JP4074086B2 - 磁気メモリ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気メモリに関し、より詳細には、強磁性トンネル接合型などの磁気抵抗効果素子を有するメモリアレーを積層した構造を有し、上下の磁気抵抗効果素子の間の書き込みのクロストークを抑制した磁気メモリに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性体膜を用いた磁気抵抗効果素子は、磁気ヘッド、磁気センサーなどに用いられているとともに、固体磁気メモリ(磁気抵抗効果メモリ:MRAM(Magnetic Random Access Memory))に用いることが提案されている。
【0003】
近年、2つの磁性金属層の間に1層の誘電体を挿入したサンドイッチ構造膜において、膜面に対して垂直に電流を流し、トンネル電流を利用した磁気抵抗効果素子として、いわゆる「強磁性トンネル接合素子(Tunneling Magneto-Resistance effect:TMR素子)」が提案されている。強磁性トンネル接合素子においては、20%以上の磁気抵抗変化率が得られるようになったことから(J. Appl. Phys. 79, 4724 (1996))、MRAMへの応用の可能性が高まってきた。
【0004】
この強磁性トンネル接合素子は、強磁性電極上に0.6nm〜2.0nm厚の薄いAl(アルミニウム)層を成膜した後、その表面を酸素グロー放電または酸素ガスに曝すことによって、Al2O3からなるトンネルバリア層を形成することにより、実現できる。
【0005】
また、この強磁性1重トンネル接合の片側一方の強磁性層に反強磁性層を付与し、片方を磁化固定層とした構造を有する強磁性1重トンネル接合が提案されている(特開平10−4227号公報)。
【0006】
また、誘電体中に分散した磁性粒子を介した強磁性トンネル接合や、強磁性2重トンネル接合(連続膜)も提案されている(Phys.Rev.B56(10), R5747 (1997)、応用磁気学会誌23,4-2, (1999)、Appl. Phys. Lett. 73(19), 2829 (1998)、Jpn. J. Appl. Phys.39,L1035(2001))。
【0007】
これらにおいても、20〜50%の磁気抵抗変化率が得られるようになったこと、及び、所望の出力電圧値を得るため強磁性トンネル接合素子に印加する電圧値を増やしても磁気抵抗変化率の減少が抑えられることから、MRAMへの応用の可能性がある。
【0008】
これら強磁性1重トンネル接合あるいは強磁性2重トンネル接合を用いた磁気記録素子は、不揮発性で、書き込み読み出し時間も10ナノ秒以下と速く、書き換え回数も1015以上というポテンシャルを有する。特に、強磁性2重トンネル接合を用いた磁気記録素子は、上述したように、所望の出力電圧値を得るため強磁性トンネル接合素子に印加する電圧値を増やしても磁気抵抗変化率の減少が抑えられるため、大きな出力電圧が得られ、磁気記録素子として好ましい特性を示す。
【0009】
しかし、メモリのセルサイズに関しては、1Tr(トランジスタ)−1TMRアーキテクチャ(例えば、USP5,734,605号公報に開示されている)を用いた場合、半導体のDRAM(Dynamic Random Access Memory)以下にサイズを小さくできないという問題がある。
【0010】
この問題を解決するために、ビット(bit)線とワード(word)線との間にTMRセルとダイオードを直列接続したダイオード型アーキテクチャ(USP5,640,343号公報)や、ビット線とワード線の間にTMRセルを配置した単純マトリックス型アーキテクチャ(DE 19744095、WO 9914760)が提案されている。
【0011】
また、これらのアーキテクチャにおいては、書きこみ時に、隣同士のTMRセル間での相互干渉の問題が存在する。この問題を解決するために、TMRセル形状を平行四辺形にし、チェスボードのパターンのように長軸の方向が隣接セル間で交互に違うように並べる構造が提案されている(USP6,005,800号公報)。
【0012】
しかし、磁気メモリの超大容量化のためには、メモリアレーを縦方向にも層状に積層することが望ましい。そして、このような積層構造を実現するためには、書き込み時に積層方向に生ずるクロストークを防ぐ構造が必要とされる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、MRAMを半導体DRAMよりも大容量化するためには、従来型の1Tr−1TMRアーキテクチャを用いることは好ましくない。すなわち、超大容量MRAMを実現するためには、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャを用いてメモリアレーを積層する多層アーキテクチャが望ましい。しかし、その場合、セル構造や積層方向のクロストークなどのさらなる問題が存在する。
【0014】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、層間のクロストークによる誤動作を解消しつつ高集積化が可能でしかも安価な超大容量の固体磁気メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の磁気メモリは、
第1の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の磁気抵抗効果素子の上に延設された第1の配線と、
前記第1の配線の上に設けられた第2の磁気抵抗効果素子と、
前記第2の磁気抵抗効果素子の上において前記第1の配線と交差する方向に延設された第2の配線と、
を備え、
前記第1及び第2の磁気抵抗効果素子は同一方向の磁化異方性を有する磁気記録層を有し、
前記第1及び第2の配線に電流を流すことにより形成される磁界によって前記第2の磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層の磁化が反転可能とされ、
前記第1及び第2の磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部は前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して同一の方向に傾斜してなることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、第1の配線と第2の配線とに電流を流すことにより得られる書き込み磁界の作用が、第1の磁気抵抗効果素子と第2の磁気抵抗効果素子とに対して異なるように作用する。その結果として、上下の磁気抵抗効果素子の間の書き込みクロストークを解消することができる。
【0016】
なお、本願明細書において、「交差する方向」とは、第1の配線と第2の配線とが1点で交わる状態をいうのではなく、これらがねじれの位置にあり、これらを磁気抵抗効果素子の膜面に対して投影した場合に交差する状態をいうものとする。
【0017】
また、本発明の第2の磁気メモリは、
マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子を有する第1のメモリアレーと、
前記第1のメモリアレーの上に積層され、マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子を有する第2のメモリアレーと、
を備え、
前記第1及び第2のメモリアレーのそれぞれには、その磁気抵抗効果素子の下に延設された第1の配線と、その磁気抵抗効果素子の上において前記第1の配線と交差する方向に延設された第2の配線と、が設けられ、
前記第1及び第2の配線に電流を流すことにより形成される磁界によってこれらの間に配置された磁気抵抗効果素子の磁気記録層の磁化が反転可能とされ、
前記第1及び第2のメモリアレーにおける上下の前記磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層は同一方向の磁化異方性を有し、これら磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部は前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して同一の方向に傾斜してなることを特徴とする。
【0018】
上記構成によっても、第1の配線と第2の配線とに電流を流すことにより得られる書き込み磁界の作用が、第1の磁気抵抗効果素子と第2の磁気抵抗効果素子とに対して異なるように作用する。その結果として、上下の磁気抵抗効果素子の間の書き込みクロストークを解消することができる。
【0019】
また、これら上記の磁気メモリにおいて、前記第1のメモリアレーに設けられた前記第2の配線と、前記第2のメモリアレーに設けられた前記第1の配線と、が共通化されてなるものとすることにより、書き込みクロストークを抑制しつつ構成を簡略化し、さらに高い集積度が得られる。
【0020】
また、前記第1及び第2のメモリアレーのそれぞれにおいて、前記マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子は、第1の形状に形成された磁気記録層を有する磁気抵抗効果素子と、前記第1の形状とは異なる第2の形状に形成された磁気記録層を有する磁気抵抗効果素子と、が交互に配置されてなるものとすれば、同一のメモリアレー内における書き込みクロストークも効果的に抑制することができる。
【0021】
また、前記磁気記録層は、前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかの長軸に対して、非対称に形成されてなるものとすれば、その磁化方向の少なくとも一部を前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して平行でも垂直でもない方向に傾斜させることができる。
【0022】
または、前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する角度は、90度以外であるものとすれば、磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部を前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して平行でも垂直でもない方向に傾斜させることができる。
【0023】
なお、本願明細書において、「前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する角度」とは、これら第1及び第2の配線を磁気抵抗効果素子の膜面に対して投影した場合の交差角度をいうものとする。
【0024】
また、前記磁気記録層は、その幅Dと長さLとの比L/Dが1.2よりも大きく、且つその長さLの方向に沿った一軸異方性が付与されているものとすれば、安定した磁化異方性を有する磁気記録層が得られ、書き込みと読み出しを確実に行うことができる。
【0025】
また、前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかは、その側面に軟磁性材料からなる被覆層を有するものとすれば、周囲に隣接する磁気抵抗効果素子に対する書き込み磁界の漏洩を抑制して書き込みクロストークをさらに効果的に抑制できる。
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の磁気メモリの単位セルを単純化して表した模式図であり、同図(a)は、その平面構成、(b)はその断面構成を表す。
【0027】
まずその平面構成を見ると、同図(a)に表したように、ビット線Bとワード線Wとが交差するように配線され、その交差部に磁気抵抗効果素子Cが設けられている。そして、図1(b)に例示したように、このようなセル構造が縦方向に積層されている。
【0028】
後に詳述するように、ビット線B(B1〜B3)、ワード線W(W1、W2)と磁気抵抗効果素子C(C1〜C4)との接続関係については、各種の具体例を採用することができる。例えば、書き込み用と読み出し用の2本のビット線を設けて磁気抵抗効果素子に接続してもよい。また、ワード線は、磁気抵抗効果素子に対して接続する場合も接続しない場合もある。
【0029】
磁気抵抗効果素子C(C1〜C4)は、例えば、TMR素子のような磁気記録層を有する。この磁気記録層は、互いに略反平行な磁化方向M1、M2を有し、これら2種類の磁化方向を「0」と「1」のデータの対応づけることにより、2値化情報の記録と読み出しを可能としている。なお、これら磁化方向M1、M2は、後に詳述するように、必ずしも直線状である必要はなく磁気抵抗効果素子Cの形状により様様なエッジドメインを形成する。
【0030】
磁気抵抗効果素子C(C1〜C4)に対する情報の書き込みは、その上下に設けられたビット線B(B1〜B3)とワード線W(W1、W2)とに電流を流すことにより生ずる磁場により行う。例えば、ビット線B1とワード線W1のそれぞれに電流を流すと、これらの周囲に電流磁界が生ずる。これら電流磁界を合成した磁界により、磁気抵抗効果素子C1の磁気記録層の磁化をM1からM2、あるいはM2からM1に反転させる。こうして2値化情報の書き込みを行うことができる。
【0031】
この書き込みに際しては、所定の方向に磁化を反転させるために、ビット線Bとワード線Wの双方に対して、所定方向の電流パルスを適宜流せばよい。このようにすれば、ビット線とワード線のいずれかのみに電流を流すことによって磁化反転を生じさせる場合と比較して、配線あたりの電流量を低減することができるとともにセル選択することができる。その結果として、配線の疲労が少なく、信頼性の高い磁気メモリを提供することができる。
【0032】
また、図1(b)に表したように、上下方向に磁気メモリのセル構造を積層させることにより、集積度を上げて、半導体DRAMあるいはそれ以上の高集積化を可能とすることができる。
【0033】
しかし、図1(b)から分かるように、ワード線W1を挟んでその上下に磁気抵抗効果素子C1、C2が積層されている場合、これら磁気抵抗効果素子の間でいわゆる「書き込みクロストーク」が生ずる虞がある。例えば、ビット線B1及びワード線W1に電流を流すことにより磁気抵抗効果素子C1に書き込みを実行する際に、その書き込み磁界が下側に隣接する磁気抵抗効果素子C2にも印加されて、その記録磁化を反転させてしまう場合があり得る。
【0034】
これに対して、本発明によれば、図1(a)に例示したように、磁気抵抗効果素子C1、C2の磁気記録層の磁化容易軸方向(M1、M2)を、ビット線及びワード線の少なくともいずれかに対して平行でも垂直でもないようにする。つまり、その磁化方向をビット線及びワード線の少なくともいずれかに対して傾斜させる。その際、C1、C2は同方向に傾斜させる。
【0035】
このようにすると、図1(b)に例示したようにワード線W1を挟んで上下に積層された磁気抵抗効果素子C1とC2との間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0036】
図2及び図3は、本発明の作用を説明するための概念図である。すなわち、図2は、本発明を適用しない比較例を表す模式図であり、図3は、本発明の具体例の作用を説明する模式図である。
【0037】
まず、図2を参照しつつ、比較例について説明する。図2(a)に表したように、磁気抵抗効果素子(MR素子)の磁気記録層の磁化Mの方向を、ビット線B及びワード線Wの両方に対して平行あるいは垂直な方向に揃えた場合、その磁化Mを反転させるために必要とされる磁界のアステロイド曲線は、図2(b)に表した如くとなる。ここで、ビット線B1に書き込み電流を流すことにより発生する磁界Hb1と、ワード線W1に書き込み電流を流すことにより発生する磁界Hw1との合成磁界Ht1がアステロイド曲線を越えた時に、磁気抵抗効果素子の磁化Mを反転させることが可能となる。
【0038】
しかし、図2に表した具体例の場合、アステロイド曲線は、ビット線B1とワード線W1に対してそれぞれ線対称に形成される。このため、図1(b)に例示したようにワード線W1の上下に磁気抵抗効果素子C1、C2を積層させた場合、ビット線B1及びワード線W1からの書き込み磁界は、これら磁気抵抗効果素子C1、C2に対して等価に作用する。
【0039】
すなわち、ワード線W1に電流を流して、上側の磁気抵抗効果素子C1に対して与える磁界Hw1と、下側の磁気抵抗効果素子C2に対して与える磁界Hw2とは、方向は反対であるが、アステロイド曲線に対しては等価に作用する。従って、上側の磁気抵抗効果素子C1において磁化反転が生ずるために必要なビット線からの磁界Hb1と、下側の磁気抵抗効果素子C2において磁化反転が生ずるために必要なビット線からの磁界Hb2とは、同一となる。その結果として、上側の磁気抵抗効果素子C1への書き込みを行う際に、一般に素子のスイッチング磁界のバラツキが存在するため、下側の磁気抵抗効果素子C2に対して書き込みクロストークが生ずる虞がある。
【0040】
これに対して、本発明においては、例えば、図3(a)に表したように、磁化Mの方向をビット線B(あるいはワード線W)に対して傾斜させる。この場合、アステロイド曲線は、同図(b)に表したように傾斜して形成される。このようにすると、ワード線Wがその上下の磁気抵抗効果素子C1、C2に与える磁界Hw1と磁界Hw2は反対方向で同一の大きさであるが、磁化反転のために必要とされるビット線からの磁界に差異が生じ、マージンが増大する。
【0041】
すなわち、上側の磁気抵抗効果素子C1の磁化を反転させるために必要なビット線からの磁界Hb1に対して、下側の磁気抵抗効果素子C2の磁化を反転させるために必要なビット線からの磁界Hb2は、大きくなる。その結果として、上側の磁気抵抗効果素子C1の書き込みを行う場合に、下側の磁気抵抗効果素子C2の磁化は反転しなくなり、書き込みクロストークを解消することができる。
【0042】
同様の作用効果は、下側の磁気抵抗効果素子C2に対して書き込みを行う場合にも得られる。つまり、下側の磁気抵抗効果素子C2に書き込みを行う場合に、上側の磁気抵抗効果素子C1はその書き込み磁界では磁化反転が生じないため、書き込みクロストークを解消することができる。
【0043】
これらの書き込みに際しては、対象の磁気抵抗効果素子の磁化の傾斜方向を考慮して有利な方向に磁化を回転させて反転させるために、ビット線とワード線の双方に流す電流パルスの向きを適宜切り替えればよい。
【0044】
また、図3に表した具体例の場合、磁気抵抗効果素子C1、C2の磁気記録層の平面形態を、ビット線Bに対して傾斜させた長方形として表したが、本発明はこれには限定されない。
【0045】
図4は、本発明における磁気抵抗効果素子の磁気記録層の平面形態の他の具体例を表す模式図である。すなわち、磁気抵抗効果素子の磁気記録層は、例えば、同図(a)に表したように、長方形の一方の対角両端に突出部を付加した形状や、同図(b)に表したような平行四辺形、同図(c)に表したような菱形、同図(d)に表したような楕円形、(e)に表したようなエッジポインテッド型すなわち、両端がテーパ形状とされた形などの各種の形状とすることができる。
【0046】
ここで、磁気記録層を図4(a)〜(c)あるいは(e)に表した形状にパターニングする場合、実際には角部が丸まる場合が多いが、そのように角部が丸まってもよい。
【0047】
また、これらの非対称な形状は、フォトリソグラフィにおいて用いるレチクルのパターン形状を非対称形状にすることにより容易に作製できる。例えば、図4(a)に例示した形状の磁気抵抗効果素子は、レチクルのパターン形状を図5のようにすることによって作製できる。
【0048】
図4に例示したいずれの形状も、ビット線Bの長軸に関して線対称ではない。このような形状にすると、その磁化Mの少なくとも一部が、ビット線Bの長軸に対して平行ではなく傾斜している。その結果として、図3に表したように、アステロイド曲線がビット線あるいはワード線に対して線対称ではなくなり、上下の磁気抵抗効果素子に対する中間の配線からの磁界の作用を等価でなくすることができる。その結果として、書き込みクロストークを抑制することができる。
【0049】
またここで、磁気抵抗効果素子の磁気記録層の幅Dと長さLの比L/Dは、1.2よりも大きいことが望ましく、長さLの方向に一軸異方性が付与されていることが望ましい。なお、図2乃至図6においては、簡単のために、アステロイド曲線を等方的に描いたが、上述の如く磁気記録層が細長く形成された場合には、アステロイド曲線は、扁平に引き延ばされた形状を有する。但し、この場合も、図2乃至図6に関して前述したような作用効果は、同様に得られる。
【0050】
以上、図2乃至図5に関して前述した具体例は、ビット線とワード線とを直交させ、磁気抵抗効果素子の磁気記録層の形状をこれらに対して非対称となるように設けることにより、書き込みクロストークを抑制するものである。
【0051】
しかし、本発明はこれらの具体例には限定されず、その他にも、例えば、ビット線とワード線とを直交させず、傾斜させて交差させてもよい。
【0052】
図6は、このようにビット線とワード線とを傾斜させた具体例を説明する模式図である。すなわち、同図(a)は、図1に表した上側の磁気抵抗効果素子C1のセルの平面構成を表し、同図(b)は、その磁気記録層のアステロイド曲線を表す模式図である。また、図6(c)は、図1に表した下側の磁気抵抗効果素子C2のセルの平面構成を表し、図6(d)は、その磁気記録層のアステロイド曲線を表す模式図である。すなわち、図6においては、ワード線W1を、磁気抵抗効果素子の磁化Mの方向に対して斜めに傾斜させた具体例を表した。
【0053】
このようにすると、図6(b)及び(d)に表したように、ワード線W1からの磁界Hw1及びHw2は、磁化反転のアステロイド曲線の対称軸に対して、傾斜した方向に沿って互いに反対向きに作用する。その結果として、磁化反転のために必要とされるビット線からの磁界Hb1、Hb2に差が生ずる。
【0054】
すなわち、上側の磁気抵抗効果素子C1の磁化Mを反転させるために必要とされるビット線B1からの磁界Hb1は、図6(b)に表した如くである。これに対して、下側の磁気抵抗効果素子C2の磁化Mを反転させるために必要とされるビット線B2からの磁界Hb2は、図6(d)に表した如くであり、Hb1よりも大きくなる。
【0055】
つまり、上側の磁気抵抗効果素子C1の書き込みを行うための合成磁界Ht1は、下側の磁気抵抗効果素子C2の磁化を反転させるために必要な合成磁界Ht2よりも小さくなる。その結果として、上側の磁気抵抗効果素子C1に対して書き込みを行う際に、下側の磁気抵抗効果素子C2に対する書き込みクロストークを解消することができる。
【0056】
なお、図6は、磁気抵抗効果素子の磁化方向Mに対して、ビット線はほぼ垂直とし、ワード線を斜めに傾斜させた場合を例示したが、これとは逆に、磁化方向Mに対して、ワード線はほぼ平行とし、ビット線を垂直ではなく斜めに傾斜させて配線しても同様の作用効果が得られる。
【0057】
以上、図1乃至図6を参照しつつ、本発明におけるメモリセルの基本的な構成について説明した。
【0058】
次に、本発明の磁気メモリに用いることができる磁気抵抗効果素子について説明する。磁気抵抗効果素子としては、第1の強磁性層と絶縁層と第2の強磁性層とを積層させたTMR構造の素子や、第1の強磁性層と非磁性層と第2の強磁性層とを積層させた「スピンバルブ構造」の素子などを用いることができる。
【0059】
いずれの場合も、第1の強磁性層を、磁化方向が実質的に固定された「磁化固着層(「ピン層」などと称される場合もある)」として作用させ、第2の強磁性層を、外部からの磁界を印加することにより磁化方向を可変とした「磁気記録層」として作用させることができる。
【0060】
また、後に詳述するように、読み出し方式によっては、第1の強磁性層を、磁化方向を可変とした「磁化自由層(「フリー層」などと称されることもある)」として作用させ、第2の強磁性層を、外部からの書き込み磁界を印加することにより磁化を記録する「磁気記録層」として作用させてもよい。
【0061】
これらの磁気抵抗効果素子において、磁化固着層として用いることができる強磁性体としては、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)またはこれらの合金や、スピン分極率の大きいマグネタイト、CrO2、RXMnO3−y(ここでRは希土類、XはCa(カルシウム)、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)のいずれかを表す)などの酸化物、あるいは、NiMnSb(ニッケル・マンガン・アンチモン)、PtMnSb(白金マンガン・アンチモン)などのホイスラー合金などを用いることができる。
【0062】
これらの材料からなる磁化固着層は、一方向異方性を有することが望ましい。またその厚さは0.1nmから100nmが好ましい。さらに、この強磁性層の膜厚は、超常磁性にならない程度の厚さが必要であり、0.4nm以上であることがより望ましい。
【0063】
また、磁化固着層として用いる強磁性層には、反強磁性膜を付加して磁化を固着することが望ましい。そのような反強磁性膜としては、Fe(鉄)−Mn(マンガン)、Pt(白金)−Mn(マンガン)、Pt(白金)−Cr(クロム)−Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)−Mn(マンガン)、Ir(イリジウム)−Mn(マンガン)、NiO(酸化ニッケル)、Fe2O3(酸化鉄)などを挙げることができる。
【0064】
また、これら磁性体には、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン)、Bi(ビスマス)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節したり、その他、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
一方、磁化固着層として、強磁性層と非磁性層の積層膜を用いても良い。例えば、強磁性層/非磁性層/強磁性層という3層構造を用いることができる。この場合、非磁性層を介して両側の強磁性層に反強磁性的な層間の相互作用が働いていることが望ましい。
【0065】
より具体的には、磁性層を一方向に固着する方法として、Co(Co−Fe)/Ru(ルテニウム)/Co(Co−Fe)、 Co(Co−Fe)/Ir(イリジウム)/Co(Co−Fe)、 Co(Co−Fe)/Os(オスニウム)/Co(Co−Fe)などの3層構造の積層膜を磁化固着層とし、さらに、これに隣接して反強磁性膜を設けることが望ましい。この場合の反強磁性膜としても、前述したものと同様に、Fe−Mn、Pt−Mn、Pt−Cr−Mn、Ni−Mn、Ir−Mn、NiO、Fe2O3などを用いることができる。この構造を用いると、磁化固着層の磁化がビット線やワード線からの電流磁界の影響をより受け難く、しっかりと磁化が固着される。また、磁化固着層からの漏洩磁界(stray field)を減少(あるいは調節)でき、磁化固着層を形成する2層の強磁性層の膜厚を変えることにより,磁気記録層(磁気記録層)の磁化シフトを調整することができる。
【0066】
一方、磁気記録層(フリー層)の材料としても、磁化固着層と同様に、例えば、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)またはこれらの合金や、スピン分極率の大きいマグネタイト、CrO2、RXMnO3−y(ここでRは希土類、XはCa(カルシウム)、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)のいずれかを表す)などの酸化物、あるいは、NiMnSb(ニッケル・マンガン・アンチモン)、PtMnSb(白金マンガン・アンチモン)などのホイスラー合金などを用いることができる。
【0067】
これらの材料からなる磁気記録層としての強磁性層は、膜面に対して略平行な方向の一軸異方性を有することが望ましい。またその厚さは0.1nmから100nmが好ましい。さらに、この強磁性層の膜厚は、超常磁性にならない程度の厚さが必要であり、0.4nm以上であることがより望ましい。
【0068】
また、磁気記録層として、軟磁性層/強磁性層という2層構造、または、強磁性層/軟磁性層/強磁性層という3層構造を用いても良い。磁気記録層として、強磁性層/非磁性層/強磁性層という3層構造を用いて、強磁性層の層間の相互作用の強さを制御することにより、メモリセルである磁気記録層のセル幅がサブミクロン以下になっても、電流磁界の消費電力を増大させずに済むというより好ましい効果が得られる。
【0069】
磁化記録層においても、これら磁性体に、Ag(銀)、Cu(銅)、Au(金)、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン)、Bi(ビスマス)、Ta(タンタル)、B(ボロン)、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ir(イリジウム)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)などの非磁性元素を添加して、磁気特性を調節したり、その他、結晶性、機械的特性、化学的特性などの各種物性を調節することができる。
【0070】
一方、磁気抵抗効果素子としてTMR素子を用いる場合に、磁化固着層と磁化記録層との間に設けられる絶縁層(あるいは誘電体層)としては、Al2O3(酸化アルミニウム)、SiO2(酸化シリコン)、MgO(酸化マグネシウム)、AlN(窒化アルミニウム)、Bi2O3(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO2(酸化チタン・ストロンチウム)、AlLaO3(酸化ランタン・アルミニウム)、Al−N−O(酸化窒化アルニウム)などの各種の絶縁体(誘電体)を用いることができる。
【0071】
これらの化合物は、化学量論的にみて完全に正確な組成である必要はなく、酸素、窒素、フッ素などの欠損、あるいは過不足が存在していてもよい。また、この絶縁層(誘電体層)の厚さは、トンネル電流が流れる程度に薄い方が望ましく、実際上は、10nm以下であることが望ましい。
【0072】
このような磁気抵抗効果素子は、各種スパッタ法、蒸着法、分子線エピタキシャル法などの通常の薄膜形成手段を用いて、所定の基板上に形成することができる。この場合の基板としては、例えば、Si(シリコン)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、スピネル、AlN(窒化アルニウム)など各種の基板を用いることができる。
【0073】
また、基板の上に、下地層や保護層などとして、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Au(金)、Ti(チタン)/Pt(白金)、Ta(タンタル)/Pt(白金)、Ti(チタン)/Pd(パラジウム)、Ta(タンタル)/Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)‐Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Os(オスミウム)などからなる層を設けてもよい。
【0074】
以上、本発明の磁気メモリにおける磁気抵抗効果素子及びビット線とワード線の配置関係について説明した。
【0075】
次に、本発明の磁気メモリのセル構造について具体例を挙げて説明する。
磁気メモリを半導体DRAMよりも大容量化するためには,1セルあたり1個のトランジスタと1個の磁気抵抗効果素子を用いるアーキテクチャ(1Tr−1MRアーキテクチャ)を用いることは好ましくない。何故ならば、このアーキテクチャでは、メモリアレーを積層させることが困難だからである。
【0076】
すなわち、超大容量化メモリを実現するためには、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャを用いて、多層化することが望ましい。
【0077】
図7は、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第1の具体例を表す模式図である。すなわち、同図は、メモリアレーの断面構造を表す。このアーキテクチャにおいては、読み出し/書き込み用ビット線Bに磁気抵抗効果素子Cが並列に接続されている。それぞれの磁気抵抗効果素子Cの他端には、ダイオードDを介して読み出し/書き込み用ワード線Wが接続されている。
【0078】
読み出し時には、目的の磁気抵抗効果素子Cに接続されているビット線Bとワード線Wとを選択トランジスタSTB、STWにより選択してセンスアンプSAにより電流を検出する。
【0079】
また、書き込み時には、やはり目的の磁気抵抗効果素子Cに接続されているビット線Bとワード線Wとを選択トランジスタSTB、STWにより選択して、書き込み電流を流す。この際に、ビット線Bとワード線Wにそれぞれ発生する磁界を合成した書き込み磁界が磁気抵抗効果素子Cの磁気記録層の磁化を所定の方向に向けることにより、書き込みができる。
【0080】
ダイオードDは、これら読み出し時あるいは書き込み時に、マトリクス状に配線されている他の磁気抵抗効果素子Cを介して流れる迂回電流を遮断する役割を有する。
【0081】
図8は、図7に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。なお、図8においては、簡単のために、ビット線B、磁気抵抗効果素子C、ダイオードD、ワード線Wのみを表し、それら以外の要素は省略した。
【0082】
図8(a)は、図7に表したメモリアレーをそのまま上下に積層させた具体例を表す。つまり、各層のメモリアレーは、それぞれのビット線Bとワード線とを有する。そして例えば、ワード線W1は、それに接続されている磁気抵抗効果素子C1のみに対してデータの読み出しと書き込みを行うために用いられる。
【0083】
またここで、ワード線の側壁及び下面は、軟磁性材料からなる被覆層SMにより覆われていることが好ましい。これは、ワード線Wが発生する書き込み磁界が、同一層内及び下層において隣接する磁気抵抗効果素子に向けて漏洩するのを防ぐためである。このようにすれば、書き込みクロストークをさらに効果的に防ぐことができる。
【0084】
またここで、被覆層SMは、磁気抵抗効果素子Cよりも外側に設けることが望ましい。このようにすれば、ワード線Wからの書き込み磁界を磁気抵抗効果素子Cに均一に印加することができる。
【0085】
またさらに、書き込みビット線の側面にも、同様の被覆層SMを設けることにより、隣接する磁気抵抗効果素子に対するクロストークを抑制できる。
【0086】
ここで、ワード線の材料としては、例えばCu(銅)を用い、その周囲の被覆層SMの材料としては、FeOx(酸化鉄)、CoZnNb(コバルト亜鉛ニオブ)などの磁性アモルファス材料、CoFeNi(コバルト鉄ニッケル)、NiFe(ニッケル鉄)、パーマロイなどの磁性合金を用いることができる。
【0087】
一方、図8(b)は、ワード線Wを上下のメモリアレーで共有するように積層させた具体例を表す。例えば、第1層目の磁気抵抗効果素子C1と第2層目の磁気抵抗効果素子C2は、共通のワード線W1に接続されている。このようにワード線を共通化すれば、構造が簡略化され、集積度を上げることができ、製造コストも下げることができる。
【0088】
またこの場合、ワード線の側壁を軟磁性の被覆層SMで覆うことにより、周囲の磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを抑制し、書き込みクロストークをさらに効果的に防ぐことができる。
【0089】
図9は、図8に表した積層メモリアレーの平面配置を例示する模式図である。すなわち、図9(a)及び(b)は、図8(a)及び(b)に表した積層メモリアレーの各層の磁気抵抗効果素子の配列形態を表す。
【0090】
図9(a)に表した具体例の場合、それぞれの磁気抵抗効果素子は、図4(a)に表したものと同様の非対称の形状を有する。そして、これら磁気抵抗効果素子は、異なる層間において、同一の方向に配置されている。例えば、図9(a)において、丸印で囲んだ磁気抵抗効果素子は、それぞれ上下方向に隣接するものを表す。このように非対称形状の磁気抵抗効果素子を隣接する層間、すなわち上下方向において同一の方向に配置することにより、図3に関して前述したように、上下の磁気抵抗素子の間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0091】
一方、図9(b)に表した具体例の場合も、それぞれの磁気抵抗効果素子は、やはり図4(a)に表したものと同様の非対称の形状を有する。但し、これらの方向を見ると、同一の層内においては交互に反対方向に配置されている。つまり、同一層内において隣接する磁気抵抗効果素子は、非対称の方向が互いに反対になるように配列されている。このように配列すると、隣接する磁気抵抗効果素子の間では磁界の作用が反対に働くため、書き込みクロストークを抑制することができる。
【0092】
また、層間で見た場合、すなわち上下方向に見た場合には、磁気抵抗効果素子の非対称の方向が互いに同一になるように配置されている。すなわち、図9(b)においても、丸印で囲んだ磁気抵抗効果素子は、それぞれ上下方向に隣接するものを表す。このように配置することにより、図3に関して前述したように、上下の磁気抵抗素子の間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0093】
また一方、図9に表した平面配置は一例に過ぎず、例えば、磁気抵抗効果素子の平面形状としては、図4に例示した形状をはじめとして各種の非対称な形状を与えることができる。つまり、磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部がビット線あるいはワード線に対して平行でも垂直でもないものであればよい。
【0094】
またさらに、図6に例示したように、ビット線とワード線とを垂直でなく、傾斜させて交差させることによっても、同様の効果が得られる。
【0095】
次に、本発明の磁気メモリに採用できるアーキテクチャの第2の具体例について説明する。
【0096】
図10は、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第2の具体例を表す模式図である。すなわち、同図は、メモリアレーの断面構造を表す。
【0097】
このアーキテクチャにおいては、読み出し/書き込み用ビット線Bwと読み出し用ビット線Brとの間に複数の磁気抵抗効果素子Cが並列に接続された「ハシゴ型」の構成とされている。さらに、それぞれの磁気抵抗効果素子Cに近接して、書き込みワード線Wがビット線と交差する方向に配線されている。
【0098】
磁気抵抗効果素子への書き込みは、読み出し/書き込み用ビット線Bwに書き込み電流を流すことにより発生する磁界と、書き込みワード線Wに書き込み電流を流すことにより発生する磁界との合成磁界を磁気抵抗効果素子の磁気記録層に作用させることにより、行うことができる。
【0099】
一方、読み出しの際には、ビット線Bw及びBrの間で電圧を印加する。すると、これらの間で並列に接続されている全ての磁気抵抗効果素子に電流が流れる。この電流の合計をセンスアンプSAにより検出しながら、目的の磁気抵抗効果素子に近接したワード線Wに書き込み電流を印加して、目的の磁気抵抗効果素子の磁気記録層の磁化を所定の方向に書き換える。この時の電流変化を検出することにより、目的の磁気抵抗効果素子の読み出しを行うことができる。
【0100】
すなわち、書き換え前の磁気記録層の磁化方向が書き換え後の磁化方向と同一であれば、センスアンプSAにより検出される電流は変化しない。しかし、書き換え前後で磁気記録層の磁化方向が反転する場合には、センスアンプSAにより検出される電流が磁気抵抗効果により変化する。このようにして書き換え前の磁気記録層の磁化方向すなわち、格納データを読み出すことができる。
【0101】
但し、この方法は、読み出しの際に格納データを変化させる、いわゆる「破壊読み出し」に対応する。
【0102】
これに対して、磁気抵抗効果素子の構成を、磁化自由層/絶縁層(非磁性層)/磁気記録層、という構造とした場合には、いわゆる「非破壊読み出し」が可能である。すなわち、この構造の磁気抵抗効果素子を用いる場合には、磁気記録層に磁化方向を記録し、読み出しの際には、磁化自由層の磁化方向を適宜変化させてセンス電流を比較することにより、磁気記録層の磁化方向を読み出すことができる。但しこの場合には、磁気記録層の磁化反転磁界よりも磁化自由層の磁化反転磁界のほうが小さくなるように設計する必要がある。
【0103】
図11は、図10に表した「はしご型」メモリアレーを積層した状態を表す模式図である。なお、図8においては、簡単のために、ビット線Bw及びBr、磁気抵抗効果素子C、ワード線Wのみを表し、それら以外の要素は省略した。
【0104】
図11(a)は、図10に表したメモリアレーをそのまま上下に積層させた具体例を表す。つまり、各層のメモリアレーは、それぞれのビット線Bw、Brとワード線Wとを有する。そして例えば、ワード線W1は、それに接続されている磁気抵抗効果素子C1のみに対してデータの書き込みを行うために用いられる。
【0105】
またこの場合も、ワード線Wの側壁及び下面を、軟磁性の被覆層SMにより覆うことにより、同一層内及び下層において隣接する磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを防ぎ、書き込みクロストークをさらに効果的に抑制できる。
【0106】
一方、図11(b)は、ワード線Wを上下のメモリアレーで共有するように積層させた具体例を表す。例えば、第1層目の磁気抵抗効果素子C1と第2層目の磁気抵抗効果素子C2は、共通のワード線W1により書き込みが行われる。このようにワード線を共通化すれば、構造が簡略化され、集積度を上げることができ、製造コストも下げることができる。
【0107】
またこの場合、ワード線の側壁を軟磁性の被覆層SMで覆うことにより、周囲の磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを抑制し、書き込みクロストークをさらに効果的に防ぐことができる。ビット線Bwにつていも同様である。
【0108】
図10及び図11に表した「はしご型」メモリアレーの場合も、その平面配置は、図9に表したものと同様とすることができる。すなわち、図9(a)に表したように、非対称形状の磁気抵抗効果素子を隣接する層間、すなわち上下方向において同一の方向に配置することにより、上下の磁気抵抗素子の間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0109】
また、図9(b)に表したように、同一層内において隣接する磁気抵抗効果素子を非対称の方向が互いに反対になるように配置することにより、これらの間の書き込みクロストークを抑制することができる。
【0110】
またさらに、図6に例示したように、ビット線とワード線とを垂直でなく、傾斜させて交差させることによっても、同様の効果が得られる。
【0111】
次に、本発明の磁気メモリに採用できるアーキテクチャの第3の具体例について説明する。
【0112】
図12は、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第3の具体例を表す模式図である。すなわち、同図は、メモリアレーの断面構造を表す。
【0113】
このアーキテクチャにおいては、読み出し/書き込み用ビット線Bwに複数の磁気抵抗効果素子Cが並列に接続され、これら磁気抵抗効果素子の他端には、それぞれ読み出し用ビット線Brがマトリクス状に接続されている。
【0114】
さらに、これら読み出し用ビット線Brに近接して、書き込み用ワード線Wが配線されている。゜
磁気抵抗効果素子への書き込みは、読み出し/書き込み用ビット線Bwに書き込み電流を流すことにより発生する磁界と、書き込みワード線Wに書き込み電流を流すことにより発生する磁界との合成磁界を磁気抵抗効果素子の磁気記録層に作用させることにより、行うことができる。
【0115】
一方、読み出しの際には、選択トランジスタST1、ST2によりビット線BwとBrとを選択することにより、目的の磁気抵抗効果素子にセンス電流を流してセンスアンプSAにより検出することができる。
【0116】
図13は、図12に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。図13においても、簡単のために、ビット線Bw及びBr、磁気抵抗効果素子C、ワード線Wのみを表し、それら以外の要素は省略した。
【0117】
図13(a)は、図12に表したメモリアレーをそのまま上下に積層させた具体例を表す。つまり、各層のメモリアレーは、それぞれのビット線Bw、Brとワード線Wとを有する。そして例えば、ワード線W1は、それに近接する磁気抵抗効果素子C1のみに対してデータの書き込みを行うために用いられる。
【0118】
またこの場合も、ワード線Wの側壁及び下面を、軟磁性の被覆層SMにより覆うことにより、同一層内及び下層において隣接する磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを防ぎ、書き込みクロストークをさらに効果的に抑制できる。
【0119】
一方、図13(b)は、ワード線Wを上下のメモリアレーで共有するように積層させた具体例を表す。例えば、第1層目の磁気抵抗効果素子C1と第2層目の磁気抵抗効果素子C2は、共通のワード線W1により書き込みが行われる。このようにワード線を共通化すれば、構造が簡略化され、集積度を上げることができ、製造コストも下げることができる。
【0120】
またこの場合、ワード線の側壁を軟磁性の被覆層SMで覆うことにより、周囲の磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを抑制し、書き込みクロストークをさらに効果的に防ぐことができる。ビット線Bwについても同様である。
【0121】
図12及び図13に表したメモリアレーの場合も、その平面配置は、図9に表したものと同様とすることができる。すなわち、図9(a)に表したように、非対称形状の磁気抵抗効果素子を隣接する層間、すなわち上下方向において同一の方向に配置することにより、上下の磁気抵抗素子の間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0122】
また、図9(b)に表したように、同一層内において隣接する磁気抵抗効果素子を非対称の方向が互いに反対になるように配置することにより、これらの間の書き込みクロストークを抑制することができる。
【0123】
またさらに、図6に例示したように、ビット線とワード線とを垂直でなく、傾斜させて交差させることによっても、同様の効果が得られる。
【0124】
次に、本発明の磁気メモリに採用できるアーキテクチャの第4の具体例について説明する。
【0125】
図14は、メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第4の具体例を表す模式図である。すなわち、同図は、メモリアレーの断面構造を表す。
【0126】
このアーキテクチャは、図12及び図13に例示したものと類似した構成を有する。但し、読み出し用ビット線BrがリードLを介して磁気抵抗効果素子Cに接続され、磁気抵抗効果素子Cの直下には書き込み用ワード線Wが配線されている点が異なる。このようにすると、磁気抵抗効果素子Cとワード線Wとを図12の構造よりも接近させることができる。その結果として、ワード線Wからの書き込み磁界を磁気抵抗効果素子に対してより効果的に作用させることができる。
【0127】
本具体例のメモリアレーの動作については、図12に関して前述したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0128】
図15は、図14に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。図15においても、簡単のために、ビット線Bw及びBr、磁気抵抗効果素子C、ワード線W、リードLのみを表し、それら以外の要素は省略した。
【0129】
図15(a)は、図14に表したメモリアレーをそのまま上下に積層させた具体例を表す。つまり、各層のメモリアレーは、それぞれのビット線Bw、Brとワード線Wとを有する。そして例えば、ワード線W1は、それに近接する磁気抵抗効果素子C1のみに対してデータの書き込みを行うために用いられる。
【0130】
またこの場合も、ワード線Wの側壁及び下面を、軟磁性の被覆層SMにより覆うことにより、同一層内及び下層において隣接する磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを防ぎ、書き込みクロストークをさらに効果的に抑制できる。
【0131】
一方、図15(b)は、ワード線Wとビット線Brを上下のメモリアレーで共有するように積層させた具体例を表す。例えば、第1層目の磁気抵抗効果素子C1と第2層目の磁気抵抗効果素子C2は、共通のワード線W1により書き込みが行われる。また、これらは共通のビット線Brにより読み出しが行われる。このようにワード線とビット線を共通化すれば、構造が簡略化され、集積度を上げることができ、製造コストも下げることができる。
【0132】
またこの場合、ワード線の側壁を軟磁性の被覆層SMで覆うことにより、周囲の磁気抵抗効果素子に向けて書き込み磁界が漏洩するのを抑制し、書き込みクロストークをさらに効果的に防ぐことができる。ビット線Bwについても同様である。
【0133】
図14及び図15に表したメモリアレーの場合も、その平面配置は、図9に表したものと同様とすることができる。すなわち、図9(a)に表したように、非対称形状の磁気抵抗効果素子を隣接する層間、すなわち上下方向において同一の方向に配置することにより、上下の磁気抵抗素子の間での書き込みクロストークを防ぐことができる。
【0134】
また、図9(b)に表したように、同一層内において隣接する磁気抵抗効果素子を非対称の方向が互いに反対になるように配置することにより、これらの間の書き込みクロストークを抑制することができる。
【0135】
またさらに、図6に例示したように、ビット線とワード線とを垂直でなく、傾斜させて交差させることによっても、同様の効果が得られる。
【0136】
【実施例】
以下、実施例を参照しつつ本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
【0137】
(第1の実施例)
まず、本発明の第1の実施例として、図14に表した単純マトリックス構造のメモリアレーを基本として、3×3個のセルを有するメモリアレーを2層積層させた磁気メモリを形成した。
【0138】
図16(a)は本実施例において製作した磁気メモリの断面図であり、図16(b)はその第1層及び第2層のメモリアレーの平面図である。
【0139】
この磁気メモリの構造について、その製造手順に沿って説明すれば、以下の如くである。
【0140】
図示しない基板上に、まず、下層のビット線Bw1として、Al−Cu(5%)/Taからなる厚み1μmの配線層をスパッタ法により成膜する。しかる後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行い、強磁性トンネル接合を有するTMR素子C1の積層構造膜をスパッタ法により成膜した。その各層の材質及び層厚は、下側から順に、Ta(5nm)/Ru(3nm)/Ir−Mn(9nm)/CoFe(3nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)/AlOx(1nm)/CoFeNi(2nm)/AlOx(1nm)/CoFe(3nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)/IrMn(9nm)/Ta(9nm)/Ru(30nm)とした。
【0141】
次に、最上層のRu層をハードマスクとして用い、塩素系のエッチングガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)により下側のAlOx層まで積層構造膜をエッチングすることにより、TMR素子の孤立パターンを作製した。この際に、それぞれのTMR素子が、図16(b)に表したように非対称であり、同一層内で非対称の向きが交互に配列されるようにパターニングした。
【0142】
その次に、イオンミリングを用いてAl−Cu(5%)/Ta配線まで選択的にエッチングすることより、下層のビット線Bw1を形成した。
【0143】
その後、絶縁体としてSiOxをスパッタ法により堆積してCMPにより平坦化した後、リードLとしての金属コンタクト層M1,M2をビット線Bw1と同様に成膜、パターニングにより形成した。さらに、この上にSiOxを堆積してCMPにより平坦化を行った。
【0144】
その後、メッキ法を用いてCu層を形成しパターニングすることにより、ワード線Wとビット線Br1、Br2を形成した。この後、SiOxの堆積、CMPによる平坦化、成膜、パターニングなどの工程を適宜繰り返すことにより、金属コンタクト層M4、M5、TMR素子C2、ビット線Bw2を順に形成して、図16に表した磁気メモリを製作した。
【0145】
また、これとは別に、比較例として、TMR素子をビット線Bwの長軸方向に対して線対称にした長方形のTMR素子を用いた磁気メモリも作製した。
【0146】
これら本発明と比較例の磁気メモリは、その後、磁場を印加可能な熱処理炉に導入し、TMR素子の磁気記録層に一軸異方性を、磁気固着層に一方向異方性をそれぞれ導入した。
【0147】
このようにして製作した本発明及び比較例の磁気メモリにおいて、書き込みクロストークの影響を調べる実験を行った。すなわち、100ナノ秒の電流パルスを配線に流すことによって、下層の9つのTMR素子C1に、「0」、「1」の書きこみをに順番に行い、上層の9つのTMR素子C2については、そのたびに読み出しを行ってクロストークの影響を調べた。なおここで、TMR素子C2の初期状態としては、全て磁化固着層と磁気記録層の磁化を平行に揃えた。
【0148】
図17は、上層の9つのTMR素子C2の出力の平均値の変化を表すグラフ図である。同図から分かるように、比較例においては、下層のTMR素子C1に対する書きこみ回数が増加すると、上層のTMR素子C2の読み出し出力(すなわち抵抗値)が徐々に変化した。これは、下層のTMR素子C1に書き込みを実行する際に、上層のTMR素子C2に対してクロストークが生じているためである。
【0149】
これに対して、本発明によれば、下層のTMR素子C1の書き込みを繰り返しても上層のTMR素子C2の出力は変化せず、書き込みクロストークが解消されたことを実証できた。
【0150】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例として、図10に表した「はしご型」構造のメモリアレーを基本として、3×3個のセルを有するメモリアレーを2層積層させた磁気メモリを形成した。
【0151】
図18(a)は本実施例において製作した磁気メモリの断面図であり、図16(b)はその第1層及び第2層のメモリアレーの平面図である。
【0152】
この磁気メモリの構造について、その製造手順に沿って説明すれば、以下の如くである。
【0153】
図示しない基板上に、まず、下層のビット線Bw1として、Al−Cu(5%)/Taからなる厚み1μmの配線層をスパッタ法により成膜する。しかる後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行い、強磁性トンネル接合を有するTMR素子C1の積層構造膜をスパッタ法により成膜した。
【0154】
その各層の材質及び層厚は、下側から順に、Ta(5nm)/Ru(3nm)/Pt−Mn(12nm)/CoFe(3nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)/AlOx(1nm)/CoFeNi(2nm)/Ru(1.5nm)/CoFeNi(2nm)/AlOx(1nm)/CoFe(3nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)/IrMn(9nm)/Ta(9nm)/Ru(30nm)とした。
【0155】
この後のプロセスは、第1実施例に関して前述したものと概略同様であるのでその説明は省略する。
【0156】
また、これとは別に、比較例として、TMR素子の形状をビット線の長軸方向に対して線対称にした長方形のTMR素子を用いた磁気メモリも作成した。
【0157】
これら本発明と比較例の磁気メモリは、その後、磁場を印加可能な熱処理炉に導入し、TMR素子の磁気記録層に一軸異方性を、磁気固着層に一方向異方性をそれぞれ導入した。
【0158】
このようにして製作した本発明及び比較例の磁気メモリにおいて、第1実施例と同様に、書き込みクロストークの影響を調べる実験を行った。すなわち、100ナノ秒の電流パルスを配線に流すことによって、下層の9つのTMR素子C1に、「0」、「1」の書きこみをに順番に行い、上層の9つのTMR素子C2については、そのたびに読み出しを行ってクロストークの影響を調べた。なおここでも、TMR素子C2の初期状態としては、全て磁化固着層と磁気記録層の磁化を平行に揃えた。
【0159】
図19は、上層の9つのTMR素子C2の出力の平均値の変化を表すグラフ図である。同図から分かるように、比較例においては、下層のTMR素子C1に対する書きこみ回数が増加すると、上層のTMR素子C2の読み出し出力が大きく上昇した。これは、下層のTMR素子C1に書き込みを実行する際に、上層のTMR素子C2に対してクロストークが生じているためである。
【0160】
これに対して、本発明によれば、下層のTMR素子C1の書き込みを繰り返しても上層のTMR素子C2の出力は変化せず、書き込みクロストークが解消されたことを実証できた。
【0161】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗効果素子を構成する強磁性体層、絶縁膜、反強磁性体層、非磁性金属層、電極などの具体的な材料や、膜厚、形状、寸法などに関しては、当業者が適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の範囲に包含される。
【0162】
同様に、本発明の磁気メモリを構成する各要素の構造、材質、形状、寸法についても、当業者が適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の範囲に包含される。
【0163】
また、本発明は、長手磁気記録方式のみならず垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気再生装置についても同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0164】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気メモリを基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気メモリも同様に本発明の範囲に属する。
【0165】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、メモリアレーを積層した磁気メモリにおいて、目的の磁気抵抗効果素子に対する書き込みを行うために第1の配線と第2の配線とに電流を流すことにより得られる書き込み磁界の作用が、目的の磁気抵抗効果素子と、これに隣接する上下の磁気抵抗効果素子とに対して異なるように作用させることができる。その結果として、上下の磁気抵抗効果素子の間の書き込みクロストークを解消することができる。
【0166】
すなわち、本発明によれば、書き込みクロストークを抑制しつつ複数のメモリアレーを積層させた高集積度の磁気メモリを実現することができ、産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気メモリの単位セルを単純化して表した模式図であり、同図(a)は、その平面構成、(b)はその断面構成を表す。
【図2】本発明を適用しない比較例を表す模式図である。
【図3】本発明の具体例の作用を説明する模式図である
【図4】本発明における磁気抵抗効果素子の磁気記録層の平面形態の他の具体例を表す模式図である。
【図5】図4(a)に例示した形状の磁気抵抗効果素子を形成するためのレチクルのパターン形状を表す模式図である。
【図6】ビット線とワード線とを傾斜させた具体例を説明する模式図である。
【図7】メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第1の具体例を表す模式図である。
【図8】図7に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。
【図9】図8に表した積層メモリアレーの平面配置を例示する模式図である。
【図10】メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第2の具体例を表す模式図である。
【図11】図10に表した「はしご型」メモリアレーを積層した状態を表す模式図である。
【図12】メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第3の具体例を表す模式図である。
【図13】図12に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。
【図14】メモリアレーを積層化できるアーキテクチャの第4の具体例を表す模式図である。
【図15】図14に表したメモリアレーを積層した状態を表す模式図である。
【図16】(a)は本発明の第1実施例において製作した磁気メモリの断面図であり、(b)はその第1層及び第2層のメモリアレーの平面図である。
【図17】上層の9つのTMR素子C2の出力の平均値の変化を表すグラフ図である。
【図18】(a)は本発明の第2実施例において製作した磁気メモリの断面図であり、(b)はその第1層及び第2層のメモリアレーの平面図である。
【図19】上層の9つのTMR素子C2の出力の平均値の変化を表すグラフ図である。
【符号の説明】
B、B1〜B4 ビット線
Br 読み出し用ビット線
Bw 書き込み/読み出し用ビット線
C 、C1〜C4磁気抵抗効果素子
D ダイオード
L リード
L1、L2 金属コンタクト層
SA センスアンプ
SM 被覆層
ST、STb、STW 選択トランジスタ
W、W1、W2 ワード線
Claims (8)
- 第1の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の磁気抵抗効果素子の上に延設された第1の配線と、
前記第1の配線の上に設けられた第2の磁気抵抗効果素子と、
前記第2の磁気抵抗効果素子の上において前記第1の配線と交差する方向に延設された第2の配線と、
を備え、
前記第1及び第2の磁気抵抗効果素子は同一方向の磁化異方性を有する磁気記録層を有し、
前記第1及び第2の配線に電流を流すことにより形成される磁界によって前記第2の磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層の磁化が反転可能とされ、
前記第1及び第2の磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部は前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して同一の方向に傾斜してなることを特徴とする磁気メモリ。 - マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子を有する第1のメモリアレーと、
前記第1のメモリアレーの上に積層され、マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子を有する第2のメモリアレーと、
を備え、
前記第1及び第2のメモリアレーのそれぞれには、その磁気抵抗効果素子の下に延設された第1の配線と、その磁気抵抗効果素子の上において前記第1の配線と交差する方向に延設された第2の配線と、が設けられ、
前記第1及び第2の配線に電流を流すことにより形成される磁界によってこれらの間に配置された磁気抵抗効果素子の磁気記録層の磁化が反転可能とされ、
前記第1及び第2のメモリアレーにおける上下の前記磁気抵抗効果素子の前記磁気記録層は同一方向の磁化異方性を有し、これら磁気記録層の磁化方向の少なくとも一部は前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかに対して同一の方向に傾斜してなることを特徴とする磁気メモリ。 - 前記第1のメモリアレーに設けられた前記第2の配線と、前記第2のメモリアレーに設けられた前記第1の配線と、が共通化されてなることを特徴とする請求項2記載の磁気メモリ。
- 前記第1及び第2のメモリアレーのそれぞれにおいて、前記マトリクス状に配置された複数の磁気抵抗効果素子は、第1の形状に形成された磁気記録層を有する磁気抵抗効果素子と、前記第1の形状とは異なる第2の形状に形成された磁気記録層を有する磁気抵抗効果素子と、が交互に配置されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気メモリ。
- 前記磁気記録層は、前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかの長軸に対して、非対称に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気メモリ。
- 前記第1の配線と前記第2の配線とが交差する角度は、90度以外であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気メモリ。
- 前記磁気記録層は、その幅Dと長さLとの比L/Dが1.2よりも大きく、且つその長さLの方向に沿った一軸異方性が付与されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気メモリ。
- 前記第1及び第2の配線の少なくともいずれかは、その側面に軟磁性材料からなる被覆層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気メモリ。
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