JP4098215B2 - 車両用人体検出装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両用ドアの外側に配置されたドアハンドル内に人体の接近に伴って静電容量が変化するセンサ電極を設け、前記センサ電極の静電容量の変化に基づいて人体の接近を判別する判別回路を備えた車両用人体検出装置に関する。

上記車両用人体検出装置は、自動車等の車両用ドアの開錠及び施錠操作を制御するシステムに用いられ、車両に接近する人体を検出するものである。すなわち、車両用ドアの開錠及び施錠を制御するシステムは、車の所有者であることを証明する電子キー若しくは電子カードを保持した状態でドアに接近してドアハンドルに触れると、人体の接近を検出してドアを開錠させる。なお、上記システムは、運転者が車両から降車してドアハンドルに装備されている手動スイッチを操作すると、ドアを施錠させる。

上記車両用人体検出装置の従来技術として、ドアハンドル内に設置したセンサ電極と車両ボディ（主として、ドアの外板）間で形成される等価的な平行平板電極の静電容量を利用して、空気と異なる媒質定数の物、例えば手がドアハンドルとドア外板間に装着されたことにより生じるセンサ電極の静電容量の変化を検出し、これをタッチセンサ若しくはスイッチ要素として取り扱う技術が開示されている（特許文献１参照）。

なお、上記等価的な平行平板電極のタッチセンサの機能は、例えば特許文献２によりその原理は開示され公知である。また、等価的な平行平板電極にせずとも単数の導電体で同様の静電容量の変化を検出してタッチセンサとすることが特許文献３に開示されており公知である。

特表２０００−５０９１２１号公報 特公平２−２７６３７号公報 米国特許第３６８９８１４号明細書

上記従来技術は、ドアハンドル内という劣悪な環境下に設けたセンサ電極を用いて良好な人体検出動作を実現する点で十分ではなかった。劣悪な環境とは、ドアハンドルに対する人体の接近状態により、センサ電極に対する距離や接近する方向等の条件のバラツキが大きいこと、及び、例えばドアハンドル内への水の浸入によってセンサ電極の静電容量が変化するような環境を指す。ここで、ドアハンドル内に水が入らないようにするために防水用の封止剤を使用すると、構造が複雑になり量産に向かない不都合が生じる。さらに、ドアハンドル内はスペースが限られているという制約もある。

本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な構造で大きなスペースを必要とせず、劣悪な環境下でも良好な検出動作を実現することができる車両用人体検出装置を提供することにある。

上記目的を達成するための本発明に係る車両用人体検出装置の特徴構成は、車両用ドアの外側に配置されたドアハンドル内に人体の接近に伴って静電容量が変化するセンサ電極を設け、前記センサ電極の静電容量の変化に基づいて人体の接近を判別する判別回路を備えたものであって、前記ドアハンドル内に前記センサ電極と一対で静電容量を形成する補助電極を設けている点にある。

すなわち、車両用ドアの外側に配置されたドアハンドルに人体が接近すると、人体の有する静電容量がドアハンドル内に配置されたセンサ電極と直接結合してセンサ電極の静電容量が変化する他に、人体の静電容量がドアハンドル内に設けられた補助電極とセンサ電極間の結合容量に直列接続され、この直列接続された補助電極とセンサ電極間の結合容量を介して人体の静電容量がセンサ電極に結合してセンサ電極の静電容量が変化する。そして、上記センサ電極の静電容量の変化に基づいて人体のドアハンドルへの接近が判別される。

ここで、ドアハンドル内のスペースが限られていることから、補助電極とセンサ電極間の結合容量は人体の静電容量に比べて小さく、人体の静電容量が補助電極とセンサ電極間の結合容量に直列接続されたときの静電容量の大きさは、補助電極とセンサ電極間の結合容量の大きさに主として依存する。その結果、ドアハンドルに対する人体の接近状態がばらついたときでも、人体の静電容量が補助電極とセンサ電極間の結合容量を介してセンサ電極に結合する場合は、人体の静電容量がセンサ電極に直接結合する場合に比べて、人体の接近時におけるセンサ電極の静電容量変化のバラツキが小さくなる。

また、補助電極がセンサ電極の近傍に位置していることから、補助電極とセンサ電極間の結合容量は安定していて大きく変動することがないため、人体の接近以外の原因によるセンサ電極の静電容量の変化を小さくすることができる。例えば、ドアハンドル内に水が入ってセンサ電極付近に侵入した場合でも、センサ電極の近傍には既に補助電極が位置しセンサ電極と容量結合しているので、水の侵入によるセンサ電極の静電容量の変化は抑制され、水の侵入の影響を受けにくくなる。

さらに、センサ電極の近傍に位置させて補助電極をドアハンドルに設置するだけの簡素な構造であり、大きな設置スペースを必要としない。

従って、簡素な構造で大きなスペースを必要とせず、劣悪な環境下でも良好な検出動作を実現することができる車両用人体検出装置が提供される。

また、他の特徴構成としては、前記センサ電極が長尺状に形成されて前記ドアの外板と対向配置され、前記補助電極を前記センサ電極と前記ドアの外板との間に位置させている点にある。

すなわち、長尺状に形成されたセンサ電極がドアの外板と対向配置されてドア外板に対して平行平板型に形成され、静電容量を確保している状態で、人体の手等がドアハンドルとドア外板の間に差し込まれると、センサ電極とドアの外板との間に位置する補助電極がセンサ電極と結合した結合容量を介して、人体の静電容量がセンサ電極に結合し、上記センサ電極とドア外板間の平行平板型の静電容量が変化する。ここで、ドアを開けるときは必ず手がドアハンドルとドア外板の間に差し込まれるので、人体のドアハンドルに対する接近を確実に検出することができる。

従って、一層良好な検出動作を実現することができる車両用人体検出装置の好適な実施形態が提供される。

また、他の特徴構成としては、前記補助電極を前記ドアハンドルの複数箇所に設けている点にある。

すなわち、人体の手等がドアハンドルの種々の箇所に接近したときに、ドアハンドルの各箇所に接近する人体の静電容量をドアハンドルの複数箇所に設けた補助電極を介してセンサ電極に結合させて、センサ電極の静電容量を確実に変化させ、人体のドアハンドルに対する接近を確実に検出することができる。

従って、人体の手等がドアハンドルに対して種々の箇所に接近したときでも、良好な検出動作を実現することができる車両用人体検出装置の好適な実施形態が提供される。

また、他の特徴構成としては、前記補助電極を、導体板、導電性樹脂もしくは導電性塗料により形成している点にある。

すなわち、導体板、導電性樹脂もしくは導電性塗料などの汎用の導体材料を補助電極の材料として用いることができる。

従って、状況に応じて補助電極用に汎用の各種導体材料を選択することができる実用的な車両用人体検出装置の好適な実施形態が提供される。

また、他の特徴構成としては、前記補助電極を、前記ドアハンドルの芯材、ハンドル内壁もしくはハンドル外面に装着している点にある。

すなわち、ドアハンドルが芯材やカバー用の壁材で構成される場合に、補助電極を芯材に装着し、あるいは、ハンドル内壁（カバー用壁材の内側）もしくはハンドル外面（カバー用壁材の外側）に装着することができる。

従って、状況に応じてドアハンドルの種々の箇所に補助電極を設置することができる車両用人体検出装置の好適な実施形態が提供される。

本発明に係る車両用人体検出装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図１及び図２に示すように、車両用ドア１０の外側に配置されたドアハンドル１は、一方（車体前側）にアーム４を備えたハンドル本体２、ハンドル本体２を覆うハンドルカバー３などで構成されている。なお、ハンドル本体２及びハンドルカバー３は合成樹脂で製作されている。

ドアハンドル１内に人体の接近に伴って静電容量が変化するセンサ電極５を設けるとともに、センサ電極５の近傍に位置してセンサ電極５と容量結合したフロート状態の補助電極６をドアハンドル１に設けている。具体的には、ハンドル本体２とハンドルカバー３の間の空間部に、センサ電極５と補助電極６が収容されている。

上記センサ電極５は、長尺状に形成されてドア１０の外板１０ａと対向配置され、ドア外板１０ａとの間で平行平板型の静電容量を形成している。なお、図３に示すように、１本のハーネス５ａを車体前後方向に沿って平行状態で往復するように屈曲させ、その平行配線状態のハーネス５ａでセンサ電極５を構成している。

上記補助電極６は、断面コの字状の長尺状の導体板により形成されて、ハンドル本体２に支持されたドアハンドル１の芯材２ａに装着している。そして、補助電極６をセンサ電極５とドア１０の外板１０ａとの間に位置させている。

上記ハンドル本体２とハンドルカバー３の間の空間部には、第１送信アンテナ７と、ドア施錠用スイッチ８も収容されている。なお、第１送信アンテナ７は、略直方体形状のフェライト７ａにハーネス７ｂが巻かれたループアンテナ形状を有し、ドア施錠用スイッチ８は押しボタン８ａと検知部８ｂとを有している。

次に、制御構成について説明する。図４は本発明に係る車両用人体検出装置を搭載した車両用ドアロックシステムの車両側の回路構成図であり、図５は運転者が所持するリモートコントローラ３０の回路構成図である。

車両側の回路（図４）には、前記センサ電極５の検出信号（静電容量の変化）を処理するセンサ検出部１１が設けられ、このセンサ検出部１１の出力がコントローラ２０に入力されている。ここで、上記センサ検出部１１が、前記センサ電極５の静電容量の変化に基づいて人体の接近を判別する判別回路を構成する。

車両側の回路には、前記リモートコントローラ３０と通信する前記第１送信アンテナ７と第２送信アンテナ１２、及び各送信アンテナ７，１２に送信信号（車外／車内リクエスト信号）を供給する第１送信部１３と第２送信部１４が設けられ、各送信部１３，１４は前記コントローラ２０で駆動される。さらに、リモートコントローラ３０側から送信されるＩＤ情報信号を受信する受信アンテナ１５と、このＩＤ情報信号を復調する受信部１６が設けられ、この受信部１６の出力はコントローラ２０に入力されてＩＤコードの識別処理が行われる。

また、コントローラ２０からは、車両の全ドアをロック又はアンロックするドアロック機構１７に対する駆動信号が出力されている。そして、コントローラ２０が、前記センサ検出部１１の出力信号（人体接近信号）、受信部１６の出力信号（ＩＤ識別信号）等に基づいて、ドアロック機構１７を開錠又は施錠するように駆動制御する。

一方、リモートコントローラ３０側（図５）には、車両側へＩＤ情報信号を送信する送信アンテナ３３と、車両側から送信された車外／車内リクエスト信号を受信する受信アンテナ３４と、各アンテナ３３，３４の送受信信号を変調、復調処理する送受信回路３２と、コントローラ３１が設けられている。受信アンテナ３４で受信された車外／車内リクエスト信号は、送受信回路３２で復調されてコントローラ３１に入力される。そして、この信号入力に対して、コントローラ３１はＩＤ情報信号を送受信回路３２に出力し、ＩＤ情報信号は送受信回路３２で変調されたのち、送信アンテナ３３から車両側に送信される。

次に、前記センサ電極５と補助電極６による静電容量変化の検出について説明する。
図６に人体が接近していない状態での等価回路を示す。人体非接近状態で検出される静電容量Ｃは、センサ電極５と車体ボディ（主としてドア１０の外板１０ａ）間で形成される容量の他、センサ電極５と前記送信アンテナ７や前記施錠スイッチ８用の配線との間に形成される静電容量を合計した容量Ｃｏになる（Ｃ＝Ｃｏ）。このとき、補助電極６の近くには人体等の他物が存在していないので、補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃは検出される静電容量Ｃには寄与しない。尚、図中、Ａ，Ｂは、前記センサ検出部１１へのセンサ電極５の出力端子を表す。

図７に人体が接近してドアハンドルに接触した状態での等価回路を示す。人体が接近した状態では、検出される静電容量Ｃは、前記人体非接近状態での静電容量Ｃｏに、補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃに人体の静電容量Ｃ１が直列接続された合成容量Ｃ１Ｃｃ／（Ｃ１＋Ｃｃ）を加算したものになる。即ち、静電容量Ｃの変化（増加）量ΔＣはＣ１Ｃｃ／（Ｃ１＋Ｃｃ）であり、Ｃ＝Ｃ１Ｃｃ／（Ｃ１＋Ｃｃ）＋Ｃｏとなる。

ここで、人体の静電容量Ｃ１は一般的に１５０ｐＦ程度と言われているのに対し、補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃは、ドアハンドル内のスペースが限られていることから、人体の静電容量Ｃ１の１０分の１〜１００分の１程度の値になる（Ｃｃ＜Ｃ１、あるいは、Ｃｃ≪Ｃ１）。これを上式にあてはめると、近似的に（ただし、Ｃｃ≪Ｃ１とした場合）、Ｃ＝Ｃｃ＋Ｃｏ、ΔＣ＝Ｃｃが得られる。すなわち、人体の接近に伴う静電容量Ｃの変化量ΔＣは、補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃによってほとんど決定され、人体の静電容量Ｃ１の値自体にはあまり依存しないことになる。この結果、人体の接近状態がばらついた場合でも、センサ電極５の静電容量Ｃの変化量ΔＣのバラツキ（変動）を緩和できることになる。また、補助電極６がセンサ電極５の近傍に位置しているため、仮に他物が近くに存在しても補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃは顕著に変動せず、人体の接近を検出する以外のセンサ電極５の静電容量Ｃの変動を抑制できる点でも有利である。

図８は上記補助電極６の効果を示す計算結果の一例であり、横軸は人体とのクリアランス（接近した人体との距離）、縦軸は静電容量の変化量ΔＣを表す。実際は所定面積の金属板を模擬人体として使用して、センサ電極５に対する距離を変化させた。また、センサ電極５の元の容量Ｃｏ＝３０ｐＦ、補助電極６とセンサ電極５間の結合容量Ｃｃ＝３ｐＦ、補助電極６とセンサ電極５間の距離０．２ｍｍの条件で行った。図８より、補助電極６を使用した場合は、補助電極６無しの場合に比べて、人体とのクリアランス（距離）が変化したときの静電容量の変化量ΔＣの変化が緩やかであり、人体接近時の静電容量の変化量ΔＣのバラツキが緩和されるとともに、人体とのクリアランス（距離）が大きい位置でも静電容量の変化量ΔＣの値自体が大きいため、前記センサ検出部１１での信号処理を行う上で有利であることを示している。

〔別実施形態〕
上記実施形態では、ドアハンドル１の内部の芯材２ａに設けた補助電極６について説明したが、補助電極をドアハンドル１の複数箇所に、又種々の箇所に設けてもよい。
例えば、図９（イ）に示すように、センサ電極５をドアハンドル１の表側に引き回し、この表側に引き回したセンサ電極５に対向するハンドルカバー３の内周部（即ち、ハンドル内壁）に補助電極６Ａを装着する。この場合、補助電極６Ａを導電性樹脂もしくは導電性塗料により形成してハンドルカバー３の内周面に塗布等する形態が簡便な構成であり好ましい。あるいは、図９（ロ）に示すように、ドアハンドル１の表側に引き回したセンサ電極５に対向するハンドルカバー３の部分３Ａを導電性樹脂で構成して補助電極とする。その他、ドアハンドル１の側面部に引き回したセンサ電極５の近傍に各種材質で複数の補助電極を位置させるようにしてもよい。

さらに、図示はしないが、センサ電極５をドアハンドル１の外面側に引き回し、補助電極をセンサ電極５の上部を覆う状態でドアハンドル１のハンドル外面に露出させて装着するようにしてもよい。

上記実施形態では、センサ電極５を屈曲させた１本のハーネス５ａで構成したが、導体板で構成してもよい。

本発明に係る車両用人体検出装置を搭載したドアハンドルの平面断面図 同ドアハンドルの横断面図 センサ電極と補助電極の構成を示す斜視図 ドアロックシステムの車両側の回路構成図 ドアロックシステムのリモートコントローラ側の回路構成図 本発明に係る車両用人体検出装置の動作を示す等価回路図 本発明に係る車両用人体検出装置の動作を示す等価回路図 本発明に係る車両用人体検出装置の効果を示すグラフ 別実施形態の車両用人体検出装置を搭載したドアハンドルの横断面図

符号の説明

１ ドアハンドル
２ａ 芯材
３Ａ 補助電極（導電性樹脂）
５ センサ電極
６ 補助電極（導体板）
６Ａ 補助電極（導電性樹脂、導電性塗料）
１０ 車両用ドア
１０ａ 外板
１１ 判別回路

Claims (7)

1. 車両用ドアの外側に配置されたドアハンドル内に人体の接近に伴って静電容量が変化するセンサ電極を設け、前記センサ電極の静電容量の変化に基づいて人体の接近を判別する判別回路を備えた車両用人体検出装置であって、
   前記ドアハンドル内に前記センサ電極と一対で静電容量を形成する補助電極を設けている車両用人体検出装置。
2. 前記ドアと前記センサ電極との間の静電容量と、前記センサ電極と前記補助電極との間の静電容量と、前記補助電極と前記人体との間の静電容量とに基づいて、前記人体の接近を判別する請求項１に記載の車両用人体検出装置。
3. 前記センサ電極と前記補助電極との間の静電容量が、前記補助電極と前記人体との間の静電容量の１／１０〜１／１００程度の値となるように、前記センサ電極と前記補助電極との間隔が決定される請求項１又は２に記載の車両用人体検出装置。
4. 前記センサ電極が長尺状に形成されて前記ドアの外板と対向配置され、前記補助電極を前記センサ電極と前記ドアの外板との間に位置させている請求項１から３のいずれか一項に記載の車両用人体検出装置。
5. 前記補助電極を前記ドアハンドルの複数箇所に設けている請求項１から４のいずれか一項に記載の車両用人体検出装置。
6. 前記補助電極を、導体板、導電性樹脂もしくは導電性塗料により形成している請求項１から５のいずれか一項に記載の車両用人体検出装置。
7. 前記補助電極を、前記ドアハンドルの芯材、ハンドル内壁もしくはハンドル外面に装着している請求項１から６のいずれか一項に記載の車両用人体検出装置。

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