JP4600714B2 - 燃料ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンクから内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)に燃料を供給する燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料タンク内の燃料を吸い上げ、エンジン側に圧送する燃料ポンプとして、特許第2757646号公報に開示されるように、羽根車(以下、「羽根車」をインペラという)の回転によりインペラの外周に沿って形成されるポンプ流路に燃料タンク内の燃料を吸い上げて加圧し圧送する燃料ポンプが知られている。インペラの回転によりインペラの外周に形成されている羽根溝内の燃料がインペラの回転方向に送り込まれることにより、ポンプ流路の燃料は加圧される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料の温度上昇により燃料中にベーパが発生すると、インペラの羽根溝内にベーパが入り込むので、インペラの回転による燃料の送り量が減少し、燃料ポンプの燃料吐出量が減少するという問題がある。
燃料の温度上昇以外にも、燃料タンクからポンプ流路に燃料を吸入するときに燃料の流速が急激に変化すると、燃料中にベーパが発生しやすくなる。
【0004】
本発明の目的は、ベーパが発生しやすい状況において所望の燃料量を吐出する燃料ポンプを提供することにある。
本発明の他の目的は、ベーパの発生を低減する燃料ポンプを提供することにある。
本発明のまた他の目的は、発生したベーパを効果的に逃がすことのできる燃料ポンプを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の燃料ポンプによると、ポンプ流路の導入流路は、円板状のインペラを挟み燃料吸入口側にインペラの径方向外側に広がる第1ベーパ室を有している。第1ベーパ室の外周縁は、羽根車を挟み燃料吸入口の反対側の導入流路の外周縁より径方向外側に形成される。燃料温度の上昇または吸入燃料の流速変化により導入流路の燃料にベーパが発生しても、インペラの径方向外側に位置する第1ベーパ室にベーパを逃がすことができる。インペラの羽根溝にベーパが入り込むことを防止できるので、インペラの回転により所望量の燃料を吐出できる。
本発明の請求項2記載の燃料ポンプによると、燃料吸入口側に位置する導入流路の深さを深くすることにより、ポンプ流路の容積を確保し、必要量の燃料を吐出できる。
【0006】
本発明の請求項3記載の燃料ポンプによると、燃料吸入口と導入流路との連通箇所において、流路部材も内壁は曲面またはテーパ面を有し、インペラを挟み燃料吸入口側に位置する導入流路の深さがインペラの回転方向に向け徐々に浅くなっている。燃料吸入口から吸入された燃料が導入流路に滑らかに流入するので、燃料の流速が急激に変化しない。したがって、導入流路に流入する燃料に発生するベーパ量を低減できる。
【0007】
本発明の請求項4記載の燃料ポンプによると、導入流路は、インペラを挟み燃料吸入口の反対側に加圧有効流路の入口近傍まで第2ベーパ室を有している。第1ベーパ室に逃がすことができなかったベーパがインペラの上方に位置する第2ベーパ室に溜まるので、インペラの羽根溝にベーパが入り込むことを防止できる。したがって、インペラの回転により所望量の燃料を吐出できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図に基づいて説明する。
本発明の燃料ポンプの一実施例を図1から図4に示す。図1および図2においてインペラ43を省略している。
図4に示す燃料ポンプ1は、例えば車両等の燃料タンク内に装着されるインタンク式ポンプの駆動部である。ハウジング11はポンプカバー20と吐出ケース50とをかしめ固定している。
【0009】
ポンプカバー20およびポンプケーシング30は流路部材を構成しており、ポンプカバー20とポンプケーシング30との間にC字状のポンプ流路110を形成している。ポンプカバー20とポンプケーシング30とは燃料加圧用のインペラ43を回転可能に収容している。ポンプカバー20はインペラ43の下側、ポンプケーシング30はインペラ43の上側に位置している。
【0010】
円板状に形成されたインペラ43の外周縁部には多数の羽根溝が形成されており、インペラ43が後述する回転子40とともに回転するとこの羽根溝の前後で流体摩擦力により圧力差が生じ、これを多数の羽根溝で繰り返すことによりポンプ流路110の燃料が加圧される。ポンプカバー20に形成された燃料吸入口100からポンプ流路110に導入された燃料はインペラ43の回転により加圧され、モータ室101に送出される。
【0011】
図1に示すように、ポンプカバー20のポンプケーシング30との対向面にC字状の燃料溝21が形成されている。燃料溝21によりポンプカバー20側に形成されるポンプ流路110は、導入流路120および加圧有効流路122を有している。導入流路120は、燃料吸入口100との連通箇所から徐々に流路幅が狭くなりかつ流路深さが浅くなっている。導入流路120は、図3に示すようにインペラ43の径方向外側に広がる第1ベーパ室121を有している。第1ベーパ室121の外周縁121aは後述する第2ベーパ室131の外周縁131aより外側に形成されている。
【0012】
加圧有効流路122の途中にベーパ排出孔123が形成されている。ベーパ排出孔123は、ポンプカバー20を貫通し加圧有効流路122と燃料ポンプ1外の燃料タンク内とを連通するように形成されている。ベーパ排出孔123はポンプ流路110に発生する燃料蒸気としてのベーパを含む気泡をポンプ流路110から燃料タンクに排出するものである。
【0013】
図1の(B)に示すように、燃料吸入口100と導入流路120との連通箇所において、ポンプカバー20の内壁はテーパ面22および凸曲面23を有している。さらに、導入流路120は、インペラ43の回転方向に向かい徐々に浅くなっている。したがって、燃料吸入口100から吸入された燃料は滑らかに導入流路120に流入する。導入流路120の深さd1は燃料吸入口100との連通箇所が最も深く、3〜5mmに設定されている。
【0014】
図2に示すように、ポンプケーシング30のポンプカバー20との対向面にC字状の燃料溝31が形成されている。燃料溝31によりポンプケーシング30側に形成されるポンプ流路110は、導入流路130および加圧有効流路132を有している。導入流路130は、図2および図3に示すように、インペラ43を挟み燃料吸入口100と反対側、つまりインペラ43の上側に第2ベーパ室131を有している。第2ベーパ室131を含む導入流路130の深さd2は0.9〜1.4mmに設定されており、加圧有効流路132に滑らかに接続している。加圧有効流路132の回転方向終端に燃料吐出口133が形成されている。燃料吐出口133は、ポンプケーシング30を貫通し加圧有効流路132とモータ室101とを連通するように形成されている。
【0015】
図4に示す回転子40の外周に永久磁石が配置されており、回転子40のコイル41にコネクタ52のコネクタピン53から電流が供給されると回転子40が回転する。回転子40のスラスト方向側の回転軸42は、ポンプカバー20の中央凹部に圧入されているスラスト軸受44に軸受けされている。回転軸42は、スラスト軸受44に軸方向の荷重を支持されているとともに軸受45に径方向を支持されており、回転軸42の外周壁に軸方向に切欠きが設けられ、この切欠きの形成された部位にインペラ43が固定されている。
回転子40の他方の回転軸46は軸受47に径方向を支持されている。回転子40の回転軸46側に整流子48が設置されている。
【0016】
吐出ケース50はハウジング11の他端にかしめて固定されており、吐出口102に弁部材51を収容している。弁部材51は吐出口102から吐出した燃料の逆流を防止している。コネクタピン53は、吐出ケース50に設けられたコネクタ52に埋設されている。コネクタピン53は、ブラシ54、整流子48を介して回転子40のコイル41に接続している。
【0017】
次に燃料ポンプ1の作動について説明する。
インペラ43が回転すると燃料吸入口100近傍が負圧になり、燃料タンクから燃料を吸い上げる。燃料吸入口100が負圧であるから、燃料タンクから燃料吸入口100に吸い上げられた燃料中にベーパが発生しやすい。特に燃料温度が上昇すると、燃料中にベーパが発生しやすくなる。
【0018】
燃料吸入口100と導入流路120との連通箇所において、ポンプカバー20の内壁はテーパ面22および凸曲面23を有しているので、燃料吸入口100から吸入された燃料は滑らかに導入流路120に流入する。燃料吸入口100から導入流路120に流入する燃料の流速変化が緩やかになるので、燃料吸入口100から導入流路120に流入する燃料中に発生するベーパ量が減少する。また、導入流路120の燃料にベーパが発生しても、インペラ43の径方向外側に広がる第1ベーパ室121にベーパを逃がすことができるので、発生したベーパがインペラ43の羽根溝に入り込むことを防止できる。また、第1ベーパ室121に逃がすことができなかったベーパを、インペラ43の上方に位置する第2ベーパ室131に逃がすことができる。したがって、発生したベーパがインペラ43の羽根溝に入り込むことを防止できる。燃料吸入口100から導入流路110に流入した燃料は加圧有効流路122、132でベーパに妨げられることなく加圧されるので、燃料ポンプ1は所望量の燃料を吐出する。
【0019】
第1ベーパ室121および第2ベーパ室131に逃がしたベーパは、インペラ43の加圧作動を妨げない程度にインペラ43の回転に伴いポンプ流路110中を加圧有効流路122側に流れ、ベーパ排出孔123から燃料ポンプ1の外に排出される。
【0020】
本実施例では、燃料温度が上昇しベーパが発生しても、第1のベーパ室121および第2のベーパ室131に燃料中のベーパを逃がすことができるので、インペラ43の羽根溝にベーパが入り込むことを防止できる。また、燃料吸入口100と導入流路120との連通箇所、つまり燃料流れ方向の変化箇所において、ポンプカバー20の内壁がテーパ面22および凸曲面23を有し、燃料吸入口100から導入流路120に燃料が滑らかに流入する。したがって、燃料吸入口100から導入流路120に流入する燃料の流速が急激に変化することを防止する。
燃料中にベーパが発生しにくく、ベーパが発生してもインペラ43の加圧作動を低下させない第1ベーパ室121および第2ベーパ室131にベーパを逃がすので、図5に示すように、従来の燃料ポンプと比較し、高温時においても燃料吐出量が減少せず、所望量の燃料を吐出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はポンプケーシング側からみたポンプカバーを示す図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図2】(A)はポンプカバー側からみたポンプケーシングを示す図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図3】図1の(A)および図2の(A)におけるIII −III 線断面図である。
【図4】本実施例の燃料ポンプを示す断面図である。
【図5】本実施例と従来例とによる温度と流量との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 燃料ポンプ
20 ポンプカバー(流路部材)
22 テーパ面
23 凸曲面
30 ポンプケーシング(流路部材)
43 インペラ(羽根車)
100 燃料吸入口
110 ポンプ流路
120、130 導入流路(ポンプ流路)
121 第1ベーパ室
131 第2ベーパ室
122、132 加圧有効流路(ポンプ流路)

Claims (4)

  1. 燃料タンクから吸い上げた燃料を加圧し圧送する燃料ポンプにおいて、
    円板状の羽根車と、
    前記羽根車を回転可能に収容し、燃料吸入口、ならびに前記羽根車の外周に沿って形成され前記燃料吸入口から吸い上げた燃料を前記羽根車の回転により加圧するポンプ流路を有する流路部材とを備え、
    前記ポンプ流路は、前記羽根車を挟み前記燃料吸入口側および前記燃料吸入口の反対側に形成され前記燃料吸入口と連通している導入流路と、前記導入流路に続き前記羽根車の回転により燃料を加圧する加圧有効流路とを有し、
    前記導入流路は、前記羽根車を挟み前記燃料吸入口側に前記羽根車の径方向外側に広がり、前記羽根車を挟み前記燃料吸入口の反対側の導入流路の外周縁より径方向外側に外周縁が形成される第1ベーパ室を有することを特徴とする燃料ポンプ。
  2. 前記羽根車を挟み前記燃料吸入口側に位置する前記導入流路の深さを深くすることを特徴とする請求項1記載の燃料ポンプ。
  3. 前記燃料吸入口と前記導入流路との連通箇所において、前記流路部材の内壁は曲面またはテーパ面を有し、前記羽根車を挟み前記燃料吸入口側に位置する前記導入流路の深さは前記羽根車の回転方向に向け徐々に浅くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料ポンプ。
  4. 前記導入流路は、前記羽根車を挟み前記燃料吸入口の反対側に前記加圧有効流路の入口近傍まで第2ベーパ室を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の燃料ポンプ。
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