JP6339344B2 - フィルムコンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、フィルムコンデンサに関する。
フィルムコンデンサは、例えば、ポリプロピレン樹脂をフィルム化した誘電体フィルムの表面に蒸着によって形成された金属膜を電極として有している。このような構成により、誘電体フィルムの絶縁欠陥部で短絡が生じた場合にも、短絡のエネルギーで欠陥部周辺の金属膜が蒸発、飛散して絶縁化し、フィルムコンデンサの絶縁破壊を防止できるという利点を有している。これを自己回復機能と呼ぶ。
このため、フィルムコンデンサは電気回路が短絡した際の発火や感電を防止することができるという点が注目され、近年、LED(Light Emitting Diode)照明等の電源回路への適用を始め、用途が拡大しつつある(例えば、特許文献1を参照)。
また、特許文献2では、コンデンサ素子および外部電極内部に耐電圧上昇作用を有するガスを封入することにより、コンデンサが長時間使用され、自己回復を繰り返し続けた後の終局破壊時においても、誘電体フィルムが分解して発生する可燃性ガスによるコンデンサ素子の発火・焼損する危険を防止できることが示されている。
特開2010−178571号公報 特開2002−289460号公報
しかしながら、特許文献2に示されたフィルムコンデンサは、金属化フィルムを積層巻回後、外部電極を形成する際にガスを封入したものであり、短絡が起こる可能性が比較的高い密着したフィルム間にガスを封入することはできないため、発火・焼損の防止には未だ不充分であった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、絶縁破壊電圧を高め、終局破壊時における発火・焼損の可能性をより低減できるフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
本発明のフィルムコンデンサは、セラミック粒子と樹脂とを含む誘電体フィルムが電極層を介して複数積層された積層体と、該積層体の一対の側面に設けられた一対の外部電極と、を備え、一対の該外部電極が、一対の前記側面に露出した前記電極層とそれぞれ電気的に接続されたフィルムコンデンサであって、前記誘電体フィルムの第1の主面が、樹脂からなる第1の樹脂面と、前記セラミック粒子を含み前記第1の樹脂面から突出したセラミック粒子集合部と、を有し、前記第1の主面上において前記セラミック粒子集合部を平面視した際の形状が、弧状、線状、Y字状、十字状、星状および樹枝状のいずれかであるとともに、前記セラミック粒子集合部が、前記第1の樹脂面を複数の領域に区画するように配置され、前記電極層が前記誘電体フィルムの第2の主面に設けられており、前記第1の主面に対向する前記電極層の第1の電極表面が、前記セラミック粒子集合部と接するとともに、前記第1の電極表面と前記第1の樹脂面との間に空隙を有し、該空隙に絶縁性の気体が存在することを特徴とする。
本発明によれば、絶縁破壊電圧を高め、終局破壊時における発火・焼損の可能性をより低減できるフィルムコンデンサを提供することができる。
(a)は、本発明の一実施形態であるフィルムコンデンサの一部を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)におけるX−X線断面図である。 フィルムコンデンサの外観斜視図である。
本発明のフィルムコンデンサの一実施形態について、図1および2を基に説明する。本実施形態において、誘電体フィルム1は、図1に示すように、セラミック粒子2aと樹脂3とを含み、その第1の主面1Aには、樹脂3からなる第1の樹脂面3Aと、セラミック粒子2aを含み第1の樹脂面3Aから突出したセラミック粒子集合部2とを備える構成となっている。なお、図1では、理解を容易にするために誘電体フィルム1の積層方向を誇張して示しており、実際の寸法関係を反映したものではない。
一方、誘電体フィルム1の第2の主面1Bには電極層4が形成されており、電極層4の第1の電極表面4Aと他の誘電体フィルム1の第1の主面1Aとが対向するように誘電体フィルム1を重ね合わせることにより積層体が形成される。なお、ここでいう積層体とは、誘電体フィルム1と電極層4とが交互に重ねあわされたものであり、たとえば矩形状の誘電体フィルム1と電極層4とが交互に積層された積層体以外に、長尺状の誘電体フィルム1と電極層4とが巻回された構造も含む。
積層体の電極層4が露出した一対の側面には、一対の外部電極7が設けられ、一対の側面に露出した電極層4とそれぞれ電気的に接続されている。
本実施形態においては、第1の電極表面4Aと誘電体フィルム1の第1の主面1Aとは、セラミック粒子集合部2において接するとともに、第1の電極表面4Aと第1の樹脂面3Aとの間に空隙5を有し、空隙5に絶縁性の気体が存在している。そして、セラミック粒子集合部2は、第1の樹脂面3Aを複数の領域に区画するように配置されている。すなわち、セラミック粒子集合部2が、第1の樹脂面3Aと第1の電極表面4Aとの間で空隙5を複数の領域に仕切る壁状に存在している。セラミック粒子集合部2が第1の樹脂面3Aを複数の領域に区画するように配置されていることにより、第1の主面1Aにおいて第1の樹脂面3Aの占める面積比率を大きくしても、安定した空隙5を形成することができる。
空隙5に絶縁性の気体が存在することにより、第1の樹脂面3Aと第1の電極表面4Aとの間に絶縁性の気体層が形成される。この絶縁性の気体層、たとえば空気や窒素(N)などの層により、フィルムコンデンサの絶縁破壊電圧(BDV)が向上するという効果が得られ、その結果、発煙・発火の可能性が低減される。このような効果は、パッシェンの法則からわかるように、たとえば気体層が1気圧の空気からなる場合、空隙5の厚さ(第1の樹脂面3Aと第1の電極表面4Aとの間隔)すなわち気体層の厚さが特に1000nm以下の場合において顕著となり、この時の気体層のBDVはおよそ300V以上にもなる。
また、空隙5にさらに絶縁性の高い気体が存在することで、さらにBDVが向上するため好ましい。絶縁性の高い気体としては、例えば、窒素(N)や六フッ化硫黄(SF)、ヨウ化トリフルオロメタン(CFI)などが挙げられる。
空隙5に存在する気体は、積層体および外部電極7の外表面に設けられた樹脂等からなる外装部材16により、空隙5内に保持される。この外装部材16は、積層体および外部電極7の外表面を全て覆うもの、たとえばケースと樹脂とを用いて積層体を埋設するようなものであってもよいし、また、積層体および外部電極7の外表面の一部のみ、たとえば積層体の一対の側面に設けられた外部電極7や積層体の他の側面などを被覆する被覆層であってもよい。
空隙5の内部に気体を充填するには、たとえば誘電体フィルム1と電極層4とを積層または巻回する際に、所望の気体の雰囲気中で行えばよい。また、空隙5に存在する気体の種類は、真空中でフィルムコンデンサを破断したり、積層部に穴をあけるなどして得られた気体を、ガスクロマトグラフィなどを用いて確認すればよい。
なお、誘電体フィルム1の第1の主面1Aにおいて、セラミック粒子集合部2の表面は、セラミック粒子2aが露出していてもよいが、樹脂3の薄い層により被覆されていていることが好ましい。これは、セラミック粒子2aは電極層4を構成する金属との接着性が高く、樹脂3の方が第1の電極表面4Aとの滑り性が高い(摩擦係数が低い)ことによる。このようにセラミック粒子集合部2の表面と第1の電極表面4Aとの滑り性を高めることにより、誘電体フィルム1を巻回する際に誘電体フィルム1にかかる応力を小さくすることができ、欠陥の発生が抑制されフィルムコンデンサの信頼性が向上する。また、セラミック粒子2aが露出している場合でも、露出部は一部のみで、他の大部分が樹脂3に埋まっていることが好ましい。セラミック粒子2aの大部分が樹脂3に埋まっていることにより、セラミック粒子集合部2の誘電体フィルム1からの脱落を防止することができる。なお、セラミック粒子2aは、表面に表面改質剤などが塗布されたものであってもよい。
セラミック粒子集合部2により複数の領域に区画された第1の樹脂面3Aの各領域の大きさは、たとえば500μm以内とすればよい。このような大きさであれば、第1の樹脂面3Aと第1の電極表面4Aとが接触することなく空隙5を形成することができる。なお、ここでいう区画された第1の樹脂面3Aの領域の大きさとは、区画された第1の樹脂面3Aの領域の面積の円相当径を示すものとする。
なお、第1の樹脂面3Aは、第1の樹脂面3Aの各領域が互いに連通している、すなわち複数のセラミック粒子集合部2が点在していてもよいが、複数の領域の少なくとも一部が、連続したセラミック粒子集合部2により、隣接する他の領域から独立した領域として区画されている、すなわち隣接する他の領域と連通していない閉じた領域であることが好ましい。第1の樹脂面3Aの各領域の少なくとも一部が、独立した個々の領域に区画され、閉じた領域であることにより、局所的な絶縁破壊が起きて可燃性ガスや絶縁性の低いガスが発生しても、これらのガスが周囲に拡散しにくいため、絶縁破壊の拡大を抑えることができる。
また、複数のセラミック粒子集合部2が点在する場合は、隣接するセラミック粒子集合部2同士の最近接距離を50μm以下とすることで、上述のような局所的な絶縁破壊の拡大を抑制する効果が得られる。
第1の主面1A上においてセラミック粒子集合部2を平面視した際の形状は、たとえば弧状、線状、Y字状、十字状、星状、樹枝状などいずれの形状であってもよく、それらが混在していたり、連続した網目状であってもよい。
セラミック粒子集合部2を形成するセラミック粒子2aのサイズ(平均粒径)としては、セラミック粒子2aの凝集の低減やセラミック粒子2a同士が当接したときに変形しやすくなるという理由から、10〜200nmであることが望ましい。
また、誘電体フィルム1におけるセラミック粒子2aの割合は、1〜10体積%、特に、2〜7体積%であることが望ましい。
上記した構成を有する誘電体フィルム1としては、その平均厚みが3μm、特には、2μmといった薄層化したものを好適に用いることができる。また、主面1A、1Bの算術平均粗さ(Sa)についても50nm以下、特に、10nm以下と平滑な表面を有するものが適している。
なお、誘電体フィルム1の第2の主面1Bにセラミック粒子集合部2’を備えていてもよい。第2の主面1Bにおいては、セラミック粒子集合部2’の表面にはセラミック粒子2aが露出していることが好ましい。セラミック粒子2aは電極層4を構成する金属との接着性が高く、第2の主面1Bと電極層4とを強固に密着させることができるからである。第2の主面1Bにおいてセラミック粒子集合部2’は第2の樹脂面3Bから突出していてもよいが、第2の樹脂面3Bに埋設されるとともにセラミック粒子2aの一部が第2の主面1B上に露出していることが好ましい。第2の主面1Bにおいてセラミック粒子集合部2’が突出した場合、その表面に露出したセラミック粒子2aが誘電体フィルム1から脱落したり、露出したセラミック粒子2aと樹脂面3Bとの段差部分から電極層4が剥離する懸念がある。なお、第2の樹脂面3Bと第2の電極表面4Bとの間には空隙が介在していてもよいが、フィルムコンデンサとした場合の容量を確保するという点から第2の樹脂面3Bと第2の電極表面4Bとが密着している方が好ましい。
なお、第2の主面1Bにおけるセラミック粒子集合部2’は、第1の主面1Aのセラミック粒子集合部2と、誘電体フィルム1の内部で連結していてもよい。
誘電体フィルム1のセラミック粒子集合部2の状態や、空隙5の有無については、例えば、フィルムコンデンサなどの積層体の誘電体フィルム1から化学的方法あるいは物理的方法によって電極層4を除去した表面や、フィルムコンデンサなどの積層体の積層方向または巻回軸に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)などの分析装置を用いて観察することで確認できる。
図2は、フィルムコンデンサの外観斜視図である。本実施形態のフィルムコンデンサは、矩形状の誘電体フィルム1と電極層4とが交互に積層されたいわゆる積層体を用いた積層型のフィルムコンデンサであってもよいし、長尺状の誘電体フィルム1と電極層4とを巻回した構造の積層体を用いた巻回型のフィルムコンデンサであってもよい。ただし、積層型のフィルムコンデンサの場合には、空隙5に存在する気体がフィルムコンデンサの外部に逃げないように、積層体の少なくとも外部電極7が設けられていない側面において、誘電体フィルム1同士を熱圧着したり、後述するような樹脂などの被覆からなる外装部材16を設ける必要がある。
これらのフィルムコンデンサは外部電極7に端子としてさらにリード線15を有していても良いが、フィルムコンデンサの小型化という点でリード線15を有しない構造が望ましい。また、積層体であるコンデンサ本体13および外部電極7の外表面は、その少なくとも一部が絶縁性および耐環境の点から樹脂などからなる外装部材16に覆われていてもよい。また、リード線15の一部が外装部材16に覆われていてもよい。外装部材16を設けることにより、空隙5に存在する気体の漏出を防止することもできる。
本実施形態の積層体は、例えば、以下に示すような製造方法によって得ることができる。まず、誘電体フィルム1の母材となる樹脂3を用意する。樹脂3としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(
PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびシクロオレフィンポリマー(COP)、などが好適である。
これらの樹脂3の室温(約25℃)における比誘電率(ε)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が3.3、ポリプロピレン(PP)が2.2、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が3.0、シクロオレフィンポリマー(COP)が2.2〜3.0である。
また、これらの樹脂3の室温(約25℃)における絶縁破壊電界(BDE)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が310(V/μm)、ポリプロピレン(PP)が380(V/μm)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が210(V/μm)、シクロオレフィンポリマー(COP)が370〜510(V/μm)である。
セラミック粒子2aとしては、アルミナ、酸化チタン、酸化珪素などの他にペロブスカイト型構造の複合酸化物などを適用できる。セラミック粒子2aと樹脂3との相溶性を高める上で、セラミック粒子2aにシランカップリング処理やチタネートカップリング処理等の表面処理を行っても良い。
誘電体フィルム1は、例えば、基材としてPET製のフィルムを適用し、この表面に、セラミック粒子2aを含む樹脂シートを形成することにより得ることができる。この場合、セラミック粒子2aと樹脂3とを含むスラリの粘度、および成膜時の膜厚を調整し、マランゴニ対流を発生させることにより本実施形態の誘電体フィルム1を得ることができる。この場合、マランゴニ数を80以上とすることで、誘電体フィルム1の成膜時に対流が発生し、樹脂3を主とするセルの周囲にセラミック粒子2aが集合し、誘電体フィルム1の第1の表面1Aにおいて、第1の樹脂面3Aから突出したセラミック粒子集合部2が第1の樹脂面3Aを複数の領域に区画するように配置された構成とすることができる。
成膜方法としては、ドクターブレード法、ダイコータ法およびナイフコータ法等、周知の成膜方法から適宜選択すればよい。なお、マランゴニ数は、以下の式によって定義される値である。
M=t/(μk)*(|dσ/dT|)*ΔT、
M:マランゴニ数、
t:膜厚(m)、
μ:粘度(N・s/m)、
k:熱伝導率(W/m・K)、
(|dσ/dT|):表面張力の温度勾配(N/m・K)、
ΔT:塗膜の表面と裏面の温度差(K)
ここで、熱伝導率kには便宜上、有機樹脂の熱伝導率(0.1〜0.5W/m・K)を適用し、他に、表面張力の温度勾配(|dσ/dT|)、および塗膜の表面と裏面の温度差ΔTは適宜規定する。
成膜に使用する溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を用いるのがよい。
次に、誘電体フィルム1を基材から剥離して、誘電体フィルム1の基材側の面である第
2の主面1BにAl(アルミニウム)などの金属成分を蒸着することによって電極層4を形成し、次いで、電極層4を形成した誘電体フィルム1を、絶縁性を有する気体の雰囲気中で巻回して積層体を得る。
次に、得られた積層体をフィルムコンデンサの本体部13として、その電極層4が露出した端面に外部電極7を形成する。外部電極7の形成には、例えば、金属の溶射や半田付けなどが好適である。また、ここで、外部電極7にリード線15を形成しても良い。次いで、外部電極7(リード線15を含む)を形成した本体部13の表面に樹脂からなる外装部材16を形成することによって本実施形態のフィルムコンデンサを得ることができる。
具体的な材料の選択を行って誘電体フィルムを作製し、以下の評価を行った。
まずセラミック粒子として平均粒径が100nmのアルミナ粒子(比誘電率:9)と、樹脂としてポリシクロオレフィンポリマー(分子量:Mw=20000、比誘電率2.2)を準備した。アルミナ粒子には樹脂との相溶性を向上させるためにシランカップリング処理を行った。
次に、上記のアルミナ粒子をシクロオレフィンポリマー中に分散させてスラリを調製した。このときシクロヘキサンを希釈剤として加えた。
その後、コータを用いて上記スラリをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布してシート状に成形し、誘電体フィルムを作製した。
作製した誘電体フィルムは、180℃で脱溶剤を行った後に基材から剥離し、基材側の面を第2の主面として平均厚みが75nmのAlの電極層を真空蒸着法により形成した。得られた電極層つきの誘電体フィルムを、表2に記載した雰囲気中で巻回して積層体とし、メタリコン処理により外部電極を形成し、メタリコン層の表面にリード線を接続してフィルムコンデンサを作製した。
誘電体フィルムの平均厚み(膜厚)は、脱溶剤後の誘電体フィルムの一部を切り取り、10等分した領域を測定した平均値より求めた。また、スラリの粘度は回転円板型粘度計を用いて室温(25℃)にて測定した。マランゴニ数は測定したスラリ粘度および膜厚を用いて上述の式から算出した。このとき、熱伝導率、表面張力の温度勾配および塗膜の表面と裏面の温度差には、基本的な物性値を用いた。樹脂に対するアルミナ粒子の体積比率、スラリ粘度、マランゴニ数Mおよび誘電体フィルムの平均厚みを表1に示す。
誘電体フィルムの第1の主面におけるセラミック粒子集合部の状態については、エネルギー分散型X線分光(EDS)および走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認した。積層体の空隙は、作製したフィルムコンデンサをクロスセクションポリッシャー(CP)により加工し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより確認した。
フィルムコンデンサの絶縁破壊電界(BDE)は、試験電圧を1分間印加して、静電容量が初期状態の95%以下となる電圧をフィルムコンデンサの絶縁破壊電圧(BDV)とし、得られたBDVの値と誘電体フィルムの平均厚みから算出した。これらの結果を表2に示す。
なお、フィルムコンデンサの内部に含まれる気体の種類は、フィルムコンデンサをヘッドスペースバイアル瓶に入れて密閉し、シリンジで瓶の内部の空気を吸い出した後、シリ
ンジを用いてフィルムコンデンサを壊し、得られた気体をガスクロマトグラフィにて分析した。その結果、フィルムコンデンサの内部に含まれる気体は、フィルムコンデンサを作製した際の雰囲気と同じ気体であることを確認した。
表1および2の結果より、スラリ粘度および膜厚を調整してマランゴニ数を80以上とした試料No.1〜4は、誘電体フィルムの第1の主面において、セラミック粒子集合部が第1の樹脂面を複数の領域に区画するように配置された状態となり、積層体の第1の樹脂面と第1の電極表面との間に空隙が存在していた。
これに対し、セラミック粒子を含まない試料No.5、6およびマランゴニ数が80以下の試料No.7では、セラミック粒子集合部が形成されず、積層体の第1の樹脂面と第1の電極表面との間に空隙が存在しなかった。
また、各試料について絶縁破壊電界(BDE)を評価したところ、空隙内に空気を有する試料No.1、3は、空隙のない試料No.5、7よりも高い値を示し、また空隙内に窒素を有する試料No.2、4は、空隙のない試料No.6よりも高い値を示した。
1 : 誘電体フィルム
1A : 誘電体フィルムの第1の主面
1B : 誘電体フィルムの第2の主面
2 : セラミック粒子集合部
2a : セラミック粒子
3 : 樹脂
3A : 第1の樹脂面
3B : 第2の樹脂面
4 : 電極層
4A : 第1の電極表面
4B : 第2の電極表面
5 : 空隙
7 : 外部電極
13 : 本体部
15 : リード
16 : 外装部材

Claims (7)

  1. セラミック粒子と樹脂とを含む誘電体フィルムが電極層を介して複数積層された積層体と、該積層体の一対の側面に設けられた一対の外部電極と、を備え、一対の該外部電極が、一対の前記側面に露出した前記電極層とそれぞれ電気的に接続されたフィルムコンデンサであって、
    前記誘電体フィルムの第1の主面が、樹脂からなる第1の樹脂面と、前記セラミック粒子を含み前記第1の樹脂面から突出したセラミック粒子集合部と、を有し、
    前記第1の主面上において前記セラミック粒子集合部を平面視した際の形状が、弧状、線状、Y字状、十字状、星状および樹枝状のいずれかであるとともに、前記セラミック粒子集合部が、前記第1の樹脂面を複数の領域に区画するように配置され、前記電極層が前記誘電体フィルムの第2の主面に設けられており、前記第1の主面に対向する前記電極層の第1の電極表面が、前記セラミック粒子集合部と接するとともに、前記第1の電極表面と前記第1の樹脂面との間に空隙を有し、該空隙に絶縁性の気体が存在することを特徴とするフィルムコンデンサ。
  2. 前記絶縁性の気体が、窒素(N)、六フッ化硫黄(SF)およびヨウ化トリフルオロメタン(CFI)からなる群のうち、少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
  3. 前記積層体および前記外部電極の外表面に、外装部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
  4. 前記セラミック粒子集合部の表面に、樹脂の被覆を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
  5. 前記セラミック粒子集合部により区画された前記第1の樹脂面の前記領域の大きさが、500μm以内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
  6. 前記第1の樹脂面の前記複数の領域のうち少なくとも一部の前記領域が、連続したセラミック粒子集合部に区画され、当該領域に隣接する前記領域から独立していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
  7. 複数の前記セラミック粒子集合部が前記第1の主面上に点在するとともに、隣接する前記セラミック粒子集合部の最近接距離が、50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
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