JP4542055B2 - 画像表示媒体及び画像表示方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像表示媒体及び画像表示方法に関する。
従来、光照射により可逆的な色変化を示すフォトクロミック化合物を用いた書き換え型の画像表示媒体は知られているが、カラー画像を何度も書き換えすることができる実用的な画像表示媒体及び画像形成方法は、未だ知られていない。
フォトクロミック化合物を用いてカラー画像を形成する方法として、例えば、特許文献1には、254nmの紫外光照射で黄橙色、313nmの紫外光照射で赤色、365nmの紫外光照射で青紫色に発色するフォトクロミック性ジアリールエテン化合物を3種類混合して、それぞれの波長の紫外光を照射する方法が開示されている。一般に、フルカラー画像を形成するためには3原色(青、緑及び赤又はイエロー、マゼンタ及びシアン)を発色する3種類以上のフォトクロミック化合物の発色及び消色を光で制御する必要があるが、上記の方法では、3種類の紫外光波長域によって各材料の発色を制御する必要がある。つまり、紫外域における吸収帯に重なりがない3種類以上のフォトクロミック化合物が必要であり、さらにそれらの化合物が発色状態において上記3原色を示さなければならないが、このような系は、実際には存在しない。また、実用化するためには、発色特性だけではなく、耐久性、耐熱安定性、耐湿安定性等も考慮しなければならない。
また、特許文献2には、発色状態でイエロー、マゼンタ、シアンを示す3種類のフォトクロミック性フルギド化合物に対して、366nmの紫外光で全フォトクロミック化合物を発色させた後に、カラーポジフィルム越しに白色光を照射することにより、各フォトクロミック性フルギド化合物を、必要に応じて、選択的に消色してカラー画像を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、形成したい画像のカラーポジフィルムが必要であり、その都度これを準備するのは実用的でなく、近年のオフィスワークにおけるカラー画像出力に用いることができない。
さらに、特許文献3及び4には、発色状態における極大吸収波長が異なる複数のフォトクロミック化合物を含む感光層を支持基体上に形成した画像表示媒体に、高精細な多色画像を簡単に繰り返し形成する方法及び装置が開示されている。しかしながら、この方法では、可視光による消色工程に比較的多くの時間を要する場合が多い。このことから、消色感度が大きいフォトクロミック化合物を用いることが望まれるが、形成された画像が照明下で観察される場合の発色保持性を考慮すると、消色感度が小さいフォトクロミック化合物を用いることが望まれる。このように、画像形成時間の短縮と、形成画像の発色保持性確保という2つの課題は、フォトクロミック化合物の消色感度に関して相反する特性を要求するものである。
特開平5−271649号公報 特開平7−199401号公報 特開2003−241339号公報 特開2003−312064号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、書き換え型の画像を高精細、高品質に表示する時間を短縮すると共に、画像の発色保持性を確保することが可能な画像表示媒体及び該画像表示媒体を用いる画像表示方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、支持基体上に、感光層が形成されている画像表示媒体において、該感光層は、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満である第一のフルギド系化合物、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満である第二のフルギド系化合物、発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満である第三のフルギド系化合物及び電子受容性化合物を含有し、該第一のフルギド系化合物、該第二のフルギド系化合物及び該第三のフルギド系化合物は、それぞれ、一般式
−NR
(式中、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基である。)
で示される官能基で置換された複素芳香環を有、該電子受容性化合物は、長鎖構造を有するルイス酸化合物であことを特徴とする。これにより、書き換え型の画像を高精細、高品質に表示する時間を短縮すると共に、画像の発色保持性を確保することが可能な画像表示媒体を提供することができる。また、色再現範囲が広い多色画像を表示することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像表示媒体において、前記感光層は、赤外光を吸収する色素をさらに含有することを特徴とする。これにより、光照射のみで消色感度を可逆的に制御することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像表示媒体において、前記支持基体上に、赤外光を吸収する色素を含有する発熱層さらに形成されていることを特徴とする。これにより、光照射のみで消色感度を可逆的に制御することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像表示媒体において、前記感光層は、前記第一のフルギド系化合物、前記第二のフルギド系化合物及び前記第三のフルギド系化合物の一種及び前記電子受容性化合物を含有する層が2層以上積層されている構造であることを特徴とする。これにより、各フルギド系化合物の消色感度を可逆的に制御することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像表示媒体において、前記感光層は、前記第一のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第一の層、前記第二のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第二の層並びに前記第三のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第三の層が積層されており、該第一の層に含まれる前記電子受容性化合物、該第二の層に含まれる前記電子受容性化合物及び該第三の層に含まれる前記電子受容性化合物は、それぞれ異なることを特徴とする。これにより、各層の消色感度をほぼ同等にすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の画像表示媒体において、前記積層されている層の間に中間層さらに形成されていることを特徴とする。これにより、中間層の上下に設けられている層の間の材料の混合を抑制することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像表示媒体において、表面に保護層さらに形成されていることを特徴とする。これにより、物理的及び化学的に、画像表示媒体の耐久性を向上させることができる。
請求項に記載の発明は、画像形成方法において、請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像表示媒体の感光層に紫外光を照射することにより、フォトクロミック化合物を発色させる工程、該感光層を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に加熱する工程、該発色状態におけるフォトクロミック化合物の極大吸収波長を含有する波長域の可視光を該感光層に照射することにより、該フォトクロミック化合物を選択的に消色させる工程と、該感光層を該電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に加熱する工程を有することを特徴とする。これにより、書き換え型の画像を高精細、高品質に表示する時間を短縮すると共に、画像の発色保持性を確保することが可能な画像表示方法を提供することができる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の画像表示方法において、赤外光を照射することにより、前記感光層を加熱することを特徴とする。これにより、光照射のみで消色感度を可逆的に制御することができる。
本発明によれば、書き換え型の画像を高精細、高品質に表示する時間を短縮すると共に、画像の発色保持性を確保することが可能な画像表示媒体及び該画像表示媒体を用いる画像表示方法を提供することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
本発明の画像表示媒体は、支持基体上に、フォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含有する感光層が形成されており、フォトクロミック化合物は、一般式(I)
−NR
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基である。)
で示される官能基が直接結合した複素芳香環を有するフルギド系化合物であり、電子受容性化合物は、長鎖構造を有するルイス酸化合物である。なお、脂肪族基としては、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基等が挙げられ、脂肪族基の炭素数は、12以上であることが好ましい。
本発明において、フォトクロミック化合物としては、一般式(II)
Figure 0004542055
(式中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環基又は複素芳香環基であり、R11、R12、R13及びR14の少なくとも一つは、一般式(I)で示される官能基が直接結合した複素芳香環基である。)
で示されるフルギド系化合物、一般式(III)
Figure 0004542055
(式中、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、芳香環基又は複素芳香環基であり、R15、R16、R17及びR18の少なくとも一つは、一般式(I)で示される官能基が直接結合した複素芳香環基である。)
で示されるフルギド系化合物等が挙げられる。
本発明において、電子受容性化合物としては、分子内に、フルギド系化合物の複素芳香環と相互作用して複素芳香環の電子的性状を変化させることが可能な構造と、分子間の凝集力を制御する脂肪族基等の長鎖構造を有するホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、フェノール化合物等が挙げられる。脂肪族基としては、直鎖状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基等が挙げられ、これらは、ハロゲン基、アルコキシル基、エステル結合等を有していてもよい。なお、長鎖構造の炭素数は、12以上であることが好ましい。炭素数が12未満の場合には、電子受容性化合物の分子間の凝集力が小さくなり、安定な会合体が形成できなくなることがある。
ホスホン酸化合物としては、一般式(IV)
−PO(OH)
(式中、Rは、炭素数12以上の長鎖構造である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、ヘキサコシルホスホン酸、オクタコシルホスホン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(V)
−CH(OH)−COOH
(式中、Rは、炭素数12以上の長鎖構造である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、α位及びβ位の少なくとも一方にハロゲン基を有する炭素数12以上の長鎖構造を有するカルボン酸化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモヘプタデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、2−ブロモテトラコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモエイコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、α位、β位又はγ位にオキソ基を有する炭素数12以上の長鎖構造を有するカルボン酸化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2−オキソドデカン酸、2−オキソテトラデカン酸、2−オキソヘキサデカン酸、2−オキソオクタデカン酸、2−オキソエイコサン酸、2−オキソテトラコサン酸、3−オキソドデカン酸、3−オキソテトラデカン酸、3−オキソヘキサデカン酸、3−オキソオクタデカン酸、3−オキソエイコサン酸、3−オキソテトラコサン酸、4−オキソヘキサデカン酸、4−オキソオクタデカン酸、4−オキソドコサン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(VI)
Figure 0004542055
(式中、Rは、炭素数12以上の長鎖構造であり、Xは、オキシ基又はチオ基であり、Xがオキシ基である場合、nは、1であり、Xがチオ基である場合、nは、1又は2である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2−(ドデシルオキシ)コハク酸、2−(テトラデシルオキシ)コハク酸、2−(ヘキサデシルオキシ)コハク酸、2−(オクタデシルオキシ)コハク酸、2−(エイコシルオキシ)コハク酸、2−(ドコシルオキシ)コハク酸、2−(テトラコシルオキシ)コハク酸、2−(ドデシルチオ)コハク酸、2−(テトラデシルチオ)コハク酸、2−(ヘキサデシルオキシ)コハク酸、2−(オクタデシルチオ)コハク酸、2−(エイコシルチオ)コハク酸、2−(ドコシルチオ)コハク酸、2−(テトラコシルチオ)コハク酸、2−(ドデシルジチオ)コハク酸、2−(テトラデシルジチオ)コハク酸、2−(ヘキサデシルジチオ)コハク酸、2−(オクタデシルジチオ)コハク酸、2−(エイコシルジチオ)コハク酸、2−(ドコシルジチオ)コハク酸、2−(テトラコシルジチオ)コハク酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(VII)
Figure 0004542055
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基であり、R、R及びRの少なくとも1つは、炭素数12以上の長鎖構造である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、ドデシルコハク酸、トリデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、エイコシルコハク酸、ドコシルコハク酸、2,3−ジヘキサデシルコハク酸、2,3−ジオクタデシルコハク酸、2−メチル−3−ドデシルコハク酸、2−メチル−3−テトラデシルコハク酸、2−メチル−3−ヘキサデシルコハク酸、2−メチル−3−ドデシルコハク酸、2−エチル−3−ドデシルコハク酸、2−プロピル−3−ドデシルコハク酸、2−オクチル−3−ヘキサデシルコハク酸、2−テトラデシル−3−オクタデシルコハク酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(VIII)
Figure 0004542055
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基であり、R及びRの少なくとも一方は、炭素数12以上の長鎖構造である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、ドデシルマロン酸、テトラデシルマロン酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、テトラコシルマロン酸、ジドデシルマロン酸、ジテトラデシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジエイコシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、メチルエイコシルマロン酸、メチルドコシルマロン酸、メチルテトラコシルマロン酸、エチルオクタデシルマロン酸、エチルエイコシルマロン酸、エチルドコシルマロン酸、エチルテトラコシルマロン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(IX)
Figure 0004542055
(式中、Rは、炭素数12以上の長鎖構造であり、nは、0又は1であり、nが0の場合、mは2又は3であり、nが1の場合、mは、1又は2である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2−ドデシルグルタル酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、2−ドコシルグルタル酸、2−ドデシルアジピン酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸等が挙げられる。
フェノール化合物としては、一般式(X)
Figure 0004542055
(式中、R10は、炭素数12以上の長鎖構造であり、Yは、チオ基、オキシ基、−CONH−又は−COO−であり、nは、1〜3の整数である。)
で示される化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、p−(ドデシルチオ)フェノール、p−(テトラデシルチオ)フェノール、p−(ヘキサデシルチオ)フェノール、p−(オクタデシルチオ)フェノール、p−(エイコシルチオ)フェノール、p−(ドコシルチオ)フェノール、p−(テトラコシルチオ)フェノール、p−(ドデシルオキシ)フェノール、p−(テトラデシルオキシ)フェノール、p−(ヘキサデシルオキシ)フェノール、p−(オクタデシルオキシ)フェノール、p−(エイコシルオキシ)フェノール、p−(ドコシルオキシ)フェノール、p−(テトラコシルオキシ)フェノール、p−ドデシルカルバモイルフェノール、p−テトラデシルカルバモイルフェノール、p−ヘキサデシルカルバモイルフェノール、p−オクタデシルカルバモイルフェノール、p−エイコシルカルバモイルフェノール、p−ドコシルカルバモイルフェノール、p−テトラコシルカルバモイルフェノール、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸オクタデシル、没食子酸エイコシル、没食子酸ドコシル、没食子酸テトラコシル等が挙げられる。
本発明において、感光層は、必要に応じて、バインダー材料を含有してもよい。バインダー材料としては、フォトクロミック化合物のフォトクロミズム機能に悪影響を与えることがなく、また、フォトクロミック化合物及び電子受容性化合物との相溶性が良く、成膜することが可能であり、硬化後の透明性に優れる樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、この他に、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。
本発明において、フォトクロミック化合物、電子受容性化合物及びバインダー材料の混合比は、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり、一概には言えないが、フォトクロミック化合物5〜30重量%、電子受容性化合物20〜80重量%及びバインダー材料20〜50重量%であることが好ましい。また、感光層が赤外光を吸収する色素を含有する場合は、フォトクロミック化合物、電子受容性化合物、色素及びバインダー材料の混合比は、フォトクロミック化合物5〜30重量%、電子受容性化合物20〜80重量%、色素5〜30重量%、バインダー材料20〜50重量%であることが好ましい。
支持基体の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等の透明材料、これらを白又は他の色に着色した材料、紙等の不透明材料等が挙げられる。
本発明の画像表示方法は、本発明の画像表示媒体の感光層に紫外光を照射することにより、フォトクロミック化合物を発色させる工程、感光層を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に加熱する工程、発色状態におけるフォトクロミック化合物の極大吸収波長を含有する波長領域の可視光を感光層に照射することにより、フォトクロミック化合物を選択的に消色する工程及び感光層を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に加熱する工程を有する。これにより、消色感度の制御、即ち、フォトクロミック化合物を選択的に消色する場合のみ、一時的にフォトクロミック化合物の消色感度を増大させ、フォトクロミック化合物を選択的に消色した後は、消色感度を減少させることが可能となる。これは、以下のように説明される。なお、フォトクロミック化合物の消色感度は、消色反応の量子収率(φCE)に直接的に依存するものであり、消色感度の変化を扱うことは、ほぼφCEの変化を扱うことにほかならない。以下では、φCEの変化が消色感度の変化であるものとして記述する。
一般に、フルギド系化合物の消色感度は、芳香環の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性及び電子受容性)により大きく異なる。具体的には、芳香環の電子供与性が大きくなると、消色感度が小さくなり、電子供与性が小さくなると、消色感度が大きくなる。そして、特定の構造のフルギド系化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって消色感度は、変化する。つまり、媒体との相互作用により、芳香環の電子的性状が変化するということであり、媒体中の電子受容性部位とフルギド系化合物の芳香環との相互作用の程度が大きくなれば、芳香環の電子供与性が小さくなり、消色感度が大きくなる。逆に、相互作用の程度が小さくなれば、芳香環の電子供与性が大きくなり、消色感度が小さくなる。したがって、本発明の画像形成方法のように、相互作用の程度を制御すると、消色感度を制御することが可能となる。
本発明においては、電子受容性化合物の酸性基とフルギド系化合物の複素芳香環の相互作用の程度を制御する際に、フルギド系化合物が一般式(I)で示す官能基が直接結合した複素芳香環を有することにより、電子的性状を大きく変化させることが可能となり、その結果、有効な消色感度の制御が可能となる。
本発明においては、紫外光を照射することにより、感光層中のフルギド系化合物を発色させる。その後、感光層を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(T)に一時的に加熱することにより、電子受容性化合物がある程度規則的に集合した状態が形成され、電子受容性化合物の酸性基がフルギド系化合物の複素芳香環と密に相互作用した状態で安定化する(以下、この状態を、状態Aという)。これは、消色感度が大きい状態であり、この状態で、可視光を照射することにより、フルギド系化合物を消色させると、少ないエネルギーで、即ち、短時間で消色が行われ、画像が形成される。さらに、この後、感光層を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(T)に一時的に加熱する又は電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に加熱して徐冷することにより、電子受容性化合物の酸性基同士が密に集合し、フルギド系化合物の複素芳香環の相互作用が小さい状態で安定化する(以下、この状態を、状態Bという)。これは、消色感度が小さい状態であり、照明光等による消色が起こりにくく、画像の発色保持性が高い状態である。
感光層をTに一時的に加熱する際に、フルギド系化合物の溶融温度が電子受容性化合物の溶融温度よりも高い場合は、Tは、フルギド系化合物の溶融温度以上の温度であることが好ましい。なお、感光層をTに一時的に加熱した後は、急冷することが好ましい。このとき、徐冷すると、状態Bに変化する可能性が高くなる。これは、状態Aを得るための加熱温度領域よりも、状態Bを得るための加熱温度領域が低温であるためである。したがって、状態Aにある感光層を特定の温度領域に加熱することにより、状態Bにすることができる。感光層をTに一時的に加熱する工程及びTに一時的に加熱する工程における加熱温度は、フルギド系化合物、電子受容性化合物及びバインダーの種類や組み合わせに応じて、適宜設定される。
本発明において、紫外光を照射する際には、水銀ランプ、キセノンランプ等に光学フィルターを組み合わせて所定の波長領域の紫外光を照射してもよいし、LED、LD等の特定の波長領域の光を発光する発光素子を用いてもよい。
また、可視光を照射する際には、白色光の光源に光学フィルターを組み合わせた構成のランプ類を用いてもよいし、LED、LD等の特定の波長領域の光を発光する発光素子を用いてもよい。なお、所定の領域に可視光を照射する方法としては、例えば、微小な領域毎に照射のオン/オフが制御できる発光面を連続して並べて形成した光源アレイと、画像表示媒体を相対的に移動させながら、光源アレイの各発光面の照射のオン/オフを制御する方法が挙げられる。
本発明において、感光層を加熱する加熱手段としては、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーター等のヒーター類を用いることができる。このとき、感光層の加熱温度は、ヒーター類の温度並びに画像表示媒体との近接距離及び時間又は当接圧及び時間等の加熱条件を調整することにより、制御することができる。
本発明において、感光層は、赤外光を吸収する色素をさらに含有することができる。また、支持基体上に、赤外光を吸収する色素を含有する発熱層をさらに有することができる。これにより、赤外光が照射された色素が発熱するため、感光層を加熱することができる。このとき、感光層の加熱温度は、赤外光の照射強度や照射時間を調整することにより、制御することができる。なお、発熱層2は、図1に示すように、感光層3と支持基体1の間に形成してもよいし、図2に示すように、感光層3の上に形成してもよい。
赤外光を吸収する色素としては、700nm以上の波長領域に吸収を持つナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、金属錯体系色素等を用いることができる。
赤外光を照射する光源としては、赤外ランプと、不要な波長領域の光をカットするための光学フィルターを組み合わせた構成の光源を用いてもよいし、LED、LD等の特定の波長領域の光を発光する発光素子を用いてもよい。画像表示媒体の全面に照射する場合は、照射サイズが大きい光源を用いてもよいし、光源素子を並べてアレイ状に構成してもよいし、適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整してもよい。また、画像表示媒体の微小な特定箇所を照射する場合は、同様に適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整すればよい。
本発明において、発熱層は、必要に応じて、感光層と同様のバインダー材料をさらに含有することが好ましい。赤外吸収色素及びバインダー材料の混合比についても、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり、一概には言えないが、色素20〜80重量%及びバインダー材料20〜80重量%であることが好ましい。
感光層及び発熱層を形成する方法としては、印刷法、スピンコート法、ブレード法等の塗布法の他に、蒸着法を用いることができる。感光層及び発熱層の厚さは、それぞれ0.5〜10μmであることが好ましい。
本発明において、感光層は、一般式(I)で示される官能基で置換された複素芳香環を有するフルギド系化合物として、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上のフルギド系化合物を含有することが好ましい。これにより、フルギド系化合物の消色感度を制御して多色画像を表示する、即ち、フルギド系化合物を消色するときに一時的にフルギド系化合物の消色感度を増大させ、フルギド系化合物を消色した後は、消色感度を減少させることが可能となる。なお、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上のフルギド系化合物は、多色画像の表示に用いられる色に対応して設定することができる。
本発明において、感光層は、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上のフルギド系化合物の一種及び電子受容性化合物を含有する層が2層以上積層されている構造であることが好ましい。
2種類以上のフルギド系化合物と電子受容性化合物が、感光層中で、ほぼ均一な状態で存在する場合、電子受容性化合物の酸性基とフルギド系化合物の複素芳香環の相互作用に基づく消色感度の変化挙動は、各フルギド系化合物の複素芳香環の電子的性状により異なることがある。つまり、各フルギド系化合物の芳香環の電子供与性が異なれば、フルギド系化合物毎に消色感度の変化が異なる場合がある。このため、複素芳香環の電子的性状が異なる複数のフルギド系化合物を用いて感光層を形成する際に、各フルギド系化合物の消色感度の変化を同等に調整したい場合又は各フルギド系化合物の消色感度の変化を任意に設定したい場合には、フルギド系化合物毎に適切な相互作用の程度が得られるように電子受容性化合物を選択し、必要に応じて、バインダー材料を用いて、層を形成し、積層することが好ましい。相互作用の程度を考慮してフルギド系化合物と電子受容性化合物を選択する際には、フルギド系化合物の芳香環の電子供与性と電子受容性化合物の酸性基の電子受容性を用いることができる。両者が大きい程、消色感度の変化が大きくなり、両者が小さい程、消色感度の変化が小さくなる。
本発明において、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上のフルギド系化合物は、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満であるフルギド系化合物A、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満であるフルギド系化合物B及び発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満であるフルギド系化合物Cであることが好ましい。フルギド系化合物A、B及びCの発色状態において認識される色は、それぞれ、ほぼイエロー、マゼンタ及びシアンの3原色に相当し、例えば、可視光を照射する際に、各フォトクロミック化合物の消色の程度を調整することにより、各フルギド系化合物により得られる色の濃度を制御することが可能となり、色再現範囲が広い多色画像を表示することが可能となる。また、フルギド系化合物A、B及びCを発色させた後、画像表示媒体の同一の領域に複数の波長領域の可視光を照射する場合には、同時に照射してもよいし、順次別々に照射してもよい。なお、順次別々に照射する場合、照射する波長の順序は、特に限定されない。
フルギド系化合物Aとしては、例えば、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−オキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−3−ジメチルアミノ−4−イソオキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−チアゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−オキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−3−ジメチルアミノ−4−イソオキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−チアゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド等が挙げられる。
フルギド系化合物Bとしては、例えば、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−チアゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−(4−ジメチルアミノ)ブダジエン−1−イル)−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−チアゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−(4−ジメチルアミノ)ブダジエン−1−イル)−4−オキサゾリル]エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド等が挙げられる。
フルギド系化合物Cとしては、例えば、2−[1−(2,5−ジメチル−1−ジメチルアミノ−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(ジメチルアミノ)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2,5−ジメチル−1−ジメチルアミノ−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(ジメチルアミノ)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−p−ジメチルアミノフェニルイミド等が挙げられる。
図3に、本発明の画像表示方法の一例を示す。図3で用いられる画像表示媒体は、支持基体1上に、フォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Aのみを含有する層3A、フォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Bのみを含有する層3B及びフォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Cのみを含有する層3Cが積層されている感光層を有する。なお、図3は、紫外光を照射することにより発色させた層3A、3B及び3Cに、フルギド系化合物A、B及びCの吸収帯に対応した波長域(極大吸収波長A、B及びC付近の波長域)の可視光をそれぞれ所定の領域に照射することにより、フルギド系化合物A、B及びCを選択的に消色する工程を示す。なお、フォトクロミック化合物として、1種類のフルギド系化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体を用いる場合は、発色の色相が1つで、その濃度が異なる、いわゆるモノクロ画像が形成されることになるが、フルギド系化合物の発色の程度を制御して画像を表示する方法は、図3と同様である。
本発明において、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上のフルギド系化合物の一種及び電子受容性化合物を含有する層が2層以上積層されている構造である感光層の積層されている層の間に中間層をさらに有することが好ましい。これにより、各層を積層する過程で、各層の構成要素の混合を抑制することができる。その結果、各層について設定した消色感度の変化を適切に維持した状態で感光層を形成することが可能となる。
中間層は、透明又は着色の程度が小さいことが好ましく、塗布法で感光層を形成する場合は、使用する有機溶媒に対して、耐性を有することが好ましい。中間層の材料としては、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール等を用いることができ、形成方法は、感光層と同様の方法を用いることができる。
図4に、本発明の画像表示媒体の他の例を示す。本画像表示媒体は、感光層として、フォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Aのみを含有する層3A、フォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Bのみを含有する層3B及びフォトクロミック化合物として、フルギド系化合物Cのみを含有する層3Cが積層されており、各層の間に中間層4をさらに有する。
本発明の画像表示媒体は表面に保護層をさらに有することが好ましい。これにより、水分、特定のガス等による、フォトクロミック化合物及び電子受容性化合物の機能の発現に関わる反応に対する悪影響を低減することが可能となる。また、感光層の機械的損傷を抑制し、耐久性を向上させることができる。保護層の材料としては、透明性が高く、硬度が高いことから、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
図5及び図6に、本発明の画像表示媒体の他の例を示す。図5は、図1の画像形成媒体の表面に保護層5を設けた例であり、図6は、図2の画像形成媒体の表面に保護層5を設けた例である。
以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明する。なお、実施例中、部は、重量部を意味する。また、全ての実施例において、キャスト成膜した感光層の膜厚は、2μmであった。
参考例1)
フォトクロミック化合物として、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−チアゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC2という)1部、電子受容性化合物として、融点が約100℃のドコシルホスホン酸9部及びバインダー材料として、ポリスチレン9部に、溶媒として、トルエン添加することにより、感光層塗布液を調製した。次に、感光層塗布液を用いて、石英基板上に、キャスト成膜した。
セラミックヒーターを用いて、キャスト膜を一時的に80℃に加熱し、吸収スペクトルを測定したところ、351nmに極大吸収波長を有し、300nm以上400nm未満に吸収帯が認められ、無色であった。次に、キャスト膜に高圧水銀ランプから取り出した波長が366nmの紫外光を照射したところ、マゼンタに発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は、527nmであった。さらに、セラミックヒーターを用いて、キャスト膜を一時的に130℃に加熱したところ、色相が黄色を帯びて変化し、吸収スペクトルの極大吸収波長は480nmであった。
次に、キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱処理したところ、色相がマゼンタに戻り、吸収スペクトルの極大吸収波長は、527nmであった。
膜厚が188μm、白色のポリエチレンテレフタレートからなる支持基体上に、上記と同様に、感光層をキャスト成膜し、さらに、膜厚2μmのポリビニルアルコールからなる保護層を形成することにより、画像表示媒体を作製した。画像表示媒体は、感光層が無色であり、支持基体が白色であるため、観察者には白色と認識された。
セラミックヒーターを用いて、画像表示媒体の感光層を一時的に80℃に加熱し、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、消色反応を飽和させる過程における、照射時間(照射エネルギー)による反射スペクトルの変化を評価し(図7参照)、ボトム波長における反射率の全変化量の90%の変化をさせるのに必要な照射エネルギーを求めたところ、約6520mJ/cmであった(図8参照)。このようにして求めたエネルギーを消色エネルギーと定義し、消色感度の指標とした。
次に、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、画像表示媒体の感光層を一時的に130℃に加熱した後、中心波長が480nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、同様に消色エネルギーを求めたところ、14mJ/cmであった。
さらに、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、画像表示媒体の感光層を一時的に80℃に加熱した後、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、同様に消色エネルギーを求めたところ、約6520mJ/cmであった。
参考例2)
1部のPC2、赤外光を吸収する色素として、Ni金属錯体PA−1006(三井化学社製)(以下、D1という)1部、ドコシルホスホン酸9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより、感光層塗布液を調製した。次に、感光層塗布液を用いて、石英基板上に、キャスト成膜した。
キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱し、吸収スペクトルを測定したところ、351nmに極大吸収波長を有し、300nm以上400nm未満に吸収帯が認められ、無色であった。次に、キャスト膜に高圧水銀ランプから取り出した波長が366nmの紫外光を照射したところ、マゼンタに発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は、527nmであった。さらに、キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に130℃に加熱したところ、色相が赤味を帯びて変化し、吸収スペクトルの極大吸収波長は、480nmであった。
次に、キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱したところ、色相がマゼンタに戻り、吸収スペクトルの極大吸収波長は、527nmであった。
膜厚が188μm、白色のポリエチレンテレフタレートからなる支持基体上に、上記と同様に、感光層をキャスト成膜し、さらに、膜厚2μmのポリビニルアルコール膜からなる保護層を形成することにより、画像表示媒体を作製した。画像表示媒体は、感光層が無色であり、支持基体が白色であるため、観察者には白色と認識された。
画像表示媒体の感光層に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱し、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、参考例1と同様に、消色エネルギーを求めたところ、約6500mJ/cmであった。
次に、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に130℃に加熱した後、中心波長が480nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、同様に消色エネルギーを求めたところ、14mJ/cmであった。
さらに、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱した後、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照度1mW/cmで照射して、同様に消色エネルギーを求めたところ、約6500mJ/cmであった。
(実施例3)
フォトクロミック化合物として、2−[1−(5−メチル−2−ジメチルアミノ−4−オキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC1という)1部、1部のD1、ドコシルホスホン酸9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより、塗布液を調製した。次に、塗布液を用いて、石英基板上に、キャスト成膜した。2−[1−(2、5−ジメチル−1−ジメチルアミノ−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC3という)についても、PC1と同様に、石英基板上にキャスト成膜した。
キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱して吸収スペクトルを測定したところ、PC1及びPC3を用いて作製したキャスト膜は、それぞれ340nm及び357nmに極大吸収波長を有し、300nm以上400nm未満の範囲に吸収帯が認められ、いずれも無色であった。次に、キャスト膜に高圧水銀ランプから取り出した波長が366nmの紫外光を照射したところ、PC1及びPC3を用いて作成したキャスト膜は、それぞれイエロー及びシアンに発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は、それぞれ460nm及び660nmであった。さらに、キャスト膜に赤外光を照射して、一時的に130℃に加熱したところ、全て色相が変化し、PC1及びPC3を用いて作成したキャスト膜の吸収スペクトルの極大吸収波長は、それぞれ415nm及び605nmであった。
次に、キャスト膜に、赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱処理したところ、色相が元に戻り、PC1及びPC3を用いて作成したキャスト膜の吸収スペクトルの極大吸収波長は、それぞれ460nm及び660nmであった。
1部のPC1、1部のPC2、1部のPC3、1部のD1、ドコシルホスホン酸9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより、感光層塗布液を調製した。次に、感光層塗布液を用いて、膜厚が188μm、白色のポリエチレンテレフタレートからなる支持基体上に、感光層をキャスト成膜し、さらに、膜厚2μmのポリビニルアルコールからなる保護層を形成することにより、画像表示媒体を作製した。画像表示媒体は、感光層が無色であり、支持基体が白色であるため、観察者には白と認識された。
画像表示媒体の感光層に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱し、波長が366nmの紫外光を照射すると、PC1、PC2及びPC3が発色し、黒色を呈した。次に、画像表示媒体の感光層に白色光を照射したところ、再び感光層が無色透明になったため、画像表示媒体は、白色と認識された。
画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長が460nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部が青色を呈した。また、別の一部に、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部が緑色を呈した。さらに、別の一部に、中心波長が660nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC3が選択的に消色され、照射部が赤色を呈した。
画像表示媒体の感光層の可視光未照射部に、上記の3つの波長分布の可視光を用いて、参考例1と同様に、PC1、PC2及びPC3の消色エネルギーを求めたところ、それぞれ6350mJ/cm、6490mJ/cm及び6610mJ/cmであった。
次に、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に130℃に加熱した後、中心波長が420nm、480nm及び600nm、半値幅がそれぞれ10nmの可視光を用いて、同様にPC1、PC2及びPC3の消色エネルギーを求めたところ、それぞれ15mJ/cm、14mJ/cm及び18mJ/cmであった。
さらに、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱した後、同様に消色エネルギーを求めたところ、それぞれ6350mJ/cm、6490mJ/cm及び6610mJ/cmであった。
これにより、3種のフォトクロミック化合物を含有する感光層を有する画像表示媒体においても、赤外光を照射することにより、各フォトクロミック化合物の消色エネルギーを可逆的に大きく変化させることができることが確認された。
(実施例4)
膜厚が188μm、白色のポリエチレンテレフタレートからなる支持基体上に、1部のPC1、1部のD1、p−(オクタデシルチオ)フェノール9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより調製した塗布液を用いて、キャスト成膜した。次に、この上に、ポリビニルアルコールからなる中間層を介して、1部のPC2、1部のD1、2−オクタデシルグルタル酸9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより調製した塗布液を用いて、キャスト成膜した。さらに、この上に、ポリビニルアルコールからなる中間層を介して、その上に、1部のPC3、1部のD1、ドコシルホスホン酸1部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより調製した塗布液を用いて、キャスト成膜し、さらに、膜厚2μmのポリビニルアルコールからなる保護層を形成することにより、画像表示媒体を作製した。画像表示媒体は、積層構造の感光層が無色であり、支持基体が白色であるため、観察者には白と認識された。
画像表示媒体の感光層に赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱し、波長が366nmの紫外光を照射すると、PC1、PC2及びPC3が発色し、黒色を呈した。次に、画像表示媒体の感光層に白色光を照射したところ、再び感光層は無色透明になったため、画像表示媒体は白色と認識された。
画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に、中心波長が460nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部が青色を呈した。また、別の一部に、中心波長が520nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部が緑色を呈した。さらに、別の一部に、中心波長が660nm、半値幅が10nmの可視光を照射したところ、PC3が選択的に消色され、照射部が赤色を呈した。
画像表示媒体の感光層の可視光未照射部において、上記の3つの波長分布の可視光を用いて、参考例1と同様に、PC1、PC2及びPC3の消色エネルギーを求めたところ、それぞれ6410mJ/cm、6530mJ/cm及び6680mJ/cmであった。
次に、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に130℃に加熱処理した後、中心波長が420nm、480nm及び620nm、半値幅がそれぞれ10nmの可視光を用いて、同様にPC1、PC2及びPC3の消色エネルギーを求めたところ、それぞれ17mJ/cm、16mJ/cm及び15mJ/cmであった。
さらに、画像表示媒体の感光層に、波長が366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、赤外光を照射して、一時的に80℃に加熱した後、同様に消色エネルギーを求めたところ、それぞれ6410mJ/cm、6530mJ/cm及び6680mJ/cmであった。
これにより、3種のフォトクロミック化合物に対して、それぞれ異なる電子受容性化合物を用いて、感光層を形成することにより、それぞれの消色感度をほぼ同等にすることが可能となることが確認された。
(実施例5)
膜厚が188μm、白色のポリエチレンテレフタレートからなる支持基体上に、1部のPC1、1部のPC2、1部のPC3、ドコシルホスホン酸9部及びポリスチレン9部に、トルエンを添加することにより調製した塗布液を用いて、膜厚2μmの感光層をキャスト成膜した。この上に、D1及びポリカーボネートを同重量部含有する膜厚2μmの発熱層を形成し、さらに、膜厚2μmのポリビニルアルコールからなる保護層を形成することにより、画像表示媒体を作製した。画像表示媒体は、感光層が無色であり、支持基体が白色であるため、観察者には白と認識された。
実施例3と同様に、画像表示媒体の感光層に、赤外光、可視光及び紫外光を照射したところ、実施例3と同様の結果が得られ、赤外光を照射することにより、各フォトクロミック化合物の消色エネルギーを可逆的に大きく変化させることができることが確認された。
本発明の画像表示媒体の一例を示す図である。 本発明の画像表示媒体の他の例を示す図である。 本発明の画像表示方法の一例を説明する図である。 本発明の画像表示媒体の他の例を示す図である。 本発明の画像表示媒体の他の例を示す図である。 本発明の画像表示媒体の他の例を示す図である。 消色反応を飽和させる過程における反射スペクトルの変化を示す図である。 可視光の照射エネルギーに対する反射率の変化を示す図である。
符号の説明
1 支持基体
2 発熱層
3 感光層
3A フルギド系化合物Aを含有する層
3B フルギド系化合物Bを含有する層
3C フルギド系化合物Cを含有する層
4 中間層
5 保護層

Claims (9)

  1. 支持基体上に感光層が形成されている画像表示媒体において、
    該感光層は、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満である第一のフルギド系化合物、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満である第二のフルギド系化合物、発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満である第三のフルギド系化合物及び電子受容性化合物を含有し、
    該第一のフルギド系化合物、該第二のフルギド系化合物及び該第三のフルギド系化合物は、それぞれ、一般式
    −NR
    (式中、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子又は脂肪族基である。)
    で示される官能基で置換された複素芳香環を有
    該電子受容性化合物は、長鎖構造を有するルイス酸化合物であことを特徴とする画像表示媒体。
  2. 前記感光層は、赤外光を吸収する色素をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体。
  3. 前記支持基体上に、赤外光を吸収する色素を含有する発熱層さらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体。
  4. 前記感光層は、前記第一のフルギド系化合物、前記第二のフルギド系化合物及び前記第三のフルギド系化合物の一種及び前記電子受容性化合物を含有する層が2層以上積層されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像表示媒体。
  5. 前記感光層は、前記第一のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第一の層、前記第二のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第二の層並びに前記第三のフルギド系化合物及び前記電子受容性化合物を含有する第三の層が積層されており、
    該第一の層に含まれる前記電子受容性化合物、該第二の層に含まれる前記電子受容性化合物及び該第三の層に含まれる前記電子受容性化合物は、それぞれ異なることを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体。
  6. 前記積層されている層の間に中間層さらに形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像表示媒体。
  7. 表面に保護層さらに形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像表示媒体。
  8. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像表示媒体の感光層に紫外光を照射することにより、フォトクロミック化合物を発色させる工程
    該感光層を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に加熱する工程
    該発色状態におけるフォトクロミック化合物の極大吸収波長を含有する波長域の可視光を該感光層に照射することにより、該フォトクロミック化合物を選択的に消色させる工程と、
    該感光層を該電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に加熱する工程を有することを特徴とする画像表示方法。
  9. 赤外光を照射することにより、前記感光層を加熱することを特徴とする請求項に記載の画像表示方法。
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