JP4067994B2 - 燃料ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガソリン等の燃料を吸引して昇圧し、昇圧した燃料を吐出する燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポンプケーシング内で略円板状のインペラを回転させることによって、燃料を吸引して昇圧し、昇圧した燃料を吐出する燃料ポンプが知られている。その一例を図10から図14を用いて説明する。図10は従来の燃料ポンプの断面図であり、図11はポンプカバー9にインペラ16が組付けられた端面図であり、図12はポンプカバー9の端面図であり、図13はポンプボディ15の端面図であり、図14は燃料の流れを示す模式図である。
図10に示すように、燃料ポンプは、ポンプ部1と、そのポンプ部1を駆動するモータ部2とから構成されている。モータ部2によって駆動されるポンプ部1の構成を説明する。ポンプ部1は、ポンプカバー9とポンプボディ15と略円板状のインペラ16等から構成されている。ポンプカバー9とポンプボディ15は、両者が組み合わされることによって、内部にインペラ16を収容するケーシング17を形成する。
【0003】
インペラ16は、図11に示すように略円板状であり、インペラ外周面16pから内側に所定距離を隔てた位置を周方向に伸びる領域において、凹所16a群が形成されている。隣接する凹所16a同士は、半径方向に伸びる隔壁16dによって隔てられている。凹所16aと隔壁16dは、周方向に繰り返されて凹所16a群を形成している。凹所16a群は、インペラ16の表裏両面に形成されており、表裏の凹所16aの底部同士は連通しており、連通口16cが形成されている。
【0004】
図10と図12に示すように、ポンプカバー9の下面には、インペラ16の上面の凹所16a群に対向する領域において、インペラ回転方向に沿って上流端21aから下流端21cまで連続して伸びる溝21が形成されており、溝21の下流端21cからポンプカバー9の上面に至る吐出口24が形成されている。吐出口24は、ケーシング17の内部と外部(モータ部2の内部空間2a)を連通させている。図11に示すように、ポンプカバー9の周壁9bの内周面9cは、ほぼ全周に亘って(図11の角度範囲Aを除外して)、インペラ外周面16pに微小なクリアランスC2を隔てて向い合っている。吐出口24の近傍の角度範囲Aでは半径方向外側に張り出し、ポンプカバー内周面9cとインペラ外周面16pの間に大きなクリアランスC1が確保されている。
【0005】
図10と図13に示すように、ポンプボディ15の上面には、インペラ16の下面の凹所16a群に対向する領域において、インペラ回転方向に沿って(図12と図13では、見る方向が反対のためにインペラの回転方向が反対向きに表示される)、上流端20aから下流端20cまで連続して伸びる溝20が形成されており、溝20の上流端20aからポンプボディ15の下面に至る吸入口22が形成されている。吸入口22は、ケーシング17の内部と外部を連通させている。
【0006】
ポンプカバー9の周方向に伸びる溝21と、ポンプボディ15の周方向に伸びる溝20は、インペラ16の回転方向に沿って、吸入口22から吐出口24に至るまで伸びている。インペラ16が回転すると、燃料は吸入口22から吸入され、溝20,21内を吸入口22から吐出口24側に流れ、この間に昇圧され、昇圧された燃料が吐出口24からモータ部2に送り出される。
【0007】
図11、図12に示すように、溝21の下流端の近傍では、溝21は接線方向に直線的に半径方向外側に伸びており、吐出口24は、インペラ16の凹所16a群よりも外周面側に張り出し、インペラ外周面16pとポンプカバー内周面9cとの間のクリアランス26に連通している。インペラ16によって溝20内で昇圧された燃料は、図14に示すように、インペラ外周面16pの外側を経由して吐出口24に流れ込む。即ち、溝20内で昇圧された燃料は、インペラ外周面16pとポンプカバー内周面9cとの間のクリアランス26を経て、吐出口24から吐出される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
クリアランス26においてインペラ外周面16pの外側に流れ込んだ燃料は、インペラ外周面16pに引きずられて、角度範囲A以外で形成されているインペラ外周面16pとポンプカバー内周面9cとの間の微小なクリアランスC2に流れ込む。クリアランスC2に昇圧された燃料が流れ込むとインペラ外周面16pの燃料圧力が上昇する。インペラ外周面16pの燃料圧力が上昇すると、インペラ16の回転を阻止する力が強くなり、インペラ16の回転効率が低下する。
また、図14に示すように、溝20で昇圧された燃料は、クリアランス26を利用してインペラ外周面16pの外側を通過した箇所で、溝21で昇圧された燃料と合流する。このとき、溝21で昇圧された燃料がクリアランス26内に逆流(図中点線矢印で示す)することがある。昇圧された燃料の圧力は、凹所16aが吐出口24を通過する周波数で脈動しており、合流点では、溝20で昇圧された燃料圧力が溝21で昇圧された燃料圧力よりも高い状態と、溝21で昇圧された燃料圧力が溝20で昇圧された燃料圧力よりも高い状態が交互に繰り返されるために、間欠的に逆流する。間欠的に逆流が発生すると、燃料ポンプから脈動音が発生する。
【0009】
本発明では、昇圧した燃料がインペラ外周面の外側を通過しにくくする。そのことによって、インペラ外周面16pとポンプカバー内周面9cの間の微小なクリアランスC2に昇圧燃料が流れ込みにくくする。インペラ外周面16pの燃料圧が上昇しないようにして、インペラ16の回転効率の低下を防ぐ。また昇圧した燃料がインペラ外周面16pの外側を通過してから他方の溝で昇圧された燃料と合流しないようにして、燃料ポンプから発生する脈動音を低下させる。
【0010】
【課題を解決するための手段と作用と効果】
本発明の燃料ポンプは、ケーシング内で回転する略円板状インペラを備えている。略円板状インペラには、外周から内側に所定距離を隔てて周方向に伸びる領域において、凹所群が形成されている。凹所群は、半径方向に伸びる隔壁を隔てて周方向に繰り返す凹所群で形成されており、インペラの表裏両面に形成されている。表裏の凹所の底部同士は連通している。また、ケーシングには、インペラの外周に対向するケーシング内周面が形成されている。ケーシング内周面は全周に亘って半径が一定である円形であり、インペラの外周に対して全周に亘って微小間隔を隔てて対向している。ケーシング内面の前記凹所群に対向する領域には、インペラ回転方向に沿って上流端から下流端まで連続して伸びる溝が形成されている。すなわち、その溝は、ケーシング内周面から内側に所定距離を隔てて周方向に伸びる領域に形成されており、ケーシング内周面と溝の間には所定距離が確保されている。ケーシングには、ケーシング外から溝の上流端に連通する吸入口と、溝の下流端からケーシング外に連通する吐出口が形成されている。インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、インペラの表裏両面の凹所間を連通する連通口によって吐出口に連通している。即ち、インペラ外周面の外側を経由して吐出口の反対側の溝を吐出口に連通させる連通口がなく、インペラの表裏両面の凹所を連通する連通口によって吐出口の反対側の溝が吐出口に連通している。
また、吐出口に直接連通する溝は、下流端近傍において下流端に向かって半径方向外側に変位している。吐出口のケーシング内で開口する開口部は、その一部が前記凹所群に対向する領域よりも半径方向外側に形成されているとともに、その全てがケーシング内周面よりも半径方向内側に形成されている。好ましくは、吐出口のケーシング内で開口する開口部の、インペラの回転方向における端部が前記凹所群に対向する領域の半径方向外側のみに形成されている。
【0011】
従来の燃料ポンプでは、吐出口の反対側の溝で昇圧された燃料を吐出口へ導くために、昇圧された燃料をインペラ外周面の外側に形成されたクリアランスを通過させている。昇圧された燃料をインペラ外周面の外側に形成されたクリアランスを通過させると、インペラ外周面に作用する圧力が上昇する。圧力が上昇すると、インペラの回転を阻止する力が増大することから、ポンプ効率が低下する。
本発明のポンプでは、昇圧された燃料がインペラ外周面の外側を通過しにくいことから、インペラ外周面とポンプカバー内周面の間の微小なクリアランスC2に燃料が流れ込みにくく、インペラ外周面の燃料圧力の上昇が抑制され、インペラの回転効率の低下を抑制する。また昇圧された燃料がインペラ外周面の外側を通過してから他方の溝で昇圧された燃料と合流することがないために、燃料ポンプから発生する脈動音が静粛化される。さらに従来の燃料ポンプでは、図11に示した角度範囲Aとそれ以外とでは、インペラ外周面に作用する燃料圧力が相違する。このために、インペラを回転させるシャフトを支えるベアリングには、角度範囲A(図11の右下)から左上に向かう力が作用し、ベアリングが局所的に磨耗しやすい。本発明のポンプでは、インペラ外周面に作用する燃料圧力が周方向に一様化され、ベアリングが局所的に磨耗することが防止される。
さらに本発明のポンプでは、吐出口に直接連通する溝が半径方向外側に変位しているので、吐出口近傍で燃料が激しく攪拌されて大きな音を発生させる現象が解消し、この点においてもポンプ作動音が静粛化される。吐出口のケーシング内で開口する開口部は、その一部が前記凹所群に対向する領域よりも半径方向外側に形成されているとともに、その全てがケーシング内周面よりも半径方向内側に形成されていることによって、昇圧された燃料がスムースに吐出口へ押出されるため、ポンプ作動音が静粛化される効果がさらに高まる。本発明では、ケーシング内周面と溝との間に半径方向に伸びる距離があることを利用し、ケーシング内周面を円形に維持し、しかも溝を半径方向外側に変位させることに成功している。
さらに本発明のポンプでは、燃料ポンプのケーシング内周面は、インペラの全周に亘って、微小間隙を隔ててインペラ外周面に対向しているので、吐出口に直接には連通しない側の溝から吐出口へ燃料を送る際に、昇圧された燃料がインペラ外周面の外側を通過しない。インペラ外周面とケーシング内周面との間のクリアランスを、インペラの全周に亘って、微小な一定量に調整すると、インペラ外周面に作用する燃料圧の上昇を抑制し、ポンプ効率を向上させることができる。またインペラ外周面に作用する燃料圧を周方向に均一化することができ、インペラを回転させるシャフトに作用する力を周方向に均一化することができる。ベアリングの偏磨耗を抑制することができる。
【0013】
また、インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、インペラの外周内に留まっており、インペラの外周には連通していないことが好ましい。
溝がインペラの外周に連通していないと、吐出口へ燃料を送る際に、昇圧された燃料がインペラ外周面の外側を通過しにくいことから、インペラの回転効率の低下を抑制し、燃料ポンプから発生する脈動音を静粛化する効果がより高まる。
【0014】
さらに、インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、前記凹所群に対向する領域内に留まっていることが好ましい。
溝がインペラに形成された凹所群に対向する領域内に留まっていると、吐出口へ燃料を送る際に、昇圧された燃料が凹所間を連通する連通口にスムースに導かれ、ますますインペラ外周面の外側へ流れ込みにくくなることから、インペラの回転効率の低下を抑制し、燃料ポンプから発生する脈動音を静粛化する効果がさらに高まる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
(形態1) ケーシングに形成されている溝のうち、インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、下流端の近傍において下流端に向かって徐々に溝の深さが浅くなっており、吐出口に直接連通する溝は、下流端の近傍において下流端に向かって徐々に溝の深さが深くなっている。昇圧特性が改善され、ポンプ作動音が静粛化される。
【0017】
【実施例】
本発明を具現化した一実施例を図1から図6を用いて説明する。図1は本実施例の燃料ポンプの断面図であり、図2はポンプカバーにインペラが組付けられた端面図であり、図3はポンプカバーの端面図であり、図4はポンプボディの端面図(組付けられたインペラを一部図示)であり、図5は燃料の流れを示す模式図であり、図6はポンプカバーとインペラとポンプボディの要部断面図である。なお、図1から図5は、従来例の説明に用いた図11から図14のそれぞれに対応しており、共通する部分については同一の符号を付してある。
この実施例の燃料ポンプは、自動車用の燃料ポンプであり、燃料タンク内で用いられ、自動車のエンジンヘ燃料を供給するために利用される。図1に示すように、燃料ポンプは、ポンプ部1と、そのポンプ部1を駆動するモータ部2とから構成されている。モータ部2は、ブラシ付きの直流モータであり、ほぼ円筒形状のハウジング4内にマグネット5を配置し、このマグネット5と同心状に回転子6を配置している。
【0018】
回転子6のシャフト7の下部は、ハウジング4の下端部に取り付けられたポンプカバー39にベアリング10を介して回転可能に支持されている。また、シャフト7の上端部は、ハウジング4の上端部に取り付けられたモータカバー12にベアリング13を介して回転可能に支持されている。
【0019】
モータ部2は、モータカバー12に設けられた端子(図示省略)を介して回転子6のコイル(図示省略)に通電することにより、その回転子6を回転させる。なお、このようなモータ部2の構成は周知であるから、詳しい説明は省略する。また、図示した形式以外のモータ部を利用することもできる。
【0020】
モータ部2によって駆動されるポンプ部1の構成を説明する。ポンプ部1は、ポンプカバー39とポンプボディ15とインペラ16等から構成されている。ポンプカバー39とポンプボディ15は、例えばアルミのダイカスト成形により形成されており、両者が組み合わされることによって、内部にインペラ16を収容するケーシング17が構成される。
【0021】
インペラ16は樹脂成形により形成され、図2に示すように略円板状であり、インペラ外周面16pから内側に所定距離を隔てた位置を周方向に伸びる領域において、凹所16a群が形成されている。隣接する凹所16a同士は、半径方向に伸びる隔壁16dによって隔てられている。凹所16aは周方向に繰り返されて凹所16a群を形成している。凹所16a群は、インペラ16の表裏両面に形成されており、表裏の凹所16aの底部同士は連通しており、連通口16cが形成されている。
インペラ16の中心には、ほぼD字形の係合孔16nが形成されている。係合孔16nに、シャフト7の下端部の断面D字形の係合軸部7aが係合している。これにより、インペラ16がシャフト7に対し追従回転可能で軸方向に僅かに移動可能に連結されている。インペラ16の外周面16pは凹凸のない円周面となっている。
【0022】
図1と図3に示すように、ポンプカバー39の下面には、インペラ16の上面の凹所16a群に対向する領域において、インペラ回転方向に沿って上流端31aから下流端31cまで連続して伸びる溝31が形成されており、溝31の下流端31cからポンプカバー39の上面に至る吐出口34が形成されている。吐出口34は、ケーシング17の内部と外部(モータ部2の内部空間2a)を連通させている。
図2に示すように、ポンプカバー39の周壁39bの内周面39cは、全周に亘って、インペラ外周面16pに微小なクリアランスC2を隔てて向い合う。図示の明瞭化のために、クリアランスC2は拡大されて表示されている。
ポンプカバー39の溝31は、下流端近傍において、吐出口34に近づくにつれて徐々に溝の深さが深くなる逃し溝31bを有する。逃し溝31bは、下流端31cに向かってインペラ外周面16pの範囲内で半径方向外側に変位している。吐出口34の終端部は、図2に示すように、インペラ16の凹所16a群に対向する領域の半径方向外側に形成されている。即ち、吐出口34の終端部は凹所16a群と重ならないように形成されている。
【0023】
図1と図4に示すように、ポンプボディ15の上面には、インペラ16の下面の凹所16a群に対向する領域内において、インペラ回転方向に沿って(図3と図4では、見る方向が反対のためにインペラの回転方向が反対向きに表示される)上流端20aから下流端20cまで連続して伸びる溝20が形成されており、溝20の上流端20aからポンプボディ15の下面に至る吸入口22が形成されている。吸入口22は、ケーシング17の内部と外部を連通させている。溝20は、下流端20c近傍において、下流端20cに近づくにつれて徐々に溝の深さが浅くなる逃し溝20bを有する。なお、逃し溝20bは、インペラ16の凹所16a群に対向する領域内に留まっている。
溝20の中間位置よりも若干上流位置の内側には、ベーパジェット40が形成されている。ベーパジェット40は、燃料が吸入口22から溝20に吸い込まれて減圧されたときに発生するベーパをケーシング17外に排出する。
ポンプボディ15は、ポンプカバー39に重ねた状態でハウジング4の下端部にかしめ付け等により固定されている。ポンプボディ15の中心部にスラストベアリング18が固定されている。スラストベアリング18によって、シャフト7のスラスト荷重が受けられる。
【0024】
図5では、図示の明瞭化のために、各所のクリアランスが拡大されて表示されている。ポンプボディ15の溝20は、直接的には吐出口34に連通していない。ポンプカバー39の周壁39bは、吐出口34の位置においてもインペラ外周面16pに近接しており(図5では、クリアランスC2を拡大して表示しているが、実際には極めて狭い)、インペラ外周面16pの外側では、溝20と吐出口34は実質的には連通していない。溝20と吐出口34はインペラ16の連通口16cによって連通されている。
【0025】
ポンプカバー39の周方向に伸びる溝31と、ポンプボディ15の周方向に伸びる溝20は、インペラ16の回転方向に沿って、吸入口22から吐出口34に至るまで伸びている。インペラ16が回転すると、燃料タンク内の燃料は吸入口22からケーシング17内に吸入される。吸入口22から吸入された燃料の一部は、溝20に沿って流れる。吸入口22から吸入された燃料の残部は、インペラ16の連通口16cを通過して溝31に入り、溝31に沿って流れる。溝20,31に沿って燃料が流れるうちに燃料は昇圧される。溝31を流れて昇圧された燃料は、吐出口34からモータ部2に送り出される。溝20を流れて昇圧された燃料は、インペラ16の連通口16cを通過して溝31で昇圧された燃料と合流する。合流後に、吐出口34からモータ部2に送り出される。モータ部2に送り出された高圧燃料は吐出口28からポンプ外に送り出される。
【0026】
インペラ16の回転方向に沿って吐出口34から吸入口22に至るまでの間には、溝31,20が形成されていない。図6は、図2と図4に示したB−B間の断面図であり、インペラ16は図中左方から右方へ回転する。ポンプボディ15の溝20の逃し溝20bは、下流端20cに向かって徐々に浅くなって閉じられているため、溝20を流れてきた燃料はインペラ16の連通口16cへ押出されやすい。また、ポンプカバー39の溝31の逃し溝31bは、下流端31cに向かって徐々に深くなって吐出口34に連続しているため、昇圧された燃料はスムースに吐出口34から吐出され、ポンプ作動音は静粛化される。インペラ外周面16pとポンプカバー内周面9cの間のクリアランスC2は全周に亘って非常に小さいために、昇圧された燃料はこのクリアランスC2に入り込まず、インペラ16の連通口16cを通過する。
【0027】
本実施例の燃料ポンプでは、インペラ外周面とポンプカバー内周面の間のクリアランスが全周に亘って極狭くされたことから、インペラ外周面に作用する燃料圧の上昇が抑制される。これによってインペラは軽く効率的に回転する。またインペラ外周面とポンプカバー内周面の間のクリアランスが全周に亘って一様寸法とされていることから、インペラはバランスを保って回転し、ベアリングに掛る偏荷重を軽減させることができる。これもまた、インペラの回転効率的を向上させる。図7は従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプのポンプ効率を比較したグラフである。一点鎖線で示したグラフは従来例のものであり、実線で示したグラフは本実施例のものである。6Vと8Vと12Vの何れの電圧においても、従来例の燃料ポンプよりも本実施例の燃料ポンプのポンプ効率の方が優れていた。
【0028】
本実施例の燃料ポンプでは、図14を参照して説明した従来例の燃料ポンプで発生していた燃料の逆流が解消されたことから、逆流に伴って発生する燃料の脈動音が軽減される。図8は従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプに発生する脈動音の大きさを比較したグラフである。細い実線で示したグラフは従来例のものであり、太い実線で示したグラフは本実施例のものである。差の現れた何れの箇所でも、従来例の燃料ポンプの方が本実施例の燃料ポンプよりもノイズが大きく、最も差の現れた箇所では10dBの差が現れた。
【0029】
本実施例の燃料ポンプでは、インペラに形成された凹所群との間に燃料の流路溝を形成する溝20,31には、その下流端に逃し溝20b,31bが形成されており、昇圧された燃料をスムースに吐出口34に導く。図9は従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプに発生する高周波音の大きさを比較したグラフである。細い実線で示したグラフは従来例のものであり、太い実線で示したグラフは本実施例のものである。従来例の燃料ポンプの方が本実施例の燃料ポンプよりも高周波音ノイズが大きい。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の燃料ポンプの断面図。
【図2】 ポンプカバーにインペラが組付けられた端面図(一部ではインペラを破断して示す)。
【図3】 ポンプカバーの端面図。
【図4】 ポンプボディの端面図。
【図5】 燃料の流れを示す模式図。
【図6】 ポンプカバーとインペラとポンプボディの要部断面図。
【図7】 従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプのポンプ効率を比較したグラフ。
【図8】 従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプに発生する脈動音の大きさを比較したグラフ。
【図9】 従来例の燃料ポンプと本実施例の燃料ポンプに発生する高周波音の大きさを比較したグラフ。
【図10】 従来の燃料ポンプの断面図。
【図11】 ポンプカバーにインペラが組付けられた端面図(一部ではインペラを破断して示す)。
【図12】 ポンプカバーの端面図。
【図13】 ポンプボディの端面図。
【図14】 燃料の流れを示す模式図。
【符号の説明】
1:ポンプ部
2:モータ部、2a:内部空間
4:ポンプハウジング
5:マグネット
6:回転子
7:シャフト、7a:係合軸部
9:ポンプカバー、9b:周壁、9c:内周面
10:ベアリング
12:モータカバー
13:ベアリング
15:ポンプボディ
16:インペラ、16a:凹所、16c:連通口、16n:係合孔、16p:外周面
17:ケーシング
18:スラストベアリング
20:溝
22:吸入口
31:溝
34:吐出口
28:吐出口
39:ポンプカバー
Claims (4)
- ケーシング内で回転する略円板状のインペラを備え、
その略円板状インペラの外周から内側に所定距離を隔てて周方向に伸びる領域には半径方向に伸びる隔壁を隔てて周方向に繰り返す凹所群がインペラの表裏両面に形成されており、表裏の凹所の底部同士は連通しており、
ケーシングには、全周に亘って半径が一定であるとともに、インペラの外周と全周に亘って微小間隔を隔てて対向するケーシング内周面が形成されており、その内周面から内側に所定距離を隔てて周方向に伸びるとともに前記凹所群に対向する領域のケーシング内面にはインペラの回転方向に沿って上流端から下流端まで連続して伸びる溝が形成されており、ケーシングにはケーシング外から溝の上流端に連通する吸入口と溝の下流端からケーシング外に連通する吐出口が形成されており、インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝はインペラの表裏両面の凹所間を連通する連通口によって吐出口に連通しており、吐出口に直接連通する溝は下流端近傍において下流端に向かって半径方向外側に変位しており、吐出口のケーシング内で開口する開口部の一部が前記凹所群に対向する領域よりも半径方向外側に形成されており、しかも吐出口のケーシング内で開口する開口部の全てが前記ケーシング内周面よりも半径方向内側に形成されていることを特徴とする燃料ポンプ。 - 吐出口のケーシング内で開口する開口部の、インペラの回転方向における終端部が前記凹所群に対向する領域の半径方向外側のみに形成されていることを特徴とする請求項1の燃料ポンプ。
- インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、インペラの外周内に留まっており、インペラの外周には連通していないことを特徴とする請求項2の燃料ポンプ。
- インペラを挟んで吐出口の反対側に位置する溝は、前記凹所群に対向する領域内に留まっていることを特徴とする請求項3の燃料ポンプ。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003088857A JP4067994B2 (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 燃料ポンプ |
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