JP4540141B2 - ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を用いたヒドロシリル化による{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法 - Google Patents
ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を用いたヒドロシリル化による{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物と脂肪族不飽和有機化合物を原料として用いて、工業的に重要な{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiH官能性のアルコキシシラン等に代表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物は変性シリコーンの重要な原料であり、その他にも各種基材の表面修飾あるいはポリマーの硬化反応における架橋剤等に利用されている。
【0003】
アルコキシシリル基等に代表される{ハイドロカーボンオキシ}シリル基を有する化合物の製造方法は大別して次の2つがある。
1.ヒドリドクロロシラン化合物を用いて脂肪族不飽和有機化合物にヒドロシリル化反応を生じさせ、更にケイ素原子に結合している塩素原子のアルコール分解を行なう方法。
2.ヒドリドアルコキシシラン化合物を用いて脂肪族不飽和有機化合物にヒドロシリル化反応を生じさせる方法。
この内第2の方法は工程が簡便であり、更にイオン性不純物が少ない生成物の製造が可能な方法である。この第2の方法を効果的に行なうには、ヒドロシリル化反応に優れた活性と選択性を有する触媒の存在が不可欠である。
【0004】
ヒドロシリル化反応に関して、ある種の化合物が触媒の失活を防ぎ、また、反応活性を高めることが知られているが、これは、クロロシラン化合物およびシロキサン化合物に限定されていた。また、ヒドロシリル化反応ではしばしば、触媒活性の発現ならびに持続のために、反応雰囲気中に酸素を添加することが必要であり、引火、爆発の危険を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を用いるヒドロシリル化反応による{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の新規な製造方法を提供することを目的とする。具体的には、ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物と脂肪族不飽和有機化合物とのヒドロシリル化反応における白金(又はその化合物)触媒の活性を高め、また活性の低下を防ぐことにより、効率的かつ経済的にヒドロシリル化を行なって、{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物を製造することを可能としたものである。
また、本発明製造方法により前記白金触媒の高活性化及び活性持続性の改善が達成された。このためヒドロシリル化反応を低酸素分圧下又は不活性雰囲気下で行なうことが可能となり、ヒドロシリル化反応時の引火、爆発等の危険性が低減された。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は白金(又はその化合物)触媒を用いるヒドロシリル化反応において、ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物をオレフィン官能性又はアセチレン官能性の脂肪族不飽和有機化合物へ付加させるにあたって、反応系中にカルボン酸化合物を共存させることにより、反応活性を大幅に改善し、低酸素分圧下又は酸素非存在下でのヒドロシリル化反応を速やかに行なうことを可能としたものである。
【0007】
本発明は、カルボン酸、カルボン酸のシリル化物、カルボン酸の酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸金属塩より選ばれるカルボン酸化合物の存在下であって、該カルボン酸化合物が、反応系中に0.01重量%から5重量%の範囲で含まれ、白金又はその化合物の触媒作用により、脂肪族不飽和有機化合物に下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該脂肪族不飽和有機化合物をヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法である。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の(ア)又は(イ)から選ばれる炭化水素基であり:(ア)炭素数1以上10以下の炭化水素基、(イ)O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の(ウ)又は(エ)から選ばれる炭化水素基である:(ウ)炭素数1以上18以下の炭化水素基、(エ)O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。)
【0008】
本発明における一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物とは、ケイ素原子に水素原子が結合しており、更に該ケイ素原子に少なくとも1個のハイドロカーボンオキシ基が結合しているものである。ここで、ハイドロカーボンオキシ基とは一般式(1)における−OR′に相当する部分のことであり、炭化水素基又は所定のO,F,Cl等の原子を有する炭化水素基が酸素原子を介してケイ素原子に結合した構造をとるものである。ここで、同一のケイ素原子に互いに異なるハイドロカーボンオキシ基が結合していても構わない。
該ケイ素原子に結合するハイドロカーボンオキシ基が1個又は2個の場合に該ケイ素原子に結合する残りの置換基は、水素原子の他に、上記一般式(1)式においてRで示される炭化水素基である。
本発明におけるカルボン酸化合物とは次のa,b,c又はdのいずれかである。
a.カルボン酸(カルボキシル基を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、等が挙げられる。これらのカルボン酸におけるカルボキシル基以外の部分としては通常、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基あるいは水素原子等が選択される。また、これらの炭化水素基にはアミノ基、シリル基、水酸基等の置換基が結合していても勿論構わない。)
b.カルボン酸の酸無水物
c.カルボン酸のシリル化物
d.本発明製造方法におけるヒドロシリル化反応の際に反応系中で分解又は反応により上記a,bあるいはcのカルボン酸化合物を生じるもの。
本発明の製造方法において、カルボン酸化合物はヒドロシリル化反応が生じる際に反応系中に存在していることが必要なので、ヒドロシリル化反応開始前ないしは該反応の初期段階までに系中に添加する必要がある。
【0009】
前記脂肪族不飽和有機化合物は▲1▼オレフィン性不飽和化合物、▲2▼下記(a)に示す原子を有するオレフィン性不飽和化合物、▲3▼アセチレン性不飽和化合物または▲4▼下記(a)に示す原子を有するアセチレン性不飽和有機化合物から選ばれるものが好ましく、前記ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物は下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
HSiRn (OR″)3-n (2)
(nは0,1または2から選ばれる整数であり;R及びR″はそれぞれ独立に次の▲1▼又は▲2▼から選ばれる炭素数1以上10以下の炭化水素基である:▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、▲2▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基。)
(a)O,N,F,Cl,Br,I,S及びSi。
【0010】
本発明における脂肪族不飽和有機化合物とは、脂肪族炭化水素基であって不飽和基を有するもののことをいう。具体的には、▲1▼オレフィン性不飽和化合物としては、直鎖の末端不飽和オレフィン化合物、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、オクタデセン−1等;末端不飽和基を有する分岐オレフィン化合物、例えばイソブチレン、3−メチルブテン−1、3,5−ジメチルヘキセン−1、4−エチルオクテン−1等;直鎖の内部オレフィン化合物、例えばブテン−2、ヘキセン−3、オクテン−2、オクタデセン−4等;分岐性内部オレフィン化合物、例えば2−メチルブテン−2、3,5−ジメチルヘキセン−2、4−エチルオクテン−2等;環状オレフィン化合物、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン等;アリール基含有オレフィン化合物、例えばアリルベンゼン、4−フェニルブテン−1等;ジエン化合物、例えば1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン等を例示できる。
【0011】
▲2▼オレフィン性不飽和化合物で酸素、窒素、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ケイ素及びイオウから選ばれる原子を含んだものとしては、含酸素アリル化合物、例えばアリルグリシジルエーテル、アリルメタクリレート等;アミン化合物、例えばN−ビニルカルバゾール;オレフィンのハロゲン化物、例えば塩化アリル、4−クロロブテン−1、6−ブロモヘキセン−1等;ケイ素官能性オレフィン化合物、例えばビニルシラン化合物、例えばビニルトリメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、両末端にビニル基を有するジシロキサン、例えば1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサン、アリロキシトリメチルシラン等;イオウ含有オレフィン化合物、例えばアリルメルカプタン、アリルスルフィド等を例示できる。
【0012】
▲3▼アセチレン性不飽和化合物としては、末端不飽和アセチレン化合物、例えばアセチレン、プロピン、ブチン−1、ヘキシン−1等;内部アセチレン化合物、例えばブチン−2、ヘキシン−3等を例示できる。
【0013】
▲4▼アセチレン性不飽和化合物で少なくとも1個の酸素、窒素、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ケイ素及びイオウから選ばれる原子を含んだものとしては、末端不飽和アセチレン化合物(酸素、窒素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はケイ素から選ばれる原子を含んでいてもよい)、例えばアセチレンアルコール、例えば2−メチル−3−ブチン−2−オール、プロパルギルアルコール等;ハロゲン化アセチレン化合物、例えば塩化プロパルギル、4−クロロブチン−1等;ケイ素官能性アセチレン化合物、例えばトリメチルシリルアセチレン、プロパルギルアルコールのトリメチルシリル化物等;イオウ含有アセチレン化合物、例えばプロパルギルメルカプタン、プロパルギルスルフィド等を例示できる。
【0014】
尚、本発明においてオレフィン性不飽和化合物としてビニルシラン化合物を使用する場合、カルボン酸化合物の存在により反応性及び位置選択性が改善される。この様なビニルシラン化合物の例として次のものを挙げることができる:ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、ビニルジメチルフェニルシラン、ビニルエトキシジメチルシラン、ビニルメトキシジエチルシラン、ビニルフェノキシジメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルジ(n−プロポキシ)メチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジビニルジエトキシシラン。
【0015】
前記好ましい態様で用いるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シランは下記一般式(1)
HSiRn (OR′)3-n (1)
で示されるものであり、ケイ素に直接結合した水素原子とこのケイ素原子に結合するOR′で表わされる少なくとも1個の{ハイドロカーボンオキシ}基を有するケイ素化合物である。同一のケイ素原子に互いに異なる{ハイドロカーボンオキシ}基が結合していても構わない。式(1)においてRは、▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、並びに▲2▼O,F,Cl,Br,I及びSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基から選ばれる炭化水素基であり;R′は、▲3▼炭素数1以上18以下の炭化水素基、並びに▲4▼O,F,Cl,Br,I及びSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基、から選ばれる炭化水素基である。R′は、好ましくは、上記▲3▼,▲4▼において炭素数が1以上10以下のもの(前記一般式(2)のR″)である。Rについても、n=2のときは、同一のケイ素原子上に互に異なる炭化水素基が結合していても構わない。R及びR′(又はR″)は上記炭化水素基の内上記O,F.Cl,Br,I及びSiから選ばれる原子を有することのあるアルキル基であることが好ましい。
【0016】
ケイ素上の置換基Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、2−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基など(前記一般式(1)▲1▼の例)、及びクロロメチル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリルメチル基、2−メトキシエチル基等(前記一般式(1)▲2▼の例)を例示することが出来る。
R′の例として、上記Rの例と同じものを挙げることができる。
【0017】
この化合物は、具体的には、トリアルコキシシラン、トリアルケノキシシラン、およびトリアリーロキシシランとしてはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、トリイソプロポキシキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリフェノキシシラン等が例示でき、ジアルコキシシラン、ジアルケノキシシラン、およびジアリーロキシシランとしてはメチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジn−プロポキシシラン、メチルジイソプロペノキシシラン、メチルジフェノキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、n−プルピルジメトキシシラン、n−プルピルジエトキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキシルジメトキシシラン、n−ヘキシルジエトキシシラン、n−オクチルジメトキシシラン、n−オクチルジエトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン等が例示でき、モノアルコキシシラン、モノアルケノキシシラン、およびモノアリーロキシシランとしてはジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルn−プロポキシシラン、ジメチルイソプロペノキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジエチルメトキシシラン、メチルエチルエトキシシラン、n−プルピル(メチル)メトキシシラン、n−プロピル(メチル)エトキシシラン、3,3,3−トリフルオルプロピル(メチル)メトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオルプロピル)エトキシシラン、n−ヘキシル(メチル)メトキシシラン、ジ(n−ヘキシル)エトキシシラン、n−オクチル(メチル)メトキシシラン、ジ(n−オクチル)エトキシシラン、ベンジル(メチル)メトキシシラン、フェネチル(メチル)メトキシシラン、メチルフェニルメトキシシラン等が例示でき、アルコキシ基、アルケノキシ基、アラルキロキシ基、アリーロキシ基混合{ハイドロカーボンオキシ}シランとしてはジエトキシプロペノキシシラン、ジメトキシフェノキシシラン、ジフェノキシプロペノキシシラン、メチルメトキシフェネトキシシラン、等が例示できる。また、これらのシラン化合物のR又はR′はクロロメチル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリルメチル基、2−メトキシエチル基等によって置き換えられたものもあげることができる。
これらのヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物は、その反応性あるいは製造しようとする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の用途によって選択されるものであるが、通常は反応性を考慮してアルコキシシランが好適に使用される。
【0018】
本発明において、触媒成分の白金化合物はマイナスの電荷を帯びた錯体、0価、2価又は4価の白金化合物及び白金コロイドから選ぶことができる。具体的にはマイナスの電荷を帯びた錯体としては[Pt3 (CO)6 ]2-,[Pt3 (CO)6 ]2 2- ,[Pt3 (CO)6 ]4 2- に代表される白金カルボニルクラスターアニオン化合物を、0価の白金化合物としては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金(0)テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、白金(0)エチレン錯体、白金(0)スチレン錯体を、2価の白金化合物としてはPt(II)Cl2 、Pt(II)Br2 、ビス(エチレン)Pt(II)Cl2 、(1,5−シクロオクタジエン)Pt(II)Cl2 、白金(II)アセチルアセトナート、ビス(ベンゾニトリル)Pt(II)Cl2 等を、4価の白金化合物としてはPt(IV)Cl4 、H2 Pt(IV)Cl6 、Na2 Pt(IV)Cl6 、K2 Pt(IV)Cl6 、等の化合物を例示できる。これらのうち、有機溶媒への溶解性、触媒溶液の安定性等の使用上の観点から、特に好ましいものとしては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体と塩化白金酸のアルコール溶液を挙げることができる。一定量の基質のヒドロシリル化反応に要する白金の量は基質の種類、反応温度、反応時間等の要素とも関連し、一律に決めることはできないが、一般に、基質(ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物)1モルに対して白金10-3モルから10-8モルの範囲で使用でき、触媒の経済性および反応時間の観点からは10-4モルから10-7モルの範囲で使用するのが適当である。
【0019】
本発明のヒドロシリル化方法で用いるカルボン酸化合物としてはカルボン酸、カルボン酸のシリル化物、カルボン酸の酸無水物が適当であるが、これら以外にも反応系中での分解、あるいは反応により上記のカルボン酸化合物を生じるものも含まれる。具体的には、カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸に代表される飽和モノカルボン酸;シュウ酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸;安息香酸、パラ−フタル酸等の芳香族カルボン酸;カルボン酸の炭化水素基の水素原子がハロゲン原子又はオルガノシリル基で置換されたクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パラ−クロロ安息香酸、トリメチルシリル酢酸等のカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸;カルボキシル基の他にヒドロキシ基、カルボニル基又はアミノ基をも有するもの、すなわち乳酸等のヒドロキシ酸、アセト酢酸等のケト酸、グリオキシル酸等のアルデヒド酸、グルタミン酸等のアミノ酸等の化合物を挙げることができる。カルボン酸のシリル化物としては、具体的にはギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル等のカルボン酸のトリアルキルシリル化物;ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、シリコンテトラベンゾエート等のジ−、トリ−およびテトラカルボキシシリレートを例示できる。
【0020】
カルボン酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等を例示でき、反応系中での分解、あるいは反応により上記のカルボン酸化合物を生じるものとしては、塩化アセチル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル等のカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸金属塩などを挙げることが出来る。
【0021】
これらカルボン酸化合物は反応系中に0.001重量%から20重量%の範囲で添加して有効に使用することができるが、十分な効果を上げ、かつ効率的に使用する目的では0.01重量%から5重量%の間で添加する。ここで反応系とは、本発明製造方法に用いられるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物、脂肪族不飽和化合物、白金又はその化合物からなる触媒及び該カルボン酸化合物を含む混合物をいう。
【0022】
反応温度は0℃以上300℃以下でよいが、適当な反応速度を達成出来ること、および反応に関与する基質および生成物が安定に存在しうるという点からは30℃から250℃が最適である。
【0023】
本発明の方法では本質的には溶媒を用いる必要はないが、基質を溶解させる目的で、また反応系の温度の制御及び触媒成分の添加を容易にするため炭化水素系化合物、含酸素有機溶媒又はシリコーン等を反応溶媒あるいは触媒成分の溶媒として用いることができる。この目的のために最適な溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の飽和あるいは不飽和の炭化水素化合物、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、エーテル類、エステル類、そしてシリコーン類、例えば両末端トリメチルシリルポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることができる。
【0024】
以下に本発明の好ましい実施態様を示す。
(実施態様1)
カルボン酸化合物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用により下記(A)群から選ばれる化合物に下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該(A)群の化合物をヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の▲1▼又は▲2▼から選ばれる炭化水素基であり:▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、▲2▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の▲3▼又は▲4▼から選ばれる炭化水素基である:▲3▼炭素数1以上18以下の炭化水素基、▲4▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。)
(A)群:含酸素アリル化合物、オレフィンのハロゲン化物、ビニルシラン化合物、両末端にビニル基を有するジシロキサン、及び末端不飽和アセチレン化合物(酸素、窒素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はケイ素から選ばれる原子を含んでいてもよい)。
この態様の製造方法によれば、特に上記(A)群から選ばれる化合物をヒドロシリル化させた場合、カルボン酸化合物の存在により特に位置選択性が改善される。
【0025】
(実施態様2)
カルボン酸化合物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用によりビニルシラン化合物に下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該ビニルシラン化合物をヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の▲1▼又は▲2▼から選ばれる炭化水素基であり:▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、▲2▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の▲3▼又は▲4▼から選ばれる炭化水素基である:▲3▼炭素数1以上18以下の炭化水素基、▲4▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。)
【0026】
(実施態様3)
カルボン酸化合物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用により下記(B)群から選ばれる化合物に下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該(B)群から選ばれる化合物をヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の▲1▼又は▲2▼から選ばれる炭化水素基であり:▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、▲2▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の▲3▼又は▲4▼から選ばれる炭化水素基である:▲3▼炭素数1以上18以下の炭化水素基、▲4▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。)
(B)群:オレフィン性不飽和化合物、アリロキシトリメチルシラン及び内部アセチレン化合物
【0027】
(実施態様4)
カルボン酸化合物の存在下、白金又はその化合物の触媒作用によりアリルグリシジルエーテルに下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該アリルグリシジルエーテルをヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法。
HSiRn (OR′)3-n (1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の▲1▼又は▲2▼から選ばれる炭化水素基であり:▲1▼炭素数1以上10以下の炭化水素基、▲2▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の▲3▼又は▲4▼から選ばれる炭化水素基である:▲3▼炭素数1以上18以下の炭化水素基、▲4▼O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。)
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下に示す例中の生成物の特性化の記述においてGCはガスクロマトグラフを、GC−MSはガスクロマトグラフ−質量分析を表す。転化率はオレフィン仕込み原料に対する反応率を、収率は、同じくオレフィン仕込み量に対する生成物の生成割合を意味する。
本実施例で用いた{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物、アルキルシラン化合物及びシロキサン化合物は市販のものあるいは公知の方法によって合成したものである。不飽和化合物は市販のものをそのまま用いた。次に実施例及び比較例を挙げ、本発明を説明する。
【0029】
(実施例1)
(酢酸存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と329mgのトリエトキシシランおよび400mgのトルエンをとり、これに0.004mlの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は96%であり、n−オクチルトリエトキシシランが89%の収率で生成していた。
【0030】
(比較例1)
(白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応(カルボン酸無添加の場合))
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と329mgのトリエトキシシランおよび400mgのトルエンををとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は0.5%であり、n−オクチルトリエトキシシランが0.4%の収率で生成していた。
【0031】
(実施例2)
(ギ酸存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランおよび56mgのトルエンをとり、これに0.002mlのギ酸をマイクロシリンジで加えた。これに塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含量0.39%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は96.6%であり、n−オクチルトリエトキシシランが92%の収率で生成していた。
【0032】
(比較例2)
(白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応(カルボン酸無添加の場合))
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランおよび56mgのトルエンをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は2.5%であり、n−オクチルトリエトキシシランが1.5%の収率で生成していた。
【0033】
(実施例3)
(トリフルオロ酢酸存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランおよび56mgのトルエンをとり、これに0.002mlのトリフルオル酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスに入れ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は95.2%であり、n−オクチルトリエトキシシランが87.4%の収率で生成していた。
【0034】
(実施例4)
(安息香酸存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランおよび56mgのトルエンをとり、これに8mgの安息香酸を加えた。これに塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含量0.39%)を0.001ml加えた後反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は97.5%であり、n−オクチルトリエトキシシランが91%の収率で生成していた。
【0035】
(実施例5)
(メチルトリアセトキシシラン存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランおよび56mgのトルエンをとり、これにメチルトリアセトキシシラン4mgを加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は97.6%であり、n−オクチルトリエトキシシランが91%の収率で生成していた。
【0036】
(実施例6)
(無水酢酸存在下での白金触媒によるオクテン−1とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に224mgのオクテン−1と328mgのトリエトキシシランをとり、これに0.01mlの無水酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.001ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを50℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとオクテン−1の転化率は16.5%であり、n−オクチルトリエトキシシランが14.3%の収率で生成していた。
【0037】
(実施例7)
(酢酸存在下での白金触媒による塩化アリルとメチルジメトキシシランの反応)ガラス製反応管に306mgの塩化アリルと530mlのメチルジメトキシシラン及び77mgのトルエンをとり、これに0.01mlの酢酸を加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.005ml加えた。反応管を封じ、これを50℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析すると塩化アリルの転化率は100%であり、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシランが40%の収率で生成していた。
【0038】
(比較例3)
(白金触媒による塩化アリルとメチルジエトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に306mgの塩化アリルと530mgのメチルジメトキシシランおよび77mgのトルエンをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を0.005ml加えた。反応管を封じ、これを50℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析すると塩化アリルの転化率は100%であり、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシランが19.7%の収率で生成していた。
【0039】
(実施例8)
(酢酸存在下での白金触媒による1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に186mgの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンと246mgのトリメトキシシランおよび47mgのトルエンをとり、これに0.005mlの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を2マイクロリットル加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを59℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析すると1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンの転化率は100%であり、1−β−トリメトキシシリルエチル−3−α−トリメトキシシリルエチル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンが3.8%、1,3−ジ(β−トリメトキシシリルエチル)−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンが89%の収率で生成していた。
【0040】
(比較例4)
(白金触媒による1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンとトリメトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))ガラス製反応管に186mgの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンと246mgのトリメトキシシランおよび47mgのトルエンをとり、これにジビニルシロキサンの0価白金錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を2マイクロリットル加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを59℃のオイルバスにいれ30分間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析すると1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンの転化率は8.3%であり、1−α−トリメトキシシリルエチル、3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンが1.3%、1−β−トリメトキシシリルエチル−3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンが5.6%、1,3−ジ(β−トリメトキシシリルエチル)−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサンが1.7%の収率で生成していた。
【0041】
(実施例9)
(エチルトリアセトキシシラン存在下での塩化白金酸触媒によるジビニルジメチルシランとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に225mgのジビニルジメチルシランと490mgのトリメトキシシランおよび56mgのトルエンをいれ、これに5mgのエチルトリアセトキシシランを加えた。これを脱気し、内部を窒素置換した後塩化白金酸のエチルアルコール溶液(白金含量3.77wt%)を0.5μl加えた。反応管をテフロンテープとゴムのセプタムでシールし、これを60℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとビニル基は全て消費されており、このうち、α,α−付加物が0.4%、α,β−付加物が12.5%、β,β−付加物が87.1%生じていた。これはα/β比に換算すると1/14に相当する。
【0042】
(比較例5)
(塩化白金酸触媒によるジビニルジメチルシランとトリメトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に225mgのジビニルジメチルシランと490mgのトリメトキシシランおよび56mgのトルエンをいれ、これを脱気し、内部を窒素置換した後塩化白金酸のエチルアルコール溶液(白金含量3.77wt%)を0.5μl加えた。反応管をテフロンテープとゴムのセプタムでシールし、これを60℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析すると1:1付加物(α−およびβ−異性体)および1:2付加物(α,α−およびα,β−およびβ,β−異性体)が生成しており、トリメトキシシランの転化率は31%であり、ジビニルジメチルシランの56%が消費されていた。ヒドロシリル化反応のα/β比は1/2であった。
【0043】
(実施例10)
(酢酸存在下でのジビニルテトラメチルジシロキサン白金0価錯体によるビニルジメチルメトキシシランとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に232mgのビニルジメチルメトキシシランと293mgのトリメトキシシラン(ビニル基に対して20%過剰量)および60mgのトルエンをいれ、これに5mgの酢酸を加えた。これを脱気し、内部を窒素置換した後ジビニルテトラメチルジシロキサン白金0価錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を5μl加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを60℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとビニルジメチルメトキシシランは完全に消費されており、α−付加物とβ−付加物の生成比は1:13であった。
【0044】
(比較例6)
(ジビニルテトラメチルジシロキサン白金0価錯体によるビニルジメチルメトキシシランとトリメトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に232mgのビニルジメチルメトキシシランと293mgのトリメトキシシラン(ビニル基に対して20%過剰量)および60mgのトルエンをいれた。これを脱気し、内部を窒素置換した後ジビニルテトラメチルジシロキサン白金0価錯体のトルエン溶液(白金含量0.4wt%)を5μl加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを60℃のオイルバスにいれ2時間加熱した。冷却後、内容物をガスクロマトグラフを用いて分析するとビニルジメチルメトキシシランは完全に消費されており、α−付加物とβ−付加物の生成比は1:3であった。
【0045】
(実施例11)
(酢酸存在下での白金触媒によるアリルグリシジルエーテル(以下「AGE」と略記する)とトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に400mgのAGEと457mgのトリエトキシシランをとり、これに0.005mlの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.005ml加えた反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ1時間加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は91%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチルトリエトキシシラン)が0.06%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)が65%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:1083であった。
【0046】
(実施例12)
(ラウリン酸存在下での白金触媒によるAGEとトリエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に400mgのAGEと457mgのトリエトキシシランをとり、これに26.6mgのラウリン酢酸を加えた。これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.005ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ1時間加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は96%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチルトリエトキシシラン)が0.06%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)が72%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:1200であった。
【0047】
(比較例7)
(白金触媒によるAGEとトリエトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に400mgのAGEと457mgのトリエトキシシランをとり、これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.005ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ1時間加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は54%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチルトリエトキシシラン)が0.5%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)が42%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:84であった。
【0048】
(実施例13)
(酢酸存在下での白金触媒によるAGEとメチルジメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に494mgのAGEと460mgのメチルジメトキシシランをとり、これに0.010mlの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.006ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は89%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチル(メチル)ジメトキシシラン)が0.05%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン)が67%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:1340であった。
【0049】
(比較例8)
(白金触媒によるAGEとメチルジメトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に494mgのAGEと460mgのメチルジメトキシシランをとり、これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.006ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は62%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチル(メチル)ジメトキシシラン)が0.4%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン)が48%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:140であった。
【0050】
(実施例14)
(酢酸存在下での白金触媒によるAGEとメチルジエトキシシランの反応)
ガラス製反応管に425mgのAGE、500mgのメチルジエトキシシランをとり、これに0.010mlの酢酸をマイクロシリンジで加えた。これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.0055ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は90%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチル(メチル)ジエトキシシラン)が0.08%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン)が61%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:870であった。
【0051】
(比較例9)
(白金触媒によるAGEとメチルジエトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に425mgのAGE、500mgのメチルジエトキシシランをとり、これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.0055ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は26%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチル(メチル)ジエトキシシラン)が0.5%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン)が20%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:40であった。
【0052】
(実施例15)
(エチルトリアセトキシシラン存在下での白金触媒によるAGEとトリメトキシシランの反応)
ガラス製反応管に320mgのAGE及び340mgのトリメトキシシランをとり、これに0.005mlのエチルトリアセトキシシランをマイクロシリンジで加えた。これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.004ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は86%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチルトリメトキシシラン)が0.08%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が71%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:888であった。この反応溶液中にはγ−シリル化体のアセトキシ誘導体(3−グリシドキシプロピルジメトキシアセトキシシラン)も1.4%存在したが、反応液にメタノールを0.05ml加え、1時間撹拌するとこのγ−シリル化体のアセトキシ誘導体はγ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)に転化し、GCを用いて分析するとβ−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:905であった。
【0053】
(比較例10)
(白金触媒によるAGEとトリメトキシシランの反応(カルボン酸化合物無添加の場合))
ガラス製反応管に320mgのAGE、340mgのトリメトキシシランをとり、これにジビニルテトラメチルジシロキサンの0価白金錯体のイソプロピルアルコール−トルエン溶液(白金含量0.02wt%)を0.004ml加えた。反応管をテフロンテープでシールし、これを100℃のオイルバスにいれ30分加熱した。冷却後、内容物をGCを用いて分析するとAGEの転化率は47%であり、β−シリル化体((2−グリシドキシ)(1−メチル)エチル(トリメトキシシラン))が0.4%、γ−シリル化体(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が39%の収率で生成していた。β−シリル化体とγ−シリル化体の比は1:98であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によりアルコキシシラン等に代表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物と脂肪族不飽和有機化合物とを用いて、分子中にアルコキシ基等のハイドロカーボンオキシ基を有する有機化合物であり、変性シリコーンあるいはシリコン変性ポリマーの原料として重要な{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物を、効率的かつ安全に製造することが可能となった。
本発明により製造される{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物は変性シリコーンあるいはシリコン変性ポリマーの原料となる。
Claims (3)
- カルボン酸、カルボン酸のシリル化物、カルボン酸の酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸金属塩より選ばれるカルボン酸化合物の存在下であって、該カルボン酸化合物が、反応系中に0.01重量%から5重量%の範囲で含まれ、白金又はその化合物の触媒作用により、脂肪族不飽和有機化合物に下記一般式(1)で表されるヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物を反応させて該脂肪族不飽和有機化合物をヒドロシリル化することを特徴とする{ハイドロカーボンオキシ}シリル基含有化合物の製造方法。
HSiRn(OR′)3-n(1)
(nは0,1及び2から選ばれる整数であり;Rは次の(ア)又は(イ)から選ばれる炭化水素基であり:(ア)炭素数1以上10以下の炭化水素基、(イ)O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基;R′は次の(ウ)又は(エ)から選ばれる炭化水素基である:(ウ)炭素数1以上18以下の炭化水素基、(エ)O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上18以下の炭化水素基。) - 前記脂肪族不飽和有機化合物が(ア)オレフィン性不飽和有機化合物、(イ)下記(a)に示す原子を有するオレフィン性不飽和有機化合物、(ウ)アセチレン性不飽和有機化合物または(エ)下記(a)に示す原子を有するアセチレン性不飽和有機化合物から選ばれるものであり、前記ヒドリド{ハイドロカーボンオキシ}シラン化合物が下記一般式(2)で表されるものである請求項1記載の製造方法。
HSiRn(OR″)3-n(2)
(nは0,1または2から選ばれる整数であり;R及びR″はそれぞれ独立に次の(ア)又は(イ)から選ばれる炭化水素基である:(ア)炭素数1以上10以下の炭化水素基、(イ)O,F,Cl,Br,IもしくはSiから選ばれる原子を有する炭素数1以上10以下の炭化水素基。)
(a)O,N,F,Cl,Br,I,S及びSi。 - 前記カルボン酸化合物が前記カルボン酸、前記カルボン酸のシリル化物、前記カルボン酸の酸無水物及び前記カルボン酸ハロゲン化物より選ばれる、請求項1又は2の製造方法。
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