JP4070589B2 - 釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は釣竿、特に竿先側の竿体を竿元側の竿体内に収納した収納状態で固定可能な振出式の釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の竿体が引き出し可能に収納された振出竿が知られている。この振出竿は、互いに直径の異なる複数本の竿体から構成され、竿元側の竿体ほどその直径が大きく、竿先側の竿体がその竿元側の竿体内部に挿入できるようになっている。そして、最も竿元側の竿体(いわゆる元竿)に、それよりも竿先側の竿体を順次挿入することによりコンパクトな状態にすることができる。尚、元竿に続く竿先側の竿体、即ち、元竿から数えて2番目に位置する竿体は、一般に元上竿と称されている。
【0003】
一方、釣りを行う際には、収納されている各竿体を元竿の竿先側端部から順次引き出していって使用するが、この際、各竿体の竿元側端部の内周面がそれに続く竿元側の竿体の竿先側端部の外周面に嵌合することによって、各竿体が抜けないようになっている。このため、元竿から穂先竿まで一直線に連結された状態で振出竿が使用可能となる。
【0004】
また、このような振出竿には、状況によって使用長さを変更できるようにした釣竿も存在する。これは、いわゆる伸縮機構を採用した伸縮式の振出竿であって、例えば、元竿に元上竿を挿入した状態、一般には元上竿の略全長を元竿内に挿入することから収納状態と称されるこの状態において、元上竿の竿元側端部が元竿の竿元側端部と嵌合するように構成されており、摩擦抵抗によってその状態を保持する構成となっている。従って、元上竿を元竿から最も引き出した状態(これは伸張状態と称される)で固定する他に、収納状態でも固定することができるため、釣人はこれら二つの固定状態を適宜使い分けることによって竿の使用長さを状況に応じて変更しながら釣りを行うことができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−266194号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の伸縮式の釣竿は、上述の如く、収納状態において元竿と元上竿とが両者の摩擦抵抗によって固定される構造を採用しているため、製造時、適正な嵌合状態を得るための厳しい寸法管理が要求される。具体的には、元竿と元上竿とをリーマを用いて現合により寸法調整するのであるが、この調整作業の煩雑さによって製造コストが悪化するという問題がある。また、リーマ等の使用により嵌合面が粗くなりやすいため、スムーズな嵌合状態とはなりにくい。しかも、両者の寸法精度に起因した摩擦抵抗によって嵌合力を得る構造であるため、長期の使用によって摩耗が生じた場合には寸法精度が悪化する結果、嵌合状態(嵌合力)が変化しやすいという問題も潜在的に有している。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、製造時において厳しい寸法管理を必要とせず、収納操作をスムーズに行うことができ、竿先側の竿体と竿元側の竿体とを収納状態で確実に且つ安定的に固定させることができ、しかも長期の使用にも耐えうる釣竿を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る釣竿は、竿元側の竿体1と、該竿元側の竿体1に引き出し可能に挿入された竿先側の竿体2と、互いに嵌合することで竿先側の竿体2を竿元側の竿体1内に収納した収納状態で固定可能な雄嵌合部3と雌嵌合部4とを備えた釣竿において、前記嵌合部3,4のうち少なくとも一方は、他方の嵌合部に対応して径方向に弾性変形可能な可動部41を備えていることを特徴とする。
【0009】
かかる釣竿によれば、雄嵌合部3と雌嵌合部4とが嵌合することにより竿元側の竿体1と竿先側の竿体2とを収納状態で固定することができる。この際に雄嵌合部3及び雌嵌合部4に多少の寸法誤差があっても、一方の嵌合部に設けられた可動部41が他方の嵌合部に合わせて径方向に弾性変形するため、両嵌合部3,4を確実に、しかも、スムーズに嵌合させることが可能となる。また、雌嵌合部4を雄嵌合部3よりも小さく形成することで可動部41を積極的に弾性変形させ、該可動部41の弾性力によって他方の嵌合部に径方向から固定力を生じさせて両嵌合部3,4を嵌合状態で確実且つ安定的に固定させることができ、両者の寸法精度のみに頼るのではなく径方向の弾性変形を積極的に利用するので、使用により摩耗しても嵌合状態は変化しにくく、安定した嵌合力が維持される。
【0010】
また、本発明に係る釣竿は、可動部41は、径方向に可撓性を備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
かかる釣竿によれば、竿先側の竿体2を軸方向に移動させて竿元側の竿体1内に収納すると可動部41が径方向に撓むようになっている。即ち、雌嵌合部4が雄嵌合部3よりも小さい場合、可動部41が雄嵌合部3の移動に伴って軸方向に弾性変形することなく、径方向に弾性変形するようになっている。
【0012】
また、本発明に係る釣竿は、前記可動部41は、環状に配置された軸方向に延びる複数の可撓片であることを特徴とする。
【0013】
かかる釣竿によれば、両嵌合部3,4が嵌合状態になった際に、径方向に撓んだ複数の可動部41の弾性力が他方の嵌合部の周方向全周に作用するため、両嵌合部3,4を安定した状態で嵌合させることができる。
【0014】
また、本発明に係る釣竿は、両嵌合部3,4の固定力が大きくなる方向に可動部41を付勢する付勢部材6を備えていることを特徴とする。
【0015】
かかる釣竿によれば、両嵌合部3,4の固定力がさらに大きくなるため、竿元側の竿体1と竿先側の竿体2とを収納状態で強固に固定することができる。
【0016】
また、前記各可動部41と同心に配置されて両嵌合部3,4の固定力が大きくなる方向に各可動部41を付勢する環状の付勢部材5を備えていることを特徴とする。
【0017】
そうすれば、竿元側の竿体1と竿先側の竿体2とを収納状態で強固に固定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第一実施形態を添付図面を参照して説明する。図1及び図2は、本実施形態における釣竿の竿元側の所定領域を概略的に示した断面図であり、図1は、元竿1に元上竿2が最大限挿入された、いわゆる収納状態であり、図2は、収納状態から元上竿2を竿先側に所定量だけ引き出した状態を示している。図1及び図2に示す如く、元上竿2は、元竿1に引き出し可能に挿入されていて、元竿1に対して伸縮自在となっており、本実施形態において元上竿2が竿先側の竿体に、元竿1が竿元側の竿体に該当する。尚、図示はしないが、元上竿2の内部には、1以上の竿体が順次引き出し可能に挿入されている。これらの竿体は、元上竿2から引き出した際に一般に最も竿先側に位置するものを穂先竿、該穂先竿と元上竿との間に位置するものを中竿と称する。
【0019】
前記元竿1及び元上竿2は、竿先側に向けて小径化する先細りテーパー状に形成され、元竿1よりも元上竿2を小径に形成することで、元竿1の内部に元上竿2が格納されている。また、元竿1の竿先側端部の内周面は元上竿2の竿元側端部の外周面よりも小径に形成されている。従って、元竿1の竿先側端部から元上竿2が最大限引き出された、いわゆる伸張状態において、竿先側端部の内周面が元上竿2の竿先側端部の外周面と嵌合することにより、元竿1と元上竿2とが伸張状態で固定される。かかる元竿1及び元上竿2は、炭素繊維又はガラス繊維などの強化繊維に合成樹脂を含浸させたプリプレグを用いて成型し、硬化させるべく焼成することによって形成されている。
【0020】
また、本第一実施形態にかかる釣竿には、図1及び図2に示す如く、互いに嵌合することで元竿1と元上竿2とを収納状態で固定可能な尻栓(雄嵌合部)3と元上尻栓(雌嵌合部)4とが設けられている。尻栓3は、元竿1の竿元側端部に取り付けられていると共に、元上尻栓4は、元上竿2の竿元側端部に取り付けられており、元上竿2を元竿1に収納すると元上尻栓4と尻栓3とが互いに嵌合して(元上尻栓4に尻栓3が嵌入して)元竿1と元上竿2とが収納状態で固定される。(図1参照)
【0021】
前記尻栓3は、元竿1の竿元側端部の内周面に形成された雌ねじ部10に着脱可能に螺合されて、当該元竿1の竿元側端部の開口を閉塞するように設けられている。かかる尻栓3は、前記雌ねじ部10に螺着された尻栓本体30と、ゴムや金属、あるいは合成樹脂などからなり、該尻栓本体30に取付られたキャップ31とを備え、元竿1に装着した際にキャップ31が竿元側に向けて外部に露出することにより元竿1の竿元側端部が保護されている。
【0022】
尻栓本体30は、円盤状のベース35と、該ベース35の周縁から竿先側に向けて突設された螺合部33と、該螺合部33の内側でベース35から竿先側に向けて突設された嵌合突起34とを備えている。
【0023】
前記螺合部33は、円筒状に形成され、その外周面には前記雌ねじ部10と螺合する雄ねじ部32が形成されている。嵌合突部34は、円筒状に形成され、前記螺合部33と同心に配置されている。従って、尻栓3を元竿1に装着した際に嵌合突部34の軸線と元竿1の軸線とが同軸となる。また嵌合突部34は、その直径が元竿1の竿元側端部の内径のほぼ1/2に寸法設定されており、その先端部(竿先側端部)の外周面が先細りのテーパ状に形成されている。
【0024】
元上尻栓4は、元上竿2の竿元側端部の内周面に形成された雌ねじ部20に螺着されており、前記尻栓3と嵌合することで、尻栓3の形状に合わせて径方向に弾性変形可能に構成されている。詳細に説明すると、元上尻栓4は、略円筒状の外壁部40と、該外壁部40の内側に配置された複数の可動部41と、外壁部40と可動部41とのそれぞれの竿先側端部を連結する連結部42とを備えている。
【0025】
前記外壁40は、その外径が元上竿2の竿先側端部の外径と略同一に形成されており、竿先側の外周面には雄ねじ部44が形成されている。そして、該雄ねじ部44が、前記雌ねじ部20と螺合することにより元上竿2の竿元側端部に着脱可能に取付られる。
【0026】
前記可動部41は、外壁部40の内側に所定の環状隙間を介して外壁部40と同心となるように環状に配置されている。詳しくは、可動部41は、図3及び図4に示す如く、軸方向に延びる複数の可撓片に形成され、可動部41によって前記嵌合突部34が挿入可能な円柱状の挿入空間46が形成されている。言い換えれば、可動部41は、円筒状の筒体を軸方向に伸びるスリット45によって周方向に分断することで軸方向に延びる可撓片に形成され、その径方向断面が扇状に形成されている。本第一実施形態においてスリット45は、径方向に等間隔を隔てて4箇所に設けられており、これにより可動部41は、合計4つが形成されている。また、可動部41の周方向の長さは、スリット45の周方向の長さよりも長尺に形成されている。また、可動部41と嵌合突部34とは、軸方向の長さが略同一に形成され、その長さは嵌合突部34の外径よりも長く設定されている。
【0027】
かかる可動部41は、連結部42を支点として、径方向に可撓性を有しており、前記挿入空間46に嵌合突部34が挿入されると、径方向に弾性変形するように構成されている。詳細には、可動部41によって形成された挿入空間46の直径(以下、可動部41の内径と称す)のうち、少なくとも先端部(竿元側端部)の直径は、嵌合突部34の外径よりも若干小径に形成されている。即ち、元上尻栓4の挿入空間46に嵌合突部34を挿入することで可動部41が径外方向に弾性変形するように構成されている。詳細には、図1又は図2に示す如く、可動部41は、当該可動部41の内径が嵌合突部34の外径よりも若干小径に形成された小径部41aと、嵌合突部34の外径よりも若干大径に形成された大径部41bとで構成され、小径部41aは、大径部41bの竿元側に配置されている。即ち、可動部41の先端部が小径部41aとなっている。従って、可動部41は、小径部41aが嵌合突部34と嵌合することで径方向に撓むように構成されている。尚、小径部41aの軸方向の長さは、大径部41bのそれよりも短く寸法設定することが好ましい。
【0028】
具体的には、例えば嵌合突部34の外径を12.5mmに形成した場合、可動部41の小径部41aの内径を12.3mmに形成する。このように、可動部41の先端部の内径が嵌合突部34の外径の98.4%程度の長さに寸法設定することが好ましい。
【0029】
可動部41の先端部は、外壁部40のそれよりも若干竿元側に延びており、元上竿2を元竿1内に挿入したときに、可動部41の先端部が尻栓3に設けられた環状のクッションゴム36に当接することで、元上竿2の収納状態での位置決めを行うことができる。
【0030】
ここで、尻栓本体30と元上尻栓4の材質について言及すると、両者は一般には合成樹脂(特に摺動性のよい合成樹脂)から構成される。合成樹脂としてはABSやPBT(ポリブチレンテレフタレート)が使用される。
詳細には、尻栓本体30には、PC/ABS系ポリマーアロイや、ガラス含有のPBT等が使用される。ガラス含有PBTのガラス含有率は20%乃至30%が好ましく、特に、ガラス繊維を30%含有したものや、ガラスビーズを20%含有したものが好ましい。
また、元上尻栓4には、尻栓本体30に使用される上記ものの他に、例えば、PCも使用される。
尚、尻栓本体30と元上尻栓4の各々の材質の組み合わせは任意であって、両者を同種のものとしたり異種のものとしたりする。例えば、尻栓本体30と元上尻栓4の双方に、PC/ABS系ポリマーアロイ(例えば、帝人化成株式会社製の商品名マルチロン)を使用したり、同じく双方にガラス繊維を30%含有したPBTを使用したりすることができる。
また、尻栓本体30や元上尻栓4にメッキを施すこともできる。特に、Ni−Ni−Crメッキが好ましい。尚、尻栓本体30にメッキを施す場合、前記嵌合突起34のみメッキを施さないこともできる。
【0031】
また、元上尻栓4には、付勢部材5が設けられている。該付勢部材5は環状に形成され、その内径が可動部41の先端部(小径部41a)の外径よりも若干小さく寸法設定されていると共に、軸方向の長さが小径部41aの長さと略同一に形成されており、小径部41a外周に外嵌装着されている。即ち、付勢部材5によって、可動部41が径内方向に付勢されて、小径部41aの内径が、嵌合突部34の外径よりもさらに小さくなるように形成されている。具体的には、付勢部材5を設けることによって小径部41aの内径が11.8mmに寸法設定される。即ち、付勢部材5によって小径部41aの内径が嵌合突部34の外径の94.4%程度の長さに寸法設定される。
【0032】
かかる付勢部材5は、天然ゴムや合成ゴムなどで形成されており、好ましくはシリコンゴムで形成されている。尚、付勢部材5は、元上尻栓4に着脱自在に取り付けられていることが好ましい。
【0033】
さらに、元上尻栓4の竿先側には、略円盤状のゴム座43が設けられている。該ゴム座43は、その外径が元上竿2の竿元側端部の内径と略同一に形成され、外ゴム座43によって元上竿2の竿元側端部が閉塞されている。そして、前記中竿や穂先竿を元竿1内に収納したときに、それらの竿元側端部が当接することでクッションとなるように構成されている。
【0034】
本第一実施形態に係る釣竿は、以上の如く形成され、伸張状態から収納状態にすると、尻栓3の嵌合突部34が元上尻栓4の可動部41の内部空間に挿入されることで尻栓3と元上尻栓4とが嵌合して元竿1と元上竿2とが収納状態で固定される。このとき、可動部41が径方向に弾性変形可能であるので、嵌合突部34の外径寸法と可動部41の内径(挿入空間46の外径)寸法に多少のバラツキがあっても尻栓3と元上尻栓4とを嵌合させて、元竿1と元上竿2とを収納状態で固定させることができる。そして、上述の如く可動部41の小径部41aの内径を嵌合突部34の外径よりも積極的に小径にすることで、嵌合状態では可動部41が径外方向に撓んで当該可動部41の弾性力によって尻栓3と元上尻栓4との固定力が生じるため、元竿1と元上竿2とを収納状態で確実に固定させることができる。また、径方向の弾性変形を積極的に利用して嵌合させる構成であるため、収納操作もスムーズに行うことができ、しかも、長期の使用によって仮に摩耗したとしても両者の嵌合状態は変化しにくく、従って、長期間安定した固定力が得られる。
【0035】
可動部41は合成樹脂からなり軸方向に延びる可撓片に形成されているので、嵌合突部34を嵌入する際に、可動部41が嵌合突部34との摩擦によって軸方向に撓むことなく、径方向にのみ弾性変形するので、尻栓3を元上尻栓4に容易に挿入することができる。
【0036】
可動部41を小径部41aと大径部41bとで形成すると共に、軸方向において小径部41aを大径部41bよりも短く寸法設定することにより、嵌合突部34と可動部41との接触面積を小さくして、挿入時の摩擦抵抗を少なくすることができる。
【0037】
さらに、元上尻栓4には、可動部41を径内方向に付勢する付勢部材5が設けられているので、尻栓3と元上尻栓4との固定力をさらに増加させることができる。即ち、尻栓3と元上尻栓4とが嵌合状態の際に、付勢部材5によって可動部41の径内方向への弾性力がさらに大きくなるため、元竿1と元上竿2とを収納状態で確実に固定することが可能となる。
【0038】
該付勢部材5を元上尻栓4に対して着脱可能に設ければ、長時間使用して付勢部材5が経時変化などにより劣化した場合は、該付勢部材5を新しいものに交換することで尻栓3と元上尻栓4との固定力を回復させることができる。また、弾性係数の異なる数種類の付勢部材5を用意しておけば、固定力を調節して釣人の好みに応じて好ましい強さの固定力を得ることができる。
【0039】
尻栓3及び元上尻栓4は、元竿1及び元上竿2にそれぞれ螺着しているので、嵌合突部34及び可動部41が摩耗したときは、尻栓3及び元上尻栓4を交換することもできる。
【0040】
本第一実施形態では、元竿1と元上竿2のそれぞれの竿元側端部に設けられた尻栓3と元上尻栓4とが嵌合するので、収縮状態は即ち元上竿2が元竿1に最大限挿入されたときである。従って、竿の使用長さを元竿1の略全長分変更することができて伸縮機構の効率がよい。
【0041】
次に、本発明に係る釣竿の第二実施形態について図5を参酌して説明する。尚、図5において図1に示す第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。本第二実施形態は、元上尻栓6の構造が前記図1に示す第一実施形態と異なる。
【0042】
元上尻栓6は、図5に示す如く、略円筒状の外壁部60と、外壁部60の内側に所定の環状隙間を介して環状に配置された複数の可動部61とを備え、可動部61によって嵌合突部34が挿入可能な円柱状の挿入空間が形成されている。また、外壁部60と可動部61とはそれぞれの竿先側端部において連結部62によって連結されており、可動部61は、竿元側端部を支点にして径方向に弾性変形可能に形成されている。
【0043】
前記外壁部60の竿先側端部の外周面には、元上竿2の竿元側端部に形成された雌ねじ部20と螺合する雄ねじ部64が形成されて元上竿2の竿元側端部に螺着されている。
【0044】
可動部61は、その内径(挿入空間の直径)が嵌合突部34の外径よりも若干小径に形成された小径部61aと、嵌合突部34の外径よりも若干大径に形成された大径部61bとで構成され、小径部61aは、大径部61bの竿元側に配置されている。即ち、可動部61の基端部(竿元側端部)が小径部61aとなっている。従って、可動部61は、小径部61aが嵌合突部34と嵌合することで径方向に撓むように構成されている。尚、小径部61aの軸方向の長さは、大径部61bのそれよりも短く寸法設定することが好ましい。
【0045】
また、元上尻栓6の竿先側端部には、略円盤状のゴム座63が設けられており、該ゴム座63には竿元側に向けて略環状の付勢部材65が突設されている。即ち、ゴム座63と付勢部材65とは一体的に成形されている。かかる付勢部材65の内径は、可動部61の先端部(大径部61b)の外径よりも若干小径に形成されており、各可動部61を径内方向に付勢するように構成されている。かかるゴム座63及び付勢部材65は、天然ゴムや合成ゴムなどで形成されており、好ましくはシリコンゴムで形成される。
【0046】
本第二実施形態に係る釣竿によれば、前記同様に、嵌合突部34が可動部61によって形成された挿入空間に挿入されると可動部61が径外方向に弾性変形するので、尻栓3と元上尻栓4とを容易に嵌合させて、元竿1と元上竿2とを収納状態で確実に固定することができる。そして、付勢部材65とゴム座63とが一体に成形されているので、前記第一実施形態に比して部品点数を削減して、組み立てを容易に行うことができる。
【0047】
尚、本発明の釣竿は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第一及び第二実施形態においては、可動部41,61は元上尻栓4に設けられているが、尻栓3に設けられていてもよい。具体的には、例えば、嵌合突部34に軸方向に延びる複数のスリットを設けることによって、軸方向に延びる複数の可撓片(可動部)としてもよい。そうすれば、嵌合突部34が径内方向に弾性変形可能となるので寸法に多少のバラツキがあっても、尻栓3と元上尻栓4とを容易に嵌合させることができる。つまり、尻栓3と元上尻栓4のうちの一方が、径方向に弾性変形可能な可動部を備えていればよい。
【0048】
付勢部材5,65は、必ずしも設ける必要はない。可動部41,61の弾性力で尻栓3と元上尻栓4との固定力が十分に発生して、元竿1と元上竿2とが収納状態で固定可能である場合は、付勢部材5,65はなくてもよい。
【0049】
可動部41は4つに限定されるものではなく、可動部41が径方向に可撓性を備えていれば(弾性変形可能であれば)3つ以下または5つ以上であってもよい。
【0050】
本第一及び第二実施形態においては、尻栓3と元上尻栓4とが嵌合するように構成されているが、例えば、元上竿2の竿元側端部に軸方向に延びるスリットを設けると共に、元上竿2の竿元側端部の外周面と元竿1の竿元側端部の外周面とが嵌合する構造としてもよい。かかる場合、元上竿2の竿元側端部が径内方向に弾性変形することにより、元竿1と元上竿2とを収納状態で容易に固定させることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上の如く、本発明に係る釣竿は、径方向に弾性変形可能な可動部を設けることにより、雄嵌合部と雌嵌合部とを確実に嵌合させて、竿先側の竿体と竿元側の竿体とを収納状態で確実且つ安定的に固定させることができる。また、製造時に厳しい寸法管理を必要としないため、製造コストの低減を図ることができる。また、両者の寸法精度のみに頼る従来の構成とは異なり、径方向の弾性変形を積極的に利用する構成であるため、使用で摩耗が生じても嵌合状態が変化しにくく、長期間安定した性能が確保されやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る釣竿の尻栓及び元上尻栓近傍を概略的に示した断面図であって、尻栓と元上尻栓とが嵌合した状態を示す。
【図2】本発明の第一実施形態に係る釣竿の尻栓及び元上尻栓近傍を概略的に示した断面図であって、尻栓と元上尻栓とが離間した状態を示す。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】第一実施形態に係る尻栓及び元上尻栓を示す斜視図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る釣竿の竿元側の所定領域を概略的に示した断面図である。
【符号の説明】
1…元竿(竿元側の竿体)、2…元上竿(竿先側の竿体)、3…尻栓(雄嵌合部)、4…元上尻栓(雌嵌合部)、5,65…付勢部材、10,20…雌ねじ部、30…尻栓本体、31…キャップ、32…雄ねじ部、33…螺合部、34…嵌合突部、35…連結部、40,60…外壁部、41,61…可動部、41a,61a…小径部、41b,61b…大径部、42,62…連結部、43,63…ゴム座、44,64…雄ねじ部、45…スリット
Claims (3)
- 竿元側の竿体(1)と、該竿元側の竿体(1)に引き出し可能に挿入された竿先側の竿体(2)と、互いに嵌合することで竿先側の竿体(2)を竿元側の竿体(1)内に収納した収納状態で固定可能な雄嵌合部(3)と雌嵌合部(4)とを備えた釣竿において、前記嵌合部(3,4)のうちの少なくとも一方は、他方の嵌合部に対応して径方向に弾性変形可能な可動部(41)を備え、前記両嵌合部(3,4)の嵌合状態を維持する固定力が大きくなる方向に可動部(41)を付勢する付勢部材(5)を備えていることを特徴とする釣竿。
- 前記可動部(41)は、径方向に可撓性を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
- 竿元側の竿体(1)と、該竿元側の竿体(1)に引き出し可能に挿入された竿先側の竿体(2)と、互いに嵌合することで竿先側の竿体(2)を竿元側の竿体(1)内に収納した収納状態で固定可能な雄嵌合部(3)と雌嵌合部(4)とを備えた釣竿において、前記嵌合部(3,4)のうちの少なくとも一方は、他方の嵌合部に対応して径方向に弾性変形可能な可動部(41)を備え、該可動部(41)は、環状に配置された軸方向に延びる複数の可撓片であり、前記各可動部(41)と同心に配置されて両嵌合部(3,4)の固定力が大きくなる方向に各可動部(41)を付勢する環状の付勢部材(5)を備えていることを特徴とする釣竿。
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