JP2004278550A - ストッパ付き転がり支承装置及び構造物のアンカー構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ストッパ付き転がり支承装置1は、硬球体2と、硬球体2に装着した円筒状部材3と、硬球体2を上下に挟む硬質板4、5と、硬球体2の転動領域を画定するストッパ部材6、7と、弾性緩衝材8、9を備えている。このストッパ付き転がり支承装置1は、硬球体2の外周を覆うように設けた円筒状部材3がストッパ部材6、7に面当りして、ストッパ部材6、7から円筒状部材3を介して受ける水平方向の反力により硬球体2の転動が規制される。このため、硬球体2が下側の硬質板5のストッパ部材7に乗り上げて、上側の硬質板4を浮き上がらせるような動きが硬球体2に生じることがない。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の上部構造と下部構造との間に装着され、下部構造の上に上部構造を固定する構造物のアンカー構造と、構造物のアンカー構造に用いるストッパ付き転がり支承装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅などの軽量構造物は、一般に布基礎とも言われる基礎コンクリート101の上に建築されている。基礎コンクリート101(下部構造)の上に建築物(構造物)の土台103(上部構造)を固定する場合は、例えば、図12に示すように、L字状のアンカーボルト102の下部を基礎コンクリート101に埋設し、アンカーボルト102の上部を土台103に貫通させ、その土台103の上面に突出した部分をワッシャ104、ナット105で固定している。
【0003】
しかし、単に土台103を基礎コンクリート101の上に固定しただけでは、大型車の通行により生じる交通振動が、基礎コンクリート101から土台103にそのまま伝わる。このため、図13に示すように、土台103と基礎コンクリート101の間にゴム板100を挟んで、交通震動を緩和するものがあった。しかし、この場合でも、アンカーボルト102が土台103と基礎コンクリート101をしっかりと連結しており、アンカーボルト102を介して基礎コンクリート101から土台103に震動がそのまま伝わり、震動はさほど緩和されず、十分な免震効果は得られなかった。
【0004】
なお、このようなゴム板100は、住宅の基礎部の通気用の基礎パッキン材としての機能を備えている。すなわち、ゴム板100を、基礎コンクリート101と住宅の土台103との間に所定の間隔を開けて複数配設することにより、土台103と基礎コンクリート101との間に生じた隙間から基礎コンクリート101の内部の換気が行え、基礎コンクリート101内の空気の流れが良くなり、湿気を低減させることができる。また、基礎コンクリート101と土台103との縁を切ることにより、基礎コンクリート101が吸った水分を土台103に伝えないという作用がある。
【0005】
この種の基礎パッキン材の一般的な技術水準を示す公知文献としては、下記の特許文献1が知られている。
【0006】
また、ダンプカーなどの大型の自動車や鉄道車両の通行に伴う交通振動や地震による振動を吸収する制振機能を兼ね備えた基礎パッキン材としては、上下の硬質板の間に円形の穴を有する復元用のゴム材を配設し、ゴム材の穴の中に硬球体を転動可能に配設した転がり支承構造を備えたものが下記の特許文献2に提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−355350号公報
【特許文献2】特開2000−110403号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1に記載されている基礎パッキン材は、構造物の上部構造と下部構造の間にゴム材を挟んだだけであり、地震やダンプカーなどの大型の自動車による振動や鉄道車両の通行に伴う交通振動を吸収する制振機能が十分でなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載されている基礎パッキン材は、一定の制振効果は期待できるものの、構造上、設置時に硬球体がゴム材の穴の中央に位置していることが保証されていない。このため、硬球体がゴム材の穴の内周面に接した状態で配設されている可能性があり、このような場合には振動時に硬球体がすぐにゴム材に乗り上げてしまう。本発明者らの知見によれば、ゴム材に硬球体が乗り上げると、硬球体が乗り上げた位置でゴム材が破損する場合があるので、十分な制振効果を得ることができない。
【0010】
また、積層ゴムとオイルダンパーを組み合わせた免震装置はよく知られているが、このような免震工法で用いられる積層ゴムやオイルダンパーは1基あたりの装置が負担する鉛直荷重や水平荷重が大きいため、また装置の構造上、小型化することが難しいために、装置が大きく、設置コストや設置スペースが嵩み、一般住宅などの比較的小さな構造物には不経済であり、あまり普及していない。
【0011】
そこで、本発明は、嵩張らず、安価で、振動吸収性能と基礎パッキン材としての機能を兼ね備えた構造物のアンカー構造の提供、及び、斯かる構造物のアンカー構造に適用するのに好適なストッパ付き転がり支承装置の提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は、向かい合う面にそれぞれ転動面を有する上下の硬質板と、上下の硬質板の中央部に位置決めした硬球体と、硬球体の外周を覆う円筒状部材と、上下の硬質板の向かい合う面に硬球体の転動領域を画定するように突設した円筒状のストッパ部材と、円筒状部材の外周面及び/又はストッパ部材の内周面に配設した弾性緩衝材とを備えていることを特徴としている。
【0013】
円筒状部材は、硬球体との間に、複数個の転動体が回転自在に介在させることにより、硬球体の転動に与える抵抗を小さくすると良い。また、円筒状部材の上下端を、上下の硬質板に対して非接触状態とすることにより、硬球体の転動及び円筒状部材の水平移動に与える抵抗を小さくすると良い。この場合、円筒状部材と上下の硬質板との接触を確実に防止するため、上下の硬質板と円筒状部材の上下端との間に、上下の硬質板の間隔寸法の2.5%以上の隙間を設定すると良い。
【0014】
このストッパ付き転がり支承装置は、転がり支承装置として建物の上部構造の鉛直荷重を支持する機能と、水平変位を規制する機能とその衝撃を緩和する機能を備えている。このストッパ付き転がり支承装置は、以下のように構造物のアンカー構造に利用するとよい。
【0015】
すなわち、本発明に係る構造物のアンカー構造は、上述したストッパ付き転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したものである。
【0016】
また、本発明に係る構造物のアンカー構造は、転がり支承装置又は滑り支承装置と、上述したストッパ付き転がり支承装置とを、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置及びストッパ付き転がり支承装置を用いた構造物のアンカー構造を図面に基づいて説明する。
【0018】
ストッパ付き転がり支承装置1は、図1に示すように、硬球体2と、硬球体2に装着した円筒状部材3と、硬球体2を上下に挟む硬質板4、5と、硬球体2の転動領域を画定するように硬質板4、5に突設したストッパ部材6、7と、弾性緩衝材8、9を備えている。
【0019】
硬球体2は、所要の硬さと真球度を備えた球体であり、略球形に粗加工した鋼材に転動加工を施して製造したものである。転動加工は、略球形に粗加工した鋼材を研磨板で上下に挟み、研磨板間で転動させて鋼材の表面の歪を除去しながら、球形に整形するものである。硬球体2は、転動加工により加工硬化が生じて硬さが増す。この転動加工によれば、S15Cなどの安価な鋼材を用いて、HRC20以上の硬さと、高度な真球度を備えた硬球体を得ることができ、硬球体2の部品コストを安くすることができる。なお、硬球体2には、円滑な転動性能を長期間維持するため、例えば、ニッケルメッキなどの防錆処理を施すと良い。
【0020】
円筒状部材3は、硬球体2が直接ストッパ部材6、7に当接するのを防止するため、硬球体2の外周を覆うように硬球体2に装着した部材である。この実施形態の円筒状部材3は内径が硬球体2の直径よりも少し大きく、高さは硬球体2の直径よりも少し小さくなっている。円筒状部材3は、硬球体2の円滑な転動を妨げないように、内周面の高さ方向の中間位置より少し上よりの位置に、小径の鋼球10を転動自在に保持する保持溝11を備えており、硬球体2との間に複数の小径の鋼球10を転動自在に介在させて、硬球体2に装着している。
【0021】
これにより、円筒状部材3を下側の硬質板5から少し浮かせて水平に配設することができ、上下の硬質板4、5に対して非接触状態に配設することができる。また、円筒状部材3の保持溝11に保持された複数の小径の鋼球10は、硬球体2が転動するときに、硬球体2の転動に応じて転動するので、円筒状部材3を装着したことにより、硬球体2の転動抵抗が増加するのを緩和することができる。また、円筒状部材3は、硬球体2との間に複数の小径の鋼球10を転動自在に介在させているので、硬球体2が転動すると、硬球体2の転動に応じて円滑に水平方向に移動する。なお、円筒状部材3と上下の硬質板4とが接触しないようにするため、上下の硬質板4、5と、円筒状部材3の上下端との間に、上下の硬質板の間隔寸法の2.5%以上の隙間を設定するとよい。
【0022】
硬質板4、5は、図2に示すように、所要の硬さと平面度を備えた略ひし形の板状部材であり、中央部には中心から硬球体2の直径の2倍以上の距離(例えば、硬球体2の直径が40mmであれば80mm)を半径とする円を含む転動面を備えている。硬質板4、5の転動面もニッケルメッキなどの防錆処理を施しておくとよい。
【0023】
この硬質板4、5は、板状素材に冷間圧延加工を施して製造している。冷間圧延加工は、板状素材を圧延ローラで挟みながら引き抜くものであり、熱処理を施すことがないので歪が生じることがなく、これにより所要の平面度を確保することができる。また加工硬化により所要の硬さを得ることができる。この冷間圧延加工によれば、SUS304などの鋼材を用いて、HRC20以上、より好ましくはHRC25以上の硬質板4、5を得ることができる。
【0024】
また、硬質板4、5は、設置後、硬球体2から鉛直方向の荷重を受けるのでクリープ歪みにより、鉛直方向に窪みが生じる。地震時に硬球体2を滑らかに転動させるためには、このクリープ歪み量は小さければ小さいほど良い。上述したように冷間圧延加工により加工硬化させたものは、クリープ歪みが小さくなるので好適である。具体的には、60年相当の鉛直沈み込み量が200μm以下のものを用いることにより、硬球体2の円滑な転動を長期間(一般的な住宅の耐用年数期間)維持することができる。
【0025】
ストッパ部材6、7は、硬球体2の転動領域を画定するべく、硬質板4、5の転動面の周縁に突設した円筒形状の部材であり、上下の硬質板4、5にそれぞれ突設している。ストッパ部材6、7の内周面には、硬球体2に装着した円筒状部材3がストッパ部材6、7に衝突したときの衝撃、及び衝突音を緩和する弾性緩衝材8、9が配設されている。弾性緩衝材8、9には、ゴムや軟質ウレタン材などの弾性素材を用いると良い。
【0026】
このストッパ付き転がり支承装置1は、図1に示すように、硬球体2の上部から小径の鋼球10を保持した円筒状部材3を装着し、硬球体2と円筒状部材3のアッセンブリを上下の硬質板4、5の転動面の中央に位置決めした状態で配設したものであり、住宅の土台12(構造物の上部構造)と基礎コンクリート13(下部構造)との間に施工される。硬球体2と円筒状部材3のアッセンブリを上下の硬質板4、5の転動面の中央に位置決めする方法には、例えば、接着剤を用いて硬球体2を硬質板4、5に接着し、地震発生時には揺れにより接着が外れるようにする方法、上側硬質板4又は下側硬質板5の転動面の中央部に地震発生時に硬球体2が容易に脱出できる程度の浅い位置決め用凹部を形成して、硬球体2の上端又は下端をこの位置決め用凹部に嵌め込む方法、あるいは、円筒状部材3とストッパ部材6,7との間に硬球体2の転動を妨げない、例えば、軟質ウレタンフォームやポリスチレン発泡体などの軟質弾性材料からなる位置決め用薄板を介装する方法など、任意の方法を採用することができる。
【0027】
このストッパ付き転がり支承装置1の上下の硬質板4、5の両側には、図2に示すように、アンカーボルト14、15を締結するボルト締結部16、17が設けられている。片側の第1ボルト締結部16には両側のボルト締結部16、17を結ぶ直線Lに沿って切欠き18を形成しており、反対側の第2ボルト締結部17には両側のボルト締結部16、17を結ぶ直線Lに直交する方向に沿って切欠き19を形成している。第2ボルト締結部17の切欠き19は、詳しくは、第1ボルト締結部16の所定の締結位置(例えば、設計上のボルト締結位置O)を中心とし、所定のボルトピッチ(例えば、設計上のボルトピッチP)を半径とする円弧Cに沿って形成している。なお、各ボルト締結部16、17の切欠き18、19の幅は、アンカーボルト14、15の直径よりも少し大きくなっており、切欠き18、19に沿ってアンカーボルト14、15を装着・離脱させることができるようになっている。また、切欠き18、19は、施工時の誤差を許容できるように、設計上のボルト締結位置よりも深く形成している。
【0028】
このストッパ付き転がり支承装置1を施工するときは、図3に示すように、切欠き18に沿って第1ボルト締結部16に片側のアンカーボルト14に装着し、図中の2点鎖線で示すように、ストッパ付き転がり支承装置1を回動させて切欠き19に沿って反対側のアンカーボルト15を第2ボルト締結部17に装着し、ナットでストッパ付き転がり支承装置1を固定するとよい。
【0029】
地震発生時は、住宅の土台12と基礎コンクリート13が相対的に水平方向に変位する。このときストッパ付き転がり支承装置1は、図4に示すように、住宅の土台12と基礎コンクリート13の相対変位に応じて、上下の硬質板4、5が相対的に水平方向に変位する。硬球体2は、上部構造の鉛直荷重を支承しながら、上下の硬質板4、5の間で滑りなく転動する。円筒状部材3は、硬球体2の転動に応じて、水平に移動する。そして、図5に示すように、円筒状部材3が上下の硬質板4、5に設けたストッパ部材6、7に衝突したところで、硬球体2の転動が規制される。
【0030】
このストッパ付き転がり支承装置1によれば、硬球体2の外周を覆うように設けた円筒状部材3がストッパ部材6、7に面当りして、ストッパ部材6、7から円筒状部材3を介して受ける水平方向の反力により硬球体2の転動が規制される。このため、硬球体2が下側の硬質板5のストッパ部材7に乗り上げて、上側の硬質板4を浮き上がらせるような動きが硬球体2に生じることはない。
【0031】
また、ストッパ部材6、7の内周に弾性緩衝材8、9を配設しており、衝突時に構造物の上部構造に伝わる衝撃を緩和することができ、また衝撃音を小さくすることができる。また、弾性緩衝材8、9は衝突時に円筒状部材3に当接して変形するので、円筒状部材3が変形するのを防止することができる。また、上下の硬質板4、5のストッパ部材6、7に設けた弾性緩衝材8、9により、水平方向の両側から円筒状部材3を挟み込んで、円筒状部材3の動きを規制することができるので、衝突時の円筒状部材3及び硬球体2の不規則な動きを防止することができ、円滑に硬球体2の転動を規制するとともに衝撃を吸収することができる。
【0032】
また、ストッパ部材6、7の内周面に弾性緩衝材8、9を設けているので、ストッパ部材6、7の配設位置の組み付け誤差を弾性緩衝材8、9で吸収することができる。すなわち、仮に、弾性緩衝材8、9を装着せずにストッパ部材6、7のみで構成されており、かつ、ストッパ部材6、7に組み付け誤差がある場合には、硬球体2が転動したときに、上下の硬質板4、5の一方のストッパ部材6(7)に当たっているが、他方のストッパ部材7(6)には当たっていない状態が生じる、この場合、他方のストッパ部材7(6)に硬球体2が当たるまで、硬球体2と硬質板4、5との間に滑りが生じ、硬球体2又は硬質板4、5に顕著な摩耗痕が生じたり、地震終息後に硬球体2が元の位置(地震前の位置)に復帰できなかったりする。
【0033】
しかし、このストッパ付き転がり支承装置1によれば、硬球体2が弾性緩衝材8、9に当たって、弾性緩衝材8、9が変形してからストッパ部材6、7により硬球体2の転動が規制されるので、ストッパ部材6、7に組み付け誤差がある場合でも、弾性緩衝材8、9の変形により組み付け誤差が吸収されて、硬球体2が上下の両方のストッパ部材6、7に当たるようになる。このため、硬球体2と硬質板4、5との間に滑りが生じることなく、硬球体2と硬質板4、5に摩耗痕が生じるのを防止でき、地震が収まったときには、別途施工される制振装置の作用により、硬球体2を元の位置(地震前の位置)に復帰させることができる。
【0034】
次に、このストッパ付き転がり支承装置1を用いた構造物のアンカー構造の実施の形態を説明する。
【0035】
本発明者らは、図6に示すように、(図示されていない)住宅の土台12(構造物の上部構造)と基礎コンクリート13(下部構造)との間の制振層21に、複数の転がり支承装置22(又は滑り支承装置)と複数の制振装置23を分散させて配設することにより、安価で嵩張らず、地震の振動を吸収する機能と、住宅の床下の換気を行う基礎パッキンとしての機能を兼ね備えた構造を備えた住宅(構造物の上部構造)のアンカー構造20を提案している。
【0036】
具体的には、住宅(構造物の上部構造)の鉛直荷重を略均等に支承するように、複数の転がり支承装置22(又は滑り支承装置)を分散させて配設するとともに、協働して住宅(構造物の上部構造)の捩じれ振動を抑制するように、複数の制振装置23を分散させて配設した構造物のアンカー構造を提案している。この構造物のアンカー構造20は、転がり支承装置22(又は滑り支承装置)と制振装置23の斯かる分散配置により、より高度な制振機能を得ることができる。
【0037】
転がり支承装置22は、例えば、図7に示すように、硬球体31と、硬球体31を内部に収容する円筒形状の位置決め部材32と、硬球体31及び位置決め部材32を上下に挟む硬質板33、34を備えている。この転がり支承装置22の硬球体31、硬質板33、34は、上述したストッパ付き転がり支承装置1の硬球体2、硬質板4、5と同様の構成、作用、効果を備えているので、同一の構成、部位に同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
位置決め部材32は、例えば、軟質ウレタンフォームやポリスチレン発泡体やポリエチレン発泡体などの軟質弾性材料を用いると良い。位置決め部材32の内径は、硬球体31の直径と同じか、硬球体31の直径よりも少し小さいものを用い、硬球体31の位置決めを確実に行えるようにすると良い。また、図7のように、硬球体31の周囲を位置決め部材32で覆うことにより、硬球体31の転動領域に塵や埃が入るのを防止することができる。
【0039】
なお、この位置決め部材32は、硬球体31の転動に応じて変形し易くするため、下側の硬質板34に接着し、上側の硬質板33には接着していない。また、初動時の硬球体31の転動に対する抵抗を緩和するため、位置決め部材32の接着は、外周側を接着し、内周側は接着していない。例えば、外周側から位置決め部材32の半径方向の厚さの約半分程度を接着すると良い。また、位置決め部材32の外周面は被覆材35で被覆するとよい。この転がり支承装置22は、硬球体31を位置決め部材32の中に入れることにより、硬球体31を硬質板33、34の転動面の中央に位置決めしている。
【0040】
また、構造物のアンカー構造20において、転がり支承装置22と一緒に配設する制振装置23は、例えば、図8に示すように、高減衰ゴム製のゴム状弾性体からなる円柱形状の制振部材41と、制振部材41を上下に挟む硬質板42、43と、ゴム製の被覆材44を備え、制振部材41の上端及び下端にそれぞれ硬質板42、43を加硫接着し、制振部材41の外周面をゴム製の被覆材44で被覆したものである。後記表1に、制振部材41に用いるゴム材料の好適な配合例を示す。なお、表1中、phrは、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときに用いる記号である。制振装置23は、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように配設する。具体的には、構造物の上部構造12と下部構造13との間の制振層21の偏心率が3%以内になるように配設する。なお、構造物の上部構造12と下部構造13との間の制振層21の偏心率は、後記式1により算出するとよい。
【0041】
この転がり支承装置22と制振装置23は、嵩張らないので、基礎パッキンの機能を兼ね備えた構造物のアンカー構造に好適である。また、転がり支承装置22に替えて、滑り支承装置(図示省略)を用いても良い。
【0042】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置1は、この構造物のアンカー構造20に適用可能であり、上記の複数の転がり支承装置22の全て又は幾つか(少なくとも1つ)をストッパ付き転がり支承装置1に置き換えることにより、この構造物のアンカー構造20において、上部構造の鉛直荷重を支承する機能とストッパの機能とを奏する。なお、ストッパ付き転がり支承装置1は、ストッパ部材6、7のない転がり支承装置22に比べて、製造コストが割高になるので、ストッパ付き転がり支承装置1の数を抑えると、構造物のアンカー構造20全体のコストを抑えることができる。住宅の重さ、地震時に作用する慣性力、ストッパ部材6、7の耐力を考慮して、図9に示すように、ストッパ部材6、7が壊れない程度に、ストッパ付き転がり支承装置1の数を抑えればよい。
【0043】
また、この構造物のアンカー構造20に用いる場合のストッパ部材6、7により画定する硬球体2の転動領域については、制振装置23の破損を防止することも考慮するとよい。すなわち、制振装置23の制振部材41に用いる高減衰ゴムは、一般に、高さの約4倍の水平方向のせん断変形量によって、破断限界又は降伏限界に達することが知られている。このため、制振部材41の破損を防止するため、制振装置23の上下の硬質板42、43のせん断方向(水平方向)の変位を制振装置23の制振部材41の高さの4倍以下にするとよい。ストッパ付き転がり支承装置1では、硬質板4、5のせん断方向(水平方向)の変位は、硬球体2の転動距離の2倍になる。このため、ストッパ付き転がり支承装置1のストッパ6、7により、硬球体2の転動を、制振装置23の制振部材41の高さの2倍以下に規制することにより、制振装置23の破断を防止することができる。
【0044】
以上、本発明に係るストッパ付き転がり支承装置の実施の形態、および、本発明者らの提案する構造物のアンカー構造への適用を説明したが、本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は上記に限定されるものではない。
【0045】
例えば、図1においては、弾性緩衝材8、9をストッパ部材6、7の内周に配設したものを例示したが、図10に示すように、円筒状部材3の外周に弾性緩衝材51を配設したものでもよい。この場合、弾性緩衝材51に用いる弾性材料の量が少なくて済むので、製造コストを低廉化させることができる。また、図11に示すように、弾性緩衝材8、9、51をストッパ部材6、7の内周及び円筒状部材3の外周の両方に設けてもよい。なお、弾性緩衝材51を円筒状部材3の外周に配設する場合には、弾性緩衝材51が上下の硬質板4、5に接触して弾性緩衝材51が円筒状部材3の水平移動の妨げにならないように、上下の硬質板4、5から弾性緩衝材51を離して配設するとよい。
【0046】
また、ストッパ付き転がり支承装置1の硬球体2に装着する円筒状部材3は、硬球体の赤道より少し上方位置との間に、小径の鋼球(転動体)を複数介在させたものを例示したが、硬球体の赤道より少し上方位置と少し下方位置との両方との間に小径の硬球(転動体)を複数介在させてもよい。さらに、円筒状部材は、上記の形態には限定されず、例えば、硬球体の直径よりも少し大きな内径を有したものを、小径の鋼球(転動体)を複数介在させずに硬球体に装着し、硬球体の転動に沿って、下側の硬質板の上を滑りながら水平に移動するものでもよい。この場合、円筒状部材には、硬球体及び硬質板との摩擦係数が小さい、滑らかな材料を用いると良い。
【0047】
また、ストッパ付き転がり支承装置の弾性緩衝材の断面形状は適宜に設計変更すれば良く、また弾性緩衝材に用いる弾性材料も適宜に選択すると良い。
【0048】
【表1】
【0049】
【式1】
【0050】
【発明の効果】
本発明に係るストッパ付き転がり支承装置は、硬球体の外周を覆うように設けた円筒状部材がストッパ部材に面当りして、ストッパ部材から円筒状部材を介して受ける水平方向の反力により硬球体の転動が規制される。このため、硬球体が下側の硬質板のストッパ部材に乗り上げて、上側の硬質板を浮き上がらせるような動きが硬球体に生じることがない。また、円筒状部材の外周面及び/又はストッパ部材の内周面に弾性緩衝材を配設しているので、衝突時に構造物の上部構造に伝わる衝撃を緩和することができ、また衝撃音を小さくすることができる。また、ストッパ部材の組み付け誤差も吸収することができる。
【0051】
また、円筒状部材は、硬球体との間に、複数個の転動体を回転自在に介在させたものは、硬球体の転動に与える抵抗を小さく、硬球体が円滑に転動するので、好適である。
【0052】
また、円筒状部材の上下端を、上下の硬質板に対して非接触状態とすることにより、硬球体の転動及び円筒状部材の水平移動に与える抵抗が小さくなる。この場合、円筒状部材と上下の硬質板との接触を確実に防止するため、上下の硬質板と円筒状部材の上下端との間に、上下の硬質板の間隔寸法の2.5%以上の隙間を設定すると良い。
【0053】
上述したストッパ付き転がり支承装置は、安価に製造でき、嵩張らず、基礎コンクリートの上に設置することが可能であるから、転がり支承装置又は滑り支承装置と共に、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設した構造物のアンカー構造に適用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るストッパ付き転がり支承装置を示す縦断面図。
【図2】ストッパ付き転がり支承装置の平面図。
【図3】ストッパ付き転がり支承装置の施工工程を示す平面図。
【図4】ストッパ付き転がり支承装置の使用状態を示す縦断面図。
【図5】ストッパ付き転がり支承装置の使用状態を示す縦断面図。
【図6】本発明者らの提案する構造物のアンカー構造を示す平面図。
【図7】構造物のアンカー構造に用いる転がり支承装置の一実施形態を示す縦断面図。
【図8】構造物のアンカー構造に用いる制振装置の一実施形態を示す縦断面図。
【図9】ストッパ付き転がり支承装置を用いた構造物のアンカー構造の一実施形態を示す平面図。
【図10】ストッパ付き転がり支承装置の変形例を示す縦断面図。
【図11】ストッパ付き転がり支承装置の変形例を示す縦断面図。
【図12】従来の住宅の上部構造のアンカー構造を示す図。
【図13】基礎パッキン材を示す図。
【符号の説明】
1 ストッパ付き転がり支承装置
2 硬球体
3 円筒状部材
4、5 硬質板
6、7 ストッパ部材
8、9 弾性緩衝材
10 小径の鋼球(転動体)
11 保持溝
Claims (6)
- 向かい合う面にそれぞれ転動面を有する上下の硬質板と、
前記上下の硬質板の中央部に位置決めした硬球体と、
前記硬球体の外周を覆う円筒状部材と、
前記上下の硬質板の向かい合う面に硬球体の転動領域を画定するように突設した円筒状のストッパ部材と、
前記円筒状部材の外周面及び/又はストッパ部材の内周面に配設した弾性緩衝材とを備えていることを特徴とするストッパ付き転がり支承装置。 - 前記円筒状部材と硬球体との間に、複数個の転動体が回転自在に介在していることを特徴とする請求項1に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記円筒状部材の上下端が、前記上下の硬質板に対して非接触状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記上下の硬質板と円筒状部材の上下端との間に、上下の硬質板の間隔寸法の2.5%以上の隙間を設定したことを特徴とする請求項3に記載のストッパ付き転がり支承装置。
- 前記請求項1から4の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置を、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、
高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴とする構造物のアンカー構造。 - 転がり支承装置又は滑り支承装置と、前記請求項1から4の何れかに記載のストッパ付き転がり支承装置とを、構造物の上部構造の鉛直荷重を支持するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設するとともに、
高減衰ゴムの上下端面に硬質板をそれぞれ取り付けた複数の制振装置を、前記構造物の上部構造の捩じれ振動を抑制するように、構造物の下部構造と上部構造との間に分散させて配設したことを特徴とする構造物のアンカー構造。
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-
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- 2003-03-12 JP JP2003066864A patent/JP2004278550A/ja active Pending
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