JP4096630B2 - 冷間タンデム圧延機及びそれを用いた極薄鋼板の冷間圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間タンデム圧延機およびそれを用いて、1回目の冷間圧延を行った後、焼鈍した鋼板に、さらに2回目の冷間圧延を行う際の極薄鋼板の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
板厚が0.05〜0.35mmの極薄鋼板、例えばブリキ原板のうち硬質さが要求されるものなどは2回の冷間圧延を行って製造される。このようなDR(Double Reduction)材は、多くの場合、冷間タンデム圧延機により1回目の冷間圧延が行われ、焼鈍された鋼板に、さらに2回目の冷間圧延を施すことにより所定の板厚、所望の硬さと表面品質とが付与される(例えば、JIS G3303 参照)。
【0003】
2回目の冷間圧延では、例えば図1に示すような3スタンドの冷間タンデム圧延機を用い、第1スタンドではそのワークロールにより鋼板を無潤滑状態でピンチて張力を付与し、第2スタンドではワークロール2と鋼板1との間にノズル4から潤滑剤を供給し、圧下率を5%以上として圧延することで所定の板厚とし、所望の硬さを付与し、さらに第3スタンドでは無潤滑で圧下率を0.5 〜2%として圧延することで、表面品質を調整する。なお、図1で符号5、6はリール、符号7は鋼板搬送方向であり、2回目の冷間圧延後の鋼板には、別途、各種表面処理、例えばブリキ原板の場合、錫めっき処理が施される。
【0004】
ところで、上記の3スタンドの冷間タンデム圧延機においては、第1スタンドにはショットブラストによりダル加工し、クロムめっきして表面粗さRaを1.0 μm にしたワークロール(ショットダル加工・クロムめっきロール:表層断面;図8参照)を組み込み、上下のワークロール2により鋼板を確実にピンチし、第1スタンドには回転砥石により円筒研磨されRaを0.2 μm としたワークロール2(以下、ブライトロールという)を組み込み、第3スタンドには回転砥石により円筒研磨され表面粗さRaを1.2μm としたワークロール(スクラッチロール:表層断面;図9参照)を組み込み、2回目の冷間圧延を行っているが、図2、3に示す縦バックルと呼ばれる形状不良が圧延機出側の鋼板に発生することがある。
【0005】
なお、図2、3はそれそれ鋼板表面上方から見た縦バックルの模式図、鋼板の幅方向断面で見た縦バックルの模式図である。1Aは縦バックルの筋条に見える鋼板表面上の光沢の、いわば境目であり、hは縦バックルの高さである。またWは鋼板の幅、Lは鋼板の長手方向である。ここで、縦バックルは、ロールギャップ内で鋼板内部に生じる幅方向の圧縮応力に起因する座屈現象で発生すると考えられる。
【0006】
このような縦バックルが顕著になった場合には、その後に別途行う電気錫めっき、あるいは溶融亜鉛めっきなどの表面処理後の表面品質も付随的に劣化し、食用缶などにおいてはラベル印刷などの見映えの悪さにまでその影響が及ぶ。このため、縦バックルが顕著になった場合には、その後に別途行うめっき処理などに先立って、2回目の冷間圧延後の鋼板を、さらに別途、テンションレベラーやローラレベラーなどの他のラインに通板して形状矯正を行う処置を施さねばならず、その分、製造コストが上昇してしまう。また、納期上の問題も生ずることがある。よって、2回目の冷間圧延の際の、縦バックルの発生を抑制したいという技術的な要求は強い。
【0007】
これに対して特開2000-94005号公報には、直径400 mm以上の大径ロールを用いて、調質圧延荷重をロール表面粗さとともに所定値以下に規制することにより、鋼板に生じる縦バックルの高さをある高さ以下に抑制できることが2スタンドからなる調質圧延機の第2スタンドへの適用実施例とともに記載されている。
加えて、近年、DRブリキの表面品質に対する需要家の要求レベルはますます高まりつつあり、これに対応できる圧延法が必要となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000-94005号公報に示された方法では、めっき後の表面品質向上の要求に対し、操業上もっと圧下率を大きくして前スタンドで生じたオイルピットを押し潰したり、ワークロールの表面粗さをある程度以上粗くしてもその要求に十分応えることができず、規制範囲を外れると再び縦バックルが発生してしまうという問題があった。
【0009】
さらに、図9に示したような表層断面をもつスクラッチロールを第3スタンドに組み込んで2回目の冷間圧延を行うと、鋼板とロールとの焼付きが発生することがあり、安定圧延が困難になる問題が付け加わる場合もあった。
本発明は、上記のような諸問題を有利に解決すべくなされたもので、2回目の冷間圧延の際、圧延機出側の鋼板に発生する縦バックルを抑制しつつ、表面品質も向上すること可能な冷間タンデム圧延機およびそれを用いた極薄鋼板の冷間圧延方法を提供することを目的とする。また、安定して2回目の冷間圧延を行うことが可能な冷間タンデム圧延機およびそれを用いた極薄鋼板の冷間圧延方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋼板表面の凹部を目立たなくでき、かつロールギャップ内における鋼板内部の幅方向圧縮応力を緩和する効果を有するワークロール表面構造を知見し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
【0011】
請求項1記載の発明は、3スタンドの冷間タンデム圧延機であって、第1スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.5 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされ、第2スタンドおよび第3スタンドに円筒研磨されたワークロールが組み込まれていることを特徴とする冷間タンデム圧延機である。
【0012】
請求項2記載の発明は、3スタンドの冷間タンデム圧延機であって、第1スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.5 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされ、第2スタンドに円筒研磨されたワークロールが組み込まれ、第3スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.3 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間タンデム圧延機である。
【0013】
請求項3記載の発明は、1回目の冷間圧延後、焼鈍し、2回目の冷間圧延を、請求項1または請求項2記載の冷間タンデム圧延機を用い、第1スタンドのワークロールで鋼板をピンチして張力を付与し、第2スタンドの圧下率を5%以上、第3スタンドの圧下率を0.5 〜2%として行うことを特徴とする極薄鋼板の冷間圧延方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図1〜4を参照し詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る冷間タンデム圧延機は、図1に示すような3スタンドの冷間タンデム圧延機であって、第1スタンドに表面粗さRaが0.3 〜1.5 μm でかつHv;1000以上の略部分球形状の突起を有するクロムめっき層をロールバレル表層断面に形成したワークロール2(以下、ロール2ともいう)が組み込まれ、第2スタンドおよび第3スタンドに円筒研磨されたロールが組み込まれている。また、第1スタンドでは、鋼板をロール2で荷重を単位幅当たり1470〜2940N/mmとしてピンチし(挟圧)、第1スタンドと第2スタント間の鋼板張力を98〜196 N/mm2 としている。
【0015】
なお、第1スタンドでは鋼板とロール2との間に潤滑剤を供給しない一方、第2スタンドでは、その入側にノズル4を配置し、十分な量の圧延油などの潤滑剤を供給しつつ潤滑圧延が行えるようにしている。第1スタンドでは確実に鋼板をピンチするため、鋼板とロール2との間に潤滑剤を供給しないようにするのが好ましく、第2スタンドでは圧下率5%以上というように高くした場合でも、焼付きが発生しないように安定して冷間圧延を行えるように潤滑圧延とするのが好ましく、また、第3スタンドでは0.5 〜2%の小さな圧下率で圧延することで、第2スタンドでの冷間圧延後にもなお鋼板表面に残存する微小な凹部を押し潰す目的上、鋼板とロール2との間に潤滑剤を供給しないようにするのが好ましい。
【0016】
ところで、従来の3スタンドの冷間タンデム圧延機を用いた場合、第1スタンドではショットダル加工・クロムめっきロールで鋼板を挟圧するので、図8に示す突起11で形成されたダル目が鋼板表面に転写して微小な凹部が形成される。この凹部は第2スタンドでの冷間圧延後の鋼板表面にも残存し、さらに第3スタンドでの調質圧延後の鋼板表面になおも残存して、めっき後の鋼板の表面品質も付随的に劣化しやすい問題があった。
【0017】
これに対して本発明の3スタンドの冷間タンデム圧延機では、第1スタンドに従来の図8に示すダル目をもつロール(ショットダル加工・クロムめっきロール)に代わり、図4に示すような微小で滑らかな略部分球形状の突起11を持つロールを組み込んだ。図4に示すような微小で滑らかな略部分球形状の突起11を持つロールにより、第1スタンドで鋼板を挟圧した際に略部分球形状の突起11の転写により形成される凹部の深さを浅くすることができる。このため、第2スタンド、第3スタンドでの圧延後も凹部が目立たないようにできる。この結果、めっき後の鋼板の表面品質を向上することができる。また、鋼板表面に転写された略部分球形状の凹部の分布はランダムで外観上、光沢の異方性がないため、目立たないという作用もある。
【0018】
ここで、略部分球形状の略とは、完全な球形の一部分をした形状から少し外れる場合も含む、という意味である。
なお、図4は、ロールバレル表層13に形成したクロムめっき層12の模式図であって、(a)は表面を顕微鏡観察した図、(b)は断面を顕微鏡観察した図である。微小な略部分球形状の突起11は、図4に示すごとく、その平面上で見た場合に真の形状に外接する円形と近似した場合、その半径rは5〜50μm とし、鋼板に接触する突起部の単位面積当たりの個数は300 〜3000個/mm2 の範囲内で出来るだけ多くすることがめっき後の鋼板の表面品質向上縦バックル防止とに効果がある。
【0019】
この微小な略部分球形状の突起11は、後述する電着めっきによりロールバレル13表層にクロムめっき層12と一体的に形成するのが好ましく、本発明では表面粗さRaを0.3 〜1.5 μm 、Hv;1000以上と規定する。表面粗さRaを0.3 〜1.5 μm と規定する理由は、第1スタンドでの圧延に続く、第2スタンドでの圧延により、第1スタンドでの圧延でできた凹部を消滅させることができる程度に予め凹部を浅く調整しておくためである。クロムめっき層12の厚さaは、60〜100 μm とするのが好ましく、クロムめっき層12の硬さもHv;1000以上とするのが好ましい。
【0020】
そしてさらに、第1スタンドに上記の略部分球形状の突起11を持つロールを組み込んだ場合、第2スタンド出側の鋼板表面に残存する凹部が浅くなることから、第3スタンドの圧下率をその分小さくしても鋼板表面の凹部が目立たないようにできる作用もある。よって、第3スタンドの圧下率をその分小さくして圧延荷重を低減することが可能となり、ロールギャップ内での鋼板内部の幅方向圧縮応力に起因して生じる縦バックルも抑制することができる。このため、本発明の3スタンドの冷間タンデム圧延機では、第1スタンドに図8に示す突起11で形成されたダル目をもつロールを組み込んだ従来のものに比べて鋼板の表面品質を向上することができると同時に、図2、図3に示すような縦バックルを小さくすることもできるのである。
【0021】
また、第1スタンドにおいて上記の略部分球形状の突起を有するロールで挟圧すると、突起部先端が圧延時の力により弾性変形して偏平する作用があり、挟圧荷重を単位幅当たり1470〜2940N/mmと従来の挟圧荷重(単位幅当たり980 〜1960N/mm)より大きくした場合でも転写される凹部の深さを浅くでき、表面品質を向上できるという作用もあるものと推察される。いずれにせよ、本発明によれば、第1スタンドのロールにて鋼板を挟圧し、さらに張力が加わった場合でも、スリップを起こさず、第2スタンド入側張力として必要な98〜196 N/mm2 の張力を確実に付与できる。
【0022】
また、本発明においては、第1スタンドに加えて第3スタンドにも表面粗さRaが0.3 〜1.3 μm でかつHv;1000以上の略部分球形状の突起を有するクロムめっき層をロールバレル表層に形成したロールを組み込むことが上述した第1スタンドだけの場合に比較して、縦バックルの低減により効果があるので好ましい。
【0023】
上記のようなロールを第3スタンドに組み込んだ場合、従来のスクラッチロールを第3スタンドに組み込んだ場合より鋼板内部の幅方向圧縮応力が緩和されて、縦バックルが抑制できるようになるとともに、ロール表層の微小な略部分球形状の突起部が鋼板表面に押し込まれるため、鋼板表面に残留していた微小な凹部は目立たなくなる作用がある。その際、第3スタンドの圧下率を大きくして調質圧延荷重を大きくしても突起部先端は滑らかな略部分球形状であるため、突起部先端が圧延時の力により弾性変形して広げられる作用があり、これにより、ロールギャップ内における鋼板内部の幅方向圧縮応力が緩和される作用が働く。すると、第3スタンドの圧下率を大きくし、圧延荷重を大きくした場合でも、従来使用していたスクラッチロール(図9参照)のように縦バックルが発生することがない。また、第3スタンドの圧下率を小さくし、圧延荷重を小さくした場合でも、第1スタンドで略部分球形状の突起11の形状が鋼板に転写されることにより凹部を目立たなくする作用は失われないため、めっき後の鋼板表面の表面品質を向上でき、縦バックルの発生も防止できるのである。
【0024】
また、本発明では、ロールバレル表層13にHv;1000以上の略部分球形状の突起11を有するクロムめっき層12を形成したロールを使用するため、第1スタンド、あるいは第1スタンドに加えて第3スタンドにそのロールを組み込んだ場合、略部分球形状の突起11はほとんど摩耗せず、ロール2と鋼板との焼付きも発生しない。このため、安定して2回目の冷間圧延が行える。
【0025】
ここで、Raについて説明しておくと、JIS B0601-1994に定義するところの算術平均粗さとし、ロール軸方向に測定した値である。Raのカットオフ値は0.8 mm、評価長さは4mmとし、JIS B0651-1996に準拠した触針式表面粗さ測定器を用いて測定した。
このような微小な略部分球形状の突起がロールバレル表層に形成されたロールは、例えば特表平9-503550号公報、文献「Metall Plant Technol int,No.6(1998),80-85 」に開示されている電気的電着めっき法により得ることができる。図5はクロムメッキ層を形成する装置の縦断面模式図であり、図6はその際の電流密度yと時間tとの関係を例示したグラフである。この装置は電着浴容器102 を備え、アノード103 および電着被覆されるロールバレル表層13がクロム電解質101 の浴溶液を含有する浴溶液中に浸漬される。ロールバレル表層13以外の部分には電気的に電着されないようにプロテクトスリーブ104 が装着されている。アノード103 およびカソードを構成するロールバレル表層13には電気エネルギー源105 が接続され、電気エネルギー源105 は、制御ユニット106 により例えば図6に示すように電流密度が時間の経過に伴い段階的に変化するように制御される。
【0026】
ここで、110 、111 は電流密度の上昇が数段階で行われる芽晶形成期間であり、芽晶形成期間110 、111 における電流密度上昇のインターバルΔtは0.1 〜30秒とされている。また、芽晶形成期間110 開始時の電流密度から電流密度最大値114 に至るまでは1段階当たり1〜6mA/cm2 の予め定めた上昇値で電流密度を高め、その後、芽晶を成長させる芽晶成長期間112 の間は電流密度最大値114 とし、電流密度最大値は30〜180 mA/cm2 とするのが好ましい。芽晶成長期間112 は1〜600 秒、好ましくは約30秒とされ、芽晶成長期間経過後、電流密度の低下段階113 において、1段階ごとに−1〜−8mA/cm2 の予め定めた減少量で電流密度を最終値にまで減少させるのが好ましい。このプロセスを周期的に繰り返すこともできる。また、108 は、芽晶形成の前に、インパルス電流を15〜60mA/cm2 の電流密度で供給するベース層構成期間である。電流停止期間107 は、ロール2のロールバレル表層13が浴溶液温度に近くなるまでの温度調整期間で、60〜120 秒とするのが好ましく、ベース層構成期間108 と芽晶形成期間110 の間の電流停止期間である109 は約60秒とするのが好ましい。
【0027】
本発明のロールのように、略部分球形状の突起11を平面上で見た場合に、真の形状に接する円形と近似した場合、その半径rを5〜50μm 、単位面積当たりの突起11の個数を300 〜3000個/mm2 とし、表面粗さRaを0.3 〜1.5 μm とするには、上記の△t、電気密度の上昇あるいは減少を、それぞれ0.1 〜20秒、1段階あたり2mA/cm2 とするのが好ましい。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〕 図1に示す3スタンドの冷間タンデム圧延機を用い、素材厚0.2 mm、幅1000mmで降伏応力392MPaの焼鈍された鋼板に2回目の冷間圧延を行い、ブリキ原板を得、その後、目付量が1.2 μm の錫めっきを行った。なお、発明例1、2の場合、円筒研磨して表面粗さRaを0.1 μm とした後、図6のようにしてクロムめっき層をロールバレル表層に形成し、表1に示すロール表面をもつロールを得、このロールをタンデム圧延機の第1スタンドに組み込み、第2スタンドには円筒研磨して表面粗さRaを0.2 μm に調整したロールを組み込み、第3スタンドには円筒研磨して表面粗さRaをそれぞれ表1に示すようにしたロールを組み込んだ。
【0029】
【表1】
【0030】
また第1〜第3スタンドに組み込んだロール自体は鋼製の5mass%Cr鍛鋼で、ロールの直径は650mm 、ロールバレル長は1400mmである。第2スタンドでは濃度5mass%の潤滑剤(粘度30cSt/40℃)を供給し、第1、3スタンドでは無潤滑とし、定常圧延速度を500 m/minとし、第1スタンドではスリップを起こすことなく、第1〜2スタンド間に147MPaの張力を付与できるように単位幅挟圧荷重を決定し、第2スタンドでは圧下率を25%、第3スタンドでは圧下率を0.5 、1.0 、2%となるようにしてコイル質量が20tのコイルを1コイル圧延した。
【0031】
一方、従来例および比較例では、第1スタンドにショットダル加工・クロムめっきロールを組み込み、また第3スタンドにスクラッチロールを組み込み、その他の条件は上記発明例1、2と同じとして2回目の冷間圧延を行った。
圧延後の極薄鋼板の縦バックル高さhを接触式形状測定器により測定し、錫のめっき後、鋼板の表面品質(光沢むら)を目視でA(良好)〜D(劣る)の4段階で評価し、その結果を表2に示した。また、第3スタンドでの定常圧延速度における圧延荷重も表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示す結果から、発明例1、2では鋼板に生じる縦バックルを従来例より悪化させずに、錫めっき後の鋼板の表面品質を向上することができている。また、発明例2では、鋼板に生じる縦バックルを完全に防止できている。一方、従来例では、第3スタンドの圧下率を増減すると錫めっき後の表面品質向上と縦バックルの防止の両方を満足できず、鋼板の表面品質を向上しようとして第3スタンドでの圧下率を大きくした場合には、縦バックルが悪化し、縦バックルを抑制しようとして第3スタンドでの圧下率を小さくした場合には、錫めっき後の鋼板の表面品質が悪化している。また、第3スタンドのロール表面粗さを従来例より大きくして鋼板表面品質を向上しようとした比較例の場合、鋼板に生じる縦バックルが悪化している。
【0034】
また、表2に示した第3スタンドでの圧延荷重から、本発明のロールによっても、従来例とくらべて荷重を同等とすることができることがわかる。
〔実施例2〕
第3スタンドの圧下率を発明例1、2では0.5 %、従来例では基準圧下率1.0 %、比較例では1.0 %とし、その他の条件は上記実施例1と同じとし、コイル質量が20tのコイルを60コイル連続して圧延し、ロールと鋼板との焼付の有無、錫めっき後の鋼板の表面品質を上記実施例1と同様にして評価し、表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
表3に示す結果から、発明例では同一ロールで長距離2回目の冷間圧延を行っても焼付きが発生せず、錫めっき後の鋼板の表面品質が良好であることがわかる。一方、従来例および比較例では、圧延コイル数の増大に伴うロールの初期摩耗が著しいため、めっき後の鋼板の表面品質が低下し、また発明例より圧下率を高くして、調質圧延荷重を高くしたために、第3スタンドにおける焼付が発生し、表面性状が著しく低下した。なお、圧延コイル数に対する縦バックル高さの変化を図7に示した。従来例および比較例では圧延初期でのロール表面の初期摩耗が大きいため、縦バックル高さが変化している一方、発明例1、2では、圧延コイル数が増大しても変化が認められず、従来例および比較例より縦バックル高さが低いことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、極薄鋼板の2回目の冷間圧延において、鋼板の表面品質を向上することができ、またさらに鋼板に生じる縦バックルを抑制することができる。この結果、需要家の高い表面品質要求にも応えることができるようになり、さらに、レベラー通板などの追加的な処置も不要になって、製造コストの上昇も抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は2回目の冷間圧延に用いるタンデム圧延機の概略構成図である。
【図2】図2は鋼板表面上方から見た縦バックルの模式図である。
【図3】図3は、鋼板の幅方向断面で見た縦バックルの模式図である。
【図4】図4は本発明に用いるロールの表層の模式図であって、(a)は表面を顕微鏡観察した図、(b)は断面を顕微鏡観察した図である。
【図5】図5は本発明に用いるロールにクロムめっきを行う装置の概略構成図である。
【図6】図6は図5に示した装置における電流密度の変化を示すグラフである。
【図7】図7は本発明の効果を例示したグラフである。
【図8】図8はショットダル加工・クロムめっきロール表面の断面模式図である。
【図9】図9はスクラッチロール表層の断面の模式図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 ワークロール(ロール)
4 ノズル
5、6 リール
7 鋼板搬送方向
W 板幅
L 鋼板長手方向
1A 縦バックルの境目
h 縦バックルの高さ
11 突起
r 略部分球形状の突起を平面図上で見た近似円の半径
d 略部分球形状の突起の高さ
12 クロムめっき層
a クロムめっき層の厚み
13 ロールバレル表層
Claims (3)
- 3スタンドの冷間タンデム圧延機であって、第1スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.5 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされ、第2スタンドおよび第3スタンドに円筒研磨されたワークロールが組み込まれていることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
- 3スタンドの冷間タンデム圧延機であって、第1スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.5 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされ、第2スタンドに円筒研磨されたワークロールが組み込まれ、第3スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.3 〜1.3 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が300〜3000個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間タンデム圧延機。
- 1回目の冷間圧延後、焼鈍し、2回目の冷間圧延を請求項1または請求項2記載の冷間タンデム圧延機を用い、第1スタンドのワークロールで鋼板をピンチして張力を付与し、第2スタンドの圧下率を5%以上、第3スタンドの圧下率を0.5 〜2%として行うことを特徴とする極薄鋼板の冷間圧延方法。
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