JP4103347B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子写真方式や静電記録方式等を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの乾式トナーを利用した画像形成装置およびこれに用いる定着装置に係り、より詳細には、像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写するとともに、その転写の際にトナー像を記録媒体上に定着する転写定着同時方式を採用した画像形成装置、および記録媒体上の未定着トナー像を加熱・加圧することにより当該記録媒体上に定着する定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の電子写真方式や静電記録方式等を用いた複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光体ドラム上に静電潜像を形成し、この感光体ドラム上に形成された静電潜像を、乾式トナーで現像した後、このトナー像を静電的に記録媒体上に転写し、加熱および加圧することにより定着する画像形成方法が広く用いられている。このような画像形成方法においては、記録媒体である紙表面の凹凸のため、紙と感光体ドラムが完全に密着せず、両者の間に不均一なギャップが生じて、転写電界が乱れたり、トナー同士のクーロン反発力を招いたりするために画像が乱れるなどの問題がある。
【0003】
この問題に対して、感光体ドラム上に形成されたトナー像を直接記録媒体上に転写するのではなく、感光体ドラム上に形成された色の異なる複数のトナー像を、一旦、中間転写体上に互いに重ね合わせた状態で静電的に転写し、さらに中間転写体上で多色の多重トナー像を溶融した後、その溶融した多重トナー像を記録媒体上に転写すると同時に定着し、カラーコピーを得るように構成した画像形成方法や、無端ベルト状に形成された感光体上のトナー像を溶融し、記録媒体上に転写定着して画像を得るようにした画像形成方法が考案されている。これらの方法では、記録媒体へのトナー像の転写を非静電的に行うので、前述したような画像品質の劣化が生じにくくなるという利点を有している。
【0004】
また、このような画像形成方法においては、USP第2990278号公報、特開平5−19642号公報、特開平5−107950号公報、特開平5−249798号公報等に開示されているように、中間転写体や感光体からのトナーの記録媒体への画像の転移を良好なものとするため、密着加熱および加圧後、中間転写体または感光体と、トナーおよび記録媒体を重ね合わせたまま、トナーを冷却固化し、その後中間転写体または感光体とトナーおよび記録媒体を剥離することが考案されている。このような方法では、トナー間の凝集力がトナーと記録媒体との接着力より大きくなった後、トナーと中間転写体または感光体とを剥離するので、トナーの一部が中間転写体または感光体上に残るいわゆるオフセットを防止することができ、中間転写体または感光体にトナーの剥離を補助するためのオイルを塗布する必要がなくなるので、オイルレス化が可能となり、またトナーの転写効率が高いため色バランスが良好となる。さらに、トナーが中間転写体または感光体の表面に沿って固化するため、平滑な中間転写体または感光体を用いることによって、中間転写体または感光体の表面にならった高光沢かつ均質な光沢感を持ち、しかも微細な気泡等が混入するのを抑制でき、トナーの透明性に優れた、高級感のある高画質な画像を得ることができる。
【0005】
このような高画質な画像を得るためには、転写定着後の中間転写体および記録媒体を密着状態に維持したまま冷却しなければならない。もし、トナーが冷却固化する前に中間転写体とトナーが剥離してしまうと、トナーが中間転写体または感光体の表面に沿って固化せずにその表面は凹凸となり、光沢が低くなる。そのため、剥離しなかった部分とに光沢の差を生じ、画像全体として光沢むらができるため、画質が著しく悪化する。
【0006】
特に、記録媒体が印刷用の両面塗工紙のように通気性が低い、すなわち透気度が高い用紙などの場合には、中間転写体とトナーとの剥離が発生することが知られている。この剥離現象は、塗工紙中の水分が加熱によって気化膨張し、塗工層を通過して塗工紙の外部に抜け出るが、そのうち中間転写体側に抜け出たものが中間転写体と塗工紙の中間転写体側の塗工層との間にたまり、この水蒸気圧により中間転写体から塗工紙が剥離してしまうことによって発生する。以下、この問題を剥離ブリスターと称することとする。
【0007】
図9は上記剥離ブリスターの発生状況を簡単に説明したものである。
【0008】
図9(a)は、剥離ブリスターが顕著に発生しやすい画像を示す模式図である。すなわち、剥離ブリスターは、トナー画像で囲まれたような非画像部(用紙部)を中心に発生することが多い。この剥離ブリスターの発生メカニズムについて説明すると、まず、用紙は、転写定着部において、トナー画像を保持した中間転写体とニップされ、加熱される。このとき、用紙は加熱され、図9(b)に示すように、用紙の内部に存在する水分が気化する。次に、気化した水分(水蒸気)は、用紙の内部から外部に抜けようとする。このとき、透気度が小さい、すなわち、空気を通しやすい用紙であれば、水蒸気は、用紙の裏面から抜けてしまうが、透気度が大きい、例えば印刷用の両面塗工紙などの場合には、水蒸気は用紙の両面より比較的緩やかに抜ける。この時、中間転写体側に抜けた水蒸気は、図9(c)に示すように、特に、トナー画像がない領域を中心に溜まり、この水蒸気圧が大きくなると、中間転写体から用紙が剥離し、剥離ブリスターとなる。
【0009】
また、上記剥離ブリスターと似たような問題として、塗工紙からの水蒸気が原因となる現象は、印刷や従来の定着方式においてもみられ、ペーパーブリスターと呼ばれている。このペーパーブリスターは、塗工層によって閉じ込められた水蒸気が塗工紙中に溜まり、用紙内部が膨張するために、紙の繊維が破壊される現象である。
【0010】
この問題に対して、塗工層表面の中心線平均粗さを20μm以下に調整し、かつ透気度を4000秒以下に調整したり(特開昭62−198876号公報、特公平5−82940号公報)、特定の透気度を有する原紙の両面に透湿度を50〜500(g/m2 ×24時間)の範囲に調整した水蒸気透過性の良好な塗工層を2〜5g/m2 の範囲の塗工量で設ける(特開平1−245265号公報)など、用紙自体の透気度を調整することが提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、剥離ブリスターは、ペーパーブリスターよりも非常に容易に発生しやすく、特開昭62−198876号公報、特公平5−82940号公報や特開平1−245265号公報などに開示されているように、ペーパーブリスターが発生しないように透気度を調整した塗工紙の場合においても、剥離ブリスターの発生を防止するのが困難であるという問題点を有していた。
【0012】
また近年、電子写真方式の画像形成装置に対して、用紙の種類に依存しない適性が求められており、特に、オンデマンドパブリッシングをはじめとする軽印刷分野への対応から、印刷用両面塗工紙への適性が求められているため、上記手段を用いて問題解決の手段とすることは適切な方策とはならない。
【0013】
そこで、本出願人は、特開平9−330006号公報に開示されているように、密着加熱および加圧後、中間転写体とトナーおよび記録媒体を重ね合わせたまま、表面が凸状に湾曲した冷却部材に中間転写体が摺接し、冷却部材に対抗して配備された押し付け部材により中間転写体とトナーおよび記録媒体を押し付けることにより、密着状態のまま冷却固化することにより、剥離を防止することを可能とした技術について、既に提案している。
【0014】
しかしながら、上記特開平9−330006号公報に開示された技術によって、剥離を抑えるためには、中間転写体と記録媒体の間に抜き出た水蒸気を押し付け、中間転写体と記録媒体を密着させるのに十分な圧力が必要であるが、中間転写体の循環移動は、冷却部材への摺接によるものであるため、負荷により駆動制御できなくなったり、また、中間転写体の磨耗を発生させ長寿命化を妨げてしまう、などの新たな問題点が発生してしまう。
【0015】
この問題点に鑑み、本発明者らは、転写定着部へ浸入する前の記録媒体、すなわち、印刷用両面塗工紙が含む水分量を減じることによって、塗工紙内部から発生する水蒸気を低減させ、剥離ブリスターの発生を抑制することを検討した。
【0016】
これに対して、特公平1−000698号公報には、消費電力を大きくすることなく、高速においても十分な定着性を得ることを目的として、転写定着部の直前に板状の発熱部材を配設し、記録媒体を加熱しながら転写定着部に送り込むように構成した技術が開示されている。
【0017】
また、特公昭63−050711号公報には、用紙を加熱するためのヒータを特に必要とせず、熱効率よく高速においても十分な定着を得ることを目的として、加熱源を有する圧着ローラの周面に用紙を添わせて転写定着位置へ導くガイドを設け、圧着ローラからの熱により用紙を加熱しながら、転写定着部に送り込むように構成した技術が開示されている。
【0018】
しかしながら、これら特公平1−000698号公報や特公昭63−050711号公報に開示された技術の場合にも、加熱によって転写定着前の印刷用両面塗工紙の含む水分が気化し、水分量が減少するため、剥離ブリスターの程度は若干軽減されるものの、消費電力を大きくすることなく、十分な定着を得る程度の加熱量では、剥離ブリスターの発生を十分に防止することはできないという問題点を有していた。
【0019】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベルト状の像担持体を用いた転写定着同時方式の画像形成装置、およびベルト状の定着部材を用いた定着装置であって、剥離ブリスターの発生を十分に防止することができ、記録媒体の適用性が広く、高画質の画像を得ることができる画像形成装置、および、これに用いる定着装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載された画像形成装置は、表面にトナー像を担持して所定の方向に移動する像担持体と、前記像担持体を当該像担持体上に担持されたトナー像を間に挟んで記録媒体と重ね合わせ、該トナー像を該記録媒体上に転写するとともに定着する転写定着部と、前記記録媒体及び像担持体を密着状態のまま冷却する冷却部と、冷却後該像担持体から該記録媒体を該トナー像とともに分離する剥離部を備えた画像形成装置において、
前記転写定着部に進入する前の該記録媒体を加熱することによって含水率を調整する含水率調整手段と、
前記転写定着部に進入する前の該像担持体を加熱することによって温度を調整する像担持体温度調整手段と、を備え、
前記含水率調整手段は、前記記録媒体が両面塗工紙の場合における両面塗工紙モードと、前記記録媒体が両面塗工紙以外の場合に両面塗工紙モードより加熱を抑えるか、もしくは使用しない非両面塗工紙モードを有するものであり、
前記像担持体温度調整手段は、前記像担持体の加熱温度を、両面塗工紙モードの場合に非両面塗工紙モードの場合に比べて低くなるように調整するものであることを特徴とする。
【0030】
【作用】
図2は、本発明の作用を説明するための転写定着装置を示す図である。
【0031】
図2において、像担持体である中間転写体100は、無端状に構成され、張力ロール104により一定の張力に張られ、感光体107上に形成されたトナー像を、中間転写体101上に転写する転写部T、中間転写体101の裏面に設置された加熱板106によりトナーを溶融する加熱部A、中間転写体101上のトナー像を記録媒体である用紙Pに転写同時定着する転写定着部B、トナーを冷却固化する冷却部C、用紙Pを中間転写体101から剥離する剥離部Dを循環する。
【0032】
転写定着部Bは、加熱ロール102および加圧ロール103からなり、これらの2本のロールを接触させ、その間に中間転写体101と用紙Pを挟持して搬送することにより、加圧、加熱する。
【0033】
転写定着部Bにおいては、中間転写体101とトナー像と記録媒体である紙Pは一体となって密着されるとともに加熱され、粉体トナーが溶融状態となり、個々のトナーが融着して一つのフィルム状になる。このとき、トナー像への効率的な熱伝達のためには、中間転写体101と紙とを密着させることが必要であり、これが実現できずところどころ空気が入った場合には、空気のあるところとないところで熱容量が変わり、トナー像が均一に溶融せず、転写定着ムラやいわゆるオフセット現象が起こり、画像品質が劣化する。トナー像を挟み中間転写体と紙との密着をよくするために、中間転写体の表面には、弾性体層が設けられる。また、加熱および加圧ロールも均一な圧力を印加するために表面層に弾性体層が設けられる。
【0034】
転写定着部Bにて記録媒体に転写定着されたトナー像は、剥離部Dに搬送される間に冷却され、凝集固化し、記録媒体との間に強い接着力を生じる。図示していないが、転写定着部Bと剥離部Dの間に冷却装置を設けても良い。冷却部Cにより冷却された中間転写体101および記録媒体Pは、曲率半径の小さな剥離ロール105からなる剥離部Dに搬送され、記録媒体P自体の腰の強さにより記録媒体Pは中間転写体101からトナー像とともに剥離されて出力画像が完成する。記録媒体Pに転写定着されたトナー画像の表面は中間転写体101の表面にならい平滑化され高光沢となる。
【0035】
記録媒体Pとしての用紙は、転写定着部Bを通過しながら、中間転写体から伝導される熱により加熱され、用紙中の水分は気化膨張する。用紙Pが透気度の高い両面塗工紙の場合、気化膨張した水分(水蒸気)は、塗工層を通って用紙外部に抜け出るが、そのうち中間転写体側に抜け出たものが中間転写体と用紙の中間転写体側塗工層との間にたまり、この水蒸気圧により中間転写体から用紙が剥離してしまい、画像に光沢むらが発生する。
【0036】
この現象を防ぐためには、中間転写体から用紙に与える熱量を低減することで、用紙中の水分の気化膨張を抑制することや、中間転写体にトナー及び用紙が付着する力が強い中間転写体とトナーを選択し、用紙の中間転写体からの剥離を防ぐことが重要となる。また、転写定着部Bに進入する前の用紙が含む水分量を調整することで、水分が気化する総量を少なくすることが重要となる。
【0037】
そこで、本発明者らは、中間転写体が転写定着部Bに突入する直前の中間転写体の温度T(℃)を、145℃〜182.5℃まで7.5℃刻みに、中間転写体とトナーとの付着力A(gf)を、4gf〜10gfまで2gf刻みに、転写定着部Bに突入前の用紙の含水率M(%)を、約0.5%〜5.5%まで約1%刻みに設定して実験を行い、サンプルを採取した。
【0038】
図3は、採取したサンプルに対して剥離ブリスターを5段階(良い順に○、△1、△2、×1、×2)に評価し、剥離ブリスターが認識されるかどうかの官能試験を、無作為に20人に対して行なった結果で、これをもとに、○(全く発生しないグレード)、△(発生が認識されないグレード、図3の△1と△2)、×(発生が認識されるグレード、図3の×1と×2)、の3段階に分類した。
【0039】
図4は、縦軸に用紙含水率M、横軸に中間転写体の温度Tをとり、それらのグレードをプロットし、中間転写体の付着力Aのうち、4gf、8gfのグラフを記したものである。この結果から、剥離ブリスターが認識されない△の許容ラインは、直線回帰とよく相関することを本発明者らは発見した。また、図5は、4〜10gfのそれぞれの付着力Aに対して得られる、許容ラインの傾きと切片の、付着力Aとの関係を記したものである。この結果から、許容ラインの傾きと切片は、付着力Aとの関係において直線回帰とよく相関することを本発明者らは発見した。この回帰式は、
(傾き)=−0.013・A−0.017
(切片)=2.4・A+3.7
である。
【0040】
以上のことから、用紙含水率Mと、中間転写体温度T、付着力Aの△の許容範囲は、
M≦−0.013・A・T+2.4・A−0.017T+3.7 (1)
の関係を満たすものである。図4の許容ラインは、(1) 式にそれぞれA=4、8を代入して得られたものである。
【0041】
ここでいう用紙含水率は、日本工業規格P8127に規定する「紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法」の「8.計算」の式により求めた。
【0042】
また、中間転写体のトナーとの付着力とは、表面にトナー層が付着する力を、剥離試験により測定した値を用いており、測定法の詳細を以下に示す。
【0043】
図6に示すような剥離試験機に、試験片であるベルトを全幅350mmに対し、8kgfの張力で張架し、図示する矢印の方向に速度30mm/secで循環移動させる。2つの定着ロールからなる定着部に、未定着の画像パッチが転写された用紙を挿入し、加熱加圧後1秒以内の間に、この画像パッチと用紙を加熱板上に移動させる。ベルトが加熱板によく密着した状態で1分間放置した後、速度5mm/secで垂直上方向に引き上げる。そして、ロードセルより出力される信号(応力)を記録し、得られたチャートから剥離時の平均応力(剥離力)を、図7のように、所期的な立ち上がりはじめの部分を0秒とし、2秒後から4秒後の部分(未定着画像パッチの10mmから20mmの部分に対応)に対して求める。さらに、この測定を中間転写体上の位置を変えて5回測定し、それらの平均をとって表面付着力の値とする。ここで、2つの定着ロールとは、実際の画像形成装置の転写定着部と同様のロールを用い、加圧条件も実際の画像形成装置の転写定着部と等しくなるようにする。2つの定着ロールはそれぞれ、トナーの粘度が104 Poiseとなる温度より20℃高い温度に設定する。なお、トナー粘度は、島津製作所(株)製のフローテスターCFT−500型によって求める。すなわち、加圧成型器にて成型した1.5gのトナーをフロテスターCFT−500型を用い、荷重98N(10kgf)、ノズル直径0.5mm、ノズル長さ1mm、昇温速度5℃/分の条件でノズルから押し出し、各温度の流出量を60℃から160℃まで3℃きざみで測定することにより求める。また、未定着の画像パッチが転写された用紙とは、図4に示すように、サイズが縦40mm、横22mmの富士ゼロックス(株)製JC紙上に、縦25mm、横20mmの未定着画像パッチを、端からそれぞれ1mmの隙間をおいて転写したものを用い、縦方向の隙間の広い側を、外れにくいクリップで挟み、伸びにくい糸、例えばデュポン社製ケブラー糸で垂直上方に引き上げる。この未定着画像パッチの作成に際しては、実際の画像形成装置と同じトナーを用い、画像濃度が100%、トナー量が実際の画像形成装置と同じになるように調整する。
【0044】
上記画像形成装置では、記録媒体が転写定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)を低くするか、又は、像担持体が該転写定着部に進入する直前の該像担持体の温度T(℃)を低くするか、又は、前記像担持体と前記トナー像との付着力A(gf)を高く設定するか、少なくとも1つ以上の条件を満たすように設定することで、記録媒体の適用性が広く、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な画像を得ることができる。
【0045】
上記画像形成装置では、転写定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)と、転写定着部に進入する直前の中間転写体の温度T(℃)と、中間転写体とトナーとの付着力A(gf)が、(1)式の関係を満たすことで、記録媒体の適用性が広く、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な画像を得ることができる。
【0046】
上記定着装置では、記録媒体が定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)を低くするか、又は、定着部材が定着部に進入する直前の該定着部材の温度T(℃)を低くするか、又は、前記定着部材と前記トナー像との付着力A(gf)を高く設定するか、少なくとも1つ以上の条件を満たすように設定することで、記録媒体の適用性が広く、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な定着画像を得ることができる。
【0047】
上記定着装置では、定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)と、定着部に進入する直前の定着部材の温度T(℃)と、定着部材とトナーとの付着力A(gf)が、(1)式の関係を満たすことで、記録媒体の適用性が広く、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な定着画像を得ることができる。
【0048】
上記画像形成装置、または、定着装置では、定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)を調整する含水率調整手段、または定着部に進入する直前の像担持体または定着部材の温度T(℃)を調整する温度調整手段、のどちらか一方を、もしくは両方を備え、(1)式の関係を満たすように調整することで、記録媒体の適用性が広く、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な画像を得ることができる。
【0049】
上記画像形成装置、または、定着装置では、剥離ブリスターが発生する両面塗工紙の場合における両面塗工紙モードの場合には、像担持体又は定着部材の温度T(℃)と付着力A(gf)に対して、用紙含水率M(%)が(1)式を満たすように調整することで、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な画像を得ることができ、かつ、もともと剥離ブリスターの発生がない、普通紙や片面塗工紙の場合における非両面塗工紙モードの場合には、含水率調整機能を抑える、もしくは使用せず、少ない消費電力で、高画質な画像を得ることができる。
【0050】
上記画像形成装置、又は、定着装置では、定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)を調整する含水率調整手段は、加熱により水分を気化することでなされるものであり、剥離ブリスターが発生する両面塗工紙の場合における両面塗工紙モードの場合には、用紙含水率M(%)が(1)式の関係を満たすように調整することで、剥離ブリスターの発生がみられない、高画質な画像を得ることができ、かつ、もともと剥離ブリスターの発生がない、普通紙や片面塗工紙の場合における非両面塗工紙モードの場合には、含水率調整機能を抑える、もしくは使用せず、少ない消費電力で、高画質な画像を得ることができる。このとき、両面塗工紙モードの場合においては、含水率調整手段により事前に用紙に熱が与えられるため、像担持体温度調整手段による像担持体への加熱量を非両面塗工紙モードの場合よりも小さく設定することで、消費電力を抑えることができ、なおかつ十分な定着強度を得ることができる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について図示の実施例を参照して説明する。
【0052】
実施例1
図1はこの発明の実施例1に係る画像形成装置を示す構成図である。
【0053】
図1において、符号50は像担持体としてのベルト状の中間転写体であり、この中間転写ベルト50は、ロール51、52、53、54、像担持体温度調整手段としての加熱板55、及び中間転写体位置制御ロール56により支持されて、図示する矢印方向に循環する。また、上記ロール53は、中間転写ベルト50に一定のテンションを付与するように構成されている。また、上記中間転写体位置制御ロール56の下流側において、中間転写ベルト50には、加熱ロール57と加圧ロール58が対向して圧接するように配置されている。加熱ロール55と加圧ロール56は、逆の配置とすることもでき、また、加圧ロール56も内部に熱源を持つ加熱ロールとしてもよい。加熱板55は、熱源をもつ板で構成される。
【0054】
上記ロール51と加熱板55によって平面状に保持された中間転写ベルト50の上部には、黒、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のトナー像を形成する4つの画像形成ユニット10K、10Y、10M、10Cが、一定の距離を隔てて並列的に配置されている。これらの各画像形成ユニット10K、10Y、10M、10Cは、形成するトナー像の色のみが異なるほかは、すべての同様に構成されており、各画像形成ユニット10K、10Y、10M、10Cには、感光体ドラム11K、11Y、11M、11Cがそれぞれ配置されている。感光体ドラム11K、11Y、11M、11Cの表面は、一次帯電器12K、12Y、12M、12Cにより一様に帯電された後、濃度信号に応じ光ビームパルス幅変調装置(図示せず)によってオンオフされる光ビーム走査装置20により露光され、静電潜像が形成される。上記濃度信号は、例えば、原稿の画像を読み取る画像読取装置30や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られる。感光体ドラム11K、11Y、11M、11Cとしては、各種無機感光体(Se、a−Si、a−SiC、CdS等)の他に、各種有機感光体(OPC)を用いることができる。感光体ドラム60上の静電潜像は、それぞれ、黒、イエロー、マゼンタ、シアン色のトナーが収容された現像器13K、13Y、13M、13Cにより現像され、面積変調により濃度を表す、いわゆるデジタル画像の各色トナー像が感光体ドラム11K、11Y、11M、11C上に形成される。
【0055】
これら各色のトナー像は、順次、一次転写器14K、14Y、14M、14Cによって、当該一次転写器14K、14Y、14M、14Cが配置された一次転写位置において中間転写ベルト50上に転写され、中間転写ベルト50上に複数色のトナー像が多重に形成される。
【0056】
中間転写ベルト50上に形成されたトナー像は、加熱板55と接触し、加熱されて溶融される。このとき、上記中間転写ベルト50の温度は、加熱板55の設定温度とほぼ等しい温度に到達し、中間転写ベルト50は、その温度をほぼ保った状態で加圧ロール58と加熱ロール57からなるにップ部に進入する。上記加圧ロール58は、加熱ロール57に対して接離自在に配置されており、給紙トレイ59からの記録媒体としての記録紙Pの給紙に同期して、加熱ロール57に圧接する。
【0057】
記録紙Pは、給紙トレイ59から送紙された後、含水率調整手段としてのペーパーコンディショナー60を通過することにより加熱加圧され、記録紙Pは、含水された水分が気化し、含水率が減少する。
【0058】
このペーパーコンディショナー60としては、例えば、金属ロール上にシリコーンゴム等の耐熱弾性層を有した一対のロールが用いられる。これらの一方または両方のロールの内部には、熱源が配置され、その加熱温度は、記録紙Pに含まれる水分量が所望の値となるように設定、制御される。上記ペーパーコンディショナー60では、例えば、用紙含水率Mが約3%程度になるように調整される。
【0059】
本実施例においては、アルミニウムの中空ロール上に硬度30度のシリコーンゴムを、厚さ2mmに積層した外径40mmのロールを、ペーパーコンディショナー60のロールとして用いた。ロール内部の熱源としては、ハロゲンランプを使用し、2つのロールによる挟持幅が5mmになるように荷重を変化させ調節した。
【0060】
その後、トナー像を保持した中間転写ベルト50と記録紙Pが、タイミングを合わせて加熱ロール57および加圧ロール58の間を移動し、加圧加熱される。溶融温度以上に加熱されたトナーは、軟化・溶融し、記録紙Pに浸透し、その後固化することで転写定着が行われる。
【0061】
冷却装置61は、加熱領域から一体となって搬送されてくる中間転写ベルト50および記録紙Pを冷却するもので、これによりトナーは凝集固化し、記録紙Pとの間に強い接着力が生じる。冷却装置61としては、例えば、ヒートシンクやヒートパイプなどが用いられるが、必ずしも冷却装置61を設ける必要はなく、自然冷却によってもよい。冷却装置61により冷却された中間転写ドラム50および記録紙Pは、さらに搬送され、曲率半径の小さなロール54において、記録紙Pは、当該記録紙P自体の腰の強さ(曲げ硬さ)によって中間転写ベルト50からトナーとともに分離され、記録紙P上にカラー画像が形成される。記録紙Pに転写・定着されたトナー像の表面は、中間転写ベルト50の表面にならい平滑化され高光沢となる。
【0062】
なお、剥離部の温度は、70℃であった。また、剥離部の温度測定は、剥離ロール54の手前10cmの位置を、赤外線温度計で用紙裏面、中間転写ベルト50裏面の温度を測定し、その平均温度とした。
【0063】
トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン等の色素を含有した熱可塑性のバインダで構成され、公知の材料を用いることができる。本実施例では、重量平均分離量(Mw)54000、溶融温度(Tm)120℃、溶融温度での粘土(η)4000(Pas)、帯電量−22C/gのポリエステル負帯電トナーが使用されている。なお、トナーの平均粒径は5μmのものを用いた。また、各色の記録紙P上のトナー量は、その色素の含有量によりおよそ0.2mg/cm2 〜0.7mg/cm2 になるように前記露光条件または現像条件が設定される。本実施例では、0.35mg/cm2 に設定した。
【0064】
中間転写ベルト50としては、例えば、ベース層と表面層の2層構造のものが用いられる。ベース層には、カーボンブラックを添加した厚さ70μmのポリイミドフィルムが用いられる。本実施例では、トナー像を感光体ドラム11から中間転写ベルト50に、静電的にしかも画像乱れなく転写するために、ベース層の体積抵抗率は、カーボンブラックの添加量を変化させることにより、1010Ωcmに調整されている。なお、ベース層としては、例えば厚さ10〜300μmの耐熱性の高いシートを使用することが可能であり、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミドなどのポリマーシート等を用いることが可能である。
【0065】
また、表面層は、トナー像を感光体ドラム11から中間転写ベルト50に静電的にしかも画像乱れなく転写するために、その体積抵抗率が1014Ωcmに調整され、また、中間転写ベルト50から記録紙Pへの転写同時定着を行うときに、トナー像を介して中間転写ベルト50と記録紙Pの密着をよくするために、シリコーン共重合体が用いられる。シリコーン共重合体は、弾性を持ちその表面が常温でトナーに対して粘着性を示し、さらに、記録媒体Pへトナーを効率的に移行させるために、溶融して流動化したトナーを離しやすくする特性を有しているため、表面層には最適である。また、表面層については、シリコーン共重合体のほかに、フッ素ゴム、フッ素樹脂などを用いても良い。本実施例では、ゴム硬度35度、厚さ0.05mmの東レダウシリコーン製、DX35−547A/Bシリコーン共重合体を用いている。
【0066】
一次転写器14K、14Y、14M、14Cは、感光体ドラム11K、11Y、11M、11C上のトナーが効率よく中間転写ベルト50へ転写されるよう、中間転写ベルト50の裏面に電荷を与えるために調節される。本実施例では、コロトロンを用い、315μC/m2 の電荷密度を与えるようにコロトロンワイアへの印加電圧が調整されている。
【0067】
加熱板55としては、厚さ2mm、中間転写ベルト50の循環方向の長さ220mmのアルミニウム板の裏にシリコンラバーヒーターと貼り付けたものが用いられる。加熱温度は、中間転写ベルト50と記録紙Pとが接触する領域でのトナー温度が、トナー溶融温度(Tm)以上となるように設定、制御される。加熱板55としては、この外に、セラミックヒーターなども用いることができる。
【0068】
加熱ロール57および加圧ロール58としては、金属ロール上にシリコーンゴム等の耐熱性弾性層を有したものを用いることができる。加熱ロール57の内部には熱源が配置され、その加熱温度は、加熱領域でのトナー温度がトナー溶融温度(Tm)以上となるように設定・制御される。本実施例においては、アルミニウムの中空ロール上に硬度30度のシリコーンゴムを厚さ2mmで積層した、外径50mmのロールを、加熱ロール57及び加圧ロール58として用い、加熱ロール57内部の熱源には、ハロゲンランプが使用されている。また、加熱ロール57および加圧ロール58の外径、表面弾性層の硬度、厚さを、ニップ部が平板状となるように選定し、2つのロールによる挟持幅(ニップ幅)が7.0mmになるように荷重を調節した。
【0069】
記録紙Pは、印刷用両面塗工紙としてSD Warren社Lustro Gloss、王子製紙社製OKトップコート、Donside Paper社製Consort Royal Silkを用いた。Lustro Glossの十点平均厚さの平均値はおおよそ100μm、透気度は15260秒、坪量は122g/m2 であった。OKトップコートの十点平均厚さの平均値はおおよそ136μm、透気度は44070秒、坪量は157g/m2 であった。Consort Royal Silkの十点平均厚さの平均値はおおよそ159μm、透気度は13910秒、坪量は170g/m2 であった。
【0070】
スクリーンは、垂直万線を用い、線数は200線/inchで行なった。
【0071】
また、中間転写ベルト50、トナー像の搬送速度(転写定着速度)は260mm/sとした。
【0072】
ところで、本発明者らは、上記の如く構成される画像形成装置において剥離ブリスターの発生について、鋭意研究した結果、記録媒体が前記転写定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)と、前記像担持体が該転写定着部に進入する直前の該像担持体の温度T(℃)と、前記像担持体と前記トナー像との付着力A(gf)とが、剥離ブリスターの発生に大きく影響していることが分かった。
【0073】
そこで、本発明者らは、図1に示すような画像形成装置を試作し、記録媒体が前記転写定着部に進入する直前の用紙含水率M(%)と、前記像担持体が該転写定着部に進入する直前の該像担持体の温度T(℃)と、前記像担持体と前記トナー像との付着力A(gf)と、記録媒体の剥離ブリスターとの発生の関係を調べる実験を行なった。
【0074】
剥離部での温度における中間転写ベルト50に対するトナー像の付着力A(gf)の測定は、以下の方法により行った。図6に示すような90度剥離試験機に、試験片である中間転写ベルトを全幅350mmに対し、8kgfの張力で張架し、図示する矢印の方向に速度30mm/secで循環させる。2つの定着ロールからなる定着部に、未定着の画像パッチ(濃度100%)が転写された用紙を挿入し、加熱加圧後1秒以内の間に、この画像パッチと用紙を加熱板上に移動させる。中間転写ベルトが加熱板によく密着した状態で1分間放置した後、用紙を速度5mm/secで垂直上方向に引き上げる。加熱板の温度は、図7に示す画像形成装置のニップ直後の中間転写ベルト裏面の温度130℃と用紙裏面の温度90℃との平均の値である110℃に設定されている。
【0075】
未定着の画像パッチが転写された用紙とは、図6に示すように、サイズが縦40mm、横22mmの富士ゼロックス(株)製JC紙上に、縦25mm、横20mmの未定着画像パッチを、端からそれぞれ1mmの隙間をおいて転写したものを用い、縦方向の隙間の広い側を、外れにくいクリップで挟み、伸びにくい糸、例えばデュポン社製ケブラー糸で垂直上方に引き上げる。この未定着画像パッチの作成に際しては、実際の画像形成装置と同様のトナーを用い、画像濃度が100%、トナー量が0.55mg/cm2 となるように調整する。
【0076】
そして、ロードセルより出力される信号(応力)を記録し、得られたチャートから剥離時の平均応力(剥離力)を、図7のように、所期的な立ち上がりはじめの部分を0秒とし、2秒後から4秒後の部分(未定着画像パッチの10mmから20mmの部分に対応)に対して求める。さらに、この測定を中間転写体上の位置を変えて5回測定し、それらの平均をとって表面付着力の値とする。ここで、2つの定着ロールとは、実際の画像形成装置の転写定着部と同様のロールを用い、加圧条件も実際の画像形成装置の転写定着部と等しくなるようにする。加熱板は画像形成装置のニップ直後の中間転写ベルト裏面の温度130℃と用紙裏面の温度90℃との平均の値である110℃に設定し、2つの定着ロールはそれぞれ、トナーの粘度が104 Poiseとなる温度より20℃高い温度に設定する。なお、これらトナー粘度は、島津製作所(株)製のフローテスターCFT−500型によって求める。すなわち、加圧成型器にて成型した1.5gのトナーをフロテスターCFT−500型を用い、荷重98N(10kgf)、ノズル直径0.5mm、ノズル長さ1mm、昇温速度5℃/分の条件でノズルから押し出し、各温度の流出量を55℃から150℃まで3℃きざみで測定することにより求める。
【0077】
また、中間転写ベルト50としては、上記の如く測定したトナーとの付着力Aが8gfのベルトに対して、加熱板設定温度Tを160℃に設定し、ペーパーコンディショナー60によって、記録媒体Pの用紙含水率Mが約3%となるように調整し、各用紙に対してそれぞれ100枚ずつ画像出力した。なお、中間転写ベルト50のトナーとの付着力Aは、例えば、ベルト表面に放電ストレスを与えることにより調整可能である。その結果、
M≦−0.013・A・T+2.4・A−0.017T+3.7=3.54
を満たし、剥離ブリスターの発生が見られない、高画質な画像を得ることができた。
【0078】
なお、上記画像形成装置では、含水率調整手段が、前記記録媒体を加熱することによって含水率を調整する手段からなり、該記録媒体が両面塗工紙の場合に機能を最大限に使用する両面塗工紙モードと、前記記録媒体が両面塗工紙以外の場合に機能を抑える、もしくは使用しない非両面塗工紙モードを有するものであり、前記像担持体温度調整手段は、前記像担持体が前記転写定着部に進入する直前の該像担持体の温度を、両面塗工紙モードの場合に非両面塗工紙モードの場合に比べて低くなるように調整するように構成しても良い。
【0079】
実施例2
図8は、この発明の実施例2に係る画像形成装置に適用される定着装置の構成を示す図である。
【0080】
記録紙P上には、図示しない周知の電子写真等の画像形成工程によって、トナー像Tが形成されている。符号70は、ベルト状の定着部材としての定着ベルトであり、この定着ベルト70は、第1のロールとしての加熱ロール71と記録紙剥離部ロール72に懸架され、矢印方向に循環移動する。記録紙Pは、搬送部材74によって搬送され、ヒーター75により熱せられた空気を、トナー像Tと反対側の面からファン76を用いて引き込んだ。ファン76による空気の引き込み量、およびヒーター75による空気の加熱温度は、記録紙Pに含まれる水分量が所定の値となるように設定、制御される。加熱ロール71に対向して加圧ロール73が配置され、定着ベルト70とトナー像を担持した記録紙Pを挟み、加熱ロール71に押圧するものである。定着ベルト70は、全幅320mmに対し6kgfの張力で張架している。本実施例では、定着ベルト70は、ベース層と表面層の2層構造のものを用いている。ベース層は厚さ50μmのポリイミドフィルムを用い、表面層はゴム硬度が35度の東レダウシリコーン製、DX35−547A/Bシリコーン共重合体を、厚さを0.03mmとして用いた。なお、ベース層としては、例えば、厚さ10〜100μmの耐熱性の高いシートを使用することが可能であり、表面層としては、離型性の高い樹脂層を使用することが可能である。
【0081】
加熱ロール71、及び加圧ロール73としては、金属ロール上に表面層としてシリコーンゴム等の耐熱弾性層を有したものを用い、加熱ロール71、加圧ロール73の内部には熱源を配置している。本実施例では、アルミニウムの中空ロール上に硬度45度のシリコーンゴムを、厚さ2mmで積層した外径50mmのロールを、加熱ロール71、及び加圧ロール73として用いた。ロール内部の熱源としては、ハロゲンランプを使用した。また、加熱ロール71、及び加圧ロール73の外径、表面弾性層の硬度、厚さを、ニップ部が平板状となるように選定し、2つのロール71、73による挟持幅(ニップ幅)Nが7mmになるように荷重を変化させ調節した。
【0082】
本実施例では、加圧ニップ部を通過したトナー像を担持した記録紙Pと一体となっている定着ベルト70の裏面に接触して、定着ベルト70とトナー像を担持した記録紙Pの形状を略平面または曲面状に保ちながら冷却するフィン付冷却部材77を適用し、剥離部でのトナー温度をそのガラス転移温度程度まで下げるようにしている。冷却部材77が定着ベルト70と接触している長さは、定着ベルト70の移動方向で100mmであり、ベルト幅方向は全幅にわたって接触している。冷却部材77のフィンに送風することで、フィンからの放熱を促進し、冷却効果を高めることができる。なお、フィン付冷却部材77の材質は熱伝導の良いものがよく、本実施例ではアルミニウムを使用し、定着ベルト70の温度が冷却部材77の直後でおよそ80℃となるように送風、制御した。図8で符号78は断熱材である。
【0083】
本実施例では、ガラス転移温度70℃、溶融温度128℃のトナーを用い、160mm/sの定着ベルト70の移動速度で、A4サイズの記録紙Pへ毎分40枚のトナー画像定着を行った。加熱ロール71と加圧ロール73の表面温度は、150℃を維持するように、ロール内部のハロゲンランプの出力を調整した。
【0084】
なお、本実施例において特に記していない部材構成および条件は、実施例1と同じであり、改めての記述を省略する。
【0085】
上記構成で、トナーとの付着力Aが4gfの定着ベルト70に対して、加熱ロール71の表面温度Tを150℃に設定し、用紙含水率Mが約2%となるように調整し、各用紙に対してそれぞれ100枚ずつ画像出力した。その結果、
M≦−0.013・A・T+2.4・A−0.017T+3.7=2.95
を満たし、剥離ブリスターの発生が見られない、高画質な画像を得ることができた。
【0086】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0087】
【発明の効果】
この発明は、以上の構成及び作用よりなるもので、剥離ブリスターがなく、記録媒体の適用性の広い、高画質な画像を得ることができるオイルレスのプリンタ及び複写機等の画像形成装置および定着装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はこの発明の実施例1に係る画像形成装置としてのタンデム型のカラー画像形成装置を示す構成図である。
【図2】 図2はこの発明に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】 図3は測定結果を示すグラフである。
【図4】 図4はこの発明に係る画像形成装置の中間転写体温度と用紙含有率との関係を示すグラフである。
【図5】 図5は付着力と傾き及び切片との関係を示すグラフである。
【図6】 図6はトナー像担持体とトナーの付着力を測定する試験機及び試験片を示す説明図である。
【図7】 図7は測定結果を示すグラフである。
【図8】 図8はこの発明の実施例2に係る定着装置を示す構成図である。
【図9】 図9は剥離ブリスターの発生原理を示す説明図である。
【符号の説明】
50:中間転写ベルト(像担持体)、55:加熱板(像担持体温度調整手段)、57:加熱ロール(転写定着手段)、58:加圧ロール(転写定着手段)、60:ペーパーコンディショナー(含水率調整手段)P:記録紙(記録媒体)。

Claims (1)

  1. 表面にトナー像を担持して所定の方向に移動する像担持体と、前記像担持体を当該像担持体上に担持されたトナー像を間に挟んで記録媒体と重ね合わせ、該トナー像を該記録媒体上に転写するとともに定着する転写定着部と、前記記録媒体及び像担持体を密着状態のまま冷却する冷却部と、冷却後該像担持体から該記録媒体を該トナー像とともに分離する剥離部を備えた画像形成装置において、
    前記転写定着部に進入する前の該記録媒体を加熱することによって含水率を調整する含水率調整手段と、
    前記転写定着部に進入する前の該像担持体を加熱することによって温度を調整する像担持体温度調整手段と、を備え、
    前記含水率調整手段は、前記記録媒体が両面塗工紙の場合における両面塗工紙モードと、前記記録媒体が両面塗工紙以外の場合に両面塗工紙モードより加熱を抑えるか、もしくは使用しない非両面塗工紙モードを有するものであり、
    前記像担持体温度調整手段は、前記像担持体の加熱温度を、両面塗工紙モードの場合に非両面塗工紙モードの場合に比べて低くなるように調整するものであることを特徴とする画像形成装置。
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