JP4087505B2 - 椅子の肘掛け装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、座る人の体型や作業内容にあわせて、座体に対する肘当ての配置を変更しうるようにした、椅子の肘掛け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
座体に対する肘当ての位置を左右方向に変更できるようにした椅子の肘掛け装置としては、例えば特開平8−24079号公報等に記載されているようなものがある。
また、特開平9−313301号公報に記載されている肘掛け装置では、肘当ての前部を左右方向に回動させたり、前後方向に移動させたりすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術では、肘当ての移動範囲が、ほぼ肘当ての幅寸法の範囲内に制限されており、肘掛け支柱に対して肘当てを大きな移動距離で移動させて使用することができない。
また、前者の従来技術では、肘掛けを左右方向に移動できるだけであるので、座者の体型に合わせる調節は可能であるが、例えばパーソナルコンピュータのキーボードまたはマウスを操作するのに都合のよいように、肘掛けの長手方向の向きを変えることはできない。
後者の従来技術では、肘当てを前進させると、肘当ては、予め定められた軌跡に沿って、前部が斜め内方を向くように、長手方向の向きが規制され、任意の向きに変更することができず、肘当ての水平方向の角度及び左右方向の位置の自由な設定が制約されている。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑み、肘掛けの位置及び向きを、肘掛けの使用目的に応じて自由に変更できるようにした椅子の肘掛け装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
( ) 座体の側部より起立する肘掛け支柱の頂部に、ほぼ水平の肘当て支持体の基端部を第1の垂直軸をもって枢着し、かつ前記肘当て支持体の先端部に、肘当てを第2の垂直軸をもって枢着することにより、前記肘当てを、第1の垂直軸を中心として水平方向にクランク運動しうるように支持するとともに、前記第1の垂直軸に嵌合されて肘掛け支柱と一体をなす第1の筒体と、前記第2の垂直軸に回動可能に嵌合された、変形フランジ部を有する第2の筒体とを、肘当て支持体に対して同期回転するように連係手段をもって連係し、肘当て支持体が第1の垂直軸まわりに回転しても、第2の筒体の変形フランジ部が、常に同一方向を向くように維持し、さらに、前記第2の筒体の変形フランジ部を、肘当ての下面に設けた窪みに、第2の垂直軸まわりに所要角度だけ相対回動可能として嵌合する。
【0006】
(2) 上記 ( ) 項において、肘当て支持体に対する肘当ての移動に抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設ける。
【0007】
(3) 上記( )項において、抵抗力付与手段が、第2の筒体の変形フランジ部に設けられた突起と、この突起が選択的に弾性係合するようにした、肘当てに設けられた複数の係合孔とを備えるものとする。
【0008】
(4) 上記( ) ( ) 項のいずれかにおいて、肘掛け支柱に対する肘当て支持体の移動に抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設ける。
【0009】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、肘掛け支柱に対する肘当て支持体の移動を阻止するとともに、肘当て支持体に対する肘当ての移動を阻止するロック手段を設ける。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用した椅子(A)の側面図であり、この椅子では、座体(1)の左右両側に高さ調節式とした肘掛け装置(2)が設けられている。
各肘掛け装置(2)の肘当て(3)は、操作ボタン(4)を押してロックを解除することにより、左右方向に移動調節することができるとともに、長手方向の向きを変更できるようになっている。
【0011】
肘当てをこのように移動できるようにするための具体的な構造の一例、すなわち本発明の肘掛け装置の第1の実施形態(請求項1〜3、及び5記載の発明の実施形態)を、図3〜図8を参照して説明する。
図3及び図4に示すように、高さ調節可能とした(その具体的な高さ調節機構は、本発明に直接関係しないので、その詳細な説明は省略する。)肘掛け支柱(5)の頂面には、筒体すなわち平歯車(6)が、ボルトすなわち第1の垂直軸(7)により固着されている。
前後方向を向くほぼ水平の肘当て支持体(8)は、その基端部である後部に形成した円形の下向き突出部(8a)を、肘掛け支柱(5)の円形の上端部に滑動可能に外嵌し、かつ上記の固定の平歯車(6)により上方へ抜け止めされることにより、第1の垂直軸(7)を中心として水平方向に360°回転可能として、肘掛け支柱(5)の上端部に装着されている。
【0012】
肘当て支持体(8)の先端部すなわち前部には、上方に突出する第2の垂直軸(9)が一体に形成されており、第2の垂直軸(9)には、上部に変形フランジ部(10a)を有する筒体(10)が回動可能に嵌合されている。
肘当て支持体(8)は、その下方から第2の垂直軸(9)の中心を貫くボルト(11)により、肘当て(3)の下面に、ボルト(11)を中心とする第2の垂直軸(9)の回動、従って第2の垂直軸(9)と肘当て(3)との間の回動を許容するように結合されている。
【0013】
筒体(10)の外周面には、平歯車(10b)が刻設されており、この平歯車(10b)と前述の固定の平歯車(6)との間に、両者に噛み合う平歯車(12)がボルト(13)により肘当て支持体(8)に枢支されている。
固定の平歯車(6)と平歯車(10b)(12)はすべて同一径、同一ピッチのものとしてある。
【0014】
肘当て(3)の下面には、第2の垂直軸(9)付近に2段の窪みが形成されている。第1段目の窪み(14)は、前述の筒体(10)の変形フランジ部(10a)を収容する窪みであり、第2段目の窪み(15)は、ロック手段(16)を収容する窪みである。
【0015】
図5及び図6に示すように、ロック手段(16)は、ロック軸すなわち前述の第2の垂直軸(9)の上端部の外周面に刻設した歯(またはスプラインもしくはセレーション)(9a)と、両側から歯(9a)に噛み合う爪(17a)を有する2個の係止部材(17)と、これらの係止部材(17)の爪(17a)を、第2の垂直軸(9)の歯(9a)に噛み合わせるように付勢する、くの字に屈曲させた左右1対の板ばね(18)と、板ばね(18)の屈曲部に当接するようにして、肘当て(3)の左右に突出するように配設された操作ボタン(4)とからなっている。
【0016】
図7及び図8に示すように、第1段目の窪み(14)に収容されている筒体(10)の変形フランジ部(10a)は、雨滴形または二等辺三角形をなして後方に突出する部分を有し、ここに小さな上向きの突起(20)が形成されている。
他方、窪み(14)は、前後が円弧状をなし、かつ左右の辺が平行をなすほぼ方形をしており、上述の変形フランジ部(10a)の後方に突出する部分が、左右の辺に当接する範囲内で回動できるようになっている。
【0017】
窪み(14)の内壁部には、変形フランジ(10a)の突起(20)に対応する位置に、間隔を隔てて3つの係合孔(21)が穿設されており、これらの係合孔(21)のいずれかに突起(20)が嵌合される。
【0018】
この実施形態は、上述のような構成のものであるので、図6に示すように、まず肘当て(3)の左右両脇の操作ボタン(19)のいずれか一方または両方を押して、板ばね(18)を撓め、係止部材(17)の爪(17a)を第2の垂直軸(9)の外周に形成された歯(9a)から離す。
すると、今まで爪(17a)と歯(9a)との係合により、肘当て(3)は、ロック軸すなわち第1の垂直軸(9)に係止されていたのが、係止が外れて、肘当て支持体(8)の第1の垂直軸(9)を中心として回動できるようになる。
【0019】
この状態で肘当て(3)を左右方向に押動すると、肘当て支持体(8)は第1の垂直軸(7)を中心として回動する。
この時、肘掛け支柱(5)に固着された平歯車(6)の周りに、肘当て支持体(8)に枢着された平歯車(12)が噛み合いながら遊星歯車として回転しつつ肘当て支持体(8)とともに回動し、筒体(10)の平歯車(10b)に、肘掛け支柱(5)に対する肘当て支持体(8)の回転角速度と同一でかつ逆向きの回転を与える。
【0020】
その結果、筒体(10)及びそれに支持された肘当て(3)は、図2に示すように、常に前後方向の向きを保ちつつ、水平方向に両垂直軸(7)(9)間の距離(L)を腕の長さとするクランク運動をすることができる。
【0021】
肘当て支持体(8)を第1の垂直軸(7)を中心として所望の向きまで回動させた後、肘当て(3)を第2の垂直軸(9)を中心として回動させることにより、肘当て(3)の長手方向の向きを左右に変更することができる。
【0022】
すなわち、肘当て(3)は、図7に示すように、筒体(10)の変形フランジ(10a)に設けた突起(20)が、中央の係合孔(21)に係合することにより、常時は前後方向を向くように保持されているが、肘当て(3)に第2の垂直軸(9)を中心とする回転力を付与して、突起(20)を、例えば図8に示すように他の係合孔(21)に係合させることにより、肘当て(3)の長手方向の向きを、外向きまたは内向きとすることができる。
【0023】
肘当て支持体(8)の向き、及び肘当て(3)の向きをそれぞれ上述のようにして所望の向きとした後、操作ボタン(19)から手を離すと、爪(17a)が歯(9a)に係合して、肘当て(3)は、第2の垂直軸(9)及びそれと一体の肘当て支持体(8)に対してロックされる。
また、突起(20)と、係合孔(21)との係合により、筒体(10)が肘当て(3)に対して拘束されることにより、すべての平歯車(10b)(12)(6)の回転が阻止され、肘掛け支柱(5)に対する肘当て支持体(8)の回転も阻止される。
【0024】
図10及び図11は、本発明の第2の実施形態(請求項1〜5記載の発明の実施形態)を示す。
第1の実施形態においては、平歯車(10b)(12)(6)により、第2の垂直軸(9)に枢嵌した筒体(10)と、第1の垂直軸(7)に嵌合され、かつ肘掛け支柱(5)に固着された筒体としての平歯車(6)とを、肘当て支持体(8)に対して同期して回転するように連係する連係手段が形成されているが、第2の実施形態においては、連係手段は、第1の垂直軸(7)であるボルトをもって肘掛け支柱(5)の上端に固着され、かつ外周に多数の縦溝(22a)が等間隔に設けられたプーリ(22)と、第2の垂直軸(9)に枢嵌された筒体(10)の外周に形成され、かつ上記プーリ(22)と同径かつ同様の縦溝(23a)を有するプーリ(23)と、両プーリ(22)(23)に掛け回され、それらの縦溝(22a)(23a)と係合する歯(24a)を内面に有する歯付きベルト(24)とにより形成されている。
【0025】
この第2の実施形態の連係手段によっても、第1の実施形態のものと同様に、第2の垂直軸(9)に枢嵌した筒体(10)と、第1の垂直軸(7)に嵌合されて肘掛け支柱(5)と一体をなす筒体としてのプーリ(22)とを、肘当て支持体(8)に対して同期回転するように連係し、肘当て支持体(8)が第1の垂直軸(7)まわりに回転しても、筒体(10)の変形フランジ部(10a)及び肘当て(3)が、常に前後方向を向くように維持することができる。
【0026】
また、第2の実施形態においては、肘掛け支柱(5)の円形の上端部の外周面に、例えば8〜16個程度の複数の係合孔(25)を等間隔に設け、かつ肘当て支持体(8)の円筒状の下向き突出部(8a)の内面に、上記係合孔(25)に弾性係合する1個または複数個(好ましくは2個)の突起(26)を円周方向に等間隔に設け、この係合孔(25)と突起(26)との弾性係合により、肘掛け支柱(5)に対する肘当て支持体(8)の回転に適度の抵抗力を付与する第1の抵抗力付与手段が形成されている。
【0027】
さらに、第1の実施例におけるのと同様の筒体(10)の変形フランジ部(10a)に設けられた突起(20)と、この突起(20)が選択的に弾性係合するようにした、肘当て(3)に設けられた複数の係合孔(21)とにより、肘当て支持体(8)に対する肘当て(3)の回転に適度の抵抗力を付与する第2の抵抗力付与手段が形成されている。
【0028】
したがって、第2の実施形態においては、第1の実施形態におけるロック手段(16)と同様のものを設けなくても、第1及び第2の抵抗力付与手段により、肘当て支持体(8)及び肘当て(3)を、妄りに移動しないように所望の位置に保持することができる。
【0029】
第1の実施形態におけるロック手段(16)と同様のものを第2の実施形態においても設け、このロック手段と第1及び第2の抵抗力付与手段との両方で肘当て支持体(8)及び肘当て(3)を保持するようにすることもでき、このようにするとそれらの保持はより確実となる。
【0030】
図12及び図13は、ロック手段(16)の変形例を示す。このロック手段(16)は、菱形に形成した板ばね(30)における前後の角部に、第1の実施形態における係止部材(17)の爪(17a)と同様の機能を有する互いに内方を向く爪(30a)を一体的に形成したものよりなっており、第1の実施形態におけるロック手段(16)と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0031】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、肘当てを、側方に移動できるだけでなく、その長手方向の向きを左右方向に振ることができるので、使い勝手がよく、特にパーソナルコンピュータ等のキーボードを操作する際に用いる椅子に適用すると最適である。
【0032】
また、第1の垂直軸と第2の垂直軸との距離を大とすることにより、肘当ての側方移動量を、肘当ての幅寸法に制限されることなく、いくらでも大きくすることができるとともに、肘当ての長手方向の向きを変えることなく、肘当て支持体をクランク運動させて、肘当てを、前後移動を伴って側方に移動させることができ、このときの肘の移動時の感触が頗る良好である。
【0033】
請求項2及び4記載の発明によると、肘当て及び肘当て支持体を妄りに移動することなく、所望の位置に保持することができるとともに、各抵抗力付与手段の抵抗力より若干大きな力で肘当てを押動することにより、その位置及び向きを容易に変更することができる。
【0034】
請求項記載の発明によると、抵抗力付与手段を、簡単な構造とすることができる。
【0035】
請求項5記載の発明によると、肘当ての位置や向きを変更するとき以外は、肘当ての移動を確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の肘掛け装置を備えた椅子の側面図である。
【図2】 図1に示す椅子の平面図で、肘当ての位置の変化を示す図である。
【図3】 本発明の肘掛け装置の第1の実施形態の中央縦断側面図である。
【図4】 図3のIV−IV線に沿う拡大断面図である。
【図5】 図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】 操作ボタンを押し込んだときの、図5と同様な断面図である。
【図7】 図3のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】 肘当ての向きを変えたときの、図7と同様な断面図である。
【図9】 第1の実施形態の分解斜視図である。
【図10】 本発明の第2の実施形態の中央縦断側面図である。
【図11】 図10のXI−XI線に沿う拡大断面図である。
【図12】 ロック手段の変形例を示す、図5と同様な断面図である。
【図13】 操作ボタンを押し込んだときの、図11と同様な断面図である。
【符号の説明】
(A) 椅子
(1) 座体
(2) 肘掛け
(3) 肘当て
(4) 操作ボタン
(5) 肘掛け支柱
(6) 平歯車
(7) ボルト(第1の垂直軸)
(8) 肘当て支持体
(8a) 下向き突出部
(9) 第2の垂直軸(ロック軸)
(9a) 歯
(10) 筒体
(10a) 変形フランジ部
(10b) 平歯車
(11) ボルト
(12) 平歯車
(13) ボルト
(14)(15) 窪み
(16) ロック手段
(17) 係止部材
(17a) 爪
(18) 板ばね
(19) 操作ボタン
(20) 突起
(21) 係合孔
(22)(23) プーリ
(22a)(23a) 縦溝
(24) 歯付きベルト
(24a) 歯
(25) 係合孔
(26) 突起
(30) 板ばね
(30a) 爪

Claims (5)

  1. 座体の側部より起立する肘掛け支柱の頂部に、ほぼ水平の肘当て支持体の基端部を第1の垂直軸をもって枢着し、かつ前記肘当て支持体の先端部に、肘当てを第2の垂直軸をもって枢着することにより、前記肘当てを、第1の垂直軸を中心として水平方向にクランク運動しうるように支持するとともに、前記第1の垂直軸に嵌合されて肘掛け支柱と一体をなす第1の筒体と、前記第2の垂直軸に回動可能に嵌合された、変形フランジ部を有する第2の筒体とを、肘当て支持体に対して同期回転するように連係手段をもって連係し、肘当て支持体が第1の垂直軸まわりに回転しても、第2の筒体の変形フランジ部が、常に同一方向を向くように維持し、さらに、前記第2の筒体の変形フランジ部を、肘当ての下面に設けた窪みに、第2の垂直軸まわりに所要角度だけ相対回動可能として嵌合したことを特徴とする椅子の肘掛け装置。
  2. 肘当て支持体に対する肘当ての移動に抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の椅子の肘掛け装置。
  3. 抵抗力付与手段が、第2の筒体の変形フランジ部に設けられた突起と、この突起が選択的に弾性係合するようにした、肘当てに設けられた複数の係合孔とを備えている請求項記載の椅子の肘掛け装置。
  4. 肘掛け支柱に対する肘当て支持体の移動に抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子の肘掛け装置。
  5. 肘掛け支柱に対する肘当て支持体の移動を阻止するとともに、肘当て支持体に対する肘当ての移動を阻止するロック手段を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の椅子の肘掛け装置。
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