでの間の時間をY分とした。また、全CPM用反応液50μlおよびブランク用反応液50μlは、酵素液の代わりに酵素希釈液を1μl加えて調製した。該サンプリング溶液に100mMピロリン酸ナトリウム100μl、熱変性子牛胸腺DNA溶液50μlおよび10%トリクロロ酢酸300μl(全CPM測定の場合は、超純水300μl)を加え、0℃で5分間保持後、10000rpmで10分間遠心した。遠心後、得られた上清250μlをバイアルに入れ、アクアゾルー2(NENライフサイエンスプロダクツ社製)10mlを加え、液体シンチレーションカウンターでCPMを測定した。
(3)ユニット計算
各酵素のユニット(unit)数は、以下の計算式で算出した。
Unit/ml={(測定したCPM−ブランクCPM)×1.2×20×1000×希釈率}×200(μl)/(全CPM×Y分×50(μl)×9**
1.2:全CPM中に含まれるポリ[8−H]rA−ポリdTの50μl当たりのnmol数
**:補正係数
実施例1
本発明の方法を用いて腸管出血性大腸菌O−157の検出を行った。
本実施例において使用するプライマーを配列表の配列番号31〜34に示した。また、配列番号31と32の組み合わせは、O−157のベロ毒素(VT、vero−toxin)1をコードする配列を、配列番号33と34の組み合わせは、ベロ毒素2をコードする配列を検出するように構築した。鋳型は、ATCC登録番号43895の腸管出血性大腸菌O−157を培養したものを集菌し、適当な細胞数に滅菌水で懸濁した後、98℃で10分間処理した熱抽出物を使用した。以下に反応液組成を示す。
27mM リン酸バッファー(pH7.3)、0.01%BSA(牛血清アルブミン)、5%DMSO(ジメチルスルホキシド)、各1mM dNTP混合物、8mM 酢酸マグネシウム、それぞれ60pmolの上記のプライマー対、10〜10細胞数に相当する鋳型DNA(熱水抽出物)、および滅菌蒸留水で反応液容量を48μlにした。上記反応液を98℃、1分間熱変性処理後、55℃に冷却した。次に、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、60UのE.coli RNaseHを添加し、55℃、60分間保持した。その後、90℃、2分間加熱して酵素を失活させた。各反応液3μlを4%ヌシーブ3:1アガロース(宝酒造社製)ゲルにて電気泳動を行なった。その結果、いずれのプライマー対でも10細胞数相当のDNAを鋳型として、O−157ベロ毒素1および2を検出することができ、本発明の方法が、病毒性細菌の検出方法として利用できることを確認した。
実施例2
(1)本発明の方法においてバッファーの種類を変えて検討した。本実施例において使用するプライマーは、配列表の配列番号39及び40記載の配列を有するλDNA増幅用のプライマーを用いた。反応は、以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマー、0.01%プロピレンジアミン水溶液、10ngまたは1ngの鋳型DNAの混合液10μlを98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で冷却し、プライマーを鋳型DNAにアニールさせた。なお、該鋳型は、λDNA(宝酒造社製)を鋳型とし、配列表の配列番号41及び42記載のプライマーを使用したPCRによって得られた増幅産物(1005bp)をSuprec02(宝酒造社製)で精製したものを用いた。
アニーリング処理後、上記混合液に各0.625mM dNTP混合物、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA(ウシ血清アルブミン)、1.25%DMSO(ジメチルスルホキシド)、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む3種類の反応用緩衝液(42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、42.5mM ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.3)及び42.5mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8))40μlを添加し、最終容量を50μlにした。該反応液は、60℃で1時間保持した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動で確認したところ、いずれの鋳型量においても目的の増幅断片が確認できた。特に、ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)を用いた反応系でより多くの増幅産物が得られた。
(2)さらに、ヘペス−水酸化カリウムバッファーによる反応性の向上について検討した。鋳型は、pUC19プラスミドDNAのマルチクローニングサイトに約150bpのDNA断片を挿入したものを用いた。該鋳型は、以下のようにして調製した。
配列表の配列番号134および135記載の配列を有するpUC19upper 150 PCRプライマー、pUC19 lower PCRプライマーを使用し、pUC19プラスミドDNA100pgを鋳型としてPCR反応を行った。得られた増幅断片は、マイクロコン−100で精製後、DNA blunting kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端化し、pUC19プラスミドのHincIIサイトにサブクローニングした。上記増幅断片の挿入されたプラスミドを用いて、大腸菌JM109を形質転換した。該形質転換体を培養し、その菌体よりQIAGEN plasmidmini kit(キアゲン社製)を用いてDNA挿入プラスミドを精製した。このDNA挿入プラスミドを鋳型として使用した。
上記の方法で調製したpUC19−150プラスミドDNAを鋳型とし、配列表の配列番号35及び36記載の塩基配列を有するMCS−FおよびMCS−RプライマーによりPCR増幅したDNA断片を鋳型とした。また、キメラオリゴヌクレオチドプライマーとしては、配列表の配列番号37及び38記載の塩基配列を有するMF2N3(24)プライマーおよびMR1N3(24)プライマーを使用した。該プライマーの組合せにより約350bpの増幅断片が得られた。
検討するバッファーは、ヘペス−水酸化カリウムバッファー系を選択し、対照としてリン酸カリウムバッファー系、トリシンバッファー系を使用した。以下に反応液組成を示す。
反応液A;上記PCR増幅断片10ng、各50pmolずつのMF2N3(24)プライマーおよびMR1N3(24)プライマー、0.01%プロピレンジアミン水溶液、および滅菌蒸留水で反応液量を10μlとした。
反応液B;以下の3種類を調製した。
リン酸カリウムバッファー系:最終濃度35mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)、1.25%DMSO、0.0125%BSA、5mM 酢酸マグネシウム、各0.625mM dNTP混合物、60UのE.coli RNaseHおよび5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含有する反応液40μlを調製した。
トリシンバッファー系:最終濃度42.5mM トリシンバッファー(pH8.7)、12.5mM 塩化カリウム、12.5mM 硫酸アンモニウム、1.25%DMSO、0.0125%BSA、5mM 酢酸マグネシウム、各0.625mM dNTP混合物、30UのE.coli RNaseHおよび5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含有する反応液40μlを調製した。
ヘペス−水酸化カリウムバッファー系:最終濃度25mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、125mM 酢酸カリウム、1.25%DMSO、0.0125%BSA、5mM 酢酸マグネシウム、各0.625mM dNTP混合物、30UのE.coli RNaseHおよび5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含有する反応液40μlを調製した。
上記反応液Aを98℃、2分間熱変性処理した後、60℃または65℃に冷却したのち氷上に静置した。氷上に置いておいた反応液Aに上記各反応液Bを加えて混合し、反応液を50μlとした。該反応液を60℃または65℃で1時間インキュベートした。反応終了後4℃に冷却し、1/10容量の0.5M EDTAを加えて反応を停止させた。この反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、反応温度に関わらず、3種類のバッファー系で目的の増幅断片が確認できた。特に本実施例においては、ヘペス−水酸化カリウムバッファー系が最も増幅産物量が多く、反応性が高いことが確認できた。
実施例3
(1)本発明の方法について、プライマーと鋳型のアニーリング条件について検討した。国際公開第97/32010号パンフレット記載のフラボバクテリウム属細菌、Flavobacterium sp.SA−0082(日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成7年(1995年)3月29日よりFERM P−14872として寄託され、また前記日本国〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERMBP−5402[国際寄託への移管請求日:平成8年(1996年)2月15日]として寄託されている。)の部分塩基配列に従って、配列表の配列番号43及び44記載の塩基配列を有するプライマーを使用した。また、本実施例においては、Flavobacterium sp.SA−0082由来のゲノムDNAを鋳型とし、配列表の配列番号45及び46記載のプライマーの組み合わせによるPCR増幅産物(573bp)をSuprec02(宝酒造社製)で精製したものを鋳型DNAとして用いた。反応は以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマーに2種類のアニーリング溶液(500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン、あるいは0.05%プロピレンジアミン)をそれぞれ2μl添加し、さらに10ngまたは1ngの上記PCR増幅断片を含む最終液量10μlの混合液を98℃で2分間、熱変性させた。変性後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニールさせた。
上記アニーリング処理後、該混合液に各0.625mM dNTP混合物、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA(ウシ血清アルブミン)、1.25%DMSO(ジメチルスルホキシド)、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む3種類の緩衝液(42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)緩衝液、42.5mM ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.3)、及び42.5mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8))のそれぞれを40μl添加し、最終容量を50μlにした。該反応液は、52℃で1時間保持した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図1に示す。図1は、アニーリング溶液と緩衝液のそれぞれの組み合わせについての反応後の電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー、宝酒造社製)、レーン2はプロピレンジアミン/トリシン(鋳型10ng)、レーン3はプロピレンジアミン/ヘペス(鋳型10ng)、レーン4はプロピレンジアミン/ヘペス(鋳型1ng)、レーン5はプロピレンジアミン/ビシン(鋳型10ng)、レーン6は、プロピレンジアミン/ビシン(鋳型1ng)、レーン7は500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン/ビシン(鋳型10ng)、レーン8は500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン/ビシン(鋳型1ng)、レーン9は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン10はプロピレンジアミン/トリシン(鋳型1ng)、レーン11は500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン/トリシン(鋳型1ng)、レーン12はプロピレンジアミン/ヘペス(鋳型1ng)、レーン13は500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン/ヘペス(鋳型1ng)、レーン14はプロピレンジアミン/ビシン(鋳型1ng)、レーン15は500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジン/ビシン(鋳型1ng)である。
図1に示したように、鋳型DNA量に関わらず、上記3種類のいずれの緩衝液においてもプライマーと鋳型DNAのアニーリングに500mM 塩化カリウム+8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液を使用したものがより多くの目的と増幅産物が得られた。特に本実施例においては、500mM 塩化カリウム+8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液とビシン−水酸化カリウム緩衝液との組み合わせが良好であった。
(2)λDNAのPCR増幅断片を鋳型とした場合のアニーリング溶液の効果について検討した。本実施例において、実施例2(1)記載のキメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。鋳型DNAは、実施例2(1)で調製したPCR増幅断片及びλDNAを用いた。反応は、以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマーに3種類のアニーリング溶液溶液(500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジン、0.05%プロピレンジアミンまたは滅菌水)をそれぞれ2μl加え、さらに10ngまたは1ngのPCR増幅断片を含む全液量10μlの混合液を調製した。該混合液を98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニールさせた。
アニーリング処理後に各0.625mM dNTP混合物、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む3種類の緩衝液(42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、42.5mM ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.3)、及び42.5mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8))をそれぞれ40μl添加し、最終容量を50μlにした。該反応液を60℃で1時間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図2に示す。図2は、鋳型量と反応緩衝液とアニーリング溶液の組み合わせについて検討した電気泳動の結果を示し、レーン1はマーカー(100bpラダー)、レーン2は鋳型10ngでトリシン/500mM 塩化カリウム及び8μMスペルミジンの組み合わせ、レーン3は鋳型1ngでトリシン/500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンの組み合わせ、レーン4は鋳型10ngでビシン/500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジンの組み合わせ、レーン5は鋳型1ngでビシン/500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンの組み合わせ、レーン6は鋳型10ngでヘペス/500mM 塩化カリウム及び8μMスペルミジンの組み合わせ、レーン7は鋳型1ngでヘペス/500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンの組み合わせ、レーン8は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン9は、鋳型10ngでトリシン/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン10は鋳型1ngでトリシン/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン11は鋳型10ngでビシン/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン12は鋳型1ngでビシン/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン13は鋳型10ngでヘペス/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン14は鋳型1ngでヘペス/プロピレンジアミンの組み合わせ、レーン15は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン16は鋳型10ngでトリシン/水の組み合わせ、レーン17は鋳型1ngでトリシン/水の組み合わせ、レーン18は鋳型10ngでビシン/水の組み合わせ、レーン19は鋳型1ngでビシン/水の組み合わせ、レーン20は鋳型10ngでヘペス/水の組み合わせ、レーン21は鋳型1ngでヘペス/水の組み合わせである。
図2に示したように、鋳型DNA量に関わらず、上記3種類の緩衝液と上記3種類のアニーリング溶液の組み合わせのいずれにおいても目的の増幅断片が得られることが確認できた。特に、ビシン緩衝液と500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液との組み合わせにおいて、より多くの増幅断片が得られることが確認できた。
実施例4
逆転写酵素(RTase)阻害剤存在下での本発明の方法について検討した。上記RTase阻害剤としてホスホノギ酸(PFA:Phosphonoformic acid)を用いた。本実施例においてプライマーは、配列表の配列番号47及び48記載のものを使用した。また、鋳型DNAとしては、腸管出血性大腸菌O−157のゲノムDNAを鋳型とし、配列表の配列番号49及び50記載のプライマーによるPCR増幅産物(576bp)をSuprec02(宝酒造社製)で精製したものを用いた。反応は以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマーと2μlの500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液に1ngのPCR増幅断片を添加した全液量10μlの混合液を、98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニールさせた。
上記アニーリング処理後、該処理液に各0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA(ウシ血清アルブミン)、1.25%DMSO(ジメチルスルホキシド)、30UのE.coli RNaseH、11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、さらに500μg/mlあるいは50μg/mlの濃度になるようにPFAを加え、最終容量を50μlにした。該反応液は、55℃で1時間保持した。対照として、PFAを添加しない系も同様に調製した。反応終了後の反応液9μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図3に示す。図3は、逆転写酵素活性阻害剤の効果を示す電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2はPFA無添加、レーン3は500μg/mlのPFA添加、レーン4は50μg/mlのPFA添加結果である。
図3に示したように、PFAを添加することにより非特異的な増幅が抑制され、さらに目的の増幅断片が確認できた。特に500μg/mlになるように添加した系では、添加していない系で見られる非特異的な増幅産物が見られず、目的の増幅断片が明瞭に増幅されていることが確認できた。
実施例5
本発明の方法について増幅断片長と検出感度の関係について検討した。
(1)配列表の配列番号51〜53記載の大腸菌O−157ベロ毒素増幅用プライマーを合成した。さらに、実施例4で使用したキメラオリゴヌクレオチドプライマーも使用した。上記プライマーの組み合わせと増幅断片長は、配列表の配列番号51及び48の組み合わせで247bp、52及び53の組み合わせで168bp、52及び48の組み合わせで206bp、47及び53の組み合わせで135bp、47及び48の組み合わせで173bpである。本実施例において鋳型DNAは、実施例4で調製した576bpのPCR増幅断片精製物を用いた。反応は、以下のように行った。すなわち、上記各60pmolのプライマーと2μlの0.05%プロピレンジアミン水溶液、10fg〜10ngの上記PCR増幅断片を含む全液量10μlの混合液をサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造社製)で98℃で2分間熱変性後、55℃に冷却し、鋳型にプライマーをアニーリングさせた。
上記アニーリング処理した混合液に0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA(ウシ血清アルブミン)、1.25%DMSO(ジメチルスルホキシド)、30UのE.coli RNaseH、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、及び滅菌水を含む全液量40μlの反応液を添加し、最終容量を50μlにした。該反応液は、55℃で1時間保持した。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。対照として、配列表の配列番号54及び55記載のプライマーを用いて、上記PCR増幅断片1pg〜10fgの検出を行った。上記プライマーの組み合わせにより、135bpの増幅断片が得られる。すなわち、各60pmolのプライマー、10×Ex Taqバッファー(宝酒造社製)5μl、1.25Uのタカラ ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)、0.2mM dNTP混合物を含む全量50μlのPCR溶液を調製した。PCR条件は、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクル(所要時間は、2分38秒)とした25または30サイクルで行った。反応終了後、ICAN法の場合は1μl、PCR法の場合は、5μlの反応液を3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図4及び表1に示す。
Figure 0004128074
図4は、ICAN法(反応液の1/50量を泳動)及びPCR法(反応液の1/10量を泳動)での増幅鎖長135bpの場合の検出限界を示す電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2はICAN法で鋳型1pgの場合、レーン3はICAN法で鋳型100fgの場合、レーン4はICAN法で鋳型10fgの場合、レーン5は25サイクルのPCR法で鋳型1pgの場合、レーン6は25サイクルのPCR法で鋳型100fgの場合、レーン7は25サイクルのPCR法で鋳型10fgの場合、レーン8は30サイクルのPCR法で鋳型1pgの場合、レーン9は30サイクルのPCR法で鋳型100fgの場合、レーン10は30サイクルのPCR法で鋳型10fgの場合である。
表1に示したようにPCR法とほぼ同等の検出感度が得られることを確認した。さらに、同じ検出感度の場合、PCR法の反応所要時間約80分に比べ、本発明の方法の反応所要時間は70分となり、所要時間の短縮ができることを確認した。
(2)配列表の配列番号39、40及び56記載の塩基配列を有するλDNA増幅用のプライマーを合成した。該プライマーの組み合わせと増幅断片長は、配列表の配列番号39及び40の場合は151bp、56及び40の場合は125bpである。また、本実施例において鋳型DNAは、実施例2(1)で調製したものを使用した。反応は以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマーに2μlのアニーリング溶液(500mM 塩化カリウム及び8μMスペルミジン)と、1fg〜1ngの鋳型を加え、滅菌水で全液量を10μlにした。該液を98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニーリングさせた。
アニーリング処理後、上記混合液に各0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseH、11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、60℃で1時間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を表2に示した。
Figure 0004128074
表2に示したようにλDNAを鋳型にした場合においても、最適な領域を検討することにより、検出感度を10fgまで下げることができることを確認した。
(3)配列表の配列番号57及び58記載の塩基配列を有する菊ウイロイド遺伝子増幅用プライマーを合成し、ウイロイド感染菊由来RNAを鋳型として特願平9−140383公報記載の方法で調製した増幅断片(全長340bp)をプラスミドT7ブルーTベクター(宝酒造製)に挿入して調製した。これで大腸菌JM109コンピテントセル(宝酒造製)を形質転換し、LB培地5mlにて37℃16時間培養した。菌体を回収し、QIAGEN Plasmid Mini Kit(キアゲン社製)を用いてマニュアルに従い、プラスミドの精製をおこなった。ベックマンDU−600(ベックマン製)にて濃度測定を行い、滅菌水にて1μlあたリプラスミド濃度0、1fg、10fg、100fg、1pg、10pg、100pg、1ngに調製した。ICAN反応系50μlにおいて上記調製プラスミド溶液1μlを鋳型として用いた。本実施例においてプライマーは、配列表の配列番号59及び60記載の塩基配列を有するCSVD−F2プライマー及びCSVD−R6プライマーを使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、上記プライマー各50pmol、各調製プラスミド溶液1μl及び最終濃度0.01%プロピレンジアミンを含む全液量10μlの混合液を調製した。該混合液をサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造製)にて98℃、2分間熱処理後、60℃まで冷却し、1分間保持後、氷上に保存した。
アニーリング処理後、上記混合液に最終濃度20mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTP混合物、30UのE.coli RNaseH、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液をあらかじめ、60℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし60分間反応させた。反応終了後、各反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果、目的とする増幅産物(約90bp、約70bp、約50bp)について、10fgの鋳型濃度の場合まで確認できた。
実施例6
本発明の方法で使用するプライマーについて検討した。
(1)プライマーのTm値と反応温度について検討した。配列表の配列番号43及び61〜63記載の塩基配列を有する、フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.SA−0082)増幅用プライマーを合成した。さらに該プライマーは、160bp以下でGC含量が約20%の領域を増幅するように構築した。該プライマーの組み合わせと増幅断片長は、配列表の配列番号43及び62の場合は126bp、43及び63の場合は158bp、61及び62の場合は91bp、61及び63の場合は123bpである。なお、本実施例において鋳型となるDNAは、実施例3(1)で調製したPCR増幅産物を用いた。反応は以下のように行った。すなわち、各120pmolの上記プライマー、2μlの3種類のアニーリング溶液(500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジン、0.05%プロピレンジアミン、または水)及び、1fg〜10ngの鋳型を含む全液量10μlの混合液を調製した。該混合液を98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で冷却することによりプライマーを鋳型にアニーリングさせた。
アニーリング処理後、上記混合液に各0.625mM dNTP混合物、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA(ウシ血清アルブミン)、1.25%DMSO(ジメチルスルホキシド)、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む3種類の緩衝液(17mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、17mM ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.3)、及び20mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8))を40μlを添加し、最終容量を50μlにした。該反応液を52℃、55℃または60℃で1時間保持した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、反応温度が52℃の場合に目的の増幅断片が確認できた。特に、500mM塩化カリウム及び8μMスペルミジンを含むアニーリング溶液とトリシン、あるいはビシン緩衝液の組み合わせにおいてより多くの目的とする増幅断片が得られた。反応温度が52℃におけるプライマー対、増幅断片長及び検出感度について図5及び表3に示す。
Figure 0004128074
図5は、ATリッチな領域を増幅する場合の増幅断片長と鋳型DNA量の関係を示した電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は増幅断片長91bpで鋳型1pgの場合、レーン3は増幅断片長91bpで鋳型100fgの場合、レーン4は増幅断片長91bpで鋳型10fgの場合、レーン5は増幅断片長91bpで鋳型1fgの場合、レーン6は増幅断片長123bpで鋳型1pgの場合、レーン7は増幅断片長123bpで鋳型100fgの場合、レーン8は増幅断片長123bpで鋳型10fgの場合、レーン9は増幅断片長126bpで鋳型1pgの場合、レーン10は増幅断片長126bpで鋳型100fgの場合、レーン11は増幅断片長126bpで鋳型10fgの場合、レーン12は増幅断片長158bpで鋳型1pgの場合、レーン13は増幅断片長158bpで鋳型100fgの場合、レーン14は増幅断片長158bpで鋳型10fgの場合である。
図5及び表3に示したように、ATリッチな鋳型に対し、ATリッチなプライマーセットで本発明の方法を行う場合は、プライマーのTm値にあわせて、反応温度を下げると良いことが明らかになった。
(2)本発明の方法においてプライマーの高次構造が反応性に影響を与えることが考えられた。従って、プライマーの高次構造を回避し、プライマーが本来の鋳型にアニーリングしやすくするためのプライマーの修飾を検討した。プライマーは、配列表の配列番号47〜48及び64〜69記載のそれぞれのプライマーを使用した。すなわち、配列表の配列番号47記載の塩基配列を有するプライマー、配列番号64〜66記載の塩基配列を有するプライマーで、さらに3’末端より4塩基目、5塩基目、6塩基目の塩基がそれぞれイノシンデオキシヌクレオチドである120I4、121I5及び122I6プライマー、配列表の配列番号104記載の塩基配列を有するプライマー、配列番号67〜69記載の塩基配列を有するプライマーで、さらに3’末端より4塩基目、5塩基目、6塩基目の塩基がそれぞれイノシンデオキシヌクレオチドである123I4、124I5及び125I6プライマーを使用した。本実施例において鋳型DNAは、実施例4で調製したものを使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、前記各50pmolのプライマー、2μlの0.05% プロピレンジアミン水溶液、1ng〜10ngの鋳型DNA及び滅菌蒸留水を含む全液量10μlの混合液をサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System9600、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、98℃で2分間、続いて55℃まで冷却し、1分間保持した。
アニーリング処理後、該混合液に0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseHあるいは5Uのサーマス サーモフィラス(Tth)由来耐熱性RNaseH(東洋紡社製、以下Tth RNaseHと記載する。)及び5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、55℃で1時間保持した。反応終了後、反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図6に示す。
図6は、E.coli RNaseH及びTth RNaseHを使用した場合のイノシンデオキシヌクレオチド含有キメラオリゴヌクレオチドプライマーの効果について示した電気泳動の結果を示し、レーン2〜レーン9までは、E.coli RNaseH、レーン10〜17は、Tth RNaseHを使用した場合である。レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は配列番号47及び48記載のプライマー対で鋳型1ngの場合、レーン3は、120I4及び123I4プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン4は、121I5及び124I5プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン5は、122I6及び125I6プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン6は配列表の配列番号47及び48記載のプライマー対で鋳型10ngの場合、レーン7は、120I4及び123I4プライマー対で鋳型10ngの場合、レーン8は、121I5及び124I5プライマー対で鋳型10ngの場合、レーン9は、122I6及び125I6プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン10は、配列表の配列番号47及び48記載のプライマー対で鋳型1ngの場合、レーン11は、120I4及び123I4プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン12は、121I5及び124I5プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン13は、122I6及び125I6プライマー対で鋳型1ngの場合、レーン14は配列表の配列番号47及び48記載のプライマー対で鋳型10ngの場合、レーン15は、120I4及び123I4プライマー対で鋳型10ngの場合、レーン16は、121I5及び124I5プライマー対で鋳型10ngの場合、レーン17は、122I6及び125I6プライマー対で鋳型10ngの場合である。
図6に示したように、鋳型量に関わらず、また、大腸菌由来RNaseHあるいはサーマス サーモフィラス由来耐熱性RNaseHのいずれを用いた場合においてもプライマーの3’末端より4塩基目あるいは5塩基目にイノシンを導入したプライマーにおいて目的の増幅産物の増加が確認できた。このことより、イノシンを適当な位置に入れることにより、ICANの反応性が向上することが明らかになった。
(3)上記(2)と同様の目的でプライマーの検討を行った。プライマーは、配列表の配列番号84及び85記載の塩基配列の塩基配列を有するプライマーで、さらに3’末端の3塩基が(α−S、あるいはalpha−thio)リボヌクレオチドであるもの、すなわち、RNA部分が5’−ホスホチオエート結合を持つオリゴヌクレオチドプライマー1Sおよび4Sを合成した。また、配列表の配列番号70及び71記載の塩基配列を有するプライマーで、さらに3’末端の3塩基と該プライマーのデオキシリボヌクレオチド部分の配列の一部がリボヌクレオチドである、すなわち、該プライマーの3’末端より11塩基目から13塩基目までがリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドプライマー1N3N3および4N3N3を合成した。鋳型となるDNAは、実施例4で調製したものを使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、前記各50pmolのプライマー、2μlの0.05%プロピレンジアミン水溶液、10ngの鋳型DNA及び滅菌水を含む全液量10μlの混合液をサーマルサイクラーを用いて、98℃で2分間加熱処理を行ったのち、氷中に移し冷却した。
アニーリング処理後、上記混合液に0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseHあるいは5UのTth RNaseH及び5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量40μlを加え、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液を、サーマルサイクラーで55℃で1時間保持した。
反応終了後、反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、いずれのRNaseHを用いた場合においても、1Sと4Sのプライマーの組み合わせおよび1N3N3と4N3N3のプライマーの組み合わせにおいて目的の位置に明らかな増幅産物が確認できた。このことから、プライマーの3’末端部分の5’−ホスホチオエート化は、本発明の方法において有効であることを確認した。さらに、プライマーの3’末端に加え、内部の適当な位置をリボヌクレオチドに置き換えた場合でも本発明の方法の反応性の向上に有効であることを確認した。
実施例7
特定の金属イオン存在下でE.coli RNaseH活性を有するDNAポリメラーゼを用いた本発明の方法について検討した。実施例2(1)で使用したキメラオリゴヌクレオチドプライマーを各120pmol、2μlの500mM 塩化カリウム及び8μMスペルミジンを含むアニーリング溶液、実施例2(1)で用いた1ngの鋳型DNA及び滅菌水含む全液量10μlの混合液を98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニーリングさせた。アニーリング処理後、該混合液に各0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.0%DMSO、11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、さらに塩化マンガン(ナカライテスク社製)を0.5mM、2.5mM、5.0mM、10mMの濃度になるように加え、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、60℃で1時間保持した。さらに、対照として塩化マンガンを添加しないもの、及び30UのE.coli RNaseHを添加し、塩化マンガンを添加しないものも調製した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図7に示す。
図7は、BcaBEST DNAポリメラーゼのRNaseH活性を利用した場合のICAN法の結果を示す電気泳動を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は塩化マンガン無添加/E.coli RNaseH添加の場合、レーン3は塩化マンガン無添加/E.coli RNaseH無添加の場合、レーン4は0.5mM塩化マンガン添加/E.coli RNaseH無添加の場合、レーン5は2.5mM塩化マンガン添加/E.coli RNaseH無添加の場合、レーン6は5.0mM塩化マンガン添加/E.coli RNaseH無添加の場合、レーン7は10.0mM塩化マンガン添加/E.coli RNaseH無添加の場合を示す。
図7に示したようにE.coli RNaseH非存在下において、塩化マンガンを2.5mMになるように添加した反応系で、目的の増幅産物が確認された。
実施例8
本発明の方法について、実際の生体試料で検討した。
(1)ATCC登録番号43895の腸管出血性大腸菌O−157を培養後、熱水抽出した物を鋳型として検出を行った。腸管出血性大腸菌O−157をノボビオシン加mEC培地にて42℃、18時間培養後、95℃、10分間熱処理を行った。これを滅菌水にて0、1、10、10、10、10、10セルに相当するO−157熱水抽出物を調製した。このO−157熱水抽出物を用い、実施例5(1)と同様の条件で、ベロ毒素2型(VT2)遺伝子の増幅を行った。また、対照として、同じ鋳型を用いて実施例5(1)記載の条件でPCR増幅も行った。反応終了後、ICAN法では反応液1μl、PCR法では、反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を表4及び図8に示す。
Figure 0004128074
図8は、ICAN法及びPCR法を用いた大腸菌O157の検出を示す電気泳動の結果を示し、増幅鎖長は135bpである。レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2はICAN法で細胞10個、レーン3はICAN法で細胞10個、レーン4はICAN法で細胞10個、レーン5は25サイクルのPCRで細胞10個、レーン6は25サイクルのPCR法で細胞10個、レーン7は25サイクルのPCRで細胞10個、レーン8は30サイクルのPCRで細胞10個、レーン9は30サイクルのPCR法で細胞10個、レーン10は30サイクルのPCRで細胞10個の場合である。
表4及び図8に示したように、本発明の検出方法は、PCR法と同等の検出感度を有し、さらにPCR法よりも短時間で検出できることを確認した。
(2)実施例2及び4で用いた配列表の配列番号40及び56のプライマーを用いて、λDNAを検出した。反応は、以下のように行った。すなわち、前記各120pmolのプライマー、2μlの500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液、10fg〜1ngのλDNA(宝酒造社製)及び滅菌水を含む全液量10μlの混合液を調製し、98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニーリングさせた。
アニーリング処理後、該混合液に各0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、60℃で1時間保持した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を表5に示す。
Figure 0004128074
表5に示したように、λDNAの検出において本発明の方法は有効であることを確認した。
(3)フラボバクテリウム細菌(Flavobacterium sp.SA−0082)のゲノムDNAを鋳型とし、実施例6(1)で用いた配列表の配列番号61及び62記載のプライマーを用いて検出を行った。鋳型として、国際公開第97/32010号パンフレット記載の方法で培養したフラボバクテリウム細菌からゲノムDNAを常法により調製した。反応は、以下のように行った。すなわち、前記各120pmolのプライマー、2μlの500mM 塩化カリウム及び8μM スペルミジンを含むアニーリング溶液、10fg〜1ngのゲノムDNA及び滅菌水で全液量10μlの混合液を調製し、98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニーリングさせた。
アニーリング処理後、上記混合液に各0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30UのE.coli RNaseH及び11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、52℃で1時間保持した。反応終了後、反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を表6及び図9に示す。
Figure 0004128074
図9は、フラボバクテリウム属細菌の検出を示す電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は鋳型1ng、レーン3は鋳型10pg、レーン4は鋳型1pg、レーン5は鋳型100fg、レーン6は鋳型10fgの場合である。
表6及び図9に示したように細菌の検出において、本発明の方法は有効であることを確認した。
実施例9
本発明の増幅方法とハイブリダイゼーション法との組み合わせによる標的核酸の検出方法を検討した。ターゲットとして、腸管出血性大腸菌O−157を選択した。鋳型DNAは、実施例8(1)記載の方法で調製した。増幅断片長は、GC含量約40%で約100bpの領域を選び,プライマーとして配列表の配列番号51及び72記載の塩基配列で示されるVT2−IF20及びVT2−IR20−2プライマーを使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、各50pmolのVT2−IF20及びVT2−IR20−2プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミンを含むアニーリング溶液、0〜10セル相当の各細胞数熱抽出液及び滅菌水で全液量10μlの混合液を調製した。該混合液をサーマルサイクラーパーソナル(宝酒造製)にて98℃ 2分間、熱変性後、55℃まで冷却し、1分間保持後、さらに氷上に置き、アニーリング処理を行った。
アニーリング処理後、上記混合液に最終濃度20mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTP混合物、30UのE.coli RNaseH及び5.5UのBcaBEST DNA ポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、あらかじめ55℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。対照としてO−157 Typing Set(宝酒造製)を用い、マニュアル通りにサーマルサイクラーパーソナルにてPCRを行った。PCR条件は、94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分を1サイクルとする35サイクルで行った。該反応での所要時間は、1サイクルが約4分で、全所要時間は、約145分になる。この際、予想される増幅産物は、404bpである。反応終了後、各反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図28Aに示す。図28Aは、ICAN法とPCR法での腸管出血性大腸菌O157ベロ毒素II型遺伝子検出の電気泳動結果であり、レーンM1は分子量マーカー(50−2000bp)、レーンM2は分子量マーカー(100bpラダー)、レーンNはネガティブコントロール、レーン1は1セル相当、レーン2は10セル相当、レーン3は10セル相当、レーン4は10セル相当、レーン5は10セル相当の鋳型の場合である。さらに、1,10セルにおけるICAN法とPCR法の増幅量の比較結果を表7に示す。
Figure 0004128074
図28A及び表7に示したように、本発明の検出方法もPCR法も予想される増幅産物を1細胞相当量の熱水抽出液を用いた反応系まで得ることができた。さらに、ICAN法で得られた増幅産物については、配列表の配列番号73記載の塩基配列で示される5’末端にビオチン標識されたVT2 オリゴヌクレオチドプローブを用いてドットハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイズは以下の条件で行った。すなわち、98℃、5分間変性後、氷上にて急冷させた反応液1μlをHybond−NTM(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)にスポットし、UV照射後、ハイブリバックに入れ、0.5M リン酸水素二ナトリウム(pH7.2)、1mM エチレンジアミン四酢酸、7%ラウリル硫酸ナトリウムのハイブリ溶液10mlを添加し、42℃でプレハイブリダイゼーションを30分間行なった。次に10μlの上記VT2 プローブ 100ng/μl溶液を熱変性後、プレハイブリダイゼーション反応系に添加した。42℃、60分間ハイブリダイゼーション後、66.6mM 塩化ナトリウム、66.6mM クエン酸三ナトリウム水和物、0.1%ラウリル硫酸ナトリウムの溶液で室温にて5分間2回洗浄し、洗浄バッファー(0.3M塩化ナトリウム、17.3mM リン酸二水素ナトリウム二水和物,2.5mM EDTA溶液、0.1%ラウリル硫酸ナトリウム)6mlに5mg/mlのHorseradish peroxidase streptoavidin conjugate(PIERCE製)を2μl添加し、42℃、12分間インキュベート後、洗浄バッファーで、室温で2回洗浄した。その後、0.1M クエン酸バッファー(pH5.0)10ml室温で洗浄し、0.1M クエン酸バッファー5ml、3%過酸化水素5μl、2mg/mlテトラメチルベンジジンエタノール溶液(TMB、ナカライ社製)250μlの混合溶液で暗室にて約10分間反応させた。発色後、脱イオン水にて反応停止させた。その結果を図28Bに示す。図28Bは、ICAN法での腸管出血性大腸菌O−157ベロ毒素II型遺伝子検出のドットハイブリ結果であり、上記電気泳動結果と同一であった。すなわち、本発明の方法の検出感度もPCRの検出感度も同等であることから、増幅反応の全所要時間を比較するとPCRに対し本発明のICAN法は、1/2以下の時間で行えることができ、病原菌等の検出方法として有効であることを確認した。
実施例10
(1)培養細胞由来RNAを鋳型として、逆転写反応と本発明の方法の組み合わせを検討した。反応は、以下のように行った。すなわち、10%ウシ胎児血清(ギブコ社製)含有、ダルベッコ改良イーグル培地(バイオウィタカー社製、12−604F)にRAW264.7細胞(ATCC TIB 71)を1.5×10/mlになるように懸濁し、6穴マイクロタイタープレートのウェルに5mlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で一晩培養した。各ウェルに50μlの100μg/mlのリポポリサッカライド(LPS、シグマ社製)水溶液および50μlの1000U/μl インターフェロン−γ水溶液(IFN−γ、ジェンザイムテクネ社製)を添加して4時間培養後、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)を用いてキットの説明書に従いRNAを調製した。なお、陰性対照としてLPSおよびIFN−γを添加しない区分を設定した。
上記により調製したRNA 3μgと10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl、5mM MgCl、1mM dNTP混合物、150pmolのランダム6mersプライマー、60Uのリボヌクレアーゼ インヒビター(宝酒造社製)、15UのReverse Transcriptase XL(AMV)(宝酒造社製、2620A)を含む全液量60μlをサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9600、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、30℃で10分間、続いて42℃で1時間保温した後、酵素を失活させるために99℃で5分間加熱してcDNAを調製した。
マウス誘導型NO合成酵素(iNOS)のmRNAの塩基配列(GeneBank accession No.NM−010927)に従って、配列表の配列番号74及び75記載の塩基配列を有するプライマーを合成した。また、対照としてPCRのために配列表の配列番号76及び77記載のプライマーも合成した。
各50pmolの上記プライマーと2μlの0.05%プロピレンジアミン水溶液、鋳型として上記cDNA 1μl(RNAとして50ng相当)及び滅菌水で全液量10μlの混合液を調製した。該混合液は、サーマルサイクラーで98℃で2分間、熱変性後、55℃に冷却し、1分間保持して鋳型にプライマーをアニーリングさせた。
アニーリング処理後、上記混合液に0.625mM dNTP混合物、42.5mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.5)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、15UのE.coli RNaseH、11UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量40μlを加え、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、サーマルサイクラーで55℃、1時間保持した。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。対照のPCRは以下のように行った。すなわち、各50pmolのプライマーとcDNA 1μl(RNAとして50ng相当)を含む10×Ex Taqバッファー(宝酒造社製)5μl、1.25U タカラ Exタック DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)、0.2mM dNTP混合物を含む全液量50μlの反応液をサーマルサイクラーを用い、94℃ 2分間を1サイクル、次に94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとする30サイクル、さらに72℃ 5分間の1サイクルのプログラムで反応を行った。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。反応終了後、各反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図10に示す。
図10は、RT−ICAN法(A)及びRT−PCR法(B)の比較を示した電気泳動の結果を示し、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は陰性対照区分、レーン3はLPS、IFN−γ処理区分である。
図10に示したように、本発明の方法およびPCRのいずれの反応においても、LPSおよびIFN−γで処理した細胞より調製したcDNAを鋳型にした場合のみ増幅産物が確認された。従って、PCR法より反応所要時間が短い本発明の方法が、逆転写反応後のDNA増幅方法として有効であることを確認した。
実施例11
E.coli RNaseHの至適温度は、37℃であることから、本発明の増幅反応中に失活していくことが考えられた。そこで、増幅反応の途中でE.coli RNaseHをさらに添加することによる増幅反応への影響を検討した。鋳型DNAは、カリフラワーモザイクウイルス 35Sプロモーター及びEPSPS遺伝子の挿入された組み換えダイズより抽出したゲノムDNAから配列表の配列番号78及び79記載のGMO−PCR−F及びGMO−PCR−Rプライマーを用いたPCRにより得られた増幅断片(1071bp)を使用した。また、配列表の配列番号80〜83記載の塩基配列を有するプライマー、GMO−S1、S2、A1、A2を使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、各50pmolの上記プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミン、1pg〜10ngの鋳型DNA及び滅菌水で全液量10μlの混合液を調製した。該混合液は、98℃、2分間熱変性し、55℃まで冷却し、アニーリング処理を行った。
アニーリング処理後、上記混合溶液に最終濃度各500μM dNTP混合物、34mM トリシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.7)、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1%DMSO、30UのE.coli RNaseH、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、サーマルサイクラーで55℃で25分間保持した。反応開始から25分後に、さらに30UのE.coli RNaseHを添加し、55℃で30分間保持した。対照として、55℃で55分間保持したものも調製した。反応終了後、反応液3μlを3%アガロース電気泳動に供した。その結果、いずれの鋳型DNA濃度でも、いずれのプライマーの組み合わせ、S1/A1、S1/A2、S2/A1、S2/A2においてもE.coli RNaseHを反応途中で加えることにより増幅効率が改善されることを確認した。
実施例12
本発明で使用する鋳型となる核酸を増幅あるいは複製する方法と、本発明の方法の組み合わせについて検討した。反応は以下のように行った。すなわち、実施例5(3)で調製した菊ウイロイド遺伝子を含み、大腸菌で複製したプラスミドを鋳型とし、T7 RNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いてインビトロトランスクリプション(in vitro transcription)を行い、RNA複製断片を得た。配列表の配列番号57及び58記載の塩基配列を有するプライマー及びcDNA シンセシスキット(宝酒造社製)を用いてcDNAを合成した。該cDNA断片及び上記複製プラスミドを鋳型として実施例5(3)記載の方法で増幅反応を行った。その結果、鋳型となる核酸をプラスミドの形で複製した場合及びRNAポリメラーゼでRNAを複製し、cDNAにした場合のいずれにおいても本発明の方法で使用できることを確認した。
実施例13
(1)プライマーの合成
マウス誘導型NO合成酵素(iNOS)のmRNAの塩基配列に従って、配列表の配列番号86〜87記載のオリゴヌクレオチドプライマーNS1、NS2をそれぞれ合成した。
(2)PCR産物を鋳型にしたICAN法によるDNA断片の増幅
前記各50pmolの合成オリゴヌクレオチドプライマーと2μlの0.05%プロピレンジアミン水溶液、10fg〜10pgの鋳型を含む全液量10μlをサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System9600、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、98℃で2分間、続いて60℃で2分間の加熱処理を行い鋳型にプライマーをアニーリングさせた。なお、この際の鋳型は、iNOS cDNAを配列表の配列番号132及び133記載のプライマーNS−PCR1とプライマーNS−PCR2により増幅し(741bp)、Suprec02(宝酒造社製)で精製したものを用いた。上記熱処理をした各溶液に0.625mM dNTP混合液、40mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、125mM 酢酸カリウム、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、0.0156μgのPfu由来RNaseH、0.66UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量40μlの反応液を添加し、サーマルサイクラーで60℃、1時間保温した。この反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を図11に示す。図11は、Pfu RNaseHを用いたICAN法の結果を示すものであり、レーン1は分子量マーカー(100bp)、レーン2は鋳型10fg、レーン3は鋳型100fg、レーン4は鋳型1pg、レーン5は鋳型10pgの場合である。
図11に示したように、100fgの鋳型量まで目的の増幅産物が確認できた。
実施例14
(1)RNAの調製
10%ウシ胎児血清(ギブコ社製)含有、ダルベッコ改良イーグル培地(バイオウィタカー社製)にRAW264.7細胞(ATCC TIB 71)を1.5×10/mlになるように懸濁し、6穴マイクロタイタープレートのウェルに5mlずつ加えて5%炭酸ガス存在下、37℃で一晩培養した。各ウェルに50μlの100μg/mlリポポリサッカライド(LPS、シグマ社製)水溶液および50μlの1000U/ml インターフェロン−γ水溶液(IFN−γ、ジェンザイムテクネ社製)を添加して4時間培養後、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製、74104)を用いてキットの説明書に従いRNAを調製した。なお、陰性対照としてLPSおよびIFN−γを添加しない区分を設定した。
上記により調製したRNA 3μgと10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl、5mM MgCl、1mM dNTP混合液、150pmolのRandom 6mers、60UのRibonuclease Inhibitor(宝酒造社製)、15UのReverse Transcriptase XL(AMV)(宝酒造社製)を含む全液量60μlをサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System9600、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、30℃で10分間、続いて42℃で1時間保温した後、酵素を失活させるために99℃で5分間加熱してcDNAを調製した。
マウス誘導型NO合成酵素(iNOS)のmRNAの塩基配列に従って、配列表の配列番号92〜93に記載の塩基配列を有するプライマーNS5、NS6をそれぞれ合成した。また、PCR反応のために配列表の配列番号88〜89記載のプライマーNS3、NS4を合成した。
各50pmolの上記プライマーNS5、NS6、鋳型として上記により合成したcDNA溶液1μl(RNAとして50ng分)あるいは水により10倍、100倍、1000倍、10000倍希釈したもの1μl、および0.5mM dNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1%DMSO、0.0156μgのPfu RNaseH、0.66UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量50μlをサーマルサイクラーで60℃、1時間保温した。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。
一方、対照としてPCR法を行った。各50pmolのプライマーNS3、NS4とcDNA溶液1μl(RNAとして50ng分)あるいは水により10倍、100倍、1000倍、10000倍希釈したもの1μlと10×Ex タックバッファー(宝酒造社製)5μl、1.25U タカラ Exタック ポリメラーゼ(宝酒造社製)、0.2mM dNTP混合液を含む全液量50μlの反応系でサーマルサイクラーを用い、94℃ 2分間を1サイクル、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒のサイクルを35サイクル、72℃ 5分間を1サイクルのプログラムで反応を行った。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。
上記ICAN反応液およびPCR反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を図12に示す。すなわち、図12はPfu RNaseHを用いたICAN法及びPCR法でのiNOS遺伝子検出結果であり、レーン1は100bp DNAラダーマーカー、レーン2は陰性対照cDNAの10000倍希釈サンプル、レーン3は陰性対照cDNAの1000倍希釈サンプル、レーン4は陰性対照cDNAの100倍希釈サンプル、レーン5は陰性対照cDNAの10倍希釈サンプル、レーン6は陰性対照cDNAの原液サンプル、レーン7はLPSとIFN−γ区分cDNAの10000倍希釈サンプル、レーン8はLPSとIFN−γ区分cDNAの1000倍希釈サンプル、レーン9はLPSとIFN−γ区分cDNAの100倍希釈サンプル、レーン10はLPSとIFN−γ区分cDNAの10倍希釈サンプル、レーン11はLPSとIFN−γ区分cDNAの原液サンプルの場合である。
図12に示したように、ICANおよびPCRのいずれの反応においても、LPSおよびIFN−γで処理した細胞より調製したcDNAを鋳型にした場合のみ増幅産物が確認された。ICAN反応においては1000倍希釈したcDNAまで増幅産物の増加が確認された。PCR反応においては100倍希釈したcDNAまで増幅産物の増加が確認された。
実施例15
(1)λDNAの塩基配列に従って、配列表の配列番号90〜91記載のオリゴヌクレオチドプライマー4とオリゴヌクレオチドプライマー5を合成した。オリゴヌクレオチドプライマー4はGC含量75%のセンス方向のプライマーであり、オリゴヌクレオチドプライマー5はGC含量80%のアンチセンス方向のプライマーである。
各120pmolの上記プライマー4と5に2μlの0.05%プロピレンジアミン溶液と、10ngの鋳型を含む全液量10μlの反応系で98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニールさせた。なお、この際の鋳型は、実施例2記載のPCR反応物(1005bp)をSuprec02で精製したものを用いた。
(2)アニール後に各0.625mMのdNTP混合液、42.5mM ビシン−水酸化カリウム緩衝液(pH8.3)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、0.5μlのThermotoga maritima RNaseHII(0.58μg/ml)及びBcaBEST DNAポリメラーゼを2.2U含む40μlを添加し、ICAN反応を60℃、65℃、70℃で1時間行なった。このICAN反応後の反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動で確認した。その結果を図13に示す。図13は、Thermotoga maritima RNaseHIIを用いたICAN法の結果を示すものであり、レーン1は分子量マーカー(100bp)、レーン2は反応温度60℃、レーン3は反応温度65℃、レーン4は反応温度70℃の場合である。
図13に示した様に、いずれの反応温度においても目的の増幅産物が確認できた。
実施例16
(1)PCR産物を鋳型にしたICAN法によるDNA断片の増幅(アルカリ変性)について検討した。10fg〜10pgの鋳型1μlと0.4N NaOH 1μlを混合し、37℃で5分間保温し鋳型の変性を行った。なお、この際の鋳型は、iNOS cDNAを実施例13記載のPCR増幅断片(741bp)をSuprec02(宝酒造社製)で精製したものを用いた。上記変性した各鋳型を0.4N HCl 1μlにより中和し、続いてこれに前記各50pmolのNS1及びNS2プライマーと、0.5mMのdNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1.0%DMSO、0.0156μgのPfu RNaseH、0.66UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量47μlの反応液を添加し、サーマルサイクラーで60℃、1時間保温した。この反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を図14に示す。図14は、アルカリ変性した鋳型を用いたICAN法の結果を示すものであり、レーン1は分子量マーカー(100bp)、レーン2は鋳型10fg、レーン3は鋳型100fg、レーン4は鋳型1pg、レーン5は鋳型10pgの場合である。
図14に示した様に、1pgの鋳型量まで明らかな増幅産物の増加が確認できた。
実施例17
(1)鋳型の変性を伴わないICAN法によるDNA断片の増幅について検討した。プライマーは、配列表の配列番号92〜93に示すNS5及びNS6プライマーを使用した。鋳型DNAは、実施例13で調製したものを使用した。
鋳型10fg〜100pgあるいは陰性対照の水、各50pmolのNS5およびNS6プライマー、0.5mM dNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1.0%DMSO、0.0156μgのPfu RNaseH、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を含む全液量50μlの反応液をサーマルサイクラーで60℃、1時間保温した。反応終了後、この反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その電気泳動の結果を図15に示す。図15は、鋳型DNA変性工程のない場合の本発明の増幅方法についての電気泳動の結果を示し、レーン1は100bp DNAラダーマーカー、レーン2は陰性対照(水)の場合、レーン3は鋳型10fgの場合、レーン4は鋳型100fgの場合、レーン5は鋳型1pgの場合、レーン6は鋳型10pgの場合、レーン7は鋳型100pgの場合である。
図15に示したように、1pgの鋳型量まで、目的の増幅産物が確認できた。
実施例18
(1)ベクタープラスミドpDON−AI DNA(宝酒造社製)のパッケージング領域の塩基配列に従って、配列表の配列番号94及び95記載のpDON−AI−1、pDON−AI−2プライマーをそれぞれ合成した。
(2)鋳型の変性を伴わないICAN法によるDNA断片の増幅
10fg〜1ngのPDON−AI DNA 1μlあるいは陰性対照の水1μl、前記各50pmolのプライマー、0.5mM dNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1.0%DMSO、参考例4で調製した0.0156μgのPfu RNaseH、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量50μlの反応液をサーマルサイクラーで60℃、1時間保温した。この反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を図16に示す。図16は、環状2本鎖DNAを変性処理なしで鋳型とした場合の本発明の方法についての電気泳動の結果を示し、レーン1は100bp DNAラダーマーカー、レーン2は陰性対照(水)、レーン3は鋳型10fg、レーン4は鋳型100fg、レーン5は鋳型1pg、レーン6は鋳型10pg、レーン7は鋳型100pg、レーン8は鋳型1ngの場合である。
図16に示すように、10fgの鋳型量まで目的とする増幅断片が得られることを確認した。
実施例19
本発明の方法を利用したヒトパピローマウィルス16型遺伝子の検出について検討した。鋳型として、ヒトパピローマウィルス16型の感染している細胞であるCaSki cell(大日本製薬社製、cellあたり500コピーのヒトパピローマウィルス16型を保有している)のDNAを用いた。HPV16検出用プライマーとして、配列表の配列番号96〜97記載の塩基配列を有するHPV16 S3プライマー及びHPV16 A2プライマーを使用した。該プライマー対で得られる増幅産物は、約120bpである。反応は、以下のように行った。
上記鋳型DNAを1pg、3pg、30pg、100pg、300pg、1ng、3ngあるいは10ng、各50pmolのHPV16 S3プライマー及びHPV16 A2プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミンを含む混合液10μlを調製した。この混合液をサーマルサイクラーパーソナルにて98℃ 2分間、55℃ 1分間保温後、氷上に置いた。該混合液に、最終濃度20mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTP混合液、30U大腸菌由来RNaseH、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し最終容量を50μlとした。この反応液を、あらかじめ55℃に設定したサーマルサイクラーにセットし、60分間反応させた。対照として、Human Papillomavirus Primers HPVp16(forward、reverse)(宝酒造社製)を用い、マニュアルに記載の方法に従い、サーマルサイクラーパーソナルにてPCRを行った。この際、予想される増幅産物は、140bpである。
反応終了後、各反応液3μlを4%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図17Aに示す。すなわち、図17AはICAN法とPCR法を利用したHPV16遺伝子の検出結果であり、レーンM1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーンM2は分子量マーカー(50−2000bp)、レーン1は鋳型無し、レーン2は鋳型1pg、レーン3は鋳型3pg、レーン4は鋳型30pg、レーン5は鋳型100pg、レーン6は鋳型300pg、レーン7は鋳型1ng,レーン8は鋳型3ng、レーン8は鋳型3ng、レーン9は鋳型10ngの場合である。
図17Aに示したように、ICAN反応では鋳型DNA 3pgを用いた反応まで、PCR反応では鋳型DNA1pgの場合まで予想される増幅産物が得られることが確認できた。
さらに、これらの反応産物について、配列表の配列番号98に記載の塩基配列で示されるオリゴヌクレオチドHPV16プローブを用いてドットハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションは、実施例9記載の条件で行った。その結果を図17Bに示す。すなわち、図17BはPCR法とICAN法でのHPV16遺伝子のドットハイブリ検出の結果であり、レーン1は鋳型無し、レーン2は鋳型1pg、レーン3は鋳型3pg、レーン4は鋳型30pg、レーン5は鋳型100pg、レーン6は鋳型300pg、レーン7は鋳型1ng,レーン8は鋳型3ng、レーン8は鋳型3ng、レーン9は鋳型10ngの場合である。
図17Bに示したようにICAN法及びPCR法のいずれにおいても検出感度はほぼ同等であることから、ウィルス等の検出方法として有効であることが確認できた。
実施例20
臨床検体DNAサンプルからのヒトパピローマウィルス16型遺伝子検出について検討した。鋳型として、インフォームドコンセントの得られた臨床検体6検体から常法で調製されたDNAを用いた。この臨床検体から調製されたサンプルは、PCRにより感染HPVのタイプが判明しているものである。検出用プライマーは、実施例19記載のHPV16 S3プライマー及びHPV16 A2プライマーを用いた。鋳型となる臨床検体からのDNAサンプルはTEバッファーにより1μlあたり100ngとなるように調製して使用した。鋳型量以外は、実施例19記載の反応液組成及び反応条件で行った。さらに、ネガティブコントロールとして鋳型DNAを加えないもの、ポジティブコントロールとしてHPV16の感染している細胞であるCaSki cell DNA 500pgを用い、同様の反応を行った。反応終了後、各反応液3μlを4%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図18Aに示す。すなわち、図18Aは臨床検体からのHPV16遺伝子検出の結果であり、レーンMは分子量マーカー、レーン1〜6は臨床検体、レーン7はネガティブコントロール、レーン8はポジティブコントロールの場合である。
図18Aに示したように、従来法のPCR法によりHPV16型感染と判明しているサンプルにおいて、ICAN法でも約120bpの増幅産物が認められ、その他の型のHPVが感染しているサンプルおよび非感染サンプルでは増幅は認められなかった。
さらに、これらの増幅産物について、実施例9記載のドットハイブリを行った。その結果を図18B及び表8に示す。すなわち、図18Bは、臨床検体からのHPV16遺伝子のドットハイブリ検出結果であり、レーン1〜6は臨床検体、レーン7はネガティブコントロール、レーン8はポジティブコントロールの場合である。
図18に示したように電気泳動で得られた結果と同じ結果が得られ、電気泳動的にもドットハイブリ的にPCR法と同様の結果が得られることを確認した。すなわち、本発明の方法により、実際の臨床検体からHPV16型を検出でき、ウィルス等の検出方法として有効であることを確認した。
Figure 0004128074
実施例21
臨床検体からのHCVの検出について検討した。検体試料は、インフォームドコンセントの得られたHCV患者の血清5検体各々300μlからトライゾール試薬(ライフテック社製)を使用して該試薬添付の説明書に従い調製し、最終的に注射用水(大塚製薬製)6μlに溶かしRNAサンプルとした。陰性コントロールとして健常者の血清300μlから同様に抽出したRNAをおいた。先ず、RNA PCR kit(AMV)ver2.1(宝酒造製)を用いて、逆転写反応液として1×RNA PCR Buffer、5mM MgCl、1mM dNTPs、1U AMV Reverse TranscriptaseXL、配列表の配列番号99〜100に記載のHCV−Fプライマー及びHCV−Rプライマーを各10pmol及び各RNAサンプル2μlを含む4μlの反応液を調製し、30℃、10分間加温後、50℃で30分間反応させた。逆転写反応終了後、ICAN反応を行った。ICAN反応では、配列表の配列番号101〜102記載の塩基配列を有するHCV−F2プライマー及びHCV−R1プライマーを使用した。反応は以下のようにして行った。
上記プライマー各50pmol、各逆転写反応液3μl、最終濃度0.01%プロピレンジアミンを含む全液量10μlの混合液を調製した。また、ブランクとして滅菌水3μlを用いた。該混合液をサーマルサイクラーパーソナルで98℃、2分間熱処理後、60℃まで急冷し1分間保持後、氷上に保存した。
アニーリング処理後、上記混合液に最終濃度が20mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、30Uの大腸菌由来RNaseH及び5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液をあらかじめ、60℃に設定したサーマルサイクラーMPにセットし60分間反応させた。反応終了後、各反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図19Aに示す。すなわち、図19Aは、臨床検体からのHCV検出の結果を示すものであり、レーンBは滅菌水を鋳型にした場合、レーン1は健常人試料、レーン2〜6はHCV患者試料、レーンMは分子量マーカー(50〜2000bp)である。
図19Aに示したように、HCV患者由来のRNAサンプルのみ、HCVゲノムの塩基配列から予想される約107bpの増幅産物が得られ、健常人由来の血清及びブランクは、上記増幅産物は得られなかった。さらに実施例9記載の条件で、配列表の配列番号103記載の5’末端をビオチン化したHCVプローブを使用して、ICAN増幅産物についてドットハイブリダイゼーションを行った。その結果を図19Bに示す。図19Bにおいて、各レーンのサンプルは、電気泳動の場合と同じである。
図19に示したように、電気泳動結果とドットハイブリ結果とは一致することが確認できた。このことから、本発明の方法により実際の臨床検体からHCVを検出することができ、ウイルス等の検出方法として有効であることが確認できた。
実施例22
アデノウイルスの検出方法について検討した。
ジーンバンク登録番号(ACC No.JO1917)記載のアデノウイルスの塩基配列に従って、配列表の配列番号104〜106記載のE1A(腫瘍遺伝子)増幅用プライマーE1A−1(センス方向)、E1A−2(アンチセンス方向)、E1A−3(アンチセンス方向)を構築した。アデノウイルスは、ATCC登録番号VR−5を使用した。鋳型は、以下のように調製した。8.73×1010PFU/mlのアデノウイルス溶液100μlを終濃度0.1%SDS−0.2mg/mlプロテイナーゼK溶液で37℃、1時間インキュベートし、その後シリカゲルによりDNAを吸着させ、精製した。これを滅菌水にて希釈し、10、10、10、10PFUに相当するアデノウイルスDNAを調製したものを使用した。反応は、以下のようにして行った。すなわち、各60pmolのE1A−1プライマー及びE1A−2プライマー(増幅鎖長112bp)あるいはE1A−1プライマー及びE1A−3プライマー(増幅鎖長91bp)の組み合わせに、2μlの0.05%プロピレンジアミンと鋳型を含む全液量10μlの反応系で98℃で2分間、熱変性させた後、氷中で急冷することによりプライマーを鋳型にアニールさせた。
アニーリング処理後に各0.625mM dNTP混合液、42.5mM トリシン−水酸化カリウム(pH8.5)緩衝液、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30Uの大腸菌由来RNaseH及び5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む40μlを添加し、最終容量を50μlにした。該反応液を60℃で1時間保持した。また対照として、上記と同じ鋳型と配列表の配列番号107〜108及び142記載の塩基配列を有するE1A(腫瘍遺伝子)PCR増幅用プライマーE1A−1P(センス方向)、E1A−2P(アンチセンス方向)、E1A−3P(アンチセンス方向)を構築した。プライマーを用いて、PCRによる検出を行なった。PCRは以下のようにして行った。すなわち、各60pmolのE1A−1Pプライマー及びE1A−2Pプライマー(増幅鎖長112bp)あるいはE1A−1Pプライマー及びE1A−3Pプライマー(増幅鎖長91bp)の組み合わせに、10×Ex Taqバッファー(宝酒造社製)5μl、1.25UのタカラEx Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)、0.2mM dNTPsを含む全量50μlのPCR溶液を調製した。PCR条件は94℃、30秒、55℃、30秒、72℃、30秒を1サイクルとした30サイクルで行なった。
反応終了後、ICAN法、PCR法の両反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図20及び表9に示す。すなわち、図20は、アデノウイルス粒子からのウイルスE1A遺伝子の検出結果を示すものであり、レーン1〜レーン10までがプライマーE1A−1及びE1A−2の組み合わせに関する結果であり、レーン11〜20までがプライマーE1A−1及びE1A−3の組み合わせに関する結果である。レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2はICAN法で10(PFU相当DNA)、レーン3はICAN法で10、レーン4はICAN法で10、レーン5はICAN法で10、レーン6は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン7はPCR法で10(PFU相当DNA)、レーン8はPCR法で10、レーン9はPCR法で10、レーン10はPCR法で10の場合である。さらに、レーン11は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン12はICAN法で10(PFU相当DNA)、レーン13はICAN法で10、レーン14はICAN法で10、レーン15はICAN法で10、レーン16は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン17はPCR法で10(PFU相当DNA)、レーン18はPCR法で10、レーン19はPCR法で10、レーン20はPCR法で10の場合である。
Figure 0004128074
図20及び表9に示すようにアデノウイルスE1A遺伝子の検出においてICAN法はPCR法と同等の検出感度であることを確認した。
実施例23
レトロウイルスベクター感染細胞からの組み込みウイルス遺伝子の検出について検討した。レトロウイルス感染細胞の調製およびゲノムDNA調製法は以下のようにして行った。すなわち、ベクタープラスミドpDON−AI(宝酒造社)をパッケージング細胞GPE+86にリン酸カルシウム法にて導入し、導入細胞の培養上清からエコトロピックベクターを調製した。NIH/3T3細胞に、エコトロピックベクターを感染させ、G418を含む培地で14日間培養することによりウイルスベクター感染細胞を調製した。調製したレトロウイルス感染細胞4×10個より常法によりレトロウイルス感染細胞のゲノムDNA 27μgを得た。また、プライマーは、実施例18(1)記載のプライマーpDON−AI−1及びpDON−AI−2を用いた。反応は以下のようにして行った。すなわち、前記各60pmolのプライマー、2μlの0.25%プロピレンジアミン水溶液、上記鋳型ゲノムDNA1000ng〜0.1ngを含む全液量10μlの反応系でサーマルサイクラー(宝酒造社製)で98℃で2分間の後、60℃の加熱処理により鋳型にプライマーをアニーリングさせた。
上記アニーリング処理後の各溶液に0.625mM dNTP混合液、40mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、125mM 酢酸カリウム、5mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30Uの大腸菌由来RNaseH及び、5.5UのBcaBest DNAポリメラーゼを含む全液量40μlの反応液を添加し、最終容量を50μlにした。該反応液をサーマルサイクラーで60℃で1時間保持した。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。さらにICAN法とPCR法によるDNAの検出感度を比較するために、配列表の配列番号111〜112記載のpDON−AI−3及びpDON−AI−4プライマーを使用してPCRを行った。PCRは、上記鋳型100ng〜0.1ng、上記各プライマー60pmol、10×ExTaqバッファー5μl、1.25UのタカラExタックポリメラーゼ、0.2mM dNTPsを含む全量50μlの反応液を調製し、サーマルサイクラーパーソナルを用い、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとした反応を35サイクル行った。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図21に示す。すなわち、図21は、ICAN法及びPCR法でのレトロウイルスベクター感染細胞からの組み込みウイルス遺伝子の検出結果を示すものであり、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は鋳型1000ng、レーン3は鋳型100ng、レーン4は鋳型10ng、レーン5は鋳型1ng、レーン6は鋳型0.1ngの場合である。
図21に示したようにICAN法では、鋳型DNAが1ngまで、PCR法では35サイクルで鋳型1ngまで目的の増幅産物を確認できた。
実施例24
大腸菌O−157 ベロ毒素I型遺伝子の検出について、本発明の増幅方法とハイブリダイゼーション法との組み合わせによる標的核酸の検出方法を検討した。ターゲットとして、腸管出血性大腸菌O−157 ベロ毒素I型遺伝子を選択した。鋳型DNAは、実施例8(1)記載の方法で調製した。増幅領域は、GC含量約40%で約80bpの領域を選び、プライマーとして配列表の配列番号113及び114記載の塩基配列で示されるVT1−IF4及びVT1−IR1プライマーを使用した。反応は、以下のように行った。すなわち、各60pmolのVT1−IF4及びVT1−IR1プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミン、0〜10セル相当の各細胞数熱抽出液及び滅菌水で全液量5μlの混合液を調製した。該混合液をサーマルサイクラーパーソナルにて98℃2分間、熱変性後、55℃まで急冷し、1分間保持後、さらに氷上に置き、アニーリング処理を行った。
アニーリング処理後、上記混合液に最終濃度20mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、15Uの大腸菌由来RNaseH及び2.75UのBcaBEST DNA ポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を25μlにした。該反応液は、あらかじめ55℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし60分間保持した。対照として上記熱抽出液についてO−157 Typing Set(宝酒造製)を用い、マニュアル通りにサーマルサイクラーパーソナルにてPCRを行った。PCR条件は、94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分を1サイクルとする35サイクルで行った。該反応での所要時間は、約145分になる。この際、予想される増幅産物は、349bpである。反応終了後、各反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。ICAN法の結果を図22に示した。図22は、O−157ベロ毒素I型遺伝子の検出結果であり、レーンMは分子量マーカー(50−2000bp)、レーンNは、滅菌水を鋳型にした場合、レーン1は1セル相当の鋳型、レーン2は10セル相当の鋳型、レーン3は10セル相当の鋳型、レーン4は10セル相当の鋳型の場合である。さらに、ICAN法とPCR法の検出結果について表10に示す。
Figure 0004128074
表10に示したように、ICAN法もPCR法も予想される増幅産物を1細胞相当量の熱抽出液を用いた反応系まで得ることができた。さらに、増幅産物については、配列表の配列番号115に記載の塩基配列で示される5’末端がビオチン標識されたVT1 オリゴヌクレオチドプローブを用いてドットハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイズは実施例19記載の条件で行った。その結果は、上記電気泳動結果と同一であった。すなわち、ICAN法とPCR法の検出感度は同等であることが確認できた。さらに増幅反応の全所要時間を比較するとPCRに対し本発明のICAN法は1/2以下の時間で行うことができ、病原菌などの検出方法として有効であることを確認した。
実施例25
ボツリヌスA型毒素遺伝子の検出方法について検討した。鋳型は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum、食中毒事例株、typeA−190)より調製したDNAを用いた。該菌株は女子栄養大学・衛生学教室保存菌株である。検出用プライマーとして、配列表の配列番号116〜117記載の塩基配列で示されるBotA S2プライマー)及びBotA A2プライマーを合成した。該プライマー対で約150bpの増幅産物が得られる。鋳型となる上記A型毒素産生ボツリヌス菌DNAは、滅菌水にて1μlあたり100fg、1pg、10pg、100pgとなるように調製した。反応は以下のようにして行った。
各50pmolの上記プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミン、上記鋳型DNA溶液各1μlを添加し、容量10μlの混合液を調製した。該混合液を実施例19記載の反応液組成及び反応条件でICAN反応を行った。対照として、ボツリヌスA型毒素遺伝子検出用プライマーセット BAS−1 and BAS−2(宝酒造社製)を用い、マニュアルに記載の方法に従い、サーマルサイクラーパーソナルにてPCRを行った。この際、予想される増幅産物は、284bpである。
反応終了後、各反応液3μlを4%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図23Aに示す。すなわち、図23Aは、ICAN法及びPCR法でのボツリヌスA型毒素遺伝子の検出結果を示すものであり、レーンM1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーンM2は分子量マーカー(50〜2000bpマーカー)、レーン1は鋳型なし、レーン2は鋳型100fg、レーン3は鋳型10pg、レーン4は鋳型100pgの場合である。
図23Aに示すように、ICAN法では鋳型DNA 100fgを用いた反応まで、予想される増幅産物が得られたが、PCR法では鋳型DNA 100fgを用いた反応では予想される増幅産物が得られなかった。さらに、これらの反応産物について、配列表の配列番号118に記載の塩基配列で示されるBotAプローブを用いてドットハイブリダイゼーションを行った。ドットハイブリは、実施例9記載の条件と同様にして行った。その結果を図23Bに示す。図23Bに示したように、ICAN反応では鋳型100fgまで、PCR反応では鋳型10pgまでシグナルが確認でき、上記電気泳動結果と一致することが確認できた。
実施例26
菊ウイロイドの検出について検討した。特開平9−140383号公報 実施例1に記載の、キクわい化ウイロイド(CSVd)感染キクからの低分子RNAの抽出法に従って得た低分子RNAの10倍希釈系列を調製した。逆転写反応は、RNA PCR kit(AMV)ver2.1(宝酒造社製)を用いて行った。すなわち、逆転写反応液として、1×RNA PCR Buffer、5mM MgCl、1mM dNTPs、20UのRNase Inhibitor,5U AMV Reverse TranscriptaseXL、50pmol Random 9mers、各希釈系列RNA溶液1μlを用いて20μlの反応液を調製し、30℃ 10分間加温後、55℃ 30分間反応させた。反応終了後、99℃ 5分間熱処理により逆転写酵素を失活させ、冷却後、ICAN反応を行った。ICAN反応液50μlの反応系に対して上記逆転写反応液1μlを鋳型として用いた。本実施例においてプライマーは、配列表の配列番号119及び120記載の塩基配列を有するCSVD−F4プライマーとCSVD−R3プライマーを使用した。反応は、反応温度を60℃、サーマルサイクラーMPを使用する以外は、実施例19記載の反応条件と同じにした。反応終了後、各反応液3μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。
一方、同じ逆転写反応液1μlを鋳型として用いて50μlの反応系でPCR増幅を行った。このとき使用したプライマーは配列表の配列番号109及び110記載のF94とR264プライマーを使用した。反応は以下のように行った。すなわち、TaKaRa PCR Amplification kitを使用し、プロトコールに従い、反応液を調製し、上記プライマー各10pmol用いて、各逆転写反応液1μlを添加して全量50μlにし、サーマルサイクラーMPにより増幅反応をおこなった。反応条件は、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとし30サイクルをおこなった。反応終了後、各反応液5μlを3%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を表11に示す。
Figure 0004128074
表11に示したように、ICAN法では10倍に希釈したRNAサンプルを鋳型に用いた反応まで、PCR法では10倍に希釈したRNAサンプルを鋳型に用いた反応まで増幅産物が得られた。
さらにICAN増幅産物とPCR増幅産物についてドットハイブリダイゼーションにより目的の産物であることを確認した。配列表の配列番号121記載の塩基配列で示される5’末端にビオチン標識されたCSVdプローブを用いてドットハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイズの方法は実施例9に記載の条件に従った。その結果は、上記電気泳動結果と一致しており、ICANでは10倍希釈のRNAサンプルまでシグナルが得られ、PCRでは10倍希釈のRNAサンプルまでシグナルが得られた。PCRに比べてICANの方が感度がよいことが示された。
実施例27
Pfu RNaseHを用いたキクわい化ウイロイド(CSVd)感染キクからのウイロイド遺伝子の検出について検討した。実施例26で調製したRNAの10倍希釈液3μlと10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、5mM 塩化マグネシウム、1mM dNTP混合液、150pmolのRandom 6mers、60UのRibonuclease Inhibitor(宝酒造社製)、15UのReverse Transcriptase XL(AMV)(宝酒造社製)を含む全液量60μlをサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System9600,アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、30℃で10分間、続いて42℃で1時間保温した後、酵素を失活させるために99℃で5分間加熱してcDNAを調製した。次に、ウイロイドのmRNAの塩基配列に従って、配列表の配列番号122〜125記載のプライマーVd1、Vd2、Vd3、Vd4を合成した。
各50pmolの上記プライマーVd1、Vd2と鋳型として上記により合成したcDNA溶液1μlあるいは水により10倍、100倍、1000倍、10000倍希釈したもの1μl、または陰性対照として水1μlと0.5mM dNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1%DMSO、0.0156μgのPfu RNaseH、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量50μlをサーマルサイクラーで57℃、1時間保温した。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。
対照としてPCRを行った。すなわち、各50pmolのプライマーVd3、Vd4と上記cDNA 溶液1μlあるいは水により10倍、100倍、1000倍、10000倍希釈したもの1μlまたは陰性対照として水1μlと10×Ex Taqバッファー 5μl、1.25Uのタカラ Exタック ポリメラーゼ、0.2mM dNTP混合液を含む全液量50μlの反応系でサーマルサイクラーを用い、94℃ 2分間を1サイクル、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとする35サイクル、72℃ 5分間を1サイクルのプログラムで反応を行った。反応後のサンプルは分析するまで−20℃で凍結して保存した。
上記ICAN反応液およびPCR反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図24に示す。すなわち、図24はPfu RNaseHを使用したICAN法及びPCR法でのウイロイドの検出結果を示すものであり、レーン1は100bp DNAラダーマーカー、レーン2は陰性対照、レーン3はcDNAの10000倍希釈サンプル、レーン4はcDNAの1000倍希釈サンプル、レーン5はcDNAの100倍希釈サンプル、レーン6はcDNAの10倍希釈サンプル、レーン7はcDNAの原液サンプルの場合である。
図24に示したようにICANおよびPCRのいずれの反応においても、100倍希釈したcDNAまで目的の増幅産物を確認することができた。
実施例28
K−ras遺伝子の検出について検討した。
(1)ゲノムDNAからの検出
ヒトc−Ki−rasの塩基配列に従って、配列表の配列番号126及び127記載のc−Ki−ras−1及びc−Ki−ras−2プライマーを構築した。
前記各60pmolのプライマー、2μlの0.25%プロピレンジアミン水溶液、ヒトゲノムDNA(クロンテック社製)100ng〜1ngの鋳型を含む全液量10μlの混合液を調製した。該混合液をサーマルサイクラーパーソナルで98℃で2分間処理後、53℃の加熱処理により鋳型にプライマーをアニーリングさせた。
上記アニーリング処理をした各溶液に0.625mM dNTP混合液、40mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、125mM 酢酸カリウム、5mM 酢酸マグネシウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、30Uの大腸菌由来RNaseH及び5.5UのBcaBest DNAポリメラーゼを含む全液量40μlの反応液を添加し、最終容量を50μlにした。該反応液を53℃で1時間保持した。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。
一方、対照としてPCRを行った。プライマーは、配列表の配列番号128及び129記載のc−Ki−ras−3、c−Ki−ras−4プライマーを使用した。上記プライマー60pmol、上記鋳型100ng〜0.1ng、10×Exタックバッファー5μl、1.25Uのタカラ Exタック ポリメラーゼ、0.2mM dNTPを含む全量50μlの溶液を調製し、サーマルサイクラーパーソナルを用い、94℃ 30秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとする30または35サイクルの反応を行った。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図25に示す。すなわち、図25はICAN法及びPCR法でのヒトゲノムDNAからのc−Ki−ras遺伝子の検出結果を示すものであり、ICAN法では、レーン1は分子量マーカー、レーン2は鋳型100ng、レーン3は鋳型10ng、レーン4は鋳型1ng、レーン5は鋳型なしの場合である。PCR法では、レーン1は鋳型100ng、レーン2は鋳型10ng、レーン3は鋳型1ng、レーン4は鋳型なしの場合である。
図25に示したようにICAN法では、鋳型1ngまで、PCR法では、30サイクルで鋳型10ngまで、目的の増幅産物が確認できた。さらに、鋳型が1ngから100ngの場合のICAN法とPCR法での増幅産物量の比較結果を図30に示す。図中、斜線を付した棒は30サイクルのPCR法の、点を付した棒は35サイクルのPCR法の、黒棒はICAN法の結果をそれぞれ示す。図30に示したように、ICAN法がPCR法に比較して、増幅産物量が多いことが確認できた。
(2)血液サンプルからの検出
抗凝固剤として、クエン酸ナトリウムおよびヘパリンを用いて健常人から採血した血液サンプルそれぞれ100μlよりGenとるくんTM(血液用)(宝酒造社製)を用いてゲノムDNAを調製してきた。調製した血液換算で5μl〜0.04μlのDNAよりICAN反応により上記(1)と同様の条件でc−Ki−ras遺伝子の検出を行った。さらに、ICAN反応とPCR反応によるDNAの検出感度を比較するために、上記(1)と同様の条件で上記血液サンプル由来DNA 5μl〜0.04μlからの検出を行った。その結果を図26に示す。すなわち、図26は、ICAN法及びPCR法での血液サンプルからのc−Ki−ras遺伝子の検出結果であり、ICAN法では、レーン1は分子量マーカー、レーン2はクエン酸血5μl、レーン3はクエン酸血1μl、レーン4はクエン酸血0.2μl、レーン5はクエン酸血0.04μl、レーン6はヘパリン血5μl、レーン7はヘパリン血1μl、レーン8はヘパリン血0.2μl、レーン9はヘパリン血0.04μlの場合である。また、PCR法では、レーン1は分子量マーカー、レーン2はクエン酸血5μlで30サイクル、レーン3はクエン酸血1μlで30サイクル、レーン4はクエン酸血0.2μlで30サイクル、レーン5はクエン酸血0.04μlで30サイクル、レーン6はクエン酸血5μlで35サイクル、レーン7はクエン酸血1μlで35サイクル、レーン8はクエン酸血0.2μlで35サイクル、レーン9はクエン酸血0.04μlで35サイクル、レーン10はヘパリン血5μlで30サイクル、レーン11はヘパリン血1μlで30サイクル、レーン12はヘパリン0.2μlで30サイクル、レーン13はヘパリン0.04μlで30サイクル、レーン14はヘパリン血5μlで35サイクル、レーン15はヘパリン血1μlで35サイクル、レーン16はヘパリン0.2μlで35サイクル、レーン17はヘパリン0.04μlで35サイクルの場合である。
図26に示したように、ICAN法では、いずれの血液サンプルからも血液換算で0.2μl相当のゲノムDNAまで、PCR法では、クエン酸血については、30サイクルで0.2μl、ヘパリン血についても30サイクルで0.2μl相当まで目的の増幅産物が確認できた。
実施例29
Bca RNaseHIIIを用いた大腸菌O−157ベロ毒素2型(VT−2)遺伝子の検出について検討した。腸管出血性大腸菌であるO−157をノボビオシン加mEC培地において42℃、18時間培養後、95℃、10分間熱処理を行った。これを滅菌水にて0、1、10、10、10相当細胞数液に調製し、鋳型として使用した。検出用プライマーとして、配列表の配列番号130〜131記載の塩基配列で示されるVT−2 IF4プライマー及びVT−2 IR3プライマ)を合成した。該プライマー対で得られる増幅産物は約146bpである。反応は以下のようにして行った。すなわち、各50pmolの上記プライマー、最終濃度0.01%プロピレンジアミン、上記各細胞数熱抽出液を添加し、10μlに調製した。この混合液をサーマルサイクラーパーソナルにて98℃ 2分間熱処理、55℃ 1分間保温後、氷上に置いた。該混合液に、最終濃度34mM トリシンバッファー(pH8.7)、10mM 塩化カリウム、10mM 硫酸アンモニウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、参考例3(5)にて調製したBca RNaseHIII 32U、5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し最終容量を50μlにした。この反応液を、あらかじめ55℃に設定したサーマルサイクラーにセットし、60分間反応させた。反応終了後、各反応液3μlを4%ヌシーブ3:1アガロース電気泳動に供した。その結果を図27に示す。すなわち、図27は、Bca RNaseHIIIを用いた大腸菌O−157ベロ毒素II型(VT2)遺伝子の検出結果を示すものであり、レーンMは分子量マーカー(100bpラダー)、レーンNは滅菌水を鋳型とした場合、レーン1は1セル相当、レーン2は10セル相当、レーン3は10セル相当、レーン4は10相当の鋳型の場合である。
図27に示すように、ICAN法で1セル相当の熱抽出物からもVT2遺伝子を検出することができた。この結果は、実施例9で示される大腸菌RNaseHを使用した場合のICAN法およびPCRによる検出反応と同等の結果であり、耐熱性のRNaseHであるBca RNaseHIIIを使用したICAN法もまた、ウィルス、細菌等の検出方法として有効であることが確認できた。
実施例30
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA遺伝子の検出について検討した。まず、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA遺伝子領域の塩基配列に従って、配列表の配列番号136及び137のプライマーSEA−1、SEA−2をそれぞれ合成した。次に115pg、1.15ngのATCC登録番号13565の黄色ブドウ球菌由来ゲノムDNA1μlあるいは陰性対照の水1μlと、これに前記各50pmolの上記プライマー、0.5mM dNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4.0mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1.0%DMSO、0.0156μgのPfu RNaseH、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量50μlの反応液をサーマルサイクラーで58℃、1時間保温した。反応終了後、該反応液5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を図29に示す。図29は、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA遺伝子検出の電気泳動結果であり、レーン1は分子量マーカー(100bpラダー)、レーン2は陰性対照(滅菌水)、レーン3は鋳型115pg、レーン4は鋳型1.15ngの場合である。
図29に示したように、鋳型が約1.15ngの場合まで目的の増幅産物の増加が確認できた。
実施例31
C型肝炎ウイルス(HCV:Hepatitis C Virus)の検出について検討した。まずHCVの塩基配列に従って、配列表の配列番号138及び139記載の塩基配列を有するプライマーHCV−F3、HCV−R1をそれぞれ合成した。次に鋳型DNAは以下のように調製した。すなわち、健常人およびHCV患者の血清100μlより実施例21と同様の方法で調製したRNA、10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.3)、5mM MgCl、1mM dNTP、10pmolのランダム6mersプライマー、10UのRevers Transcriptase XL(宝酒造社製)を含む全量4μlをサーマルサイクラー(Gene Amp PCR System 9600、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて30℃で10分間、続いて42℃で1時間保温した後、酵素を失活させるために99℃で5分間加熱してcDNAを調製した。
上記cDNA反応溶液1μlと上記各100pmolのHCV−F3及びHCV−R1プライマーを用いる以外は、実施例13と同様の条件下でICAN反応を55℃、1時間行った。反応終了後、該反応液2.5μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図31に示す。図31は、C型肝炎ウイルス検出の電気泳動結果であり、レーン1は分子量マーカー(100bp)、レーン2は健常人、レーン3〜レーン6はHCV感染患者のそれぞれの血清より調製した鋳型を用いた場合である。
図31に示したようにHCV感染患者の血清サンプルから特異的にHCVを検出できることが確認できた。
実施例32
本発明の増幅方法について検討した。
(1)実施例2(2)で調製したpUC19−150プラスミドDNAを鋳型にし、配列表の配列番号35及び36記載のMCS−F、MCS−Rプライマーを用いてPCRを行った後、マイクロコン−100(ミリポア社製)で精製し、534bpのPCR増幅断片を得た。上記PCR断片15ngに30pmolの5’末端を[γ−32P]ATPでリン酸化ラベルした配列表の配列番号140記載の塩基配列を有するMF2プライマー及び滅菌蒸留水で5μlとした反応液、さらに配列表の配列番号141記載の塩基配列を有するMR1プライマー30pmolを加えた反応液を用意した。これらの反応液を98℃、2分間熱変性後、55℃まで冷却した後、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む反応液(42.5mM トリシン緩衝液(pH8.7)、12.5mM 塩化カリウム、12.5mM 硫酸アンモニウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、5mM 酢酸マグネシウム、各0.625mMdNTP)20μlを添加し55℃で15分間反応した。反応終了後、5μlの反応液に2.5μlの反応停止液(95%ホルムアミド、20mM EDTA、0.05%ブロモフェノルブルー、0.5%キシレンシアノール)を加えて、94℃、3分間の熱変性を行った。この反応液1.6μlを8M 尿素を含む6%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した後、BAS2000(フジックス)でシグナルを読みとり、MR1プライマーからの伸長産物を検出した。その結果を図32Aに示す。図32A中のシークエンスラダーは[γ−32P]ATPでリン酸化ラベルしたMF2プライマーを用いてM13mp18single strand DNA(宝酒造社製)を配列決定したものであり、伸長産物の長さを決定するのに使用した。さらに、レーン1はMF2及びMR1プライマーの組み合わせ、レーン2はMR1を用いた場合である。
図32Aに示したように上記鋳型にMR1プライマーのみを加えて伸長反応した場合はMR1プライマーより鋳型の末端まで伸長した448bpのバンドが検出されたが、さらにMF2プライマーを加えることにより、上記のバンドに加えて、MR1プライマーとMF2プライマーに挟まれた373bpのバンドが検出された。従って、最初、BcaBEST DNAポリメラーゼにより、PCR増幅断片を鋳型にしてMR1プライマーより伸長していたものが、途中、鋳型交換により、MF2プライマーからの伸長鎖を鋳型として伸長したことが確認できた。さらに、鎖置換活性を有する常温菌由来のDNAポリメラーゼとしてクレノウ DNAポリメラーゼを用いた場合について、上記と同様の条件で検討を行ったところ、鋳型交換が起こっていることが確認できた。一方、鎖置換活性を有さないタカラ Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)やPyroBEST DNA ポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いた場合には鋳型交換は確認できなかった。
(2)上記鋳型交換反応に、プライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖について検討した。最初にMF2プライマー及びMR1プライマーがアニーリングできるDNA断片を以下のように調製した。pUC19プラスミドを鋳型にMCSFプライマーとRVプライマー(宝酒造社製)およびM4プライマー(宝酒造社製)とMCSRプライマーを用いてPCRを行い、マイクロコン−100で精製し、236bpと271bpのPCR増幅断片、MSCF−RV断片及びM4−MCSR断片を得た。この2つのPCR増幅断片の中でM4プライマーとRVプライマーにはさまれた領域は共通配列である。
次に、プライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖同士がアニーリングしていない形態の鋳型−プライマー(1)とプライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖同士がアニーリングしている形態の鋳型−プライマー(2)を以下のように作製した。
(1)MCSF−RV断片、30ngに40pmolの5’末端を[γ−32P]ATPでリン酸化ラベルしたMF2プライマーとプロピレンジアミンを最終濃度0.01%になるよう添加し滅菌蒸留水で5μlとした反応液およびM4−MCSR断片、30ngに40pmolのMR1プライマーとプロピレンジアミンを最終濃度0.01%になるよう添加し、滅菌蒸留水で5μlとした反応液を別々に98℃、2分間熱変性後、55℃まで冷却した後、それぞれの反応液2.5μlずつ混合して鋳型−プライマーを調製した。
(2)15ngのMCSF−RV断片、15ngのM4−MCSR断片、20pmolの5’末端を[γ−32P]ATPでリン酸化ラベルしたMF2プライマー、20pmolのMR1プライマー、及びプロピレンジアミンを最終濃度0.01%になるよう添加し、滅菌蒸留水で5μlとした反応液を98℃、2分間熱変性後、55℃まで冷却して鋳型−プライマーを調製した。
上記、鋳型−プライマー反応液5μlに1UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む反応液(42.5mMトリシン緩衝液(pH8.7)、12.5mM 塩化カリウム、12.5mM 硫酸アンモニウム、0.0125%BSA、1.25%DMSO、5mM 酢酸マグネシウム、各0.625mM dNTP)20μlを添加し55℃で15分間反応した。反応終了後、5μlの反応液に2.5μlの反応停止液(95%ホルムアミド、20mM EDTA、0.05%ブロモフェノルブルー、0.5%キシレンシアノール)を加えて、94℃3分間の熱変性を行った。この反応液1.6μlを8M尿素を含む6%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した後、BAS2000(フジックス)でシグナルを読みとりMF2プライマーからの伸長産物を検出した。その結果を図32Bに示す。図32B中のシークエンスラダーは[γ−32P]ATPでリン酸化ラベルしたMR1プライマーを用いてM13mp18single strand DNAを配列決定したものであり、伸長産物の長さを決定するのに使用した。さらに、レーン1は鋳型DNA鎖がアニーリングしていない場合、レーン2は鋳型DNA鎖がアニーリングしている場合である。
図32Bに示したようにプライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖同士がアニーリングしていない形態の鋳型−プライマーの場合にはMF2プライマーより鋳型の末端まで伸長した161bpのバンドのみが検出されたが、プライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖同士がアニーリングしている形態の鋳型−プライマーの場合には、上記のバンドに加えて、MF2プライマーとMR1プライマーに挟まれた223bpのバンドが検出された。従って、プライマーがアニーリングしている鋳型DNA鎖同士がアニーリングしている場合は、鋳型交換反応が起こることが確認できた。
実施例33
(1)前記参考例7記載のアルカエオグロバス フルギタス(Afu:Archaeoglobus fulgidus)由来RNaseHを用いた結核菌の検出について検討をした。まず、ジーンバンク登録番号AL123456記載の結核菌ゲノムの塩基配列に従って配列表の配列番号155及び156記載の塩基配列を有するプライマーMTIS2Fプライマー、MTIS2Rプライマーをそれぞれ合成した。該プライマー対で挟まれる領域は、プライマー部を含めて103bpである。次に、鋳型として乾燥BCGワクチン(日本ビーシージー製造社製)より結核菌ゲノムを常法により抽出した。該ゲノムを滅菌水にて1μlあたり100pg、10pg、1pg、100fg、10fg、1fgとなるように調製した。反応は以下のようにして行った。即ち、最終濃度32mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、各50pmolのMTIS 2F及びMTIS 2Rプライマー、8.75UのAfu由来RNaseH、8UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、各鋳型量1μlを添加し滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液はあらかじめ60℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。
一方、対照としてPCRをおこなった。使用するプライマーは、臨床病理、第43巻、第9号、第941頁〜947頁(1995)記載のMTIS PCR−Fプライマー、MTIS PCR−Rプライマーを使用した。該プライマー対で276bpの増幅産物が得られる。各プライマー10pmolを用いてExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)の使用マニュアルに従い容量50μlの反応液を調製した。サーマルサイクラーにセットし、反応温度条件94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとする40サイクル反応を行った。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。
その結果、いずれの場合においても100fgの鋳型量の場合まで目的の増幅産物を確認できた。
(2)上記Afu由来RNaseH及びピロコッカス ホリコシイ(Pho:Pyrococcus horikoshi)由来RNaseHを用いてクラミジア トラコーマ(Chlamydia trachomatis)の検出について検討した。まず、ジーンバンク登録番号X06707記載のクラミジア トラコーマ プラスミドの塩基配列に従って配列表の配列番号157、158記載の塩基配列を有するプライマーCT2Fプライマー、CT2Rプライマーをそれぞれ合成した。該プライマー対で挟まれる領域は、プライマー部分を含めて109bpである。また、鋳型DNAとしてインフォームド コンセントの得られた患者より提供された臨床検体よりフェノール・クロロホルム処理後、エタ沈回収したものをサンプルとして用いた。反応は、以下のようにして行った。即ち、最終濃度32mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、各50pmolのCT2F及びCT2Rプライマー、46.4UのPho由来RNaseHあるいは8.75UのAfu由来RNaseH、8U BcaBEST DNAポリメラーゼ、サンプル1μlを添加し滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、あらかじめ55℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、目的の増幅産物を確認できた。このことから、Afu由来あるいはPho由来RNaseHを用いた本発明の方法においてクラミジア トラコーマの検出ができることが確認できた。
(3)さらに、市販の検出装置を用いた磁気ビーズ検出について検討した。即ち、プライマーとして上記(1)で使用したMTIS 2Rプライマーの5’末端にビオチン標識を導入したものを用い、鋳型として100ngの結核菌ゲノムを用いて上記(1)記載の増幅反応を行った。得られた増幅断片を30倍、300倍、3000倍に希釈し、自動検出装置、ルミパルス(富士レビオ社製)にセットし、ストレプトアビジンコートされた磁気ビーズ(ピアス社製)による検出を行った。
ビオチン結合能100pmol相当のストレプトアビジン固層化磁気ビーズをキュベット第1層でビオチン化増幅断片と5分間反応させ、次いで0.1N NaOHを加えてFITC標識プローブMTISBFと5分間ハイブリダイズさせ、洗浄後POD標識抗FITC抗体を加え、5分間反応後洗浄し発光基質を加えた。この結果、既存の自動化検出装置において磁気ビーズを用いて20分という短時間で半定量が可能であることが示された。検出は、発光量をフォトカウンティングすることで測定した。その結果を表12に示す。
Figure 0004128074
表12に示した結果から、従来のプレート発光法と同等の感度で検出できることを確認した。
(4)上記増幅断片の検出方法として、ハイブリッド・クロマト法を検討した。即ち、ニトロセルロース膜にストレプトアビジン(ナカライテスク社製)を固定化し、吸水パッドを連結し、ハイブリ・クロマト・ストリップを作製した。これを用いて、上記(3)で用いた増幅断片のハイブリ・クロマト法による検出を行った。検出は、1−step TMB−Blotting(ピアス社製)を用いた発色で行った。すなわち、ニトロセルロース膜上に増幅断片を含有する反応液を展開し、その後順に0.1N NaOH溶液、FITC標識プローブ、洗浄液、発色液を展開した。その結果、結核菌陽性の増幅断片では、ブルーのバンドが検出された。また、この方法を用いる事により、本発明の方法実施後、5〜10分で結果が肉眼で判明することから、迅速な遺伝子検査方法として有用であることが確認できた。
実施例34
(1)ラダーバンドを含む増幅産物のサザンハイブリダイゼーション解析
本発明の増幅方法において、目的とする3本のバンド以外に高分子側に複数のラダー状バンドが存在する場合があり、このラダーバンドについて検討した。ターゲットとして、腸管出血性大腸菌O−157を選択した。鋳型DNA、使用するキメラプライマー、ICAN法の反応条件については、実施例9記載の方法で調製した。反応終了後、該反応液5μlを3%NuSieve 3:1アガロースにて電気泳動した。その結果を図37に示す。図37において、レーンMは100bpDNAラダーマーカー、レーン1はネガティブコントロール、レーン2は菌体熱抽出液1セル相当、レーン3は10セル相当、レーン4は10セル相当、レーン5は10セル相当、レーン6は10セル相当、レーン7は10セル相当の場合を示す。図37に示したようにラダー状バンドが確認できた。
(2)ラダー増幅断片の解析
上記(1)で得られたラダーバンドについて、その塩基配列を解析した。すなわち、(1)で調製した反応液50μlを3%アガロース電気泳動に供し、電気泳動後、ラダーバンドをゲルから切り出した。次に、EASYTRAP Ver.2(宝酒造社製)を用いて、ゲルからDNA増幅断片を回収した。回収後、該増幅断片をDNA Blunting kit(宝酒造社製)にて、末端平滑化処理を行った。
制限酵素HincII(宝酒造社製)で処理したpGEM−3Zベクター(プロメガ社製)と上記平滑末端化処理したDNA断片をDNA ligation Kit(宝酒造社製)を用いてライゲーションした。この反応液を用いてコンピテントセルJM109(宝酒造社製)を形質転換した。形質転換後、上記セルを0.1mM アンピシリン及び1mM IPTG/0.02%X−Galを含むLB培地で37℃で一晩培養した。
培養後のプレートから、ホワイトコロニーを数個選択し、M13−M4及びM13−RVプライマー(いずれも宝酒造社製)にてコロニーPCRを行い、インサートの有無を確認した。インサートの確認されたコロニーを0.1mM アンピシリンを含むLB液体培地で37℃、一晩振とう培養した。培養後の菌体より、QIAGEN plasmid mini Kit(キアゲン社製)をもちいてプラスミドを精製した。該プラスミド中のHincIIサイトにクローニングされた断片をM13−M4及びM13−RVプライマーを用いて両方向から常法によりシークエンス解析を行った。
その結果、本発明の方法で得られるラダー断片は、目的の増幅領域の繰り返し構造であることが確認できた。また、この繰り返しは、5’から3’方向に同じ向きに並列になっていることが確認できた。
(3)本発明の方法における結核菌、HCV、クラミジア トラコーマの検出方法において形成される目的の3本の増幅断片以外のラダー増幅断片について検討した。HCV検出は、実施例31記載の反応条件、結核菌及びクラミジアトラコーマ検出は、実施例33記載の反応条件で行った。得られたラダー増幅断片は、上記(2)記載の方法でサブクローニングを行いシークエンス解析を行った。その結果、本発明の方法で得られるラダー断片は、目的の増幅領域の繰り返し構造であることが確認できた。また、この繰り返しは、5’から3’方向に同じ向きに直列になっていることが確認できた。
実施例35
(1)結核菌を対象とした本発明の検出方法について検討した。まず、結核菌ゲノムのうち、比較的GC含量が低い領域を目的の増幅領域として、配列表の配列番号159〜160記載の塩基配列を有するK−F−1033(60)及びK−F−1133(62)プライマーをそれぞれ合成した。鋳型となる結核菌ゲノムは、実施例33(1)記載のものを使用し、100fg〜10pgの範囲で段階希釈した。反応は、以下のようにして行った。即ち、最終濃度32mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、各50pmolのK−F−1033(60)及びK−F−1133(62)プライマーの組み合わせ、9.375UのPfu由来RNaseHIIあるいは4.375UのAfu由来RNaseH、2.75UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、各鋳型量1μlを添加し滅菌水で最終容量を25μlにした。該反応液はあらかじめ62℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、いずれのRNaseHにおいてもゲノムDNAを鋳型とした場合において、100fg〜10pgのいずれの濃度においても検出できることを確認した。
(2)上記(1)の方法について、更にTm値が高いプライマーについて検討した。まず、配列表の配列番号161〜162記載の塩基配列を有するK−F−1033(68)及びK−F−1133(68)プライマーをそれぞれ合成した。増幅反応は、反応温度を63℃にする以外は、上記(1)と同じ条件で行った。反応終了後、該反応液3μlを3.0%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図38に示す。図38は、Pfu由来RNaseH及びAfu由来RNaseHを用いた場合の結核菌ゲノムの電気泳動結果を示すものであり、レーン1〜4は、Pfu由来RNaseHIIを用いた場合であり、レーン1は鋳型DNAが10pg、レーン2は1pg、レーン3は100fg、レーン4はネガティブコントロールの場合である。さらに、レーン5〜8は、Afu由来RNaseHIIを用いた場合であり、レーン5は鋳型DNAが10pg、レーン6は1pg、レーン7は100fg、レーン8はネガティブコントロール、レーンMは100bpDNAラダーマーカーを示す。
図38に示したように、いずれのRNaseHを用いた場合でも100fgの鋳型DNAを用いた場合まで、目的の増幅断片を検出することができた。また、Afu由来RNaseHを用いた方が、増幅産物量が多くなることが確認できた。さらに、Afu由来RNaseHを用いた方が、安定した検出感度が得られることを確認した。
(3)K−F−1033(68)及びK−F−1133(68)プライマーの組み合わせの場合について目的の増幅領域を含むプラスミドを鋳型とした場合について検討した。目的の増幅領域を含むプラスミドを調製するためにまず、配列表の配列番号163〜164記載の塩基配列を有するF26プライマーとR1310プライマーを合成した。これらのプライマーとBCGワクチン株を用いてPCRを行い、得られた増幅産物をpT7−Blue−Tベクター(宝酒造社製)に導入することにより調製した。また、反応条件は、4UのBca DNAポリメラーゼ用いる以外は、上記(2)と同様の反応液組成にした。その結果、1fgまで検出できることを確認した。
(4)目的の3本の増幅断片を含むラダー増幅断片を形成するMTIS2F及びMTIS2Rプライマーの組み合わせの場合と、目的の3本の増幅断片が得られるK−F−1033(68)及びK−F−1133(68)プライマーの組み合わせの場合について検出感度を比較した。対象としては、結核菌を選択した。反応は、MTIS2F及びMTIS2Rプライマーの組み合わせの場合は実施例33(2)の条件で、K−F−1033(68)及びK−F−1133(68)プライマーの組み合わせについては、上記(2)記載の条件と同様にして行った。その結果、いずれの場合においても同じ検出感度が得られることが確認できた。
実施例36
鋳型ゲノムDNAの変性を伴わない本発明の増幅方法について検討した。
(1)プラスミドpDON−AI(宝酒造社製)のパッケージング領域の塩基配列に従って、配列表の配列番号165、166記載の塩基配列を有する、pDON−AI−68−1及びpDON−AI−68−2プライマーをそれぞれ合成した。
(2)それぞれ10fg、1pgのpDON−AIを含む1μlの溶液、あるいは実施例23で調製したpDON−AIを組み込まれたNIH/3T3細胞由来のゲノムDNAそれぞれ1ng、10ng、100ngを含む1μlの溶液、あるいは陰性対照である1μlの水に、上記(1)のプライマー各50pmol、0.5mMのdNTP混合液、32mM ヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、4mM 酢酸マグネシウム、0.01%BSA、1%DMSO、18.5UのPfu由来RNaseHII、4UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全量50μlの反応液を調製した。この反応液をサーマルサイクラーにセットし、64℃で1時間保温した。反応終了後、反応液5μlを3%アガロースゲル電気泳動に供し、増幅産物を確認した。この結果を図39に示す。図39において、レーンMは100bpDNAラダーマーカー、レーン1はネガティブコントロール、レーン2はpDON−AIを組み込んだゲノムDNA 1ngの場合、レーン3はpDON−AIを組み込んだゲノムDNA 10ngの場合、レーン4はpDON−AIを組み込んだゲノムDNA 100ngの場合、レーン5はpDON−AI DNA 10fgの場合、レーン6はpDON−AI DNA 1pgの場合を示す。
図39に示されるように、pDON−AI、pDON−AIを組み込まれたゲノムDNAのいずれにおいても特異的なDNA断片の増幅が確認された。すなわち、鋳型としてゲノムDNAを用いる場合も、反応に先立って鋳型DNAを変性することなく目的のDNA断片を増幅することが可能であることが確認できた。
実施例37
本発明の忠実度(正確性)をLAテクノロジーを用いたタカラ ExTaq ポリメラーゼ(宝酒造社製)によるPCRと比較した。まず、鋳型プラスミドは以下のようにして行った。
即ち、ジーンバンク登録番号L20861記載のヒトプロトオンコジーン Wnt−5a遺伝子、ジーンバンク登録番号XM_009371記載のリボゾーマルプロテインS5遺伝子、ジーンバンク登録番号NM_000903記載のヒトNADH遺伝子、ジーンバンク登録番号AU077347記載のヒトプロトカドヘリン43遺伝子について、配列表の配列番号167〜170記載の各々300bpの領域をPCRで増幅した。この際、プライマーの5’末端にSfiI制限酵素サイトを付加した特異的プライマーを用いてPCR増幅した。反応終了後、該増幅断片をSfiI制限酵素(宝酒造社製)で処理した。次にpUC19(宝酒造社製)をAflIII制限酵素(NEB製)とNdeI制限酵素(宝製)で処理後、アガロースゲル電気泳動に供し、約2kbpのサイズのフラグメントを抜き出しイージートラップ(宝酒造社製)で回収した。DNA合成機で配列表の配列番号171に記載のDNAを合成した。この配列に相補的なDNAも合成しこれらのDNAを熱変性後、アニールさせ2本鎖DNAにした。その2本鎖DNAの末端にはAflIIIとNdeI制限酵素付着部位を有している。前述のpUC19制限酵素処理フラグメントに2本鎖合成DNAをDNA Ligation kit ver.2(宝酒造社製)を用いて挿入した。このプラスミドをpIC62とした。このpIC62にはICAN2プライマー(配列番号172)とICAN6プライマー(配列番号173)がアニールする配列を有し、さらにSfiI制限酵素サイトも有している。このpIC62プラスミドをSfiI制限酵素処理したものを調製した。次に上記PCR増幅/SfiI制限酵素消化断片をライゲーションキットver.2(宝酒造社製)を用いてライゲーションし、大腸菌JM109(宝酒造社製)を形質転換した。この形質転換体を培養し、約300bpのDNAが挿入されたプラスミドを取得し、シークエンスの確認をおこなった後、本実施例の鋳型とした。
(2)ICAN増幅産物の調製は、以下のようにして行った。即ち、上記鋳型プラスミド10ng、各50pmol配列表の配列番号172、173記載のICAN2及びICAN6 キメラプライマー、プロピレンジアミン 0.01%を含む10μlの溶液を調製し、サーマルサイクラーパーソナルにて98℃、2分間変性後、60℃1分間保持してから、氷上に移した。次に、最終濃度20mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、各500μM dNTPs、30Uの大腸菌由来RNaseH及び5.5UのBcaBEST DNAポリメラーゼを添加し、滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液は、あらかじめ60℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液を2%SeaKem GTGアガロース(宝酒造社製)電気泳動に供した。電気泳動後、アガロースゲルより目的の増幅産物のバンドを切り出し、SUPREC−01(宝酒造社製)にて回収後、フェノール/クロロホルム処理してエタ沈回収した。
(3)タカラ Exタック DNAポリメラーゼによるPCR増幅産物の調製は、以下のようにして行った。即ち、上記鋳型プラスミド10ng、配列表の配列番号174、175記載の塩基配列を有するICAN2 DNAプライマー及びICAN6 DNAプライマーを各10pmol用いてタカラ ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)の使用マニュアルに従い反応液を調製した。該反応液をサーマルサイクラーにセットし、反応温度条件94℃ 30秒、55℃30秒、72℃ 30秒を1サイクルとする30サイクル反応を行った。反応終了後、該反応液を上記(2)と同様にアガロース電気泳動に供し、目的の増幅産物をMicrocon−100(宝酒造製)で回収し、フェノール/クロロホルム処理してエタ沈回収した。
(4)上記(2)及び(3)で得られた増幅産物は、以下の方法でサブクローニングした。即ち、Perfectly Blunt Cloning kit(宝酒造製)を用いてマニュアルに従い、ICAN増幅産物とPCR増幅産物をpT7 Blueベクター(宝酒造社製)に導入し、NovaBlue Singles Competent Cell(宝酒造社製)を形質転換した。その形質転換体を各クローンについて10コロニーずつ選択後、培養し、約0.4kbのDNAが挿入されたプラスミドを取得し、該プラスミド中の挿入断片のシークエンスをT7promoter primer(宝酒造社製)とM3primer(宝酒造社製)を用いて行った。
上記シークエンシングで約16000塩基を解析した結果、本発明の方法で増幅したフラグメントとタカラ Exタック DNAポリメラーゼによるPCRで増幅したフラグメントについて比較したところ、いずれの方法においても約2500塩基に一個の変異が認められた。すなわち、本発明の方法は、忠実度(正確性)の高いLA−PCRと同等の忠実度を有することが確認できた。
実施例38
(1)PCRによるICAN反応用テンプレートの作製
マウス脳由来ポリARNA(OriGene社製)を用いて、cDNA合成キット(宝酒造社製)により二本鎖cDNAを作製した。この二本鎖cDNAを鋳型として配列表の配列番号176〜189記載の塩基配列を有するプライマーの組合せで増幅した各々のPCR断片を、pT7 Blue T−vector(宝酒造社製)にTAクローニングしてプラスミドクローンを得た。作製した各プラスミドクローン(1ng)1μlと各10pmolの配列表の配列番号190〜191記載の塩基配列を有するMCS−F及びMCS−Rプライマー、1.25UのEx Taq(宝酒造社製)、5μlの10×Exタック buffer(宝酒造社製)および0.2mMのdNTP 合物を含む全量50μlをTaKaRa PCR Thermal Cycler Personal(宝酒造社製)を用いて、94℃で2分間、続いて94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間を1サイクルとする反応を30サイクル行い、得られたDNA増幅断片をICAN反応の鋳型とした。
(2)PCR産物を鋳型にしたICAN法によるDNA断片の増幅
ICAN増幅産物にアミノ基をいれるため、Aminoallyl dUTP(シグマ社製)を用いてICAN反応を行った。その際、dTTP量とAminoallyl dUTP量の割合を10:0、9:1、8:2、7:3、6:4とかえてICAN反応を行い、ICAN増幅産物にいれるアミノ基の割合を検討した。反応は、以下のようにして行った。
まず、上記(1)で調製したPCR反応液1μlと各50pmolの配列表の配列番号192、193記載の塩基配列を有するプライマーMF2N3(24)とMR1N3(24)と2μlの0.05%プロピレンジアミン水溶液を含む全液量10μlをTaKaRa PCR Thermal Cycler Personalを用いて、98℃で2分間の加熱処理、続いて65℃で30秒、氷上で急冷の処理を行い鋳型にプライマーをアニーリングさせた。次に、熱処理をした各溶液に各0.625mMのdATP、dCTP、dGTP混合液、0.625mMのdTTP+Aminoallyl dUTP混合液、32mM ヘペス(Hepes)−水酸化カリウム緩衝溶液(pH7.8)、5.0mM 酢酸マグネシウム、0.6Uの大腸菌由来RNaseH(宝酒造社製)、2.75UのBcaBEST DNAポリメラーゼを含む全液量40μlの反応液を添加し、サーマルサイクラーで65℃、1時間保温した。
この反応液50μlに50μlのイソプロパノール、5μlの3M 酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)を添加して−80℃で20分放置後、遠心して上清除いた。続いて70%エタノール溶液 200μlを添加後、遠心により上清を除去して風乾した。得られたDNAを水で再溶解してOD260/280を測定し産物量を求めた。
(3)ICAN増幅産物へのAminoallyl dUTP導入の確認
ICAN産物にアミノ基が入っていることの確認は、5−carboxyfluorescein succinimidil ester(モレキュラープローブ社製)を用いてICAN産物のアミノ基を蛍光ラベルすることにより行った。前記DNA溶液の一部を2μg/50μlになる様に希釈し、20μlの1M 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)を加えた後、濃度が10mMになるようにN,N−ジメチルホルムアミドに溶解したFITC(ナカライテスク社製)を4μl添加し、20℃で16時間反応させた。市販のスピンカラムで過剰なFITCを除去後、2.0%アガロースゲルに10μlアプライして電気泳動を行った。電気泳動後、FM−BIOで蛍光色素を確認、さらにEtBr染色を行いICAN増幅断片の確認を行った。その結果、Aminoallyl dUTPを用いてICANを行うことで、ICAN増幅産物にアミノ基を入れることができる事が確認できた。また、増幅産物に官能基を有する修飾ヌクレオチドと蛍光標識を組み合わせることにより、さらに検出感度を向上させることができることを確認した。
(4)デオキシUTPを用いた本発明の増幅方法について検討した。対象として結核菌を選択した。まず、ジーンバンク登録番号AL123456記載の結核菌ゲノムの塩基配列に従って配列表の配列番号194、195記載の塩基配列を有するMTIS2F−16プライマー、MTIS2R−ACCプライマーをそれぞれ合成した。該プライマー対で増幅される領域は、プライマー部を含めて98bpである。鋳型は、以下のようにして行った。すなわち、結核菌ゲノムを配列表の配列番号196、197記載の塩基配列を有するMTIS−PCR−F−2プライマーとMTIS−PCR−R−2プライマーでPCR増幅した産物をpT7Blue T−Vector(宝酒造社製)にDNA Ligation kit Ver.2をもちいて挿入し、該プラスミドを用いて大腸菌JM109を形質転換した。この形質転換体を培養し、約400bpのDNAが導入されたプラスミドを取得し、OD260で計算上、1μl中に10コピー含まれる溶液を調製した。
最終濃度32mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、500μM dATP、500μM dCTP、500μM dGTP、dTTP/dUTP混合物(500μM:0または400μM:100μMまたは300μM:200μMまたは200μM:300μMまたは100μM:400μMまたは0:500μM)、各50pmolのMTIS 2F−16及びMTIS 2R−AACプライマー、8.75UのAfu由来RNaseH、8UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、鋳型10コピー1μlを添加し滅菌水で最終容量を50μlにした。該反応液はあらかじめ60℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液3μlを3%アガロースゲル電気泳動に供した。
その結果、どのdTTP/dUTP混合物の比率においても目的の増幅産物が確認できた。以上のことから、修飾ヌクレオチドも本発明の方法の基質として用いることができることを確認した。
実施例39
本発明の方法において、ONE−STEP増幅方法への応用について検討した。対象としては、HCVを選択した。
(1)トランスクリプトRNAの調製
まず、鋳型となるトランスクリプトRNAの調製を行った。インフォームドコンセントの得られたC型肝炎患者の血清300μlからトライゾール試薬(ライフテック社製)を使用して該試薬添付の説明書に従い調製し、最終的に注射用水(大塚製薬製)20μlに溶かした。このRNAサンプルを鋳型にRT−PCRを行なった。反応は以下のようにして行った。上記RNAサンプル2μlと配列表の配列番号198、199に記載のSP6−HCV−Fプライマー及びT7−HCV−Rプライマーのそれぞれ20pmolを用いてOne−Step RNA PCR kit(宝酒造製)でマニュアル通りに反応液量50μlを調製した。サーマルサイクラーパーソナルにセットし、50℃ 15分、94℃ 2分反応後、94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒を1サイクルとして40サイクル反応を行った。反応終了後、該反応液を2%SeaPlaque GTG アガロースゲルによる電気泳動に供し、目的増幅産物350bpを切り出した。その後、EASYTRAP Ver.2を用いて該キット添付の説明書に従いDNAを回収した。これを鋳型にCompetitive RNA Transcription キット(宝酒造社製)を用いて該キット添付の説明書に従いトランスクリプトRNAを合成した。これをOne−Step RT−ICANの検討用鋳型とした。
(2)One−Step RT−ICANの検討
上記(1)で調製したトランスクリプトRNAをOD260値より計算し、1μlあたり10,10,10,10コピーに調製した。次に最終濃度32mM ヘペス−水酸化カリウムバッファー(pH7.8)、100mM 酢酸カリウム、1%DMSO、0.01%BSA、4mM 酢酸マグネシウム、500μM dNTPs、配列表の配列番号200と201に記載のHCV−A SプライマーとHCV−A Aプライマー各50pmol、30UのPfu由来RNaseH、8UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、20UのRNaseinhibitor、AMV RTaseXL(宝酒造製)(0、1、2.5、3又は5U)、各コピー数のトランスクリプトRNA 1μlを添加した50μl反応液量を調製した。該反応液は、あらかじめ60℃に設定したサーマルサイクラーパーソナルにセットし、60分間保持した。反応終了後、該反応液2μlを3%アガロースゲル電気泳動に供した。
その結果、AMV RTase(−)の場合、どの鋳型量の時も目的の増幅産物は確認できなかった。一方、AMV RTaseXLを1U添加時は10コピーまで、2.5U添加時は10コピー、3U添加時は10コピー、5U添加時は10コピーまで目的増幅産物が得られた。また、反応温度を57℃にしたとき、AMV RTaseXLを2.5U添加時に10コピーまで目的の増幅産物を確認できた。また、1UのBcaBEST DNAポリメラーゼ、10UのPfu由来RNaseHを用いたときは、AMV RTaseを無添加でも10コピーまで目的の増幅産物が確認できた。
産業上の利用の可能性
本発明により、キメラオリゴヌクレオチドプライマーを使用するDNA合成反応により標的核酸の塩基配列中の特異的増幅に適した領域を増幅することを特徴とする標的核酸の増幅方法が提供される。また、該標的核酸の増幅方法で得られた標的核酸の増幅断片を検出する工程を包含することを特徴とする標的核酸の検出方法が提供される。また、本発明の増幅方法は、他の核酸増幅方法あるいは核酸複製方法と組み合わせて使用することにより、効率的な核酸配列の製造方法として利用できる。また、本発明によりウイルス、細菌、カビ、酵母などの微生物、特に病原性微生物等の高感度、特異的検出、定量のための標的核酸の検出方法及び該方法のためのキメラオリゴヌクレオチドプライマーが提供される。さらに、本発明により自動化、微量化、高集積化された核酸の増幅、検出システムが提供される。
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【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図2:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図3:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図4:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図5:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図6:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図7:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図8:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図9:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図10:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。A:ICAN法;B:PCR法。
図11:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図12:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図13:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図14:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図15:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図16:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図17:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図18:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図19:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図20:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図21:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図22:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図23:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図24:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図25:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図26:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図27:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図28:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動及びドットハイブリパターンを示す。
図29:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図30:本発明の方法及びPCR法により増幅された増幅産物量の比較グラフである。
図31:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図32本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のポリアクリルアミド電気泳動パターンを示す。
図33:本発明の核酸の増幅方法の一態様を示した図である。
図34:本発明の核酸の増幅方法の一態様を示した図である。
図35:本発明の核酸の増幅方法の一態様を示した図である。
図36:本発明の核酸の増幅方法の一態様を示した図である。
図37:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図38:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。
図39:本発明の方法により増幅された増幅DNA断片のアガロース電気泳動パターンを示す。

Claims (56)

  1. 核酸を増幅する方法において、
    (a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
    (b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
    (c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、鋳型とプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸を得る工程;
    を包含することを特徴とする核酸の増幅方法。
  2. 核酸を増幅する方法において、
    (a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
    (b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
    (c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖がアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
    を包含することを特徴とする核酸の増幅方法。
  3. 核酸を増幅する方法において、
    (a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
    (b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;
    (c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖 核酸、および鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
    (d)(c)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、および鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;および、
    (e)(d)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸が(d)工程で再利用される工程;
    を包含することを特徴とする核酸の増幅方法。
  4. 核酸を増幅する方法において、
    (a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な2種類のプライマーと鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼにより処理して該鋳型に相補的なプライマー伸長鎖を合成し、合成されたプライマー伸長鎖がアニーリングして成る二本鎖核酸を得る工程;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され、
    (b)(a)工程で得られるプライマー伸長鎖より成る二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;
    (c)(b)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、プライマー伸長鎖同士がアニーリングした二本鎖核酸、および鋳型同士がアニーリングした二本鎖核酸に(a)工程の2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸を得る工程;
    (d)(c)工程で得られる2種のプライマーがアニーリングした二本鎖核酸のそれぞれのプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して鎖置換を行い、鋳型とプライマー伸長鎖よりなる二本鎖核酸を得る工程;
    (e)(d)工程で得られる鋳型とプライマー伸長鎖よりなる二本鎖核酸のリボヌクレオチド含有部位をエンドヌクレアーゼで切断する工程;および、
    (f)(e)工程で得られるプライマー伸長鎖が切断された二本鎖核酸のプライマー部分の3’末端より、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによって鋳型に相補的な核酸配列を伸長して置換鎖を合成する工程;
    を包含することを特徴とする核酸の増幅方法。
  5. エンドヌクレアーゼがエンドリボヌクレアーゼである請求項1〜4いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  6. エンドリボヌクレアーゼがRNaseHである請求項5に記載の核酸の増幅方法。
  7. RNaseHが大腸菌(Escherichia coli)由来RNaseH、サーモトガ(Thermotoga)属細菌由来RNaseH、サーマス(Thermas)属細菌由来RNaseH、ピロコッカス(Pyrococcus)属細菌由来RNaseH、アルカエオグロバス(Archaeoglobus)属細菌由来RNaseH、及びバチルス(Bacillus)属細菌由来RNaseHから選択されるRNaseHである請求項6記載の核酸の増幅方法。
  8. 核酸の増幅領域が200bp以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  9. 下記一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーを用いることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
    一般式:5’−dNa−Nb−dNc−3’
    (a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド及び/又はリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNaの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
  10. cが0である請求項9に記載の核酸の増幅方法。
  11. 請求項9又は10記載のキメラオリゴヌクレオチドプライマーに適したDNA伸長反応温度でDNA伸長反応を行うことを特徴とする請求項9又は10記載の核酸の増幅方法。
  12. 鋳型となる核酸と該核酸の塩基配列に実質的に相補的なキメラオリゴヌクレオチドプライマーを、当該核酸並びにスペルミジン及び/又はプロピレンジアミンを含有するアニーリング溶液中で90℃以上に保温した後、増幅反応が実施される温度以下に冷却してアニーリングさせる工程を包含することを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  13. ビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有する緩衝液中で増幅反応が実施されることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  14. 鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとして、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス(Bacillus cardotenax)由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼが使用される請求項1〜13いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  15. 鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとRNaseHがバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼと大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来からなる群から選択されるRNaseHの組み合わせであることを特徴とする請求項6〜14いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  16. RNaseHが大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来又はアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHである請求項15に記載の核酸の増幅方法。
  17. DNAポリメラーゼがバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼであり、マンガンイオンの存在下に当該BcaDNAポリメラーゼが使用される請求項1〜16いずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  18. ホスホノギ酸の存在下で増幅反応が実施される請求項1〜17のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  19. 鋳型となる核酸が一本鎖または二本鎖のDNAである請求項1〜18のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  20. 鋳型となる二本鎖DNAを一本鎖DNAにする工程の後に実施されることを特徴とする請求項19に記載の核酸の増幅方法。
  21. 鋳型となる核酸がRNAを鋳型とする逆転写反応によって得られたcDNAである請求項19又は20に記載の核酸の増幅方法。
  22. RNAを鋳型とする逆転写反応によってcDNAを合成する工程の後に実施されることを特徴とする請求項21に記載の核酸の増幅方法。
  23. 逆転写酵素として逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼを使用することを特徴とする請求項21又は22に記載の核酸の増幅方法。
  24. 逆転写反応と鋳型に相補的な伸長鎖の合成とが、逆転写酵素活性と鎖置換活性とを有する1種のDNAポリメラーゼにより実施されることを特徴とする請求項20〜23のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  25. DNAポリメラーゼが、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、もしくは、バチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損Bca DNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項24記載の核酸の増幅方法。
  26. 核酸の増幅反応が等温で行われることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  27. デオキシリボヌクレオチド3リン酸のアナログの存在下に実施されることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の核酸の増幅方法。
  28. デオキシリボヌクレオチド3リン酸のアナログとして、デオキシウリジン3リン酸またはその誘導体が使用される請求項27記載の核酸の増幅方法。
  29. 核酸増幅用組成物であって、
    (a)鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的な少なくとも2種類のプライマー;ここで該プライマーは、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーであって、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置され;
    (b)エンドヌクレアーゼ;
    (c)鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ;
    を含有することを特徴とする核酸増幅用組成物
  30. 鋳型となる核酸、デオキシリボヌクレオチド3リン酸、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、少なくとも2種類のプライマー、およびエンドヌクレアーゼを混合して得られる核酸増幅用組成物;ここで該プライマーは、鋳型となる二本鎖核酸のそれぞれの鎖の塩基配列に実質的に相補的であり、少なくともデオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド、及びリ ボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログから選択されるものとリボヌクレオチドとを含有し、該リボヌクレオチドは該プライマーの3’末端又は3’末端側に配置されたキメラオリゴヌクレオチドプライマーである
  31. プライマーが下記一般式で表されるキメラオリゴヌクレオチドプライマーであることを特徴とする請求項29又は30記載の核酸増幅用組成物。
    一般式:5’−dNa−Nb−dNc−3’
    (a:11以上の整数、b:1以上の整数、c:0または1以上の整数、dN:デオキシリボヌクレオチド、7−デアザグアニン、デオキシリボイノシンヌクレオチド、デオキシリボウラシルヌクレオチド及び/又はリボースの誘導体を有するヌクレオチドアナログ、N:未修飾リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド、なお、dNaの部位の一部のdNはNで置換されていてもよく、3’末端のヌクレオチドは当該末端からのDNAポリメラーゼによる伸長が起こらないような修飾を有していてもよい)
  32. cが0である請求項31に記載の核酸増幅用組成物
  33. 核酸の増幅反応に適した緩衝成分を含有する請求項29〜32いずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  34. ビシン、およびヘペスから選択される緩衝成分を含有する請求項33に記載の核酸増幅用組成物
  35. 鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとして、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、およびバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼが使用される請求項29〜34いずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  36. エンドヌクレアーゼがエンドリボヌクレアーゼである請求項29〜35いずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  37. エンドリボヌクレアーゼがRNaseHである請求項36に記載の核酸増幅用組成物
  38. RNaseHが大腸菌由来RNaseH、サーモトガ属細菌由来RNaseH、サーマス属細菌由来RNaseH、ピロコッカス属細菌由来RNaseH、アルカエオグロバス属細菌由来RNaseH、及びバチルス属細菌由来RNaseHから選択されるRNaseHである請求項37記載の核酸増幅用組成物
  39. 鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとエンドヌクレアーゼがバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼと大腸菌由来、ピロコッカス属細菌由来あるいはアルカエオグロバス属細菌由来からなる群から選択されるRNaseHの組み合わせであることを特徴とする請求項29〜38のいずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  40. RNaseHが大腸菌由来I型RNaseH、ピロコッカス属細菌由来又はアルカエオグロバス属細菌由来II型RNaseHである請求項39に記載の核酸増幅用組成物。
  41. DNAポリメラーゼがバチルス カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼであり、マンガンイオンを含有する請求項29〜40いずれか1項に記載の核酸増幅用組成物。
  42. ホスホノギ酸を含有する請求項29〜41のいずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  43. デオキシリボヌクレオチド3リン酸のアナログを含有する請求項29〜42のいずれか1項に記載の核酸増幅用組成物
  44. デオキシリボヌクレオチド3リン酸のアナログがデオキシウリジン3リン酸またはその誘導体である請求項43記載の核酸増幅用組成物
  45. 試料中の標的核酸を検出するための方法であって、
    (a)請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法により核酸を増幅する工程;および
    (b)(a)工程により増幅された標的核酸を検出する工程;
    を包含することを特徴とする標的核酸の検出方法
  46. 得られる増幅核酸を検出用プローブを用いて検出する工程を包含する請求項45に記載の標的核酸の検出方法
  47. 検出用プローブがあらかじめ標識物質により標識されているプローブであることを特徴とする請求項46記載の標的核酸の検出方法
  48. プローブが、消光状態になるような距離で配置された2種類以上の蛍光物質で標識されたRNAプローブであることを特徴とする請求項47記載の標的核酸の検出方法
  49. プライマーが、配列表の配列番号31〜34、47、48、51〜53、64〜72、84、85、113、114、130、131でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  50. プライマーが、配列表の配列番号59、60、119、120、122、123でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  51. プライマーが、配列表の配列番号116、117でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  52. プライマーが、配列表の配列番号96、97でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  53. プライマーが、配列表の配列番号101〜102、138〜139、200〜201でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  54. プライマーが、配列表の配列番号136、137でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  55. プライマーが、配列表の配列番号155〜156、159〜162、194〜195で それぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
  56. プライマーが、配列表の配列番号157〜158でそれぞれ表される核酸配列を有するキメラオリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1〜28いずれか1項に記載の核酸の増幅方法
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