JP5928167B2 - 冷延鋼帯の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、冷延鋼帯の製造方法に関し、特に冷間圧延後の鋼帯表面の平滑度および均一度合いを良好にする冷延鋼帯の製造方法に関する。
冷延鋼帯は、家電製品、装飾品など、多くの用途に使用されている。これらの商品価値を高めるために、製品の表面性状は重要な項目のひとつであり、平滑かつ均一な面であることが望ましい。
冷延鋼帯は、通常、連続鋳造により製造されたスラブを熱間圧延して熱延鋼帯を製造し、焼鈍(場合により省略)、酸洗した後、冷間圧延し、これを焼鈍、場合によって酸洗を行い、調質圧延をすることにより製造される。そのため、鋼帯表面粗さを制御して優れた表面特性とするためには、調質圧延後の鋼帯表面が凹凸疵を残さず均一であることが重要となる。
しかしながら、従来のブライトロールを用いた冷間圧延によって製造される冷延鋼帯表面には、冷間圧延中に潤滑油の引き込みにより生じるオイルピットが残留し、また、ワークロール研磨目の転写により筋状の表面欠陥が残留するため、鋼帯表面の微小粗さを制御することが困難であった。一方、これらの鋼帯表面の微小な凹凸疵を何らかの方法で除去するために、表面研磨をはじめとする工程の追加や、圧延速度、潤滑、ロール径、ミル仕様などの圧延条件の制御が有効であるが、生産性の低下およびコスト増加を招く。
これに対し、従来から、圧延素材の表面欠陥を低減させ、表面性状を向上させる多くの冷間圧延技術が開示されている。例えば、特許文献1には最終スタンドに0.7〜1.6μmRaのダルロールを用いて冷間圧延した後、3スタンド以上の調質圧延をして高光沢冷延鋼板を製造する技術が示され、また、特許文献2には、0.8〜3μmRaのダルロールで圧延あるいは調質圧延することにより、塗装後鮮映性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が示され、さらに、特許文献3には0.5〜1.5μmRaかつPPI 300以上の粗さのダルロールを用いた光沢に優れる硬質缶用鋼板の製造方法が公開されている。
特開2003−230902号公報 特開平4−285149号公報 特開2002−282903号公報
小豆島ら;鉄と鋼,76(1990)579−583 池ら;塑性と加工,34(1993)1075−1081
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼帯表面のオイルピットやスクラッチ痕を低減できる一方で、その実施例にも記載されるとおり、ダルロールの粗さは冷間圧延、調質圧延ともに0.7μmRa〜1.6μmRaであって、ロール粗さのダル目が鋼帯表面に転写して冷間圧延後の鋼帯表面の凹凸が大きくなり、最終製品の表面平滑性が損なわれて光沢が不十分である。また、調質圧延工程でその鋼帯表面に転写した凹凸を平滑化させる必要があって、負荷が大きく、生産性を低下させる可能性があった。特許文献2に記載の方法においても、その実施例に記載されるとおりダルロール粗さは0.8μmRa以上であり、ダル目の転写による冷間圧延後の鋼帯表面の凹凸が大きく、そのため圧延後にめっき処理を施して平滑にし、その上に塗装した後の鋼帯が表面美麗性に優れるようになるのであって、冷延鋼帯そのものとしての表面平滑性としては不十分であった。また、特許文献3に記載される0.5〜1.5μmRaの所定の形状のダルロールを用いると、圧延時の摩擦係数の増大を招くため、圧延速度あるいは圧下率を制限する必要が生じ、生産性を低下させる問題があった。
従って、従来の冷間圧延技術では、生産性を犠牲にしても充分に鋼帯表面の平滑性及び均一度合いを得ることはできないという課題があった。
本発明者らは、前記課題を解決し、表面性状に優れた冷延鋼帯を得るためには、冷間圧延工程において鋼帯表面の平滑性に大きく影響するオイルピットに着眼した。
冷間圧延工程においてオイルピットを極力抑制する方法について鋭意検討を重ね、以下の要旨構成になる本発明を成した。
(1)熱延鋼帯を酸洗後、冷間圧延を施す際に、潤滑油を供給しながら、ワークロールとして、全パスにダルロールを用い、又は、全パスのうち一部のパスにダルロール、残りのパスにブライトロールを用い、所定の厚さまで圧延する冷延鋼板の製造方法において、前記ダルロールとして、液体ホーニング加工にて、表面粗さが0.01μmRa以上0.5μmRa未満の範囲で、周方向、軸方向の異方性を持たないランダムな表面粗さを持たせ、かつロール表面粗さの中心線を基準とする凹凸の凸間隔が5μm〜70μmの範囲としたダルロールを用いることを特徴とする冷延鋼帯の製造方法。
本発明によれば、冷間圧延後の鋼帯表面を平滑にできて、しかも均一にできるばかりか、従来の冷間圧延の圧下率や圧延速度等の圧延条件を大幅に規制する必要もなく、生産性低下やコスト増加がなく有利に製造可能である。
標準的な冷延鋼帯の製造工程を示すフロー図である。 冷延鋼帯の表面外観を示す光学顕微鏡写真であり、(a)は表面性状に劣るもの、(b)は表面性状に優れるものである。 本発明方法のロールで冷間圧延した際の鋼帯表面平滑化および均一化のメカニズムを模式的に示した説明図である。 ダルロール表面の算術平均粗さRaと、同ロールで冷間圧延した後で得られた鋼帯表面の表面算術平均粗さRaとの関係を示す線図である。 ダルロール表面粗さの凸部間隔と、冷間圧延後の鋼帯表面算術平均粗さRaの関係を示す線図である。 冷延圧下率に対する冷間圧延後の鋼帯表面算術平均粗さRaの推移を調査した結果を示す線図である。
熱延鋼帯から冷延鋼帯を製造する際の主な製造フローを図1に示す。熱間圧延を経て製造された熱延鋼帯は、必要に応じて焼鈍工程で熱処理を施された後、酸洗工程で鋼帯表面の酸化スケールが除去され、冷間圧延工程で所定の製品板厚に圧延される。続いて、必要に応じて洗浄工程で鋼帯表面の圧延油が洗浄され、焼鈍工程で所定の熱処理を施された後、必要に応じて酸洗を行い、さらに、調質圧延工程で材質調整および表面粗さの調整が行われて冷延鋼帯として製品となる。
尚、本発明において対象とする冷延鋼帯はステンレス鋼帯、ぶりき原板なども含むものとし、表面美麗性すなわち、表面平滑性や表面光沢、そして各製品、鋼帯の幅方向・長さ方向にわたる均一性を求められる鋼帯製品を対象とする。
また、表面性状に優れることはすなわち、鋼帯表面が全幅・全長にわたり均一かつ平滑で、視覚的に特異な欠陥を持たず異方性を持たない状態を示すことである。
前述の冷間圧延工程では、冷間圧延機により、熱延鋼帯を所定の製品板厚まで冷間圧延する。その際、各圧延スタンドまたは各圧延パスに用いるワークロールの表面粗さは、速度や荷重といった圧延条件とともに冷間圧延後の鋼帯表面状態に大きく影響する。そのため、製品に求められる表面仕上げ状態にとって、ワークロール表面粗さの制御は重要である。
また、冷間圧延工程では適切な潤滑状態を得るために、ワークロールや鋼帯表面へ圧延油をはじめとする液状の潤滑油を供給しており、この潤滑油をワークロールと鋼帯との間に引き込みながら冷間圧延が行われている。そのため、冷間圧延された鋼帯表面には、圧延中のロールバイトに潤滑油が捕捉され、高圧下で油膜を形成し、自由界面を創出することによりオイルピットが生成する。オイルピットの大きさは冷間圧延条件およびその冷間圧延前素材の表面性状からの影響を受け様々であるが、上記機構により生成した、直径2μm~100μm程度、深さが1~10μm程度の微小で急峻な凹み欠陥を以下ではオイルピットと称する。オイルピットは、鋼帯表面粗さを大きくし、平滑性、均一性、光沢の低下原因となる。
図2に冷間タンデム圧延機により同じ従来条件で圧延し、調質圧延を施した低炭素鋼帯のうち、(a)表面外観が劣る鋼帯部分、(b)表面外観に優れる鋼帯部分の表面観察結果を示す。本図上の黒色凹み部が、オイルピットである。図2(a)に示される鋼帯表面は、オイルピットが数多く存在しており、(b)に示す鋼帯表面は、オイルピットが少ないことがわかる。冷延鋼帯の表面性状向上のためには、幅方向、長手方向にわたり均一に(b)の表面状態に近づける、あるいは(b)よりもオイルピットが少ない表面に仕上げることが重要である。そのためには、冷間圧延において鋼帯全幅・全長にわたりオイルピットの生成を極力抑制することが望ましい。
さらに、オイルピットはロールバイトに引き込まれる潤滑油が増大し、油膜が厚くなるにつれて生成量が増えることは既知であり(非特許文献1参照)、圧延条件を適正にし、素材表面を均一にしても、潤滑油の供給にムラが生じると、冷間圧延後の鋼帯表面におけるオイルピットの生成状況にムラが生じて鋼帯表面性状は不均一になる。このようなムラは、冷間圧延後の鋼帯を焼鈍し、乾式または湿式調質圧延工程で伸び率が数%以下の調質圧延を行ったとしても、完全に均一化することは困難である。したがって、表面性状に優れる鋼帯を得るためには冷間圧延工程でオイルピットの生成を均等に抑制することが望ましい。尚、本発明者らの知見では、冷延鋼帯製造工程上の酸洗、洗浄および焼鈍はいずれもオイルピットの生成に影響を及ぼさないことを把握している。
通常の冷間圧延では、円周方向に砥石研磨を行って仕上げたブライトロールを用いて圧延を行っている。冷間圧延中にロール表面粗さは鋼帯表面にある程度転写するため、特殊な表面仕上げの場合を除いて、一般には、表面性状に優れる鋼帯を得るために粗さの小さいブライトロールを用いて冷間圧延を行っている。ところが、ブライトロールで圧延すると、ロールバイト内に引き込まれた潤滑油はそのままロールバイトに封入されてしまい、高圧下で油膜を形成するため、オイルピットの生成は避けられない。
オイルピットを抑制するにはロールバイト内に引き込まれる潤滑油量を減らすことが、有効な対策であるが、潤滑油の供給が不十分であると、圧延荷重の増大やヒートスクラッチを代表とするロールと鋼帯の表面が焼き付く表面欠陥が発生し、操業が困難となり生産性を著しく低下させる。また、ロールの小径化、圧延速度の低速化、潤滑油の低粘度化などの手段もオイルピット抑制には有効であるが、いずれも設備改造や生産能率の低下を招く。
そこで、本発明者らは大きな改造を必要とせず、尚且つ焼き付き等の表面欠陥を防止できる必要量の潤滑油を供給しながら、鋼帯表面を制御する方法として、ロールの表面粗さによるオイルピット抑制方法を検討した。
以下に、本発明に至った経緯を述べる。以降、「粗さ」は算術平均面粗さRaを示すものとする。また、円周方向に砥石で研磨し、一方向の線状研磨を施すため、円周方向に直線状の研磨筋が付与されているものをブライトロールと称する。一方、直線状ではなく、点状に凹凸が付与され、かつ、ロールの円筒方向、円周方向のいずれにも、必ず点状の凹凸が交互に出現する状態のロールをダルロールと称する。本発明のロール形状は、ダルロールに分類されるものである。
ここで、低炭素鋼帯の冷間圧延を行った。圧延に用いた素材は厚さ1.5mm、幅1200mmの冷延鋼帯である。なお、表面粗さはロール軸方向、鋼帯幅方向に触針式粗さ計で測定した。用いた冷間圧延前の素材鋼帯表面粗さは約0.3μmRaであった。0.2μmRaのブライトロールと0.2μmRaのダルロール、2.0μmRaのダルロールを用いて1パス(圧下率20%)の圧延を行った。圧延に際し、潤滑油には30mm2/sec(@40℃)のエステル油をベースとした潤滑油エマルションを用いた。冷間圧延後の鋼帯表面の粗さを測定した結果を表1に示す。
0.2μmRaのブライトロールで圧延した場合、圧延後の鋼帯表面粗さは0.15μmRaであった。また2.0μmRaのダルロールで圧延した場合、圧延後の鋼帯表面粗さは1.03μmRaと粗く、また圧延中には耳伸びが発生した。一方、前記ブライトロールと同じ0.2μmRaのダルロールで圧延したところ、圧延後の鋼帯表面粗さは0.08μmRaと前二者よりも平滑であり、圧延中に形状不良などの問題が発生しなかった。
本発明者らが検討した結果、前記現象が起きた理由は以下のとおりであることがわかった。
ブライトロールのロール表面は圧延方向に研削目が生じているため、ロールバイト内の入側から出側に至るロール円周方向で積極的な潤滑油の排出、オイルピットの抑制作用がなく、ロールバイトに潤滑油が封入され、厚い油膜厚を形成して、鋼帯表面にオイルピットが生成する。一方、2.0μmRaのダルロールは、ダル目(ロール表面のランダムな点状の凹凸)の転写によりオイルピットが消滅するが、同時に、ダルロール粗さに匹敵する大きな粗さが鋼帯表面に転写するため、ロールの凸部と鋼帯表面との間で潤滑油の欠乏が生じ、潤滑不足に伴う荷重の増大や形状不良が発生した。
一方で、表面粗さが0.2μmRaと小さいダルロールを用いると、図3(i)〜図3(iii)に模式的に示すとおり、
(i)ロールバイト内部で過剰な潤滑油をロール粗さの凹部に捕捉し、かつ、チャンネルジャンクション効果(凹みが連なってつながり、その中を潤滑油が移動する効果)により、ロールバイトから潤滑油を積極的に排出する作用(非特許文献2),
(ii)ロールのダル目が、ロールバイト入側鋼帯表面に形成されていたスクラッチ凹部やロールバイトで生成したオイルピット凹部に封入された潤滑油を排出する作用,
(iii)ダル目の転写により鋼帯表面を均す、すなわちロールバイト入側鋼帯表面に形成されていたスクラッチ凸部やオイルピット生成によって相対的高さの関係で生じた凸部を機械的に潰す作用,
のいずれか1つ以上が発現したと推定された。
一方、ロール表面粗さが小さければ微細なダルロールにおいても潤滑良好になる。さらに凹みに捕捉された潤滑油がロールバイト内の圧力によって凹み周辺の凸部や平坦部にしみ出す効果もあって、潤滑を良好にする。すなわち、このような微細な粗さのダルロールは潤滑性とオイルピット抑制効果の両者を兼ね備え、さらにオイルピット低減により鋼帯表面の均一性を向上できるロールであることを見出したわけである。
冷間圧延後の鋼帯表面のオイルピットを少なくするには前記(i)〜(iii)のいずれの作用も有効である。
次に、前述のように潤滑性とオイルピット抑制効果を両立するための最良のロール表面形態について調査した。前述の表面粗さ0.3μmRaの低炭素鋼帯を用いて1パス(圧下率20%)圧延する工程で、ロール表面粗さを変化させた場合の圧延後の鋼帯表面粗さの推移を図4に示す。
図4より、1.0μmRaより大きい粗さ範囲のダルロールで圧延した場合、0.2μmRaのブライトロールで圧延した場合より圧延後鋼帯表面は粗くなっており、また、圧延時に腹伸びが発生した。しかしながら、ダルロール粗さが0.01μmRa〜1.0μmRaの範囲ではブライトロールで圧延した場合より、圧延後の鋼帯表面粗さは小さくなっており、特にロール粗さが0.5μmRa未満の場合、鋼帯表面の粗さが著しく小さくて良好であった。また、0.5μmRa未満のダルロールの場合、ブライトロールで圧延した鋼帯表面に見られる幅方向のムラが生じていない均一で良好な鋼帯が得られた。
ロール粗さが1.0μmRaより大きい場合、鋼帯表面へロール粗さの凸部が食い込み摩擦が増大することによって荷重が増え、腹伸びをはじめ、形状不良の原因になった。1.0μmRa以下の粗さでは、凹凸が小さくなることによって食い込みが軽減され前述(iii)に示すように鋼帯表面凸部を均す効果が得られると思われる。しかしながら、0.5μmRaより大きい範囲では、(ii)で対象とするオイルピット深さよりもロール粗さの凸部が高く、この大きなロール粗さの転写による凹凸付与が支配的であるため圧延後の鋼帯表面粗さが比較的大きいと考えられる。一方、0.5μmRa以下になると、鋼帯表面のオイルピット深さとほぼ同等以下の凸部高さとなるため、(ii)のロール粗さ凸部によるオイルピット凹部に封入された潤滑油の排出効果が得られると考えられる。さらに、0.01μmRa以上0.5μmRa以下の範囲では、ロール凹部がより微細に張り巡らされるため前述(i)のチャンネルジャンクション効果が顕著となり均一かつ著しく粗さが小さい鋼帯が得られた。
また、本発明で用いる表面粗さ0.5μmRa未満のダルロールは、よりランダムな凹凸表面をロール表面全面に均一に付与するために、液体ホーニング加工で製造するとよい。液体ホーニング加工は、砥粒を水と混合し、スラリー状にしたものを噴射させることによってロール表面を梨地状に加工するものである。なお、砥粒の摩耗、冷間圧延ロールに必要な硬さの制限から、0.01μmRa未満のロール表面粗さの造り込みは困難である。
以上の理由により、本発明では、最適なロール表面粗さ範囲を0.01〜0.5μmRaと決定した。
しかしながら、ロール表面粗さRaが同じであっても、粗さの凹凸の形態は異なる場合がある。粗さの凹凸の形状を定義する指標はクルトシス(Rku)、スキューネス(Rsk)、PPIなど様々あり、最もマクロ的な指標としてはPPI(SAEJ911,米国規格)による定義を検討した。しかしながらPPIのピークカウントの閾値は粗さ中心線から±0.635μmである。本発明で規定するロール表面の凹凸は、最大でも粗さ中心線から±0.635μm未満の高さあるいは深さであるものが主であるために、PPIは0以上10未満の範囲でしか計測されないようなものである。
そこで、代替指標として、ロール表面粗さ中心線を基準とし凹凸のうち凸起の間隔を用いた。なお、ロール粗さの凸部間隔を指標としたのは、ロールバイトにおいて、このロール粗さの凸部が優先的に鋼帯表面に接触して、鋼帯表面のオイルピットを均す作用を有するからである。凸部間隔を変更した0.2μmRaのダルロールを用いて1パス(圧下率20%)の圧延を行った。尚、圧延に用いたのは前述と同様の冷延鋼帯と潤滑油である。
圧延後の鋼帯表面粗さを図5に示し、0.2μmRaブライトロールで圧延した冷延鋼帯の表面粗さと比較した。0.2μmRaダルロールの場合、凸間隔が70μmを超えると、0.2μmRaのブライトロールとほぼ変わらず、オイルピット抑制効果が消失した。
ロール表面の凸部間隔は表面粗さRaとある程度相関するものであり、表面粗さRaを小さくしていくにつれ凸間隔は短くなるが、5μmより短い凸間隔に仕上げることは実現可能な加工範囲を超えており、実生産においては非現実的である。
従って、本発明では、用いるロールの表面状態として、表面粗さ0.01〜0.5μmRaとし、好ましくはさらにロール粗さ中心線を基準として粗さの凹凸の凸部間隔5〜70μmとした。
鋼帯全面に亘り本発明の効果を得るためには、ロール粗さの凹凸がロールの周方向、軸方向によらず、同等の凹凸が異方性を持たず均一に付与されていることが必要である。なお、異方性を持たないとは、ロール表面の種々の方向から計測した粗さRaの範囲が±10%以内の誤差であることを示す。周方向、および、軸方向に周期的あるいは規則的に凹凸が配列すると、ロールバイト入側でロールと被圧延材が接触した際に潤滑油に規則的な流れが生じ、その結果、油膜ムラが生じてオイルピットの分布のムラ、ひいては鋼帯の外観ムラを発生させることになる。ロールバイトの油膜厚とオイルピットの生成とが密接に関係することは前述したとおりである。これを防止するためには、液体ホーニング加工のように、均等な粗さの凹凸を、ロール全面にわたり異方性を持たず均一に付与する加工方法によって、ロール表面を仕上げる必要がある。なお、生産性も加味した結果、本発明では液体ホーニング加工が加工方法として最適であると判断した。
本発明により冷延鋼帯を製造するにあたり、最適な圧下率を検討した。
前述と同じ低炭素鋼の冷延鋼帯を用い、圧下率を変更してロール軸方向粗さ0.2μmRaのダルロールおよびブライトロールを用いて1パスで圧延した。図6に圧下率に対する圧延後の鋼帯表面粗さの推移を示す。
図6より、圧下率7%まではダルロール圧延時の鋼帯表面粗さはブライトロール圧延時とほぼ同じであるが、圧下率10%以上でダルロールで圧延した後の鋼帯表面粗さは明らかに小さくなっていることがわかった。しかし、圧下率50%に達すると、0.2μmRaのブライトロール、0.2μmRaのダルロールともにヒートスクラッチが発生した。
そのため、本発明の請求項1又は2の方法で冷間圧延する際には、1パスまたは1スタンドあたり、10〜45%の圧下率の範囲内にとどめることが好ましいと言える。これは十分に生産能率を維持できる範囲内である。
ところで、冷間圧延ミルには、タンデムミルやクラスタータイプのリバースミルがあるが、本発明はこれらミルのいずれかに限定するものではなく、潤滑油を供給しながら行う冷間圧延ミルである限りにおいて全てのミルに適用できるものである。また、本発明で提示するロールは、規定の範囲内のロールであれば、目的に応じて導入スタンドあるいは導入パスを変更しても良い。なお、ロール径、対象とする冷延前素材、潤滑油の特性と性状、生産性の観点から要求される圧延速度など、特に限定するものではない。
また、冷間圧延前後工程である酸洗・焼鈍・めっきあるいは調質圧延などの工程およびその条件は特に限定するものではなく、各製品に応じた処理を行えばよい。
板厚3mm、板幅1050〜1200mmの低炭素熱延鋼帯を酸洗工程で脱スケール後、冷間圧延工程において板厚0.8mmへ圧延した。該冷間圧延工程における圧延ロールの条件、そのロールを用いて冷間圧延した後の鋼帯表面粗さRaを表2に示す。なお、表2において、No.8及びNo.13は本発明例に代えて参考例とする。前記冷間圧延はクラスタータイプのリバース圧延機で行い、潤滑油として30mm2/sec(@40℃)のエステル油をベースとする潤滑油エマルションを供給し、供給するエマルション温度および濃度、パススケジュールを同じにして圧延した。
0.05μmRa、0.02μmRaのブライトロールのみで圧延した場合を比較例(No.1、No.2)とした。No.1では圧延後の鋼帯表面に顕著なムラが発生した。また、No.2では圧延後の鋼帯表面粗さが0.31μmRaと大きく、ロール粗さが鋼帯表面に転写したスクラッチ痕が目立って、不均一な表面であった。
これに対し、本発明で規定する範囲内のダルロールをいずれかのパスあるいは全てのパスに用いたNo.3〜No.14の本発明例では、圧延後の鋼帯表面粗さRaが比較例No.1、No.2よりも小さくなっていた。なお、ロール粗さRaに続く記号Aは粗さの中心線を基準とする凸部間隔が請求項2に対応するものであり、記号Bはそれ以外の場合である。一方で、本発明規定外の粗さのダルロールを用いると、No.15〜No.17に示す比較例のとおり、圧延時に耳伸び・腹伸びなどの形状不良や、ヒートスクラッチが発生し、圧延を途中で中止せざるを得なかった。また、速度を下げて圧延した比較例No.18においても圧延後の鋼帯表面粗さRaはブライトロールで圧延した場合よりも大きくなり白濁した表面であった。
以上より、本発明で規定した粗さのダルロールを用いて冷間圧延することにより、オイルピットを抑制し圧延後の鋼帯表面粗さを低減して、幅方向、長手方向に均一な表面性状に優れる冷延鋼帯が得られることを確認した。

Claims (1)

  1. 熱延鋼帯を酸洗後、冷間圧延を施す際に、潤滑油を供給しながら、ワークロールとして、全パスにダルロールを用い、又は、全パスのうち一部のパスにダルロール、残りのパスにブライトロールを用い、所定の厚さまで圧延する冷延鋼板の製造方法において、前記ダルロールとして、液体ホーニング加工にて、表面粗さが0.01μmRa以上0.5μmRa未満の範囲で、周方向、軸方向の異方性を持たないランダムな表面粗さを持たせ、かつロール表面の粗さの中心線を基準とする凹凸の凸間隔を5μm〜70μmの範囲としたダルロールを用いることを特徴とする冷延鋼帯の製造方法。
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