JP2004322153A - 圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム板材の圧延に使用する圧延用ワークロールに関し、長寿命化が可能で、かつ、製品の表面品質を向上させることができる圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法を提供する。
【解決手段】ロール本体5の胴部表面に、ビッカース硬度Hvが500以上、平均膜厚が1乃至20μmの皮膜6と、皮膜6表面に平均膜厚が0.05乃至0.5μmで、アルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む皮膜7を備え、かつ、皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmであることを特徴とする圧延用ワークロールとし、また、これを用いた圧延方法については、前記圧延用ワークロールの胴部表面に、回転自在なブラシを接触させつつ回転せしめることにより、皮膜7の状態を最適な条件に制御することとした。
【選択図】 図2
【解決手段】ロール本体5の胴部表面に、ビッカース硬度Hvが500以上、平均膜厚が1乃至20μmの皮膜6と、皮膜6表面に平均膜厚が0.05乃至0.5μmで、アルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む皮膜7を備え、かつ、皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmであることを特徴とする圧延用ワークロールとし、また、これを用いた圧延方法については、前記圧延用ワークロールの胴部表面に、回転自在なブラシを接触させつつ回転せしめることにより、皮膜7の状態を最適な条件に制御することとした。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材の圧延に使用する圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、アルミニウム板又はアルミニウム合金板(以下製品とする)は、所望の組成を溶解、鋳造してスラブを作製し、続いて、このスラブを均質化熱処理した後、熱間圧延にて圧延板(以下アルミニウム板材とする)を作製し、更に、冷間圧延工程を経て作製される。この際、必要に応じて、熱間圧延後又は冷間圧延の途中で熱処理が加わる場合もある。
【0003】
前記熱間圧延および冷間圧延工程では、アルミニウム板材に対してすり疵や圧痕等の表面疵を発生させず、更に、生産性を高めるため熱間圧延および冷間圧延に用いられる圧延用ワークロールを如何に長持ち(長寿命化)させるかが重要である。このため、アルミニウム板材を圧延するための圧延用ワークロールには、通常、鋳鍛鋼(例えば、SKD−12)が使用されている。
【0004】
しかし、アルミニウム合金の中では比較的硬度の高い5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金からなるアルミニウム板材等を多数圧延した場合、特に、熱間圧延では、圧延用ワークロールの胴部表面の表面粗さが低下することにより、ロールの噛み込み不良(熱間粗圧延又は仕上げ圧延において、ロールバイト内へアルミニウム板材が進行しない現象)やロールスリップ(圧延中のアルミニウム板材と圧延用ワークロールの胴部表面の間の拘束力が低下し、圧延板速度が周速に追従しなくなるため、速度・張力・荷重等の圧延条件が不安定となる現象)といった問題が生じる。
【0005】
更に、熱間圧延又は冷間圧延する際、圧延用ワークロールの胴部表面上には、ワークロールとアルミニウム板材の表面層が高温・高圧下で溶着することで、アルミニウムおよびその酸化物等からなる薄膜(以下、ロールコーティング層と称する)が形成される。その結果、このロールコーティング層と、アルミニウム板材が接触しながら圧延されることとなり、ロールコーティング層の性状・膜厚によっては、アルミニウム板材の表面に微小な欠陥を形成させるといった問題が発生する。また、特に、冷間圧延では、アルミニウム板材がそのまま製品となるため、表面の微細な欠陥が重大な問題となる。このような問題を解決するため、下記のような対策が立てられてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、圧延用ワークロールの胴部表面に、厚さ5μm以上の耐摩耗性に優れた硬質Crメッキを施した熱間圧延用ワークロールが提案されている。この技術によれば、ロール面粗度が低下し難いため、噛み込み不良等が防止され、ロールの長寿命化、更には、製品の表面品質を向上させることができる。
【0007】
また、例えば、特許文献2には、圧延用ワークロールに対して、ブラシロールを設置し、前記圧延用ワークロールを前記ブラシロールに接触させつつ回転せしめることにより、前記圧延用ワークロール表面に固着したロールコーティング層を前記ブラシロールにて除去し得る、アルミニウム板材の圧延方法が開示されている。この技術によれば、アルミニウム板材とロールコーティング層との接触による微小欠陥の発生を防止できる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−211902号公報(第2頁左欄 4〜9行)
【特許文献2】
特開平9−57313号公報(段落番号[0007]〜[0008])
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示すように圧延用ワークロールの胴部表面に、厚さ5μm以上の硬質Crメッキを施した圧延用ワークロールを用いた場合においても、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら熱間圧延又は冷間圧延した場合には、ロール面粗度の低下や、噛み込み不良等が発生し、圧延用ワークロールの寿命がバラツク又は、製品の表面に微小な疵が形成されるといった問題が発生した。
【0010】
また、特許文献2に示す方法を用いた場合も、前記ロールコーティング層の過剰除去により、圧延用ワークロール表面の面粗度が低下することで、噛み込み不良やロールスリップが生じ、特許文献1と同様な問題が発生した。
更に、このような問題を解決するため、圧延用ワークロールの交換(取り外し→水冷→胴部表面の研磨→取り付け)を必要とし、その交換に長時間(およそ8〜12時間)を要することとなり、生産性が大きく低下するといった問題が生じた。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら圧延した場合や、ブラシロールを使用した場合においても、圧延用ワークロールの長寿命化が可能であり、更に、製品の表面品質を向上させることができる圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究実験を重ねた結果、圧延用ワークロールの胴部の表面に形成する皮膜の種類、ビッカース硬度および膜厚、更には、圧延用ワークロールの胴部最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaを最適な条件範囲に制御することにより、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質の向上が可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明の要旨は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材を圧延するための圧延用ワークロールであって、ロール本体の胴部表面に、ビッカース硬度Hvが500以上、平均膜厚が1乃至20μmの第1皮膜と、この第1皮膜表面に平均膜厚が0.05乃至0.5μmで、アルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む第2皮膜とを備え、かつ、前記第2皮膜の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmであることを特徴とする圧延用ワークロールにある。
【0014】
請求項1のような第1皮膜を形成することにより、圧延用ワークロールの耐摩耗性が向上し、長寿命化が可能となる。更に請求項1のような第2皮膜を形成することにより、圧延板表面の微小欠陥の発生を抑えることが可能となり、表面品質の優れた製品を得ることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明の要旨は、前記第1皮膜が、Ni又はCrを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の圧延用ワークロールにある。
請求項2のような皮膜構成を採ることで、圧延用ワークロールの耐摩耗性が向上し、ロールの長寿命化が可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明の要旨は、前記第2皮膜が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる前通し材を圧延することにより形成された、前通し材成分からなるロールコーティング層であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の圧延用ワークロールにある。
請求項3のように皮膜を形成することで、新たに設備投資をすることなく、既存の設備で所望の皮膜形成が可能となり、また、圧延加工と同時に皮膜を形成するため、生産性の低下を防ぐこともできる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明の要旨は、請求項1乃至請求項3に記載の圧延用ワークロールを用いてアルミニウム板材を圧延する圧延方法であって、ナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなると共に、Al2O3又はSiC微粒子を含む回転自在なブラシを、前記圧延用ワークロールの胴部表面に接触させながら圧延することを特徴とするアルミニウム板材の圧延方法にある。
請求項4のように圧延することで、ロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することが可能となるため、表面品質の優れた製品を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法における実施の形態について説明する。
本発明の圧延用ワークロールはアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材を、熱間圧延又は冷間圧延するための圧延機に使用される。前記アルミニウム板材の種類は特に限定されず、例えば、1000系の純アルミニウム、3000系のAl−Mn合金又は5000系のAl−Mg合金等からなるものである。
【0019】
また、前記圧延機についても特に限定されず、例えば、2段圧延機、バックアップロールが設置された4段圧延機又はそれらを2機以上連続して設置したタンデム圧延機等に使用される。図1は前記圧延用ワークロールが用いられるアルミニウム板材の圧延機の一例を示すものである。アルミニウム板材の圧延は、図1に示すように、アルミニウム板材1が、1対の圧延用ワークロール2、2間に供給されて、所定の圧下率にて圧延されることにより行われる。ここで、本発明の圧延用ワークロールは、図2(図1のA部の拡大図)に示すようなロール本体5の胴部表面に、第1皮膜6および第2皮膜7を有している。
【0020】
ロール本体5は、一般的なロール、例えば鋳鍛鋼製ロール等が使用される。また、第1皮膜6は、このロール本体5の胴部表面に、電解メッキ法等により得られるCr皮膜等を形成することにより得られる。なお、耐摩耗性を向上させるため、第1皮膜の成分には、Ni又はCrが含まれていると都合が良い。
更に、第1皮膜6はビッカース硬度Hvが500以上、かつ、平均膜厚が1乃至20μmに限定されている。このように皮膜特性を限定した理由について以下に説明する。
【0021】
[第1皮膜6のビッカース硬度Hvを500以上に限定した理由]
第1皮膜6のビッカース硬度Hvが500以上である場合は、圧延用ワークロールの耐磨耗性が優れているため、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら熱間圧延又は冷間圧延した場合にもロール面粗度が低下し難いため、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となる。
一方、第1皮膜6のビッカース硬度Hvが500未満である場合は、耐磨耗性に劣るため、圧延用ワークロールの長寿命化を達成することができない。
従って、前記第1皮膜6のビッカース硬度Hvは500以上とする。
【0022】
なお、ビッカース硬度Hvが500以上の第1皮膜としては、以下のようなものがあるが、本発明はこれらに限られるものではない。
例1)電解メッキ法により形成されるCr、Ni−Cr、Ni−P等の皮膜。
例2)無電解メッキ法により形成されるNi−P等の皮膜。
例3)溶射法により形成されるCr炭化物、Ni−Cr、WC等又はこれらの組み合わせにより構成される皮膜。
【0023】
[第1皮膜6の平均膜厚を1乃至20μmに限定した理由]
第1皮膜6の平均膜厚が1μm未満の場合は、第1皮膜6をロール本体5の胴部表面に均一に形成することが難しく、ロール本体5の素地が十分に覆われないため耐磨耗性においても向上が見られない。
一方、20μmを超える第1皮膜6の形成は、それ以上に耐磨耗性の向上が見られず、更に、圧延加工時に、皮膜の部分的な剥離又は割れといった問題を引き起こす可能性もあり、コスト的にも無駄である。
従って、第1皮膜6の平均膜厚は1乃至20μmとする。
【0024】
次に、前記第1皮膜6上に形成される第2皮膜7について説明する。第2皮膜7はアルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む皮膜で、例えば、圧延前に前通し材(アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材)を圧延し、熱によって、前通し材の成分を第1皮膜上に溶着させ、第1皮膜を前通し材成分でロールコーティングすることによって得られる。
【0025】
なお、第2皮膜7は、アルミニウムおよびその酸化物以外のものが含まれていても良い。例えば、Al−Mg合金を圧延した場合は、アルミニウムおよびその酸化物以外にも、マグネシウムおよびその酸化物等がロールコーティングされ、これを第2皮膜7として用いても良い。
更に、第2皮膜7の形成法は前記した前通し材成分のロールコーティングによる方法に限られず、例えば、メッキ法や溶射法で皮膜を形成しても良い。
また、第2皮膜7は平均膜厚が0.05乃至0.5μm、かつ、第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmに限定されている。このように皮膜特性を限定した理由について以下に説明する。
【0026】
[第2皮膜7の平均膜厚を0.05乃至0.5μmに限定した理由]
第2皮膜7はアルミニウム板材に接触するため、表面状態は、製品の表面品質に大きく影響を与える。つまりは、第2皮膜7を最適な状態に制御することは、製品の表面性状を決める上で非常に重要であると言える。
【0027】
ここで、第2皮膜7の平均膜厚が0.5μmを超えると、第2皮膜7の一部が圧延用ワークロールの胴部表面からアルミニウム板材の表面上に脱落し、製品の表面欠陥に繋がる可能性がある。
また、第2皮膜7は、圧延用ワークロールの胴部表面にできるだけ薄く均一に形成することが好ましいが、0.05μm未満になると圧延加工時に、噛み込み不良、ロールスリップ又は圧延荷重の増加等の問題が生じる。
従って、第2皮膜7の平均膜厚は0.05乃至0.5μmとする。
【0028】
[第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaを0.1乃至2.0μmに限定した理由]
第2皮膜7の最表面における算術平均粗さRaが0.1μm未満になると、噛み込み不良やロールスリップ等を生じ易くなる。
また、第2皮膜7の表面とアルミニウム板材表面との間で金属凝着の発生比率が高くなり、焼き付きによる表面異常が発生し易くなる。
一方、前記算術平均粗さRaが2.0μmを超えると、第2皮膜7の表面に形成されたロール目が、アルミニウム板材表面に転写され、製品表面に悪影響を与える。
従って、第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaは、0.1乃至2.0μmとする。
【0029】
続いて、本発明の圧延用ワークロールを用いたアルミニウム板材の圧延方法であって、圧延中における前記第2皮膜7の膜厚を制御することができる圧延方法について説明する。圧延加工中は、熱によって、前記したようにアルミニウム板材成分が圧延用ワークロールに溶着して、この圧延用ワークロールの胴部表面にアルミニウム板材成分がロールコーティングされる。このため、圧延と同時に余分なロールコーティング層を除去し、前記第2皮膜7の膜厚を均一化する必要がある。
【0030】
本発明では、図1に示すように、ブラシロール4、4が圧延用ワークロール2、2に対して、軸平行的に設置され、圧延時に前記ブラシロール4、4を図1に示すような方向に回転させつつ、前記圧延用ワークロール2、2に接触させることにより、前記圧延用ワークロール2、2表面のロールコーティング層の膜厚を均一化することが可能となる。その際、ブラシロール4、4の位置は、圧延用ワークロール2、2に接触する位置に設置しても良いし、圧延用ワークロールから離れた位置に設置し、圧延時にブラシロールを押し付ける事により圧延用ワークロールに接触させても良い。
【0031】
また、前記ブラシロール4、4には、均一な研磨を目的として、ナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなると共に、Al2O3又はSiC微粒子を含むブラシを使用している。
更に、前記第2皮膜7の平均膜厚を0.05乃至0.5μmに制御するためには、予め種々のアルミニウム合金を圧延加工した場合についてロールコーティング層の膜厚を求め、ブラシ回転数とロールコーティング層の除去膜厚の関係を求めておけば良い。
【0032】
なお、ブラシの材質にナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用しても、圧延用ワークロール、バックアップロールおよびブラシロールをクーラント等により冷却すれば、熱間圧延の場合でも問題なく、使用可能である。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、特許請求の範囲から外れる比較例を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(第1実施例)
鋳鍛鋼(SKD−12)製ロールを用いて、表1に示す皮膜構成を持った圧延用ワークロールを作製した。これを熱間仕上げ圧延機に取り付け、以下の条件で繰り返し圧延を行った。なお、第2皮膜は、圧延前に前通し材を圧延することによって形成し、更に、圧延加工時の第2皮膜の膜厚を制御するため、ブラシロールの回転数を調整しながら圧延した。
【0034】
<条件>
圧延機:4タンデム圧延機
圧延用ワークロール:4タンデム圧延機の最後段に取り付けた。
ロール径:700mm
ロール胴長:2900mm
潤滑油:エマルジョン系
ブラシ:ナイロン又はPBT製(Al2O3微粒子が分散して埋め込まれている。)
ブラシロール位置:圧延用ワークロールの中央部から1mm離して設置した。なお、圧延時にはブラシロールの両端を押し付ける事により圧延用ワークロールに接触させている。
圧延加工:3004合金および5182合金を下記条件にて圧延した。圧延は、3004合金→5182合金の順に交互に繰返し行い、合計25本圧延した(最終は3004合金)。
(1)3004合金
入側板厚:30mm(4タンデム圧延機の最前段入側)
出側板厚:2.0mm
圧延板:1500m/本
(2)5182合金
入側板厚:30mm(4タンデム圧延機の最前段入側)
出側板厚:3.3mm
圧延板:1500m/本
【0035】
【表1】
【0036】
皮膜の特性については、以下の方法により評価した。
(1)第1皮膜のビッカース硬度Hv
第1皮膜のビッカース硬度Hvは、圧延用ワークロールの作製段階において、ビッカース硬度計(アカシ社製 AVK−CII)を用いて測定した。なお、圧延用ワークロールの軸に直交する方向でのビッカース硬度Hvは同一であるため、圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点を測定し、その平均値を第1皮膜のビッカース硬度Hvとした。
【0037】
(2)第1皮膜の平均膜厚
第1皮膜の膜厚は、圧延用ワークロールの作製段階において、電磁膜厚計(ミツトヨ社製 NEO−DERM DGE−700)を用いて測定した。なお、圧延用ワークロールの軸に直交する方向での膜厚は同一であるため、圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点を測定し、その平均値を第1皮膜の平均膜厚とした。
【0038】
(3)第2皮膜の平均膜厚
第2皮膜の膜厚は、以下のようにして測定した。
1.圧延前の圧延用ワークロールの胴部表面に付着した油分をヘキサンで洗浄する。
2.水酸化ナトリウム溶液を含ませた脱脂綿で一定面積(25mm×25mm)の第2皮膜を拭き取る。
3.前記コーティングを拭き取った脱脂綿を原子吸光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ社製 AA−880型)にかけ、含有されるAl量を定量化する。
4.定量化されたAl量および第2皮膜の除去面積より第2皮膜の膜厚を求める。この際、第2皮膜は、主としてAlにより形成されているとした(比重=2.7)。
5.前記1.〜4.の操作を圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点について行い、その平均値を第2皮膜の平均膜厚とした。
【0039】
(4)第2皮膜の算術平均粗さRa
小型表面粗さ測定機 (ミツトヨ社製 サーフテスト SJ−301)により、圧延用ワークロールの胴部最表面について、JIS B0601−1994に基づいて、ロール軸方向に算術平均粗さRaを測定した。なお、測定は圧延用ワークロールの胴部表面においてロールコーティング層が形成された胴部中心部、両端部の3点について行い、その平均値を算術平均粗さRaとした。
【0040】
前記各条件下で25本圧延加工した後の圧延用ワークロールについて、ロール軸方向の算術平均粗さRaを測定し、更に25本目(3004合金)の加工後のアルミニウム合金板の表面状態を目視観察した。結果を表2に示す。
なお、表面状態は、目視により微細な疵、ピット等が見られたものを不良品として「×」、全く欠陥等が見られなかったものを良品として「○」とした。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示すように実施例No.1〜7はいずれの条件も本発明の特許請求の範囲内とした結果、No1〜5については圧延後のロール軸方向での算術平均粗さRaの低化が少なく、また、No.6および7についても、前記算術平均粗さRaの低化は見られるものの、圧延後の前記算術平均粗さRa値が極端に小さい値とならないことから、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となり、更に、表面状態も全て「○」であることから、表面品質に優れたアルミニウム合金板が得られた。
【0043】
一方、比較例No.8〜15はいずれも本発明の特許請求の範囲から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されている。このうち、比較例No.8については、圧延用ワークロールの胴部表面に前記第1皮膜が形成されていない圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。また比較例No.9および10については前記第1皮膜の硬度が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。更に、比較例No.11については前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。
【0044】
また、比較例No.12については、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されており、比較例No.13および14については、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用い、かつ、ブラシロールを使用しないで圧延されている。更に、比較例No.15では前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れ、かつ、前記算術平均粗さRaが、本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。
【0045】
まず、圧延用ワークロールの胴部表面に前記第1皮膜が形成されていない圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.8、前記第1皮膜の硬度が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.9、10および前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたNo.11では、圧延用ワークロールが耐摩耗性に劣るため、圧延後の前記算術平均粗さRaが極端に低下しており、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態も悪化している(「×」)。
【0046】
また、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.12では、圧延加工時に圧延荷重が増大するため、アルミニウム合金板と圧延用ワークロールの胴部表面との接触による金属摩耗が発生し、圧延後の前記算術平均粗さRaが極端に低下している。また、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態も悪化している(「×」)。
【0047】
また、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用い、かつ、ブラシロールを使用せずに圧延された比較例No.13および14については、圧延用ワークロールの胴部表面から脱落した第2皮膜の一部が、アルミニウム合金板の表面を傷つけることによって、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態が悪化している(「×」)。
【0048】
更に、前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れ、かつ、前記算術平均粗さRaが、本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.15では、圧延用ワークロールの胴部表面に形成されたロール目が、アルミニウム合金板表面に転写され、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態が悪化している(「×」)。また、圧延後の前記算術平均粗さRaも極端に低下している。
【0049】
以上のように、実施例No.1〜7では、第1皮膜の種類、ビッカース硬度Hv、第1皮膜の膜厚、第2皮膜の膜厚および前記算術平均粗さRaを本発明の条件範囲内に制御し、更に、Al2O3微粒子が分散されたブラシを用いて、第2皮膜のロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することにより、圧延用ワークロールの長寿命化およびアルミニウム合金板の表面品質の向上が可能となった。
しかし、本発明の条件を満たさない比較例No.8〜15では、アルミニウム合金板の表面状態の悪化が見られ(「×」)、更に、比較例No.8〜12および15については圧延後の前記算術平均粗さRaも極端に低下している。
【0050】
なお、本実施例では、熱間圧延に本発明を適用した場合について述べたが、冷間圧延用として用いても同様な効果を得ることができる。
また、本実施例ではナイロン又はPBT製ブラシにAl2O3微粒子が分散されたものを用いたが、SiC微粒子を分散させた場合にも同様な効果が得られた。
更に、本実施例では、本発明の圧延用ワークロールを4タンデム圧延機の最後段に取り付け、圧延前のアルミニウム合金板厚が30mmの3004合金板および5182合金板を圧延する場合について述べたが、圧延機の種類、前記圧延用ワークロールの取り付け位置、アルミニウム合金板厚又はアルミニウム合金の種類を適宜変更して行っても同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第2実施例)
鋳鍛鋼(SKD−12)製ロールの胴部表面に、平均膜厚5μmの硬質Cr皮膜(Hv=500)からなる第1皮膜を形成し、3004合金について第1実施例と同様な圧延機により熱間圧延を行った。
なお、第1実施例と同様に、本実施例の圧延前に前通し材を圧延し、前通し材の板材成分をロールコーティングさせることにより平均膜厚0.2μmの第2皮膜を形成した。更に、第1実施例と同様に、圧延加工時の第2皮膜の膜厚を0.2μmに制御するため、ブラシロールの回転数を調整しながら圧延した。
表3に、前記圧延用ワークロールを用いた場合の圧延本数と前記圧延用ワークロールの胴部最表面における算術平均粗さRaの推移を比較例と共に示す。なお、圧延加工前において、前記算術平均粗さRaは、1.25μmであった。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、本発明の条件を満たす実施例No.16では、第2皮膜の膜厚を本発明の特許請求の範囲内とし、更にブラシロールにより適切に膜厚を制御することにより、前記算術平均粗さRaの低下が少なく、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となった。また、圧延本数100本目においても、圧延板の表面には疵がなく良好な表面品質であった。
【0054】
しかし、本発明の特許請求の範囲から外れた比較例No.17では、圧延加工前に圧延用ワークロールの胴部表面にロールコーティング層が形成されていないため、圧延本数に対する前記算術平均粗さRaの減少割合が非常に大きく、圧延用ワークロールの寿命が実施例の場合と比較して1/3以下となった。また、ブラシロールを使用しないで圧延した比較例No.18では、ロールコーティング状態を適切に制御することができないため、圧延用ワークロールの寿命が実施例の場合と比較して1/10以下となった。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、圧延用ワークロールの胴部表面に請求項1乃至3のような皮膜を形成することにより、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質の向上が可能となる。
更に、請求項4のような製造方法とすることにより、第2皮膜のロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することが可能となるため、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質を向上させ得る製造方法を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延工程箇所の概略図である。
【図2】圧延用ワークロールにおける表層部の断面拡大図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板材
2 圧延用ワークロール
3 バックアップロール
4 ブラシロール
5 ロール本体
6 第1皮膜
7 第2皮膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材の圧延に使用する圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、アルミニウム板又はアルミニウム合金板(以下製品とする)は、所望の組成を溶解、鋳造してスラブを作製し、続いて、このスラブを均質化熱処理した後、熱間圧延にて圧延板(以下アルミニウム板材とする)を作製し、更に、冷間圧延工程を経て作製される。この際、必要に応じて、熱間圧延後又は冷間圧延の途中で熱処理が加わる場合もある。
【0003】
前記熱間圧延および冷間圧延工程では、アルミニウム板材に対してすり疵や圧痕等の表面疵を発生させず、更に、生産性を高めるため熱間圧延および冷間圧延に用いられる圧延用ワークロールを如何に長持ち(長寿命化)させるかが重要である。このため、アルミニウム板材を圧延するための圧延用ワークロールには、通常、鋳鍛鋼(例えば、SKD−12)が使用されている。
【0004】
しかし、アルミニウム合金の中では比較的硬度の高い5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金からなるアルミニウム板材等を多数圧延した場合、特に、熱間圧延では、圧延用ワークロールの胴部表面の表面粗さが低下することにより、ロールの噛み込み不良(熱間粗圧延又は仕上げ圧延において、ロールバイト内へアルミニウム板材が進行しない現象)やロールスリップ(圧延中のアルミニウム板材と圧延用ワークロールの胴部表面の間の拘束力が低下し、圧延板速度が周速に追従しなくなるため、速度・張力・荷重等の圧延条件が不安定となる現象)といった問題が生じる。
【0005】
更に、熱間圧延又は冷間圧延する際、圧延用ワークロールの胴部表面上には、ワークロールとアルミニウム板材の表面層が高温・高圧下で溶着することで、アルミニウムおよびその酸化物等からなる薄膜(以下、ロールコーティング層と称する)が形成される。その結果、このロールコーティング層と、アルミニウム板材が接触しながら圧延されることとなり、ロールコーティング層の性状・膜厚によっては、アルミニウム板材の表面に微小な欠陥を形成させるといった問題が発生する。また、特に、冷間圧延では、アルミニウム板材がそのまま製品となるため、表面の微細な欠陥が重大な問題となる。このような問題を解決するため、下記のような対策が立てられてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、圧延用ワークロールの胴部表面に、厚さ5μm以上の耐摩耗性に優れた硬質Crメッキを施した熱間圧延用ワークロールが提案されている。この技術によれば、ロール面粗度が低下し難いため、噛み込み不良等が防止され、ロールの長寿命化、更には、製品の表面品質を向上させることができる。
【0007】
また、例えば、特許文献2には、圧延用ワークロールに対して、ブラシロールを設置し、前記圧延用ワークロールを前記ブラシロールに接触させつつ回転せしめることにより、前記圧延用ワークロール表面に固着したロールコーティング層を前記ブラシロールにて除去し得る、アルミニウム板材の圧延方法が開示されている。この技術によれば、アルミニウム板材とロールコーティング層との接触による微小欠陥の発生を防止できる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−211902号公報(第2頁左欄 4〜9行)
【特許文献2】
特開平9−57313号公報(段落番号[0007]〜[0008])
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示すように圧延用ワークロールの胴部表面に、厚さ5μm以上の硬質Crメッキを施した圧延用ワークロールを用いた場合においても、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら熱間圧延又は冷間圧延した場合には、ロール面粗度の低下や、噛み込み不良等が発生し、圧延用ワークロールの寿命がバラツク又は、製品の表面に微小な疵が形成されるといった問題が発生した。
【0010】
また、特許文献2に示す方法を用いた場合も、前記ロールコーティング層の過剰除去により、圧延用ワークロール表面の面粗度が低下することで、噛み込み不良やロールスリップが生じ、特許文献1と同様な問題が発生した。
更に、このような問題を解決するため、圧延用ワークロールの交換(取り外し→水冷→胴部表面の研磨→取り付け)を必要とし、その交換に長時間(およそ8〜12時間)を要することとなり、生産性が大きく低下するといった問題が生じた。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら圧延した場合や、ブラシロールを使用した場合においても、圧延用ワークロールの長寿命化が可能であり、更に、製品の表面品質を向上させることができる圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究実験を重ねた結果、圧延用ワークロールの胴部の表面に形成する皮膜の種類、ビッカース硬度および膜厚、更には、圧延用ワークロールの胴部最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaを最適な条件範囲に制御することにより、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質の向上が可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明の要旨は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材を圧延するための圧延用ワークロールであって、ロール本体の胴部表面に、ビッカース硬度Hvが500以上、平均膜厚が1乃至20μmの第1皮膜と、この第1皮膜表面に平均膜厚が0.05乃至0.5μmで、アルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む第2皮膜とを備え、かつ、前記第2皮膜の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmであることを特徴とする圧延用ワークロールにある。
【0014】
請求項1のような第1皮膜を形成することにより、圧延用ワークロールの耐摩耗性が向上し、長寿命化が可能となる。更に請求項1のような第2皮膜を形成することにより、圧延板表面の微小欠陥の発生を抑えることが可能となり、表面品質の優れた製品を得ることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明の要旨は、前記第1皮膜が、Ni又はCrを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の圧延用ワークロールにある。
請求項2のような皮膜構成を採ることで、圧延用ワークロールの耐摩耗性が向上し、ロールの長寿命化が可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明の要旨は、前記第2皮膜が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる前通し材を圧延することにより形成された、前通し材成分からなるロールコーティング層であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の圧延用ワークロールにある。
請求項3のように皮膜を形成することで、新たに設備投資をすることなく、既存の設備で所望の皮膜形成が可能となり、また、圧延加工と同時に皮膜を形成するため、生産性の低下を防ぐこともできる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明の要旨は、請求項1乃至請求項3に記載の圧延用ワークロールを用いてアルミニウム板材を圧延する圧延方法であって、ナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなると共に、Al2O3又はSiC微粒子を含む回転自在なブラシを、前記圧延用ワークロールの胴部表面に接触させながら圧延することを特徴とするアルミニウム板材の圧延方法にある。
請求項4のように圧延することで、ロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することが可能となるため、表面品質の優れた製品を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る圧延用ワークロールおよびこれを用いた圧延方法における実施の形態について説明する。
本発明の圧延用ワークロールはアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材を、熱間圧延又は冷間圧延するための圧延機に使用される。前記アルミニウム板材の種類は特に限定されず、例えば、1000系の純アルミニウム、3000系のAl−Mn合金又は5000系のAl−Mg合金等からなるものである。
【0019】
また、前記圧延機についても特に限定されず、例えば、2段圧延機、バックアップロールが設置された4段圧延機又はそれらを2機以上連続して設置したタンデム圧延機等に使用される。図1は前記圧延用ワークロールが用いられるアルミニウム板材の圧延機の一例を示すものである。アルミニウム板材の圧延は、図1に示すように、アルミニウム板材1が、1対の圧延用ワークロール2、2間に供給されて、所定の圧下率にて圧延されることにより行われる。ここで、本発明の圧延用ワークロールは、図2(図1のA部の拡大図)に示すようなロール本体5の胴部表面に、第1皮膜6および第2皮膜7を有している。
【0020】
ロール本体5は、一般的なロール、例えば鋳鍛鋼製ロール等が使用される。また、第1皮膜6は、このロール本体5の胴部表面に、電解メッキ法等により得られるCr皮膜等を形成することにより得られる。なお、耐摩耗性を向上させるため、第1皮膜の成分には、Ni又はCrが含まれていると都合が良い。
更に、第1皮膜6はビッカース硬度Hvが500以上、かつ、平均膜厚が1乃至20μmに限定されている。このように皮膜特性を限定した理由について以下に説明する。
【0021】
[第1皮膜6のビッカース硬度Hvを500以上に限定した理由]
第1皮膜6のビッカース硬度Hvが500以上である場合は、圧延用ワークロールの耐磨耗性が優れているため、アルミニウム板材の組み合わせを種々変更しながら熱間圧延又は冷間圧延した場合にもロール面粗度が低下し難いため、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となる。
一方、第1皮膜6のビッカース硬度Hvが500未満である場合は、耐磨耗性に劣るため、圧延用ワークロールの長寿命化を達成することができない。
従って、前記第1皮膜6のビッカース硬度Hvは500以上とする。
【0022】
なお、ビッカース硬度Hvが500以上の第1皮膜としては、以下のようなものがあるが、本発明はこれらに限られるものではない。
例1)電解メッキ法により形成されるCr、Ni−Cr、Ni−P等の皮膜。
例2)無電解メッキ法により形成されるNi−P等の皮膜。
例3)溶射法により形成されるCr炭化物、Ni−Cr、WC等又はこれらの組み合わせにより構成される皮膜。
【0023】
[第1皮膜6の平均膜厚を1乃至20μmに限定した理由]
第1皮膜6の平均膜厚が1μm未満の場合は、第1皮膜6をロール本体5の胴部表面に均一に形成することが難しく、ロール本体5の素地が十分に覆われないため耐磨耗性においても向上が見られない。
一方、20μmを超える第1皮膜6の形成は、それ以上に耐磨耗性の向上が見られず、更に、圧延加工時に、皮膜の部分的な剥離又は割れといった問題を引き起こす可能性もあり、コスト的にも無駄である。
従って、第1皮膜6の平均膜厚は1乃至20μmとする。
【0024】
次に、前記第1皮膜6上に形成される第2皮膜7について説明する。第2皮膜7はアルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む皮膜で、例えば、圧延前に前通し材(アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材)を圧延し、熱によって、前通し材の成分を第1皮膜上に溶着させ、第1皮膜を前通し材成分でロールコーティングすることによって得られる。
【0025】
なお、第2皮膜7は、アルミニウムおよびその酸化物以外のものが含まれていても良い。例えば、Al−Mg合金を圧延した場合は、アルミニウムおよびその酸化物以外にも、マグネシウムおよびその酸化物等がロールコーティングされ、これを第2皮膜7として用いても良い。
更に、第2皮膜7の形成法は前記した前通し材成分のロールコーティングによる方法に限られず、例えば、メッキ法や溶射法で皮膜を形成しても良い。
また、第2皮膜7は平均膜厚が0.05乃至0.5μm、かつ、第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmに限定されている。このように皮膜特性を限定した理由について以下に説明する。
【0026】
[第2皮膜7の平均膜厚を0.05乃至0.5μmに限定した理由]
第2皮膜7はアルミニウム板材に接触するため、表面状態は、製品の表面品質に大きく影響を与える。つまりは、第2皮膜7を最適な状態に制御することは、製品の表面性状を決める上で非常に重要であると言える。
【0027】
ここで、第2皮膜7の平均膜厚が0.5μmを超えると、第2皮膜7の一部が圧延用ワークロールの胴部表面からアルミニウム板材の表面上に脱落し、製品の表面欠陥に繋がる可能性がある。
また、第2皮膜7は、圧延用ワークロールの胴部表面にできるだけ薄く均一に形成することが好ましいが、0.05μm未満になると圧延加工時に、噛み込み不良、ロールスリップ又は圧延荷重の増加等の問題が生じる。
従って、第2皮膜7の平均膜厚は0.05乃至0.5μmとする。
【0028】
[第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaを0.1乃至2.0μmに限定した理由]
第2皮膜7の最表面における算術平均粗さRaが0.1μm未満になると、噛み込み不良やロールスリップ等を生じ易くなる。
また、第2皮膜7の表面とアルミニウム板材表面との間で金属凝着の発生比率が高くなり、焼き付きによる表面異常が発生し易くなる。
一方、前記算術平均粗さRaが2.0μmを超えると、第2皮膜7の表面に形成されたロール目が、アルミニウム板材表面に転写され、製品表面に悪影響を与える。
従って、第2皮膜7の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaは、0.1乃至2.0μmとする。
【0029】
続いて、本発明の圧延用ワークロールを用いたアルミニウム板材の圧延方法であって、圧延中における前記第2皮膜7の膜厚を制御することができる圧延方法について説明する。圧延加工中は、熱によって、前記したようにアルミニウム板材成分が圧延用ワークロールに溶着して、この圧延用ワークロールの胴部表面にアルミニウム板材成分がロールコーティングされる。このため、圧延と同時に余分なロールコーティング層を除去し、前記第2皮膜7の膜厚を均一化する必要がある。
【0030】
本発明では、図1に示すように、ブラシロール4、4が圧延用ワークロール2、2に対して、軸平行的に設置され、圧延時に前記ブラシロール4、4を図1に示すような方向に回転させつつ、前記圧延用ワークロール2、2に接触させることにより、前記圧延用ワークロール2、2表面のロールコーティング層の膜厚を均一化することが可能となる。その際、ブラシロール4、4の位置は、圧延用ワークロール2、2に接触する位置に設置しても良いし、圧延用ワークロールから離れた位置に設置し、圧延時にブラシロールを押し付ける事により圧延用ワークロールに接触させても良い。
【0031】
また、前記ブラシロール4、4には、均一な研磨を目的として、ナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなると共に、Al2O3又はSiC微粒子を含むブラシを使用している。
更に、前記第2皮膜7の平均膜厚を0.05乃至0.5μmに制御するためには、予め種々のアルミニウム合金を圧延加工した場合についてロールコーティング層の膜厚を求め、ブラシ回転数とロールコーティング層の除去膜厚の関係を求めておけば良い。
【0032】
なお、ブラシの材質にナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用しても、圧延用ワークロール、バックアップロールおよびブラシロールをクーラント等により冷却すれば、熱間圧延の場合でも問題なく、使用可能である。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、特許請求の範囲から外れる比較例を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(第1実施例)
鋳鍛鋼(SKD−12)製ロールを用いて、表1に示す皮膜構成を持った圧延用ワークロールを作製した。これを熱間仕上げ圧延機に取り付け、以下の条件で繰り返し圧延を行った。なお、第2皮膜は、圧延前に前通し材を圧延することによって形成し、更に、圧延加工時の第2皮膜の膜厚を制御するため、ブラシロールの回転数を調整しながら圧延した。
【0034】
<条件>
圧延機:4タンデム圧延機
圧延用ワークロール:4タンデム圧延機の最後段に取り付けた。
ロール径:700mm
ロール胴長:2900mm
潤滑油:エマルジョン系
ブラシ:ナイロン又はPBT製(Al2O3微粒子が分散して埋め込まれている。)
ブラシロール位置:圧延用ワークロールの中央部から1mm離して設置した。なお、圧延時にはブラシロールの両端を押し付ける事により圧延用ワークロールに接触させている。
圧延加工:3004合金および5182合金を下記条件にて圧延した。圧延は、3004合金→5182合金の順に交互に繰返し行い、合計25本圧延した(最終は3004合金)。
(1)3004合金
入側板厚:30mm(4タンデム圧延機の最前段入側)
出側板厚:2.0mm
圧延板:1500m/本
(2)5182合金
入側板厚:30mm(4タンデム圧延機の最前段入側)
出側板厚:3.3mm
圧延板:1500m/本
【0035】
【表1】
【0036】
皮膜の特性については、以下の方法により評価した。
(1)第1皮膜のビッカース硬度Hv
第1皮膜のビッカース硬度Hvは、圧延用ワークロールの作製段階において、ビッカース硬度計(アカシ社製 AVK−CII)を用いて測定した。なお、圧延用ワークロールの軸に直交する方向でのビッカース硬度Hvは同一であるため、圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点を測定し、その平均値を第1皮膜のビッカース硬度Hvとした。
【0037】
(2)第1皮膜の平均膜厚
第1皮膜の膜厚は、圧延用ワークロールの作製段階において、電磁膜厚計(ミツトヨ社製 NEO−DERM DGE−700)を用いて測定した。なお、圧延用ワークロールの軸に直交する方向での膜厚は同一であるため、圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点を測定し、その平均値を第1皮膜の平均膜厚とした。
【0038】
(3)第2皮膜の平均膜厚
第2皮膜の膜厚は、以下のようにして測定した。
1.圧延前の圧延用ワークロールの胴部表面に付着した油分をヘキサンで洗浄する。
2.水酸化ナトリウム溶液を含ませた脱脂綿で一定面積(25mm×25mm)の第2皮膜を拭き取る。
3.前記コーティングを拭き取った脱脂綿を原子吸光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ社製 AA−880型)にかけ、含有されるAl量を定量化する。
4.定量化されたAl量および第2皮膜の除去面積より第2皮膜の膜厚を求める。この際、第2皮膜は、主としてAlにより形成されているとした(比重=2.7)。
5.前記1.〜4.の操作を圧延用ワークロールの胴部中心部、両端部の3点について行い、その平均値を第2皮膜の平均膜厚とした。
【0039】
(4)第2皮膜の算術平均粗さRa
小型表面粗さ測定機 (ミツトヨ社製 サーフテスト SJ−301)により、圧延用ワークロールの胴部最表面について、JIS B0601−1994に基づいて、ロール軸方向に算術平均粗さRaを測定した。なお、測定は圧延用ワークロールの胴部表面においてロールコーティング層が形成された胴部中心部、両端部の3点について行い、その平均値を算術平均粗さRaとした。
【0040】
前記各条件下で25本圧延加工した後の圧延用ワークロールについて、ロール軸方向の算術平均粗さRaを測定し、更に25本目(3004合金)の加工後のアルミニウム合金板の表面状態を目視観察した。結果を表2に示す。
なお、表面状態は、目視により微細な疵、ピット等が見られたものを不良品として「×」、全く欠陥等が見られなかったものを良品として「○」とした。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示すように実施例No.1〜7はいずれの条件も本発明の特許請求の範囲内とした結果、No1〜5については圧延後のロール軸方向での算術平均粗さRaの低化が少なく、また、No.6および7についても、前記算術平均粗さRaの低化は見られるものの、圧延後の前記算術平均粗さRa値が極端に小さい値とならないことから、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となり、更に、表面状態も全て「○」であることから、表面品質に優れたアルミニウム合金板が得られた。
【0043】
一方、比較例No.8〜15はいずれも本発明の特許請求の範囲から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されている。このうち、比較例No.8については、圧延用ワークロールの胴部表面に前記第1皮膜が形成されていない圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。また比較例No.9および10については前記第1皮膜の硬度が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。更に、比較例No.11については前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。
【0044】
また、比較例No.12については、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されており、比較例No.13および14については、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用い、かつ、ブラシロールを使用しないで圧延されている。更に、比較例No.15では前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れ、かつ、前記算術平均粗さRaが、本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたものである。
【0045】
まず、圧延用ワークロールの胴部表面に前記第1皮膜が形成されていない圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.8、前記第1皮膜の硬度が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.9、10および前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延されたNo.11では、圧延用ワークロールが耐摩耗性に劣るため、圧延後の前記算術平均粗さRaが極端に低下しており、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態も悪化している(「×」)。
【0046】
また、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.12では、圧延加工時に圧延荷重が増大するため、アルミニウム合金板と圧延用ワークロールの胴部表面との接触による金属摩耗が発生し、圧延後の前記算術平均粗さRaが極端に低下している。また、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態も悪化している(「×」)。
【0047】
また、前記第2皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用い、かつ、ブラシロールを使用せずに圧延された比較例No.13および14については、圧延用ワークロールの胴部表面から脱落した第2皮膜の一部が、アルミニウム合金板の表面を傷つけることによって、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態が悪化している(「×」)。
【0048】
更に、前記第1皮膜の膜厚が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れ、かつ、前記算術平均粗さRaが、本発明で規制する数値範囲の上限値から外れた圧延用ワークロールを用いて圧延された比較例No.15では、圧延用ワークロールの胴部表面に形成されたロール目が、アルミニウム合金板表面に転写され、圧延後のアルミニウム合金板の表面状態が悪化している(「×」)。また、圧延後の前記算術平均粗さRaも極端に低下している。
【0049】
以上のように、実施例No.1〜7では、第1皮膜の種類、ビッカース硬度Hv、第1皮膜の膜厚、第2皮膜の膜厚および前記算術平均粗さRaを本発明の条件範囲内に制御し、更に、Al2O3微粒子が分散されたブラシを用いて、第2皮膜のロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することにより、圧延用ワークロールの長寿命化およびアルミニウム合金板の表面品質の向上が可能となった。
しかし、本発明の条件を満たさない比較例No.8〜15では、アルミニウム合金板の表面状態の悪化が見られ(「×」)、更に、比較例No.8〜12および15については圧延後の前記算術平均粗さRaも極端に低下している。
【0050】
なお、本実施例では、熱間圧延に本発明を適用した場合について述べたが、冷間圧延用として用いても同様な効果を得ることができる。
また、本実施例ではナイロン又はPBT製ブラシにAl2O3微粒子が分散されたものを用いたが、SiC微粒子を分散させた場合にも同様な効果が得られた。
更に、本実施例では、本発明の圧延用ワークロールを4タンデム圧延機の最後段に取り付け、圧延前のアルミニウム合金板厚が30mmの3004合金板および5182合金板を圧延する場合について述べたが、圧延機の種類、前記圧延用ワークロールの取り付け位置、アルミニウム合金板厚又はアルミニウム合金の種類を適宜変更して行っても同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第2実施例)
鋳鍛鋼(SKD−12)製ロールの胴部表面に、平均膜厚5μmの硬質Cr皮膜(Hv=500)からなる第1皮膜を形成し、3004合金について第1実施例と同様な圧延機により熱間圧延を行った。
なお、第1実施例と同様に、本実施例の圧延前に前通し材を圧延し、前通し材の板材成分をロールコーティングさせることにより平均膜厚0.2μmの第2皮膜を形成した。更に、第1実施例と同様に、圧延加工時の第2皮膜の膜厚を0.2μmに制御するため、ブラシロールの回転数を調整しながら圧延した。
表3に、前記圧延用ワークロールを用いた場合の圧延本数と前記圧延用ワークロールの胴部最表面における算術平均粗さRaの推移を比較例と共に示す。なお、圧延加工前において、前記算術平均粗さRaは、1.25μmであった。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、本発明の条件を満たす実施例No.16では、第2皮膜の膜厚を本発明の特許請求の範囲内とし、更にブラシロールにより適切に膜厚を制御することにより、前記算術平均粗さRaの低下が少なく、圧延用ワークロールの長寿命化が可能となった。また、圧延本数100本目においても、圧延板の表面には疵がなく良好な表面品質であった。
【0054】
しかし、本発明の特許請求の範囲から外れた比較例No.17では、圧延加工前に圧延用ワークロールの胴部表面にロールコーティング層が形成されていないため、圧延本数に対する前記算術平均粗さRaの減少割合が非常に大きく、圧延用ワークロールの寿命が実施例の場合と比較して1/3以下となった。また、ブラシロールを使用しないで圧延した比較例No.18では、ロールコーティング状態を適切に制御することができないため、圧延用ワークロールの寿命が実施例の場合と比較して1/10以下となった。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、圧延用ワークロールの胴部表面に請求項1乃至3のような皮膜を形成することにより、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質の向上が可能となる。
更に、請求項4のような製造方法とすることにより、第2皮膜のロールコーティング状態を最適な条件範囲に制御することが可能となるため、圧延用ワークロールの長寿命化および製品の表面品質を向上させ得る製造方法を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延工程箇所の概略図である。
【図2】圧延用ワークロールにおける表層部の断面拡大図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板材
2 圧延用ワークロール
3 バックアップロール
4 ブラシロール
5 ロール本体
6 第1皮膜
7 第2皮膜
Claims (4)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材を圧延するための圧延用ワークロールであって、
ロール本体の胴部表面に、ビッカース硬度Hvが500以上、平均膜厚が1乃至20μmの第1皮膜と、
この第1皮膜表面に平均膜厚が0.05乃至0.5μmで、アルミニウムおよびその酸化物を少なくとも含む第2皮膜とを備え、かつ、
前記第2皮膜の最表面におけるロール軸方向での算術平均粗さRaが0.1乃至2.0μmであることを特徴とする圧延用ワークロール。 - 前記第1皮膜が、Ni又はCrを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の圧延用ワークロール。
- 前記第2皮膜が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる前通し材を圧延することにより形成された、前通し材成分からなるロールコーティング層であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の圧延用ワークロール。
- 請求項1乃至請求項3に記載の圧延用ワークロールを用いてアルミニウム板材を圧延する圧延方法であって、ナイロン又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなると共に、Al2O3又はSiC微粒子を含む回転自在なブラシを、前記圧延用ワークロールの胴部表面に接触させながら圧延することを特徴とするアルミニウム板材の圧延方法。
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2003
- 2003-04-24 JP JP2003120458A patent/JP2004322153A/ja active Pending
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