JP4280231B2 - 缶用素材鋼板及びその調質圧延方法 - Google Patents
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このため、近年における缶用素材鋼板の表面性状の管理には、従来から用いられている算術平均粗さRaのみならずPPIによって管理するものも出現してきている(例えば、特許文献1および2参照)。PPIとは、特許文献1に詳細に記載されているとおり、米国のSAE規格で定められた、表面粗さの粗さ曲線における1インチ当たりの山数(peaks per inch)を示すものである。
そして、特許文献2においては、ワークロールの表面粗度については、ロール研削仕上げ時の研削砥石の移動速度を低下させることによって、砥石とロールとの単位時間当たりの接触回数を増加せしめ、これによって表面凹凸の山の高さの低減と、山数の増加を同時に達成することができるとしている。
なお、缶用素材鋼板とは、容器材料に用いられる鋼板であり、代表的なものとしては、ぶりきやティンフリースチール(TFS)、その他、Ni系めっき鋼板等があるが、本発明に係る調質圧延方法および缶用素材鋼板は、めっき処理なしの原板あるいはめっき処理を施す前の原板に関するものである。
なお、本発明における調質圧延のトータル圧下率は、圧延油等の潤滑剤を用いない乾式圧延の場合は0.5〜1%であり、潤滑剤を用いる湿式圧延の場合には1〜40%の範囲である。
(B)また、ダルロールを用いて調質圧延を行うと、鋼板表面の粗度が同じであっても、スクラッチロールを用いた場合よりもPPIを大きく制御することができること。
(C)さらには、鋼板の光沢度を50以下とするためには、鋼板表面のPPIを400以上とする必要があり、そのためには、鋼板表面に形成される凸状円形突起のピッチを600μm以下にすればよいこと。すなわち、ダルロールに設ける穴のピッチを600μm以下にすればよいこと。
なお、前記ダルロールを用いて圧延することにより、鋼板表面には凸状円形突起が所定のピッチで生成されるが、以降、凸状円形突起が生成されない平坦な鋼板表面部分を平坦部と称する。
(D)平坦部の粗度については、ダルロールの表面粗度が0.4μmRaを超える場合には、この粗さに比例した粗さになり、しかも調質圧延の進行とともに変化すること。
(E)一方、ダルロールの表面粗度を0.4μmRa以下にすると、平坦部の粗度は冷延鋼板(調質圧延前の鋼板)の粗度にのみ影響されて、ダルロールの表面粗度には影響されないこと。これは湿式圧延の場合には、ロールと鋼板の間に潤滑剤の皮膜が形成され、当該皮膜がダルロールの表面粗度が鋼板表面に転写されるのを防ぐためである。また、乾式圧延の場合には圧下率が0.5〜1%と低いため、転写率も低くなるからである。
(F)このため、ダルロールの表面粗度を0.4μmRa以下にすれば、平坦部の粗度については冷延鋼板(調質圧延前の鋼板)の粗度により制御することができること。これにより、高圧下調質圧延によりダルロールの磨耗が進行しても平坦部の粗度変化を抑制することができること。
(G)凸状円形突起部の粗度は、ブライトロール、詳細には複数のブライトロールを用いる場合には、最も粗度の大きいブライトロールの表面粗度に影響されること。
(H)また、ブライトロールによる調質圧延の圧下率は、最初に行うダルロールによる調質圧延の圧下率と比較すると極めて低いので、圧延量が増加してもブライトロールの表面粗度はダルロールと比較すると変化量が少ないこと。
(J)一方、凸状円形突起部の面積率が5%以上の場合には、ブライトロールの表面粗度が平坦部に転写せずに、凸状円形突起部の粗度にのみ影響を与えること。
(K)このため、冷延鋼板(調質圧延前の鋼板)の粗度により調整した平坦部の粗度変化を抑制するためには、鋼板表面に生成される凸状円形突起の面積率を5%以上にすればよいこと。すなわち、ダルロールに設ける穴の面積率を5%以上にすればよいこと。
(M)さらには、鋼板の表面粗度と色調との間には相関関係があること。より詳細には、凸状円形突起部の粗度と平坦部の粗度の面積加重平均値を平均粗度と定義した場合、当該平均粗度を0.2〜0.45μmRaの範囲に設定すると、色調の要素であるL値およびb値を改善することができること。
(1)表面粗度が0.1〜0.4μmRaの冷延鋼板を、表面粗度が0.4μmRa以下のロール表面に穴の面積率≧5%、穴のピッチ≦600μmである穿孔加工を施したダルロールを用いて圧延した後に、表面粗度が0.15〜0.7μmRaのブライトロールを用いて圧延することを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
(2)凸状円形突起を鋼板表面に有する缶用素材鋼板において、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)≧400、凸状円形突起部の粗度と平坦部の粗度の面積加重平均値としての鋼板表面の平均粗度が0.2〜0.45μmRa、鋼板表面に対する凸状円形突起の面積率≧5%、凸状円形突起のピッチ≦600μm、凸状円形突起が生成されない平坦な鋼板表面部分である平坦部の粗度が0.1〜0.4μmRaであることを特徴とする缶用素材鋼板。
(3)凸状円形突起を鋼板表面に有する缶用素材鋼板において、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)≧400、凸状円形突起部の粗度と平坦部の粗度の面積加重平均値としての鋼板表面の平均粗度が0.2〜0.45μmRa、鋼板表面に対する凸状円形突起の面積率≧5%、凸状円形突起のピッチ≦600μm、凸状円形突起が生成されない平坦な鋼板表面部分である平坦部の粗度が0.1〜0.4μmRaである缶用素材鋼板であり、表面粗度が0.1〜0.4μmRaの冷延鋼板を、表面粗度が0.4μmRa以下のロール表面に穴の面積率≧5%、穴のピッチ≦600μmである穿孔加工を施したダルロールを用いて圧延した後に、表面粗度が0.15〜0.7μmRaのブライトロールを用いて圧延して製造することを特徴とする缶用素材鋼板。
(B)また、鋼板表面のPPIと表面粗度とを独立に制御することができるため、高圧下調質圧延によりダルロールの磨耗が進行してもPPIと表面粗度の変化量を抑制することができ、優れた低光沢表面を有する缶用素材鋼板を安定的に得ることが可能となる。具体的には、スクラッチロールを用いる従来方法においては、累積圧延量が600ton程度でロールを交換しなければならなかったが、本発明によれば累積圧延量が1200tonにおいても優れた光沢度と色調を満足する缶用素材鋼板を得ることができる。
図4に示す米国のThe Engineering Society for Advancing Mobility Land Sea Air and Space:SAE J911-JUN 86 「SURFACE TEXTURE MEASUREMENT OF COLD ROLLED SHEET STEEL」で定められたPPIの定義に関する表面粗さの粗さ曲線を用いて詳細に説明すると、所定の評価長さLnについて、当該粗さ曲線の平均線に対して一定の基準レベル(カットレベル)Hを設けて、負の基準レベルを越えたあとに正の基準レベルを越えたとき1カウントするようにカウントしたときのカウント総数が、カットレベルHにおけるPPIである。
なお、本発明においては、評価長さLnは25.4mm(1インチ)、カットレベルHは0.24μmとしている。また、評価長さLnについては、圧延方向に対して直角方向の粗さ曲線を用いている。
また、図6は、鋼板表面に形成された凸状円形突起のピッチ(圧延方向に対して直角方向のピッチ)とPPIとの関係を示すグラフであるが、やはり両者の間には密接な相関関係があることがわかり、PPI(カットレベル0.24μm)を400以上に設定するためには、凸状円形突起のピッチを600μm以下に設定する必要があることがわかる。
したがって、ダルロールに設ける穴のピッチ3としては、600μm以下にすることが望ましい。鋼板表面の光沢度を50以下とするためには、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)を400以上とする必要があり、そのためには、鋼板表面に生成される凸状円形突起のピッチを600μm以下にする必要があるからである。
なお、当該現象については、数多くの実験検討の結果、本発明者が初めて知見したものであり、これは湿式圧延の場合には、ロールと鋼板の間に潤滑剤の皮膜が形成され、当該皮膜がダルロールの表面粗度が鋼板表面に転写されるのを防ぐためである。また、乾式圧延の場合には圧下率が0.5〜1%と低いため、転写率も低くなるからである。
なお、円とは、真円のみを意味するものではなく、楕円や長円、円の一部が欠けた円等をも含むものとする。
しかし、レーザー強度が高く、かつ単発照射により穴を開けようとすると穴の周囲にリム5が形成され、当該リムが鋼板表面に転写されると、PPIや表面粗度に悪影響を与えるので、レーザー強度や照射時間を適度に設定して穴を形成するのが望ましい。例えば、パルスレーザーの単発照射に必要な1パルス分のパルス幅を複数個に分割すれば、単発照射を複数回の照射にすることができるので、リム5の形成ないしは穴の周囲の盛り上がり部の高さを低減することができる。なお、電子ビーム法や放電ダル加工法を使用する場合についても同様である。
なお、フォトエッチング法は、前記リムの形成ないしはリム高さを低減することができるので、この点においてはパルスレーザー法等に比べて有利である。
また、冷延鋼板の表面粗度としては、0.1〜0.4μmRaの範囲とするのが望ましい。これも冷延鋼板の表面粗度が大きすぎると、ダルロールやブライトロールとの摩擦係数が過大となり調質圧延することが困難となるからである。
実施例の調質圧延条件を表1に、得られた鋼板の表面性状を表2に示す。トータル圧下率は表1に示す通りであり、圧延速度は400mpmとした。また、潤滑剤はパーム油ベースの潤滑剤を使用している。
また、比較例は、比較例8がダルロールの穴のピッチおよび面積率が、比較例9がダルロールの面積率およびブライトロールの表面粗度が、比較例10がブライトロールの表面粗度が、比較例11がダルロールの表面粗度が、比較例12が冷延鋼板の表面粗度が本発明範囲から外れ、それ以外は本発明例と同一条件である。
図7は本発明に係る実施例のダルロールの穴のピッチと原板の光沢度との関係を示したグラフであるが、前記条件を満たす本発明例1〜7はいずれも原板の光沢度が50以下であり、しかも、ダルロールに設けた穴のピッチと原板の光沢度が比例関係になっていることを確認することができる。
これに対して、ダルロールに設ける穴のピッチが本発明範囲(600μm以下)から唯一外れる比較例8については、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)が本発明範囲(400以上)から外れ、その結果、図7に示すように原板の光沢度は62となり、缶用素材鋼板に要求される低光沢度(50以下)を満足することが出来なかった。
なお、図7においては、比較例8のみならず、比較例10も本発明範囲から外れているが、これはブライトロールの表面粗度が細か過ぎたことによるものと思われる。
以上から、ダルロールの表面粗度が0.4μmRa以下、ダルロールに設ける穴の面積率が5%以上という条件下においては、ダルロールに設ける穴のピッチを制御することにより、鋼板表面の光沢度を制御できることを確認することができた。具体的には、当該条件下においては、ダルロールに設ける穴のピッチを600μm以下にすることにより、缶用素材鋼板に要求される低光沢度(50以下)を満足できることを確認することができた。
図8は本発明に係る実施例のブライトロールの表面粗度と突起部の表面粗度との関係を示したグラフであるが、本発明例1〜7においては、ブライトロールの表面粗度と突起部の表面粗度とが比例関係となっており、このことからも前記ダルロールを用いて圧延した後に、表面粗度が0.15〜0.7μmRaのブライトロールを用いて圧延することにより、突起部の表面粗度を制御することができることを確認することができる。
なお、比較例8〜12については図示していないが、比較例においても上記関係が成立することを確認することができた。
図9は本発明に係る実施例の冷延鋼板の表面粗度と平坦部の表面粗度との関係を示したグラフであるが、本発明例1〜7においては、冷延鋼板の表面粗度と平坦部の表面粗度とが比例関係となっており、このことからも冷延鋼板の表面粗度により、平坦部の表面粗度を制御することができることを確認することができる。
これに対して、ダルロールに設ける穴の面積率が本発明範囲(5%以上)から外れる比較例9については、ダルロール圧延によって鋼板表面に形成された凸状円形突起がブライトロールによって潰されて、ブライトロールの表面粗度が平坦部に転写された。しかも、比較例9は、ダルロールに設ける穴の面積率のみならず、ブライトロールの表面粗度についても本発明範囲(0.15〜0.7μmRa)より上方に外れているので、図9に示すように平坦部の粗度が著しく上昇し、その結果、鋼板表面の平均粗度が本発明範囲(0.2〜0.45μmRa)から著しく外れた。
また、比較例11についても、本発明例1〜7に見られる冷延鋼板の表面粗度と平坦部の表面粗度との比例関係が成立しないが、これは、比較例11のダルロールの表面粗度が本発明範囲(0.4μmRa以下)から外れるので、ダルロールの表面粗度が平坦部の粗度に影響を与えたことによるものである。なお、ダルロールの表面粗度が本発明範囲から外れる比較例11のロール寿命は、比較例1のダルロールの約7割程度であった。これはダルロールの表面粗度が0.4μmRa以下の場合には、ダルロールと鋼板との間に潤滑剤の皮膜が形成され、これによりダルロールの表面粗度が鋼板表面に転写されるのを防ぐことができるが、比較例11の場合にはこのような効果が発生せず、圧延量の増加とともにロール磨耗が進行したことによるものである。
なお、鋼板の平均粗度については、凸状円形突起部と平坦部の任意の4箇所をレーザ粗度計で測定し、これを面積率で重み付けしたときの平均値を用いている。
以上の結果は、ダルロールの表面粗度が0.4μmRa以下、ダルロールに設ける穴の面積率が5%以上という条件下においては、平坦部の表面粗度は冷延鋼板(調質圧延前の鋼板)の表面粗度にのみ影響されて、ダルロールの表面粗度には影響されないことを示すものである。
2 穴
3 穴のピッチ
4 穴の直径
5 リム
6 鋼板
7 凸状円形突起
8 凸状円形突起の直径
9 平坦部
Claims (3)
- 表面粗度が0.1〜0.4μmRaの冷延鋼板を、表面粗度が0.4μmRa以下のロール表面に穴の面積率≧5%、穴のピッチ≦600μmである穿孔加工を施したダルロールを用いて圧延した後に、表面粗度が0.15〜0.7μmRaのブライトロールを用いて圧延することを特徴とする缶用素材鋼板の調質圧延方法。
- 凸状円形突起を鋼板表面に有する缶用素材鋼板において、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)≧400、凸状円形突起部の粗度と平坦部の粗度の面積加重平均値としての鋼板表面の平均粗度が0.2〜0.45μmRa、鋼板表面に対する凸状円形突起の面積率≧5%、凸状円形突起のピッチ≦600μm、凸状円形突起が生成されない平坦な鋼板表面部分である平坦部の粗度が0.1〜0.4μmRaであることを特徴とする缶用素材鋼板。
- 凸状円形突起を鋼板表面に有する缶用素材鋼板において、鋼板表面のPPI(カットレベル0.24μm)≧400、凸状円形突起部の粗度と平坦部の粗度の面積加重平均値としての鋼板表面の平均粗度が0.2〜0.45μmRa、鋼板表面に対する凸状円形突起の面積率≧5%、凸状円形突起のピッチ≦600μm、凸状円形突起が生成されない平坦な鋼板表面部分である平坦部の粗度が0.1〜0.4μmRaである缶用素材鋼板であり、
表面粗度が0.1〜0.4μmRaの冷延鋼板を、表面粗度が0.4μmRa以下のロール表面に穴の面積率≧5%、穴のピッチ≦600μmである穿孔加工を施したダルロールを用いて圧延した後に、表面粗度が0.15〜0.7μmRaのブライトロールを用いて圧延して製造することを特徴とする缶用素材鋼板。
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