JP4078226B2 - 液体トナー受容性を有するオーバープリント剤およびそれを用いたシート - Google Patents

液体トナー受容性を有するオーバープリント剤およびそれを用いたシート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種シート、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのシート面を被覆保護するとともに、液体トナー受容性を有するオーバーコート層を形成するための水性エマルジョン系オーバープリント剤およびそれを用いたオーバーコート層を有するシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカード類は、その利便性により、身分証明や出納処理など幅広い分野で利用されている。そして、これらのカード類は一般的に、センターコア材と呼ばれる不透明塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる熱可塑性樹脂に透明塩化ビニル樹脂などからなるオーバーシート材を積層してなる定型サイズのカード基材から構成されており、通常、その外表面には所望の印刷などを被覆保護するためのオーバーコート層が設けられている。
【0003】
このように、オーバーコート層はカード面に施された印刷層などを被覆保護するために不可欠であると共に、最近では、このオーバーコート層に高精細で品質のよい印字や画像を形成する要求がある。
通常、高精細で品質のよい印字や画像を印刷する方法としてグラビア印刷が用いられ、またオフセット印刷技術の進歩はオフセット印刷で鮮やかなフルカラー印刷物を得ることを可能にした。しかしながらグラビア印刷方式やオフセット印刷方式は、その製版作業工程に多くの時間と費用が必要であり、大量の印刷物に対しては印刷物1枚当たりのコストは低く抑えられるメリットがあるが、少量の印刷物に対しては対応し難いという問題がある。
【0004】
最近、消費者の要求は多様化してきており同一のものを大量に印刷することから特定のものを少量ずつ印刷する(オンデマンド印刷)傾向が顕著になってきている。そこで注目されているのが、オンデマンド印刷が可能な電子写真法を用いたプラスチックフィルム、紙等に対する画像形成方法である。この方法は衆知のごとく製版工程が不要であるため、少量多品種の印刷物を製造するには最適な方法である。特に、液体トナーを使用した電子写真現像法は粉体トナーを使用した場合と比較して出力画像が高精細で品質が良く、画像品質の面ではグラビア印刷方式、オフセット印刷方式に匹敵するレベルまで達している。さらに紙に対する枚葉出力においては印刷速度など非常に向上してきており、スピードの面でも印刷レベルに近づいている。
しかしながら、液体トナーを使用した場合、液体トナーとの密着性の問題などプリント適性の点から使用できるシート基材としての用紙がコート紙に限定されるため、コストアップになる問題がある。また、用紙選択の自由度がないため、印刷物としての使用範囲は限れたものになっている。
【0005】
本発明者等は、先に、上質紙へ上質紙の性能(筆記性や消しゴムでの消去性など)を保ったまま液体トナーに対する受容性を付与した用紙および塗工液を提案した(例えば、特許文献1〜4参照)。
また、液体トナーと被印刷物であるプラスチックフィルム、シートあるいは紙との密着性向上のため、被印刷物上にエチレン・アクリル酸系樹脂またはポリブタジエン系樹脂を有機溶剤に溶かした塗料を塗布してプライマー層を設け、このプライマー層の上に液体トナーを使用した電子写真現像法により画像を形成する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】
特願2001−398335
【特許文献2】
特願2001−398345
【特許文献3】
特願2001−398347
【特許文献4】
特願2002−16973
【特許文献5】
特開平10−76744号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂成分をトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤に溶かしてなる溶剤系塗料を用いた場合には、シート基材面への塗料の塗布工程において、有機溶剤の高い揮発性によって塗料の重量が急速に変化するため、塗布量を調整するのが難しく塗布適性に不都合が生じる。また、揮発した有機溶剤が人体に悪影響を及ぼしたり、あるいは引火し易いために、塗布工程や、特に乾燥工程において吸引設備や防曝設備などが必要とされる。
また被印刷物上にエチレン・アクリル酸系樹脂またはポリブタジエン系樹脂からなるプライマー層を設ける方法は、形成されたプライマー層の被印刷物との密着性が不十分であり、またプライマー層の表面強度が悪く、プラスチックカードに使用した場合などには、磁気のR/Wのための磁気ヘッドに対する耐性がないという問題がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、従来の問題を解決し、シート基材面との密着性が高くかつ表面強度も大きく表面耐摩耗性に優れ、また、人体に悪影響を及ぼしたり引火の危険性がなく、塗布工程や、特に乾燥工程において吸引設備や防曝設備などが不必要である、水性エマルジョン系オーバープリント剤であって、液体トナー受容性を有するオーバーコート層を容易に形成できる水性エマルジョン系オーバープリント剤を提供することであり、
本発明の第2の目的は、この水性エマルジョン系オーバープリント剤を用いてシート基材面の所定部に液体トナー受容性を有するオーバーコート層を形成したシートを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むオーバープリント剤を用いることにより、前記課題を達成できることを見いだし、本発明を想到した。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1の液体トナー受容性を有するオーバープリント剤は、シート面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するためのオーバープリント剤であって、塩化ビニル系共重合体を主成分とする水性エマルジョン、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンから選ばれる少なくとも1つの水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むことを特徴とする。
【0011】
樹脂成分を有機溶剤に溶かした溶剤系塗料ではなく、水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むオーバープリント剤としたことにより、揮発性が低く、塗布量の調整が容易でシート基材面への塗布適性に優れると共に、溶媒が水であるため人体に無害であって引火性もなく、塗布工程や乾燥工程に防曝設備などを必要としない。
本発明の水性エマルジョン系オーバーコート剤を用いて公知の印刷法などによりシート基材面の所定部に塗布してシート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ、かつ液体トナーを使用して電子写真法による高精細で高品質の出力画像を形成できるオーバーコート層を容易に形成できる。
本発明の水性エマルジョン系オーバーコート剤は印刷生産性が高く、各種シート、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードなどのシート基材面の所定箇所に塗布(例えば薄膜コーテイング)すると、シート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ、かつ液体トナーの密着性、定着性に優れており、例えば液体トナーをプリントしたプリント部にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離してもプリント部が剥離しないオーバーコート層を容易に形成できるので、使用するシート基材は高価なコート紙に限定されず、普通の紙や合成紙、プラスチックシートやフィルム、カードなどを使用できる。
光沢、平滑性、透明感に優れるオーバーコート層を容易に形成できる。
【0014】
本発明の請求項の液体トナー受容性を有するオーバープリント剤は、請求項1記載のオーバープリント剤において、液体トナー受容性樹脂がエチレン・アクリル酸系樹脂、ポリイミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂から選ばれる樹脂であることを特徴とする。
【0015】
液体トナーの受容性をより向上できる。
【0016】
本発明の請求項は、シート基材面の所定箇所に、請求項1あるいは請求項2記載のオーバープリント剤を用いて形成された液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有することを特徴とするシートである。
【0017】
本発明のシートは、構成が簡単で安価であり、各種シート、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードなどのシート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ、かつオーバーコート層の上に液体トナーを使用して電子写真法による高精細で高品質の出力画像を形成できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のオーバープリント剤を用いて製造された液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有するシートの1実施の形態の断面を模式的に説明する説明図である。
図1に層構成を示したように、オーバープリントカード1は、不透明塩化ビニル樹脂(PVC)やポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂からなるセンターコア2Bとセンターコア2A(いずれも厚さ約50〜100μm)を、透明塩化ビニル樹脂(PVC)などからなるオーバーシート3A、3B(いずれも厚さ約50〜100μm)で挟持し、オーバーシート3B面に磁気テープを貼り付けて磁気記録層5を定着させ、その上にアルミ粉含有銀色インクからなる隠蔽層6を設けたオーバーシート3B面に所望のデザイン印刷(絵柄印刷)した印刷層4(厚さ約1〜2μm)を形成して全体が積層されており、外表面に印刷層4を被覆保護するために本発明のオーバープリント剤を用いてオーバーコート層7が形成されて構成されている。
【0019】
オーバープリントカード1は本発明のオーバープリント剤を用いてオーバーコート層7が形成されているので、オーバーコート層7は密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ被覆保護性に優れており、かつ液体トナーを使用して電子写真法による高精細で高品質の出力画像を形成でき、形成された出力画像部にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離しても出力画像部が剥離しない。
【0020】
本発明で用いる水性エマルジョン系オーバーコート剤は公知の水性エマルジョン系オーバーコート剤を使用することができ特に限定されるものではないが、酢酸ビニル塩化ビニル共重合体水性エマルジョン(商品名:ビニブラン602、日信化学工業社製)、塩化ビニル系共重合体水性エマルジョン(商品名:ビニブラン240、日信化学工業社製)などの塩化ビニル系共重合体を主成分とする水性エマルジョンおよび紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンから選ばれる少なくとも1つの水性エマルジョンを用いると、光沢、平滑性、透明感に優れるオーバーコート層を容易に形成できるので好ましい。
【0021】
本発明で用いる紫外線硬化型ウレタンアクリレートとしては紫外線硬化型脂肪族ウレタンアクリレートや紫外線硬化型芳香族ウレタンアクリレートを挙げることができる。これらは適宜の割合で混合して使用することもできる。
ウレタン結合を形成する脂肪族および脂環式ジイソシアネート成分として代表的なものは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)などであるがこれらに限定されるものではない。脂肪族ウレタンアクリレートは、オリゴマーないしモノマー状態の脂肪族ウレタンアクリレートが水中に分散されてなるものである。好適に利用できる市販品の具体例としては、ダイセルUCB社製のUcecoat DW7900やBASF社製のLaromer LR8949などがある。
【0022】
一方、芳香族系ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびキシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられる。脂肪族ウレタンアクリレートは芳香族ウレタンアクリレートと比較すると、前者の方が後者より、オーバーコート7のコーティング適性やオーバーコート7の硬化状態の点で好ましい。また、前者の方が後者よりも透明性に優れている。
【0023】
本発明のオーバープリント剤には紫外線硬化型ウレタンアクリレート以外に、アクリル系紫外線硬化成分を配合することができる。アクリル系紫外線硬化成分の例として、例えばアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸又はそのエステル、例えばアルキル−、シクロアルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、ベンジル−、フェノキシ−アクリレート及びメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート及びメタクリレートなど、アクリルアミド、メタクリルアミド又はその誘導体などを挙げることができる。
【0024】
また、硬化収縮が支障となる用途の場合には、例えばイソボルニルアクリレート又はメタクリレート、ノルボルニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンテノキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなど、ジエチレングリコールジシクロペンテニルモノエーテルのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなど、ジシクロペンテニルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルシンナメート、ジシクロペンテノキシエチルモノフマレート又はジフマレートなど、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ビスメチル−2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−スピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2−オキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどのモノ−、ジアクリレート又はモノ−、ジメタアクリレート、あるいは前記モノアクリレート又はメタクリレートのメチルエーテル、1−アザビシクロ[2,2,2]−3−オクテニルアクリレート又はメタクリレート、ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシルモノアリルエステルなど、ジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレート、ジシクロペンタジエニルオキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル系紫外線硬化成分を用いることができる。
これらのアクリル系紫外線硬化成分は単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アクリル系紫外線硬化成分としてアクリル系光重合性オリゴマーを用いることができる。アクリル系光重合性オリゴマーとしては、エポキシ樹脂のアクリル酸エステル例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂とアクリル酸とメチルテトラヒドロフタル酸無水物との反応生成物、エポキシ樹脂と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、グリシジルジアクリレートと無水フタル酸との開環共重合エステル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物又はこれにさらにグリシジルメタクリレートを反応させたものなどのポリアクリル酸又はマレイン酸共重合体系プレポリマーなど、そのほか、ウレタン結合を介して飽和ポリエステルセグメントが連結し、両末端にアクリロイル基又はメタクロイル基を有するウレタン系プレポリマーなどを挙げることができる。
これらのアクリル系光重合性オリゴマーは、重量平均分子量凡そ2000〜30000の範囲のものが適当である。
【0026】
紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンを含むオーバープリント剤を用いた場合は、紫外線による硬化を行わせるために、光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、通常使用されているものがいずれも好ましく使用できる。代表的なものは分子内結合開放型および分子間水素引抜き型ある。分子内結合開放型は分子開裂によりラジカルを発生するタイプであって、例として、ベンゾイル・アルキル・エーテル、ベンジルジメチルケタール、ジエトキシアセトフェノン、アシロキシムエステル、塩素化アセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。分子間水素引抜き型は分子間の水素引抜きでラジカルを発生するタイプであって、例として、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、イソブチルチオキサンソンなどが挙げられる。光重合開始剤と併用するものとして光重合開始助剤または増感剤があり、アミン類、スルホン類、ホスフィン類が使用できる。
【0027】
本発明で使用する液体トナー受容性樹脂は液体トナーに対して優れた受容性を有する樹脂でればよく、例えば、エチレン・アクリル酸系樹脂、ポリイミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂から選ばれる樹脂を挙げることができる。
【0028】
本発明で用いるエチレン・アクリル酸系樹脂は、エチレンとアクリル酸とを共重合して得られる樹脂であり、アクリル酸比率は特に限定されないが、アクリル酸比率が2〜30モル%、重量平均分子量がおよそ8000〜20000のものが好適に用いられる。エチレン・アクリル酸系樹脂は水に分散/または有機溶剤に溶解した形態で用いられる。しかし、エチレン・アクリル酸系樹脂は、通常、アクリル酸をアンモニア、アミン等のアルカリ塩またはナトリウム、亜鉛等の金属塩にして水に分散した形態で用いられる。
【0029】
本発明で用いるポリイミン系樹脂としては、分子骨格中に第一級、第二級および第三級アミノ基の一種またはそれ以上を含むポリマーであれば特に制限されるものではない。
ポリイミン系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどのポリアルキレンイミン;ポリアルキレンイミンとアルデヒド化合物、ケトン化合物、アルキルハライド化合物、イソシアネート化合物、チオイソシアネート化合物、活性オレフィン化合物、エポキシ化合物、シアナミド化合物、グアニジン化合物、尿素、チオ尿素、カルボキシ化合物、酸無水物、アシルハライド化合物などとの反応物;カルボキシ含有アクリル樹脂とアルキレンイミンとの反応物であるアミノ基含有アクリル樹脂、ポリアルキレンイミンとポリアルキレンオキシドとのブロック重合体、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの重縮合物;ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリアミドポリアミン・エピクロヒドリン樹脂、ポリビニルポリアミン、ポリアリルポリアミン、ポリアクリルアミドとホルマリン、アミン化合物とのマンニッヒ反応物;ビニルラクタム化合物とアクリルアミドの共重合体;ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾリン、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、キトサン、アニリンとホルマリンとの重縮合物、アルキレンジアミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物などを挙げることができる。
本発明においては、これらのなかでも、ポリエチレンイミンおよびその誘導体は好ましく使用できる。
本発明で用いるポリイミン系樹脂の分子量は、100以上が好ましく、特に300〜100万が好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリイミン系樹脂としては市販品を使うこともできる。市販品の例としては、ポリエチレンイミン(商品名:エポミンPシリーズ(Mn=70,000)、SPシリーズ(Mn=300〜10,000)、RPシリーズ、PPシリーズ、日本触媒社製)、エチレンイミン変性ポリマー(アミノエチル化)(商品名:ポリメントNKシリーズ、SKシリーズ、日本触媒社製)、多官能アジリジニル化合物(アジリジニル化)(商品名:ケミタイト、日本触媒社製)などを挙げることができる。
【0031】
本発明で用いるポリウレタン系樹脂は、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する化合物、もしくは(2)分子内に少なくとも2個以上の活性水素原子を有する鎖伸長剤と(3)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネートとを反応せしめて得られる化合物である。
【0032】
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールなどのグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどの多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびピペラジンなどのジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンなどのアミノアルコール類、チオジエチレングリコールなどのチオジグリコール類あるいは水などが挙げられる。
【0033】
上記(2)の化合物としては、末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましいのはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類、あるいはスチレンオキサイドおよびエピクロルヒドリンなどを重合した化合物、あるいはそれらのランダム共重合、ブロック共重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物などがある。
ポリエステルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられ、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、および無水マレイン酸などの多価の飽和および不飽和カルボン酸無水物などとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびトリメチロールプロパンなどの多価の飽和および不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより生成し得る。
さらにポリエステルポリオールとしては、ラクトンおよびヒドロキシ酸から得られるポリエステル類が挙げられ、ポリエーテルエステルポリオールとしてはあらかじめ製造されたポリエステル類に、エチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドなどを付加せしめたポリエーテルエステル類が挙げられる。
【0034】
上記(3)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4.4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、あるいはそれら化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパンなどとあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
【0035】
本発明で用いるポリブタジエン系樹脂は、末端にアリル基を有し、ブタジエンが1,2結合(ビニル基)、トランス−1,4結合、シス−1,4結合でランダムに結合した分子構造を有するもの(例えば、日石ポリブタジエンB−700、B−1000、B−2000、B−3000など)、これらのポリブタジエン系樹脂を変性した変性品などで、重量平均分子量が約700〜10,000、好ましくは3,000〜10,000のものが好適に使用できる。
変性品としては、マレイン化物(例えば、日石ポリブタジエンM−1000−20、M−1000−80、M−2000−20など)やそのアルカリ金属塩(例えば、酸価0.36〜1.43mmol/g)、マレイン化物をエステル化した半エステル化物、マレイン化物をメタクリル化したメタクリル化物(例えば、日石ポリブタジエンMM−1000−80など)やそのアルカリ金属塩(例えば、酸価1.16mmol/g)、マレイン化物をイミド化したイミド化物、エポキシ化物(例えば、エポキシ当量200〜246g/eq)(例えば、日石ポリブタジエンE−1000−8、E−1800−6.5、ダイセル化学工業エポリードPB3600、PB4700、出光石油化学R−15EPI、R−45EPIなど)、エポキシ化物をアミン化したアミン化物、エポキシ化物をアクリル化したアクリル化物、フェノール化物などを挙げることができる。通常は芳香族系などの有機溶剤に溶解した形態、水に分散した形態、水および有機溶剤に溶解または分散した形態で用いられる。
【0036】
本発明のオーバープリント剤(固形分)中の水性エマルジョン系オーバーコート剤(固形分)や液体トナー受容性樹脂(固形分)の配合量は特に限定されないが、オーバープリント剤(固形分)全体100質量部中に水性エマルジョン系オーバーコート剤(固形分)20〜80質量部、好ましくは25〜70質量部、液体トナー受容性樹脂(固形分)20〜80質量部、好ましくは20〜70質量部であり、紫外線硬化型ウレタンアクリレート水性エマルジョン(固形分)は0〜30質量部含むことが好ましい。
ただし、オーバープリント剤(固形分)全体=水性エマルジョン系オーバーコート剤(固形分)+液体トナー受容性樹脂(固形分)+紫外線硬化型ウレタンアクリレート水性エマルジョン(固形分)+その他の添加剤(固形分)(光重合開始剤、滑剤、増粘剤、粘度調整剤など)。
【0037】
本発明のオーバープリント剤にはさらに、所望に応じて慣用されている添加成分、例えば、反応性希釈剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤、増感剤、顔料、染料、着色剤、滑剤などを含有させることもできる。
また、シート基材面への塗布適性や形成されたオーバーコート層の物理的・化学的適性などを考慮し、滑剤、増粘剤、粘度調整剤、レベリング剤、界面活性剤、填料、消泡剤、などを適宜添加することが好ましい。
【0038】
本発明の水性エマルジョン系オーバープリント剤全体における固形分の割合は20〜50質量%、好ましくは30〜40質量%、さらに好ましくは35質量%程度に調製される。ここで質量%とは乾燥質量%を表すものであり、以下の実施例においても同様である。
【0039】
本発明のオーバープリント剤を用いてシート基材面上にオーバーコート層を形成する基本的工程は、本発明のオーバープリント剤を塗布する塗布工程a、オーバーコート層から水分を除去する乾燥工程b、必要に応じてオーバーコート層を紫外線照射により硬化させる硬化工程cおよび硬化層を加熱・加圧する成型工程dからなる。
【0040】
本発明のオーバープリント剤の塗工法は特に限定されるものではなく、例えば刷毛塗りなど手動で塗工する方法、あるいは自動的に塗工する方法を挙げることができる。例えばグラビアコーター、フレキソ、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、リバ−スロールコーター、キスロールコーター、キャストコーター、カーテンコーターなどの塗工手段によりシート基材の少なくとも一方の面の所定部に塗工し、乾燥、必要に応じて紫外線照射して硬化することにより本発明のシートを製造することができる。本発明のオーバープリント剤は各コーターに適する濃度に水や最適な溶剤等で希釈されることもある。
【0041】
本発明のオーバープリント剤を用いて形成される液体トナー受容性を有するオーバーコート層の膜厚は、薄くてよく特に限定されないが、例えば0.01〜5.0μm、さらには0.05〜3.0μm程度であることが好ましい。膜厚が0.01μm未満であると安定した液体トナーの定着性が得られ難く、5.0μmを超えると隠蔽層下部の磁気テープ情報(磁気情報)の磁気ヘッドによる書き込みや読み取りの不良が発生したり、重ね合わせた場合にブロッキングが生じる恐れがある。
シート基材面への本発明のオーバープリント剤の塗工量は、膜厚が0.01〜5.0μm程度になるような塗工量であればよく、特に限定されないが、例えば0.5〜30g/m2 、好ましくは3〜20g/m2 、さらに好ましくは5〜15g/m2 である。
【0042】
本発明で用いるシート基材は、その材料として、一般的に使用されるプラスチック材料(例えばポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネート(CP)など)又は紙(例えば上質紙、アート紙、コート紙など)等を好適に用いることができる。
プラスチック基材はコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理およびオゾン処理などの表面処理を施したものなどが好ましく使用できる。
【0043】
通常の紙としては、木材パルプと顔料を主成分として構成される。木材パルプとしてはLBKP、NBKP、などの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどのパルプを含み、必要に応じて従来の顔料やバインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機などの各種装置で製造が可能であり、酸性、中性、アルカリ性で抄造できる。
【0044】
静電荷現像用液体トナーとしては、特に限定はなく、従来公知のトナー粒子を水および/または有機溶剤に分散したものを用いることができる。一般的に、トナー粒子は、トナー粒子を定着固定するための定着樹脂と、可視化するための着色剤、液体トナーの電気的特性を調整するための電荷調整剤等からなる。
【0045】
定着樹脂としては、従来、静電荷現像用液体トナーに使用されてきた公知の樹脂を用いることができるが、特に熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等を単体もしくは混合して用いることができる。
【0046】
着色剤としては、従来、静電荷現像用液体トナーに使用されてきた公知の顔料および/または染料を用いることができる。着色剤としては、例えば、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ベンジジンオレンジ、ファーストレッド、ブリリアントカーミン3B、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スピリットブラック、オイルブルー、アルカリブルー、ローダミン6B、ニグロシン、カーボンプラック、ジクロロキナクリドン、イソインドリン、酸化チタンなどが挙げられる。
【0047】
電荷調整剤としては、ナフテン酸、オクテン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩、ポリオキシエチル化アルキルアミンのような非イオン性界面活性剤、レシチン、アマニ油などの油脂類、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルなど公知の電荷調整剤を挙げることができる。
【0048】
【実施例】
以下本発明の内容を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1)
下記配合で本発明のオーバープリント剤を調製した。
(1)液体トナー受容性樹脂(エチレン・アクリル酸共重合樹脂、商品名:ザイクセンA、住友精化社製)(固形分) 100質量部
(2)塩化ビニル共重合体系熱可塑性樹脂を主成分とする水性エマルジョン(商品名:ビニブラン240、日信化学工業社製)(固形分) 85質量部
(3)ステアリン酸系滑剤(商品名:ノプコ1097−AH、サンノプコ社製)(固形分) 14質量部
(4)粘度調整剤(商品名:SNシックナー612、サンノプコ社製)1質量部
【0049】
得られた本発明のオーバープリント剤をPVC製カード基材(760μm)の表面に、薄膜コーターを使用して、2g/m2 の塗布量(固形分)に塗布した。そしてランプの管面温度260℃程度の遠赤外線を15秒間照射し、水分を蒸発させた。得られたカード基材を多段プレス(ラミプレス)にて150℃、25分での加圧により、表面に液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有する本発明のシートを得た。本発明のシートはカード基材としての充分な光沢を持っていた。
本発明のシートを用い、デジタル印刷機(商品名:UltraStream、Indigo社製)にて液体トナー受容性を有するオーバーコート層上に液体トナーでのプリントを行った。得られたプリント物について下記の試験方法により、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性能を評価した。
評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能◎であった。
【0050】
<試験方法>
(1)トナー定着性
デジタル印刷機(商品名:UltraStream、Indigo社製)にてオーバーコート層上にプリントを行ったプリント部に市販のセロハンテープを約10cmの長さに貼付し、重さ2kgのローラ(幅50mm)を一往復させることにより充分に貼付する。テープを貼付した試料を温度23℃、湿度50%の雰囲気に1時間放置した後、ゆっくりと剥離させたのち、液体トナープリント部を観察・評価する。
(評価基準)
◎:プリント部が全くとられていない。
○:プリント部が点状にとられたところがある(実用上使用可能)。
×:プリント部が大きく剥ぎとられている(実用上使用不可)。
【0051】
(2)表面耐摩耗性能
シートのオーバーコート層にJIS P8136(板紙の耐摩耗強さ試験方法)の試験装置(JIS板紙耐摩耗試験器)を使用し、4.90±0.05Nの荷重を掛け、500往復させた後、オーバーコート層の状態を観察し下記の評価基準で評価する。
(評価基準)
◎:オーバーコート層に全くキズがついていない。
○:オーバーコート層に1〜3本程度のキズがついている(実用上使用可能)。
×:オーバーコート層が剥ぎ取られている(実用上使用不可)。
【0052】
(実施例2)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂をポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−110、日本触媒社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能○であった。
【0053】
(実施例3)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂をポリブタジエン系樹脂(商品名:アドコートEL(平均分子量8000)、東洋モートン社製)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性○、表面耐摩耗性能◎であった。
【0054】
(実施例4)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂を50質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能◎であった。
【0055】
(実施例5)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂を25質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性○、表面耐摩耗性能◎であった。
【0056】
(実施例6)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂を150質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能○であった。
【0057】
(実施例7)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂を200質量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能○であった。
【0058】
(実施例8)
下記配合で本発明のオーバープリント剤を調製した。
(1)液体トナー受容性樹脂(エチレン・アクリル酸共重合樹脂、商品名:ザイクセンA、住友精化社製)(固形分) 40質量部
(2)紫外線硬化型アクリレートを主成分とする水性エマルジョン(商品名:WBR−828、大成化工社製)(固形分) 25質量部
(3)塩化ビニル共重合体系熱可塑性樹脂を主成分とする水性エマルジョン(商品名:ビニブラン240、日信化学工業社製)(固形分) 25質量部
(4)ステアリン酸系滑剤(商品名:ノプコ1097−AH、サンノプコ社製)(固形分) 9質量部
(5)粘度調整剤(商品名:SNシックナー612、サンノプコ社製)1質量部
得られた本発明のオーバープリント剤をPVC製カード基材(760μm)の表面に、薄膜コーターを使用して、2g/m2の塗布量(固形分)に塗布した。そしてランプの管面温度260℃程度の遠赤外線を15秒間照射し、水分を蒸発させた。さらに紫外線照射装置により350mJ/cm2 の紫外線を照射して、塗工面を硬化させた。得られたカード基材を多段プレス(ラミプレス)にて150℃、25分での加圧により、表面に液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有する本発明のシートを得た。本発明のシートはカード基材としての充分な光沢を持っていた。
本発明のシートを用い、デジタル印刷機(商品名:UltraStream、Indigo社製)にて液体トナー受容性を有するオーバーコート層上に液体トナーでのプリントを行った。得られたプリント物について実施例1と同様の操作を行い、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能◎であった。
【0059】
(実施例9)
実施例8で使用した液体トナー受容性樹脂をエチレン・アクリル酸系樹脂(商品名:AD−37F1、東洋モートン社製)に変更した以外は実施例8と同様の操作を行い、本発明のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性○、表面耐摩耗性能○であった。
【0060】
(比較例1)
PVC製カード基材(760μm)を用い、デジタル印刷機(商品名:UltraStream、Indigo社製)にて液体トナーでのプリントを行った。得られたプリント物について実施例1と同様の操作を行い、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性×、表面耐摩耗性能×であった。
【0061】
(比較例2)
実施例1で使用した液体トナー受容性樹脂を使用せず、それ以外は実施例1と同様の操作を行い、比較のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性×、表面耐摩耗性能◎であった。
【0062】
(比較例3)
実施例8で使用した液体トナー受容性樹脂を使用せず、それ以外は実施例8と同様の操作を行い、比較のオーバープリント剤およびシートを作成し、(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性×、表面耐摩耗性能◎であった。
【0063】
(比較例4)
PVC製カード基材(760μm)上に液体トナー受容性樹脂[ポリブタジエン系樹脂(商品名:アドコートEL(平均分子量8000)、東洋モートン社製)]を薄膜コーターを使用して、2g/m2 の塗布量(固形分)に塗布した。そしてランプの管面温度260℃程度の遠赤外線を15秒間照射し、水分を蒸発させた。得られたカード基材を多段プレス(ラミプレス)にて150℃、25分での加圧により、表面に液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有する比較のシートを得た。そして実施例1と同様にして(1)トナー定着性、(2)表面耐摩耗性性能を評価した。評価した結果、トナー定着性◎、表面耐摩耗性能×であった。
【0064】
【発明の効果】
本発明の請求項1の液体トナー受容性を有するオーバープリント剤は、シート面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するためのオーバープリント剤であって、塩化ビニル系共重合体を主成分とする水性エマルジョン、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンから選ばれる少なくとも1つの水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むことを特徴とするものであり、樹脂成分を有機溶剤に溶かした溶剤系塗料ではなく、水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むオーバープリント剤としたことにより、揮発性が低く、塗布量の調整が容易でシート基材面への塗布適性に優れると共に、溶媒が水であるため人体に無害であって引火性もなく、塗布工程や乾燥工程に防曝設備などを必要とせず、公知の印刷法などによりシート基材面の所定部に塗布してシート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ被覆保護性に優れており、かつ液体トナーを使用して電子写真法による高精細で高品質の出力画像を形成できるオーバーコート層を容易に形成できるという顕著な効果を奏する。
本発明の水性エマルジョン系オーバーコート剤は印刷生産性が高く、各種シート、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードなどのシート基材面の所定箇所に塗布(例えば薄膜コーテイング)すると、シート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ、かつ液体トナーの密着性、定着性に優れており、例えば液体トナーをプリントしたプリント部にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離してもプリント部が剥離しないオーバーコート層を容易に形成できるので、使用するシート基材は高価なコート紙に限定されず、普通の紙や合成紙、プラスチックシートやフィルム、カードなどを使用できるという顕著な効果を奏する。
光沢、平滑性、透明感に優れるオーバーコート層を容易に形成できるという顕著な効果を奏する。
【0066】
本発明の請求項の液体トナー受容性を有するオーバープリント剤は、請求項1記載のオーバープリント剤において、液体トナー受容性樹脂がエチレン・アクリル酸系樹脂、ポリイミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂から選ばれる樹脂であることを特徴とするものであり、液体トナーの受容性をより向上できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0067】
本発明の請求項3は、シート基材面の所定箇所に、請求項1あるいは請求項2記載のオーバープリント剤を用いて形成された液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有することを特徴とするシートであり、構成が簡単で安価であり、各種シート、磁気カード、ICカード、リライトカードなどのカードなどのシート基材面との密着性が高くかつ表面強度が大きく表面耐摩耗性に優れ、かつオーバーコート層の上に液体トナーを使用して電子写真法による高精細で高品質の出力画像を形成できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシートの一実施の形態であるオーバーコート層を有した磁気カードの断面説明図。
【符号の説明】
1 オーバープリントカード
2A、2B センターコア
3A、3B オーバーシート
4 印刷層
5 磁気記録層
6 隠蔽層
7 オーバーコート層

Claims (3)

  1. シート面を被覆保護するためのオーバーコート層を形成するためのオーバープリント剤であって、塩化ビニル系共重合体を主成分とする水性エマルジョン、紫外線硬化型ウレタンアクリレートを主成分とする水性エマルジョンから選ばれる少なくとも1つの水性エマルジョン系オーバーコート剤と液体トナー受容性樹脂を含むことを特徴とする液体トナー受容性を有するオーバープリント剤。
  2. 液体トナー受容性樹脂がエチレン・アクリル酸系樹脂、ポリイミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂から選ばれる樹脂であることを特徴とする請求項1記載のオーバープリント剤。
  3. シート基材面の所定箇所に、請求項1あるいは請求項2記載のオーバープリント剤を用いて形成された液体トナー受容性を有するオーバーコート層を有することを特徴とするシート。
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