JP4065643B2 - 水含有四級アンモニウム塩 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミド化合物及びエステル化合物を製造する際に縮合剤として好適に使用できる水含有四級アンモニウム塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミド化合物及びエステル化合物は、医薬、農薬、染料、高分子化合物等の様々な有機化合物の基本骨格を形成する極めて重要な化合物である。このため、アミド化合物及びエステル化合物の製造方法は古くから検討されている。例えば、アミド化合物の製造方法としては、エステル化合物とアミン化合物との交換反応によるアミド化合物の製造方法、或いはカルボン酸化合物とアミン化合物から直接アミド化合物を製造する方法等が特に一般的な製造方法であり、エステル化合物の製造方法としては、酸の存在下にカルボン酸とアルコール化合物から直接エステル化合物を製造する方法、或いはカルボン酸化合物と塩化チオニル等の酸ハロゲン化剤を反応させてカルボン酸クロライドを生成させた後、アルコールと作用させることによってエステル化合物を製造する方法が特に一般的な製造方法である。
【0003】
しかしながら、アミド化合物の製造方法は加熱下に行われるため、熱的に不安定な化合物或いは同一分子内にアミノ基とアルコキシカルボニル基を有する化合物に適用することは不可能であった。また、エステル化合物の製造方法は酸性条件下に行われるため、酸に対して不安定な化合物には適用する事はできなかった。
【0004】
このような課題を解決することを目的として、温和な条件下でアミド化合物を製造するためにカルボジイミド系等の縮合剤を用いた様々な方法が提唱されている。特に、アミド化合物合成用縮合剤としてカミンスキー(Z.J.Kaminski)らによって提唱された、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メトキシモルホリニウムクロライド{ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、63巻、4248〜4255頁、1998年(J.Org.Chem.,63,4248−4255(1998))}は、カルボジイミド系縮合剤が皮膚にかぶれを引き起こし易くその取り扱いに注意を要するのに対し、このような問題が無いことから注目を集めている。
【0005】
また、エステル化合物の製造に関しては、温和な条件下でエステル化合物を製造する方法として、向山らによって提唱されたピリジニウムオキサイド化合物{ブレチン オブ ケミカル ソサイアティー オブ ジャパン、50巻、1863−1866頁、1977年(Bull.Chem.Soc.Jpn.)、50巻、1863−1866頁(1977)}からなる縮合剤を用いた方法が知られている。
【0006】
しかしながら、前記文献に記載されているカミンスキー等によって提唱された方法では、カルボン酸化合物と該縮合剤をそれぞれ等量反応させて中間体としての反応性誘導体を一旦生成させた後に、該反応性誘導体とアミン化合物とを反応させてアミド化合物を得ているため、その収率は17〜73%とばらつきが大きく、満足の行くものではなかった。
【0007】
また、エステル化合物の製造に使用される上記のピリジニウムオキサイド化合物には、該ピリジニウムオキサイド化合物を製造する際に、発ガン性が指摘されているヨウ化メチルを用いなければならないため、作業環境に細心の注意を払わなければならないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明者らはかかる課題を解決すべく検討を行なった結果、下記一般式(I)
【0009】
【化4】
Figure 0004065643
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜8のアリール基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示される四級アンモニウム塩からなる縮合剤を用い、前記のような2段階反応を行うことなく、該縮合剤、カルボン酸化合物及びアミン化合物を混合して反応させることにより収率が向上し、反応時間も短縮できること、並びにこれらの縮合剤は、最も汎用的な縮合剤であるカルボジイミド系の縮合剤と異なりプロトン性有機溶媒中でも高収率でアミド化合物を生成することも同時に見出し、提案している(特願平11−60765号)。
【0010】
また、エステル化合物の製造に関しても本発明者等が提案した上記アミド化合物の製造方法において使用するのと同じ縮合剤を用いてカルボン酸化合物とアルコール化合物とを反応させた場合には、温和な条件下でエステル化合物が製造できることを見出し、これについてもすでに提案している(特願平11−137693号)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、同時に本発明者らは、前記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩を用いた縮合反応の検討を続けていくうちに、該四級アンモニウム塩には、安定性に問題があることが明らかとなった。すなわち、上記四級アンモニウム塩においては、その製造、保存、又は使用中に分解反応が起こることが明らかとなった。このことは、該四級アンモニウム塩の純度の低下や縮合収率の低下を招くのみならず、その保存や取り扱いには注意を払う必要があることを意味する。
【0012】
また、通常、前記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩は、それぞれ対応する構造のトリアジン化合物とモルホリン化合物とを有機溶媒中で反応させることにより製造できる。しかしながら、この方法では長時間反応させても反応が完結せず、その結果、該方法により製造された該四級アンモニウム塩には、未反応のトリアジン化合物が1〜5%程度含まれていた。
【0013】
したがって、本発明は、前記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩の安定性を向上させる方法を提供すると共に、安定性の改善された該四級アンモニウム塩を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0014】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、トリアジン化合物とモルホリン化合物とを特定量の水を含有する有機溶媒中で反応させた場合には短時間で高純度の四級アンモニウム塩を含む含水物が得られ、しかも得られる水含有四級アンモニウム塩は分解し難く、安定性が向上していることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記一般式(I)
【0016】
【化5】
Figure 0004065643
【0017】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜8のアリール基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される四級アンモニウム塩60〜99質量%、及び水40〜1質量%からなる水含有四級アンモニウム塩組成物である。
【0018】
また、他の発明は、下記一般式(II)
【0019】
【化6】
Figure 0004065643
【0020】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるトリアジン化合物と下記一般式(III)
【0021】
【化7】
Figure 0004065643
【0022】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)で示されるモルホリン化合物とを、前記トリアジン化合物1モルに対して0.1〜10モルの水の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする上記本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物の製造方法である。
【0023】
上記本発明の製造方法においては、理論に拘束されるものではないが、反応系に存在する水分により、反応が促進されると同時に生成した四級アンモニウム塩の分解が抑制され、反応時間の短縮及び高純度化という効果が発現するものと思われる。
【0024】
前記本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物は、例えば、カルボン酸化合物とアミン化合物とを反応させてアミド化合物を製造する方法、又はカルボン酸化合物とアルコール化合物とを反応させてエステル化合物を製造する方法における縮合剤として好適に使用することができる。
【0025】
本発明の縮合剤を用いたこれらカルボン酸化合物誘導体(アミド化合物又はエステル化合物)の製造方法によれば、前記した特願平11−60765号公報或いは特願平11−137693号公報に示される、前記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩からなる縮合剤を用いたときに得られる効果に加えて、反応時に該四級アンモニウム塩の分解が起こらず、反応収率の向上も見られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の水含有四級アンモニウム塩は、下記一般式(I)
【0027】
【化8】
Figure 0004065643
【0028】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示される四級アンモニウム塩を含む。
【0029】
上記一般式(I)中のRは、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基であり、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル、イソブチル基等を挙げる事ができ、炭素数6〜8のアリール基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基等を挙げる事ができる。これらの中でも、特に合成が容易という意味において、アルキル基としてはメチル基、エチル基が、アリール基としてはフェニル基が好適に採用される。
【0030】
また、上記一般式(I)中のXは、ハロゲン原子を示し、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。これらの中でも、特に合成が容易という意味において、塩素が好適に採用される。
【0031】
本発明の上記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩を具体的に例示すると、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジイソプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジブトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジイソプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジブトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジイソプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジブトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−イソブチルモルホリニウムクロライド等を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも特に、合成が容易でしかも縮合剤として使用したときに高い縮合収率が期待できる、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド、4−(4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−エチルモルホリニウムクロライド等が特に好適に採用される。
【0033】
本発明においては、上記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩に、当該四級アンモニウム塩と水との合計質量を基準として、40〜1質量%の水を含有させることが必須である。
【0034】
水の含有量が1質量%未満の場合には、四級アンモニウム塩の分解を抑制して安定性を向上させるに十分な効果が得られない。また、水の含有量が40質量%を越えると、水含有四級アンモニウム塩の状態が半固体状態となり取り扱いが煩雑となるばかりでなく、加水分解が起こり却って安定性が低下する。四級アンモニウム塩の取り扱い性、及び安定性の観点から、本発明の水含有四級アンモニウム塩中の水分量は、35〜3質量%であるのが好適である。含水量の測定は、熱天秤を用いた測定、カールフィッシャ水分計等を用いた測定等、通常の水分量測定方法により行なうことができる。
【0035】
なお、本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物において、水の存在形態は特に限定されず、結晶水の形で含まれていても自由水の形で含まれていてもよい。
【0036】
本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば次のような方法(本発明の製造方法)により好適に製造することができる。
【0037】
すなわち、下記一般式(II)
【0038】
【化9】
Figure 0004065643
【0039】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜8のアリール基であり、Xはハロゲン原子である。)
で示されるトリアジン化合物と下記一般式(III)
【0040】
【化10】
Figure 0004065643
【0041】
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で示されるモルホリン化合物とを、前記トリアジン化合物1モルに対して0.1〜10モルの水の存在下、有機溶媒中で反応させることによって好適に得る事ができる。
【0042】
上記一般式(II)で示されるトリアジン誘導体を具体的に例示すると、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジプロキシ−1,3,5−トリアジン−2−クロロ−4,6−ジイソプロキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジ−n−ブトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジイソブトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジンを挙げる事ができる。これらの中でも、特に合成が容易な2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジンが特に好適に採用される。
【0043】
これらのトリアジン誘導体は工業原料として入手可能なものもあるが、一般に、塩化シアヌルと対応するアルコールを炭酸水素ナトリウム存在下に反応させることによって取得することができる。
【0044】
上記一般式(III)で示されるモルホリン化合物としては、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、4−イソブチルモルホリン等を挙げる事ができる。これらのモルホリン化合物はすべて試薬及び工業原料として入手容易である。
【0045】
本発明の製造方法において、上記一般式(III)で示されるモルホリン化合物の使用量は特に限定されないが、該化合物は通常上記一般式(II)で示されるトリアジン化合物1モルに対して1モル反応する。このような等モル反応においては、どちらか一方の原料化合物の転化率を100%とするために、どちらかを若干過剰に用いるのが一般的であり、本発明の製造方法においても、上記一般式(II)で示されるトリアジン化合物1モルに対して、上記一般式(III)で示されるモルホリン化合物を0.7〜1.3、特に0.8〜1.2モル使用するのが好適である。
【0046】
有機溶媒としては反応を阻害しない有機溶媒であれば何等制限なく用いる事ができる。本反応に使用される有機溶媒を具体的に例示すると、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルカーボネート等のカーボネート類、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のを挙げる事ができる。これらの中でも特に、高い単離収率が期待できる、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルムのハロゲン化脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルカーボネート等のカーボネート類等の有機溶媒が好適に採用される。
【0047】
本発明の製造方法における有機溶媒の使用量としては特に制限はないが、あまり量が多いと1バッチあたりの収量が落ち経済的ではなく、あまり量が少ないと攪拌等に支障をきたすため、通常生成する上記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩の濃度が0.1〜60質量%、好ましくは1〜50質量%になるように選択するのが良い。
【0048】
本発明の製造方法においては、高純度の四級アンモニウム塩を含み、且つ含水量が所定の値の水含有四級アンモニウム塩組成物を短時間で容易に得るために、有機溶媒中で前記トリアジン化合物と前記モルホリン化合物との反応を行なうに際し、前記トリアジン化合物1モルに対して0.1〜10モルの水を存在させることが重要である。
【0049】
反応時に共存させる水の量が上記範囲から外れ、あまりに少ないと反応中に起こる該四級アンモニウム塩の分解を抑制するのに十分な効果が得られず、逆にあまりに多いと収率が低下する。効果(反応時間短縮効果及び高純度化)の観点から、共存させる水の量は、前記トリアジン化合物1モルに対して0.2〜8モルであるのが特に好適である。
【0050】
本発明の製造方法における前記トリアジン化合物と前記モルホリン化合物との反応は、所定量の水を含む有機溶媒中で両者を接触させることにより行なうことができる。反応を均一に短時間で行なうためには、攪拌を行なうのが好適である。また、反応は通常、大気下で実施可能であるが使用する化合物や生成物が吸湿性を有する場合には、塩化カルシウム管等の乾燥管を通した乾燥空気或いは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で実施するのが好ましい。該反応は、減圧、常圧、加圧のいずれの状態でも実施可能である。
【0051】
上記反応の反応温度としては特に制限はないが、あまり温度が低いと反応速度が小さくなり、あまり温度が高いと副反応を助長するため、通常−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃の範囲から選択するのが良い。また、反応時間としては特に制限はいが、通常0.1〜10時間もあれば充分である。
【0052】
このようにして生成した上記一般式(I)で示される四級アンモニウム塩は、通常結晶として析出するため、遠心分離、遠心濾過、圧搾濾過、減圧濾過等の通常の固液分離方法によって固体を分離した後、送風乾燥、減圧乾燥等の通常の乾燥方法によって乾燥する事により取得することができる。この際、乾燥条件を調整することで目的とする水含有量を調整すればよい。また、取得した水含有四級アンモニウム塩にさらに水を混合することにより、水含有量を調整してもよい。
【0053】
また、結晶が析出しない場合には、用いた有機溶媒を可能な限り除去した後、テトラハイドロフラン等の溶媒を加えてスラリー状態とし、上記方法によって取得できる。
【0054】
本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物は、従来の一般式(I)で示される四級アンモニウム塩と同様、カルボン酸化合物とアミン化合物とを反応させてアミド化合物を製造する際、またはカルボン酸化合物とアルコール化合物とを反応させてエステル化合物を製造する際の縮合剤として好適に使用することができる。この際、縮合反応中における四級アンモニウム塩の分解が抑制されるばかりでなく、反応系にもよるが、水を含まない四級アンモニウム塩を用いた場合よりも数%程度収率が向上する。
【0055】
以下、本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を縮合剤として用いてこれらの化合物を製造する方法について説明する。
【0056】
(1)本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を縮合剤として用い、カルボン酸化合物とアミン化合物とを反応させてアミド化合物を製造する方法(以下、本発明のアミド製造方法ともいう。)についての説明。
【0057】
本発明のアミド製造方法は、縮合剤として本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を用いる以外は、従来の縮合剤を用いる方法と同様にして行うことができる。例えば、予め本発明の水含有級アンモニウム塩組成物とカルボン酸化合物とを反応させて中間体である反応性誘導体を形成させてからアミン化合物と反応させてもよいし、この様な反応性誘導体を予め形成させることなく上記3種類の反応剤を混合して反応させてもよい。ただし、反応収率の高さや反応時間の短さ等の観点から、3種類の反応試剤を混合して反応させる後者の方法を採用するのが好適である。
【0058】
本発明において縮合剤として使用する水含有四級アンモニウム塩組成物の種類およびその使用量は特に限定されず、反応系に応じて適宜決定すればよい。本発明の水含有四級アンモニウム塩はいずれも該製造方法に使用可能であるが、中でも合成が容易でしかも縮合剤として使用したときに高い縮合収率が期待できるものとして前掲摘示した四級アンモニウム塩60〜99質量%、特に65〜97質量%、及び水40〜1質量%、特に35〜3質量%からなるものを使用するのが好適である。また、その使用量については、一般に、縮合剤の使用量があまり少ないと縮合反応が未完に終わり、又、あまり量が多いとアミン化合物と反応してしまい収率が低下する傾向があるので、カルボン酸化合物1モルに対して四級アンモニウム塩が0.9〜1.3モル、特に0.95〜1.2モルとなる量使用するのが好適である。
【0059】
次に、本発明のアミド製造方法で使用するカルボン酸化合物について説明する。
【0060】
本発明において使用されるカルボン酸化合物としては、カルボキシル基を有している化合物であれば何ら制限なく使用できる。
【0061】
これら化合物を具体的に例示すると、酢酸、プロピオン酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の脂肪族カルボン酸化合物;安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、3−フェニルプロピオン酸、3−フェニル−2−プロペン酸、2−(4−メトキシフェニル)酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸等の芳香族カルボン酸化合物;2−アミノチアゾール酢酸誘導体;アミノ基が保護されたアミノ酸誘導体等を挙げることができる。
【0062】
本発明においては、アミド化合物としてセフェム系化合物を得るためには、カルボン酸化合物として下記一般式(IV)
【0063】
【化11】
Figure 0004065643
【0064】
(式中、R3は水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、又はアラルキル基であり、R4は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アシル基、又はアルコキシカルボニルアルキル基である。)
で示されるような2−アミノチアゾール酢酸誘導体を使用するのが好適である。
【0065】
ここで、セフェム系化合物とは、一般的にセファロスポラン酸をその分子内に持つ化合物を言い、上記のような2−アミノチアゾール酢酸誘導体からなるカルボン酸化合物と後述する7−アミノセファロスポラン酸誘導体からなるアミン化合物とを反応させた場合には、アミド化合物として各使用原料に対応する構造を有するセフェム系化合物を製造することができる。
【0066】
上記一般式(IV)において、R3で示されるアシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、及びアラルキル基としては、脱離容易な基であれば何ら制限なく使用できる。これらの基のうち好適な基を具体的に説明すると、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基等の炭素数1〜5の基が;アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7の基が;アラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェニチルオキシカルボニル基等の炭素数8〜10の基が挙げられる。また、アラルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等の炭素数7〜20の基が好適である。
【0067】
これらの中でも特に、脱離反応の容易さ及び縮合収率が高いという観点から、アシル基としてはホルミル基、又はアセチル基が、アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、又はtert−ブトキシカルボニル基が、アラルキルオキシカルボニル基としてはベンジルオキシカルボニル基が、アラルキル基としてはベンジル基、又はトリフェニルメチル基等が特に好適に用いられる。
【0068】
また、R4で示されるアルキル基、アラルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニルアルキル基としては、セフェム化合物として薬効を発現する効果のある基、或いは脱離が容易な炭化水素基が何等制限なく使用される。好適なこれらを具体的に例示すると、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が;アラルキル基としてはベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等の炭素数7〜20の基が;アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基等の炭素数1〜5の基が;アルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニル−1−メチルエチル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、1−tert−ブトキシカルボニル−1−メチルエチル基等の炭素数3〜8の基が挙げられる。中でも、立体障害の少ないメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が好適に採用される。
【0069】
前記一般式(IV)で示される2−アミノチアゾール酢酸誘導体のなかでも、セフェム系化合物を製造するに当たっては、セェム系化合物に変換した場合に、高い薬効を期待できるという観点から、R3が水素原子、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、ホルミル基、トリチル基、アセチル基、又はクロロアセチル基であり、R4が水素原子、メチル基、エチル基、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニル−1−メチルエチル基、又はベンジル基であるものを使用するのが好適である。
【0070】
好適に使用できる前記一般式(IV)で示される2−アミノチアゾール酢酸誘導体を具体的に例示すると、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−クロロアセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−クロロアセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシ)イミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−クロロアセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸等を挙げることができる。
【0071】
これらの中でも高い縮合収率が期待できることから、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−トリチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−クロロアセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシ)イミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−ベンジルオキシイミノ酢酸、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−メトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−ホルミルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸、2−(2−アセチルアミノチアゾール−4−イル)−2−エトキシイミノ酢酸等を使用するのが特に好適である。
【0072】
尚、上記一般式(IV)で示される2−アミノチアゾール酢酸誘導体のうち、オキシイミノ基に関しては、理論的ににシン(Z)体及びアンチ(E)体の両異性体が存在する。本発明においてはどちらも使用可能であるが、7−アミノセファロスポラン酸誘導体に対して使用する場合には、シン体のほうがより高い薬理活性が期待されるため、好ましくはシン体が使用される。
【0073】
これらの2−アミノチアゾール酢酸誘導体は、工業的に入手可能な原料から簡単に合成することができる。例えば、試薬として或いは工業原料として入手が可能な、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸エチル、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸エチル、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(1−メトキシカルボニル−1−メチルエトキシイミノ酢酸エチル、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシカルボニルメトキシイミノ酢酸エチル等の2−アミノチアゾール酢酸エステル化合物を出発原料とし、これに、必要により、アセチルクロライド、クロロアセチルクロライド、トリチルクロライド、ベンジルオキシカルボニルクロライド、メトキシカルボニルクロライド、ジ−tert−ブチルジカーボネート、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル等のアミノ基保護剤を作用させてアミノ基を保護した後、さらに必要であれば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等の水酸基の保護剤を用いてヒドロキシイミノ基を保護し、加水分解を行うことによって製造する事が可能である。
【0074】
また、本発明のアミド製造方法により、医薬中間体として極めて重要な化合物であるペプチド化合物を得ようとする場合には、カルボン酸化合物としては、アミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を使用するのが好適である。
【0075】
なお、ペプチド化合物とは、一般的にその分子内に2個以上のアミノ酸を有する化合物をいい、カルボン酸化合物としてアミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を使用し、アミン化合物として後述するカルボキシル基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を用いた場合には、アミド化合物として各使用原料に対応する構造を有するペプチド化合物を製造することができる。
【0076】
ここで、アミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有し、且つアミノ基が保護基によって保護された化合物であれば何等制限なく用いることができるが、一般的には試薬として或いは工業原料として容易に入手可能なアミノ酸のアミノ基が保護された化合物が用いられる。
【0077】
ここで、上記保護基とは、例えば、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、トリチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基等である。
【0078】
ペプチド化合物製造のために好適に使用できるアミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を具体的に例示すると、α−アミノブタン酸、α−メチルアラニン、アラニン、N−メチルアラニン、β−アラニン、γ−アミノブタン酸、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘキサン酸、8−アミノオクタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノウンデカン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、β−シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、S−アセトアミドシステイン、S−tert−ブチルシステイン、S−エチルチオシステイン、S−p−メトキシベンジルシステイン、S−トリチルシステイン、S−p−メチルベンジルホモシステイン、グルタミン、N−γ−エチルグルタミン、N−γ−トリチルグルタミン、グルタミン酸、イソグルタミン、グリシン、N−メチルグリシン、ヒスチジン、π−ベンジルオキシメチルヒスチジン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、N−メチルロイシン、リジン、N−ε−アセチルリジン、N−ε−ホルミルロイシン、N−ε−ベンジルオキシカルボニルロイシン、メチオニン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、4−ベンゾイルファニルアラニン、ファニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、4−ベンジルオキシカルボニルアミノフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、フェニルグリシン、4−ヒドロキシフェニルグリシン、プロリン、ホモプロリン、4−ヒドロキシプロリン、O−ベンジルヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、ホモセリン、O−ベンジルホモセリン、O−ベンジルセリン、セリン、tert−ブチルセリン、O−メチルセリン、スレオニン、O−ベンジルスレオニン、トリプトファン、チロシン、O−tert−ブチルチロシン、O−ベンジルチロシン、バリン等のアミノ基を前記保護基で保護した化合物を挙げることができる。
【0079】
上記アミノ酸の中には不斉炭素を持つものも少なくないが、本発明においては、L体、D体及びそれらの混合物を何ら制限なく用いる事ができる。
【0080】
これらの化合物は、通常試薬及び工業原料として入手可能であるが、入手困難である場合には、上記アミノ酸を有機溶媒中、メチルモルホリン、トリエチルアミン等の三級アミンを添加した後、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、アセチルクロライド、無水酢酸、ベンゾイルクロライド、ベンジルオキシカルボニルクロライド、ジ−tert−ブトキシカルボニルジカーボネート、ジ−tert−ブトキシカルボニルフルオライド、ジアリルオキシカルボニルジカーボネート、メトキシカルボニルクロライド、トリチルクロライド、フルオレニルメトキシカルボニルクロライド等のアミノ基の保護剤を用いて保護した後、中和、晶析によって製造する事ができる。
【0081】
次に、本発明のアミド製造方法で使用するアミン化合物について説明する。
【0082】
本発明で使用されるアミン化合物としては、一級又は二級のアミノ基を有している化合物が何ら制限なく使用できる。
【0083】
本発明に使用されるアミン化合物を具体的に例示すると、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、tert−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、1−ノニルアミン、1−デカニルアミン、1−ウンデカニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、N−メチルホモピペラジン、N−アシルホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エトキシカルボニルピペラジン、p−クロロフェニルピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、1−アミノ−4−シクロヘキシルピペラジン、1−シクロヘキシルピペラジン、3−ヒドロキシメチルピペリジン、N−アミノピペリジン、N−アミノピペコリン、2−ヒドロキシエチルピペリジン、ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、1−ヒドロキシ−2−プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、ジメチルアミニエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、メトキシアミン等の脂肪族アミン化合物;アニリン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、α−フェネチルアミン、β−フェネチルアミン、2−アミノチアゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、インドール、N−(2−ピリジル)ピペラジン、フルフリルアミン、2−アミノピラジン、2−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン等の芳香族アミン化合物;7−アミノセファロスポラン酸誘導体;及びカルボキシル基が保護されたアミノ酸誘導体を挙げることができる。
【0084】
前述したように、これらアミン化合物の中でも、セフェム化合物を得るためには7−アミノセファロスポラン酸誘導体を用いるのが好適である。好適に使用できる、7−アミノセファロスポラン酸誘導体としては、下記一般式(V)
【0085】
【化12】
Figure 0004065643
【0086】
{式中、R5アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニオキシアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、又はトリアルキルシリル基であり、R6は水素原子、メトキシメチル基、塩素原子、ヨードメチル基、ビニル基、アセチルオキシメチル基、2−フラルカルボニルチオメチル基、(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル基、(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル基、(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル基、(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル基、(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル基、又は(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ基である。}
で示される化合物を挙げることができる。
【0087】
上記一般式(V)中、R5で示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルオキシアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、又はトリアルキルシリル基としては、加水分解が容易な基が何等制限なく使用される。好適なこれらを具体的に例示すると、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が;アラルキル基としてはベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等の炭素数7〜20の基が;アリール基としては、フェニル基、トリル基等の炭素数6から8の基が;アルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニル−1−メチルエチル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基が;アルコキシカルボニルオキシアルキル基としては、1−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシカルボニルオキシエチル基、1−エトキシカルボニルオキシエチル基等の炭素数3〜10の基が;アルキルカルボニルオキシアルキル基としては、メチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシメチル基、tert−ブチルカルボニルオキシメチル基等の炭素数3〜10の基が;トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等の炭素数3〜9の基が挙げられる。
【0088】
これらの基の中でも特に化学的或いは生理学的に加水分解が容易であるという観点から、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基を;アルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、1−メトキシカルボニル−1−メチルエチル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基を;アルコキシカルボニルオキシアルキル基としては、1−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル基、1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル基、1−エトキシカルボニルオキシエチル基等の炭素数3〜10の基を;トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等の炭素数3〜9の基を用いるのが特に好適である。
【0089】
好適に使用される上記一般式(V)で示される7−アミノセファロスポラン酸誘導体を具体的に例示すると、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸メチル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸エチル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸イソプロピル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸メトキシカルボニルメチル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル、7−アミノ−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−クロロ−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−ヨードメチル−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−(2−フラルカルボニルチオメチル)−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(1−メチルテトラゾール−5−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(1,2,3−チアジアゾール−4−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(5−メチルテトラゾール−3−イル)メチル]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(Z)−2−(4−メチルチアゾール−5−イル)エテニル]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル、7−アミノ−3−[(1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)チオメチルチオ]−3−セフェム−4−カルボン酸トリメチルシリル等を挙げることができる。
【0090】
これらの化合物は、工業的に容易に入手できる7−アミノ−3−アセチルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を出発原料として、3位を所定の置換基に変換した後、カルボキシル基をエステル化することによって製造することができる。
【0091】
また、前述したようにペプチド化合物を得るためには、アミン化合物としてカルボキシル基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を使用するのが好適である。該カルボキシル基が保護されたアミノ酸化合物誘導体としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有し、且つカルボキシル基が保護基によって保護された化合物であれば何等制限なく用いることができるが、一般的には試薬として或いは工業原料として容易に入手可能なアミノ酸のカルボキシル基が保護された化合物が用いられる。
【0092】
ここで、カルボキシル基の保護基とは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4までのアルキル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基等の炭素数6〜13のアラルキル基、アミド基、N−メチルアミド基、N−ベンジルアミド基等である。
【0093】
ペプチド化合物を得るために好適に用いられるカルボキシル基が保護されたアミノ酸化合物誘導体を具体的に例示すれば、α−アミノブタン酸、α−メチルアラニン、アラニン、N−メチルアラニン、β−アラニン、γ−アミノブタン酸、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘキサン酸、8−アミノオクタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノウンデカン酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、β−シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、S−アセトアミドシステイン、S−tert−ブチルシステイン、S−エチルチオシステイン、S−p−メトキシベンジルシステイン、S−トリチルシステイン、S−p−メチルベンジルホモシステイン、グルタミン、N−γ−エチルグルタミン、N−γ−トリチルグルタミン、グルタミン酸、イソグルタミン、グリシン、N−メチルグリシン、ヒスチジン、π−ベンジルオキシメチルヒスチジン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、N−メチルロイシン、リジン、N−ε−アセチルリジン、N−ε−ホルミルロイシン、N−ε−ベンジルオキシカルボニルロイシン、メチオニン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、4−ベンゾイルファニルアラニン、ファニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、4−ベンジルオキシカルボニルアミノフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、フェニルグリシン、4−ヒドロキシフェニルグリシン、プロリン、ホモプロリン、4−ヒドロキシプロリン、O−ベンジルヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、ホモセリン、O−ベンジルホモセリン、O−ベンジルセリン、セリン、−tert−ブチルセリン、O−メチルセリン、スレオニン、O−ベンジルスレオニン、トリプトファン、チロシン、O−tert−ブチルチロシン、O−ベンジルチロシン、バリン等のカルボキシル基を前記保護基で保護した化合物を挙げる事ができる。
【0094】
上記アミノ酸の中には不斉炭素を持つものも少なくないが、本発明においては、L体、D体及びそれらの混合物を何ら制限なく用いる事ができる。
【0095】
これらの化合物は、通常試薬及び工業原料として入手可能であるが、入手困難である場合には、上記アミノ酸を塩化チオニル等で酸クロライドにした後、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール化合物、ベンジルアルコール、ジフェニルアルコール等の炭素数7〜13のアラルキルアルコール化合物、アンモニア或いはメチルアミン、エチルアミン、ベンジルアミン等の炭素数1〜10の一級もしくは二級アミンと反応させることによって製造できる。
【0096】
本発明のアミド製造方法における、カルボン酸化合物及びアミン化合物の使用量は特に制限はないが、該製造方法の反応(以下、アミド化反応ともいう)におけるカルボキシル基とアミノ基の反応は量論反応であるため、各基をそれぞれ分子内に1個づつ有する化合物同士の反応においては、通常、カルボン酸化合物1モルに対してアミン化合物を0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0097】
アミド化反応は、溶媒中で行うのが好適である。このとき溶媒としては工業的に使用できる溶媒が何等制限なく用いることができる。これらの溶媒を具体的に例示すると、水;テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルカーボネート等のカーボネート類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0098】
これらの溶媒の中でも特に高い縮合収率が期待できることから、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルカーボネート等のカーボネート類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;及び水が好適に採用される。これらの溶媒は単独で使用しても、混合して使用しても一向に差し支えない。
【0099】
これら溶媒中のカルボン酸化合物及びアミン化合物の濃度としては、特に制限されるものではないが、あまり濃度が低いと反応1回あたりのアミド化合物の収量が小さくなるため経済的ではなく、あまり濃度が高いと攪拌等に支障をきたすため、通常、生成するアミド化合物の溶媒中の濃度が0.1〜80質量%、好ましくは1〜60質量%となるように選択すれば良い。
【0100】
次に、本発明のアミド製造方法の操作手順等について説明する。
【0101】
前述したように本発明のアミド製造方法においてアミド化反応は、縮合剤として本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を用いる以外は、従来の縮合剤を用いる方法と同様にして行えばよく、その操作手順は特に限定されないが、反応収率の高さや反応時間の短さ等の観点から、3種類の反応試剤(すなわち、縮合剤、カルボン酸化合物、及びアミン化合物)を混合して反応させるのが好適である。なお、このとき、上記三成分は混合して反応させればよく、各成分は反応系内に於いて必ずしもそのままの形で存在する必要はない。例えば、カルボン酸化合物とアミン化合物とは、中和して塩の形で存在していても構わない。
【0102】
上記方法において、上記3種類の反応試剤の混合方法は特に限定されず、各成分を同時に反応系に添加して混合してもよく、また、各反応試剤を順次に反応系に添加して混合してもよい。しかしながら、操作性及び反応収率の高さの点から、予め所定の温度に保たれた反応溶媒中に各反応試剤を順次に且つ時間をおかずに添加して混合するのが好適である。このとき、各反応試剤の添加順序は特に制限されないが、一般的に本反応は、カルボン酸化合物とアミン化合物とが中和反応を起こして溶液中で塩を形成させることが重要であると考えられるため、通常、カルボン酸化合物とアミン化合物とを添加した後に縮合剤を添加するのが一般的である。
【0103】
カルボン酸化合物とアミン化合物との添加順序はどちらが先でも構わないが、両者が混合されると中和反応がおきるため、一般的には中和熱が発生する。このため、両化合物の添加直後には、反応系中が高温になっている可能性があるため、直ぐに縮合剤を添加するとアミン化合物と縮合剤が反応してしまい収率が低下する恐れがある。このため、縮合剤の添加は、カルボン酸化合物とアミン化合物とを添加混合した後、反応系の温度が所定の温度まで下がったのを見計らって投入するか、或いはカルボン酸化合物とアミン化合物を添加する際の溶媒の温度をあらかじめ十分下げておくことが好ましい。
【0104】
アミド化反応における反応温度は、用いるカルボン酸化合物とアミン化合物の種類によって最適な温度が大きく異なるため、一概には言えないが、あまり温度が低いと反応速度が小さくなり、あまり温度が高いとアミン化合物と縮合剤が反応する等の副反応が起こる傾向がある。このため、反応温度としては、−30〜60℃、特に、−20〜50℃の範囲の温度を採用するのが好適である。
【0105】
反応時間は、用いるカルボン酸化合物とアミン化合物の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜8時間、好ましくは1〜6時間もあれば充分である。また、アミド化反応は、常圧、加圧、減圧のいずれでも実施できる。
【0106】
このようにして得られたアミド化合物の単離、精製方法としては、通常の方法が何等制限なく用いられる。具体的に例示すると、反応溶媒として水と相溶しない有機溶媒を用いた場合には、反応終了後、反応液を酸性水溶液、アルカリ性水溶液、水で洗浄した後、溶媒を留去し、再結晶或いはシリカゲルクロマトグラフィーによって単離、精製する方法を挙げることができる。また、反応溶媒として水と相溶する有機溶媒を用いた場合には、反応終了後、水と相溶しない有機溶媒に交換した後、上記方法によって処理することにより、単離、精製することができる。また、水を溶媒として用いた場合には、水と相溶しない有機溶媒を加えて、アミド化合物を有機相に抽出した後、上記方法によって処理することにより単離、精製することができる。このようにしてアミド化合物を工業的に有利に製造することができる。
【0107】
(2)本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を縮合剤として用い、カルボン酸化合物とアルコール化合物とを反応させてエステル化合物を製造する方法(以下、本発明のエステル製造方法ともいう。)についての説明。
【0108】
本発明のエステル製造方法は、縮合剤として本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物を用いる以外は、従来の縮合剤を用いる方法と同様にして行うことができるが、三級アミンの存在下に、本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物からなる縮合剤、カルボン酸化合物、及びアルコール化合物を混合して反応(以下、エステル化反応ともいう。)させるのが好適である。三級アミン化合物を存在させることによって、エステル化の反応速度を上昇させることが可能である。
【0109】
このとき、本発明において縮合剤として使用する水含有四級アンモニウム塩組成物の種類およびその使用量は特に限定されず、反応系に応じて適宜決定すればよい。本発明の水含有四級アンモニウム塩はいずれも該製造方法に使用可能であるが、中でも合成が容易でしかも縮合剤として使用したときに高い縮合収率が期待できるものとして前掲摘示した四級アンモニウム塩60〜99質量%、特に65〜97質量%、及び水40〜1質量%、特に35〜3質量%からなるものを使用するのが好適である。また、その使用量については、一般に、縮合剤の使用量があまり少ないと縮合反応が未完に終わり、又、あまり量が多いとアルコール化合物と反応してしまい収率が低下する傾向があるので、カルボン酸化合物1モルに対して四級アンモニウム塩が0.9〜3モル、特に0.95〜2.5モルとなる量使用するのが好適である。
【0110】
次に、本発明で使用するカルボン酸化合物について説明する。
【0111】
また、カルボン酸化合物としては、本発明のアミド製造方法で使用できるのと同じ脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、及びアミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体等を使用することができる。これらの中でも温和な条件下で進行する本反応は、熱等によって分解反応が進行する恐れのある化合物のエステル化に極めて有効であるとの観点からアミノ基が保護されたアミノ酸化合物誘導体等を使用するのが好適であり、その具体例としては、本発明のアミド製造方法の説明で例示したものと同じものが挙げられる。
【0112】
また、本発明のエステル製造方法で使用されるアルコール化合物としては、一級、二級及び三級の水酸基を有している化合物が何ら制限なく使用できる。
好適に使用できるアルコール化合物を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロプロパノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコール化合物;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ベンジルアルコール、2−フェニル−1−エタノール、1−フェニル−1−エタノール、3−フェニル−1−プロパノール等の炭素数6〜12の芳香族アルコール化合物を挙げることができる。
【0113】
これらのアルコールの中でも、特にエステル化反応が容易に進行するメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、シクロプロパノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、フェノール、p−クレゾール、ベンジルアルコール、2−フェニル−1−エタノール、3−フェニル−1−プロパノールが好適に採用される。これらのアルコール化合物はいずれも工業原料あるいは試薬として入手可能な化合物である。
【0114】
本発明のエステル製造方法における、カルボン酸化合物及びアルコール化合物の使用量は特に限定されないが、カルボン酸化合物のカルボキシル基に対してアルコール化合物の水酸基が当量的に反応すること、及びアルコール化合物自身が溶媒としての機能を兼ねることを考慮すると、1価アルコールを用いる場合、通常はカルボン酸化合物のカルボキシル基と当量以上用いておればその上限は特に制限されない。しかし、あまりカルボン酸化合物に対してアルコール化合物の使用量が多いと、バッチあたりのエステル化合物の収量が少なくなり経済的ではないため、アルコール化合物中のカルボン酸化合物の濃度が0.1質量%以上になるようにアルコール化合物を用いることが好適である。
【0115】
本発明のエステル製造方法で必要に応じて使用される前記三級アミン化合物は、三級のアミノ基を有している化合物であれば何ら制限なく使用できる。好適に使用できる三級アミン化合物を具体的に例示すると、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルインドリン、N−メチルイソインドリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンンジアミン等の脂肪族三級アミン;ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N−メチルインドール、N−メチルイソインドール、N−メチルピロール、インドリジン、N−メチルカルバゾール等の芳香族三級アミン等を挙げる事ができる。これらの中でも、特にエステル化反応が容易に進行する、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミンが好適に採用される。
【0116】
これらの三級アミン化合物はいずれも工業原料あるいは試薬として入手可能な化合物である。
【0117】
上記三級アミン化合物の使用量に関しては特に制限はないが、反応速度の速さ及び反応後にエステル化合物と分離する際の操作性等の観点から、カルボン酸化合物に1モルに対して0.01〜3モル、好ましくは0.05〜2モル使用するのが好適である。
【0118】
本発明のエステル製造方法のおけるエステル化反応は、用いるアルコール化合物の融点が0℃以下であれば、通常該アルコールを溶媒として行われるが、他の有機溶媒を用いて反応を行っても一向に差し支えない。このとき使用される有機溶媒としては工業的に使用できる溶媒が何等制限なく用いることができる。使用できる溶媒としては、本発明のアミド製造方法における場合と同じものが挙げられる。また、本発明のアミド製造方法における場合と同じ理由により、好適に使用できるとされた溶媒がここでも好適に使用できる。また、溶媒を用いる場合、これら溶媒中のカルボン酸化合物及びアルコール化合物の濃度としては、特に制限されるものではないが、反応速度の速さ、及びバッチ当たりの収量の観点から、通常、生成するエステル化合物の溶媒中の濃度が0.1〜80質量%、好ましくは1〜60質量%となるように選択すればよい。
【0119】
三級アミン化合物の存在下に、本発明の水含有四級アンモニウム塩組成物からなる縮合剤、カルボン酸化合物、及びアルコール化合物を混合して反応させる場合の操作手順は特に限定されない。例えば、各成分を同時に反応系に添加して混合してもよく、また、各成分を順次に反応系に添加して混合してもよい。しかしながら、操作性及び反応収率の高さの点から、予め所定の温度に保たれた反応溶媒中に各成分を順次に且つ時間をおかずに添加して混合するのが好適である。このとき、四成分の添加順序は特に制限されないが、一般的に本反応は、カルボン酸化合物と三級アミン化合物とが中和反応を起こして溶液中で塩を形成させることが重要であると考えられるため、通常、カルボン酸化合物と三級アミン化合物とを添加した後にアルコール化合物と縮合剤を添加するのが一般的である。
【0120】
カルボン酸化合物と三級アミン化合物との添加順序はどちらが先でも構わないが、両者が混合されると中和反応がおきるため、一般的には中和熱が発生する。このため、両化合物の添加直後には、反応系中が高温になっている可能性があるため、直ぐにアルコール化合物と縮合剤を添加するとアルコール化合物と縮合剤が反応してしまい収率が低下する恐れがある。このため、縮合剤の添加は、カルボン酸化合物と三級アミン化合物とを添加混合した後、反応系の温度が所定の温度まで下がったのを見計らって投入するか、或いはカルボン酸化合物と三級アミン化合物を添加する際の溶媒の温度をあらかじめ十分下げておくことが好ましい。
【0121】
エステル化反応における反応温度は、用いるカルボン酸化合物とアミン化合物の種類によって最適な温度が大きく異なるため、一概には言えないが、あまり温度が低いと反応速度が小さくなり、あまり温度が高いとアルコール化合物と縮合剤が反応する等の副反応が起こる傾向がある。このため、反応温度としては、−30〜60℃、特に、−20〜50℃の範囲の温度を採用するのが好適である。
【0122】
本発明における反応時間は、アルコール化合物の種類と量に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜40時間、好ましくは1〜24時間もあれば充分である。また、反応は、常圧、加圧、減圧のいずれでも実施できる。
【0123】
このようにして得られたエステル化合物の単離、精製方法としては、通常の方法が何等制限なく用いられる。具体的に例示すると、反応溶媒として水と相溶しない有機溶媒を用いた場合には、反応終了後、反応液を酸性水溶液、アルカリ性水溶液、水で洗浄した後、溶媒を乾燥し、再結晶或いはシリカゲルクロマトグラフィーによって単離、精製する方法を挙げることができる。また、反応溶媒として水と相溶する有機溶媒を用いた場合には、反応終了後、水と相溶しない有機溶媒に交換した後、上記方法によって処理することにより、単離、精製することができる。また、水を溶媒として用いた場合には、水と相溶しない有機溶媒を加えて、エステル化合物を有機相に抽出した後、上記方法によって処理することによ、単離、精製することができる。
【0124】
このようにしてエステル化合物を工業的に有利に製造することができる。
【0125】
【実施例】
以下、実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0126】
実施例1
2000mlの四つ口フラスコに2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン87.8g(0.5mol)、酢酸エチル1000ml、及び水27g(1.5mol)を加え、5〜10℃で10分間攪拌させた。次に、4−メチルモルホリン53.1g(0.525mol)を添加し、5〜10℃で6時間反応させた。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル400mlで洗浄した後、室温で4時間減圧乾燥し、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドの白色固体141.7gを得た。水分量は8.4質量%であり、収率は93.8%であった。
【0127】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で99.5%であった。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ98.0%であった。
【0128】
実施例2〜4
表1に示した乾燥時間以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示した。
【0129】
【表1】
Figure 0004065643
【0130】
実施例5
2000mlの四つ口フラスコに2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン87.8g(0.5mol)、酢酸エチル1000ml、及び水27g(1.5mol)を加え、5〜10℃で10分間攪拌させた。次に、4−メチルモルホリン53.1g(0.525mol)を添加し、5〜10℃で6時間攪拌した。さらに、水27g(1.5mol)を添加し10分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル400mlで洗浄した後、室温で4時間減圧乾燥し、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドの白色固体159.4gを得た。水分量は19.1質量%であり、収率は93.2%であった。
【0131】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で99.5%であった。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ98.7%であった。
【0132】
実施例6
2000mlの四つ口フラスコに2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン87.8g(0.5mol)、酢酸エチル1000ml、及び水27g(1.5mol)を加え、5〜10℃で10分間攪拌させた。次に、4−メチルモルホリン53.1g(0.525mol)を添加し、5〜10℃で6時間攪拌した。さらに、水54g(3.0mol)を添加し10分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル400mlで洗浄した後、室温で7時間減圧乾燥し、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドの白色固体176.7gを得た。水分量は28.6質量%であり、収率は91.2%であった。
【0133】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で99.2%であった。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ98.5%であった。
【0134】
実施例7
実施例1で得られた水分量8.4質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド100gと水14.5gとを混合して、水分量20.0質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドを得た。
【0135】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で99.3%であった。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ98.6%であった。
【0136】
比較例1
2000mlの四つ口フラスコに2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン87.8g(0.5mol)、及び酢酸エチル1000mlを加え、5〜10℃で10分間攪拌させた。次に、4−メチルモルホリン53.1g(0.525mol)を添加し、5〜10℃で24時間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、酢酸エチル400mlで洗浄した後、室温で4時間減圧乾燥し、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドの白色固体131.3gを得た。水分量は0.3質量%であり、収率は94.6%であった。なお、反応を開始してから6時間後に反応液を少量サンプリングして高速液体クロマトグラフィーで分析したところ転化率は約93%であった。
【0137】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で95.4%であり、また、原料である2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンが3.1%残存していた。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ89.8%であった。
【0138】
比較例2
実施例1で得られた水分量8.4質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド10gと水8.32gとを混合して、水分量50.0質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドを得た。
【0139】
これを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、その純度は面積%で99.0%であった。次に、これを20〜25℃で3週間保存した後、その純度を測定したところ31.3%であった。
【0140】
実施例1〜7と比較例1との対比から、反応をトリアジン化合物1モルに対して0.1〜10モルの水を共存させて反応を行なった場合(実施例1〜7)には、実質的に無水の状態で反応を行なった場合(比較例1)に比べて、反応時間が大幅に短縮されると共に、得られる四級アンモニウム塩の純度も高くなっていることが分かる。また、実施例1〜7と比較例1及び2との対比から、四級アンモニウム塩の含水量が本発明で規定する値の範囲外のときはその安定性が悪いのに対し、本発明で規定する量の水を含む場合には、その安定性が著しく向上していることが分かる。
【0141】
実施例8
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としての3−フェニルプロピオン酸3.00g(0.02mol)、アミン化合物としてのβ−フェネチルアミン2.42g(0.02mol)、及び溶媒としての塩化メチレン50mlを加えて室温下、10分攪拌した後、縮合剤として実施例4で製造したのと同じ水分量12.8質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.35g(0.02mol)を加え、室温下、3時間反応させた。
【0142】
反応終了後、100mlの水を加え、分液した後、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を30mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、30mlの1N塩酸、30mlの水で洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、N−(β−フェネチル)−3−フェニルプロピオン酸アミドを4.86g(収率96%)得た。
【0143】
実施例9〜32表2に示したカルボン酸化合物とアミン化合物及び溶媒を用いた以外は実施例と同様の操作を行いアミド化合物を得た。その結果を表2に示した。
【0144】
【表2】
Figure 0004065643
【0145】
実施例33
50mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としての(Z)−2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸3.01g(0.01mol)、アミン化合物としての7−アミノ−3−アセトキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチルエステル3.28g(0.01mol)、及び溶媒としての塩化メチレン50mlを加え、室温下、10分攪拌した。この溶液に、縮合剤として実施例1で製造したのと同じ水分量8.4質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド3.02g(0.01mol)を添加し、室温下、3時間反応させた。
【0146】
反応終了後、実施例1と同様の後処理操作を行ったところ、7−[(Z)−2−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸アミド]−3−セフェム−4−カルボン酸tert−ブチルエステルを5.84g(収率93%)得た。
【0147】
実施例34〜39
カルボン酸化合物として表3に示した2−アミノチアゾール酢酸誘導体及び溶媒を用いた以外は実施例33と同様の操作を行いアミド化合物を得た。その結果を表3に示した。
【0148】
【表3】
Figure 0004065643
【0149】
実施例40〜49
カルボン酸化合物として、2−アミノチアゾール酢酸誘導体である(Z)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノ酢酸を用い、アミン化合物として表4に示した7−アミノセファロスポラン酸誘導体を用いた以外は、実施例33と同様の操作を行いアミド化合物を得た。その結果を、表4に示した。
【0150】
【表4】
Figure 0004065643
【0151】
実施例50
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としてのN−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン5.30g(0.02mol)、アミン化合物としてのβ−フェネチルアミン2.42g(0.02mol)、及び溶媒としての塩化メチレン50mlを加え、室温下、10分攪拌した後、この溶液に、縮合剤として実施例5で製造したのと同じ水分量19.1質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.85g(0.02mol)を加え、室温下3時間反応させた。
【0152】
反応終了後、100mlの水を加え、分液した後、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を30mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、30mlの1N塩酸、30mlの水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮を行い、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、N−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン−β−フェネチルアミドを7.14g(収率97%)を得た。
【0153】
実施例51
100mlの茄子型フラスコに、カルボン酸化合物としてのN−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン5.3g(0.02mol)、アミン化合物としてのL−フェニルアラニンメチルエステル3.58g(0.02mol)、及び溶媒としての塩化メチレン50mlを加え、室温下10分攪拌した。次に、縮合剤として実施例5で製造したのと同じ水分量19.1質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.85g(0.02mol)をゆっくり添加し、室温下、3時間反応させた。
【0154】
反応終了後、100mlの水を加え、分液した後、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を30mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、30mlの1N塩酸、30mlの水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製を行ったところ、N−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニンメチルエステルを8.18g(収率96%)を得た。
【0155】
実施例52〜64
カルボン酸化合物として表5に示したアミノ基が保護されたアミノ酸を用い、アミン化合物として表5に示したカルボキシル基が保護されたアミノ酸を用いた以外は実施例51同様の操作を行いアミド化合物を得た。その結果を表5に示した。
【0156】
【表5】
Figure 0004065643
【0157】
実施例65
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としての3−フェニルプロピオン酸3.00g(0.02mol)、三級アミン化合物としての4−メチルモルホリン2.22g(0.022mmol)、及びアルコール化合物としてのメタノール50mlを加えて室温下、10分攪拌した後、縮合剤として実施例4で製造したのと同じ水分量12.8質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.35g(0.02mol)を加え、室温下、4時間反応させた。
【0158】
反応終了後、メタノールを留去し、100mlの水を加え、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を20mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、20mlの1N塩酸、20mlの水で洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、3−フェニルプロピオン酸メチル3.05g(収率93%)を得た。
【0159】
実施例66〜80
表6に示したカルボン酸化合物とアルコール化合物を用い、表6に示した縮合剤、N−メチルモルホリンの量を用いた以外は実施例65と同様の操作を行いエステル化合物を得た。その結果を表6に示した。
【0160】
【表6】
Figure 0004065643
【0161】
実施例81
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としてのN−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニン5.30g(0.02mol)、三級アミン化合物としての4−メチルモルホリン2.42g(0.024mol)、及びアルコール化合物としてのメタノール100mlを加え、室温下、10分攪拌した後、この溶液に、縮合剤として実施例5で製造したのと同じ水分量19.1質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.85g(0.02mol)を加え、室温下3時間反応させた。
【0162】
反応終了後、メタノールを留去し、100mlの水を加え、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を20mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、20mlの1N塩酸、20mlの水で洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮を行い、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、N−tert−ブトキシカルボニル−L−フェニルアラニンメチルエステル5.36g(収率96%)を得た。
【0163】
実施例82〜94
カルボン酸化合物として表7に示した保護されたアミノ酸を用いた以外は実施例81と同様の操作を行いエステル化合物を得た。その結果を表7に示した。
【0164】
【表7】
Figure 0004065643
【0165】
実施例95
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としての3−フェニルプロピオン酸3.00g(0.02mol)、三級アミン化合物としての4−メチルモルホリン6.06g(0.06mol)、及びアルコール化合物としてのベンジルアルコール2.38g(0.022mol)、溶媒としてのテトラハイドロフラン50mlを加えて室温下、10分攪拌した後、縮合剤として実施例5で製造したのと同じ水分量19.1質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.85g(0.02mol)を加え、室温下、24時間反応させた。
【0166】
反応終了後、テトラハイドロフランを留去し、100mlの水を加え、30mlの塩化メチレンで2回抽出操作を行った。分液した塩化メチレン溶液を集め、有機層を20mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、20mlの1N塩酸、20mlの水で洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、塩化メチレンを留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、3−フェニルプロピオン酸ベンジル4.51g(収率94%)を得た。
【0167】
実施例96
100mlの茄子型フラスコにカルボン酸化合物としての3−フェニルプロピオン酸3.00g(0.02mol)、アミン化合物としてのβ−フェネチルアミン2.42g(0.02mol)、及び溶媒としての酢酸エチル50ml(水分量300ppm)を加えて室温下、10分攪拌した後、縮合剤として実施例4で製造したのと同じ水分量12.8質量%の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド6.35g(0.02mol)を加え、室温下、3時間反応させた。
【0168】
反応終了後、100mlの水を加え、分液した後、30mlの酢酸エチルで2回抽出操作を行った。分液した酢酸エチル溶液を集め、有機層を30mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液、30mlの1N塩酸、30mlの水で洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを留去、回収し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、N−(β−フェネチル)−3−フェニルプロピオン酸アミド4.81g(収率95%)を得た。
【0169】
次に、溶媒として上記操作で回収した酢酸エチル50ml(水分量28,000ppm)を使用して、上記と同様の操作を行ったところ、N−(β−フェネチル)−3−フェニルプロピオン酸アミド4.76g(収率94%)を得た。
【0170】
さらに同様の操作を行い、溶媒として回収した酢酸エチル50ml(水分量28,100ppm)を使用して、上記と同様の操作を行ったところ、N−(β−フェネチル)−3−フェニルプロピオン酸アミドの取得収量は4.76g(収率94%)となり全く変化がなかった。
【0171】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば高純度の四級アンモニウム塩を含む水含有四級アンモニウム塩組成物を短時間で得ることができる。しかも、得られた本発明の水含有アンモニウム塩組成物は、水をほとんど含まない四級アンモニウム塩に比べてその安定性が著しく改善されており、カルボン酸化合物とアミン化合物又はアルコール化合物とを縮合させてカルボン酸化合物誘導体を製造する際の縮合剤として好適に使用できる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)
    Figure 0004065643
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜8のアリール基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)で示される四級アンモニウム塩60〜99質量%、及び水40〜1質量%からなることを特徴とする水含有四級アンモニウム塩組成物
  2. 下記一般式(II)
    Figure 0004065643
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基であり、Xはハロゲン原子である。)で示されるトリアジン化合物と下記一般式(III)
    Figure 0004065643
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)で示されるモルホリン化合物とを、前記トリアジン化合物1モルに対して0.1〜10モルの水の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1記載の水含有四級アンモニウム塩組成物の製造方法。
  3. 請求項1記載の水含有四級アンモニウム塩組成物からなる縮合剤。
  4. 縮合剤を用いてカルボン酸化合物とアミン化合物とを反応させてアミド化合物を製造する方法において、縮合剤として請求項1記載の水含有四級アンモニウム塩組成物を用いることを特徴とするアミド化合物の製造方法。
  5. 縮合剤を用いてカルボン酸化合物とアルコール化合物とを反応させてエステル化合物を製造する方法において、縮合剤として請求項1記載の水含有四級アンモニウム塩組成物を用いることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
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