JP4101390B2 - コンデンサ用フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサに使用される共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに関する。さらに詳しくは、作業性、特にスリット性に優れ、大容量コンデンサに適するコンデンサ用共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムは、その優れた機械的性質、熱的性質および耐熱性を有することからコンデンサ用フィルムに使用されている。コンデンサにおいては、最近の電気あるいは電子回路の小型化要求に伴い、小型・大容量化が品質条件となってきており、そのべースとなる誘電材料であるフィルムも薄いものが求められている。さらに、コンデンサの静電容量は、誘電材料の誘電率および電極面積に比例し逆にフィルム厚みに反比例する(すなわち、誘電材料の単位体積当りの静電容量は誘電率に比例しかつフィルム厚さの2乗に反比例する)ので、同じ誘電率の誘電材料を使用する限りコンデンサの大きさを変えずに大容量化を図ろうとすればフィルム厚みを薄くすることが不可欠なこととなる。
【0003】
このようなフィルムの薄膜化の要求があるものの、従来の延伸フィルムにおいてその厚みを単に薄くするだけではフィルムに電極を蒸着する際や、スリット、素子巻き等の工程における作業性が悪くなる問題がある。この作業性はフィルムの滑り性に関るものであり、その滑り性を改良するためには、一般にフィルム表面に微小な凹凸を与える方法が知られている。かかる方法の例として、不活性無機微粒子をフィルム原料である熱可塑性樹脂の重合時、または重合後に添加したり(外部粒子添加方式)、熱可塑性樹脂の重合時に使用する触媒等の一部または全部を反応工程でポリマー中に析出させる方法(内部粒子析出方式)が公知である。
【0004】
しかし、極薄フィルムの製造において、不活性無機微粒子を従来の厚みのフィルムの場合と同一濃度添加すると、単位面積当りの不活性無機微粒子の数が減少し、フィルム表面における微粒子に起因する突起の間隔が広がり、フィルム表面が平坦化して滑り性が低下する傾向にある。従って薄膜化に伴う滑り性低下を補うためには、フィルム厚みが薄くなればなるほど、添加する不活性無機微粒子の添加濃度を高めるかあるいは粒径を大きくする必要がある。ところが、特にドラフト比の高い溶融押出時や延伸の際に不活性無機微粒子と熱可塑性重合体との親和性が乏しいことに起因してボイドが多発し、このボイドの発生の結果、得られたフィルムの機械的性質(例えば破断強度、破断伸度)や電気的性質(例えば絶縁欠陥)が低下するばかりでなく、フィルムを製造する際にも破断が発生しやすくなり、生産性の低下、製造条件の安定性に欠ける問題があった。
【0005】
かかる問題を解消せしめ、作業性(ハンドリング性)に優れ、かつ製膜性に優れた4μm以下の薄い熱可塑性フィルムが先に提案されている(特開平1−266145号公報)。しかし、熱可塑性フィルムがポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの場合、機械的性質の低下がなく、作業性、製膜性に優れるものの、含有する粒子によって形成されるフィルム表面の突起により、フィルムを重ね合わせた時に生じる空気層が厚くなり、体積当りのコンデンサ容量が低下するため大容量コンデンサ用フィルムとしては不適切となる問題があった。
【0006】
また、極薄の上記フィルム原反をコンデンサ素子巻用にスリットする際に、破断し易い問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、作業性、特にスリット性に優れ、大容量コンデンサに適するコンデンサ用フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ポリエチレン−2,6−ナフタレートに特定の成分を共重合することにより、他の特性を損なわずにスリット性を改良でき、特定粒径の炭酸カルシウムおよび板状珪酸アルミニウムを使用することにより、フィルム表面が粗くてもスペースファクターが小さくでき、高さ1.5μm以上の突起個数が特定範囲であると、スペースファクターを維持しながら作業性に優れたフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、炭酸カルシウムおよび板状珪酸アルミニウムの粒子を含有する共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなるフィルムであって、該炭酸カルシウムの平均粒径が該板状珪酸アルミニウムの平均粒径より大きく、該共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートが、共重合成分として下記式(A)で表わされる化合物を全ジカルボン酸成分の総量に対し0.1〜10モル%およびジエチレングリコールを全グリコール成分の総量に対し3モル%以下共重合した共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、該フィルムの面配向係数が0.23以上0.275以下、密度が1.350g/cm3以上、スペースファクターが1〜19%、かつ該フィルム表面の高さ1.5μm以上の突起が300〜700個/cm2であることを特徴とするコンデンサ用フィルムである。
【0010】
【化2】
Figure 0004101390
【0011】
(式(A)中、R1およびR2はそれぞれ水素原子または低級アルキル基を表わし、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
[共重合ポリエステル]
本発明において共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、ポリエチレン−2,6−ナフタレートをPENと略記することがある。)を構成する主たるジカルボン酸成分は2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、主たるグリコール成分はエチレングリコールである。主たるジカルボン酸成分は全ジカルボン酸成分の総量に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占め、主たるグリコール成分は全グリコール成分の総量に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占める。
【0013】
本発明における共重合PENは、共重合成分として下記式(A)で表わされる化合物(イソフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体。以下イソフタル酸成分と称することがある。)を、全ジカルボン酸成分の総量に対し0.1〜10モル%を占めるように共重合されていることが必要である。このイソフタル酸成分は、共重合体の製造反応において下記式(A)で表される化合物をジカルボン酸成分に添加することで共重合させることが好ましい。
【0014】
【化3】
Figure 0004101390
【0015】
(式(A)中、R1およびR2はそれぞれ水素原子または低級アルキル基を表わし、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
上記式(A)で表される化合物の中、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチルを好ましい例として挙げることができる。このイソフタル酸成分の共重合量が、全ジカルボン酸成分の総量に対し0.1モル%より少ないとフィルムのスリット性が低下し、他方10モル%を超えるとポリマーの結晶性が損なわれてフィルムの機械的強度が劣り、また製膜性が低下するので好ましくない。イソフタル酸成分の共重合量は好ましくは0.5〜8モル%であり、更に好ましくは1〜7モル%である。
【0017】
本発明における共重合PENは、ジエチレングリコールの共重合量が全グリコール成分の総量に対して3モル%以下であることが必要である。このジエチレングリコールは、共重合体製造時、共重合成分としてジエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体の形で添加されたものではなく、製造反応の過程で副生したものが共重合されるものである。ジエチレングリコール成分の共重合量が3モル%を超えるとポリマーの結晶性が損なわれてフィルムの機械的強度が劣り、また製膜性が低下するので好ましくない。従って、ジエチレングリコールの共重合量は少ないほど好ましく、好ましくは2.5モル%以下、更に好ましくは2モル%以下である。製造反応中でジエチレングリコールの副生を押さえる方法としては、添加するエチレングリコールのモル量とジカルボン酸のモル量の比を2.0〜3.0とすること、およびエステル交換反応に要する時間を短くすることが挙げられる。
【0018】
本発明における共重合PENは、2,6−ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、イソフタル酸成分およびジエチレングリコール以外の共重合成分を共重合してもよい。これらの共重合成分は、フィルムの機械的強度(ヤング率)を大きく低下させるため多量に用いないことが望ましい。すなわち、これらの共重合成分の共重合量は、ジエチレングリコールとの合計量で3モル%以下、好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.1モル%以下である。上記共重合成分としては、2個のエステル形成性官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−Naスルホイソフタル酸、2−Kスルホテレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸およびこれらの低級アルキルエステル、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸およびこれらの低級アルキルエステル、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、トリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。また、共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートは例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等の1官能性化合物によって、末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよく、あるいは例えば極少量のグリセリン、ペンタエリスリトールなどの如き3官能以上のエステル形成化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で変性されたものであってもよい。
【0019】
[反応触媒]
本発明における共重合PENは、公知の方法で製造することができる。例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体、エチレングリコールおよび共重合成分をエステル交換反応触媒の存在下にエステル交換反応させた後、重縮合反応触媒の存在下に重縮合反応させて製造することができる。
【0020】
エステル交換反応触媒としては、マンガン化合物が好ましく用いられ、マンガン化合物としては、酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。これらの中、酢酸塩が特に好ましく用いられる。そして、エステル交換反応が実質的に終了した時点で熱安定剤としてリン化合物を添加し、エステル交換触媒を失活させることが好ましい。リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェートおよび正リン酸が好ましく使用できる。これらの中、トリメチルホスフェートが特に好ましい。重縮合反応触媒としては、アンチモン化合物が好ましく用いられ、アンチモン化合物としては三酸化アンチモンが特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明における共重合PENを製造するには、上記触媒、熱安定剤が下記式(1)、(2)および(3)を満足する量含有させることが好ましい。
30≦Mn≦100 (1)
150≦Sb≦450 (2)
P/Mn≧1 (3)
(上記式中、Mnはマンガン元素の共重合PEN中の量(ppm)、Sbはアンチモン元素の共重合PEN中の量(ppm)、Pはリン元素の共重合PEN中の量(ppm)をそれぞれ表わす。)
【0022】
マンガン元素の含有量が共重合PEN中30ppm未満では、エステル交換反応が不充分となり、他方100ppmを超えるとフィルムのCR値が低下し、コンデンサ用フィルムとして適さなくなることがある。また、アンチモン元素の含有量が150ppm未満では重縮合反応性が低下して生産性が悪くなリ、他方450ppmを超えると熱安定性が劣り、フィルム製膜時の工程切断や機械的強度の低下を招くことがある。さらに、P/Mnが1未満では固有粘度の低下を引き起こすことがある。
【0023】
また、アルカリ金属の含有量は10ppm以下であることが好ましい。アルカリ金属の含有量が10ppmを超えるとフィルムのCR値が低下しコンデンサ用フィルムとして適さなくなることがある。
【0024】
[不活性粒子]
本発明のコンデンサ用フィルムはそのフィルム表面に多数の微細な突起を有している。それらの多数の微細な突起は、本発明によれば共重合PEN中に分散して含有される炭酸カルシウム粒子および板状珪酸アルミニウム粒子に由来し、さらに詳しくは高突起は主に炭酸カルシウム粒子、低突起は主に板状珪酸アルミニウム粒子に由来する。かかる突起構成を形成させることにより、スペースファクターを小さくして大容量コンデンサに適したフィルムを得ることができるだけでなく、エアースクイーズ性を高くして巻取り性および滑り性に優れる(作業性に優れる)フィルムを得ることができる。従って、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は板状珪酸アルミニウム粒子の平均粒径より大きいことが必要である。炭酸カルシウムのみでフィルムの作業性を確保しようとすると、フィルムのスペースファクターが大きくなりすぎ好ましくない。一方板状ケイ酸アルミニウムのみでは、大突起の形成ができず作業性とスペースファクターの両立ができない。
【0025】
なお、本発明において、粒子の「平均粒径」とは、測定した全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球形直径」を意味する。「等価球形直径」とは粒子と同じ容積を有する想像上の球(理想球)の直径を意味し、粒子の電子顕微鏡写真または通常の沈降法による測定から計算することができる。
【0026】
本発明において共重合PEN中に含有される炭酸カルシウムは、その平均粒径が0.5〜5μm、さらに0.5〜3μmのものが好ましい。炭酸カルシウムの平均粒径が0.5μm未満では、フィルムをマスタロールまたは製品ロール等に巻き取る際、エアースクイーズ性が不良(巻き込み空気が逃げにくい)であるためしわが発生しやすく、また滑り性が不充分で加工工程での作業性が低下することがある。他方平均粒径が5μmを超えるとフィルム表面が粗れすぎ、スペースファクターが増大し、さらには絶縁破壊電圧の低下、絶縁欠陥の増加等をもたらすことがある。なお、炭酸カルシウムの平均粒径はフィルム厚みより大きくてもかまわない。本発明において炭酸カルシウムの添加量は、共重合PEN中に0.1〜2重量%が好ましく、さらに0.1〜1重量%、特に0.1〜0.5重量%が好ましい。炭酸カルシウムの添加量が0.1重量%未満では、フィルムを巻き取る際のエアースクイーズ性が不良となり、他方2重量%を超えると、フィルム表面が粗れすぎ、絶縁破壊電圧の低下等を招くことがある。本発明に用いる炭酸カルシウムは、任意のものを用いることができ、天然に産出する石灰石、チョーク(白亜)、および石灰石から化学的方法によって生成せしめる沈降炭酸カルシウム等のカルサイト結晶、石灰乳に高温で炭酸ガスを反応させて得られるアルゴナイト結晶、バテライト結晶およびこれらを組み合わせたもの等が例示される。石灰石を機械的に粉砕して得られる重質炭酸カルシウム(カルサイト結晶)も用いることができる。
【0027】
本発明において上記炭酸カルシウムと共に共重合PEN中に含有される板状ケイ酸アルミニウムは、その平均粒径が0.1〜2μm、さらに0.3〜1.2μmが好ましく、その含有量としては0.1〜1重量%が好ましい。板状ケイ酸アルミニウムの平均粒径が0.1μm未満では、フィルムの滑り性が損なわれ、作業性が低下し、他方2μmを超えるとフィルム表面が粗れすぎ、スペースファクターが増大することがある。また、板状ケイ酸アルミニウムの含有量が0.1重量%未満では、フィルムを巻き取る際のエアースクイーズ性が不良となり、他方1重量%を超えるとフィルム表面が粗れすぎスペースファクターが増大することがある。本発明における板状ケイ酸アルミニウムは、アルミノケイ酸塩のことをいい、任意のものを用いることができる。天然に産出するカオリン鉱物からなるカオリンクレー等が例示される。さらに、カオリンクレーは、水洗等の精製処理を施されたものであってもよい。
【0028】
本発明において、共重合PENに炭酸カルシウム粒子および板状珪酸アルミニウム粒子を添加する時期は、ポリマー重合前、重合反応中、あるいは重合終了後ペレタイズする時に押出機中で混練させてもよく、さらにはシート状に溶融押出する際に添加し押出機中で分散させて押出してもよい。これらの中、重合前に添加するのが好ましい。
【0029】
共重合PENに炭酸カルシウムおよび板状ケイ酸アルミニウムを添加する方法は、公知の任意の方法を採用すればよいが、例えば共重合PEN重合前に添加する場合には、炭酸カルシウムおよび板状ケイ酸アルミニウムをエチレングリコール中に超音波振動等により均一分散させたスラリーを調製し、このスラリーを重合に供する方法が好ましい。
【0030】
[面配向係数]
本発明のコンデンサ用フィルムの面配向係数は0.23〜0.275の範囲である必要がある。面配向係数が0.275を超えるとスリット性が低下し、他方0.23未満になるとフィルムの機械的強度が低下するので好ましくない。
【0031】
[スペースファクター]
本発明のコンデンサ用フィルムは、そのスペースファクターが1〜19%である必要がある。スペースファクターが1%未満では、フィルムの滑り性、すなわち作業性(ハンドリング性)が不充分であり、他方19%を超えると、体積当りのコンデンサ容量が低くなり大容量コンデンサ用フィルムとして不適となるため好ましくない。
【0032】
なお、スペースファクターとは、試料フィルム100cm2の重量w(g)と、密度d(g/cm3)から求めた重量法厚みをt1(μm)、10cm角の試料フィルムを10枚重ね、マイクロメーターを用いて求めた試料フィルム1枚分の厚みをt2(μm)としたとき、下記式より算出される値である。
スペースファクター(%)=100−t1/t2×100
【0033】
[表面突起]
本発明のコンデンサ用フィルムの表面は、前述の炭酸カルシウムおよび板状ケイ酸アルミニウムに由来する多数の突起を有し、その突起は、高さ1.5μm以上のものが300〜700個/cm2である必要がある。高さ1.5μm以上の突起が300個/cm2未満では、結果的に突起間の間隔が広がりフィルム表面が平坦化するので滑り性が低下する。他方高さ1.5μm以上の突起が700個/cm2を超えるとフィルム表面が粗れすぎ、結果的にスペースファクターが大きくなりすぎるので好ましくない。
【0034】
[密度]
本発明のコンデンサ用フィルムは、その密度が1.350g/cm3以上であることが必要である。密度が1.350g/cm3未満であると、フィルムの結晶化度が低下し、それが原因でフィルムの熱収縮率が大きくなる、すなわちフィルムの耐熱性が低下するので好ましくない。フィルムの密度を上記下限値以上とするには、共重合PENの共重合割合あるいはフィルム製膜時の延伸倍率を調整する。
【0035】
[固有粘度]
本発明のコンデンサ用フィルムは、そのポリマーの固有粘度が0.40以上であることが好ましく、0.40〜0.80であることがさらに好ましい。固有粘度が0.40未満では製膜時にフィルム切断が多発することがある。上限は特に定めないが0.8より高いと溶融粘度が高いことが原因で溶融押出しが困難になることがある。
【0036】
[フィルム厚み]
本発明のコンデンサ用フィルムの厚みは0.2〜20μmが好ましく、さらに0.5〜15μmが好ましい。厚みが0.2μm未満のフィルムは製膜が困難であり、他方20μmを超えるとコンデンサの小型化が図りにくくなることがある。
【0037】
[熱収縮率]
本発明のコンデンサ用フィルムの熱収縮率は、3%以下であることが好ましい。3%を超えるとコンデンサ製造時の、蒸着工程においてフィルムが収縮し、しわがはいることがある。なお、熱収縮率は、150℃、30分間熱処理前後の試料長の変化から下記式で求められる値である。
熱収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100
(上記式中、L1は熱処理前の試料長、L2は熱処理後の試料長を表わす。)
【0038】
[電気的特性]
本発明のコンデンサ用フィルムは、電気絶縁材料であるという観点からその絶縁破壊電圧(BDV)は、260V/μm以上であることが好ましい。
【0039】
また、本発明のコンデンサ用フィルムのピンホールは、0.1個/cm2以下であることが好ましい。
【0040】
さらに、本発明のコンデンサ用フィルムのCR値は、10000ΩF以上であることが好ましい。CR値が10000ΩF未満では、フィルムの絶縁抵抗が不足し、電気絶縁材料として不適となることがある。
【0041】
さらに、本発明のコンデンサ用フィルムの誘電正接は、高温域での使用という観点から、100℃、1kHzにおいて0.006以下、さらに0.005以下であることが好ましい。誘電正接を上記範囲とするには、共重合PENのイソフタル酸成分の共重合量を前述の範囲(全ジカルボン酸成分に対し10モル%以下)とすることで達成できる。共重合量が10モル%を超えると、結晶性が損われ、誘電正接の値が増加する。
【0042】
[フィルムの製膜方法]
本発明のコンデンサ用フィルムは、二軸配向フィルムの形態が好ましい。該二軸配向フィルムは二軸方向(例えば縦および横方向)に、それぞれ延伸倍率2倍以上で延伸したものが好ましい。二軸方向の延伸倍率は等しくても、等しくなくてもよい。また、該フィルムは単一膜であっても、積層フィルムであってもよい。本発明のコンデンサ用フィルムは、逐次二軸延伸法および同時二軸延伸法など公知の製造法で製造することができ、その製造方法は特に限定されない。特に好ましい製造方法として、逐次二軸延伸法を用いた例を以下に詳述する。
【0043】
すなわち、Tm〜(Tm+70)℃の温度で溶融押出されたフィルム状溶融物を回転冷却ドラムの表面で急冷し、固有粘度が0.40〜0.80の未延伸フィルムを得る。この未延伸フィルムをTg〜(Tg+70)℃の温度で縦あるいは横方向に2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸し、次いで前記延伸方向と直角方向に(前記延伸方向が縦方向であるならば横方向)Tg〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸すると得られる。このようにして得られた二軸配向フィルムは、(Tg+70℃)以上Tm以下の温度で1〜100秒間熱固定するのが好ましい。なお、製造条件中の、Tmは共重合PENの融点、Tgは共重合PENのガラス転移温度を表わす。
【0044】
さらに、上記製造方法において、フィルム状溶融物を回転冷却ドラムに接触させる際、両者の密着性を高める目的で、フィルム状溶融物に静電荷を付与する静電密着法を用いることが好ましい。ただし、共重合PENは溶融時の電気抵抗が高く、静電密着が不十分になる場合があるので、予め共重合PENにジカルボン酸成分に対し0.01〜40mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウムを含有させておくことが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例において、各種特性値は下記の方法で測定、評価した。
【0046】
1.平均粒径
(1−1)粒子の平均粒径
島津製作所製CP−50型セントリフュグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyser)を用いて測定した。得られた遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との累積曲線から、50マスパーセント(mass percent)に相当する粒径を読み取り、この値を平均粒径とした(「粒度測定技術」、日刊工業新聞社発行、1975年、p.242−247参照)。なお、実施例・比較例における滑剤の平均粒径はこの方法にて測定した。
【0047】
(1−2)フィルム中の粒子の粒径
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッターリング装置(JIS−1100型イオンスパッターリング装置)を用いてフィルム表面に、1×10-3torrの真空下で0.25kV、1.25mAの条件でイオンエッチング処理を10分間施した。さらに、同じ装置で金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観測し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子の面積相当粒径(Di)を求めた。下式で表わされる面積相当粒径(Di)の数平均値を平均粒径(D)とした。
【0048】
【数1】
Figure 0004101390
【0049】
2.フィルム厚み(重量法)
試料フィルムの幅をW(cm)、長さをl(cm)、重量をG(g)、密度をd(g/cm3)としたとき、フィルム厚みt(μm)を下記式で算出した。
t=G/(W×l×d)×10000
【0050】
3.スペースファクター(F)
100cm2のフィルムを試料とし、上記重量法で求めた厚みをt1(μm)、10cm角の試料フィルムを10枚重ね、マイクロメーターを用いて求めた試料フィルム1枚分の厚みをt2(μm)としたとき、下記式より算出した。
スペースファクター(%)=100−t1/t2×100
【0051】
4.表面突起
(4−1)高さ1.5μm以上の突起数
NIKON二光束顕微鏡OPTIPHOT(波長λ=546nm)を用いて、干渉縞がλ/2であることを利用し、突起高さを算出し、1cm2当りに存在する干渉縞が5つ以上のものを1.5μm以上の突起としてカウントした。
【0052】
(4−2)表面粗さ
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリング入ピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定した。その粗さ曲面をZ=F(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値(Ra、単位nm)をフィルムの表面粗さとして定義した。
【0053】
【数2】
Figure 0004101390
【0054】
5.固有粘度(IV)
ο−クロロフェノールを溶媒として用い、25℃で測定した。単位は100cc/g(dl/g)である。
【0055】
6.ジエチレングリコール(DEG)の共重合量
抱水ヒドラジンを用いてポリマーを分解し、ガスクロマトグラフィにより定量した。
【0056】
7.密度
硝酸カルシウム水溶液を溶媒として用いた密度勾配管中、25℃で浮沈法により測定した。
【0057】
8.面配向係数(NS)
アッベ屈折計を用い、ナトリウムD線(589nm)を光源として屈折率を測定し、下記式により求めた。
NS=(nMD+nTD)/2−nZ
(上記式中、nMDは二軸配向フィルムの機械軸方向の屈折率、nTDは機械軸方向と直交する方向(幅方向)の屈折率、およびnZはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。)
【0058】
9.フィルムの製膜性
二軸延伸製膜を24時間連続運転したときのフィルム破断の発生した回数で評価した。単位は回/24時間である。極薄フィルムは、フィルム破断が発生しやすいが、実用化の点から、通常この値が2回/24時間以下であることが好ましい。
○(製膜性良好) :破断2回以下
△(歩留まり不満):破断3〜5回
×(製膜性不良) :破断6回以上
【0059】
10.スリット性
長さ20000m、幅500mmのフィルムロールをスリットし、長さ10000m、幅20mmのスリット品を50個作成した。切断部を含むスリット品の個数でスリット性を評価した。
◎(スリット性優秀):切断部を含むスリット品の個数が0
○(使用可) :切断部を含むスリット品の個数が2個以内
×(使用不可) :切断部を含むスリット品の個数が3個以上
【0060】
11.絶縁破壊電圧(BDV)
JISC2318に示す方法に従って測定し、n=100の平均値を絶縁破壊電圧(BDV)とした。
【0061】
12.CR値
試料フィルムを、23℃、50%RH、16時間の条件で状態調節した後、23℃、50%RHの雰囲気下で、JISC2319に示す方法に従って測定した。
【0062】
13.誘電正接(tanδ)
試料フィルムを、23℃、50%RH、16時間の条件で状態調節した後、フィルムの両面にAl蒸着を行い、JIS−C−2318の電極およびキャパシタンス・ブリッジを用いて100℃、1kHzにおける値を測定した。
【0063】
14.ピンホール
マジックインキを試薬特級エタノールで10倍に希釈した液を感熱紙上に密着させた試料フィルムの上に滴下し、エアーブラシで全体に広げ、感熱紙側に転写したピンホール箇所の個数を数え、3000cm2(0.3m2)当りの個数を計算した。
【0064】
15.熱収縮率
試料フィルムに30cm間隔で標線を入れ、加熱オーブン中で張力フリーの状態で一定時間熱処理(150℃、30分間)後の試料長の変化から下記式により求めた。
熱収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100
(上記式中、L1は熱処理前の試料長、L2は熱処理後の試料長を表わす。)
【0065】
16.フィルム中の触媒量、アルカリ金属量
試料フィルムを、蒸留アセトンで2回以上洗浄乾燥した後、0.200g採取した。次に、試薬特級の硫酸、硝酸等で湿式分解し、イオン交換蒸留水を20ml加え試料液とした。この試料液を高周波プラズマ発光分光分析装置(ジヤーレルアッシュ製、Atomu Comp Siries 800)にて金属定性定量分析を行なった。
【0066】
[実施例1〜4]
表1記載の量の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびイソフタル酸ジメチルと、エチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに表1記載の粒径を有する炭酸カルシウムおよび板状珪酸アルミニウムを表1記載の量添加して、次いで220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後リン酸トリメチル0.023部を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行って固有粘度が0.61dl/g、ジエチレングリコール共重合量1.1モル%の共重合PENポリマーを得た。このポリマーを170℃において6時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度310℃で溶融し、開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。
こうして得られた未延伸フィルムを140℃で縦方向に3.6倍に延伸し、次いで140℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で5秒間熱固定処理し、厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。これらのフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
実施例1において、イソフタル酸成分の含有量を3モル%とし、延伸倍率を縦方向に4.1倍、横方向に4.5倍とした以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
イソフタル酸成分を共重合しないこと以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムはスリット性が不十分であった。
【0069】
[比較例2]
炭酸カルシウムを添加せず、板状珪酸アルミニウムは表1に示す粒径、量を添加した以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムは滑り性が不良で巻取りが困難であった。
【0070】
[比較例3]
板状珪酸アルミニウムを添加せず、炭酸カルシウムは表1に示す粒径、量を添加した以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムは製膜時の切断が多く、ピンホールが多かった。
【0071】
[比較例4]
エステル交換反応時、ポリマーのジエチレングリコール共重合量が約4モル%となる量のジエチレングリコールを添加した。それ以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムは面配向係数が小さいため絶縁破壊電圧が低く、また100℃における誘電正接が大きく、大容量コンデンサ用として不適である。また張力をかけると伸び易い欠点を有する。
【0072】
[比較例5]
延伸倍率を縦4.8倍、横5.5倍とした以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムは面配向係数が過大でスリット性が不十分であり、製膜時切断が多かった。
【0073】
[比較例6]
イソフタル酸成分を12モル%とした以外は実施例1と同様にして厚み1.5μmの二軸配向共重合PENフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。このフィルムのスリット性は優れていたが、面配向係数が小さいため絶縁破壊電圧が低く、また100℃の誘電正接が大きく、大容量コンデンサ用として不適である。
【0074】
【表1】
Figure 0004101390
【0075】
【発明の効果】
本発明は、次のような優れた効果を持ち、極薄フィルムを必要とする大容量コンデンサ用フィルムとして好適に用いられる。
(1)製膜時並びにスリット時の破断がなく、極薄フィルムでありながら生産性に優れる。
(2)スペースファクターが小さいのでコンデンサの大容量化が可能である。
(3)フィルム表面が適度に粗面化されており、フィルムの滑り性が良好で、製膜時、加工時の作業性に優れる。
(4)触媒量、金属量が適量で絶縁抵抗が高く、CR特性が優れる。

Claims (4)

  1. 炭酸カルシウムおよび板状珪酸アルミニウムの粒子を含有する共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなるフィルムであって、該炭酸カルシウムの平均粒径が該板状珪酸アルミニウムの平均粒径より大きく、該共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートが、共重合成分として下記式(A)で表わされる化合物を全ジカルボン酸成分の総量に対し0.1〜10モル%およびジエチレングリコールを全グリコール成分の総量に対し3モル%以下共重合した共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートであり、該フィルムの面配向係数が0.23以上0.275以下、密度が1.350g/cm3以上、スペースファクターが1〜19%、かつ該フィルム表面の高さ1.5μm以上の突起が300〜700個/cm2であることを特徴とするコンデンサ用フィルム。
    Figure 0004101390
    (式(A)中、R1およびR2はそれぞれ水素原子または低級アルキル基を表わし、互いに同一でも異なっていてもよい。)
  2. 炭酸カルシウムの平均粒径が0.5〜5μm、含有量が0.1〜2重量%、板状珪酸アルミニウムの平均粒径が0.1〜2μm、含有量が0.1〜1重量%である請求項1記載のコンデンサ用フィルム。
  3. 共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートの固有粘度が0.40以上、フィルムの厚みが0.2〜20μm、熱収縮率が3%以下、絶縁破壊電圧が260V/μm以上、かつピンホールが0.1個/cm2以下である請求項1記載のコンデンサ用フィルム。
  4. 共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合触媒としてマンガン化合物およびアンチモン化合物、ならびに熱安定剤としてリン化合物を下記式(1)、(2)および(3)を満たす量含有し、アルカリ金属の含有量が10ppm以下であり、かつフィルムのCR値が10000ΩF以上である請求項1または2記載のコンデンサ用フィルム。
    30≦Mn≦100 (1)
    150≦Sb≦450 (2)
    P/Mn≧1 (3)
    (上記式中、Mnはマンガン元素の共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Sbはアンチモン元素の共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Pはリン元素の共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)をそれぞれ表わす。)
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