JP4097198B2 - 転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 - Google Patents

転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の上部構造と下部構造との間に装着され、下部構造の上に上部構造を固定する構造物のアンカー構造に用いる転がり支承装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅などの軽量構造物は、一般に布基礎とも言われる基礎コンクリート101の上に建築されている。基礎コンクリート101(下部構造)の上に建築物(構造物)の土台103(上部構造)を固定する場合は、例えば、図6に示すように、L字状のアンカーボルト102の下部を基礎コンクリート101に埋設し、アンカーボルト102の上部を土台103に貫通させ、その土台103の上面に突出した部分をワッシャ104、ナット105で固定している。
【0003】
しかし、単に土台103を基礎コンクリート101の上に固定しただけでは、大型車の通行により生じる交通振動が、基礎コンクリート101から土台103にそのまま伝わる。このため、図7に示すように、土台103と基礎コンクリート101の間にゴム板100を挟んで、交通震動を緩和するものがあった。しかし、この場合でも、アンカーボルト102が土台103と基礎コンクリート101をしっかりと連結しており、アンカーボルト102を介して基礎コンクリート101から土台103に震動がそのまま伝わり、震動はさほど緩和されず、十分な免震効果は得られなかった。
【0004】
なお、このようなゴム板100は、住宅の基礎部の通気用の基礎パッキン材としての機能を備えている。すなわち、ゴム板100を、基礎コンクリート101と住宅の土台103との間に所定の間隔を開けて複数配設することにより、土台103と基礎コンクリート101との間に生じた隙間から基礎コンクリート101の内部の換気が行え、基礎コンクリート101内の空気の流れが良くなり、湿気を低減させることができる。また、基礎コンクリート101と土台103との縁を切ることにより、基礎コンクリート101が吸った水分を土台103に伝えないという作用がある。
【0005】
この種の基礎パッキン材の一般的な技術水準を示す公知文献としては、下記の特許文献1が知られている。
【0006】
また、ダンプカーなどの大型の自動車や鉄道車両の通行に伴う交通振動や地震による振動を吸収する制振機能を兼ね備えた基礎パッキン材としては、上下の硬質板の間に円形の穴を有する復元用のゴム材を配設し、ゴム材の穴の中に硬球体を転動可能に配設した転がり支承構造を備えたものが下記の特許文献2に提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−355350号公報
【特許文献2】
特開2000−110403号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1に記載されている基礎パッキン材は、構造物の上部構造と下部構造の間にゴム材を挟んだだけであり、地震やダンプカーなどの大型の自動車による振動や鉄道車両の通行に伴う交通振動を吸収する制振機能が十分でなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載されている基礎パッキン材は、一定の制振効果は期待できるものの、構造上、設置時に硬球体がゴム材の穴の中央に位置していることが保証されていない。このため、硬球体がゴム材の穴の内周面に接した状態で配設されている可能性があり、このような場合には振動時に硬球体がすぐにゴム材に乗り上げてしまう。本発明者らの知見によれば、ゴム材に硬球体が乗り上げると、硬球体が乗り上げた位置でゴム材が破損する場合があるので、十分な制振効果を得ることができない。
【0010】
また、積層ゴムとオイルダンパーを組み合わせた免震装置はよく知られているが、このような免震工法で用いられる積層ゴムやオイルダンパーは1基あたりの装置が負担する鉛直荷重や水平荷重が大きいため、また構造上小型化することが難しいために、装置が大きく、設置コストや設置スペースが嵩み、一般住宅などの比較的小さな構造物には不経済であり、あまり普及していない。
【0011】
そこで、本発明者らは、地震時に硬球体が滑らかに転動する転がり支承装置の提供、及び、嵩張らず、安価で、振動吸収性能と基礎パッキン材としての機能を兼ね備えた構造物のアンカー構造の提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり支承装置は、上下の硬質板と、上下の硬質板の間に配設した軟質弾性体からなる円筒状の位置決め部材と、位置決め部材に内接させて上下の硬質板の中央部に位置決めした硬球体とを備え、構造物の上部構造と下部構造との間に配設されて構造物の上部構造を支持する転がり支承装置において、位置決め部材は、上下の硬質板の何れか一方に接着されている。さらに位置決め部材は外周側を接着し、内周側を接着しないようにすることを特徴としている。
【0013】
また、構造物のアンカー構造は、上述した転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり支承装置及び構造物のアンカー構造を図面に基づいて説明する。
【0015】
転がり支承装置1は、図1に示すように、硬球体2と、硬球体2を内部に収容する円筒形状の位置決め部材3と、硬球体2及び位置決め部材3を上下に挟む硬質板4、5を備えている。
【0016】
硬球体2は、所要の硬さと真球度を備えた球体であり、略球形に粗加工した鋼材に転動加工を施して製造したものである。転動加工は、略球形に粗加工した鋼材を研磨板で上下に挟み、研磨板間で転動させて鋼材の表面の歪を除去しながら、球形に整形するものである。硬球体2は、転動加工により加工硬化が生じて硬さが増す。この転動加工によれば、S15Cなどの安価な鋼材を用いて、HRC20以上の硬さと、高度な真球度を備えた硬球体を得ることができ、硬球体2の部品コストを安くすることができる。なお、硬球体2には、例えば、ニッケルメッキなどの防錆処理を施しておくことが望ましい。
【0017】
硬質板4、5は、所要の硬さと平面度を備えた略ひし形の板状部材であり、中央部に位置決め部材3を接着して硬球体2を中央に位置決めしている。硬質板4、5には、硬球体2を位置決めする位置を中心として、硬球体2の直径の2倍以上の距離を半径とする円を含む転動面を備えている。硬質板4、5の転動面もニッケルメッキなどの防錆処理を施しておくとよい。
【0018】
この硬質板4、5は、板状素材に冷間圧延加工を施して製造している。冷間圧延加工は、板状素材を圧延ローラで挟みながら引き抜くものであり、熱処理を施すことがないので歪が生じることがなく、これにより所要の平面度を確保することができる。また加工硬化により所要の硬さを得ることができる。この冷間圧延加工によれば、SUS304などの鋼材を用いて、HRC20以上、より好ましくはHRC25以上の硬質板4、5を得ることができる。
【0019】
また、硬質板4、5は、設置後、硬球体2から鉛直方向の荷重を受けるのでクリープ歪みにより、鉛直方向に窪みが生じる。地震時に硬球体2を滑らかに転動させるためには、このクリープ歪み量は小さければ小さいほど良い。上述したように冷間圧延加工により加工硬化させたものは、クリープ歪みが小さくなるので好適である
【0020】
位置決め部材3は、例えば、軟質ウレタンフォームやポリスチレン発泡体やポリエチレン発泡体などの軟質弾性材料を用いると良い。位置決め部材3の内径は、硬球体2の直径と同じか、硬球体2の直径よりも少し小さいものを用い、硬球体2の位置決めを確実に行えるようにすると良い。また、図1のように、硬球体2の周囲を位置決め部材3で覆うことにより、硬球体2の転動領域に塵や埃が入るのを防止することができる。
【0021】
この位置決め部材3は、硬球体2の転動に応じて変形し易くするため、下側の硬質板5に接着し、上側の硬質板4には接着していない。また、初動時の硬球体2の転動に対する抵抗を緩和するため、位置決め部材3の接着は、外周側を接着し、内周側は接着していない。例えば、外周側から位置決め部材3の半径方向の厚さの約半分程度を接着すると良い。
【0022】
この硬質板4、5は、硬球体2を位置決めする位置を中心として、硬球体2の直径の2倍の距離(例えば、硬球体2の直径が40mmであれば80mm)を半径とする円よりも大きい転動面を備えており、この転がり支承装置1は、硬球体2を位置決めする位置を中心として、硬球体2が直径の2倍以上の距離を転動することができるようになっている。
【0023】
上下の硬質板4、5の両側には、アンカーボルト13、14(図2参照)を締結するボルト締結部15、16を設けている。片側の第1ボルト締結部15には両側のボルト締結部15、16を結ぶ直線に沿って切欠き17を形成しており、反対側の第2ボルト締結部16には両側のボルト締結部15、16を結ぶ直線に直交する方向に沿って切欠き18を形成している。第2ボルト締結部16の切欠き18は、詳しくは、第1ボルト締結部15の所定の締結位置(例えば、設計上のボルト締結位置O)を中心とし、所定のボルトピッチ(例えば、設計上のボルトピッチP)を半径とする円弧Cに沿って形成している(図2参照)。
【0024】
各ボルト締結部15、16の切欠き17、18の幅は、アンカーボルト13、14の直径よりも少し大きくなっており、切欠き17、18に沿ってアンカーボルト13、14を装着・離脱させることができるようになっている。また、切欠き17、18は、施工時の誤差を許容できるように、設計上のボルト締結位置よりも深く形成している。
【0025】
この転がり支承装置1を施工するときは、図2に示すように、切欠き17に沿って第1ボルト締結部15に片側のアンカーボルト13に装着し、図中の2点鎖線で示すように、転がり支承装置1を回動させて切欠き18に沿って反対側のアンカーボルト14を第2ボルト締結部16に装着する。そして、ナットで転がり支承装置1を固定する(図示省略)。
【0026】
この転がり支承装置1は、位置決め部材3を下側の硬質板5にだけ接着しており、位置決め部材3の上面は上側の硬質板4に接着していないので、地震時に硬球体2が転動すると、硬球体2の転動に応じて容易に変形する。このため、位置決め部材3が硬球体2の転動に対する抵抗となり難い。また、位置決め部材3は、外周側を接着しており、内周側は接着していないので、硬球体2の初動時の転がり抵抗を軽減することができる。これにより、硬球体2の転動に対し、硬球体2の可動範囲の全域において略均一な抵抗を示すようになる。
【0027】
また、上下の硬質板4、5及び硬球体2を加工硬化により、HRC20以上の硬さにしたものを採用しているので、クリープ歪により硬質板4、5の転動面に生じる窪みが小さく、硬球体2の転動に対してほとんど無視できる。
【0028】
この転がり支承装置1を住宅に設置した時と同等の鉛直荷重(約15kN)を負荷して、上下の硬質板4、5を水平方向に相対移動させた水平変位−水平荷重の関係を図3に示す。
【0029】
この転がり支承装置1は、上述したように、位置決め部材3が硬球体2の転動に対する抵抗となり難く、また、硬質板の転動面に生じるクリープ歪による窪みも硬球体の転動に対してほとんど無視できる。このため、硬球体2の転動時に生じる抵抗は水平に変位する間において略一定になり、水平変位―水平荷重の関係が剛塑性型のバイリニアループBに良く一致する。このため設計時においては、転がり支承装置1の水平変位―水平荷重の関係を、近似した剛塑性型のバイリニアループBに置き換えて設計することができ、設計業務を簡素化できる。
【0030】
そして、転がり支承装置の摩擦係数の基準値を0.03以下にすると良い。転がり支承装置の摩擦係数の基準値は、例えば、二軸載荷試験装置を用い、実大モデルによる試験体について、所定の鉛直荷重(例えば、住宅設置時と同等の鉛直荷重14.7kN)を基準荷重として負荷し、この状態で正負の規定変形(例えば±40mm)を生じさせることとなる力で水平変形を繰り返し行いことにより得られた3サイクル目の履歴における荷重−変形関係を用いて正方向及び負方向の切片荷重の平均値を基準荷重で除した値で求めたものである。この転がり支承装置の摩擦係数の基準値は、鉛直荷重を受けながら水平変形する際の硬質板4、5と硬球2の両部材の食い込み量が大きく影響する。摩擦係数の基準値が0.03以下である場合には、硬質板4、5と硬球2の両部材の食い込み量が小さく、硬質板4、5に生じる轍もほとんど影響が生じない程度である。このため、地震時に硬球体2が轍を横切るように転動した場合でも、硬球体2の円滑な転動を妨げるほどの影響はなく、水平荷重−水平変位の履歴曲線(ヒステリシスループ)にも転がり支承装置の性能を不安定にさせるような負勾配は生じない。
【0031】
次に、この転がり支承装置1を用いた構造物のアンカー構造Aを説明する。
【0032】
この構造物のアンカー構造Aは、図4に示すように、住宅の土台6(構造物の上部構造)と基礎コンクリート7(下部構造)との間の制振層8において、各転がり支承装置3が略均等に上部構造の鉛直荷重を支持するように、基礎コンクリート7の上に複数の転がり支承装置3を分散させて配設するとともに、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように複数の制振装置20を分散させて配設したものである。
【0033】
具体例としては、基礎コンクリート7の幅が20cm程度である場合には、転がり支承装置3は、転動加工により真球度と20HRC以上の表面硬さを確保した直径が40mmの硬球体と、冷間圧延加工により平面度と20HRC以上の硬さを確保し、厚さ5mmで半径80mmの転動面を備えた硬質板を用いる。この転がり支承装置1は、少なくとも一つで約1.5tonf(約15kN)の荷重を支持することが可能であり、住宅の総重量、重量分布を考慮して、基礎コンクリート7の上に分散させて配設するとよい。
【0034】
制振装置20は、例えば、図5に示すように、高減衰ゴムからなる円柱形状の制振部材21と、制振部材21を上下に挟む硬質板22、23と、ゴム製の被覆材24を備え、制振部材21の上端及び下端にそれぞれ硬質板22、23を加硫接着し、制振部材21の外周面をゴム製の被覆材24で被覆したものを用い、制振層8の偏心率が小さくなるように(例えば、制振層8の偏心率が3%以下になるように)制振装置を分散させて配設する。偏心率は、後記する式1に基づいて算出されるものであり、剛心と重心の偏りを示すものである。この制振装置20には、転がり支承装置1と同様の切り欠き28、29を形成したボルト締結部26、27があり、転がり支承装置1と同じように基礎コンクリート7に取り付けることができる(図2参照)。
【0035】
制振部材21は、詳しくは、せん断弾性率が、制振部材21の高さに対して±25%以下の振幅領域において100N/cm2以上で、かつ、高減衰ゴムの高さに対して±150%以上の振幅領域において40N/cm2以下のものであることが望ましい。制振部材21に、このような特性を有する弾性材料を用いることにより、風や交通振動などの微小な振動に対しては、制振部材21のせん断変形を抑制することができ、かつ、地震のように大きな加速度(慣性力)を伴う大きな揺れに対しては、制振部材21が大きなせん断変形を行うようになる。すなわち、制振装置20が、それ自体、風や交通振動に対するトリガーとして機能を備えたものになる。
【0036】
また、制振装置20に用いられている高減衰の弾性材料は、損失係数tanδが0.3以上、より好ましくは0.5以上であることが望ましい。ここで、ゴム材料の動的特性を複素弾性率で表現した場合、実数部分を貯蔵弾性率G1、虚数部分を損失弾性率G2といい、貯蔵弾性率G1と損失弾性率G2の比を損失係数tanδという(損失係数tanδ=貯蔵弾性率G1/損失弾性率G2)。
【0037】
損失係数tanδは、制振材料の制振特性の評価指標の一つである。すなわち、制振材料は、振動応答系に減衰があると、その応力・歪み線図(あるいは荷重・変位線図)は履歴曲線(ヒステリシスループ)を描くのであるが、損失係数tanδは、1サイクルで消費されるエネルギと貯蔵される最大エネルギの比に比例する量で、等価減衰定数の約2倍の値に対応する。従って、損失係数tanδが大きいほど減衰性の高い材料になる。
【0038】
また、制振部材21には、60年相当の熱老化促進による劣化を与えた後、周波数2Hzで実験を行った際に、せん断弾性率Gおよび/又は損失係数tanδの変化率が30%以内であるゴム材料を用いると良い。すなわち、一般住宅の耐用年数は50年〜60年程度であるから、少なくともその間、制振装置20に必要な性能を確保することができる。後記表1に、制振部材21に用いるゴム材料の好適な配合例を示す。なお、表1中、phrは、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときに用いる記号である。
【0039】
この構造物のアンカー構造Aは、転がり支承装置1と制振装置20を別々にしているので、それぞれの設置位置に自由度があり、制振装置20については、地震の揺れ方向に対して、構造物の上部構造が捩じれ方向に揺れるのを抑制するように設置することができる。例えば、制振装置20の設置位置については、制振層8の偏心率を3%以下に設定するとよい。また、特許文献2に記載したもののように、硬球体2が転動するときに、高減衰ゴムに乗り上げるというような不具合も生じない。
【0040】
また、この転がり支承装置1は、位置決め部材3の外周側が硬質板5に接着しており、内周側が硬質板5に接着していないので、硬球体2の初動時の転がり抵抗を軽減することができる。また、位置決め部材3を下側の硬質板5にだけ接着しており、位置決め部材3の上面は上側の硬質板4に接着していないので、地震時に硬球体2が転動すると、位置決め部材3は硬球体2の転動に応じて容易に変形する。このため、硬球体2の可動範囲の全域においても安定した摩擦係数を示すようになる。
【0041】
これにより、この転がり支承装置1を用いた構造物のアンカー構造Aによれば、地震時において、構造物の上部構造を下部構造に対して円滑に挙動させることができ、制振装置20の減衰作用も十分に発揮されるので、地震の揺れを極めて効率良く減衰させることができる。
【0042】
また、転がり支承装置1及び制振装置20は共に、50mm以下の厚さにすることができるので、基礎コンクリート7と住宅の土台6との間に設置しても嵩張らず、しかも、製造コストも低コストであり、また各装置はそれぞれ軽量であり、かつ、設置作業も簡便であるから設置コストも従来の免震構造に比べて極めて低コストである。従って、一般住宅のような軽量構造物においても、安価に制振機能を備えたアンカー構造を提供することができる。
【0043】
以上、本発明に係る転がり支承装置及び構造物のアンカー構造を説明したが、本発明に係る転がり支承装置及び構造物のアンカー構造は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、転がり支承装置の位置決め部材について、下側の硬質板に接着し、上側の硬質板には接着していないものを例示したが、位置決め部材は、上下の硬質板の何れか一方に接着されていれば、同様の作用効果を得ることができるので、上側の硬質板に接着し、下側の硬質板に接着していないものにしても良い。
【0045】
【式1】
Figure 0004097198
【0046】
【表1】
Figure 0004097198
【0047】
【発明の効果】
本発明に係る転がり支承装置は、上下の硬質板と、上下の硬質板の間に配設した軟質弾性体からなる円筒状の位置決め部材と、前記位置決め部材に内接させて上下の硬質板の中央部に位置決めした硬球体とを備え、構造物の上部構造と下部構造との間に配設されて構造物の上部構造を支持する転がり支承装置において、位置決め部材を、上下の硬質板の何れか一方に接着したので、地震時に硬球体が転動すると、位置決め部材は硬球体の転動に応じて容易に変形する。これにより、地震時に硬球体の滑らかな転動を確保することができる。
【0048】
また、位置決め部材を、外周側で接着し、内周側を接着しないことにより、硬球体の転動の初動時に対する抵抗を小さくすることができる。これにより転がり支承装置は、硬球体の可動範囲の全域において略均一な抵抗を示すようになり、地震時に硬球体のより滑らかな転動を確保することができる。
【0049】
本発明に係る構造物のアンカー構造は、これらの転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したので、地震時において、構造物の上部構造を下部構造に対して円滑に挙動させることができ、制振装置の減衰作用も十分に発揮されるので、地震の揺れを極めて効率良く減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る転がり支承装置を示す斜視図。
【図2】 本発明の一実施形態に係る転がり支承装置の施工工程を示す平面図。
【図3】 本発明の一実施形態に係る転がり支承装置の水平変位―水平荷重の関係を示す図。
【図4】 本発明の一実施形態に係る構造物のアンカー構造の設置例を示す平面図。
【図5】 制振装置を示す斜視図。
【図6】 従来の住宅の上部構造のアンカー構造を示す図。
【図7】 基礎パッキン材を示す図。
【符号の説明】
1 転がり支承装置
2 硬球体
3 位置決め部材
4、5 硬質板
6 住宅の土台
7 基礎コンクリート
8 制振層
20 制振装置
21 制振部材
22、23 硬質板
24 被覆材
A 構造物のアンカー構造

Claims (2)

  1. 上下の硬質板と、上下の硬質板の間に配設した軟質弾性体からなる円筒状の位置決め部材と、前記位置決め部材に内接させて上下の硬質板の中央部に位置決めした硬球体とを備え、構造物の上部構造と下部構造との間に配設されて構造物の上部構造を支持する転がり支承装置において、
    前記位置決め部材は、上下の硬質板の何れか一方に接着されていると共に、当該一方の硬質板に、前記位置決め部材を、外周側で接着し、内周側は接着していないことを特徴とする転がり支承装置。
  2. 請求項1に記載の転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、
    高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴とする構造物のアンカー構造。
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