JP4368622B2 - メモリ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック化合物を記録材料として用いたフォトンモードの光メモリ素子に関し、詳しくは、光照射により記録、再生、消去を繰り返し行なうことが可能な書き換え型の光メモリ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度大容量メモリ素子への要望が高まる中、光磁気メモリ素子や相変化型メモリ素子の開発に加え、フォトクロミック材料を記録材料として用いたものについても研究開発が行なわれている。フォトクロミック光メモリ素子は、一般にガラスまたはプラスチック等からなる基板上に、例えば、スピロピラン誘導体、フルギド誘導体、ジアリールエテン誘導体などのフォトクロミック材料を含む有機薄膜からなる記録層が形成され、必要に応じて記録層の上又は記録層と前記支持基板との間に例えばアルミニウム、金などの金属反射膜からなる反射層が形成された構成である(図1参照)。図1(A)のメモリ素子の場合には、例えば透明基板側から、図1(B)のメモリ素子の場合には基板表面から、画像を読み取ることができ、この関係は、図4及び図5に示されるメモリ素子の場合にも同様に当てはまる。上記フォトクロミック材料は、一般的に、紫外光などの短波長光を照射することで消色状態から可視光領域に吸収をもつ発色状態に変わり、可視光照射により再び消色状態に戻り、この変化は可逆的に生じる。ここで、消色状態とは上述の2つの状態のうち、短波長側に吸収をもつ状態のことを指し、吸収帯の一部が可視光領域にあって若干の着色をもつような場合をも含むものである。
【0003】
フォトクロミック光メモリへの記録、再生、消去も上述のような現象を利用して行なわれ、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて可視光を照射して情報を記録するか、または可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて紫外光を照射して情報を記録する。前者では記録部分が消色状態、それ以外の部分が発色状態となり、後者では記録部分が発色状態、それ以外の部分が消色状態となるので、いずれの場合も適当な波長の光を照射して記録部分とそれ以外の部分との反射光強度によるコントラスト差として情報を読み取ることができる。消去については、前者では紫外光を照射して記録部分を発色状態に戻すことで、後者では可視光を照射して記録部分を消色状態に戻すことで行なわれる。
【0004】
しかしながら、記録の読み出し時に、フォトクロミック化合物が吸収を持つ波長領域の光を照射する必要があり、この光は前述のコントラスト差を減少させ、ひいては記録を破壊してしまう可能性が高いという実用上の大きな問題点があり、この問題を防ぐためにいくつかの提案がなされてきている。
特許文献1では、フォトクロミック化合物の吸光度変化以外の変化として光吸収のない長波長での旋光度変化を読み出しに用いる方法が提案され、非特許文献1では、屈折率異方性を生じさせ、これを用いて光吸収のない長波長域の光で読み出しを行なう方法が提案されているが、これらの方法では光学的性質の変化が小さいために実用化が困難であるという問題がある。
非特許文献2では、液晶材料にキラルなフォトクロミック化合物を混合し、光異性化によりコレステリック液晶相を変化させる方法が提案されているが、時間の経過と共に液晶が流動しメモリが不明確になり、さらに、メモリの熱安定性および繰返し耐久性に問題がある。
特許文献2では、液晶の流動性に伴う経時的劣化を防止するために液晶材料として高分子液晶を用いる方式が提案されているが、記録の完全な消去が難しいなどの問題点がある。
【0005】
さらに以下に示すような提案もなされている。
特許文献3には、フォトクロミック化合物を一成分とする側鎖型高分子液晶膜における、フォトクロミック化合物の光異性化に伴う屈折率の変化を用いて、フォトクロミック化合物が吸収を持たない波長領域の光で記録を再生することが記載され、特許文献4には、酸化/還元剤(四酢酸鉛、トリプロポ水素化ホウ素カリウム等)や、水素結合物質などの外部刺激によりコンフォメーションを可逆的に規制する部位とフォトクロミック反応する部位を同一分子内に併せ持つフォトクロミック化合物を用い、光反応を制御することが記載され、特許文献5には、フォトクロミック化合物を含む記録層に隣接して色素分散高分子膜あるいは色素蒸着膜からなる光吸収層を設けることにより、記録光が照射されると光吸収層が発熱し、記録層の高分子バインダーが軟化し、反応収率が向上することが記載されている。
しかし、これらの提案についても実際の性能上の問題点、構成上の問題点があり、結局は実用化されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平1−246538号公報
【特許文献2】
特開平1−251344号公報
【特許文献3】
特開平5−216183号公報
【特許文献4】
特開平6−49443号公報
【特許文献5】
特開平6−102616号公報
【非特許文献1】
日本化学会第58回春期年会1989年講演予稿集31H30
【非特許文献2】
日本化学会第52回春期年会1986年講演予稿集
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フォトクロミック化合物を記録材料として用いたフォトンモードの光メモリ素子に関し、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われない光メモリ素子を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明の第1のカテゴリーの技術、該第1のカテゴリーの技術が更に改善された本発明の第2のカテゴリーの技術により解決される。
【0009】
[第1のカテゴリーの技術]
本発明の特徴の一つは、(1)少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層を支持基板上に形成し、必要に応じてさらに概記録層の上又は概記録層と前記支持基板との間に反射層を設けたメモリ素子であって、該電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基をもつルイス酸化合物とすることである。ルイス酸化合物は、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、及び/又はフェノール化合物であることが好ましい。
本発明の更にもう一つの特徴は、(2)上述のようなメモリ素子(1)に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことによりメモリ素子の初期化、記録、消去を行なう画像処理方法を提供することである。
【0010】
これにより、消色感度の可逆制御が可能となり、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて可視光を照射して情報を記録する方式においては、一時的に消色感度が大きな状態にして記録し、その後感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにすることが可能となる。これは次のように説明される。
【0011】
フォトクロミック化合物の消色感度は消色反応量子収率(φCE)に直接的に依存するものであり、消色感度の変化を扱うことはほぼφCEの変化を扱うことにほかならない。以下ではφCEの変化が消色感度の変化であるとして記述する。
【0012】
フォトクロミック化合物としてまずフルギド化合物を例にとると、一般にフルギド化合物の消色感度は、下記一般式(8)、一般式(9)および式の説明で後述する芳香環部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なる。
具体的には芳香環部位の電子供与性が大きい構造ほど消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど消色感度は大きい傾向がある。そしてある特定の構造の化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって消色感度は変化し得る。つまり媒体との相互作用により芳香環部位の電子的性状が見かけ上変化するということであり、媒体中の電子受容性部位とフルギド化合物の芳香環部位との電子授受の相互作用の程度が大きくなれば、該芳香環部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に前記相互作用の程度が小さくなれば、芳香環部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、前記相互作用の程度を制御すれば消色感度の制御が可能となる。これが前記(1)に記載した構造の電子受容性化合物とフォトクロミック化合物とを含む記録層に対し、前記(2)に記載した工程を施すことで可能となり、以下のように説明できる。
【0013】
前記メモリ素子の記録層中のフルギド化合物は紫外光照射によって発色する。その後記録層を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱することにより、前記電子受容性化合物がある程度規則的に集合した状態が形成され、電子受容性化合物の酸性基部位がフルギド化合物の芳香環部位と密に相互作用を持った状態で安定化する(以下ではこの状態を「状態A」と呼ぶ)。この状態のモデル図を図2に示す。これは消色感度が大きい状態であり、この状態において可視光を照射することにより、少ないエネルギーで短時間に記録工程が行なわれる。さらにこの後、記録層を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱することにより(前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱して徐冷してもよい)、電子受容性化合物の酸性基部位どうしが密に集合し、フルギド化合物の芳香環部位との相互作用が小さい状態で安定化する(以下ではこの状態を「状態B」と呼ぶ)。この状態のモデル図を図3に示す。これは消色感度が小さい状態であり、したがって読み出し光による消色が起こらない、記録保持性が高い状態となる。これまで消色感度について説明してきたが、発色感度については「状態A」および「状態B」による変化はほとんどない。
【0014】
前述の状態Aを得るべく電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程においては、フルギド化合物の溶融温度が電子受容性化合物の溶融温度よりも高い場合は、フルギド系化合物の溶融温度以上の温度に加熱することが好ましいが、電子受容性化合物の溶融温度より高ければ問題はない。加熱後は急冷することが好ましい。徐冷すると状態Bに変化する確率が増えてくる。これは状態Aを得るための加熱温度領域よりも低温の領域に状態Bを得るための加熱温度領域が存在するためである。したがって、状態Aにある記録層を特定の温度領域に加熱することにより状態Bを得ることができる。状態Aを得るために電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程、および状態Bを得るために電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱する工程における加熱温度の設定は、用いるフルギド化合物と電子受容性化合物およびバインダーの種類や組み合わせに応じて適切に設定されることになる。
【0015】
本発明のもう一つの特徴は、(3)上述のような構成のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、前記紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことによりメモリ素子の初期化、記録、消去を行なうことである。
【0016】
これにより、消色感度の可逆制御が可能となり、可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて紫外光を照射して情報を記録する方式においては、記録後にその記録部分を含む領域を感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにし、消去時には一時的に消色感度が大きな状態にして可視光を照射して情報を消去することが可能となる。
フォトクロミック化合物と電子受容性化合物の相互作用と消色感度の関係、前記相互作用を切り替えるための熱処理に関しては、(2)に関する上述の説明と同様である。
【0017】
[第2のカテゴリーの技術]
本発明の更に改良されたもう一つの特徴は、(4)少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層を支持基板上に設け、必要に応じてさらに反射層を設けたメモリ素子であって、該記録層が更に赤外吸収剤を含み、前記電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基をもつルイス酸化合物であるメモリ素子が提供されることである。
本発明の更にもう一つの特徴は、(5)少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層と、赤外吸収剤を含む発熱層とを支持基板上に設け、必要に応じてさらに反射層を設けたメモリ素子であって、該電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基をもつルイス酸化合物であるメモリ素子が提供されることである。
【0018】
また、本発明の更にもう一つの特徴は、(6)上述のようなメモリ素子(4)又は(5)のメモリ素子に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、赤外光を照射して記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことにより該メモリ素子の初期化、記録、消去を行なう画像処理方法を提供することである。
本発明の更にもう一つの特徴は、(7)上述のようなメモリ素子(4)又は(5)のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、赤外光を照射して前記紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、赤外光を照射して記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録、消去を行なう画像処理方法を提供することである。
【0019】
前記状態Aを得るために電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程、および状態Bを得るために電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱する工程は、赤外光を照射することにより、(4)の記録層に含まれる赤外吸収剤あるいは(5)の発熱層に含まれる赤外吸収色素が発熱することで可能となる。
赤外吸収剤としては、赤外吸収色素などを用いることができ、特に700nm以上の赤外域に吸収を持つナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、金属錯体系色素などの色素を好適に用いることができる。
赤外光を照射する光源としては、赤外ランプと不要な波長域の光をカットするための光学フィルターを組み合わせた構成の光源を用いてもよいし、LEDやLDなどの特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよい。メモリ素子全面を照射するような場合は照射サイズの大きな光源を用いたり、光源素子を並べてアレイ状に構成したり、あるいは適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整してもよいし、またメモリ素子の微小な特定箇所を照射する場合は同様に適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整すればよい。
記録層の加熱温度は前記赤外光の照射強度や照射時間を調整することによって制御できる。
【0020】
本発明において用いられるフルギド系化合物としては、下記一般式(8)で示すフルギド化合物や、下記一般式(9)で示すフルギド化合物を始めとして、これらの化合物を構造中に含みフォトクロミック性を示す化合物が挙げられる。
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環などであり、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも一つは芳香環あるいは複素芳香環を含む構造とする)
また、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物と他の好ましいフルギド化合物の例として、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物を挙げることができる。
【0023】
本発明の他の特徴は、(8)記録層の構成要素として用いるフォトクロミック化合物としてフルギド系化合物を用いることである。
フルギド系化合物はよく知られているように発色状態が熱的に安定な「熱不可逆型」のフォトクロミック材料であり、本発明におけるメモリ素子の記録層の構成要素として以下に示すように好適である。
上述したようにフルギド系化合物においては、消色感度に関する支配因子である消色反応量子収率(φCE)は、芳香環部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なり、芳香環部位の電子供与性が大きい構造ほど消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど消色感度は大きい。そしてある特定の構造の化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって、その相互作用により芳香環部位の電子的性状が見かけ上変化し、媒体中の電子受容性部位とフルギド化合物の芳香環部位との相互作用の程度が大きくなれば、芳香環部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に前記相互作用の程度が小さくなれば、芳香環部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、前記相互作用の程度を制御すれば消色感度の制御が可能となる。
【0024】
本発明において用いられるジアリールエテン系化合物としては、一般式(10)で示す化合物を始めとして、これらの化合物を構造中に含み、フォトクロミック性を示す化合物が挙げられる。
【0025】
【化10】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環などである。また、X及びYはそれぞれ独立して酸素、硫黄、あるいは窒素であり、窒素の場合はさらに水素、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環などが結合しているものである。)
さらに、1,2−ビス(2−メチル−5−p−ジメチルアミノフェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンを好ましく用いることができる。
【0026】
本発明の更に他の特徴は、(9)記録層の構成要素として用いるフォトクロミック化合物としてジアリールエテン系化合物を用いることである。
ジアリールエテン系化合物はよく知られているように発色状態が熱的に安定な「熱不可逆型」のフォトクロミック材料であり、フルギド化合物と同様、本発明におけるメモリ素子の記録層の構成要素として好適である。
ジアリールエテン系化合物においては、消色感度に関する支配因子である消色反応量子収率(φCE)は、一般式(10)における2つの5員環とそれぞれR2、R3、及びR5、R6を含む部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なり、それらの部位の電子供与性が大きい構造ほど消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど消色感度は大きい。そして、ある特定の構造のジアリールエテン化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって、その相互作用により前述の部位の電子的性状が見かけ上変化し、媒体中の電子受容性部位とその相互作用の程度が大きくなれば、前述の部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に、前記相互作用の程度が小さくなれば、前述の部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、前記相互作用の程度を制御すれば消色感度の制御が可能となる。
【0027】
本発明において用いられる電子受容性化合物としては、基本的に分子内に、フルギド系化合物の芳香環部位と相互作用して芳香環部位の電子的性状に変化を与えうる構造と、分子間の凝集力をコントロールする長い、例えば、脂肪族鎖状構造部分などを含む長鎖構造部位を合わせ持つルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上、好ましくは12〜100のホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物あるいはフェノール化合物である。長鎖構造部位には、直鎖状または分枝状のアルキル基、アルケニル基が包含され、ハロゲン、アルコキシ基、エステル基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
(10)ホスホン酸化合物としては、下記一般式(1)で表わされる化合物が用いられる。
【0029】
【化11】
R1−PO(OH)2 (1)
(ただし、R1は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
【0030】
一般式(1)で表わされる有機リン酸化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、ヘキサコシルホスホン酸、オクタコシルホスホン酸等。
【0031】
(11)脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0032】
【化12】
R2−CH(OH)−COOH (2)
(ただし、R2は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
【0033】
一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物としては、たとえば以下のものが挙げられる。α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等。
【0034】
(12)脂肪族カルボン酸化合物としては、ハロゲン元素で置換された脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造をもつカルボン酸化合物で、その少なくともα位またはβ位の炭素にハロゲン元素を持つものが用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモヘプタデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、2−ブロモテトラコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモエイコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等。
【0035】
(13)脂肪族カルボン酸化合物としては、炭素鎖中にオキソ基を持つ脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造をもつカルボン酸化合物で、その少なくともα位、β位またはγ位の炭素がオキソ基となっているものが用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−オキソドデカン酸、2−オキソテトラデカン酸、2−オキソヘキサデカン酸、2−オキソオクタデカン酸、2−オキソエイコサン酸、2−オキソテトラコサン酸、3−オキソドデカン酸、3−オキソテトラデカン酸、3−オキソヘキサデカン酸、3−オキソオクタデカン酸、3−オキソエイコサン酸、3−オキソテトラコサン酸、4−オキソヘキサデカン酸、4−オキソオクタデカン酸、4−オキソドコサン酸等。
【0036】
(14)脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(3)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0037】
【化13】
(ただし、R3は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、Xは酸素原子またはイオウ原子を表わし、Xが酸素原子の場合はnは1、またXがイオウ原子の場合はnは1または2を表わす)
【0038】
一般式(3)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば、以下のものが挙げられる。2−(ドデシルオキシ)こはく酸、2−(テトラデシルオキシ)こはく酸、2−(ヘキサデシルオキシ)こはく酸、2−(オクタデシルオキシ)こはく酸、2−(エイコシルオキシ)こはく酸、2−(ドコシルオキシ)こはく酸、2−(テトラコシルオキシ)こはく酸、2−(ドデシルチオ)こはく酸、2−(テトラデシルチオ)こはく酸、2−(ヘキサデシルオキシ)こはく酸、2−(オクタデシルチオ)こはく酸、2−(エイコシルチオ)こはく酸、2−(ドコシルチオ)こはく酸、2−(テトラコシルチオ)こはく酸、2−(ドデシルジチオ)こはく酸、2−(テトラデシルジチオ)こはく酸、2−(ヘキサデシルジチオ)こはく酸、2−(オクタデシルジチオ)こはく酸、2−(エイコシルジチオ)こはく酸、2−(ドコシルジチオ)こはく酸、2−(テトラコシルジチオ)こはく酸等。
【0039】
(15)脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(4)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0040】
【化14】
(ただし、R4,R5,R6は水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造である)
【0041】
一般式(4)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルこはく酸、トリデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ドデシルこはく酸、2−メチル−3−テトラデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−ドデシルこはく酸、2−エチル−3−ドデシルこはく酸、2−プロピル−3−ドデシルこはく酸、2−オクチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−テトラデシル−3−オクタデシルこはく酸等。
【0042】
(16)脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(5)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0043】
【化15】
(ただし、R7,R8は水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造である)
【0044】
一般式(5)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルマロン酸、テトラデシルマロン酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、テトラコシルマロン酸、ジドデシルマロン酸、ジテトラデシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジエイコシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、メチルエイコシルマロン酸、メチルドコシルマロン酸、メチルテトラコシルマロン酸、エチルオクタデシルマロン酸、エチルエイコシルマロン酸、エチルドコシルマロン酸、エチルテトラコシルマロン酸等。
【0045】
(17)脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(6)で表わされる二塩基酸が用いられる。
【0046】
【化16】
(ただし、R9は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、nは0または1を表わし、mは1,2または3を表わし、nが0の場合、mは2または3であり、nが1の場合はmは1または2を表わす)
【0047】
一般式(6)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。2−ドデシルグルタル酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、2−ドコシルグルタル酸、2−ドデシルアジピン酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸等。
【0048】
(18)フェノール化合物としては、下記一般式(7)で表わされる化合物が用いられる。
【0049】
【化17】
(ただし、Yは−S−,−O−,−CONH−又は−COO−を表わし、R10は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、nは1,2または3の整数である)。
【0050】
一般式(7)で表わされるフェノール化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。p−(ドデシルチオ)フェノール、p−(テトラデシルチオ)フェノール、p−(ヘキサデシルチオ)フェノール、p−(オクタデシルチオ)フェノール、p−(エイコシルチオ)フェノール、p−(ドコシルチオ)フェノール、p−(テトラコシルチオ)フェノール、p−(ドデシルオキシ)フェノール、p−(テトラデシルオキシ)フェノール、p−(ヘキサデシルオキシ)フェノール、p−(オクタデシルオキシ)フェノール、p−(エイコシルオキシ)フェノール、p−(ドコシルオキシ)フェノール、p−(テトラコシルオキシ)フェノール、p−ドデシルカルバモイルフェノール、p−テトラデシルカルバモイルフェノール、p−ヘキサデシルカルバモイルフェノール、p−オクタデシルカルバモイルフェノール、p−エイコシルカルバモイルフェノール、p−ドコシルカルバモイルフェノール、p−テトラコシルカルバモイルフェノール、没食子酸ヘキサデシルエステル、没食子酸オクタデシルエステル、没食子酸エイコシルエステル、没食子酸ドコシルエステル、没食子酸テトラコシルエステル等。
【0051】
上記(1)のメモリ素子の記録層を構成する材料としては前記フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物および電子受容性化合物のほかに、必要に応じてバインダー材料を用いてもよいが、前記フォトクロミック化合物のフォトクロミズム機能に悪影響を与えることがなく、また前記フォトクロミック化合物および電子受容性化合物との相溶性が良く成膜可能であり、硬化後の透明性に優れる樹脂材料を用いることが好ましい。
また、上記(4)に記載した構成のメモリ素子においても、記録層を構成する材料としては前記フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物、電子受容性化合物および赤外吸収剤のほかに、必要に応じてバインダー材料を用いてもよいが、前記フォトクロミック化合物のフォトクロミズム機能に悪影響を与えることがなく、また前記フォトクロミック化合物、電子受容性化合物および赤外吸収剤との相溶性が良く成膜可能であり、硬化後の透明性に優れる樹脂材料を用いることが好ましい。
このような材料として、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。またこのほかに、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0052】
支持基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどのような透明材料を好適に用いることができる。
感光層の構成要素となるフォトクロミック化合物、電子受容性化合物、バインダー材料の混合比については、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり一概には言えないが、フォトクロミック化合物:5〜30%、電子受容性化合物:20〜80%、バインダー材料:20〜50%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0053】
メモリ素子としての構成としては、支持基板上の記録層の上に反射層を設けたものであって、この場合、所望により設けられる保護層は、記録層と反射層の間又は反射層上に設けられていても良く(図4)、支持基板上に、順に反射層、記録層、保護層を設けたのもの(図5)でも良い。
前記第4図に示すメモリ素子の場合には、照射光を支持基板側から照射するのが好適であり、前記第5図に示すメモリ素子の場合には、照射光を逆に支持基板上に設けられた層の上から照射するのが好適である。
【0054】
上記(5)に記載した構成のメモリ素子においても、同様に記録層を構成する材料として必要に応じてバインダー材料を用いてもよい。発熱層を構成する材料としては前記赤外吸収剤のほかに、必要に応じてバインダー材料を用いても良く、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。またこのほかに、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0055】
記録層の構成要素となるフォトクロミック化合物、電子受容性化合物、バインダー材料の混合比については、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり一概には言えないが、フォトクロミック化合物:5〜30%、電子受容性化合物:20〜80%、バインダー材料:20〜50%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
発熱層の構成要素となる赤外吸収剤およびバインダー材料の混合比についても、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり一概には言えないが、赤外吸収剤:20〜80%、バインダー材料:20〜80%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0056】
上記(4)、(5)に記載した構成のメモリ素子においても、同様に記録層を構成する材料として必要に応じてバインダー材料を用いてもよい。発熱層を構成する材料としては前記赤外吸収剤、例えば赤外吸収色素のほかに、必要に応じてバインダー材料を用いても良く、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。またこのほかに、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0057】
記録層の構成要素となるフォトクロミック化合物、電子受容性化合物、バインダー材料の混合比については、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり一概には言えないが、フォトクロミック化合物:5〜30%、電子受容性化合物:20〜80%、バインダー材料:20〜50%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
発熱層の構成要素となる赤外吸収剤およびバインダー材料の混合比についても、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり一概には言えないが、赤外吸収剤:20〜80%、バインダー材料:20〜80%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0058】
該(4)、(5)のメモリ素子としての構成としては、支持基板上に、順に記録層、発熱層、反射層を設け、さらに所望により保護層を例えば記録層と発熱層の間、発熱層と反射層の間又は反射層上に設け(図6)ても良いし、支持基板上に、順に発熱層、記録層、反射層を設け、さらに所望により保護層を例えば記録層と反射層の間又は反射層上に設け(図7)ても良いし、支持基板上に、順に反射層、記録層、発熱層を設け、さらに所望により保護層を例えば記録層と発熱層の間、又は発熱層上に設け(図8)ても良いし、支持基板上に、順に反射層、発熱層、記録層を設け、さらに所望により保護層を例えば記録層上に設け(図9)ても良い。
前記図6及び図7に示すメモリ素子の場合には、照射光を支持基板側から照射するのが好適であり、前記図8及び図9に示すメモリ素子の場合には、照射光を逆に支持基板上に設けられた層の上から照射するのが好適である。
【0059】
記録層及び発熱層を形成する方法としては、印刷法、スピンコート法、ブレード法などの塗布法に類する方法のほかに蒸着法を用いることができる。記録層および発熱層の厚みについては0.5μm〜10μm程度が好ましい。
【0060】
紫外光を照射する光源としては、水銀ランプやキセノンランプなどに光学フィルターを組み合わせて所望の波長域の紫外光を取り出して用いてもよいし、LEDやLDなどの特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよく、また素子全面を照射する場合、あるいは所定の領域のみ照射する場合などで適宜選択すればよい。
【0061】
可視光を照射する光源としては、白色光光源に光学フィルターを組み合わせた構成のランプ類を用いてもよいし、LEDやLDなどの特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよく、また素子全面を照射する場合、あるいは所定の領域のみ照射する場合などで適宜選択すればよい。
記録層を、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度あるいは溶融温度未満の温度に一時的に加熱する方法としては、所定の領域のみを加熱する場合は長波長領域の可視光または赤外光を発するLEDやLDなどの発光素子を用いることができ、また全面を加熱する場合には前述の発光素子に加え、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーターなどをはじめとするヒーター類を用いることができる。
【0062】
(19)本発明のもう一つの特徴は、上記のように、記録層の表面(図4、図5、図6、図7、図8及び図9参照)、反射層の表面(図5、図6及び図7参照)あるいは、発熱層の表面(図8参照)に保護層を設けることである。保護層の材料としては、透明性が高く、硬度が高い点でシリコーン樹脂またはアクリル樹脂またはPVA(ポリビニルアルコール)等が好適に用いられる。反射層の表面に設ける場合は透明性が高い必要はない。保護層を形成することにより記録層は水分や特定のガス等による、記録層を構成する化合物の、必要な機能の発現に関わる反応に対する悪影響を低減することが可能となり、また機械的損傷からも有効に保護されて耐久性が向上する。反射層の厚みは500〜3000Å程度が好ましい。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[上記(1)のカテゴリーの光メモリ素子関連の例]
(実施例1)
フォトクロミック化合物として、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下PC1と呼ぶ)を用い、電子受容性化合物としてドコシルホスホン酸を用い、バインダーとしてポリスチレンを用いた。1重量部のPC1に対し、ドコシルホスホン酸(融点98℃)を10重量部、ポリスチレンを9重量部添加し、溶媒としてジヒドロピランを用い塗布液を調製してPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして2μmの記録層を形成したあと、PVAによる2μmの保護層およびアルミニウムによる0.15μm反射膜を形成し、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は青色を呈した。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC1が消色し、ほぼ無色に変化した。次に記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、前記半導体レーザー照射部は薄黄色を呈し、それ以外の部分はシアン色を呈した。
<再生工程>
両部分に前記半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、薄黄色を呈していた部分がシアン色に変化したため、全体が一様にシアン色を呈した状態になった。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0064】
(実施例2)
実施例1と同様に光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この素子に対し、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理し、赤色のランプ光源を用いて全面を基板側から照射したところ、PC1が消色してほぼ無色になった。
<記録工程>
次に、この状態の記録層の一部に紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色して青色を呈した。さらに前記照射部を含む領域の記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、前記照射部はシアン色に、それ以外の部分は薄黄色に変化した。
<再生工程>
両部分に前記半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、シアン色だった部分は青色に、薄黄色だった部分はほぼ無色に変化した。次に両部分に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、ほぼ無色だった部分は変化がなく、青色を呈していた部分がほぼ無色に変化したため、両部分が同様の状態になった。さらに記録層が一時的に80℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、前記ほぼ無色の部分は薄黄色を呈した。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0065】
(実施例3)
フォトクロミック化合物として1,2−ビス(2−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(以下PC2と呼ぶ)を用いたこと以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC2が発色して青色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は紫色を呈した。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC2が消色し、ほぼ無色に変化した。次に記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、前記半導体レーザー照射部は無色のまま変わらず、それ以外の部分は青色を呈した。
<再生工程>
両部分に前記半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、無色の部分が青色に変化したため、全体が一様に青色を呈した状態になった。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0066】
(比較例1)
実施例1とほぼ同様に光メモリ素子を作製した。ただし記録層の構成要素から電子受容性化合物であるドコシルホスホン酸を除き、1重量部のPC1に対しポリスチレンを19重量部用いて記録層を形成した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したが記録層は変化を示さなかった。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したが、照射部のPC1はほとんど消色しないためか変化が見られず、記録工程が実施できなかった。
【0067】
(実施例4)
電子受容性化合物としてα−ヒドロキシテトラデカン酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例1の場合よりも若干多くの時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0068】
(実施例5)
電子受容性化合物として2−フルオロオクタデカン酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例1の場合の2倍弱の時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0069】
(実施例6)
電子受容性化合物として2−オキソオクタデカン酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例1の場合の2倍弱程度の時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0070】
(実施例7)
電子受容性化合物として2−(オクタデシルチオ)こはく酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0071】
(実施例8)
電子受容性化合物としてオクタデシルこはく酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例1の場合よりも若干多くの時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0072】
(実施例9)
電子受容性化合物としてオクタデシルマロン酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0073】
(実施例10)
電子受容性化合物として2−オクタデシルグルタル酸を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0074】
(実施例11)
電子受容性化合物としてp−(オクタデシルチオ)フェノールを用いた以外はすべて実施例1と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例1と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例1の場合の2倍程度の時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0075】
[上記(4)及び(5)のカテゴリーの光メモリ素子関連の例]
(実施例12)
フォトクロミック化合物として、PC1を用い、赤外吸収剤としてNi金属錯体系色素(PA−1006、三井化学製)を用い、電子受容性化合物としてドコシルホスホン酸を用い、バインダーとしてポリスチレンを用いた。1重量部のPC1に対し、D1を1重量部、ドコシルホスホン酸(融点98℃)を9重量部、ポリスチレンを9重量部添加し、溶媒としてジヒドロピランを用い塗布液を調製してPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして記録層(2μm)を形成したあと、PVAによる保護層(2μm)およびアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mm2の照度で1msec照射したところ、記録層が一時的に110℃に達し、記録層は青色を呈した。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC1が消色し、ほぼ無色に変化した。次に記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mm2の照度で20msec照射したところ、記録層が一時的に80℃に達し、前記消色部は薄黄色を呈し、それ以外の部分はシアン色を呈した。
<再生工程>
両部分に発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分に発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、薄黄色を呈していた部分がシアン色に変化したため、全体が一様にシアン色を呈した状態になった。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0076】
(実施例13)
実施例12の記録層の構成要素のうち、D1を用いないこと以外は実施例12と同様にしてPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして記録層(2μm)を形成したあと、その上にD1とポリカーボネートを同重量部含む発熱層(2μm)を形成し、さらにPVAによる保護層(2μm)およびアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例12と同様の結果が得られた。
【0077】
(実施例14)
実施例12と同様に光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この素子に対し、基板側から全面に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mm2の照度で1msec照射し、続いて赤色のランプ光源を用いて照射したところ、PC1が消色してほぼ無色になった。
<記録工程>
次に、この状態の記録層の一部に紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色して青色を呈した。さらに前記照射部を含む領域の記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mm2の照度で20msec照射したところ、前記照射部はシアン色に、それ以外の部分は薄黄色に変化した。
<再生工程>
両部分に発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分に発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
素子全面に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mm2の照度で1msec照射したところ、シアン色だった部分は青色に、薄黄色だった部分はほぼ無色に変化した。次に両部分に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、ほぼ無色だった部分は変化がなく、青色を呈していた部分がほぼ無色に変化したため、両部分が同様の状態になった。さらに発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mm2の照度で20msec照射したところ、前記ほぼ無色の部分は薄黄色を呈した。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0078】
(実施例15)
フォトクロミック化合物として1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(以下PC2と呼ぶ)を用いたこと以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC2が発色して青色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mm2の照度で1msec照射したところ、記録層は紫色を呈した。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC2が消色し、ほぼ無色に変化した。次に記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mm2の照度で20msec照射したところ、前記発光波長650nmの半導体レーザー照射部は無色のまま変わらず、それ以外の部分は青色を呈した。
<再生工程>
両部分に発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には両者で著しい差異が認められた。引き続き両部分に発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、無色の部分が青色に変化したため、全体が一様に青色を呈した状態になった。
上述の各工程を繰り返し1000回行なった後においても、各工程における記録層の光学的変化挙動は初期と同様であり、記録、再生、消去の各工程の実施が可能であった。
【0079】
(比較例2)
実施例12とほぼ同様に光メモリ素子を作製した。ただし記録層の構成要素から電子受容性化合物であるドコシルホスホン酸を除き、1重量部のPC1に対しポリスチレンを18重量部用いて記録層を形成した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mm2の照度で1msec照射したが記録層は変化を示さなかった。この状態の記録層の一部に発光波長650nmの半導体レーザーを照射したが、照射部のPC1はほとんど消色しないためか変化が見られず、記録工程が実施できなかった。
【0080】
(実施例16)
実施例12とほぼ同様に光メモリ素子を作製した。ただし記録層の構成要素から赤外吸収剤D1を除いて記録層を形成した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
発光波長825nmの半導体レーザー照射では変化が見られなかったが、その後、実施例1と同様に記録、再生、消去の各工程を行なったところ、該工程が繰り返し実施できた。
【0081】
(実施例17)
電子受容性化合物としてα−ヒドロキシテトラデカン酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例12の場合よりも若干多くの時間を要した以外は実施例1とほぼ同様の結果が得られた実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0082】
(実施例18)
電子受容性化合物として2−フルオロオクタデカン酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例12の場合の2倍弱の時間を要した以外は実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0083】
(実施例19)
電子受容性化合物として2−オキソオクタデカン酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例12の場合の2倍弱程度の時間を要した以外は実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0084】
(実施例20)
電子受容性化合物として2−(オクタデシルチオ)こはく酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0085】
(実施例21)
電子受容性化合物としてオクタデシルこはく酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例12の場合よりも若干多くの時間を要した以外は実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0086】
(実施例22)
電子受容性化合物としてオクタデシルマロン酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0087】
(実施例23)
電子受容性化合物として2−オクタデシルグルタル酸を用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
(実施例24)
電子受容性化合物としてp−(オクタデシルチオ)フェノールを用いた以外はすべて実施例12と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例12と同様に初期化工程、記録工程、再生工程、消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に実施例12の場合の2倍程度の時間を要した以外は実施例12とほぼ同様の結果が得られた。
【0089】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の第1のカテゴリーに属する発明により、消色感度の可逆制御が可能な光メモリ素子が得られ、また、熱的に安定で耐久性が高い、読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されない光メモリ素子が得られ、消色感度の制御が可能な光メモリ素子に用いる構成要素として、電子受容性が異なるさまざまな化合物が得られ、記録層の材料設計自由度が大きくなる。また、物理的および化学的に、光メモリ素子としての耐久性が向上するという優れた効果が奏され、さらに、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて可視光を照射して情報を記録する方式において、一時的に消色感度が大きな状態にして記録し、その後感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにすることが可能となり、また、可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて紫外光を照射して情報を記録する方式において、記録後にその記録部分を含む領域を感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにし、消去時には一時的に消色感度が大きな状態にして可視光を照射して情報を消去することが可能となる。
また、本発明の第2のカテゴリーに属する発明により、光照射処理のみで消色感度の可逆制御が可能な光メモリ素子が得られ、熱的に安定で耐久性が高い、読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されない光メモリ素子が得られ、消色感度の制御が可能な光メモリ素子に用いる構成要素として、電子受容性が異なるさまざまな化合物が得られ、記録層の材料設計自由度が大きくなる。また、物理的および化学的に、光メモリ素子としての耐久性が向上するという優れた効果を奏され、さらに、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて可視光を照射して情報を記録する方式において、一時的に消色感度が大きな状態にして記録し、その後感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにすることが可能となり、また、可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて紫外光を照射して情報を記録する方式において、記録後にその記録部分を含む領域を感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにし、消去時には一時的に消色感度が大きな状態にして可視光を照射して情報を消去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な光メモリ素子の構成を示した図である。
【図2】電子受容性化合物の酸性基部位とフルギド化合物の芳香環部位との状態を示す図である。
【図3】電子受容性化合物の酸性基部位とフルギド化合物の芳香環部位との状態を示す他の図である。
【図4】本発明の光メモリ素子の構成を示した図である。
【図5】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図6】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図7】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図8】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図9】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
Claims (23)
- 少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、前記電子受容性化合物がルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であることを特徴とするメモリ素子。
- 少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、前記記録層が更に赤外吸収剤を含み、前記電子受容性化合物がルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であることを特徴とするメモリ素子。
- 前記記録層の上にまたは該記録層と前記支持基板との間に反射層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のメモリ素子。
- 前記反射層の上におよび/または前記記録層の上に保護層を設けたことを特徴とする請求項3に記載のメモリ素子。
- 少なくともジメチルアミノ基を有するフォトクロミック化合物および電子受容性化合物を含む記録層と、赤外吸収剤を含む発熱層とを支持基板上に形成したメモリ素子であって、前記電子受容性化合物がルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であることを特徴とするメモリ素子。
- 前記記録層の上に、前記発熱層の上にまたは前記支持基板の上に反射層を設けたことを特徴とする請求項5に記載のメモリ素子。
- 前記記録層の上に、前記反射層の上におよび/または前記発熱層の上に保護層を設けたことを特徴とする請求項6に記載のメモリ素子。
- フォトクロミック化合物としてフルギド系化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子。
- フォトクロミック化合物としてジアリールエテン系化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子。
- 前記電子受容性化合物としてのルイス酸化合物が、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、及び/又はフェノール化合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載のメモリ素子。
- 電子受容性化合物として、下記一般式(1)で表わされるホスホン酸化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子;
【化1】
R1−PO(OH)2 (1)
(ただし、R1は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)。 - 電子受容性化合物として、下記一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子;
【化2】
R2−CH(OH)−COOH (2)
(ただし、R2は脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)。 - 電子受容性化合物として、ハロゲン元素で置換された脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造をもつカルボン酸化合物であって、その少なくともα位またはβ位の炭素にハロゲン元素を持つ脂肪族カルボン酸を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子。
- 電子受容性化合物として、炭素鎖中にオキソ基を持つ脂肪族基などを含む炭素数12以上の長鎖構造をもつカルボン酸化合物であって、その少なくともα位、β位またはγ位の炭素がオキソ基となっている脂肪族カルボン酸化合物を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のメモリ素子。
- 請求項1乃至19のいずれか1に記載のメモリ素子に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録、消去方法。
- 請求項1乃至19のいずれか1に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、前記紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録、消去方法。
- 請求項2乃至19のいずれかに記載のメモリ素子に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、赤外光を照射して記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録、消去方法。
- 請求項2乃至19のいずれかに記載のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、赤外光を照射して前記紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、赤外光を照射して記録層の一部あるいは全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録、消去方法。
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