JP4063384B2 - ハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイドロカーボンオキシシリル基を有するポリマーをヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とオレフィン系又はアセチレン系の不飽和基を含有するポリマーから効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコキシシリル変性シリコーン、アルコキシシリル官能性ポリオレフィン等のハイドロカーボンオキシシリル基を有するポリマーは、シリル基の加水分解とこれに続く脱水縮合によるシロキサン結合の形成に起因するポリマー鎖間の架橋形成硬化、あるいは加水分解によって生じたシラノールと固体表面の極性基の反応あるいは相互作用による表面への接着性の改善など工業的に重要な用途を持つ材料である。
【0003】
代表的なハイドロカーボンオキシシリル基であるアルコキシシリル基を有するポリマーの場合、その製造方法は大別して次の二方法がある。すなわち、第一の方法は、ポリマーの主なる原料であるモノマーをアルコキシシリル基をその一部に有するコモノマーと共重合させる方法であり、得られるポリマーとしては水架橋性ポリオレフィンを例示できる。この方法を行なうにはアルコキシシリル基を有する反応性コモノマーが不可欠である。また、一般にアルコキシシリル基は反応性が高く、かつ、容易に加水分解を受けるため、重合条件の制約があり、この方法を適用しうるポリマーは限られている。
【0004】
第二の方法は、ヒドリドアルコキシシラン化合物とオレフィン性又はアセチレン性の不飽和基を有するポリマーのヒドロシリル化反応によるものである。具体的には、両末端ビニル官能性ポリジメチチルシロキサンにトリアルコキシシランを用いるヒドロシリル化反応によってトリアルコキシシリル官能基を導入した例(米国特許4,599,394)、両末端アリル官能性ポリイソブチレンにトリアルコキシシランを用いるヒドロシリル化反応によってトリアルコキシシリル官能基を導入した例(特開昭63−6041号公報)、両末端アリル官能性ポリエチレングリコールにメチルジアルコキシシランを用いるヒドロシリル化反応によってジアルコキシシリル官能基を導入した例(特開昭57−190043号公報)を挙げることができる。しかしこれらのポリマー中の不飽和基濃度は低く、反応も遅いため、一般に大過剰のヒドロアルコキシシラン化合物と大量のヒドロシリル化触媒を用い上記の反応を行う必要があった。また、ヒドロシリル化反応ではしばしば、触媒活性の発現ならびに持続のために、反応雰囲気中に酸素を添加することが必要であるが、この方法は引火、爆発の危険を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の2方法のうち、適用範囲が広く、工程がより簡便なヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を用いるヒドロシリル化反応によるハイドロカーボンオキシシリル基を有するポリマーの新規な製造法を提供することを目的とする。すなわち、ヒドロシリル化反応における付加の位置選択性を改善することにより、ハイドロカーボンオキシシリル基のうちポリマーの一級炭素に結合したものの割合を高め、二級炭素に結合したものの割合を減らすことができ、よって、加水分解性のより高いハイドロカーボンオキシ基を多く含むポリマーを得ることができる方法を提供することである。また、白金触媒の高活性化ならびに活性持続性の改善により、ヒドロシリル化反応をより経済的に行うことが出来、かつ、この反応を低酸素分圧下あるいは不活性雰囲気下で行うことが可能となり、よって、ヒドロシリル化反応時の引火、爆発等の危険性を低減できる方法を提供することである。
【0006】
すなわち、本発明の目的はポリマーに結合した不飽和基とヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とのヒドリシリル化反応によりポリマーにハイドロカーボンオキシシリル基を導入するにあたって、
(1)白金触媒の活性、持続性を高め、触媒の経済性を高める、
(2)反応の位置選択性を高め、よってハイドロカーボンオキシシリル基のうちポリマーの一級炭素に結合したものをより選択的に与える、
(3)ヒドロシリル化反応を低酸素分圧下あるいは不活性雰囲気下で行うことができ、よって、ヒドロシリル化反応時の引火、爆発等の危険性を低減できる方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、白金触媒を用いるヒドロシリル化反応において、単独では反応活性の低いヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を、オレフィン性又はアセチレン性の官能性ポリマーへ付加するにあたって、反応系中に少量のカルボン酸化合物を共存させることにより、反応活性や活性持続性ならびに反応の選択性を大幅に改善し、また、低酸素分圧下あるいは酸素非存在下でこのヒドロシリル化反応を速やかに達成できることを見いだした。
【0008】
本発明はカルボン酸化合物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用によりオレフィン性又はアセチレン性のポリマーと下記式(1)で示されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とを反応させる、ハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーを製造する方法である。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(ここに、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下の有機基であり、R′はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、nは0,1又は2である。)
【0009】
本発明で用いるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物は下記一般式(1)
HSiRn (OR′)3-n (1)
で示されるものであり、ケイ素原子に直接結合した水素原子とこのケイ素原子に結合するOR′で表わされる少なくとも1個のハイドロカーボンオキシ基を有するケイ素化合物である。同一のケイ素原子に互いに異なるハイドロカーボンオキシ基が結合していても構わない。式(1)においてR′は、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり;Rはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下の有機基である。具体的には、次の▲1▼または▲2▼のいずれかである。
▲1▼ 炭素数1以上10以下の炭化水素基
▲2▼ 炭素原子および水素原子以外の異原子が結合している炭化水素基であって炭素原子の合計が1以上10以下のもの。この様な異原子の例としては、O,N,S,F,C1,Br,IまたはSiから選ばれる原子が挙げられる。該原子の該炭化水素基における結合位置は末端基、側鎖、主鎖骨格のいずれであっても構わない。
Rについても、n=2のときは、同一のケイ素原子上に互に異なる炭化水素基が結合していても構わない。Rは上記炭化水素基の内アルキル基であることが好ましい。
【0010】
R′としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、2−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基などを例示することが出来る。
【0011】
Rの例として、上記R′の例及びクロロメチル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリルメチル基、2−メトキシエチル基等を挙げることができる。
【0012】
ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物の具体例を以下に挙げるがこれらに限定されるものではない。トリハイドロカーボンオキシシランとしては、トリアルコキシシラン、トリアルケノキシシラン、およびトリアリーロキシシラン等があり、具体的にはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリフェノキシシラン等が例示できる。ジハイドロカーボンオキシシランとしては、ジアルコキシシラン、ジアルケノキシシラン、およびジアリーロキシシラン等があり、具体的にはメチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジn−プロポキシシラン、メチルジイソプロペノキシシラン、メチルジフェノキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、n−プルピルジメトキシシラン、n−プルピルジエトキシシラン、メチルジオクチルオキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキシルジメトキシシラン、n−ヘキシルジエトキシシラン、n−オクチルジメトキシシラン、n−オクチルジエトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン等が例示できる。モノハイドロカーボンオキシシランとしては、モノアルコキシシラン、モノアルケノキシシラン、およびモノアリーロキシシラン等があり、具体的にはジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルn−プロポキシシラン、ジメチルイソプロペノキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジエチルメトキシシラン、メチルエチルエトキシシラン、n−プルピル(メチル)メトキシシラン、n−プルピル(メチル)エトキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピル(メチル)メトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオルプロピル)エトキシシラン、n−ヘキシル(メチル)メトキシシラン、ジ(n−ヘキシル)エトキシシラン、n−オクチル(メチル)メトキシシラン、ジ(n−オクチル)エトキシシラン、ベンジル(メチル)メトキシシラン、フェネチル(メチル)メトキシシラン、メチルフェニルメトキシシラン等が例示できる。アルコキシ基、アルケノキシ基、アラルキロキシ基、アリーロキシ基等の2種以上の異なる構造のハイドロカーボンオキシ基を有するハイドロカーボンオキシシランとしてはメトキシジエトキシシラン、ジエトキシプロペノキシシラン、ジメトキシフェノキシシラン、ジメトキシベンジロキシシラン、ジフェノキシプロペノキシシラン、メチルメトキシフェネトキシシラン、等が例示できる。また、これらのシラン化合物のRがクロロメチル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリルメチル基、2−メトキシエチル基等によって置き換えられたものもあげることができる。
これらのヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物は、その反応性あるいは製造しようとするハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーの用途によって選択されるものであるが、通常は反応性を考慮してアルコキシシランが好適に使用される。
【0013】
反応に用いるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物の量は上記不飽和基含有ポリマーに結合した不飽和基と等量用いてもよいが、反応をより迅速に行い、かつ、完結させる目的で、過剰量(ポリマーの不飽和基1モル当たり1.1グラム当量ないし100グラム当量)加え、反応後除去してもよい。
【0014】
本発明におけるカルボン酸化合物は、次のa、b又はcのいずれかであることができる。
a.カルボン酸(カルボキシル基を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、等が挙げられる。これらのカルボン酸におけるカルボキシル基以外の部分としては通常、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基あるいは水素原子等が選択される。また、これらの炭化水素基にはアミノ基、シリル基、水酸基等の置換基が結合していても勿論構わない。)
b.カルボン酸のシリル化物
c.本発明製造方法におけるヒドロシリル化反応の際に反応系中で分解又は反応により上記a又はbのカルボン酸化合物を生じるもの。
本発明の製造方法において、カルボン酸化合物はヒドロシリル化反応が生じる際に反応系中に存在していることが必要なので、ヒドロシリル化反応開始前ないしは該反応の初期段階までに系中に添加する必要がある。
【0015】
本発明のヒドロシリル化方法で用いるカルボン酸化合物としては、上述のようにカルボン酸又はカルボン酸のシリル化物から選ばれるが、これら以外にも反応系中での分解、あるいは反応により上記のカルボン酸化合物を生じるものも含まれる。具体的には、カルボン酸としては、飽和モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸;飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、アジピン酸;芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、パラ−フタル酸;これらのカルボン酸の炭化水素基の水素原子がハロゲン原子又はオルガノシリル基で置換されたクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パラ−クロロ安息香酸、トリメチルシリル酢酸等のカルボン酸;不飽和脂肪酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸;カルボキシル基の他にヒドロキシ基、カルボニル基又はアミノ基をも有するもの、すなわちヒドロキシ酸、例えば乳酸、ケト酸、例えばアセト酢酸、アルデヒド酸、例えばグリオキシル酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸等の化合物を挙げることができる。
【0016】
カルボン酸のシリル化物としては、具体的にはカルボン酸のトリアルキルシリル化物、例えばギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル;ジ−、トリ−またはテトラカルボキシシリレート、例えばジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、シリコンテトラベンゾエートを例示できる。
【0019】
これらカルボン酸化合物は反応系中に0.001重量%から20重量%の範囲で添加して有効に使用することができるが、十分な効果を上げ、かつ効率的に使用する目的では0.01重量%から5重量%の間で添加することが好ましい。ここで反応系とは、本発明製造方法に用いられるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物、不飽和基含有ポリマー、白金又はその化合物からなる触媒及び前記カルボン酸化合物からなる混合物をいう。
【0020】
本発明において、触媒成分の白金化合物はマイナスの電荷を帯びた錯体、0価、2価又は4価の白金化合物及び白金コロイドから選ぶことができる。具体的にはマイナスの電荷を帯びた錯体としては、白金カルボニルクラスターアニオン化合物、例えば[Pt3 (CO)6 ]2-、[Pt3 (CO)6 ]2 2 - 、[Pt3 (CO)6 ]4 2 - を、0価の白金化合物としては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金(0)テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、白金(0)エチレン錯体、白金(0)スチレン錯体を、2価の白金化合物としてはPt(II)Cl2 ,Pt(II)Br2 、ビス(エチレン)Pt(II)Cl2 、(1,5−シクロオクタジエン)Pt(II)Cl2 、白金(II)アセチルアセトナート、ビス(ベンゾニトリル)Pt(II)Cl2 等を、4価の白金化合物としてはPt(IV)Cl4 ,H2 Pt(IV)Cl6 ,Na2 Pt(IV)Cl6 ,K2 Pt(IV)Cl6 、等の化合物を例示できる。これらのうち、有機溶媒への溶解性、触媒溶液の安定性等の使用上の観点から、特に好ましいものとしては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体と塩化白金酸のアルコール溶液を挙げることができる。一定量の基質のヒドロシリル化反応に要する白金の量は基質の種類、反応温度、反応時間等の要素とも関連し、一律に決めることはできないが、一般に、基質(ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物)1モルに対して白金10-3モルから10-8モルの範囲で使用でき、触媒の経済性および反応時間の観点からは10-4モルから10-7モルの範囲で使用するのが適当である。
【0021】
前記不飽和基を有するポリマーはオリゴマーを包含する概念である。但し後記ポリシロキサンにおいては重合度3以上のものを意味する。これらのポリマーにおいて、ポリマーに含まれる不飽和基はポリマー末端にあっても側鎖にあってもよく、オレフィン性不飽和基としてはビニル基、ビニリデン基、アリル基、ヘキセニル基等の不飽和基を、アセチレン性不飽和基としては末端性アセチレン基、および内部アセチレン基を例示できる。
不飽和基が結合しているポリマーとしては具体的には、ポリイソブチレン、ポリエーテル(例えばポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリフェニレンオキシド)、重合度3以上のポリシロキサン(例えばポリジメチルシロキサン)を例示することが出来る。ポリマーに結合するオレフィン性不飽和基、あるいはアセチレン性不飽和基はこれらのポリマーの片末端にのみ結合する場合も、両末端に結合する場合も、側鎖として存在する場合も、さらに、末端および側鎖の両方に結合する場合もある。
【0022】
前記不飽和基を有するポリマーは、オレフィン性不飽和基を有する重合度3以上のポリシロキサン、オレフィン性不飽和基を有するポリイソブチレン、オレフィン性不飽和基を有するポリエーテルから選ばれることが好ましい。このようなポリシロキサンは直鎖状のものであっても、分岐を有するものであっても構わない。直鎖状のポリシロキサンとしては、片末端にオレフィン性の不飽和基を有するポリシロキサン化合物(例えば片末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサン、片末端アリル官能性ポリジメチルシロキサン、片末端ヘキセニル官能性ポリジメチルシロキサン、片末端ビニル官能性ポリジフェニルシロキサン、片末端ビニル官能性ポリメチルフェニルシロキサン)、両末端にオレフィン性の不飽和基を有するポリシロキサン化合物(例えば両末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサン、両末端アリル官能性ポリジメチルシロキサン、両末端ヘキセニル官能性ポリジメチルシロキサン、両末端ビニル官能性ポリジフェニルシロキサン、両末端ビニル官能性ポリメチルフェニルシロキサン)、側鎖にオレフィン性の不飽和基を有するポリシロキサン化合物(例えばポリ(ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン)コポリマー、ポリ(ジメチルシロキサン−メチルアリルシロキサン)コポリマー)及び末端および側鎖に不飽和基を有するポリシロキサン化合物(例えばポリ(ジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン)コポリマー)を例示できる。分岐を有するポリシロキサンとしてはメチルシルセスキオキサン単位(CH3 SiO3/2 )を有するもの、シリケート単位(SiO4/2)を有するもので上記の不飽和基を有するものを挙げることができ、具体的には、CH2 =CH(CH3)2 SiO1/2 ,(CH3)2 SiO2/2 及びCH3 SiO3/2 のコポリマー、CH2 =CH(CH3)2 SiO1/2 及びSiO4/2 のコポリマー、CH2 =CH(CH3)2 SiO1/2 及びC6 H5 SiO3/2 のコポリマー等を例示できる。
【0023】
またポリイソブチレンとしては、片末端にオレフィン性不飽和基を有するポリイソブチレン(例えば、片末端アリル官能性ポリイソブチレン)、及び両末端にオレフィン性不飽和基を有するポリイソブチレン(例えば、両末端アリル官能性ポリイソブチレン)を例示できる。
【0024】
またポリエーテルとしては、片末端アリル官能性ポリエチレングリコール、両末端アリル官能性ポリエチレングリコール、片末端アリル官能性ポリプロピレングリコール、両末端アリル官能性ポリプロピレングリコール、両末端アリル官能性ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体等を例示できる。
【0025】
本発明製造方法により製造されるハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーは、ポリマーにハイドロカーボンオキシシリル基が結合した構造をとるものである。このハイドロカーボンオキシシリル基の結合位置は、原料ポリマーが有する不飽基の位置に対応するものであり、具体的にはポリマーの片末端、両末端、側鎖、または末端と側鎖の両方等が挙げられる。
ポリマーに結合したハイドロカーボンオキシシリル基の構造は、原料のヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物の構造に由来するものであり、トリハイドロカーボンオキシシリル基、ジハイドロカーボンオキシシリル基またはモノハイドロカーボンオキシシリル基のいずれかとなる。
【0026】
本発明方法における反応温度は0℃以上300℃以下でよいが、適当な反応速度を達成出来ること、および反応に関与する基質および生成物が安定に存在しうるという点からは30℃から250℃が最適である。
【0027】
本発明方法においては、本質的には溶媒を用いる必要はないが、基質を溶かす目的で、また反応系の温度の制御及び触媒成分の添加を容易にするため炭化水素系化合物を反応溶媒あるいは触媒成分の溶媒として用いることができる。この目的にために最適な溶媒としては、飽和あるいは不飽和の炭化水素化合物、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン、ハロゲン化炭化水素化合物、例えばクロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン、エーテル類、例えばエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等、シリコーン類、例えばヘキサメルジシロキサン、ジメチルポリシロキサンを挙げることが出来る。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例にある実験はいずれも窒素雰囲気中でおこなった。
なお、以下に示す例中の生成物の特性化の記述においてNMRは核磁気共鳴を表す。
本実施例で用いたアルコキシシラン化合物、アルキルシラン化合物及びシロキサン化合物は市販のものあるいは公知の方法によって合成したものである。不飽和化合物は市販のものをそのまま用いた。
【0029】
(実施例1)
(酢酸存在下でのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンとトリメトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.5gのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(平均重合度39)と0.27gのトリメトキシシランをとり、これに5μLの酢酸を加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5μL加えた。これを60℃のオイルバスにいれ1時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとシロキサンのビニル基の転化率は91%であり、ビニル基の85%がヒドロシリル化されており、生成した(トリメトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OCH3)3)とメチル(トリメトキシシリル)メチル基(−CHCH3(Si(OCH3)3)) の比は35:1であった。
【0030】
(比較例1)
(カルボン酸化合物不存在下でのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンとトリメトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.5gのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(平均重合度39)と0.27gのトリメトキシシランをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5μL加えた。これを60℃のオイルバスにいれ1時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとシロキサンのビニル基の転化率は11%であり、ビニル基の9.6%がヒドロシリル化されており、生成した(トリメトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OCH3)3)とメチル(トリメトキシシリル)メチル基(−CHCH3(Si(OCH3)3)) の比は6:1であった。
【0031】
(実施例2)
(酢酸存在下での白金触媒による両末端アリル官能性ポリイソブチレンとトリメトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.0gの両末端アリル官能性ポリイソブチレン(平均分子量5100)と0.18gのトリメトキシシランをとり、これに0.005mLの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5マイクロリットル加えた。これを50℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとアリル基の転化率は60%であり、収率56%で末端トリメトキシシリル基が生成していた。
【0032】
(比較例2)
(カルボン酸化合物不存在下での両末端アリル官能性ポリイソブチレンとトリメトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.0gの両末端アリル官能性ポリイソブチレンと0.18gのトリメトキシシランをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5マイクロリットル加えた。これを50℃のオイルバスにいれ20時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとアリル基の転化率は0%であった。
【0033】
(実施例3)
(プロピオン酸存在下での末端アリル官能性ポリエチレングリコールとメチルジメキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに3.7gの末端アリル官能性ポリエチレングリコール(平均分子量550)と0.8gのメチルジメトキシシランをとり、これに0.010mLのプロピオン酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を10マイクロリットル加えた。これを50℃のオイルバスにいれ20時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析すると末端アリル基の転化率は42%であり、メチルジメトキシシリル基が39%の収率で生成していた。
【0034】
(比較例3)
(カルボン酸化合物不存在下での末端アリル官能性ポリエチレングリコールとメチルジメキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに3.6gの末端アリル官能性ポリエチレングリコール(平均分子量550)と0.8gのメチルジメトキシシランをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を10マイクロリットル加えた。これを50℃のオイルバスにいれ20時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析すると末端アリル基の転化率は21%であり、メチルジメトキシシリル基が11%の収率で生成していた。
【0035】
(実施例4)
(メチルジアセトキシシラン存在下でのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンとメチルジエトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.2gのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(平均重合度9.5)と0.9gのメチルジエトキシシランおよび14.9mgのメチルジアセトキシシランを加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5マイクロリットル加えた。これを60℃のオイルバスにいれ60分間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとシロキサンのビニル基の転化率は96%であり、ビニル基の95.3%がヒドロシリル化されており、生成した(メチルジエトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OC2 H5)2 CH3)とメチル(メチルジエトキシシリル)メチル基(−CHCH3(Si(OC2 H5)2 CH3)) の比は58:1であった。
【0036】
(比較例4)
(カルボン酸化合物の不存在下でのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンとメチルジエトキシシランの反応)
内部を窒素置換したガラス製反応管をポリテトラフルオロエチレンテープとセプタムでシールし、これに2.2gのα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(平均重合度9.5)と0.9gのメチルジエトキシシランをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.04wt%)を5マイクロリットル加えた。これを60℃のオイルバスにいれ60分間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとシロキサンのビニル基の転化率は4%であり、ビニル基の3.4%がヒドロシリル化されており、生成した(メチルジエトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OC2 H5)2 CH3)とメチル(メチルジエトキシシリル)メチル基(−CHCH3(Si(OC2 H5)2 CH3)) の比は5:1であった。
【0037】
(実施例5)
(酢酸存在下での白金触媒によるビニル官能性シリコーンレジンとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に0.54gのビニル官能性シリコーンレジン(ViMe2 SiO1/2 )0.6 (Me3 SiO1/2 )0.6 (SiO4/2 ))と0.36gのトリメトキシシランおよび0.45gのトルエンをとり、これに0.005mLの酢酸およびジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.002mL加えた。反応管をテフロン(登録商標)テープとラバーセプタムでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ3時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとビニル基の99.5%がヒドロシリル化されており、(トリメトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OCH3 )3 )とメチル(トリメトキシシリル)メチル基(−CHCH3 (Si(OCH3 )3 ))の比は39:1であった。(Viはビニル基、Meはメチル基を表す。以下同じ。)
【0038】
(比較例5)
(カルボン酸化合物不存在下での白金触媒によるビニル官能性シリコーンレジンとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に0.54gのビニル官能性シリコーンレジン(ViMe2 SiO1/2 )0.6 (Me3 SiO1/2 )0.6 (SiO4/2 ))と0.36gのトリメトキシシランおよび0.45gのトルエンをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.002mL加えた。反応管をテフロン(登録商標)テープとラバーセプタムでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ3時間加熱した。冷却後、内容物をプロトンNMRを用いて分析するとビニル基の85%がヒドロシリル化されており、(トリメトキシシリル)エチル基(−CH2 CH2 Si(OCH3 )3 )とメチル(トリメトキシシリル)メチル基(−CHCH3 (Si(OCH3 )3 ))の比は7:1であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、フィラー等の表面処理剤、硬化性組成物の成分又は変性剤として重要なハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーをSiH官能基を有するヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とオレフィン性又はアセチレン性の不飽和基を有するポリマーとのヒドロシリル化反応で容易にかつ効率的に製造することなど先に述べた本発明の目的を達成することが可能になった。
Claims (1)
- カルボン酸又はカルボン酸のシリル化物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用により、オレフィン性又はアセチレン性の不飽和基を有するポリマーであって、不飽和基含有の重合度3以上のポリシロキサン、不飽和基含有のポリイソブチレン及び不飽和基含有のポリエーテルから選ばれた少なくとも一つのポリマーと、下記式(1)で示されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とを反応させる、ハイドロカーボンオキシシリル官能性ポリマーの製造方法。
HRnSi(OR’)3−n (1)
(但し、ここに、nは0、1又は2であり、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアルキル基またはトリアルキルシリル置換アルキル基から選ばれた、炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、R’はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた、炭素数1以上10以下の炭化水素基である。)
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