以下、図面を参照しつつ、本発明の冷延鋼板の製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
<冷延鋼板>
本発明の冷延鋼板の製造方法では、一般的な冷延鋼板の製造方法により製造される冷延鋼板と同様に、種々の鋼種・規格・サイズを有する冷延鋼板を製造可能であり、特に、接着剤を用いて異材と接合される用途に適する冷延鋼板を製造する。
鋼種や規格については、例えば、日本産業規格JIS G3141「冷間圧延鋼板及び鋼帯」や、JIS G3311「みがき特殊帯鋼」が製造対象となる。また、引張強度340MPa以上の高張力鋼板や、ほうろう用鋼板をはじめとする特殊用途冷延鋼板も製造対象となる。
本発明の冷延鋼板の製造方法は、特に、JIS G3311「みがき特殊帯鋼」の一区分である炭素鋼を製造対象として適用することが好ましい。同規格では、炭素鋼の種類として、炭素量に応じてS30CM~S75CMが規定されており、これらは、異材との高い密着性が要求されるクラッチ部品に用いられることが多い。また、本発明は、JIS G3311の「みがき特殊帯鋼」の他の区分である炭素工具鋼のSK65M~SK85M等を製造対象として適用してもよい。これらは、2次加工時の加工性に優れ、熱処理によって強度(硬度)を調整できるとともに、面内の板厚精度に優れているため、プレートディスククラッチの回転部品であるフリクションプレートに多く用いられている。
ただし、鋼板にめっき等が施された表面処理鋼板は、本発明の冷延鋼板の製造方法による製造対象とはしない。表面処理鋼板においては、異材との接着強度が、鋼板表面に形成された皮膜の種類に大きく依存するためである。
本発明の冷延鋼板の製造方法により製造される冷延鋼板のサイズについては、板厚0.14~3.2mm、最大幅1850mmの冷延鋼板が、主な製造対象となる。
本発明の冷延鋼板の製造方法により製造される冷延鋼板に接着される異材には、この冷延鋼板とは異なる異種材料、この冷延鋼板と同種材料の両方を含むものとする。異種材料は、本発明の製造方法により製造される冷延鋼板と接着されたときに全体として一定の強度や剛性を有するものであればよく、鉄鋼材料に限定されず、銅、アルミニウム、チタン等の非鉄金属材料を含むものとする。また、異種材料は、紙、布、プラスチック等であってもよい。冷延鋼板と接着され全体として一定の強度や剛性を有するからである。
<冷延鋼板の製造工程の概要>
本発明の冷延鋼板の製造方法は、熱間圧延工程、酸洗工程および冷間圧延工程を含む。上記製造工程には、焼鈍工程や調質圧延工程が含まれてもよい。いずれも通常の冷延鋼板の製造工程で用いられるからである。
本発明の冷延鋼板の製造方法の一実施形態として、上述の「みがき特殊帯鋼」を製造対象とした場合の製造工程の手順の例を、図1に示す。
熱間圧延工程S1では、製鋼工程で鋳造されたスラブを、加熱炉にて加熱後、粗圧延機、仕上圧延機により所定の板厚まで減厚し、ランアウトテーブルで所定温度まで冷却して薄鋼板とし、これをコイル状に巻き取り、常温付近まで冷却する。熱間圧延工程S1以降の各工程では、薄鋼板がコイル状に巻かれた状態から処理が行われることから、以下では、当該薄鋼板を鋼帯とも呼ぶ。
続く酸洗工程S2では、熱間圧延後の鋼帯(熱延鋼板)から、熱間圧延工程S1で生成した表面の酸化物が除去される。さらに、冷間圧延工程S3において、鋼帯を所定の目標板厚まで複数パスの圧延により減厚する。あるいは、酸洗工程S2後に無酸化雰囲気で焼鈍処理(焼鈍工程A)を施して軟質化してから、冷間圧延工程S3を行ってもよい。焼鈍工程Aとしては、バッチ式焼鈍が用いられる場合が多い。
本実施形態では、複数パスの圧延を行う冷間圧延工程S3において、少なくとも一つの圧延パスを、粗度調整パスとして選択する。粗度調整パスでは、鋼板の表面粗さを、国際規格ISO25178に規定される算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%にする。粗度調整パスにより形成される鋼板の表面粗さの詳細については、後述する。
粗度調整パスは、冷間圧延工程S3の最終圧延パスを含むように選択することが好ましい。冷間圧延工程S3の最終圧延パスは、冷延鋼板の表面状態を最終的に調整して製品の状態とする圧延パスだからである。粗度調整パスに用いるワークロールの表面粗さについては、後述する。
冷間圧延工程S3を経た鋼板は、冷延鋼板製品としてユーザーに出荷される。出荷された冷延鋼板は、ユーザーにおいてプレス加工S4が行われ、所定の製品寸法・形状に成形されるのが一般的である。その後、異材との接着処理S5が施される。
ここで、冷間圧延工程S3において上記粗度調整パスを備えない従来の冷延鋼板の製造方法により製造された冷延鋼板製品は、ユーザーにおいてプレス加工S4されて所定の製品寸法・形状に加工された後、異材との接着処理S5が施される前に、図1に破線で示すように、酸洗またはエッチング処理、もしくはショットブラスト処理等の後工程処理SAを施して、異材との密着性を向上させる必要があった。
また、上記特許文献1~3の方法では、従来はユーザーにおいて行われていた、図1に破線で示す後処理工程SAを、冷間圧延工程S3の後に実施することで、異材との接着性を冷延鋼板製品に予め備えるようにして出荷するものである。これら特許文献1~3の方法によれば、ユーザーにおいて行われていた後処理工程SAを省略できるが、その代わりに、冷延鋼板の製造工程において、鋼板の表面粗さを制御するための工程を追加する必要があるため、異材との接着処理S5が施された最終製品を得るまでに必要となる製造コストや環境負荷を全体としてみれば、ユーザーにおいて後処理工程SAを行う従来の冷延鋼板の製造方法と大きく変わるものではない。
これに対し、本発明の冷延鋼板の製造方法では、このようなユーザーにおける酸洗またはエッチング処理、もしくはショットブラスト処理等の後工程処理SAを行わなくても、優れた異材との接着性が得られる。
なお、図1に示す製造工程の手順において、冷間圧延工程S3の後に、さらに再焼鈍工程(図示せず)を追加して冷延鋼板を軟質化してから、冷延鋼板製品として出荷してもよい。冷間圧延工程S3において粗度調整パスにより形成された鋼板表面の凹凸が、再焼鈍工程を経てもほとんど変化しない限りにおいては、冷延鋼板製品は異材との密着性を発揮できるからである。
あるいは、図1に示す冷延鋼板の製造工程の手順を、図2に示すように変更してもよい。図2に示す冷延鋼板の製造工程の手順において、熱間圧延工程S1および酸洗工程S2は、図1に示す手順と同様である。図2に示す手順では、酸洗工程S2後、冷間圧延工程S3’において、鋼帯を所定の目標板厚まで複数パスの圧延により減厚する。この冷間圧延工程S3’には、必ずしも上記粗度調整パスを備える必要はない。冷間圧延工程S3を経た鋼板は、さらに焼鈍工程Bにより、加工ひずみによって硬質化した鋼帯の軟質化を図った上で、冷延鋼板製品として出荷される。
ここで、焼鈍工程Bは、焼鈍炉の下流側に調質圧延機を備える連続焼鈍設備により行うことができ、この場合には調質圧延機による圧延パスを上記粗度調整パスとして選択する。または、粗度調整パスとして、焼鈍工程Bの調質圧延機による圧延パスに加えて、冷間圧延工程S3’の最終圧延パスを併せて選択してもよい。ただし、連続焼鈍設備とは別ラインに調質圧延機を備え、焼鈍後に別ラインである調質圧延機により調質圧延を行う場合には、これら連続焼鈍設備による処理と、調質圧延機による処理とを合わせて焼鈍工程Bとする。
<冷間圧延工程>
図1または図2に示す冷延鋼板の製造工程における冷間圧延工程S3、S3’は、単一スタンドのレバース式圧延機や、4~6スタンドのタンデム圧延機等により行う。
レバース式圧延機としては、例えば、圧延スタンドおよび前後のテンションリールから構成され、圧延パスごとに圧延方向を反転させて複数パスの圧延を行うことにより、鋼帯を減厚するものを用いることができる。
圧延スタンドのミル形式としては、4段式、6段式圧延機の他に、12段または20段のクラスター型圧延機等を用いることができる。クラスター型圧延機を用いる場合には、ワークロール径が40~200mm程度のものを使用できる。クラスター型圧延機では、ワークロールを支持する中間ロールを駆動ロールとする場合が多く、駆動軸から切り離されているワークロールを随時交換することが容易である。したがって、選択された粗度調整パスに合わせてワークロールを適宜交換しても冷間圧延工程の生産能率を阻害することがない。また、ワークロールが小径であるため、高炭素鋼やステンレス鋼等の硬質材料の鋼帯を圧延するのに適している。
冷間圧延工程S3、S3’において、レバース式圧延機を用いる場合には、冷間圧延の複数パスのうちの最終圧延パスを、粗度調整パスとして選択することが好ましい。初期パスから最終圧延パスの1パス前までは、表面粗さの小さい研削ロールを使用することにより、最終圧延パスの1パス前まではワークロールと鋼帯との間の摩擦係数を小さくでき、圧延荷重を抑制できる。
一方、粗度調整パスとなる最終圧延パスでは、ワークロールを、後述のような表面粗さを有するものに交換して圧延を行う。これにより、冷間圧延工程S3、S3’における生産能率を維持しながら、異材との密着性を確保するのに必要となる表面粗さを鋼板の表面に付与することができる。
レバース式圧延機では、冷間圧延工程S3、S3’の全圧延パスを通じて、潤滑剤としてニート油またはエマルション油を用いることが好ましい。これにより、初期パスから最終圧延パスの1パス前までは、圧延荷重を低減する効果が得られるとともに、粗度調整パスとなる最終圧延パスでは、ワークロールの表面に形成した凹凸が摩耗して変化するのを抑制できるからである。
また、タンデム圧延機としては、例えば、入側ペイオフリール、溶接機、ルーパー、圧延スタンドおよびコイラーから構成される5スタンド連続式圧延機を用いると、圧延機が直列に配置され、高い生産性を有するので好ましい。タンデム圧延機を構成する圧延スタンドのミル形式としては、例えば、4段式または6段式のものを使用できる。タンデム圧延機に用いるワークロールの径としては、直径300~600mm程度のものを使用できる。
冷間圧延工程S3、S3’において、タンデム圧延機を用いる場合は、タンデム圧延機の最終スタンドにおける圧延パスを、粗度調整パスとして選択することが好ましい。調質圧延工程を経ない製造方法においては、最終スタンドで鋼板に付与される表面粗さが、最終的な冷延鋼板製品の表面粗さになるからである。ここで、粗度調整パスとなる最終スタンドのワークロールとして、後述のような表面粗さを有するものを組み込んで圧延を行う。なお、タンデム圧延機では、最終スタンドを含めた圧延スタンドに、エマルション油を供給しながら圧延を行うことが好ましい。タンデム圧延機において、ニート油は用いずにエマルション油を用いるのは、圧延速度が高いため、焼き付きを防止するために高い冷却能が必要だからである。タンデム圧延機においてエマルション油を用いるのが好ましい他の理由は、レバース式圧延機と同様である。
<焼鈍工程B>
図2に示す冷延鋼板の製造工程のように、焼鈍工程Bにおける調質圧延機による圧延パスを粗度調整パスとして選択する場合について説明する。冷間圧延工程S3’を経た鋼帯は、焼鈍工程Bを行う連続焼鈍設備のペイオフリールに装入される。連続焼鈍設備は、ペイオフリール側から、入側ルーパー、加熱帯、均熱帯、冷却帯、出側ルーパーを備え、必要に応じて、再加熱帯、過時効帯、最終冷却帯をさらに備えていてもよい。出側ルーパーを経た鋼帯は、その下流側に配置された調質圧延機によって軽圧下の圧延が行われた後、テンションリールによって巻き取られる。
調質圧延機としては、4段式または6段式の圧延機等を使用できる。調質圧延機による圧延パスを粗度調整パスとして選択する場合には、調質圧延機のワークロールとして、後述のように所定の粗さに調整したものを組み込んで、調質圧延を行う。
調質圧延では、鋼板の機械的性質を調整する機能が求められることから、調質圧延で鋼板に付与する圧下率は概ね1~3%程度である。このように、図2に示す冷延鋼板の製造工程のように、焼鈍工程Bを行う連続焼鈍設備の調質圧延機による圧延パスを粗度調整パスとして選択する場合は、異材との密着性を確保するのに必要となる表面粗さを鋼板の表面に付与するのに圧下率が不足する場合もあり得る。このような場合には、粗度調整パスとして、焼鈍工程Bの調質圧延機による圧延パスに加えて、冷間圧延工程S3’の最終圧延パスを併せて選択して、冷間圧延工程S3’の最終圧延パスおよび調質圧延機による圧延パスの2回にわたって、所定の粗さに調整したワークロールを用いた圧延を行うことが好ましい。これにより、異材との密着性を確保するのに必要となる表面粗さを鋼板の表面に付与することが容易となる。
<鋼板の表面粗さ>
本実施形態では、上記粗度調整パスにおいて、鋼板の表面粗さを、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%に調整する。
ここで、算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrは、ISO25178「面粗さ」に規定される、3次元表面性状を表す面粗さのパラメータである。算術平均高さSaは、鋼板表面の平均面に対する各点の高さの絶対値の差の平均を示すものであり、JIS B0601「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」に規定される線粗さのパラメータである算術平均粗さRaを3次元に拡張したものである。界面の展開面積比Sdrは、完全な平坦な面に対しての表面積の増加割合を示すパラメータであり、値が大きいほど鋼板の表面積が大きいことを示すものである。
算術平均高さSaは、表面凹凸すなわち表面粗さを有する面における、平均面に対する各点の高さを表す指標である。鋼板の表面粗さの算術平均高さSaが大きいほど、異材との接着後に、接着面においてアンカーが深く形成され、せん断に対する剥離抵抗が大きくなる。鋼板表面の表面粗さが、算術平均高さSaで0.4μm未満の場合には、異材との接着強度が小さくなり、酸洗やエッチング処理により表面粗さを付与した鋼板よりも、異材との密着性が低くなってしまう。また、鋼板表面の表面粗さが、算術平均高さSaで2.0μmを超える場合には、異材との接着時に塗布する接着剤の厚さを厚くする必要が生じてしまう。また、フリクションプレートに用いる場合には、摩擦材を接着した摺動面の表面粗さも大きくなるため、摺動面での摩擦係数が必要以上に増加してしまう場合がある。したがって、粗度調整パスにおいて鋼板表面に付与する表面粗さは、算術平均高さSaで0.4~2.0μmとする。なお、本実施形態において、2次元粗さ(線粗さ)のパラメータである算術平均粗さRaを使用しないのは、回転体等に使用される部材では、せん断力が負荷される方向に関係なく、高い接着強度が要求されるため、3次元表面性状を表す面粗さのパラメータである算術平均高さSaのほうが適しているからである。ただし、接着面におけるアンカーを深く形成するという観点からは、算術平均高さSaに代えて、2次元粗さ(線粗さ)のパラメータである算術平均粗さRaを用い、粗度調整パスにおいて鋼板表面に付与する表面粗さを、算術平均粗さRaで0.4~2.0μmとしてもよい。
一方、鋼板と異材とは面で接合されることから、鋼板の表面積が大きいほど異材との密着性に優れる。ここで、算術平均高さSaまたは算術平均粗さRaは、表面凹凸に関する平均高さに関する指標であるから、算術平均高さSaまたは算術平均粗さRaが同一であっても、凹凸のピッチが小さくなるほど、表面積が拡大して、異材との密着性が向上する。このような観点から、界面の展開面積比Sdrが大きいほど、密着性が向上することになる。本実施形態では、粗度調整パスにおいて鋼板に付与される表面粗さとして、界面の展開面積比Sdrを2.0~6.0%とする。界面の展開面積比Sdrが2.0%未満の場合には、異材との接着強度が低下してしまう。一方、界面の展開面積比Sdrは大きいほど好ましいが、粗度調整パスにおける圧延によって6.0%を超える表面粗さを付与するのは、現実的には困難である。
<鋼板の密着性>
上述のとおり、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%の表面粗さを有する鋼板は、異材との密着性に優れている。
本発明者らは、上記の表面粗さを有する鋼板が、異材との密着性に優れていることについて、以下の評価試験により検証した。
本評価試験では、JIS G4051「機械構造用炭素鋼鋼材」に規定される鋼種S55C(C含有量が0.52~0.58%)を対象として、熱間圧延工程において板厚2mmとし、酸洗工程により表面の酸化物を除去し、さらに窒素中に3%の水素を含む混合ガス中で850℃の焼鈍工程(図1における焼鈍工程Aに相当)を施した。
続いて、レバース式圧延機を用いて、直径130mmのワークロールを用いた複数パスの冷間圧延工程を行い、板厚を1.2mmまで減厚した。冷間圧延工程の最終圧延パスでは下記ワークロールを用いて、圧下率を0.08%~6.50%の範囲で変化させて圧延を行い、種々の表面粗さを有する冷延鋼板を得た。
ワークロールとしては、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが1.85μm、界面の展開面積比Sdrが2.7%の表面粗さを形成したもの(ワークロールa)、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが3.08μm、界面の展開面積比Sdrが4.8%の表面粗さを形成したもの(ワークロールb)、後述する方法でCrめっきを施すことにより、ワークロール表面にCrを粒状に微細析出させ、このCrめっき層によって算術平均高さSaが1.22μm、界面の展開面積比Sdrが5.1%の表面粗さを形成したもの(ワークロールc)の3種類を用いた。
ワークロールの表面粗さの測定は、後述のレプリカ法により行った。具体的には、触針式の粗さ計を用いて、ロール円周方向に2mmの領域を、ロール軸方向に測定ピッチ10μmで5mmにわたって測定を行い、ワークロールa~cの表面の算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを算出した。
上述の製作条件に従って得られた、種々の表面粗さを有する各冷延鋼板について、JIS K6850「接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じ、異材との密着性を評価する引張せん断接着強さ試験を行った。
具体的には、図3に示す2枚の鋼板1、2には、上記の製作条件に従って得られた、種々の表面粗さを有する各冷延鋼板を用いた。そして、これら2枚の鋼板1、2を、上記の製作条件により表面粗さが付与された面を接着面として、接着剤3で接着して、試験片を作成した。接着剤3には、主成分がフェノール系樹脂であるセメダイン株式会社製のCS-2711を用い、接着剤塗布後に200℃で30分保持をする焼付硬化処理を実施した。
このような試験片に、接着部と主軸とに平行な引張力を与え、接着部にせん断応力を発生させた。試験温度は室温25℃とし、引張速度は13mm/minとした。そして、試験片の接着部に破壊が生じたときの引張力から、接着部のせん断強さである接着強さを測定した。
接着剤3のせん断強度は約14MPaであるので、本試験において、14MPa以上のせん断応力で接着部が破壊した場合は、接着接手の接着剤3が凝集破壊で破壊した形態となり、密着性が十分に優れていると評価できる。逆に、14MPa未満のせん断応力で接着部が破壊した場合には、界面破壊が生じており、密着性が必ずしも十分ではないと評価できる。
図4に、本評価試験の結果を示す。図4は、横軸を鋼板表面の算術平均高さSa、縦軸を鋼板表面の界面の展開面積比Sdrとして、各試験片の試験結果を、接着強さが14MPa以上のものと、14MPa未満のものとに分けてプロットしたものである。鋼板の表面粗さを、算術平均高さSaで0.4μm以上、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0%以上となるように調整したものは全て、14MPa以上の接着強さが得られた。このように、粗度調整パスにより、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%の表面粗さを鋼板に付与することによって、別途酸洗またはエッチング処理、もしくはショットブラスト処理等の処理を行わなくても、優れた異材との密着性を確保できることが確認された。
なお、本評価試験により得られた接着強さは、同種材料を用いて同じ表面粗さを付与した面を接着した場合の結果であるが、接着剤を用いて異材と接着させた場合であっても、接着接手の接着剤3が凝集破壊で破壊した形態となることから、異材との接着においても優れた接着強さを示すことになる。
<ワークロールの表面粗さ>
上記粗度調整パスにおいて、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%の表面粗さを鋼板に効果的に形成するためには、粗度調整パスに用いるワークロールの表面粗さを、算術平均高さSaで0.5~6.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで5.0~15.0%とすることが好ましい。
粗度調整パスでは、ワークロールの表面に形成された凹凸を、圧延によって鋼板側に転写する。粗度調整パスにおいて、上記算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを鋼板表面に付与すべく、ワークロールの表面についても、対応する指標である算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを特定するものである。
冷間圧延工程S3、S3’または焼鈍工程Bにおける調質圧延においては、ワークロールの表面に付与された微視的な凹凸の一部のみが鋼板表面に転写される。よって、鋼板表面の算術平均高さSaよりもワークロールの算術平均高さSaを大きく設定する必要がある。界面の展開面積比Sdrについても同様であり、ワークロール表面の転写により形成された鋼板の凹凸の表面積は、ワークロールのものよりも小さくなるため、ワークロール表面の界面の展開面積比も同様である。
このような観点から、鋼板表面を算術平均高さをSa0.4~2.0μm、界面の展開面積比Sdrを2.0~6.0%に調整するには、ワークロールの表面として、算術平均高さSa0.5~6.0μm、界面の展開面積比Sdr5.0~15.0%のものを用いることが好ましい。ワークロールの表面粗さが、算術平均高さSaで0.5μm未満の場合には、ワークロールにより鋼板表面に付与される表面粗さが算術平均高さSaで0.4μm未満となることがある。また、ワークロールの表面粗さが、算術平均高さSaで6.0μmを超える場合には、ワークロールにより鋼板表面に付与される表面粗さが算術平均高さSaで2.0μmを超えることがある。一方、ワークロールの表面粗さが、界面の展開面積比Sdrで5.0%未満の場合には、ワークロールにより鋼板表面に付与される表面粗さが界面の展開面積比Sdrで2.0%未満となる場合がある。また、ワークロールの表面粗さが、界面の展開面積比Sdrで15.0%を超える場合には、ワークロールの表面をこのような表面粗さに加工することが困難になるためである。
ワークロールの表面は、円周方向に曲面形状であるため、ワークロールの算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを直接的に測定することが難しい。そこで、本実施形態では、ワークロールの表面粗さの算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを、レプリカ法により測定する。
レプリカ法とは、ロール表面の凹凸を樹脂等に転写させたレプリカを作成し、そのレプリカの表面粗さを測定する方法である。具体的には、ワークロールの表面粗さを測定したい箇所に粘土で型枠を形成した後、型枠内に常温硬化樹脂を流し込み、一定時間保持した後にワークロール表面から樹脂を剥離することにより、レプリカを作成する。レプリカ材料としては、例えば、Kulzer社製のテクノビット3040を使用できる。テクノビット3040は、メチルメタクリレートを主成分とする常温急速硬化樹脂であって、5~10分程度保持することで硬化する。
そして、硬化したレプリカに対し、触針式の粗さ計を用いて、ロール円周方向に例えば2mmの領域を、ロール軸方向に例えば測定ピッチ10μmで5mmにわたって、各地点の高さを測定する。レプリカの表面の凹凸は、ワークロールとは反転するため、測定データの上下反転処理を実施した後に、算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを算出する。
<ワークロールの加工方法>
本実施形態では、上記粗度調整パスに用いるワークロールとして、Crめっきを施すことにより、粒状Crが析出したCrめっき層により構成される表面を有するワークロール(以下では、Crめっきダルロールという)を用いる。
Crめっきダルロールは、ロール表面に対してCrめっきを施す際に、めっき条件である電流密度とめっき浴温度を制御することによって、ロール表面にCrを粒状に微細析出させ、Crめっき層によって表面粗さを形成したダルロールをいう。具体的には、クロムめっき時の、めっき液としてクロム酸(CrO3)と硫酸(H2SO4)とからなるめっき液を使用し、めっき浴温を30~50℃の範囲とする。そして、めっき浴温のセルシウス度による数値の1.2倍以上の電流密度を付与する条件(浴温30℃であれば36A/dm2、浴温50℃であれば60A/dm2以上)でめっきを行うことで、ロール表面に微細な粒状Crを多数析出させることができる。
ワークロールの表面加工方法として、Crめっきダルロールを用いるのは、表面に粒状のCrが微細に析出するため、他の手段と比較して、同一レベルの算術平均高さSaに対して、ワークロール表面の界面の展開面積比Sdrを大きくすることができるからである。具体的には、一般的にロール表面のダル加工法として使用されるショットブラスト加工と比較して、展開面積比Sdrを2倍以上にすることも可能である。
また、粗度調整パスにおいて、表面の凹凸形態が鋼板表面に転写される度合い(転写率)が大きく、鋼板表面の算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを効率的に付与することができるからである。
<粗度調整パスにおける圧延条件>
上記粗度調整パスにおける圧延条件として、圧下率を1パスあたり1~10%とすることが好ましい。
図5に、粗度調整パスにおける1パスあたりの圧下率と、粗度調整パスにより鋼板に形成される表面粗さ(算術平均高さSa)との関係を示す。また、図6に、粗度調整パスにおける1パスあたりの圧下率と、粗度調整パスにより鋼板に形成される表面粗さ(界面の展開面積比Sdr)との関係を示す。また、図7に、ワークロール表面を3次元粗さを測定して得られた高さ分布の例を示す。
図5および図6には、粗度調整パスで用いるワークロールとして、上述の方法でCrめっきを施すことにより、ワークロール表面にCrを粒状に微細析出させ、このCrめっき層によって算術平均高さSaが1.22μm、界面の展開面積比Sdrが5.1%の表面粗さを形成したもの、同様にCrめっき層によって算術平均高さSaが2.02μm、界面の展開面積比Sdrが10.1%の表面粗さを形成したもの、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが1.85μm、界面の展開面積比Sdrが2.7%の表面粗さを形成したもの、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが3.08μm、界面の展開面積比Sdrが4.8%の表面粗さを形成したもの、これら4種類のワークロールを用いた結果を示している。
図5に示されるように、圧下率が同じであれば、Crめっきダルロールを用いると、ワークロール表面の算術平均高さSaが低くても、鋼板表面に付与される算術平均高さSaが比較的高い。
また、図6に示されるように、圧下率が同じであれば、ショットブラスト法によるワークロールよりも、Crめっきダルロールを用いる方が、鋼板表面に付与される界面の展開面積比Sdrが大幅に向上している。
これは、図7に示すワークロール表面の3次元粗さ測定の高さ分布からも分かるように、表面の凹凸として、Crめっきダルロールの方が短ピッチの微細な凹凸が付与されていることに関係していると考えられる。例えば、ショットブラスト法により加工したワークロールでは、表面の凹部に鋼板の表面が充満するように転写されるのが主体であるのに対して、Crめっきダルロールでは、表面の粒状クロムにおける凸部が鋼板表面に押し込まれる変形が主体となるために、このような鋼板表面の凹凸形態が異なると考えられる。
また、図5および図6からは、Crめっきダルロールを用いることにより、低い圧下率でも鋼板表面として、算術平均高さがSa0.4μm以上、界面の展開面積比Sdrが2.0%以上となる鋼板を容易に得ることができている。そのため、上記粗度調整パスにおいて、過剰な圧延荷重の増加や、それによる鋼板の形状不良等が生じることがない点で有利である。
本実施形態における、粗度調整パスにおける圧延条件としては、圧下率を1パスあたり1~10%とすることが好ましい。粗度調整パスでは、図5および図6に示されるように、圧下率を1%以上とすることにより、比較的容易に鋼板表面の算術平均粗さSaを0.4μm以上、展開面積比Sdrを2.0%以上に調整することができる。
一方、上述のように、ワークロールには、表面粗さ(算術平均高さSa)が比較的大きなものを用いるため、粗度調整パスにおける圧下率が1パスあたり10%を超えると、圧延荷重が増加してしまい、鋼板の平坦度が悪化する場合がある。また、圧延荷重とともに、ワークロールと鋼板の界面におけるすべり率が増加して、ワークロールに付与した凹凸が摩耗しやすい場合がある。よって、粗度調整パスでは、1パスあたりの圧下率を1~10%とすることが好ましい。
本発明の冷延鋼板の製造方法の具体的な実施例に基づいて、本発明の効果を詳細に検証したので、この結果について以下に説明する。
<密着性の評価試験>
粗度調整パスにおいて鋼板に付与される表面粗さを、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%とすることにより、優れた異材との密着性が得られることを検証するために、以下のとおり評価試験を行った。
本評価試験では、JIS G4051「機械構造用炭素鋼鋼材」に規定される鋼種S55C(C含有量が0.52~0.58%)を対象として、熱間圧延工程において板厚2mmとし、酸洗工程により表面の酸化物を除去し、さらに窒素中に3%の水素を含む混合ガス中で850℃の焼鈍工程(図1における焼鈍工程Aに相当)を施した。
続いて、レバース式圧延機を用いて、直径130mmのワークロールを用いた複数パスの冷間圧延工程を行い、板厚を1.2mmまで減厚した。冷間圧延工程の最終圧延パスでは、圧下率を0.08%~6.50%の範囲で変化させて圧延を行い、種々の表面粗さを有する冷延鋼板を得た。
ワークロールとしては、本発明例として、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが1.85μm、界面の展開面積比Sdrが2.7%の表面粗さを形成したもの(ワークロールa)、ショットブラスト加工により算術平均高さSaが3.08μm、界面の展開面積比Sdrが4.8%の表面粗さを形成したもの(ワークロールb)、上述のようにCrめっきを施すことにより、ワークロール表面にCrを粒状に微細析出させ、このCrめっき層によって算術平均高さSaが1.22μm、界面の展開面積比Sdrが5.1%の表面粗さを形成したもの(ワークロールc)、同様にCrめっきを施すことにより、ワークロール表面にCrを粒状に微細析出させ、このCrめっき層によって算術平均高さSaが2.02μm、界面の展開面積比Sdrが10.1%の表面粗さを形成したもの(ワークロールd)を用いた。さらに、放電ダル加工により算術平均高さSaが2.05μm、界面の展開面積比Sdrが3.7%の表面粗さを形成したもの(ワークロールe)、放電ダル加工により算術平均高さSaが4.06μm、界面の展開面積比Sdrが8.2%の表面粗さを形成したもの(ワークロールf)、放電ダル加工により算術平均高さSaが6.84μm、界面の展開面積比Sdrが9.5%の表面粗さを形成したもの(ワークロールg)を用いた。すなわち、7種類のワークロールを用いた。
ワークロールの表面粗さの測定は、上述のレプリカ法により行った。具体的には、触針式の粗さ計を用いて、ロール円周方向に2mmの領域を、ロール軸方向に測定ピッチ10μmで5mmにわたって連続測定を行い、ワークロールa~gの表面の算術平均高さSaおよび界面の展開面積比Sdrを算出した。
上述の製作条件に従って得られた、種々の表面粗さを有する各冷延鋼板について、JIS K6850「接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じ、異材との密着性を評価する引張せん断接着強さ試験を行った。
具体的には、図3に示す2枚の鋼板1、2には、上記の製作条件に従って得られた、種々の表面粗さを有する各冷延鋼板を用いた。そして、これら2枚の鋼板1、2を、上記の製作条件により表面粗さが付与された面を接着面として、接着剤3で接着して、試験片を作成した。接着剤3には、主成分がフェノール系樹脂であるセメダイン株式会社製のCS-2711を用い、接着剤塗布後に200℃で30分保持をする焼付硬化処理を実施した。
このような試験片に、接着部と主軸とに平行な引張力を与え、接着部にせん断応力を発生させた。試験温度は室温25℃とし、引張速度は13mm/minとした。そして、試験片の接着部に破壊が生じたときの引張力から、接着部のせん断強さである接着強さを測定した。
接着剤3のせん断強度は約14MPaであるので、本試験において、14MPa以上のせん断応力で接着部が破壊した場合は、接着接手の接着剤3が凝集破壊で破壊した形態となり、密着性が十分に優れていると評価できる。逆に、14MPa未満のせん断応力で接着部が破壊した場合には、界面破壊が生じており、密着性が必ずしも十分ではないと評価できる。
表1に、各試験片の製作条件、鋼板1の表面粗さの測定結果、および引張せん断接着強さ試験で測定された接着強さを示す。
試験No.1~12は、ショットブラスト加工により表面粗さを形成したワークロールaまたはワークロールbを用いて、冷間圧延工程の最終圧延パスの圧延を行ったものである。試験No.1~12のいずれにおいても、ワークロールa、bにより鋼板に付与される表面粗さが、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%となっておらず、接着強さも14MPa未満であり、異材との密着性が十分に得られていない。
試験No.13~24は、上述のようにCrめっきを施すことにより表面粗さを形成したワークロールc、dを用いて、冷間圧延工程の最終圧延パスの圧延を行ったものである。試験No.13~24では、算術平均高さSaが同一レベルの試験No.1~6に比べて、ワークロール表面の界面の展開面積比Sdrおよび鋼板表面に転写される界面の展開面積比Sdrを大きくすることができている。このうち、試験No.17~24の鋼板は、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%を満たしており、接着強さも14MPa以上であり、異材との密着性が十分に得られている。このように、Crめっきを施すことにより表面粗さを形成することで、界面の展開面積比Sdrを大きして、鋼板の異材との密着性を高めるうえで効果が高いことがわかる。
試験No.25~29は、従来技術を模擬するため、ショットブラストで加工したダルロールを用いた圧延を実施後、塩酸濃度5%、液温80℃の塩酸水溶液に浸漬して、様々な浸漬時間で、鋼板表面に算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrの表面粗さを付与したものを、上記鋼板1として用いて、同様の試験片を作成して引張せん断接着強さ試験を行ったものである。試験No.25~29では、塩酸処理を施す事によってSdrが増加しており、接着強さは試験No.13~24と同程度であった。
すなわち、試験No.17~24のように、前記粗度調整パスにおいて、鋼板の表面粗さを、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%とすることで、酸洗処理等の付帯的な処理を行って得られる鋼板と同様に、優れた異材との密着性が確保されることが確認できた。
試験No.30、31は、一般的にワークロールのダル加工として用いられる放電ダル加工によって、算術平均高さSaが2.05μm、界面の展開面積比Sdrが3.7%の表面粗さを付与したワークロールを用いて圧延したもので、試験No.32、33は、同様に放電ダル加工によって、算術平均高さSaが4.06μm、界面の展開面積比Sdrが8.2%の表面粗さを付与したワークロールを用いて圧延したものある。また、試験No.34、35も、放電ダル加工によって表面粗さを付与したものであり、算術平均高さSaが6.84μm、界面の展開面積比Sdrが9.5%の表面粗さを付与したワークロールを用いて圧延したものである。このうち、試験No.35では、前記粗度調整パスにおいて、鋼板の表面粗さを、算術平均高さSaで0.4~2.0μm、かつ界面の展開面積比Sdrで2.0~6.0%とすることができており、酸洗処理等の付帯的な処理を行って得られる鋼板と同様に、優れた異材との密着性が確保されることが確認できた。
放電ダル加工により表面粗さを形成したワークロールを用いた試験No.30~33では、ワークロール表面の界面の展開面積比Sdrを、ショットブラスト加工により表面粗さを形成したワークロールaまたはワークロールbを用いた試験No.1~12よりも大きくすることができているが、Crめっきを施すことにより表面粗さを形成したワークロールdを用いた試験No.23、24よりも転写率が小さいため、鋼板に転写される界面の展開面積比Sdrが2.0%以上を確保できておらず、十分な接着強さを確保できなかった。
すなわち、試験No.23、24のように、Crめっきを施すことにより表面粗さを形成したワークロールdを用いることで、ワークロールから鋼板への界面の展開面積比の転写率が高められ、優れた異材との密着性が確保されることが確認できた。