JP3693457B2 - コンデンサー用フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサーに使用されるポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムは、その優れた機械的性質、熱的性質、及び耐熱性を有することからコンデンサー用フィルムに使用されている。
【0003】
コンデンサーにおいては、最近の電気あるいは電子回路の小型化要求に伴い、コンデンサーの小型・大容量化が品質条件となってきており、そのベースとなる誘電材料であるフィルムも薄く成形することが進められている。フィルムコンデンサーにおいて誘電体であるフィルムの薄膜化が図られる理由は、(イ)コンデンサーの静電容量が誘電材料の誘電率電極面積に比例すること、(ロ)フィルム厚みに反比例すること、言い換えると誘電体の単位体積当りの静電容量はフィルム厚さの2乗に反比例し、かつ誘電率に比例することから、同じ誘電率の誘電材料を使用する限り、コンデンサーの小型化又は大容量化を図ろうとすれば、フィルム厚みを薄くすることが不可欠なこととなるからである。
【0004】
このようなフィルムの薄膜化の必要性があるものの、従来の延伸フィルムにおいてその厚みを単に薄くするだけでは次のような問題点がある。例えば、フィルムの薄膜化に伴い、フィルムに電極を蒸着する際や、スリット、素子巻き等の工程における作業性が悪くなる問題がある。
【0005】
この作業性はフィルムの滑り性に関るものであり、その滑り性を改良するためには、一般に熱可塑性樹脂フィルムにおいては、フィルム表面に微小な凹凸を与える方法が知られている。かかる方法の例として、不活性無機微粒子をフィルムの原料である熱可塑性重合体の重合時、又は重合後に添加したり(外部粒子添加方式)、熱可塑性重合体の重合時に使用する触媒等の一部又は全部を反応工程でポリマー中に析出させる技術(内部粒子析出方式)が公知である。
【0006】
しかし、極薄のフィルムの製造方法において、不活性無機微粒子を同一濃度のまま添加した重合体を薄膜化すると、単位面積当りの不活性無機微粒子の数が減少し、フィルム表面における微粒子の間隔が広がり、フィルム表面が平坦化し、滑り性が低下する傾向にある。従って薄膜化に伴う滑り性低下を補うためには、フィルム厚みが薄くなればなるほど、添加する不活性無機微粒子の添加濃度を高めるか、あるいは粒径を大きくする必要があった。
【0007】
この場合、特にドラフト比の高い溶融押出時や延伸の際に不活性無機微粒子と熱可塑性重合体との親和性が乏しいことに起因して、ボイドが界面、すなわち不活性無機微粒子のまわりに多発し、このボイドの発生の結果、得られたフィルムの機械的性質(例えば破断強度、破断伸度)が低下するばかりでなく、フィルムを製造する際にも破断が発生しやすくなり、生産性の低下、製造条件の安定性に欠ける問題があった。
【0008】
かかる問題を解消せしめ、作業性(ハンドリング性)に優れ、かつ製膜性に優れた4μm以下の薄い熱可塑性フィルムが先に提案されている(特開平1−266145号公報)。しかし、熱可塑性フィルムがポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの場合、機械的性質の低下がなく、作業性、製膜性に優れるものの、含有する粒子によって形成されるフィルム表面の突起により、フィルムを重ね合わせた時に生じる空気層が厚くなり、体積当りのコンデンサー容量が低下するためコンデンサー用フィルムとしては不充分である問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、作業性に優れ、コンデンサーの大容量化が可能なコンデンサー用フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特定粒径の炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムを使用することにより、フィルム表面が粗くてもスペースファクターが小さいとコンデンサーの大容量化が可能であり、さらに1.5μm以上の高さの突起個数が特定範囲であると、スペースファクターを維持しながら作業性に優れたフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、平均粒径が0.5〜5μmである炭酸カルシウム0.1〜2重量%、及び平均粒径が0.1〜2μmである板状ケイ酸アルミニウム0.1〜1重量%を含有するポリエチレン−2,6−ナフタレートからなるコンデンサー用フィルムであって、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合触媒としてマンガン化合物、アンチモン化合物、熱安定剤としてリン化合物を下記式(1)、(2)及び(3)を満たす量含有し、アルカリ金属の含有量が10ppm以下であり、フィルムのスペースファクターが1〜19%、及びフィルム表面の1.5μm以上の高さの突起が300〜700個/cm2フィルムの厚みが1〜20μmかつフィルムのCR値が10000ΩF以上であることを特徴とするコンデンサー用フィルムである。
【0012】
本発明のコンデンサー用フィルムを構成するポリエチレン−2,6−ナフタレートは、その繰返し構造単位が実質的にエチレン−2,6−ナフタレートのみならず、繰返し構造単位の数の10%以下、好ましくは5%以下が他の成分であるポリエチレン−2,6−ナフタレート共重合体及びポリマー混合物を含む。
【0013】
一般にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸又はその機能的誘導体、及びエチレングリコール又はその機能的誘導体とを触媒の存在下で適当な反応条件の下で重合されるが、本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートには、このポリエチレン−2,6−ナフタレート重合完結前に適当な1種又は2種以上の第3成分(変性剤)を添加し、共重合又は混合ポリエチレン−2,6−ナフタレートとしたものであってもよい。好ましい第3成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、コハク酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、又はそれらの低級アルキルエステル、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、又はそれらの低級アルキルエステル、あるいはプロピレングリコール、トリメチレングリコールの如き2価アルコール類等の化合物が挙げられる。ポリエチレン−2,6−ナフタレート又はその変性重合体は、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等の一官能性化合物によって末端の水酸基及び/又はカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは例えばごく少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き三官能、四官能エステル形成性化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。
【0014】
かかるポリエチレン−2,6−ナフタレートは、前述の酸成分のエステル形成性誘導体、例えばジ低級アルキル−2,6−ナフタレートとエチレングリコールを公知の方法でエステル交換反応させた後、重縮合して製造されるものを好ましく使用するが、エステル交換反応においては、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルとエチレングリコールをエステル交換反応触媒の存在下で反応させる。
【0015】
エステル交換反応触媒としては、マンガン化合物が好ましく用いられ、マンガン化合物としては、酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。これらの中、酢酸塩が特に好ましく用いられる。
【0016】
エステル交換反応が実質的に終了した時点でリン化合物を添加し、エステル交換触媒を失活させることが好ましい。リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート及び正リン酸が好ましく使用できる。これらの中、トリメチルホスフェートが特に好ましい。
【0017】
重縮合触媒としては、アンチモン化合物が好ましく用いられ、アンチモン化合物としては三酸化アンチモンが特に好ましく用いられる。
【0018】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレートにおいては、上記触媒がポリエチレン−2,6−ナフタレート中に、下記式(1)、(2)、(3)を満足する量含有させることが必要である
【0019】
【数4】
30≦Mn≦100 ・・・ (1)
【0020】
【数5】
150≦Sb≦450 ・・・ (2)
【0021】
【数6】
P/Mn≧1 ・・・ (3)
[式中、Mnはマンガン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Sbはアンチモン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Pはリン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)をそれぞれ表わす。]
【0022】
マンガン元素の含有量がポリエチレン−2,6−ナフタレート中30ppm未満では、エステル交換反応が不充分であり、一方100ppmを超えるとフィルムのCR値が低下しコンデンサー用フィルムとして適さなくなることがある。また、アンチモン元素の含有量が150ppm未満では重縮合反応性が低下して生産性が悪くなり、一方450ppmを超えると熱安定性が劣りフィルム製膜時の工程切断や機械的強度の低下を招くことがある。さらに、P/Mnが1未満では固有粘度の低下を引き起こすことがある。
【0023】
また、アルカリ金属の含有量は10ppm以下であることが必要である。アルカリ金属の含有量が10ppmを超えるとフィルムのCR値が低下しコンデンサー用フィルムとして適さなくなることがある。
【0024】
本発明のコンデンサー用フィルムはそのフィルム表面に多数の微細な突起を有している。それらの多数の微細な突起は、本発明によればポリエチレン−2,6−ナフタレート中に分散して含有される多数の炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムに由来する。
【0025】
本発明においてポリエチレン−2,6−ナフタレート中に含有される炭酸カルシウムは、その平均粒径が0.5〜5μm、好ましくは0.5〜3μmのものである。
【0026】
ここで「平均粒径」とは、測定した全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球形直径」を意味する。「等価球形直径」とは粒子と同じ容積を有する想像上の球(理想球)の直径を意味し、粒子の電子顕微鏡写真又は通常の沈降法による測定から計算することができる。
【0027】
炭酸カルシウムの平均粒径が0.5μm未満では、フィルムをマスタロール又は製品ロール等に巻き取る際エアースクイーズ性が不良(巻き込み空気が逃げにくい)なためしわが発生しやすく、また滑り性が不充分で加工工程での作業性が低下し、好ましくない。また平均粒径が5μmを超えるとフィルム表面が粗れすぎ、スペースファクターが増大し、さらには絶縁破壊電圧の低下、絶縁欠陥の増加等をもたらすので好ましくない。炭酸カルシウムの平均粒径はフィルム厚みより大きくてもかまわない。
【0028】
本発明において炭酸カルシウムの添加量は、ポリエチレン−2,6−ナフタレート中に0.1〜2重量%とする必要があり、好ましくは0.1〜1重量%である。炭酸カルシウムの添加量が0.1重量%未満では、フィルムを巻き取る際のエアースクイーズ性が不良となり、一方2重量%を超えると、フィルム表面が粗れすぎ、絶縁破壊電圧の低下等を招き好ましくない。
【0029】
本発明に用いる炭酸カルシウムとしては、任意のものを用いることができ、天然に産出する石灰石、チョーク(白亜)、及び石灰石から化学的方法によって生成せしめる沈降炭酸カルシウム等のカルサイト結晶、石灰乳に高温で炭酸ガスを反応させて得られるアルゴナイト結晶、パテライト結晶及びこれらを組み合わせたもの等が例示される。石灰石を機械的に粉砕して得られる重質炭酸カルシウム(カルサイト結晶)も用いることができる。
【0030】
本発明においてポリエチレン−2,6−ナフタレート中に含有される板状ケイ酸アルミニウムは、その平均粒径が0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.2μmのものであり、その含有量としては0.1〜1重量%である。
【0031】
板状ケイ酸アルミニウムの平均粒径が0.1μm未満では、フィルムの滑り性が損なわれ、作業性が低下するので好ましくなく、一方2μmを超えるとフィルム表面が粗れすぎスペースファクターが増大するので好ましくない。
【0032】
また板状ケイ酸アルミニウムの含有量が0.1重量%未満では、フィルムを巻き取る際のエアースクイーズ性が不良となり、一方1重量%を超えるとフィルム表面が粗れすぎスペースファクターが増大するので好ましくない。
【0033】
本発明における板状ケイ酸アルミニウムとは、アルミノケイ酸塩のことをいい、任意のものを用いることができ、天然に産出するカオリン鉱物からなるカオリンクレー等が例示される。さらに、カオリンクレーは、水洗等の精製処理を施されたものであってもよい。
【0034】
本発明においては、ポリエチレン−2,6−ナフタレートに、平均粒径0.5〜5μmの炭酸カルシウム及び平均粒径0.1〜2μmの板状ケイ酸アルミニウムを含有させる。炭酸カルシウムのみでフィルムの作業性を確保しようとすると、フィルムのスペースファクターが大きくなりすぎ好ましくない。一方板状ケイ酸アルミニウムのみでは、大突起の形成ができず作業性とスペースファクターの両立ができない。
【0035】
本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレートに添加される炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムの添加時期は、ポリマー重合前でもよく、重合反応中でもよく、また重合終了後ペレタイズする時に押出機中で混練させてもよく、さらにシート状に溶融押出する際に添加し、押出機中で分散させて押出してもよいが、重合前に添加するのが好ましい。
【0036】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートに炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムを添加するには、公知の任意の方法を採用すればよいが、例えばポリエチレン−2,6−ナフタレート重合前に添加を行なう場合には、エチレングリコール中に炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムを添加し、超音波振動等を行なってポリマー中に分散させるのが好ましい。
【0037】
本発明のコンデンサー用フィルムは、そのスペースファクターが、1〜19%である必要がある。
【0038】
なお、スペースファクターとは、試料フィルム100cm2の重量w(g)と、密度d(cm3/g)から求めた重量法厚みをt1(μm)、10cm角の試料フィルムを10枚重ね、マイクロメーターを用いて求めた試料フィルム1枚分の厚みをt2(μm)としたとき、下記式より算出される値である。
【0039】
【数7】
スペースファクターF(%)=100−t1/t2×100
【0040】
このスペースファクターが1%未満では、フィルムの滑り性、作業性(ハンドリング性)が不充分であり、一方19%を超えると、体積当りのコンデンサー容量が低くコンデンサーの小型大容量化に不適であるため好ましくない。
【0041】
また、本発明のコンデンサー用フィルムの表面は、前述の炭酸カルシウム及び板状ケイ酸アルミニウムに由来する多数の突起を有するが、その突起は1.5μm以上の高さのものが300〜700個/cm2以下である必要がある。1.5μm以上の高さの突起が300個/cm2未満では、突起間の間隔が広がってフィルム表面が平坦化し、滑り性が低下する。一方700個/cm2を超えるとフィルム表面が粗れすぎ、スペースファクターが大きくなりすぎて好ましくない。
【0042】
本発明のコンデンサー用フィルムは、そのポリマーの固有粘度が0.40以上であることが好ましく、0.40〜0.80であることがさらに好ましい。固有粘度が0.40未満では工程切断が多発することがある。
【0043】
またコンデンサー用フィルムの厚みは1〜20μmであることが必要であり、さらに1〜15μmが好ましい。厚みが1μm未満では製膜が困難であり、一方20μmを超えるとコンデンサーの小型化が図りにくくなることがある。
【0044】
また、本発明のコンデンサー用フィルムの熱収縮率は、3%以下であることが好ましい。3%を超えるとコンデンサー製造時の、蒸着工程においてフィルムがが収縮し、しわがはいることがある。
【0045】
さらには電気絶縁材料であるという観点から絶縁破壊電圧(BDV)は、260V/μm以上であることが好ましい。
【0046】
また、本発明のコンデンサー用フィルムのピンホールは、0.1個/cm2以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、本発明のコンデンサー用フィルムのCR値(絶縁抵抗)は、10000ΩF以上であることが必要である。CR値が10000ΩF未満では、フィルムの絶縁抵抗が不足し、電気絶縁材料として不適となることがある。
【0048】
なお、1.5μm以上の高さの突起数、ポリマーの固有粘度、フィルムの厚み、熱収縮率、絶縁破壊電圧(BDV)、ピンホール、及びCR値はそれぞれ後述の方法により測定した。
【0049】
本発明のコンデンサー用フィルムは、二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである。該フィルムは二軸方向(例えば縦及び横方向)に、それぞれ延伸倍率2倍以上で延伸したものが好ましい。二軸方向の延伸倍率は等しくても、等しくなくてもよい。また、該フィルムは単一膜であっても、積層フィルムであってもよい。
【0050】
本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムは、例えば通常の押出温度、すなわち融点(以下Tmと表わす)以上(Tm+70℃)以下の温度で溶融押出された固有粘度が0.40〜0.80の未延伸フィルムを、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの二次転移点(以下Tgと表わす)以上(Tg+70℃)以下の温度で縦あるいは横方向に2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸し、次いで前記延伸方向と直角方向に(前記延伸方向が縦方向であるならば横方向)Tg以上(Tg+70℃)以下の温度で2.5〜5.0倍の延伸倍率で延伸する(延伸はこのような逐次二軸延伸であってもよく、また同時二軸延伸であってもよく、その製造方法は特に限定されない)と得られる。このようにして得られた二軸配向フィルムは、(Tg+70℃)以上Tm以下の温度で1〜100秒間熱固定するのが好ましい。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例において、各種特性値は下記の方法で測定・評価した。
【0052】
1.粒子の粒径
(1-1) 粉体の粒径
島津製作所CP−50型セントリフュグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyser)を用いて測定した。得られた遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との累積曲線から、50マスパーセント(mass percent)に相当する粒径を読み取り、この値を平均粒径とした。(「粒度測定技術」、日刊工業新聞社発行、1975年、p.242-247参照)
【0053】
(1-2) フィルム中の粒子の粒径
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッターリング装置(JIS-1100型イオンスパッターリング装置)を用いてフィルム表面に、1×10-3torrの真空下で0.25kV、1.25mAの条件にてイオンエッチング処理を10分間施した。さらに、同じ装置で金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて1万〜3万倍で観測し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子の長径(Dli)、短径(Dsi)及び面積相当粒径(Di)を求めた。下式で表わされる面積相当粒径(Di)の数平均値を平均粒径(D)とした。
【0054】
【数8】
Figure 0003693457
【0055】
2.スペースファクター(F)
試料100cm2のフィルム重量w(g)と、密度d(cm3/g)から求めた重量法厚みをt1(μm)、10cm角の試料フィルムを10枚重ね、マイクロメーターを用いて求めた試料フィルム1枚分の厚みをt2(μm)としたとき、下記式より算出した。
【0056】
【数9】
スペースファクターF(%)=100−t1/t2×100
【0057】
3.表面突起
(3-1) 1.5μm以上の高さの突起数
NIKON二光束顕微鏡OPTIPHOT(波長λ=546nm)を用いて、干渉縞がλ/2であることを利用し、突起高さを算出し、1cm2当りに存在する1.5μm以上の突起をカウントした。
【0058】
(3-2) 表面粗さ
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリング入ピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定した。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値(Ra、単位nm)をフィルムの表面粗さとして定義した。
【0059】
【数10】
Figure 0003693457
【0060】
4.固有粘度(IV)
o−クロロフェノールを溶媒として用い、25℃で測定した。単位は100cc/gである。
【0061】
5.フィルムの製膜性
二軸延伸製膜を8時間連続運転したときのフィルム破断の発生した回数で表わした。単位は回/8時間である。極薄フィルムは、フィルム破断が発生しやすいが、実用化の点から、通常この値が2回/8時間以下であることが好ましい。
【0062】
6.絶縁破壊電圧(BDV)
JIS C 2318に示す方法に従って測定し、n=100の平均値を絶縁破壊電圧(BDV)とした。
【0063】
7.CR値
試料フィルムを、23℃、50%RH、16時間の条件で状態調節した後、23℃、50%RHの雰囲気下で、JIS C 2319に示す方法に従って測定した。
【0064】
8.ピンホール
マジックインキを試薬特級エタノールで10倍に希釈した液を感熱紙上に密着させた試料フィルムの上に滴下し、エアーブラシで全体に広げ、感熱紙側に転写したピンホール箇所の個数を数え、3000cm2当りの個数を計算した。
【0065】
9.フィルム厚み
試料フィルムの幅をW(cm)、長さをl(cm)、重量をG(g)、密度をd(g/cm3)としたとき、フィルム厚みt(μm)を下記式で算出した。
【0066】
【数11】
t=G/(W×l×d) × 10000
【0067】
10.熱収縮率
試料フィルムに30cm間隔で標線を入れ、加熱オーブン中で張力フリーの状態で一定時間熱処理(150℃、30分間)後の試料長の変化から下記式により求めた。
【0068】
【数12】
熱収縮率(%)=(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ×100
【0069】
11.フィルム中の触媒量、アルカリ金属量
試料フィルムを、蒸留アセトンで2回以上洗浄乾燥の後、0.200g採取した。次に、試薬特級の硫酸、硝酸等で湿式分解し、イオン交換蒸留水を20ml加え、試料液とした。この試料液を高周波プラズマ発光分光分析装置(ジャーレルアッシュ製、Atomu Comp Siries 800)にて金属定性定量分析を行なった。
【0070】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル及びエチレングリコールを、酢酸マンガンの存在下、常法によりエステル交換反応せしめた後、トリメチルホスフェートを添加した。次いで、三酸化アンチモン及び、表1記載の粒径を有する炭酸アルミニウム及び板状ケイ酸アルミニウムを表1記載の量添加して、常法により重縮合させてポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマーを得た。このポリマーを170℃において6時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度290〜310℃で溶融し、開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。
【0071】
こうして得られた未延伸フィルムを140℃で縦方向に3.6倍に延伸し、次いで140℃で横方向に4.0倍延伸し、さらに220℃で5秒間熱固定処理し、厚み2μmの二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを得た。これらのフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 0003693457
【0073】
【発明の効果】
本発明は、次のような優れた効果を持ち、極薄フィルムを必要とするコンデンサー用フィルムとして好適に用いられる。
(1)製膜時の破断がなく、極薄フィルムの製膜に有用であり、スペースファクターが小さいのでコンデンサーの大容量化が可能である。
(2)フィルム表面が適度に粗面化されており、フィルムの滑り性が良好で、製膜時、加工時の作業性に優れる。
(3)触媒量、金属量が適量で絶縁抵抗が高く、CR特性が優れる。

Claims (2)

  1. 平均粒径が0.5〜5μmである炭酸カルシウム0.1〜2重量%、及び平均粒径が0.1〜2μmである板状ケイ酸アルミニウム0.1〜1重量%を含有するポリエチレン−2,6−ナフタレートからなるコンデンサー用フィルムであって、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合触媒としてマンガン化合物、アンチモン化合物、熱安定剤としてリン化合物を下記式(1)、(2)及び(3)を満たす量含有し、アルカリ金属の含有量が10ppm以下であり、フィルムのスペースファクターが1〜19%、及びフィルム表面の1.5μm以上の高さの突起が300〜700個/cm2フィルムの厚みが1〜20μmかつフィルムのCR値が10000ΩF以上であることを特徴とするコンデンサー用フィルム。
    Figure 0003693457
    Figure 0003693457
    Figure 0003693457
    [式中、Mnはマンガン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Sbはアンチモン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)、Pはリン元素のポリエチレン−2,6−ナフタレート中の量(ppm)をそれぞれ表わす。]
  2. ポリエチレン−2,6−ナフタレートの固有粘度が0.40以上、かつ熱収縮率が3%以下、絶縁破壊電圧が260V/μm以上、及びピンホールが0.1個/cm2以下である請求項1記載のコンデンサー用フィルム。
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