JP4096628B2 - 金属板の冷間圧延機およびそれを用いた冷間圧延方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板の冷間圧延機およびそれを用いた金属板の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板、例えば鋼板の冷間圧延は、図1および図2に示すような冷間圧延機を用い、ノズル4からワークロール2と鋼板1との間に潤滑剤を供給しつつ行うのが一般的である。ここで、図1は、5つのスタンドが一列に配置されたタンデム式冷間圧延機の概略構成図(第3、4スタンドは略して表記)であり、圧延方向を一方向として各スタンドに組み込んだワークロール2により冷間圧延を行うように構成されている。また、図2は一つのスタンドがリール5、6間に配置されたリバース式冷間圧延機であって、圧延方向をパス毎に交互に変えてワークロール2により冷間圧延を行うように構成されている。図中、符号3はバックアップロールであり、7、8、9は鋼板搬送方向である。また図2に示すリバース式冷間圧延機には中間ロールが配置されているとともに、スタンドの左右にはワイピングロール10が配置されている。ワイピングロールは、ノズル4から噴射された余分な潤滑剤がリール5、6の位置にまで流れ出さないようにすると共に、鋼板1に付着した余分な潤滑剤を巻き取る前に除去するためのものである。
【0003】
上記のような冷間圧延機を用い、ワークロール2(以下ロール2ともいう)と金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、圧下率を5〜40%とし、ロール2により冷間圧延を行う際、高圧延速度にするほどロール2と鋼板1との間で焼付が発生して鋼板の表面品質が悪化したり、スリップに起因するチャタリング現象が発生する場合がある。スリップはロール2と鋼板1との間に余分な潤滑剤が導入された場合などに発生し、ロール2による鋼板1のグリップ力が低下し、ロール2により鋼板1を圧下しつつ前方に送り出せなくなる現象である。このようなスリップに起因するチャタリング現象とは、スタンドに組み込まれたワークロール2が周方向に微細に振動することで、上下ワークロールでその振動位相は等しくならない。このチャタリングが発生すると、鋼板1の板厚や鋼板1の表面品質に悪影響が出るほか、程度が甚だしくなると、上下のワークロール2で挟まれる鋼板1は破断して大きな操業トラブルとなることもある。このため、チャタリングおよび焼付の防止という技術的要求は強い。また、より光沢度の高い、表面品質に優れた鋼板を高圧延速度すなわち高能率で製造したいという技術樹的要求もある。
【0004】
ところで、金属板の冷間圧延においては、図3に示すような表層断面をもつロール(スクラッチロールともいう)を用い、ロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ冷間圧延を行なう場合、ロールの表面粗さを粗くするとチャタリングが生じ難くなることは良く知られている。図3はロールバレル13の表層を示す要部断面模式図であり、突起11はロール周方向に延在している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、チャタリングを防止するために、スクラッチロールの表面粗さを粗くした場合、図3に示すロール表面の微小な突起11が潤滑剤膜を破って金属板と直接接触する部分が増え、上述した焼付の発生率が増大するという問題があるうえ、スクラッチロールの表面粗さを粗くした場合、凹凸が鋼板の表面に転写して高光沢の鋼板が得られなくなるという問題もある。
【0006】
例えばGS 20°の光沢度が300 〜500 ポイント程度の鋼板を得る場合、図1に示すようなタンデム式冷間圧延機の各スタンドに表面粗さRaを0.2 μm としたスクラッチロールを組み込んで圧延している。しかし、スクラッチロールを用いた冷間圧延では、光沢度を向上しようとしてワークロールの表面粗さを小さくすると、先述したスリップに起因するチャタリングが発生しやすくなる問題があり、光沢向上と操業の安定化とが相反する。
【0007】
さらに、上述した焼付と、スリップに起因するチャタリングは、共に高圧延速度において発生しやすくなるため、圧延速度を十分上げることができず、高能率化にも限界がある。
本発明は、上記の諸問題点を解決し、高圧延速度においても焼付とチャタリングの両方を抑制することができ、光沢度の高い金属板を安定して製造することが可能な冷間圧延機およびそれを用いた金属板の冷間圧延方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数のスタンドが一列に配置された金属板の冷間圧延機であって、各スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.05〜2.0 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が500〜3500個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間圧延機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、一つのスタンドがリール間に配置された金属板の冷間圧延機であって、前記スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.05〜2.0 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が500〜3500個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間圧延機である。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の冷間圧延機を用い、各スタンドに組み込んだワークロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、各スタンドでの圧下率を5〜40%とし、圧延方向を一方向として冷間圧延を行うことを特徴とする金属板の冷間圧延方法である。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の冷間圧延機を用い、一つのスタンドに組み込んだワークロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、各パスの圧下率を5〜40%とし、圧延方向をパス毎に交互に変えて冷間圧延を行うことを特徴とする金属板の冷間圧延方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図1、図2および図4を用い、鋼板の冷間圧延の場合を例に詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る冷間圧延機には、図1に示すような複数のスタンドが一列に配置されたタンデム式冷間圧延機または図2に示すような一つのスタンドがリール間に配置されたリバース式冷間圧延機に、従来のスクラッチロールに代わり、図4に示すようなロール表層をもつワークロール2(以下、ロール2ともいう)がそれぞれのスタンドに組み込まれている。ロール2は、例えば後述するような電着めっきにより表面粗さRaが0.05〜2.0 μm でかつHv;1000以上の略部分球形状の突起11を有するクロムめっき層12をロールバレル表層13に形成したものである。その他の構成は、従来のタンデム式冷間圧延機あるいはリバース式冷間圧延機と同様であるので説明を省略する。なお、図4は、ロールバレル表層13に形成したクロムめっき層12の模式図であって、(a)は表面を顕微鏡観察した図、(b)は断面を顕微鏡観察した図である。
【0012】
また本発明に係る冷間圧延方法においては、図1の冷間圧延機を用いた場合、ロール2と鋼板1間に潤滑剤を供給しつつ、各スタンドの圧下率を5〜40%とし、圧延方向を一方向としてロール2により冷間圧延を行う。また、図2の冷間圧延機を用いた場合、ロール2と鋼板1間に潤滑剤を供給しつつ、圧延方向をパス毎に交互に変えてロール2により冷間圧延を行うようにする。潤滑剤を供給するのは、図4に示すような略部分球形状の突起11を有するロール2を用いた場合においても、ロール2と鋼板1間に潤滑剤膜を形成し、加工発熱や摩擦発熱によりロール2と鋼板1とが直接接触して焼き付くのを防止するためである。また、各スタンドの圧下率を5〜40%とする理由は、5%未満とするとグリップ力が小さくなりすぎてスリップが発生しやすくなり、40%を越えると板形状が著しく悪化する上、硬度の高いクロムめっき層をもつロールといえども摩擦しやすくなるためである。
【0013】
ここで、本発明においては、従来の図3に示すようなロール表層をもつスクラッチロールに代わり、図4に示すような略部分球形状の突起11を有するロール2を用いるが、高圧延速度においても、ロール2による鋼板1のグリップ力は、別段落ちるわけではない。したがって、スリップしにくい。勿論、低圧延速度においては、もともとロール2と鋼板1との間に導入される潤滑剤量が少ないのでスリップしにくい。
【0014】
しかも、図4に示すような略部分球形状の突起11は、鋼板表面に接触する先端部が圧延時の力により弾性変形するので、同じロール表面粗さRaのスクラッチロールと比較した場合、転写により鋼板側に生ずる凹部が浅くなり、光沢度を向上することができるうえ、接触部の面圧が低下するため、この部分での焼付も起こりにくい。また、鋼板表面に転写された略部分球形状の凹部の分布はランダムで、外観上光沢の異方性がないため目立たないという点でも鋼板の表面品質が向上する。これに対して図3に示すロール表面をもつスクラッチロールにて圧延した場合、ロール周方向に延在する楔状の突起11がロール2と鋼板1間の潤滑剤の膜を破って鋼板側に深い転写跡を与えるので、光沢度が低下してしまうとともに、この潤滑剤膜が破られた部分を起点として目視できる程度に焼付が広がりやすい。本発明において、ロールバレル表層に形成したクロムめっき層の略部分球形状の突起に関し、その表面粗さRaを0.05〜 2.0μm とする理由は、その突起が鋼板表面に転写されてできる凹部深さが突起の高さdに対して60%以上にならないようにし、同じロール表面粗さRaのスクラッチロールで圧延した場合に比べ、光沢度を向上するとともに、ロール2による鋼板1のグリップ力は落とさないようにするためである。このように表面粗さRaが0.05〜 2.0μm である略部分球形状の突起11をもつロール2によれば、焼付が生じ難く、鋼板の表面品質を良好にでき、そのうえロール2による鋼板1のグリップ力も落とさないようにできる。この結果、本発明によれば、高圧延速度でしかもロール2と鋼板1との間に多くの潤滑剤が導入された場合であってもスリップしにくいため、チャタリングの発生も抑制できるのである。
【0015】
ここで、略部分球形状の略とは、完全な球状の一部分をした形状から少しはずれる場合も含む、という意味である。
また、微小な略部分球形状の突起11は、図4に示すごとく、その平面図上で見た場合に真の形状に外接する円形と近似した場合、その半径rは2〜20μm とし、鋼板に接触する単位面積当たりの個数を 500〜3500個/mm2 の範囲内で出来るだけ増加させることがロール2による鋼板1のグリップ力を高め、光沢度や目視上の鋼板の表面品質を向上するのに効果がある。この微小な略部分球形状の突起11は、後述する電着めっきによりロールバレル表層13にクロムめっき層12と一体的に形成するのが好ましく、Hv;1000以上と規定する。クロムめっき層12の厚さaは、60〜100 μm とするのが好ましく、クロムめっき層12の硬さもHv;1000以上とするのが好ましい。
【0016】
また、従来のスクラッチロールの場合、ロール表面の突起先端が鋼製でかつ鋭利であることから、圧延距離の増大に伴って突起先端の初期摩耗が著しく、圧延距離の増大に伴い、鋼板表面品質が変化しやすいが、本発明では、それぞれのスタンドに組み込んだロール表面の突起がHv;1000以上の硬質クロムめっき層として形成された略部分球形状であることから、長距離圧延に供しても突起先端がほとんど摩耗せず、安定して光沢度の高い鋼板を得ることができる。
【0017】
ここで、Raについて説明すると、JIS B0601-1994に定義するところの算術平均粗さとし、ロール軸方向に測定した値である。Raのカットオフ値は0.8 mm、評価長さは4mmとし、JIS B0651-1996に準拠した触針式表面粗さ測定器を用いて測定した。このような微小な略部分球形状の突起がロールバレル表面に形成されたロールは、例えば特表平9-503550号公報、文献「Metall Plant Technol int,No.6(1998),80-85 」に開示されている電気的電着めっき法により得ることができる。図5はクロムメッキ層を形成する装置の縦断面模式図であり、図6はその際の電流密度yと時間tとの関係を例示したグラフである。この装置は電着浴容器102 を備え、アノード103 および電着被覆されるロールバレル13がクロム電解質101 の浴溶液を含有する浴溶液中に浸漬される。ロールバレル13以外の部分には電気的に電着されないようにプロテクトスリーブ104 が装着されている。アノード103 およびカソードを構成するロールバレル13には電気エネルギー源105 が接続され、電気エネルギー源105 は、制御ユニット106 により例えば図6に示すように電流密度が時間の経過に伴い段階的に変化するように制御される。 ここで、110 、111 は電流密度の段階的上昇が数段階で行われる芽晶形成期間であり、芽晶形成期間110 、111 における電流密度上昇のインターバルΔtは0.1 〜30秒とされている。また、芽晶形成期間110 開始時の電流密度から電流密度最大値114 に至るまでは1段階当たり1〜6mA/cm2 の予め定めた上昇量で電流密度を高め、その後、芽晶を成長させる芽晶成長期間112 の間は電流密度最大値114 とし、電流密度最大値は30〜180 mA/cm2 とするのが好ましい。芽晶形成期間112 は1〜600 秒、好ましくは約30秒とされ、芽晶成長期間経過後、電流密度の低下段階113 において、1段階ごとに−1〜−8mA/cm2 の予め定めた減少量で電流密度を最終値にまで減少させるのが好ましい。このプロセスを周期的に繰り返すこともできる。また108 は、芽晶形成の前に、インパルス電流を15〜60mA/cm2 の電流密度で供給するベース層構成期間である。電流停止期間107 は、ロール2のロールバレル13が浴溶液温度に近くなるまでの温度調整期間で、60〜120 秒とするのが好ましく、ベース層構成期間108 と芽晶形成期間110 の間の電流停止期間109 は約60秒とするのが好ましい。
【0018】
本発明のロールのように、略部分球形状の突起11を平面図上で見た近似円の半径rが2 〜20μm 、単位面積当たりの突起11の個数が500 〜3500個/mm2 であり、表面粗さRaが0.05〜2.0 μm とするには、上記のΔt 、電流密度の上昇あるいは減少量を、それぞれ、5〜20秒、1段階あたり3〜4mA/cm2 とするのが好ましい。
【0019】
【実施例】
〔実施例1〕 図1に示す5スタンドのタンデム式冷間圧延機を用い、熱間圧延後、焼鈍、酸洗を施した素材厚4.0 mm、幅1000mm、降伏応力420MPaのSUS 430 鋼板の冷間圧延を行った。なお、発明例1〜5の場合、各スタンドでの圧下率を上流から順に40%、24%、19%、14%、5 %とし、各スタンドの入側からロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、板厚を1.2mm とした。その際、各スタンドには、ロール表面粗さRa;0.1 μm に研磨後、ロール表面粗さRaが0.05〜1.5 μm でかつHv;1000以上の略部分球形状の突起を有するクロムめっき層をロールバレル表層に形成したロールを組み込んだ。クロムめっき層厚みは粗さにより、60〜80μmとなった。また各スタンドに組み込んだロール自体は鋼製の5mass%Cr鍛鋼で、ロールの径は650mm 、ロールバレル長は1400mmである。各スタンドに供給した潤滑剤の粘度は40mm2 /s(40℃)で濃度は5mass%とした。また、定常圧延速度を50、100 、400 m/minとし、各圧延速度条件でコイル質量が20tのコイルを100 コイル圧延し、いずれかのスタンドでチャタリングが起こった場合、チャタリング発生コイルとカウントしてチャタリングの発生率を算出するとともに、いずれかのスタンドで焼付(幅が約0.5 mm以上でかつ長さが5mm以上のもの)が起こった場合、焼付発生コイルとカウントして焼付の発生率を算出した。なお、チャタリングおよび焼付の両方とも発生しなかったコイルについては、冷間圧延後、同一条件で焼鈍、酸洗を施し、その後、調質圧延を行い、光沢度(GS 20°)を測定した。一方、従来例では、ロール表面粗さRaが発明例と同じであるスクラッチロールを組み込み、その他の条件は発明例と同じとした。各圧延速度におけるチャタリングの発生率、焼付の発生率および光沢度の結果をそれぞれ表1、2、3に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
これらの結果から、同じロール表面粗さの発明例と従来例を比べると、発明例ではスリップを起こり難くしたので高圧延速度域においてチャタリングの発生を抑制でき、また焼付の発生も抑制できることがわかる。また、発明例では高圧延速度域においても従来例より光沢度の良好な鋼板を得られることがわかる。一方、従来例ではいずれのロール表面粗さの場合でも高圧延速度とするとチャタリングか焼付が発生しやすく、低圧延速度にせざるを得ず、そのうえ低圧延速度域でもあまり光沢のよい鋼板が得られていない。
〔実施例2〕 図2に示すリバース式冷間圧延機を用い、熱間圧延後、焼鈍、酸洗を施した素材厚4.0 mm、幅1000mm、降伏応力420MPaのSUS 430 鋼板の冷間圧延を行った。なお、発明例6、7の場合、ロール表面粗さを変えたロールをスタンドに組み込み、第1〜第3パスの圧下率を40%としてロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、所定の板厚とした。スタンドにはロール表面を鏡面、またはロール表面粗さRaを0.1 μm に研磨後、表面粗さRaが表4または表5に示す2水準でかつHv;1000以上の略部分球形状の突起を有するクロムめっき層をロールバレル表層に形成したロールを組み込んだ。クロムめっき層厚みは12μm とした。また各スタンドに組み込んだロール自体は鋼製の5mass%Cr鍛鋼で、ロールの径は100 mm、ロールバレル長は1400mmである。スタンドに供給した潤滑剤の粘度は20mm2 /s(40℃)で濃度は5mass %とした。2水準の表面粗さRaをもつロールそれぞれについて、第3パスの圧延速度を段階的に上昇させ、チャタリングが発生した場合、その圧延速度から急減速して冷間圧延を終了させ、スリップ限界圧延速度を調べ、また冷間圧延終了後の鋼板の表面観察を行い、目視できる焼付き(幅が約0.5 mm以上でかつ長さが5mm以上のもの)が発生した位置に対応する直前の圧延速度を焼付限界圧延速度とした。なお、第1パス、第2パスの圧延速度は従来例の場合におけるスリップ限界圧延速度と焼付限界圧延速度のどちらか一方の低い方の限界圧延速度と同じとした。また、チャタリングおよび焼付の両方とも発生していない部分については、冷間圧延後、同一条件で焼鈍、酸洗を施し、その後、調質圧延を行い、光沢度(GS 20°)を測定した。その結果を表4、表5にそれぞれ示す。一方、従来例では、表面粗さRaが発明例と同じとなるように円筒研磨したスクラッチロールを組み込み、その他の条件は発明例と同じとした。
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
表4、5に示した結果から、従来例6、7ではそれぞれスリップ限界圧延速度および焼付限界圧延速度が低速であったが、発明例6、7の場合には400 mpm 以上であり、かつ高圧延速度においても低速とあまり変わらない光沢度の良好な鋼板を製造できることがわかる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高圧延速度においてチャタリングの発生を抑制することができ、かつ焼付の発生も抑制することができる。また高圧延速度において光沢度の良好な鋼板を得ることができる。この結果、歩留まり良く、高能率で表面品質に優れた鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はタンデム式冷間圧延機の概略構成図である。
【図2】図2はリバース式冷間圧延機の概略構成図である。
【図3】図3はスクラッチロールの要部の断面模式図である。
【図4】図4は本発明に用いるロール表面の模式図であって、(a)は表面を顕微鏡観察した図、(b)は断面を顕微鏡観察した図である。
【図5】図5は本発明に用いるロールにクロムめっきを行う装置の概略構成図である。
【図6】図6は図5に示した装置における電流密度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鋼板
2 ワークロール(ロール)
3 バックアップロール
4 ノズル
5、6 リール
7、8、9 鋼板搬送方向
10 ワイピングロール
11 突起
r 略部分球形状の突起を平面図上で見た近似円の半径
d 略部分球形状の突起の高さ
12 クロムめっき層
a クロムめっき層厚み
13 ロールバレル表層
Claims (4)
- 複数のスタンドが一列に配置された金属板の冷間圧延機であって、各スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.05〜2.0 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が500〜3500個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間圧延機。
- 一つのスタンドがリール間に配置された金属板の冷間圧延機であって、前記スタンドには、ロールバレル表層にクロムめっき層を形成したワークロールが組み込まれており、前記クロムめっき層全体は略部分球形状の突起を有し、前記クロムめっき層全体の表面粗さRaが0.05〜2.0 μm でかつHvが1000以上であり、前記略部分球形状の突起の密度が500〜3500個/ mm 2 とされていることを特徴とする冷間圧延機。
- 請求項1記載の冷間圧延機を用い、各スタンドに組み込んだワークロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、各スタンドでの圧下率を5〜40%とし、圧延方向を一方向として冷間圧延を行うことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
- 請求項2記載の冷間圧延機を用い、一つのスタンドに組み込んだワークロールと金属板の間に潤滑剤を供給しつつ、各パスの圧下率を5〜40%とし、圧延方向をパス毎に交互に変えて冷間圧延を行うことを特徴とする金属板の冷間圧延方法。
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