JP2015012076A - フィルムコンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】 誘電体フィルムを比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方が異なる2層構造とした場合でも、静電エネルギー密度を高めることのできるフィルムコンデンサを提供する。【解決手段】 比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方の異なる第1の誘電体層1と第2の誘電体層2との2層構造を有しているとともに、第1の誘電体層1の比誘電率をε1、破壊電界強度をE1とし、第2の誘電体層2の比誘電率をε2、破壊電界強度をE2としたときに、D={(ε1?E1)−(ε2?E2)}/{(ε1?E1)+(ε2?E2)}/2で表わされるDが0.1以下の誘電体フィルム10を具備してなる。【選択図】図4

Description

本発明は、フィルムコンデンサに関する。
フィルムコンデンサは、例えば、ポリプロピレン樹脂をフィルム化した誘電体フィルムの表面に蒸着によって形成された金属膜を電極として有している。このような構成により、誘電体フィルムの絶縁欠陥部で短絡が生じた場合にも、短絡のエネルギーで欠陥部周辺の金属膜が蒸発、飛散して絶縁化し、フィルムコンデンサの絶縁破壊を防止できるという利点を有している(例えば、特許文献1を参照)。
このため、フィルムコンデンサは電気回路が短絡した際の発火や感電を防止することができるという点が注目され、近年、LED(Light Emission Diode)照明等の電源回路への適用を始め、用途が拡大しつつある(例えば、特許文献2を参照)。
ところが、フィルムコンデンサは、各種の電子部品の実装された基板上において、セラミックコンデンサなど他の電子部品に比べて依然としてサイズが大きいことから、当該基板の低背化や実装密度の向上の妨げになっており、そのためフィルムコンデンサの小型化が検討されている。
この場合、フィルムコンデンサの小型化を図るには、誘電体フィルムを薄層化することや誘電体フィルムの積層数や巻回数を減らすこととなるが、そのためには誘電体フィルムの比誘電率と破壊電界強度を向上させる必要がある。
そこで、誘電体フィルムの特性である比誘電率および破壊電界強度をそれぞれの誘電体層で担うようにして、積層した構成とすることが提案されている。
例えば、特許文献3には、誘電体フィルムとして、ポリエステル樹脂からなる層と、比誘電率が3未満(誘電損失が0.001未満でもよい)の熱可塑性樹脂からなる層とを交互に重ね合わせた積層体とすることが開示されている。
特開平9−129475号公報 特開2010−178571号公報 特開2005−212248号公報
ところが、誘電体フィルムを、上記特許文献3に開示されているように、比誘電率および破壊電界強度のうち、少なくとも一方が異なるような2層構造とした場合には、2層のうち、まず、比誘電率と破壊電界強度との積が低い層から絶縁破壊が起こり、続いて、残った層に電界が集中するという挙動を採るようになる。このため2層構造とした誘電体フィルムでは、2層分の厚みで電界を受けることができないため、比誘電率と破壊電界強度の2乗との積である静電エネルギー密度(厳密には静電エネルギー密度に2/εを乗じたもの、ε:真空の誘電率)を高めることができないという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、誘電体フィルムを比誘電率およ
び破壊電界強度のうちの少なくとも一方が異なる、少なくとも2層構造とした場合でも、静電エネルギー密度を高めることのできるフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
本発明のフィルムコンデンサは、比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方の異なる第1の誘電体層と第2の誘電体層との2層構造を有しているとともに、前記第1の誘電体層の比誘電率をε、破壊電界強度をEとし、前記第2の誘電体層の比誘電率をε、破壊電界強度をEとしたときに、
D={(ε×E)−(ε×E)}/{(ε×E)+(ε×E)}/2
で表わされるDが0.1以下の誘電体フィルムを具備してなることを特徴とする。
本発明によれば、誘電体フィルムを比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方が異なる2層構造とした場合でも、静電エネルギー密度を高めることができる。
本発明のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。 本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの他の態様を示すもので、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうちの一方がセラミック誘電体を含んでいることを示す断面模式図である。 本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの他の態様を示すもので、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の2層構造が多層化された状態を示す断面模式図である。 (a)は、誘電体フィルムの両面に電極層を有する構造を模式的に示す断面図であり、(b)は、本発明のフィルムコンデンサの一実施形態を示す外観斜視図である。
図1は、本発明のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルム10は、比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方の異なる第1の誘電体層1と第2の誘電体層2との2層構造を有するものである。
ここで、第1の誘電体層1の比誘電率をε、破壊電界強度をEとし、第2の誘電体層2の比誘電率をε、破壊電界強度をEとしたときに、D={(ε×E)−(ε×E)}/{(ε×E)+(ε×E)}/2で表わされるD(絶対値)が0.1(10%)以下である。この場合、比誘電率が異なるとは、第1の誘電体層1と第2の誘電体層2との間での比誘電率の差が0.5以上であることをいう。また、破壊電界強度が異なるとは、両誘電体層間での破壊電界強度の差が50V/μm以上であることをいう。
本実施形態のフィルムコンデンサによれば、誘電体フィルム10を比誘電率および破壊電界強度のうち少なくとも一方が異なるような2層構造とした場合にも、第1の誘電体層1の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)と、第2の誘電体層2の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)との差が小さいことから、印加された電界(本実施形態では交流電界が適用される。)は、第1の誘電体層1および第2の誘電
体層2の2層に同時に分散するようにできるため、電界がいずれか一方の層に集中する状態を回避でき、これにより誘電体フィルム10の静電エネルギー密度を高めることができる。
ここで、静電エネルギー密度とは、比誘電率(ε)と破壊電界強度の2乗(E)との積(ε・E)で表される値である。この静電エネルギー密度(ε・E)は、以下(1)(2)および(3)の式から導くことのできる指標である。(1)フィルムコンデンサを構成する誘電体フィルム10の一方表面の面積をs、厚みをtとしたときの体積(v)を表す式(v=s×t)、(2)誘電体フィルム10の電界強度(E)と厚み(t)との積である耐電圧(電位差)(V)を表す式(V=E×t)、(3)C=ε×ε×s/t(但し、C:静電容量、ε:対象物(誘電体フィルム)の比誘電率、ε:真空の誘電率、s:誘電体フィルムの一方表面の面積、t:誘電体フィルムの厚み)。
この場合、特に、第1の誘電体層1の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)と、第2の誘電体層2の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)との差がほとんど無く、Dが0.01(0.1%)以下である場合には、誘電体フィルム10の静電エネルギー密度をさらに高めることが可能となる。Dが0.01(0.1%)以下である状態は、第1の誘電体層1の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)と、第2の誘電体層2の比誘電率εと破壊電界強度Eとの積(ε×E)との差がほとんど無いため、等しい状態とも言える。
これに対し、誘電体フィルム10において、第1の誘電体層1と第2の誘電体層2との間で、上記Dが0.1よりも大きい場合には、比誘電率(ε)と破壊電界強度(E)との積の低い方の層から絶縁破壊が起こり、続いて、残った層に電界が集中するようになる。このため2層構造とした誘電体フィルムでは、2層分の厚みで電界を受けることができないため、静電エネルギー密度を高めることが困難となる。
誘電体フィルム10の比誘電率(ε)は、誘電体フィルム10の両面に所定の面積で電極層を形成し、静電容量を測定して求める。
誘電体フィルム10を構成する第1の誘電体層1の比誘電率(ε)および第2の誘電体層2の比誘電率(ε)は、フィルムコンデンサから切り出した誘電体フィルム10を片面側から研磨を行い、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうち片方の誘電体層だけの構造にした後、その両面に所定の面積で電極層を形成した試料から求める。
特性評価に際しては、LCRメーターを使用して静電容量を測定し、測定した静電容量、電極層の有効面積(誘電体フィルムの両面で電極層が重なった面積)および誘電体フィルムの厚みから比誘電率を算出する。
誘電体フィルム10の破壊電界強度(E)、第1の誘電体層1の破壊電界強度(E)および第2の誘電体層の破壊電界強度(E)は、静電容量を測定した試料を用い、誘電体フィルム10の電極間、第1の誘電体層1または第2の誘電体層2の電極層間に、商用周波数60Hzで、毎秒100Vの昇圧速度で電圧を印加し、漏れ電流値が1.0mAを越えた瞬間の電圧値から求める。
誘電体フィルム10における第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の材料的な違いは、(電極層を除いた)誘電体フィルム10の両面の構造解析によって定めることができる。構造解析に用いる分析方法としては、クロマトグラフ分析、フーリエ変換赤外吸光分光分析およびラマン分光分析などが好適である。
本実施形態のフィルムコンデンサでは、誘電体フィルム10を構成する第1の誘電体層1および第2の誘電体層2における比誘電率の差が0.5以上であることが望ましい。
2層構造にした誘電体フィルム10において、2層間で比誘電率に0.5以上の差を持たせるようにした場合には、誘電体フィルム10中に高誘電率層を形成できるため、誘電体フィルム10の全体を高誘電率化するよりも容易に静電容量を向上させることが可能となる。また、誘電体フィルム10の比誘電率の向上はフィルムコンデンサの小型化へも大きく寄与する。ここで、厚みとは平均厚みのことをいい、具体的には、誘電体フィルム10の幅方向(巻回式構造体の場合には短い方向)を10等分して測定した値の平均値から求められる。この場合、誘電体フィルム10の比誘電率(ε)は、例えば、2.4以上、特に、2.6以上と高い方が好ましい。誘電体フィルム10の比誘電率が高くなれば、フィルムコンデンサにおける誘電体フィルム10の積層数や巻回数を減らすことが可能となり、電極面積の低下により小型化にも寄与するからである。
本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルム10の厚みは、高容量化という点で、10μm以下、特に、5μm以下であることが望ましく、一方、誘電体フィルム10の破壊電界強度を確保し、安定化できるという理由からは1μm以上であることが好ましい。
図2は、本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの他の態様を示すもので、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうちの一方がセラミック誘電体3を含んでいることを示す断面模式図である。
本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルム10は、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうちの一方がセラミック誘電体3を含んでいることが望ましい。誘電体フィルム10を構成する第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうちの一方がセラミック誘電体3を含む構成である場合には、セラミック誘電体3の特性(絶縁抵抗)に起因して、破壊電界強度などの絶縁特性をさらに向上させることが可能となり、また、セラミック誘電体3として強誘電体を適用した場合には、誘電体フィルム10の比誘電率をさらに高めることが可能となる。
誘電体フィルム10を構成する第1の誘電体層1および第2の誘電体層2のうちの一方にだけセラミック誘電体3を含ませるのは、両方の誘電体層に含ませた場合には、誘電体フィルム10の可とう性が低下し、誘電体フィルム10が曲がりにくくなり、例えば、巻回式のフィルムコンデンサを製造することが困難となるためである。
ここで、誘電体フィルム10にセラミック誘電体3が含まれる状態は、誘電体フィルム10の断面を、エネルギー分散分析器を付設した走査型電子顕微鏡等を用いることにより確認できる。
図3は、本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの他の態様を示すもので、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の2層構造が多層化された状態を示す断面模式図である。
本実施形態のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルム10としては、2層構造が多層化されたものであることが望ましい。誘電体フィルム10を第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の2層構造が多層化された構造とした場合には、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の各層の厚みを薄くする必要がある。誘電体フィルム10を構成する各誘電体層の厚みが薄くなると、厚みの低下に依存して単位厚み当たりの破壊電界強度が高くなる傾向となる。この効果により、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の2層
構造が多層化された誘電体フィルム10は全体としての静電エネルギー密度を高めることができる。第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の2層構造が多層化された構造というのは、比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方の異なる第1の誘電体層1および第2の誘電体層2が一つのブロックとなり、このブロックが複数重ねられている構造であれば、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2が必ず交互に積層されていることが必要ではなく、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2の積層体を一つのブロックとして積み重なっている構造であればよい。
図4は、(a)は、誘電体フィルムの両面に電極層を有する構造を模式的に示す断面図であり、(b)は、本発明のフィルムコンデンサの一実施形態を示す外観斜視図である。
上述した誘電体フィルム10を具備する本実施形態のフィルムコンデンサは、誘電体フィルム10の両面に電極層11を備えている構成を基本構造とする本体部13により構成されている。この本体部13は、矩形状の誘電体フィルム10と電極層11とが交互に積層された積層型のフィルムコンデンサの他に、長尺状の誘電体フィルム10と電極層11とが巻回された構造の巻回型のフィルムコンデンサにも適用することができる。これらのフィルムコンデンサは外部電極14に端子としてさらにリード線15を有していても良いが、フィルムコンデンサの小型化という点でリード線15を有しない構造が望ましい。また、コンデンサ本体13、外部電極14およびリード線15は絶縁性および耐環境の点から外装部材16に覆われていることが望ましい。
次に、本実施形態のフィルムコンデンサは、例えば、以下に示すような製造方法によって得ることができる。この場合、比誘電率および破壊電界強度の異なる2層の誘電体層を形成するために、まず、基材となる有機樹脂を用意する。
有機樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびシクロオレフィンポリマー(COP)、シアノレジンなどが好適である。
これらの有機樹脂の室温(約25℃)における比誘電率(ε)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が3.3、ポリプロピレン(PP)が2.3、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が3.0、シクロオレフィンポリマー(COP)が2.3〜3.0およびシアノレジンが20である。
また、これらの有機樹脂の室温(約25℃)における破壊電界強度(E)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が310(V/μm)、ポリプロピレン(PP)が380(V/μm)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が210(V/μm)、シクロオレフィンポリマー(COP)が370〜510(V/μm)およびシアノレジンが100(V/μm)である。
セラミック誘電体3としては、アルミナ、酸化チタン、酸化珪素などの他にペロブスカイト型構造の複合酸化物などを適用できる。
なお、誘電体フィルム10を2層構造にしたときの特性(比誘電率(ε)および破壊電界強度(E))は、上述した有機樹脂を混合して用いるかまたはセラミック誘電体3をフィラーとして所定量添加することによって調整する。
また、第1の誘電体層1および第2の誘電体層2における比誘電率(ε)と破壊電界強度(E)との積は、用いる有機樹脂およびセラミック誘電体の各物性ならびに形成する各誘電体層の厚みを考慮して設計する。
誘電体フィルム10を形成する場合、例えば、第1の誘電体層1としてPET製のフィルムを適用し、この表面に、比誘電率または破壊電界強度のうちの少なくとも一つの値の異なる他の有機樹脂の膜を形成することにより、誘電体フィルム10を得ることができる。この場合、成膜には、ドクターブレード法、ダイコータ法およびナイフコータ法等から選ばれる一種の成形法を用いる。
成膜に使用する溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を用いるのがよい。
次に、誘電体フィルム1の表面に金属成分を蒸着することによって電極層11を形成し、次いで、電極層11を形成した誘電体フィルム10を巻回させてフィルムコンデンサの本体部13を得る。
次に、本体部13の電極層11が露出した端面に外部電極14を形成する。外部電極14の形成には、例えば、金属の溶射、スパッタ法、メッキ法などが好適である。また、ここで、外部電極14にリード線15を形成しても良い。次いで、外部電極14(リード線15を含む)を形成した本体部13の表面に外装樹脂16を形成することによって本実施形態のフィルムコンデンサを得ることができる。
表1に示す具体的な材料の選択及び寸法の設定等を行って誘電体フィルムを作製し、以下の評価を行った。
まず、基材(または第1の誘電体層)となる有機樹脂製のシートを用意し、このシートの一方側の表面に、シート成型法により第2の誘電体層となる有機樹脂を主成分とする膜を形成した。この方法により作製した誘電体フィルムの厚みは耐電圧が3000Vとなるよう調整し、30μm以下になるようにした。第1の誘電体層として、より薄層化した膜を必要とする場合には、基材上にシート成型法により第1の誘電体層となる有機樹脂を主成分とする膜を形成した後に、同様の方法により第2の誘電体層となる有機樹脂を主成分とする膜を形成した。この場合、誘電体フィルムの厚みは4μmになるように調整した。
次に、作製した誘電体フィルムの両面に所定の面積でAlの電極層を蒸着法により形成した。
また、作製した誘電体フィルムを加工して第1の誘電体層および第2の誘電体層における比誘電率(ε、ε)および破壊電界強度(E、E)をそれぞれ求めるための試料を作製した。この場合、第1の誘電体層および第2の誘電体層が積層されている誘電体フィルムを片面側から研磨し、第1の誘電体層および第2の誘電体層のうち片方の誘電体層だけの構造にした後、両面に所定の面積となるようにAlの電極層を蒸着法により形成した。
次に、LCRメーターを使用して静電容量を測定し、得られた静電容量、電極層の有効面積(誘電体フィルムの両面で電極層が重なった面積)および誘電体フィルムの厚みから比誘電率を算出した。
第1の誘電体層および第2の誘電体層が接着したままの誘電体フィルムの破壊電界強度
(E)、誘電体フィルムを加工して第1の誘電体層または第2の誘電体層だけにした試料の破壊電界強度(E1、E2)は、それぞれ静電容量を測定した試料を用い、電極層間に60Hzの商用周波数で、毎秒100Vの昇圧速度で交流電圧を印加し、漏れ電流値が1.0mAを越えた瞬間の電圧値から求めた。また、測定によって得られた比誘電率および破壊電界強度から静電エネルギー密度(ε×E)を求めた。
作製した誘電体フィルム、第1の誘電体層および第2の誘電体層のそれぞれの比誘電率および破壊電界強度は、基材から見積もった値の±20%以内に入るものであった。
また、表1の試料No.7の積層構成を1単位とした誘電体フィルムを2枚重ねて作製した多層構造の誘電体フィルム(試料No.8)を作製し、静電容量(比誘電率)および破壊電界強度を同様に評価した。
表1の結果から明らかなように、誘電体フィルムを2層以上の多層構造とし、第1の誘電体層の比誘電率をε、破壊電界強度をEとし、第2の誘電体層の比誘電率ε、破壊電界強度をEとしたときに、D={(ε×E)−(ε×E)}/{(ε×E)+(ε×E)}/2で表わされるDを0.1以下とした試料(試料No.2および4〜7は、いずれも静電エネルギー密度(ε×E)が150,333を超えるものであった。
この中で、Dが0.01以下の試料(試料No.2)は、セラミック誘電体を含む試料(試料No.1)と比較した場合に、静電エネルギー密度(ε×E)が高かった。
また、Dが0.01以下の試料に関し、セラミック誘電体を含まない試料(試料No.5〜7)についても、試料No.5と比較した場合に、静電エネルギー密度(ε×E)が高くなっていた。
さらに、誘電体フィルムの比誘電率が2.6以上であり、第1の誘電体層および第2の誘電体層における比誘電率の差を0.5以上とした試料No.5〜7は、静電エネルギー密度(ε×E)が374,466以上であった。
またさらに、誘電体フィルムを4層の多層にした試料(試料No.7)は、同じ材料により作製された2層の試料(試料No.6)よりも静電エネルギー密度(ε×E)が高く、517,921であった。
これに対し、Dが0.1を超える試料(試料No.1、3)は、静電エネルギー密度(ε×E)が150,333以下であった。
10・・・・・・・誘電体フィルム
1・・・・・・・・第1の誘電体層
2・・・・・・・・第2の誘電体層
3・・・・・・・・セラミック誘電体
11・・・・・・・電極層
13・・・・・・・本体部
14・・・・・・・外部電極
15・・・・・・・リード
16・・・・・・・外装部材

Claims (6)

  1. 比誘電率および破壊電界強度のうちの少なくとも一方の異なる第1の誘電体層と第2の誘電体層との2層構造を有しているとともに、
    前記第1の誘電体層の比誘電率をε、破壊電界強度をEとし、
    前記第2の誘電体層の比誘電率をε、破壊電界強度をEとしたときに、
    D={(ε×E)−(ε×E)}/{(ε×E)+(ε×E)}/2
    で表わされるDが0.1以下の誘電体フィルムを具備してなることを特徴とするフィルムコンデンサ。
  2. 前記Dが0.01以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
  3. 前記第1の誘電体層および前記第2の誘電体層における比誘電率の差が0.5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムコンデンサ。
  4. 前記第1の誘電体層および前記第2の誘電体層のうちの一方がセラミック誘電体を含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
  5. 前記誘電体フィルムは前記2層構造が多層化されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
  6. 前記誘電体フィルムの両面に電極層を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
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