JP4127790B2 - 可逆画像記録媒体および記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像の記録・消去が可能な可逆画像記録媒体およびその画像記録方法に関し、詳しくは光照射によりカラー情報の書込み及び消去が繰り返しでき、リライタブルメディアやデジタルペーパーとして使用できる可逆画像記録媒体およびその画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスにおける紙の消費の増大にともない、紙に替わるメディアとして画像の記録・消去が繰り返しできる可逆画像表示媒体に関する研究が注目されている。この中で、多色画像の書き換えが可能であるカラー可逆画像表示媒体に関していくつかの報告がなされている。
【0003】
例えば、中分子コレステリック液晶化合物(分子量が2000以下でガラス転移温度が35℃度以上のコレステリック液晶化合物またはその混合物)は、螺旋状分子配列に起因した選択反射色を示すため、この性質を利用して加熱温度に応じて様々な色を発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。中分子コレステリック液晶化合物は、いわゆるコレステリック液晶状態を急冷することにより、その反射色を常温で長期間保存でき、更に液晶状態に戻せば繰り返し記録することができる。
【0004】
しかし、中分子コレステリック液晶化合物の場合、白反射率が低いこと、表示色の濃度が低いなどに難点がある。一方、カラー可逆画像表示として光の吸収によって色を表示するフォトクロミック化合物を用いる方法(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)が知られており、光の選択反射によって色を表示する中分子コレステリック液晶化合物を用いる方式に比べ白反射率が高いことや、表示色の濃度が高いなど画像表示特性として優れた特徴がある。
【0005】
特許文献2では、イエロー、マゼンタ、シアンを発色する3種類のフォトクロミック性フルギド化合物を用いてカラー画像表示を行う、いわゆるカラー可逆画像表示媒体が開示されている。このカラー可逆画像表示媒体では、発色状態でイエロー、マゼンタ、シアンを示す3種類のフォトクロミック性フルギド化合物の混合体に対して、波長366nmの紫外ランプを用いて紫外光を照射し、全種類のフォトクロミック化合物を発色させた後に、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射して選択的に消色する方法が提案されている。
【0006】
しかし、上記方法による場合、特定の種類のフォトクロミック化合物を選択的に消去する過程に課題が残る。すなわち、一般的にフォトクロミック化合物の吸収波長帯はブロードであり、3種類のフォトクロミック化合物は吸収帯に重なりを有する場合が多い。従って、例えばマゼンタ発色化合物を消色させるためにマゼンタ発色化合物が消色反応を起こす波長の光を照射すると、イエロー発色化合物やシアン発色化合物も少なからず同時に消色してしまい、色調を制御することが難しい。
【0007】
また、特許文献3では、吸収波長域の異なる3種類のフォトクロミック性ジアリールエテン化合物からなる組成物に3種の異なる紫外光を照射してマルチカラー表示を行い画像表示をする方法が開示されている。この方法では、254nmの紫外光で黄橙色、313nmの紫外光で赤色、365nmの紫外光で青紫色を発色するフォトクロミック性ジアリールエテン化合物が3種類混合されて用いられている。
【0008】
しかし、上記方法による場合、特定の種類のフォトクロミック化合物を選択的に発色させる過程に課題が残る。すなわち、一般的にフォトクロミック化合物の消色状態の吸収端波長は多くの化合物が近い値(400nm程度)を示すため、照射する紫外線波長領域を変えるだけで特定のフォトクロミック化合物のみを発色させることは難しい。また、吸収端波長よりも短い波長の光に対しては、どの波長の光に対しても光照射によって発色してしまうため、例えば365nmの紫外光で発色するフォトクロミック化合物は、313nmの紫外光でも254nmの紫外光でも発色してしまうという問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−24027号公報
【特許文献2】
特開平7−199401号公報
【特許文献3】
特開平5−271649号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術状況および問題点に鑑みてなされたもので、その目的は光照射によりカラー情報の書込み、および消去が繰り返しでき、リライタブルメディアやデジタルペーパーとして使用できる色調制御が容易な可逆画像記録媒体とその画像記録方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題について鋭意検討した結果、下記第1の手段と第2の手段により課題を解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る第1の手段は、支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能であり、発色状態の吸収端波長が可視域にあるフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(積層構成)の少なくとも一種類は外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離(間隔)を大きくするようにしたことにより、色調制御を容易とすることを可能とした。
また、本発明に係る第2の手段は、第1の手段におけるフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層の各感光層間にそれぞれ紫外線吸収層を介在させて積層したことにより、更に色調制御を容易とするとともに、記録工程を簡便化することを可能とした。以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明は、支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(A)、(B)、(C)が積層され、発色状態における該感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であるとともに、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類は外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくする可逆画像記録媒体である。
【0013】
上記の可逆画像記録媒体においては、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類を外部刺激により消色状態における吸収端波長を変化した後の状態において、消色状態の吸収端波長が短波長側から感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)の順序であることが好ましい。
【0014】
上記の可逆画像記録媒体によれば、上記3種類の感光層の内、少なくとも1種類の感光層は消色状態における吸収端波長が外部刺激により可逆的に変化するようにしたことで、各3種類の感光層の吸収端波長を分離、すなわち間隔を大きくさせることができる。これにより、3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させることができ、色調制御が容易となる。その結果、紫外光によるカラー情報の書込みおよび可視光による消去を繰り返し可能とすることができる。
【0015】
また、上記の可逆画像記録媒体は、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の発色状態における極大吸収波長はそれぞれ、感光層(A):400nm以上、500nm未満、感光層(B):500nm以上、600nm未満、感光層(C):600nm以上、700nm未満の範囲であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、3種類の感光層に含まれるフォトクロミック化合物の発色状態における極大吸収波長がそれぞれ3原色の一つを示すことにより、フルカラー画像の記録を可能とすることができる。
【0017】
請求項の発明は、支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(A)、(B)、(C)が積層され、発色状態における該感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であるとともに、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類は、該フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物が含有されており、外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることを特徴とする可逆画像記録媒体である。
【0018】
請求項1の構成によれば、上記3種類の感光層の内、少なくとも1種類の感光層は消色状態における吸収端波長が外部刺激により可逆的に変化するようにしたことで、各3種類の感光層の吸収端波長を分離、すなわち間隔を大きくさせることができる。これにより、3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させることができ、色調制御が容易となる。その結果、紫外光によるカラー情報の書込みおよび可視光による消去を繰り返し可能とすることができる。さらに、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物が含有されていることから、外部刺激による化学的相互作用によって、フォトクロミック化合物の吸収端波長を可逆的に変化させることができるため、既存のフォトクロミック化合物を適宜選択して用いることができる。このため、新たに目的とする化合物(複雑な構造)を開発する必要はなく安価に可逆画像記録媒体の提供を可能とすることができる。
【0019】
請求項の発明は、前記フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物は長鎖アルキル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の可逆画像記録媒体である。
【0020】
請求項の構成によれば、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こす化合物を長鎖アルキル化合物とすることで、吸収端波長の大きな変化を起こすことができる。これにより、3種類の感光層における吸収端波長の分離が大きくなって、色調制御を容易に行うことを可能とすることができる。
【0021】
請求項の発明は、前記外部刺激は熱的刺激であることを特徴とする請求項1または2に記載の可逆画像記録媒体である。
【0022】
請求項の構成によれば、外部刺激を熱的刺激とすることにより、ヒートローラーなど安価で簡易な手段(部品等)でフォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させることができる。
【0023】
上記の請求項1〜3の可逆画像記録媒体においては、前記積層された感光層の表面に保護層を形成することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、感光層の表面に保護層を設けることで紫外光照射による感光層の劣化を防ぐことができる。これにより、可逆画像記録媒体の耐久性が向上し、多数回の繰り返し書き換えを可能とすることができる。
【0025】
請求項の発明は、請求項1〜のいずれかに記載の可逆画像記録媒体の消色状態に対して下記工程(1)〜(6)を順次施すことを特徴とする可逆画像記録方法である。
工程(1):外部刺激を与えることにより前記少なくとも一種類の感光層の消色状態における吸収端波長を変化させる。
工程(2):消色状態における感光層(A)が吸収する波長の光を感光層(A)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
工程(3):発色状態における感光層(A)の吸収端波長以上であり、かつ発色状態における感光層(B)および感光層(C)が吸収する波長の光を前記可逆画像記録媒体全面に照射する。
工程(4):消色状態における感光層(A)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(B)が吸収する波長の光を感光層(B)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
工程(5):発色状態における感光層(B)の吸収端波長以上であり、かつ発色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を前記可逆画像記録媒体全面に照射する。
工程(6):消色状態における感光層(B)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を感光層(C)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
【0026】
請求項の画像記録方法によれば、外部刺激により可逆的に各3種類の感光層の吸収端波長を分離させることができ、3種類の光(紫外光)で選択的に色調制御を容易にして感光層を発色させる。そして各工程を順次施すことによって所望のカラー画像が形成される。更に、紫外光によるカラー情報の書込みおよび可視光による消去は繰り返し可能である。
【0027】
請求項の発明は、前記消色状態の可逆画像記録媒体に対して、感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)が吸収する波長の光を所望の領域に照射することにより全ての感光層を部分的に発色させる工程を施すことを特徴とする請求項4に記載の可逆画像記録方法である。
【0028】
請求項の画像記録方法によれば、1回の紫外光照射を行うだけで黒色画像が形成できる。従って、高速かつ低消費電力で白黒画像の形成を可能とする。
【0029】
請求項の発明は、前記工程(1)の前工程として白色光を画像記録部全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項またはに記載の可逆画像記録方法である。
【0030】
請求項の画像記録方法によれば、白色光光源を表示部全面に照射する工程を加えることにより、表示画像の全消去ができる。これによって、画像の書き換えを可能とする。
【0031】
請求項の発明は、支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(A)、(B)、(C)がそれぞれ紫外線吸収層(D)、(E)を介在して積層され、発色状態における該感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であるとともに、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類は外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることを特徴とする可逆画像記録媒体である。
【0032】
請求項の発明は、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類を外部刺激により消色状態における吸収端波長を変化した後の状態において、感光層(A)は最も短波長側、感光層(B)は感光層(A)より長波長側、感光層(C)は感光層(B)より長波長側、紫外線吸収層(D)は感光層(A)と感光層(B)との間、紫外線吸収層(E)は感光層(B)と感光層(C)との間にそれぞれ消色状態の吸収端波長があり、支持基板に近い側から感光層(C)、紫外線吸収層(E)、感光層(B)、紫外線吸収層(D)、感光層(A)の順に積層されていることを特徴とする請求項7に記載の可逆画像記録媒体である。
【0033】
請求項およびの構成によれば、各3種類の感光層の吸収端波長を分離、すなわち間隔を大きくさせることができる。これにより、3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させることができ、また3種類の各感光層間に紫外線吸収層を設けたことにより、各紫外光照射時における他の感光層への影響を回避することが可能となり色調制御が容易となる。その結果、紫外光によるカラー情報の書込みおよび可視光による消去を繰り返し可能とする。
【0034】
請求項の発明は、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の発色状態における極大吸収波長はそれぞれ、感光層(A):400nm以上、500nm未満、感光層(B):500nm以上、600nm未満、感光層(C):600nm、以上700nm未満の範囲であることを特徴とする請求項またはに記載の可逆画像記録媒体である。
【0035】
請求項の構成によれば、3種類の感光層に含まれるフォトクロミック化合物の発色状態における極大吸収波長がそれぞれ3原色の一つを示すことにより、フルカラー画像の記録を可能とする。
【0036】
請求項10の発明は、前記外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化する少なくとも一種類の感光層には、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物が含まれていることを特徴とする請求項のいずれかに記載の可逆画像記録媒体である。
【0037】
請求項10の構成によれば、請求項1と同様に外部刺激による化学的相互作用によって、フォトクロミック化合物の吸収端波長を可逆的に変化させることができるため、既存のフォトクロミック化合物を適宜選択して用いることができる。このため、新たに目的とする化合物(複雑な構造)を開発する必要はなく安価に可逆画像記録媒体を提供することを可能とする。これは画像形成装置に対しても好ましい。
【0038】
請求項11の発明は、前記フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物は長鎖アルキル化合物であることを特徴とする請求項10に記載の可逆画像記録媒体である。
【0039】
請求項11の構成によれば、請求項と同様にフォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こす化合物を長鎖アルキル化合物とすることで、吸収端波長の大きな変化を起こすことができる。これにより、3種類の感光層における吸収端波長の分離が大きくなって、色制御を容易に行うことを可能とする。
【0040】
請求項12の発明は、前記外部刺激は熱的刺激であることを特徴とする請求項11のいずれかに記載の可逆画像記録媒体である。
【0041】
請求項12の構成によれば、請求項6と同様に外部刺激を熱的刺激とすることにより、ヒートローラーなど安価で簡易な手段(部品等)で刺激を与えることができ、フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させることを可能とする。
【0042】
請求項13の発明は、前記積層された感光層の表面表面に保護層を形成したことを特徴とする請求項12のいずれかに記載の可逆画像記録媒体である。
【0043】
請求項13の構成によれば、感光層の表面に保護層を設けることで紫外光照射による感光層の劣化を防ぐことができる。このことにより、可逆画像記録媒体の耐久性が向上し、多数回の繰り返し書き換えを可能とする。
【0044】
請求項14の発明は、請求項13のいずれかに記載の可逆画像記録媒体の消色状態に対して下記工程(1)〜(4)を順次施すことを特徴とする可逆画像記録方法である。
工程(1):外部刺激を与えることにより前記少なくとも一種類の感光層の消色状態における吸収端波長を変化させる。
工程(2):消色状態における感光層(A)が吸収する波長の光を感光層(A)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
工程(3):紫外線吸収層(D)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(B)が吸収する波長の光を感光層(B)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
工程(4):紫外線吸収層(E)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を感光層(C)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
【0045】
請求項14の画像記録方法によれば、3種類の各感光層間に紫外線吸収層を設けたことにより、各紫外光照射時における他の感光層への感光の影響を回避することが可能となり、可視光による消去工程を必要とせずにカラー情報の書込みを可能とする。更に、紫外光によるカラー情報の書込みおよび可視光による消去を繰り返し可能とする。
【0046】
請求項15の発明は、前記工程(1)の前工程として白色光を画像記録部全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の可逆画像記録方法である。
【0047】
請求項15の画像記録方法によれば、白色光光源を表示部全面に照射する工程を加えることにより、表示画像の全消去ができる。これによって、画像の書き換えを可能とする。
【0048】
【発明の実施の形態】
前記のように、第1の手段および第2の手段による本発明の可逆画像記録媒体とその記録方法は、支持基板上に異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(第2の手段では各感光層間に紫外線吸収層介在させる)を積層し、少なくとも一種類の感光層は外部刺激により消色状態における吸収端波長を変化するようにしたことによって実現される。すなわち、外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることで色調制御を容易にすることを可能とする。また、第2の手段における可逆画像記録媒体の3種類の感光層間に紫外線吸収層を介在させたことにより、色調制御を容易にするとともに、更に記録工程を簡便化することを可能とする。
【0049】
本発明になる第1の手段における記録層、および第2の手段における記録層は、前述のように以下のように構成されている。
すなわち、第1の手段における3種類の感光層(A)、(B)、(C)に含まれるそれぞれのフォトクロミック化合物は、異なる波長の光(紫外光および可視光)で発色と消色が可能であり、感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であり、少なくとも一種類を外部刺激により消色状態における吸収端波長を変化した後の状態において、消色状態の吸収端波長が短波長側から感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)の順序であることが必要であるが、これら各層の感光層における積層順は任意である。
一方、第2の手段における3種類の感光層は、消色状態における吸収端が短波長側にある方から順に、感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)とし、支持基板に近い側から感光層(C)、感光層(B)、感光層(A)の順に積層することが必要である。そして、感光層(A)の消色状態における吸収端波長と感光層(B)の消色状態における吸収端波長との間に吸収端波長が存在する紫外線吸収層(D)を感光層(A)と感光層(B)との間に積層し、更に感光層(B)の消色状態における吸収端波長と感光層(C)の消色状態における吸収端波長との間に吸収端波長が存在する紫外線吸収層(E)を感光層(B)と感光層(C)との間に積層する構造である。
上記により、色調制御が容易となって3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させることが可能となる。
【0050】
本発明の上記可逆画像記録媒体の記録方法に関して、図を参考にして以下に説明する。なお、上記のように本発明の可逆画像記録媒体が有する各層の発色および消色は、異なる波長の光、いわゆる発色させるための波長の光(紫外光)と消色させるための波長の光(可視光)によって行われる。また、前記異なる波長の光の照射光源としてレーザーを用いることができる。照射光源としてレーザーを用いることで高解像度の画像記録が可能となる。
第1の手段である本発明の可逆画像記録媒体の記録方法における3種類の感光層に対して画像形成を行う手順の一般的な考え方(画像形成未達成)について、まず図1の模式図(発色状態と消色状態とにおいて各感光層が有する吸収スペクトルを表す)を参照しながら説明する。
【0051】
すなわち、一般的に想定される方法としては、図1に示すように、異なる3種類の波長の光(紫外光)を照射することで各感光層を個別に発色させるものである。例えば、紫外光L1、紫外光L2、紫外光L3により、3種類の感光層、それぞれ感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)に対して画像を形成することである。このときの光源の波長条件としては、紫外光L1は感光層(A)の吸収端波長λ1より短波長になくてはならない。また、紫外光L2は感光層(A)の吸収端波長λ1と感光層(B)の吸収端波長λ2の間、紫外光L3は感光層(B)の吸収端波長λ2と感光層(C)の吸収端波長λ3の間である必要がある。
【0052】
しかしながら、上記方法(図1)ではカラー画像を形成することはできない。この理由は、紫外光L3は感光層(C)のみを選択的に発色させることはできるが、紫外光L2は感光層(B)だけではなく感光層(C)も発色させてしまい、また紫外光L1はすべての感光層を発色させてしまうためである。
【0053】
そこで、本発明の第1の手段における記録方法では、図2の模式図に示すように、更に可視光L4および可視光L5の照射による消色工程を導入する方法を考案し、カラー画像を記録することを可能にした。以下に詳細を記す。
本発明の画像記録方法では、はじめに可逆画像記録媒体に紫外光L1をイエローの画像パターンに応じて部分的に照射する。これにより感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)の全てが発色する。次に、可視光L4と可視光L5を媒体全面に照射する。ここで可視光L4は、感光層(A)の発色状態での吸収端波長λ4と感光層(B)の発色状態での吸収端波長λ5との間、可視光L5は、感光層(B)の発色状態での吸収端波長λ5と感光層(C)の発色状態での吸収端波長λ6との間の波長である。この工程で感光層(B)、感光層(C)が再び消色状態に戻る。このL4およびL5の照射の際、感光層(A)には吸収帯が存在しないため消色反応を起こさない。そのため、以上の工程により感光層(A)にイエロー画像が記録される。
【0054】
次に可逆画像記録媒体に紫外光L2をマゼンタの画像パターンに応じて部分的に照射する。紫外光L2により感光層(B)、感光層(C)は発色し、感光層(A)は変化しない。次に、可視光L5を媒体全面に照射する。この工程で感光層(C)が再び消色状態に戻る。L5の照射の際、感光層(A)および感光層(B)には吸収帯が存在しないため消色反応を起こさない。そのため、以上の工程により感光層(B)にマゼンタ画像が記録される。
【0055】
最後に紫外光L3をシアンの画像パターンに応じて部分的に照射する。紫外光L3により感光層(C)のみが発色し、感光層(A)、感光層(B)は変化しない。そのため、感光層(C)にシアン画像が記録される。
以上の全工程を実施することによって、感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)に画像パターンが残り、可逆画像記録媒体に対してフルカラー画像を記録することができる。
【0056】
なお、第1の手段による可逆画像記録媒体の記録方法は、カラー画像を記録できることを特徴とするが、使用環境によっては文字情報などの白黒画像のみを記録することが多い場合もある。本発明の可逆画像記録媒体に対して黒色のみを表示させる場合は、感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)が全て発色する波長帯の紫外光L1を照射すればよい。本方法を用いることにより、文字情報などの白黒画像のみを記録する場合に記録エネルギーが少なくて済み、また記録速度も速くなる。
【0057】
また、上記画像記録方法で作成した画像は、白色光を照射することで記録を消去することができる。すなわち、白色光により可視領域の全波長を一度に照射することで発色状態にある全てのフォトクロミック化合物が消色状態になるためである。従って、前述した可逆画像記録方法で記録を行う前工程として白色光を可逆画像記録媒体全面に照射する工程を設けることで,それまで記録されていた画像を新しい画像に書き換えることが可能になる。
【0058】
次に、前記第2の手段である本発明の可逆画像記録媒体の記録方法における3種類の感光層に対して画像形成を行う手順について、図3の模式図を参照して説明する。
本発明の画像記録方法は、図3の模式図に示すように、紫外光L1、紫外光L2および紫外光L3により、それぞれ感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)に対して画像を形成するものである。ここで、紫外光L1は感光層(A)の吸収端波長λ1より短波長であり、紫外光L2は紫外線吸収層(D)の吸収端波長と感光層(B)の吸収端波長λ2との間、紫外光L3は紫外線吸収層(E)の吸収端波長と感光層(C)の吸収端波長λ3との間である。
【0059】
上記関係において紫外光L1を照射した場合、感光層(A)は発色反応を起こすが、紫外線吸収層(D)により遮光されるため感光層(B)、感光層(C)は発色反応を起こさない。紫外光L2を照射した場合、感光層(B)は発色反応を起こすが、紫外線吸収層(E)により遮光されるため感光層(C)は発色反応を起こさない。また、感光層(A)は吸収帯が存在しないため発色反応を起こさない。更に、紫外光L3を照射した場合、感光層(C)は発色反応を起こすが、感光層(B)、感光層(C)は吸収帯が存在しないため発色反応を起こさない。従って、3種類の紫外光で各々の感光層を選択的に発色させることができる。イエロー、マゼンタ、シアンの各画像パターンに応じて各感光層を部分的に照射すればフルカラー画像を形成できる。このとき各感光層に照射する順序はどの層からでも構わないのは自明である。
【0060】
上記画像記録方法で作成した画像は、前記第1の手段におけるのと同様に、白色光を照射することで記録を消去することができる。すなわち、白色光により可視領域の全波長を一度に照射することで発色状態の全てのフォトクロミック化合物は消色状態となる。これによって、上記記録方法で記録を行う前工程として白色光を可逆画像記録媒体全面に照射する工程を設ければ、記録されていた画像は消色するので新しい画像に書き換えることができる。
【0061】
上記第1の手段および第2の手段による記録方法で画像が記録されるが、カラー画像記録を行うための課題として、更に可逆画像記録媒体の色調制御を容易にすることが要求される。
本画像記録方法のように3種類の紫外光(L1、L2、L3)により、選択的に各感光層を発色させるためには、前述の各感光層の消色状態における吸収スペクトルができるだけ分離され、吸収端波長が離れている必要がある。具体的には、吸収端波長の間隔がそれぞれ10〜20nm程度あること(例えば、λ1=370nm、λ2=390nm、λ3=410nmなど)が望まれる。しかしながら、既存のフォトクロミック化合物が有する消色状態における吸収端波長は同じような値(400nm程度)を示す場合が多く、吸収端波長が離れているフォトクロミック化合物を3種類組み合わせることは現実的には難しい。新規に感光性化合物を開発するとしても、消色状態での吸収端波長の最適化に加えて発色状態での色調や感度、耐久性などの多くの諸特性も同時に満足させなければならないことから材料開発は困難であると思われる。
【0062】
そこで、本発明の可逆画像記録媒体の特徴である、「外部刺激により消色状態の吸収端波長を変化させること」が非常に有用になり、これによって各々のフォトクロミック化合物の吸収端波長を分離することが可能となる。
すなわち検討の結果、本発明者らは、フォトクロミック化合物に電子受容性化合物を加えて感光層とした場合、その消色感度が加熱処理の仕方によって可逆的に変化するとともに、発色状態の極大吸収波長が可逆的に変化するばかりでなく、更に消色状態の吸収端波長についても加熱処理の仕方によって可逆的に変化することを見出した。このフォトクロミック化合物に電子受容性化合物を加えた感光層を前記3種類の感光層の少なくとも一種類に適用した場合、外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることが可能となった。
【0063】
上記消色状態の吸収端波長の変化は大きく、数十nm以上のシフトが起こる。また、使用するフォトクロミック化合物と電子受容性化合物との組み合わせによってシフト幅は様々に変化させることができるため、材料を最適化することにより好ましい吸収端波長を得ることができる。
従って、3種類の感光層のうち少なくとも1種類をフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含む感光層とし、最初に加熱処理を行うことで消色状態の吸収端波長を変化させることにより、各々の感光層の吸収端波長を分離させることができる。
【0064】
また、前記3種類の感光層の発色状態における極大吸収波長を、それぞれ400nm以上、500nm未満、500nm以上、600nm未満、600nm以上、700nm未満の範囲(各3原色を構成する波長域)とすることにより、フルカラー画像の記録が可能となる。
【0065】
前記フォトクロミック化合物には、発色状態が熱に安定であり、光のみによって色変化を起こすP型材料と、発色状態が熱に不安定であり光だけでなく熱によっても色変化を起こすT型材料とがあるが、本発明の可逆画像記録媒体の感光層に用いるフォトクロミック化合物としては、P型材料を用いることが特に望ましい。このような光のみによって色変化を起こすP型材料の代表的なものとしては、フルギド系化合物あるいはジアリールエテン系化合物などがある。
フォトクロミック化合物の種類とその発色状態における色は様々であり、用途によって所望の材料を選択することができる。特に、フルカラー画像を記録したい場合は、3原色であるイエロー、マゼンタ、シアンを発色する材料が重要である。
【0066】
イエロー発色材料としては、例えば「1,2−ビス(2−フェニル−4−トリフルオロメチルチアゾール)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「2,3−ジ(2−メチルベンゾチエニル)マレイン酸ジメチル」、「1,2−ビス(5−エトキシ−2−メチルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「2−[1−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−フェニル−5−メチル−4−オキサゾリル)ステアリリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。
【0067】
また、マゼンタ発色材料としては、例えば「1,2−ビス(3−(2−メチル−6−(2−(4−メトキシフェニル)エチニル)ベンゾチエニル))−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「1,2−ビス(5−メチル−2−フェニルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「1−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(3−メトキシ−5−メチル−1−フェニル−4−ピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−メチル−5−スチリル−3−チエニル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。
【0068】
また、シアン発色材料としては、例えば「1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(5−シアノ−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(6−カルボキシル−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「1−(6−シアノ−2−メチル−3−ベンゾチエニル)−2−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン」、「2−[1−(1,2,5−トリメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。
【0069】
更に、感光層内のフォトクロミック化合物は、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂あるいはウレタン樹脂等の樹脂に分散されていてもよいし、マイクロカプセル中に封入されていてもよい。
【0070】
前記のようにフォトクロミック化合物に電子受容性化合物を加えることによって吸収端波長を変化させることが実現できるが、このような化合物として長鎖アルキル化合物が有用である。長鎖アルキル化合物を用いることによって、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長の大きな変化を起こすことができる。これにより、3種類の感光層における吸収端波長の分離が大きくなって、色調制御が容易に行うことができる。
【0071】
上記長鎖アルキル化合物としては、フルギド系化合物の芳香環部位と相互作用して芳香環部位の電子的性状に変化を与えうる構造を有する化合物であり、例えば、ホスホン酸化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物が挙げられ、電子受容性化合物の分子間の凝集力をコントロールするための構造として、炭素数12以上の脂肪族鎖状構造を併せ持つ化合物が好ましい。なお、脂肪族基は、直鎖状または分枝状のアルキル基、アルケニル基が包含され、ハロゲン、アルコキシ基、エステル基等の置換基を有していてもよい。
【0072】
上記長鎖アルキル化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
例えば、
ホスホン酸化合物としては、下記一般式(1)で表わされる化合物が用いられる。
【0073】
【化1】
−PO(OH) (1)
【0074】
(ただし、Rは炭素数12以上の脂肪族基を表わす)
一般式(1)で表わされる有機リン酸化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、ヘキサコシルホスホン酸、オクタコシルホスホン酸等。
【0075】
脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0076】
【化2】
−CH(OH)−COOH (2)
【0077】
(ただし、Rは炭素数12以上の脂肪族基を表わす)
一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物としては、たとえば以下のものが挙げられる。α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等。
【0078】
脂肪族カルボン酸化合物としては、ハロゲン元素で置換された炭素数12以上の脂肪族基を持つ脂肪族カルボン酸化合物で、その少なくともα位またはβ位の炭素にハロゲン元素を持つものが用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモヘプタデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、2−ブロモテトラコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモエイコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等。
【0079】
脂肪族カルボン酸化合物としては、炭素鎖中にオキソ基を持つ炭素数12以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸化合物で、その少なくともα位、β位またはγ位の炭素がオキソ基となっているものが用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−オキソドデカン酸、2−オキソテトラデカン酸、2−オキソヘキサデカン酸、2−オキソオクタデカン酸、2−オキソエイコサン酸、2−オキソテトラコサン酸、3−オキソドデカン酸、3−オキソテトラデカン酸、3−オキソヘキサデカン酸、3−オキソオクタデカン酸、3−オキソエイコサン酸、3−オキソテトラコサン酸、4−オキソヘキサデカン酸、4−オキソオクタデカン酸、4−オキソドコサン酸等。
【0080】
脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(3)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0081】
【化3】
Figure 0004127790
【0082】
(ただし、Rは炭素数12以上の脂肪族基を表わし、Xは酸素原子またはイオウ原子を表わし、Xが酸素原子の場合はnは1、またXがイオウ原子の場合はnは1または2を表わす)
一般式(3)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば、以下のものが挙げられる。2−(ドデシルオキシ)こはく酸、2−(テトラデシルオキシ)こはく酸、2−(ヘキサデシルオキシ)こはく酸、2−(オクタデシルオキシ)こはく酸、2−(エイコシルオキシ)こはく酸、2−(ドコシルオキシ)こはく酸、2−(テトラコシルオキシ)こはく酸、2−(ドデシルチオ)こはく酸、2−(テトラデシルチオ)こはく酸、2−(ヘキサデシルオキシ)こはく酸、2−(オクタデシルチオ)こはく酸、2−(エイコシルチオ)こはく酸、2−(ドコシルチオ)こはく酸、2−(テトラコシルチオ)こはく酸、2−(ドデシルジチオ)こはく酸、2−(テトラデシルジチオ)こはく酸、2−(ヘキサデシルジチオ)こはく酸、2−(オクタデシルジチオ)こはく酸、2−(エイコシルジチオ)こはく酸、2−(ドコシルジチオ)こはく酸、2−(テトラコシルジチオ)こはく酸等。
【0083】
脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(4)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0084】
【化4】
Figure 0004127790
【0085】
(ただし、R,R,Rは水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは炭素数12以上の脂肪族基である)
一般式(4)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルこはく酸、トリデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ドデシルこはく酸、2−メチル−3−テトラデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−ドデシルこはく酸、2−エチル−3−ドデシルこはく酸、2−プロピル−3−ドデシルこはく酸、2−オクチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−テトラデシル−3−オクタデシルこはく酸等。
【0086】
脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(5)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0087】
【化5】
Figure 0004127790
【0088】
(ただし、R,Rは水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは炭素数12以上の脂肪族基である)
一般式(5)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルマロン酸、テトラデシルマロン酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、テトラコシルマロン酸、ジドデシルマロン酸、ジテトラデシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジエイコシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、メチルエイコシルマロン酸、メチルドコシルマロン酸、メチルテトラコシルマロン酸、エチルオクタデシルマロン酸、エチルエイコシルマロン酸、エチルドコシルマロン酸、エチルテトラコシルマロン酸等。
【0089】
脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(6)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0090】
【化6】
Figure 0004127790
【0091】
(ただし、Rは炭素数12以上の脂肪族基を表わし、nは0または1を表わし、mは1,2または3を表わし、nが0の場合、mは2または3であり、nが1の場合はmは1または2を表わす)
一般式(6)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。2−ドデシルグルタル酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、2−ドコシルグルタル酸、2−ドデシルアジピン酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸等。
【0092】
フェノール化合物としては、下記一般式(7)で表わされる化合物が用いられる。
【0093】
【化7】
Figure 0004127790
【0094】
(ただし、Yは−S−,−O−,−CONH−又は−COO−を表わし、R10は炭素数12以上の脂肪族基を表わし、nは1,2または3の整数である)。一般式(7)で表わされるフェノール化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。p−(ドデシルチオ)フェノール、p−(テトラデシルチオ)フェノール、p−(ヘキサデシルチオ)フェノール、p−(オクタデシルチオ)フェノール、p−(エイコシルチオ)フェノール、p−(ドコシルチオ)フェノール、p−(テトラコシルチオ)フェノール、p−(ドデシルオキシ)フェノール、p−(テトラデシルオキシ)フェノール、p−(ヘキサデシルオキシ)フェノール、p−(オクタデシルオキシ)フェノール、p−(エイコシルオキシ)フェノール、p−(ドコシルオキシ)フェノール、p−(テトラコシルオキシ)フェノール、p−ドデシルカルバモイルフェノール、p−テトラデシルカルバモイルフェノール、p−ヘキサデシルカルバモイルフェノール、p−オクタデシルカルバモイルフェノール、p−エイコシルカルバモイルフェノール、p−ドコシルカルバモイルフェノール、p−テトラコシルカルバモイルフェノール、没食子酸ヘキサデシルエステル、没食子酸オクタデシルエステル、没食子酸エイコシルエステル、没食子酸ドコシルエステル、没食子酸テトラコシルエステル等。
なお、フォトクロミック化合物と相互作用を行う物質は電子受容性化合物だけとは限らず、電子供与性化合物であっても構わない。
【0095】
上記のように外部刺激による化学的相互作用によって、フォトクロミック化合物の吸収端波長を可逆的に変化させることができるため、既存のフォトクロミック化合物を適宜選択して用いることができる。このため、新規な開発等の費用を発生させることなく短時間、かつ安価に可逆画像記録媒体が得られる。画像形成装置にとっても既存材料であることは好ましい。
【0096】
また、外部刺激を熱的刺激とすることにより、ヒートローラーなど安価で簡易な手段(部品等)で刺激を与えることができ、フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させることが可能である。
【0097】
本発明の可逆画像記録媒体の支持基板は、表面が白色であることが好ましいが用途に応じて着色していても構わない。また、支持基板は紙やフィルムなどの比較的薄い媒体が好ましいがこれに限定されない。
【0098】
更に、本発明の可逆画像記録媒体の感光層表面には、保護層を形成することができる。フォトクロミック化合物の劣化の原因としては、光化学反応中における酸素との結合などがあるため、保護層によって大気を遮断すれば紫外光照射による感光層の劣化を防ぐことができ、耐久性が向上して繰り返し書き換えが可能になる。
保護層の材質としては、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などの透明樹脂が望ましい。また、保護層の成膜方法としては、真空蒸着法、塗布法、スピンコーティング法、ディッピング法あるいはキャスト法などを用いることができる。
【0099】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はなんら実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜10は前記第1の手段に係る実施例であり、実施例11〜20は前記第2の手段に係る実施例を示す。
【0100】
実施例1
まず、フォトクロミック化合物として、フルギド系化合物である2−[1−(2−p−フルオロフェニル−5−メチル−4−オキサゾリル)ステアリリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下PC1と略す)と、2−[1−(2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン]−3−アダマンチリデンコハク酸無水物(以下PC2と略す)と、2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下PC3と略す)とをそれぞれ準備した。各化合物の光学特性は次のようである。
PC1の消色状態の吸収端波長は410nmであった。PC1のトルエン溶液に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ極大吸収波長は462nmとなり、イエローを示した。また、発色状態の吸収端波長は567nmであった。
PC2の消色状態の吸収端波長は417nmであった。PC2のトルエン溶液に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ極大吸収波長は518nmとなり、マゼンタを示した。また、発色状態の吸収端波長は635nmであった。
PC3の消色状態の吸収端波長は447nmであった。PC3のトルエン溶液に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ極大吸収波長は610nmとなり、シアンを示した。また、発色状態の吸収端波長は724nmであった。
【0101】
PC1の消色状態の吸収端波長を可逆的に変化させるようにするため、PC1とドコシルホスホン酸を1:10のモル比で混合し、混合した状態の物質(以下PS1と略す)が熱処理温度により吸収端波長が変化するかどうか調べた。
その結果、120℃に加熱してから室温に冷却した状態では吸収端波長が380nm付近にシフトすることが判った。その後、再び80℃に加熱してから室温に冷却した状態では吸収端波長が410nmと元に戻り(PC1の消色状態の吸収端波長は410nm)、吸収端波長を付与する温度の違いにより可逆的に変化出来ることを確認した。
【0102】
次に、上記PS1、PC2、PC3を各々ポリスチレン中に20wt%分散させ、トルエンに溶解させた溶液をそれぞれ調製した。なお、PS1はPC1の濃度を基準にして20wt%となるように換算して調製した。
得られた溶液を用いて、白色ポリエチレンテレフタレート基板(厚さ188μm)上に、PS1のトルエン溶液、PC2のトルエン溶液、PC3のトルエン溶液の順でブレード塗布し、可逆画像記録媒体を作製した。各層の厚みは、約2μmであった。以下、PS1を含む感光層を感光層(A)、PC2を含む感光層を感光層(B)、PC3を含む感光層を感光層(C)と呼称する。
【0103】
実施例2
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を用いて発色の実験を行った。まず、上記で得られた可逆画像記録媒体に外部刺激として120℃の加熱を施した後、室温に戻した。その後、390nmの紫外光を照射したところ照射部がブルーに呈色した。これは、照射部の感光層(B)と感光層(C)が発色したためである。PC1の消色状態の吸収端波長410nmが、加熱によって380nmに変化したことにより感光層(A)は発色しない。
【0104】
比較例1
一方、実施例1においてドコシルホスホン酸を混合しないPC1と、PC2、PC3を用いて実施例1と同じ構成の可逆画像記録媒体を作製した。この媒体に対して実施例1と同様に390nmの紫外光を照射したところ照射部がブラックに呈色した。これは、390nmの波長に対して全ての感光層が発色したためである。この例の場合には、実施例1と異なりPC1の消色状態の吸収端波長が410nmであるため、感光層(A)も発色する。
【0105】
比較例2
実施例1で作製した可逆画像記録媒体に対して、加熱処理を行わずに390nmの紫外光を照射したところ照射部がブラックに呈色した。これは、照射部の感光層(B)と感光層(C)と同時に感光層(A)も発色したためである。外部刺激が施されないため、PC1の消色状態の吸収端波長が410nmのままであり、感光層(A)も発色する。
【0106】
実施例3
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、420nmの近紫外光を照射したところ照射部がシアンに呈色した。これは、照射部の感光層(C)のみが発色したためである。すなわち、消色状態の吸収波長が420nmよりも短波長の感光層(A)および感光層(B)は発色しない。
【0107】
実施例4
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ照射部がブラックに呈色した。これは、全ての感光層が発色したためである。すなわち、消色状態の吸収波長が360nmよりも長波長の感光層(A)、感光層(B)および感光層(C)は発色する。
【0108】
実施例5
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ全ての感光層が発色し、ブラックに呈色した。ブラックに呈色した部分に650nmの可視光を照射したところ照射部がレッドになった。これは、感光層(C)が消色反応を起こしたためである。すなわち、発色状態の吸収端波長が650nmよりも長波長の感光層(C)が消色し、感光層(A)および感光層(B)が発色した状態となる。
【0109】
実施例6
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ全ての感光層が発色し、ブラックに呈色した。ブラックに呈色した部分に650nmおよび580nmの可視光を照射したところ照射部がイエローになった。これは、感光層(B)および感光層(C)が消色反応を起こしたためである。すなわち、発色状態の吸収端波長が580nmよりも短波長の感光層(A)のみ消色せず、発色した状態のままである。
【0110】
実施例7
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ全ての感光層が発色し、ブラックに呈色した。ブラックに呈色した部分に650nmおよび580nmの可視光を照射したところ照射部がイエローになった。これは、感光層(B)および感光層(C)が消色反応を起こしたためである(実施例6と同様)。更に、イエローに呈色した部分に420nmの近紫外光を照射したところグリーンに呈色した。これは、感光層(C)が発色したためである。すなわち、消色状態の吸収端波長が感光層(B)よりも大きいため、感光層(C)のみ発色し、感光層(A)と感光層(C)とが発色した状態となる。
【0111】
実施例8
実施例1で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、390nmの紫外光を照射したところブルーに呈色した。これは、感光層(B)と感光層(C)とが発色したためである。更に、ブルーに呈色した部分に650nmの可視光を照射したところ照射部がマゼンタになった。これは、感光層(C)が消色反応を起こしたためである。すなわち、発色状態の吸収端波長が650nmよりも長波長の感光層(C)が消色し、感光層(B)が発色した状態となる。
【0112】
実施例9
実施例2〜8で光照射した可逆画像記録媒体に対して白色光を照射したところ感光層(A)、感光層(B)および感光層(C)が全て消色反応を起こして、元の白色状態に戻った。
【0113】
実施例10
実施例9で白色状態に戻した可逆画像記録媒体に対して、実施例2〜9の操作を再びおこなったところ同様の色変化が起こり、書き換え記録ができた。
【0114】
実施例11
実施例1と同じフォトクロミック化合物(PC1)、(PC2)および(PC3)を用いた。従って、PC1、PC2およびPC3それぞれの消色状態の吸収端波長、高圧水銀灯(366nmの輝線)照射による極大吸収波長、発色状態の吸収端波長は実施例1と同じである。
また、実施例1同じようにPC1の消色状態の吸収端波長を可逆的に変化させるようにするため、PC1とドコシルホスホン酸を1:10のモル比で混合し混合した(以下PS1と略す)。PS1の熱処理温度による吸収端波長の変化を確認した結果は実施例1と同じで、120℃に加熱してから室温に冷却した状態では吸収端波長が380nm付近にシフトすることを確認した。更に、80℃に加熱してから室温に冷却した状態では吸収端波長が元の410nmに戻り、吸収端波長を印加温度の違いにより可逆的に変化できることを確認した。
上記フォトクロミック化合物(PS1)、(PC2)および(PC3)を実施例1と同様にして各々ポリスチレン中に20wt%分散させ(PS1はPC1の濃度に換算して)、トルエンに溶解させた溶液を調製した。
【0115】
次に、上記3種類の各感光層間に介在させる紫外線吸収層用の一方の紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系化合物である2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(以下UV4と略す)を用いた。UV4は、360nm付近に吸収帯を有しており、吸収端波長は391nmであった。このUV4の30mgをスチレン70mgとともにトルエン中に溶解させ、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを少量加えた後に加熱して共重合体を得た。得られた共重合体をトルエン中に溶解させた溶液を調製した。
紫外線吸収層用の他方の紫外線吸収剤として、オリエント化学工業製のBONASORB UA−3901(以下UV5と略す)を用いた。UV5は、410nm付近に吸収帯を有しており、吸収端波長は428nmであった。UV5をポリスチレン中に5wt%分散させトルエン中に溶解させた溶液を調製した。
【0116】
上記調製した各溶液を用いて、白色ポリエチレンテレフタレート基板(厚さ188μm)上に、PC3のトルエン溶液、UV5のトルエン溶液、PC2のトルエン溶液、UV4のトルエン溶液、PS1のトルエン溶液の順にブレード塗布して可逆画像記録媒体を作製した。各層の厚みは、約2μmであった。以下、PS1を含む感光層を感光層(A)、PC2を含む感光層を感光層(B)、PC3を含む感光層を感光層(C)、UV4を含む紫外線吸収層を紫外線吸収層(D)、UV5を含む紫外線吸収層を紫外線吸収層(E)と呼称する。
【0117】
実施例12
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を用いて発色の実験を行った。まず、上記で得られた可逆画像記録媒体に外部刺激として120℃の加熱を施した後、室温に戻した。その後、395nmの紫外光を照射したところ照射部がマゼンタに呈色した。これは、照射部の感光層(B)が発色したためである。PC1の消色状態の吸収端波長410nmが、加熱によって380nmに変化したことにより感光層(A)は発色しない。
【0118】
比較例3
一方、実施例11においてドコシルホスホン酸を混合しないPC1と、PC2、PC3を用いて実施例11と同じ構成の可逆画像記録媒体を作製した。この媒体に対して395nmの紫外光を照射したところ照射部がレッドに呈色した。これは、395nmの波長に対して感光層(A)と感光層(B)とが発色したためである。この場合には、実施例11と異なりPC1の消色状態の吸収端波長が410nmであるため、感光層(A)も発色する。
【0119】
比較例4
実施例11で作製した可逆画像記録媒体に対して、加熱処理を行わずに395nmの紫外光を照射したところ照射部がレッドに呈色した。これは、照射部の感光層(B)と同時に感光層(A)も発色したためである。外部刺激が施されないため、PC1の消色状態の吸収端波長が410nmのままであり、感光層(A)も発色する。
【0120】
実施例13
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、430nmの近紫外光を照射したところ照射部がシアンに呈色した。これは、照射部の感光層(C)のみが発色したためである。すなわち、消色状態の紫外線吸収層(E)の吸収端波長と感光層(C)との間の照射波長であるため、感光層(A)および感光層(B)は発色しない。
【0121】
実施例14
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ照射部がイエローに呈色した。これは、照射部の感光層(A)のみが発色したためである。すなわち、照射波長が消色状態の紫外線吸収層(D)の吸収端波長より短波長であるため感光層(B)および感光層(C)は発色しない。
【0122】
実施例15
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ照射部がイエローに呈色した。更に、同じ箇所に395nmの紫外光を照射したところ照射部がレッドに変化した。すなわち、最終照射波長が消色状態における紫外線吸収層(D)の吸収端波長と感光層(B)の吸収端波長との間にあるため、感光層(B)が発色し、感光層(A)および感光層(B)が発色した状態となる。
【0123】
実施例16
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ照射部がイエローに呈色した。更に、同じ箇所に430nmの紫外光を照射したところ照射部がグリーンに変化した。すなわち、最終照射波長が消色状態における紫外線吸収層(E)の吸収端波長と感光層(C)の吸収端波長との間にあるため、感光層(C)が発色し、感光層(A)および感光層(C)が発色した状態となる。
【0124】
実施例17
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、395nmの紫外光を照射したところ照射部がマゼンタに呈色した。更に、同じ箇所に430nmの紫外光を照射したところ照射部がブルーに変化した。すなわち、最終照射波長が消色状態における紫外線吸収層(E)の吸収端波長と感光層(C)の吸収端波長との間にあるため、感光層(C)が発色し、感光層(B)および感光層(C)が発色した状態となる。
【0125】
実施例18
実施例11で作製した可逆画像記録媒体を120℃に加熱してから室温に戻した。その後、360nmの紫外光を照射したところ照射部がイエローに呈色した。更に、同じ箇所に395nmの紫外光を照射したところ照射部が赤色に変化した。更にまた、同じ箇所に430nmの近紫外光を照射したところ照射部が黒色になった。すなわち、最終照射波長が消色状態における紫外線吸収層(E)の吸収端波長と感光層(C)の吸収端波長との間にあるため、感光層(C)が発色し、感光層(A)、感光層(B)および感光層(C)が全て発色した状態となる。
【0126】
実施例19
実施例12〜18で光照射した可逆画像記録媒体に対して白色光を照射したところ、感光層(A)、感光層(B)および感光層(C)が全て消色反応を起こして元の白色状態に戻った。
【0127】
実施例20
実施例19で白色状態に戻した可逆画像記録媒体に対して、実施例12〜18の操作を再びおこなったところ同様の色変化が起こり、書き換え記録ができた。
【0128】
【発明の効果】
本発明の第1の手段である可逆画像記録媒体とその記録方法によれば、支持基板上に設けられる3種類の感光層の内、少なくとも1種類の感光層は消色状態における吸収端波長が外部刺激により可逆的に変化するようにしたことで、各感光層の吸収端波長を大きく分離させることができる。これによって色調制御が容易となり、3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させるとともに、可視光による記録の消去を組み合わせてカラー情報の書込みを繰り返し可能とする。
本発明の第2の手段である可逆画像記録媒体とその記録方法によれば、第1の手段と同様に支持基板上にけられる3種類の感光層の内、少なくとも1種類の感光層は消色状態における吸収端波長が外部刺激により可逆的に変化するようにされているため、各感光層の吸収端波長が大きく分離され、色調制御が容易となって3種類の光(紫外光)で選択的に感光層を発色させることが可能となる。更に、3種類の感光層間にそれぞれ紫外線吸収層が介在されて設けられているため、各紫外光照射時に他の感光層へ感光させることなくそれぞれのカラー情報の書込みが可能となる。また、可視光による消去を組み合わせてカラー情報の書込みを繰り返し可能とする。
上記第1の手段および第2の手段における可逆画像記録媒体とその記録方法においては、3原色を示すフォトクロミック化合物を用いることにより、フルカラー画像の記録が可能となる。更に、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こす化合物として長鎖アルキル化合物を用いることにより、既存のフォトクロミック化合物を用いて吸収端波長を可逆的に大きく変化させることが可能になる。また、外部刺激として熱的刺激が適用できるため、簡易で安価な手段により吸収端波長の変化を実現することができる。更にまた、感光層表面上に表面保護層を設けることで紫外光照射に対する感光層の劣化を防ぎ、耐久性が向上して書き換えの繰り返し回数を多くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3種類の紫外光照射で画像形成を行う場合の画像形成未達成の例を説明するための各感光層の発色状態と消色状態での吸収スペクトルを示す模式図である。
【図2】本発明の第1手段の感光層に紫外光と可視光照射で画像形成を行う手順を説明するための各感光層の発色と消色状態での吸収スペクトルを示す模式図である。
【図3】本発明の第2手段の感光層に紫外光照射で画像形成を行う手順を説明するための各感光層の発色と消色状態での吸収スペクトルを示す模式図である。

Claims (15)

  1. 支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(A)、(B)、(C)が積層され、発色状態における該感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であるとともに、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類は、該フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物が含有されており、外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることを特徴とする可逆画像記録媒体。
  2. 前記フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物は長鎖アルキル化合物であることを特徴とする請求項に記載の可逆画像記録媒体。
  3. 前記外部刺激は熱的刺激であることを特徴とする請求項1または2に記載の可逆画像記録媒体。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の可逆画像記録媒体の消色状態に対して下記工程(1)〜(6)を順次施すことを特徴とする可逆画像記録方法。
    工程(1):外部刺激を与えることにより前記少なくとも一種類の感光層の消色状態における吸収端波長を変化させる。
    工程(2):消色状態における感光層(A)が吸収する波長の光を感光層(A)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
    工程(3):発色状態における感光層(A)の吸収端波長以上であり、かつ発色状態における感光層(B)および感光層(C)が吸収する波長の光を前記可逆画像記録媒体全面に照射する。
    工程(4):消色状態における感光層(A)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(B)が吸収する波長の光を感光層(B)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
    工程(5):発色状態における感光層(B)の吸収端波長以上であり、かつ発色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を前記可逆画像記録媒体全面に照射する。
    工程(6):消色状態における感光層(B)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を感光層(C)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
  5. 前記消色状態の可逆画像記録媒体に対して、感光層(A)、感光層(B)、感光層(C)が吸収する波長の光を所望の領域に照射することにより全ての感光層を部分的に発色させる工程を施すことを特徴とする請求項に記載の可逆画像記録方法。
  6. 前記工程(1)の前工程として白色光を画像記録部全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項またはに記載の可逆画像記録方法。
  7. 支持基板上に、異なる波長の光で発色と消色が可能なフォトクロミック化合物を個別に含んだ発色色相の違う3種類の感光層(A)、(B)、(C)がそれぞれ紫外線吸収層(D)、(E)を介在して積層され、発色状態における該感光層(B)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(A)より長波長側であり、該感光層(C)に含まれるフォトクロミック化合物の吸収端波長は感光層(B)より長波長側であるとともに、前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類は外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化し、各感光層の消色状態における吸収端波長の分離を大きくすることを特徴とする可逆画像記録媒体。
  8. 前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の少なくとも一種類を外部刺激により消色状態における吸収端波長を変化した後の状態において、感光層(A)は最も短波長側、感光層(B)は感光層(A)より長波長側、感光層(C)は感光層(B)より長波長側、紫外線吸収層(D)は感光層(A)と感光層(B)との間、紫外線吸収層(E)は感光層(B)と感光層(C)との間にそれぞれ消色状態の吸収端波長があり、支持基板に近い側から感光層(C)、紫外線吸収層(E)、感光層(B)、紫外線吸収層(D)、感光層(A)の順に積層されていることを特徴とする請求項に記載の可逆画像記録媒体。
  9. 前記3種類の感光層(A)、(B)、(C)の発色状態における極大吸収波長はそれぞれ、感光層(A):400nm以上、500nm未満、感光層(B):500nm以上、600nm未満、感光層(C):600nm、以上700nm未満の範囲であることを特徴とする請求項またはに記載の可逆画像記録媒体。
  10. 前記外部刺激により消色状態における吸収端波長が変化する少なくとも一種類の感光層には、フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物が含まれていることを特徴とする請求項のいずれかに記載の可逆画像記録媒体。
  11. 前記フォトクロミック化合物と化学的相互作用を起こして、該フォトクロミック化合物の吸収端波長を変化させる化合物は長鎖アルキル化合物であることを特徴とする請求項10に記載の可逆画像記録媒体。
  12. 前記外部刺激は熱的刺激であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の可逆画像記録媒体。
  13. 前記積層された感光層の表面表面に保護層を形成したことを特徴とする請求項12のいずれかに記載の可逆画像記録媒体。
  14. 請求項13のいずれかに記載の可逆画像記録媒体の消色状態に対して下記工程(1)〜(4)を順次施すことを特徴とする可逆画像記録方法。
    工程(1):外部刺激を与えることにより前記少なくとも一種類の感光層の消色状態における吸収端波長を変化させる。
    工程(2):消色状態における感光層(A)が吸収する波長の光を感光層(A)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
    工程(3):紫外線吸収層(D)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(B)が吸収する波長の光を感光層(B)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
    工程(4):紫外線吸収層(E)の吸収端波長以上であり、かつ消色状態における感光層(C)が吸収する波長の光を感光層(C)に記録する画像パターンに応じて所望の領域に照射する。
  15. 前記工程(1)の前工程として白色光を画像記録部全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の可逆画像記録方法。
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