JP4126760B2 - 狭分散性重合体の製造方法、狭分散性重合体及びそれのレジストへの適用 - Google Patents

狭分散性重合体の製造方法、狭分散性重合体及びそれのレジストへの適用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジストの樹脂成分又はその原料として有用な狭分散性重合体の製造方法、それによって得られる狭分散性重合体、及びそれのレジスト分野への適用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、集積回路の高集積化に伴い、クォーターミクロンのパターン形成が要求されるようになっている。かかる要求に対して、64M DRAM及び256M DRAMの製造を可能とするエキシマレーザーリソグラフィーが注目されている。このエキシマレーザーリソグラフィープロセスに適したレジストとして、酸触媒及び化学増幅効果を利用した、いわゆる化学増幅型レジストの採用が進みつつある。化学増幅型レジストは、放射線の照射部で酸発生剤から発生した酸を触媒とする反応により、照射部のアルカリ現像液に対する溶解性を変化させるものであり、これによってポジ型又はネガ型のパターンを与える。
【0003】
このように、化学増幅型レジストは微細なパターンの形成を目的として用いられているが、より一層の微細化が求められている。より微細なパターンが形成しうるようレジスト材料の解像度を高めるためには、使用する樹脂の分子量分布を狭くする、すなわち重量平均分子量(Mw )と数平均分子量(Mn )との比である多分散度(Mw/Mn)を小さくして狭分散性にするのが有効であるということが知られている。そして、分子量の制御が比較的容易な高分子としてスチレン誘導体が注目されており、なかでもポリ(ヒドロキシスチレン)系の樹脂は、耐現像性や耐プラズマ性に優れるため、有望なレジスト材料用ポリマーとして注目され、検討されている。
【0004】
レジスト材料に用いるポリ(ヒドロキシスチレン)系樹脂の分子量分布を狭くするためには、アニオン重合による方法、例えば、特開平 6-32839号公報に記載されるようなアニオンリビング重合による方法が知られている。しかしアニオン重合法は、不活性ガス中や真空中などの無酸素雰囲気下でかつ水分の存在しない状態を必要とし、また有機金属化合物の如き取扱いに危険な開始剤を必要とするなど、重合条件が厳しいものであり、製造コストがラジカル重合に比べて不利である。
【0005】
一方、特開平 6-199916 号公報には、フリーラジカル開始剤とニトロキシド系の安定フリーラジカル作用剤を重合性モノマー化合物と混合し、100〜160℃で加熱することにより、分子量分布の狭いスチレン系重合体を得るフリーラジカル重合法が提案されている。この方法では、高分子の成長末端に安定フリーラジカル作用剤が可逆的に付加することで成長末端を保護し、リビング性を保ちながら重合が進行する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようないわゆるリビングラジカル重合法では、通常のラジカル重合法と異なり、温度を下げると、安定フリーラジカル作用剤が成長末端から脱離しなくなって重合が停止する。したがって、この方法により得られるスチレン系重合体では、その末端に安定フリーラジカル作用剤が結合して残ることになる。この重合体末端に残存する安定フリーラジカル作用剤のために、得られるポリ(ヒドロキシスチレン)の水酸基を酸に不安定な基で修飾した樹脂を化学増幅型レジストに用いた場合、化学増幅作用が阻害され、感度が低下するという問題があった。
【0007】
かかる状況のもとで、本発明の目的は、レジスト用樹脂としての要求性能を満たす狭分散性のポリスチレン類を製造し、提供することにある。本発明の別の目的は、こうして得られる分子量分布の狭いポリスチレン類を用いて、感度及び解像度に優れた化学増幅型のポジ型レジスト組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下式(I)
【0009】
Figure 0004126760
【0010】
(式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル又は全炭素原子数1〜12のアルカノイルを表す)
で示されるスチレン誘導体をフリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下、リビング的にラジカル重合させ、目的とする分子量まで重合が進んだ後に、重合停止剤を加えて重合体末端に結合した前記安定フリーラジカル作用剤を除去することにより、狭分散性のポリスチレン類を製造する方法を提供するものである。
【0011】
化学増幅型レジストでは一般に、水酸基を有するポリスチレン類の水酸基を酸に不安定な基で部分的に保護した形の樹脂が用いられる。そこで本発明はまた、上記のようにして得られた狭分散性ポリスチレン類中の−Rに相当する基の少なくとも一部を脱離させて、それに相当する−O−Rの部分を水酸基とした後、酸に不安定な基でその水酸基を部分的に保護することにより、p−ヒドロキシスチレン単位及び水酸基が酸に不安定な基で保護されたp−ヒドロキシスチレン単位を有し、場合によりさらにp−位に基−O−Rを有するスチレン単位を有する狭分散性共重合体を製造する方法をも提供する。
【0012】
また本発明によれば、上記第一の方法によって得られ、実質的に下式(II)
【0013】
Figure 0004126760
【0014】
(式中、Rは先に定義したとおりである)
で示される構造単位からなり、重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲、及び多分散度が1.1〜1.5の範囲にあり、かつ重合に用いた安定フリーラジカル作用剤が重合体末端に実質的に結合していない狭分散性ポリスチレン類が提供され、さらには、この狭分散性ポリスチレン類中の−Rに相当する基の少なくとも一部を脱離させて、それに相当する−O−Rの部分を水酸基とし、その水酸基を酸に不安定な基で部分的に保護してなる狭分散性共重合体も提供される。
【0015】
本発明はまた、上記狭分散性共重合体のレジスト用樹脂への使用にも向けられており、以下の三成分を必須に含有する化学増幅型のポジ型レジスト組成物をも提供するものである。
【0016】
(A)前記狭分散性共重合体を含有し、それ自身ではアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂、(B)酸発生剤、及び(C)これらを溶解する有機溶剤。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。 本発明では、前記式(I)で示されるスチレン誘導体をフリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下、リビング的にラジカル重合させることにより、狭分散性のポリスチレン類が製造される。重合原料となるスチレン誘導体モノマーを表す式(I)において、Rは炭素原子数1〜12のアルキル又は全炭素原子数1〜12のアルカノイルである。Rで表されるアルキルは、炭素原子数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよいが、上記定義のなかでも、炭素原子数3以上の、それも分岐したアルキルであるのが、とりわけ4級炭素で式中の酸素原子に結合するアルキルであるのが有利である。適当なアルキルとして、イソプロピル、 sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、tert−オクチルなどを挙げることができる。また、Rで表されるアルカノイルも、全炭素原子数4以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。具体的なアルカノイルとして、アセチル、プロパノイルなどを挙げることができる。なかでもRとしては、tert−ブチルが好ましい。
【0018】
式(I)で示されるスチレン誘導体は、フリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下に重合される。ここで用いられるフリーラジカル開始剤は、分解してフリーラジカルを生ずる化合物であればよく、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド及びジ−tert−ブチルパーオキサイドのような過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなアゾ化合物などが使用できる。
【0019】
また、フリーラジカル開始剤と併用される含窒素安定フリーラジカル作用剤とは、分子内に窒素原子を含有し、かつフリーラジカルの形で安定に存在する化合物である。このように安定に存在するフリーラジカルとして具体的には、窒素原子部分でラジカルになったものや窒素原子に結合する他の原子の部分でラジカルになったもの、より具体的には、それぞれ次式に相当するヒドラジニルラジカルやニトロキシドラジカルが挙げられる。
【0020】
Figure 0004126760
【0021】
例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(市販品名“TEMPO” )、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−3−イルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ、フェニル tert−ブチル ニトロキシド及びジ−tert−ブチル ニトロキシドのようなニトロキシド類や、2,2−ジ(4−tert−オクチルフェニル)−1−ピクリルヒドラジルなどが、安定フリーラジカル作用剤として使用できる。
【0022】
式(I)のスチレン誘導体を重合させるにあたっては、安定フリーラジカル作用剤/フリーラジカル開始剤のモル比が0.7〜2.0の範囲となるように用いるのが好ましく、さらには、そのモル比が1.0〜1.5の範囲となるようにするのがより好ましい。
【0023】
このようなフリーラジカル開始剤と含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下で、前記式(I)のスチレン誘導体を重合させる。フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤を存在させることにより、フリーラジカル開始剤がまず式(I)のスチレン誘導体に付加して成長鎖ができ、さらにそこに安定フリーラジカル作用剤が付加し、その鎖が一時的ではあるが可逆的に停止され、付加した安定フリーラジカル作用剤が再度脱離したときに鎖の成長が進むというように、いわゆるリビング的にラジカル重合が進行することになる。重合は、公知の各種重合法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などにより行うことができる。重合温度は、一般には100〜180℃程度の範囲、好ましくは110〜140℃程度の範囲から選択される。反応時間は、目的とする重合度又は分子量によっても変化するが、一般には5〜50時間程度である。式(I)のスチレン誘導体が液体の場合、例えばp−tert−ブトキシスチレンの場合は、それを用いて塊状重合を行えば、反応後の重合体が原料のスチレン誘導体に溶けた状態で得られる。
【0024】
本発明では、以上のようにして重合反応を行い、目的とする分子量まで重合が進んだ後に、重合停止剤を加えて重合体末端に結合したフリーラジカル作用剤を除去する。ここで用いる重合停止剤は、通常のラジカル重合の停止剤として知られているものであることができ、例えば、ヒドロキノン系の化合物などを挙げることができる。具体的には、ヒドロキノン、2−tert−ブチルヒドロキノンなどが挙げられる。重合停止剤は、重合に用いた安定フリーラジカル作用剤に対し、好ましくは0.5〜20モル倍の範囲で、さらに好ましくは5〜15モル倍の範囲で、反応を停止させようとする重合系に添加される。
【0025】
この重合停止剤の添加により重合反応を停止させるのであるが、リビングラジカル重合の際に重合体末端に可逆的に付加して重合体の成長に関与していた安定フリーラジカル作用剤が、この重合停止剤の添加により恒久的に脱離し、重合反応が停止する。 この際、温度が低いと、重合停止剤を添加しなくても重合反応が停止するが、重合体末端に付加した安定フリーラジカル作用剤が脱離しにくくなるので、重合温度付近の温度に保ったまま、重合停止剤を添加するのが好ましい。また、モノマーの添加率が低い間は、重合停止剤の添加により安定フリーラジカル作用剤が速やかに脱離するが、モノマーの転化率が上がると、安定フリーラジカル作用剤の脱離にはある程度の時間を要する。そこで、安定フリーラジカル作用剤の脱離を確実にするためには、重合温度付近、特に重合停止剤を添加したときの温度付近で、さらに0.2〜20時間程度保持するのが有利である。その後、例えば適当な貧溶媒に反応マスを注いで生成物を沈殿させるなど、適宜な後処理操作を施して、ポリスチレン類を単離することができる。得られるポリスチレン類は、実質的に前記式(II)の構造単位からなる。
【0026】
このようにリビング的なラジカル重合及びその後の重合停止剤の添加により、簡便な操作で、分子量分布の狭い(狭分散性の)ポリスチレン類を得ることができる。得られるポリスチレン類の多分散度(Mw/Mn)は、通常1.1〜1.5の範囲にある。重合反応の条件を選択することにより、例えば、式(I)のスチレン誘導体に対するフリーラジカル開始剤のモル比を調整することにより、あるいは反応時間を調整することにより、得られるポリスチレン類の分子量は適宜制御できる。通常は、重量平均分子量(Mw )が3,000〜100,000程度の範囲のポリスチレン類が得られる。
【0027】
レジスト用の樹脂とするためには、こうして得られたポリスチレン類から、前記式(II)中の−Rに相当する基の一部又は全部を脱離させて、それに相当する−O−Rの部分を水酸基とした後、酸に不安定な基でその水酸基を部分的に保護する。式(II)中の−Rに相当する基の一部又は全部を脱離させる操作は、公知の方法、例えば、前記特開平 6-32839号公報に記載の方法に準じて行うことができる。具体的には、上記のポリスチレン類を適当な溶剤に溶解させた後、酸を加えて処理することにより、式(II)中の−Rに相当する基を脱離させ、相当する−O−Rの部分を水酸基にすることができる。溶剤としては、例えば、2−プロパノール、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、トルエンなどが、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。水と混和する溶剤であれば、水との混合溶剤の形で用いることもできる。また酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、p−トルエンスルホン酸などが用いられる。
【0028】
ここで、式(I)中の−O−Rに相当する基を一部残す場合でも、この基を含む単位が、重合体全体のうちの30モル%以下とするのが好ましい。レジスト性能の面からいうと、特にRがtert−ブチルである場合は、p−tert−ブトキシスチレン単位が重合体全体のうちの5〜20モル%の範囲で残るようにするのが好ましい。−O−Rに相当する基の残存率は、上記脱離反応の時間を制御することにより、調整できる。すなわち、上記の脱離反応において、所定の反応時間毎に−O−Rに相当する基の存在割合を核磁気共鳴(NMR)測定により求め、反応時間に対する−O−Rに相当する基の残存率をプロットして、−O−Rに相当する基の割合が目的の値に達するまでの反応時間を予測し、その時間に達したときをもって脱離反応を終了させることにより、目的とする割合で−O−Rに相当する基が残存した重合体を得ることができる。
【0029】
このようにして、分子量分布の狭いポリ(ヒドロキシスチレン)又はその水酸基の一部がアルキルエーテル化若しくはアルカン酸エステル化された重合体が得られるが、この重合体の水酸基をさらに、酸に不安定な基で部分的に保護することにより、レジストに好適な樹脂となる。化学増幅型のポジ型レジスト組成物の主体となる樹脂は、それ自体ではアルカリに対して不溶性又は難溶性であるが、酸の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものである。上記のリビングラジカル重合及びその後の脱離反応で得られた重合体のフェノール性水酸基の一部を、アルカリ現像液に対しては溶解抑止能を持ち、酸に対しては不安定な基で保護することにより、このような働きをする樹脂となる。
【0030】
ここで導入される、アルカリ現像液に対して溶解抑止能を持つが、酸に対して不安定な基は、公知の各種保護基であることができる。例えば、tert−ブトキシカルボニルやtert−ブトキシカルボニルメチル、また1−エトキシエチル、1−メトキシエチル、1−プロポキシエチル、1−イソプロポキシエチル、1−tert−ブトキシエチル、1−イソブトキシエチル、1−ブトキシエチル、1−ペンチロキシエチル、1−シクロペンチロキシエチル、1−ヘキシロキシエチル、1−シクロヘキシロキシエチル、1−ヘプチロキシエチル、1−シクロヘプチロキシエチル、1−メトキシプロピル及び1−メトキシ−1−メチルエチルのような1−アルコキシアルキル基、テトラヒドロ−2−ピラニル、6−メトキシテトラヒドロ−2−ピラニル、6−エトキシテトラヒドロ−2−ピラニル、テトラヒドロ−2−フリル、5−メトキシテトラヒドロ−2−フリル及び5−エトキシテトラヒドロ−2−フリルのような環状飽和エーテルの2−残基などが挙げられ、これらの基がフェノール性水酸基の水素に置換することになる。これらの保護基のなかでも、フェノール性水酸基の酸素原子との間でいわゆるアセタール型の結合を形成する基、すなわち1−アルコキシアルキル基又は環状飽和エーテルの2−残基が、とりわけ1−アルコキシアルキル基が好ましい。
【0031】
このような酸に不安定な基は、公知の保護基導入反応により導入される。例えば、二炭酸ジ−tert−ブチルを反応させることにより、水酸基部分の水素をtert−ブトキシカルボニルで置換することができるし、クロロ酢酸tert−ブチルを反応させることにより、水酸基部分の水素をtert−ブトキシカルボニルメチルで置換することができる。また、下式(III)
【0032】
Figure 0004126760
【0033】
(式中、R1 は水素又は炭素原子数1〜4のアルキルを表し、R2 は炭素原子数1〜6のアルキル若しくは炭素原子数5〜7のシクロアルキルを表し、R3 及びR4 は互いに独立に水素若しくは炭素原子数1〜3のアルキルを表すか、 又はR2 とR3 が一緒になってアルキレン鎖を形成し、このアルキレン鎖は炭素原子数1〜4のアルコキシで置換されていてもよい)
で示される不飽和エーテル化合物を反応させることにより、水酸基部分の水素を1−アルコキシアルキル基又は環状飽和エーテルの2−残基で置換することができる。
【0034】
前記樹脂のフェノール性水酸基にこれらの保護基を導入するにあたり、水酸基の水素が保護基で置換されたものの割合(保護基導入率)は、保護基導入前の水酸基と基−O−Rの合計を基準に、一般には10〜50%の範囲となるようにするのが好ましい。すなわち、酸に不安定な基で保護されたp−ヒドロキシスチレン単位が、樹脂全体のうちの10〜50モル%の範囲で存在するようにするのが好ましい。
【0035】
このように式(I)のスチレン誘導体から出発して、リビングラジカル重合反応、停止反応、脱離反応及び別の保護基導入反応を施すことにより、化学増幅型ポジ型レジストの樹脂成分として好適で、かつ狭分散性のポリ(p−ヒドロキシスチレン)系の樹脂が得られる。脱離反応及び引き続く保護基導入反応で重合体の重合度自体が変化することはほとんどない。本発明のポジ型レジスト組成物では、樹脂成分として、以上のようにして得られる狭分散性のポリ(p−ヒドロキシスチレン)系の樹脂を用いるが、この樹脂成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、これ以外の樹脂を含んでいても差し支えない。
【0036】
また、このレジスト組成物は酸発生剤を含有し、ここでいう酸発生剤とは、その物質自体に、又はその物質を含むレジスト組成物に、放射線を照射することによって、酸を発生する化合物である。もちろん、2種以上の化合物の混合物として用いることもできる。例えば、オニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物、ジスルホン系化合物、オルトキノンジアジド化合物、スルホン酸系化合物などが挙げられる。本発明においては、酸発生剤として、ジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物、ジスルホン系化合物、スルホン酸系化合物などが好ましく用いられる。酸発生剤となるスルホン酸系化合物としては、アルキルスルホン酸のエステル、ハロアルキルスルホン酸のエステル、アリールスルホン酸のエステル、カンファースルホン酸のエステルなどを挙げることができる。また、これらのエステルを構成するアルコール成分としては、ピロガロール、2−又は4−ニトロベンジルアルコール、2,6−ジニトロベンジルアルコール、N−ヒドロキシイミド化合物、オキシム系化合物などが挙げられる。
【0037】
ジアゾメタンジスルホニル骨格を有する化合物には、例えば、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタンなどが包含される。ジスルホン系化合物には、例えば、ジフェニル ジスルホン、ジ−p−トリル ジスルホン、フェニル p−トリル ジスルホン、フェニル p−メトキシフェニル ジスルホンなどが包含される。またスルホン酸系化合物には、例えば、N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(メチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、α−(p−トリルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリルなどが包含される。
【0038】
また、一般に化学増幅型のポジ型レジストにおいては、有機塩基化合物をクェンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良できることが知られており、本発明においても、このような有機塩基化合物を配合するのが好ましい。
【0039】
ここで用いる有機塩基化合物の具体例としては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−、3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミンのような1級アミン類;ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン及びジフェニルアミンのような2級アミン類;トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン及びN,N−ジメチルアニリンのような3級アミン類;テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのような4級アンモニウム塩;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンのようなジアミン類;イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール及びビピリジンのような不飽和環状アミン類などが挙げられる。
【0040】
これらの有機塩基化合物は、それぞれ単独で、又は2種類以上混合して使用することができる。本発明においては特に、3級アミン及び/又は4級アンモニウム塩の使用が好ましい。また有機塩基化合物のなかでは、基板上に形成されたレジスト膜のプリベーク後も、このレジスト膜中に残存して効果を発揮するよう、プリベークの温度で蒸発しないもの、具体的には150℃以上の沸点を有するものが好ましい。
【0041】
ポジ型レジスト組成物の好ましい組成比は、この組成物中の全固形分重量を基準に、樹脂成分が50〜98重量%、より好ましくは75〜98重量%の範囲、酸発生剤が0.05〜20重量%の範囲である。また有機塩基化合物を配合する場合は、0.001〜10重量%の範囲で用いるのが好ましい。本発明のレジスト組成物は、必要に応じてさらに、溶解抑止剤、増感剤、染料、接着性改良剤、保水剤など、この分野で慣用されている各種の添加物を含有することもできる。化学増幅型レジストで酸を発生させるには、水分の存在が必要になるが、ポリプロピレングリコールなどの保水剤を少量存在させるにより、酸を効率的に発生させることができる。これらの添加物を用いる場合、それらの量は合計で、組成物中の全固型分重量に対して20重量%程度までである。
【0042】
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記各成分を有機溶剤に混合、溶解したものである。この際、通常は全固形分濃度が10〜50重量%となるように有機溶剤が用いられる。この有機溶剤は、上記各成分を溶解するものであればよく、この分野で通常用いられているものであることができる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールモノ又はジエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、キシレンのような芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
このポジ型レジスト組成物をシリコンウェハなどの基体上に塗布してレジスト膜を形成し、その後通常、プリベーク、パターニング露光、露光部で発生した酸を拡散させ、樹脂の保護基を脱離させるとともに酸を再生成させるためのポストエキスポジャーベーク、アルカリ現像液による現像の各工程を経て、パターンが形成される。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。 例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、重量平均分子量及び多分散度は、特記ないかぎり、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準品として求めた値である。
【0045】
合成例1〔ポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製造〕
p−tert−ブトキシスチレン40g、ベンゾイルパーオキサイド0.183g及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ0.154gを反応器に仕込み、窒素置換した後、130℃で5時間重合反応を行ったところ、この時点における重合体の重量平均分子量は約6,000であった。この反応系内にヒドロキノン1.083gを添加し、同温度でさらに1時間保持した。この時点における重合体の重量平均分子量は約6,000であった。ヒドロキノンの添加により速やかに重合が停止しているので、重合体末端に結合した2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシは除去されたものと判断される。
【0046】
合成例2〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン600g、4,4′−アゾビスイソ酪酸ジメチル3.66g及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ3.23gを反応器に仕込み、窒素置換した後、130℃で25時間重合反応を行ったところ、この時点における重合体の重量平均分子量は約25,000であった。この反応系内にヒドロキノン22.74gを添加し、同温度でさらに2時間保持した。その後、この溶液をメタノール中に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥して、357.6gのポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離した。得られた重合体の重量平均分子量は約25,000、多分散度は1.20であった。
【0047】
合成例3〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン600g、ベンゾイルパーオキサイド2.75g及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ2.31gを反応器に仕込み、窒素置換した後、130℃で8時間重合反応を行ったところ、この時点における重合体の重量平均分子量は約25,000であった。この反応系内にヒドロキノン16.24gを添加し、同温度でさらに2時間保持した。その後、この溶液をメタノール中に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥して、236.6gのポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離した。得られた重合体の重量平均分子量は約25,000、多分散度は1.20であった。
【0048】
合成例4〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン600g、4,4′−アゾビスイソ酪酸ジメチル3.53g及び4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ3.47gを反応器に仕込み、窒素置換した後、130℃で24時間重合反応を行ったところ、この時点における重合体の重量平均分子量は約25,000であった。 この反応系内にヒドロキノン21.93gを添加し、135℃でさらに15時間保持した。 その後、この溶液をメタノール中に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥して、311.7gのポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離した。得られた重合体の重量平均分子量は約25,000、多分散度は1.20であった。
【0049】
比較合成例1〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン、ベンゾイルパーオキサイド及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシの量をそれぞれ80g、0.366g及び0.307gとした以外は、合成例1と同様にして130℃で5時間の重合反応を行った。この時点における重合体の重量平均分子量は約6,000であった。その後ヒドロキノンを添加せずに、同温度でさらに2時間保持した。この時点における重合体の重量平均分子量は約14,000であった。時間経過により分子量が大きくなっており、重合体末端への2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシの付加及び脱離が可逆的に起こっているものと判断される。
【0050】
比較合成例2〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン、4,4′−アゾビスイソ酪酸ジメチル及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシの量をそれぞれ2,700g、15.87g及び14.01gとした以外は、合成例2と同様にして、130℃で21時間重合反応を行った。この時点における重合体の重量平均分子量は、約24,000であった。その後、この溶液をメタノール中に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥して、1,290gのポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離した。得られた重合体の重量平均分子量は約24,000、多分散度は1.22であった。
【0051】
比較合成例3〔同上〕
p−tert−ブトキシスチレン、ベンゾイルパーオキサイド及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシの量をそれぞれ880g、4.03g及び3.38gとした以外は、合成例3と同様にして130℃で8時間の重合反応を行った。この時点における重合体の重量平均分子量は約25,000であった。その後、この溶液をメタノール中に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥して、283.2gのポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離した。得られた重合体の重量平均分子量は約25,000、多分散度は1.20であった。
【0052】
合成例5〔tert−ブチル基の脱離〕
合成例3で得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)110gを2−プロパノール550gに加えて溶解させた後、70℃で少量の濃塩酸を添加して16時間攪拌し、次に溶液を水中に注いで生成物を沈殿させ、分離した。得られた粗結晶を酢酸エチルに溶解し、イオン交換水を加えて分液し、洗浄した。溶媒を留去して濃縮した後、アセトンを加え、この溶液をイオン交換水に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥することにより、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)72gを得た。
【0053】
合成例6〔1−エトキシエチル化〕
合成例5で得られたポリ(p−ヒドロキシスチレン)36gとp−トルエンスルホン酸1水和物0.017gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート180gに溶解し、そこへエチルビニルエーテル10.2gを滴下した。25℃で3時間撹拌後、メチルイソブチルケトン及びイオン交換水を加えて、分液した。得られた有機層をイオン交換水と混合し、分液する操作を3回行って洗浄した。この有機層から溶媒を留去して濃縮した後、プロピレングリコールモノメチルアセテートを加えてさらに溶媒を留去することにより溶媒置換し、水酸基が部分的に1−エトキシエチルエーテル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)の溶液134gを得た。
【0054】
この樹脂溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、30.7%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率(水酸基及び1−エトキシエトキシ基の合計に対する1−エトキシエトキシ基の割合)をNMR測定により求めたところ、48.0%であった。
【0055】
合成例7〔同上〕
エチルビニルエーテルの量を6.5gとした以外は、合成例6と同様の操作を行い、水酸基が部分的に1−エトキシエチルエーテル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)の溶液142gを得た。この樹脂溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、26.4%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率をNMR測定により求めたところ、30.5%であった。
【0056】
比較合成例4〔tert−ブチル基の脱離〕
比較合成例3で得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)75.2gを2−プロパノール376gに加えて溶解させ、以後合成例5と同様の操作を行って、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)50gを得た。
【0057】
比較合成例5〔1−エトキシエチル化〕
比較合成例4で得られたポリ(p−ヒドロキシスチレン)25gを用い、エチルビニルエーテルの量を7.5gに変更した以外は、合成例6と同様の操作を行って、水酸基が部分的に1−エトキシエチルエーテル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)の溶液98.3gを得た。この樹脂溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、29.9%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率をNMR測定により求めたところ、40.0%であった。
【0058】
合成例8〔tert−ブチル基の脱離〕
合成例2で得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)120.9gを2−プロパノール605gに加えて溶解させた後、65℃で少量の濃塩酸を添加して5時間攪拌し、次に溶液を水中に注いで生成物を沈殿させ、分離した。得られた粗結晶を酢酸エチルに溶解し、イオン交換水を加えて分液し、洗浄した。溶媒を留去して濃縮した後、アセトンを加え、この溶液をイオン交換水に注いで生成物を沈殿させ、分離、乾燥することにより、部分的にtert−ブトキシ基が残存したポリ(p−ヒドロキシスチレン)81.1gを得た。この樹脂のtert−ブトキシ化率をNMR測定により求めたところ、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位であった。
【0059】
合成例9〔1−エトキシエチル化〕
合成例8で得られた樹脂28gとp−トルエンスルホン酸1水和物0.013gをメチルイソブチルケトン150gに溶解し、そこへエチルビニルエーテル6.4gを滴下した。25℃で3時間撹拌後、イオン交換水を加えて分液した。得られた有機層をイオン交換水と混合し、分液する操作を3回行って洗浄した。この有機層から溶媒を留去して濃縮した後、プロピレングリコールモノメチルアセテートを加えてさらに溶媒を留去することにより溶媒置換し、樹脂溶液107gを得た。
【0060】
この溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、29.4%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率(水酸基、tert−ブトキシ基及び1−エトキシエトキシ基の合計に対する1−エトキシエトキシ基の割合)をNMR測定により求めたところ、35.5%であった。したがってこの樹脂は、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8モル%、p−1−エトキシエトキシスチレン単位が35.5モル%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位からなるものである。
【0061】
合成例10〔同上〕
エチルビニルエーテルの量を3.7gとした以外は、合成例9と同様の操作を行って、樹脂溶液78gを得た。この溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、37.2%であった。また樹脂中の1−エトキシエチル化率をNMR測定により求めたところ、18.5%であった。したがってこの樹脂は、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8モル%、p−1−エトキシエトキシスチレン単位が18.5モル%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位からなるものである。
【0062】
比較合成例6〔tert−ブチル基の脱離〕
比較合成例2で得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)1,290gを2−プロパノール6,450gに加えて溶解させた後、65℃で少量の濃塩酸を添加して7時間攪拌し、溶液を水中に注いで沈殿させ、分離した。以後、合成例8と同様の後処理を施して、部分的にtert−ブトキシ基が残存したポリ(p−ヒドロキシスチレン)832gを得た。この樹脂のtert−ブトキシ化率をNMR測定により求めたところ、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位であった。
【0063】
比較合成例7〔1−エトキシエチル化〕
比較合成例6で得られた樹脂414.6gを用い、エチルビニルエーテルの量を90.4gに変更した以外は、合成例9と同様の操作を行い、樹脂溶液1,628gを得た。 この樹脂溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、30.6%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率をNMR測定により求めたところ、30.6%であった。したがってこの樹脂は、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8モル%、p−1−エトキシエトキシスチレン単位が30.6モル%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位からなるものである。
【0064】
比較合成例8〔同上〕
比較合成例6で得られた樹脂414.6gを用い、エチルビニルエーテルの量を54.4gに変更した以外は、合成例9と同様の操作を行い、樹脂溶液1,530gを得た。 この樹脂溶液の固形分濃度を加熱質量減量法により求めたところ、31.8%であった。また、樹脂中の1−エトキシエチル化率をNMR測定により求めたところ、14.9%であった。したがってこの樹脂は、p−tert−ブトキシスチレン単位が9.8モル%、p−1−エトキシエトキシスチレン単位が14.9モル%、残りがp−ヒドロキシスチレン単位からなるものである。
【0065】
適用例1
合成例6及び7で得られた樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を、樹脂の1−エトキシエチル化率が40%となるように調合したうえで、以下の各成分を混合して溶解し、フッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液とした。
【0066】
Figure 0004126760
【0067】
常法により洗浄したシリコンウェハーに、スピンコーターを用いて上記レジスト液を回転塗布し、次にこのシリコンウェハーをホットプレート上にて90℃で90秒間プリベークして、膜厚が0.52μmのレジスト膜を形成させた。プリベーク後の塗膜に、パターンを有するクロムマスクを介して、露光波長248nmのKrFエキシマレーザーステッパー〔(株)ニコン製の“NSR-2205 EX12B”、NA=0.55、σ=0.8 〕を用い、露光量を段階的に変化させて露光した。露光後のウェハーを、ホットプレート上にて105℃で90秒間加熱した。これを、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液で現像して、ポジ型パターンを得た。得られたポジ型パターンについて、以下のようにして評価し、それぞれの結果を表1に示した。
【0068】
感度: 0.25μmラインアンドスペースパターンの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、ベストフォーカスにおけるラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)で表示した。
【0069】
解像度: 実効感度の露光量において膜減りなく分離する最小のラインアンドスペースの幅を走査型電子顕微鏡で測定した。
【0070】
比較例1
樹脂成分を、比較合成例5で得られた1−エトキシエチル化率が40%の樹脂に変えた以外は、適用例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
適用例2
合成例9及び10で得られた樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を、樹脂の1−エトキシエチル化率が22%となるように調合したうえで、以下の各成分を混合溶解し、フッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液とした。
【0072】
Figure 0004126760
【0073】
このレジスト液を適用例1と同様にしてシリコンウェハーに回転塗布し、プリベークの温度を100℃、露光後ベークの温度を110℃とした以外は、適用例1と同様に処理し、同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
樹脂成分を、比較合成例7及び8で得られた樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液から樹脂の1−エトキシエチル化率が22%となるように調合したものに変えた以外は、適用例2と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
Figure 0004126760
【0076】
表1に示すとおり、安定フリーラジカル作用剤である2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシを本発明に従って重合末端から除去した狭分散性重合体を用いた適用例1及び2では、比較例に比べて感度が著しく向上する。また、比較例1及び2では、パターントップに丸みが観察されたのに対し、適用例1及び2では、パターントップの平坦部が明瞭に観察された。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、いわゆるリビングラジカル重合に用いた安定フリーラジカル作用剤が重合体末端に残存していない狭分散性ポリスチレン類が製造できる。また本発明の方法によれば、分子量を任意に制御することができるので、用途に合った物性を有するポリスチレン類を製造することができる。そして、このポリスチレン類の官能基を適宜修飾することにより、安定フリーラジカル作用剤が結合しておらず、レジスト用の樹脂として好適な狭分散性のポリ(p−ヒドロキシスチレン)系共重合体が製造できる。この共重合体は、分子量分布が狭いので、高解像度のレジスト材料用樹脂としての要求特性を満たし、また、重合体末端に安定フリーラジカル作用剤が結合していないので、化学増幅作用を阻害せず、特に化学増幅型レジストの樹脂として好適である。したがって、この共重合体を樹脂成分とした化学増幅型レジストは、感度及び解像度に優れ、高精度の微細なレジストパターンを与える。

Claims (11)

  1. 下式(I)
    Figure 0004126760
    (式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル又は全炭素原子数1〜12のアルカノイルを表す)で示されるスチレン誘導体をフリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下、リビング的にラジカル重合させ、目的とする分子量まで重合が進んだ後に、重合停止剤を加えて重合体末端に結合した前記安定フリーラジカル作用剤を除去することを特徴とする狭分散性ポリスチレン類の製造方法。
  2. 重合停止剤がヒドロキノンである請求項1記載の方法。
  3. 下式(I)
    Figure 0004126760
    (式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル又は全炭素原子数1〜12のアルカノイルを表す)で示されるスチレン誘導体をフリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下、リビング的にラジカル重合させ、目的とする分子量まで重合が進んだ後に、重合停止剤を加えて重合体末端に結合した前記安定フリーラジカル作用剤を除去し、次いで得られるポリスチレン類中の−Rに相当する基の少なくとも一部を脱離させて、それに相当する−O−Rの部分を水酸基とした後、酸に不安定な基で該水酸基を部分的に保護することを特徴とする狭分散性共重合体の製造方法。
  4. 下式(I)
    Figure 0004126760
    (式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル又は全炭素原子数1〜12のアルカノイルを表す)で示されるスチレン誘導体をフリーラジカル開始剤及び含窒素安定フリーラジカル作用剤の存在下、リビング的にラジカル重合させることによって得られ、下式(II)
    Figure 0004126760
    (式中、Rは先に定義したとおりである)で示される構造単位からなり、重量平均分子量が3,000〜100,000の範囲、及び多分散度が1.1〜1.5の範囲にあり、かつ重合に用いた安定フリーラジカル作用剤が重合体末端に実質的に結合していないことを特徴とする狭分散性ポリスチレン類。
  5. ポリ(p−tert−ブトキシスチレン)である請求項4記載のポリスチレン類。
  6. 請求項4又は5記載の狭分散性ポリスチレン類中の−Rに相当する基の少なくとも一部を脱離させて、それに相当する−O−Rの部分を水酸基とし、該水酸基を酸に不安定な基で部分的に保護してなることを特徴とする狭分散性共重合体。
  7. 水酸基を保護する酸に不安定な基が、tert−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルメチル、1−アルコキシアルキル及び環状飽和エーテルの2−残基から選ばれる請求項6記載の共重合体。
  8. p−位に基−O−Rを有するスチレン単位0〜30モル%、水酸基が酸に不安定な基で保護されたp−ヒドロキシスチレン単位10〜50モル%、保護されていないp−ヒドロキシスチレン単位残部で構成される請求項6又は7記載の共重合体。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の共重合体からなるレジスト用樹脂。
  10. (A)請求項6〜8のいずれかに記載の狭分散性共重合体を含有し、それ自身ではアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂、(B)酸発生剤、及び(C)これらを溶解する有機溶剤を含有することを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト組成物。
  11. さらに有機塩基化合物を含有する請求項10記載の組成物。
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