以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図9は車椅子の実施の形態の一例を示す側面図、図10は車椅子の実施の形態の一例を示す正面図である。この車椅子は、車椅子本体2の後部の両側に駆動車輪となる大径の車輪1を設けると共に車椅子本体2の前端部の両側に旋回用車輪となるキャスタ24を設け、車椅子本体2の中央部に座部3を設けて形成されるものであり、車椅子本体2の背部の背もたれ部50の上端にはハンドル51が設けてある。
車椅子本体2は車輪1が取り付けられる左右一対の車輪フレーム37と、座部3を形成するための左右一対の座部フレーム38とから形成されるものである。左右の各車輪フレーム37は図11に示すように、上横フレーム材53と下横フレーム材54の前端間と後端間にそれぞれ前縦フレーム材55と車輪支持フレーム材56とを架設し、上横フレーム材53の後端に背もたれフレーム材57を立設することによって形成されるものである。また座部フレーム38はそれぞれ直線棒材で形成されるものである。そして、一対のリンクバー39を中央部同士でクロスさせて枢支軸40で枢着することによって形成されるクロスバー44を用い、図12に示すように、クロスバー44の各リンクバー39の下側の端部を左右の各車輪フレーム37の下横フレーム材54に溶接等で結合すると共に、各リンクバー39の上側の端部を左右の座部フレーム38にそれぞれ溶接等で結合することによって、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をクロスバー44で連結し、クロスバー44の各リンクバー39をそれぞれ縦になる方向へ回動させることによって、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ近接させるようにして車椅子本体2を折り畳むことができるようにしてある。
上記のように形成される車椅子本体2の各車輪フレーム37の上横フレーム材53にはそれぞれアームレスト4が取り付けてある。アームレスト4は図3に示すように、略逆U字状に屈曲する支持フレーム59の中央部に上下に開口する支持筒60を設け、支持筒60にアームレスト本体61を取り付けることによって形成してある。アームレスト本体61は、アームレストパッド62の下面に支持柱63を下方へ垂下して略T字形に形成してあり、支持柱63を支持筒60に高さ調整自在に差し込んで固定ピン64で固定することによって、アームレストパッド62の高さを調整した状態で取り付けることができるようにしてある。図3において65は支持フレーム59に取り付けたパネルである。
アームレスト4の支持フレーム59の前端の前垂下部59aの下端部は先細となった嵌合部17として形成してあり、嵌合部17には係合レバー66がシーソー状に回動自在に設けてある。この嵌合部17を図4に示す前部治具67に嵌合し、前垂下部59aの下端に前部治具67を結合して取り付けることができるようになっている。前部治具67は、嵌合孔68を設けた受け部69の側部に突片7を水平に突設して形成されるものであり、嵌合部17を嵌合孔68に上方から嵌合して受け部69の下縁に係合レバー66の下端を係合させて固定することによって、支持フレーム59の前垂下部59aの下端に前部治具67を結合することができるものである。
また支持フレーム59の後端の後垂下部59bの先端には、図5に示す後部治具70をその上端の固着部71を後垂下部59bの先端開口にはめ込むことによって、図1のように取り付けて固着してある。後部治具70は突片8を水平に突設して形成されるものであり、突片8が車椅子本体2の側へ向けて水平に突出するように後部治具70を固着してある。さらにこの突片8の上方において支持フレーム59の上部には突片8と略平行に補助突片18が突設してあり、補助突片18の先端には、支持フレーム59の前方へ向けて係合部19が突設してある。
ここで、図4や図5にみられるように、上記の前部治具67の突片7と後部治具70の突片8には、それぞれ同じ間隔・個数で、突片7,8の突出方向に沿って複数のピン挿入孔11が両側面に貫通して開口するように設けてある。また各突片7,8の側面には、ピン挿入孔11の間隔・個数と同じ間隔・個数で、突片7,8の突出方向に沿って複数の表示マーク14が形成してある。各表示マーク14は相互に識別できる表示で形成してあり、図の例では、「1」、「2」のように数字で表示してある。また各表示マーク14は各ピン挿入孔11に対応して形成されているものであり、図の例では、突片7,8の基部の側のピン挿入孔11と表示マーク14が対応し、先部の側のピン挿入孔11と表示マーク14が対応するようにしてある。
また、各車輪フレーム37の上横フレーム材53の前端部の下面には図6のように受け筒9が固着して取り付けてある。受け筒9は車椅子本体2の外側方へ開口するように取り付けられるものであり、受け筒9には両側面で開口するようにピン挿入孔12が穿設してある。受け筒9の側面にはさらに、上記の突片7の対応し合うピン挿入孔11と表示マーク14の間隔と同じ間隔で、マーク覗き孔15が開口して設けてある。そして図6の矢印のように、上記の前部治具67の突片7を車椅子本体2の外側から受け筒9内に差し込み、受け筒9のピン挿入孔12と突片7のピン挿入孔11に連結ピン13を挿通することによって、図1に示すように、受け筒9に差し込んだ状態で突片7を固定することができるものである。連結ピン13の受け筒9から突出する先端のピン孔73に抜け止めピン74を差し込むことによって、連結ピン13がピン挿入孔11,12から抜けないようにしてある。そして前部治具67に上記のようにアームレスト4の嵌合部17を嵌合して固定することによって、図2のように、アームレスト4の前部を突片7と受け筒9を介して車椅子本体2の車輪フレーム37に取り付けることができるものであり、この突片7と受け筒9によってアームレスト4の前部を車椅子本体2に取り付ける前取付具5が形成されるものである。
また、図1に示すように、各車輪フレーム37の背もたれフレーム材57の下端の背面側には二股状に突出する回動受け具76が固着してあり、上下方向に開口する回動筒77が回動受け具76に回動軸78によって車椅子本体2の前後方向に回動自在に取り付けてある。79は回動筒77に突設したストッパー突部である。一方、受け筒10の下面に差し込み脚80を垂下し、この差し込み脚80を回動筒77に上方から差し込んで固定ピン81で固定することによって、受け筒10を回動筒77に取り付けることができるようにしてある。受け筒10は車椅子本体2の外側方へ開口するように取り付けられるものであり、受け筒10には両側面で開口するようにピン挿入孔12が穿設してある。受け筒10の側面にはさらに、上記の突片8の対応し合うピン挿入孔11と表示マーク14の間隔と同じ間隔で、マーク覗き孔15が開口して設けてある。そして、アームレスト4の支持フレーム59の後端部の上記突片8を車椅子本体2の外側から受け筒10内に差し込み、受け筒10のピン挿入孔12と突片8のピン挿入孔11に連結ピン13を挿通することによって、図2に示すように、受け筒10に差し込んだ状態で突片8を固定することができるものである。このとき上記の場合と同様に、連結ピン13の受け筒10から突出する先端のピン孔73に抜け止めピン74を差し込むことによって、連結ピン13がピン挿入孔11,12から抜けないようにしてある。このようにして、アームレスト4の後部を突片8と受け筒10を介して車椅子本体2の車輪フレーム37に取り付けることができるものであり、この突片8と受け筒10によってアームレスト4の後部を車椅子本体2に取り付ける後取付具6が形成されるものである。また回動受け具76と回動筒77によって回動部16が形成されるものである。
このように、アームレスト4は前部と後部がそれぞれ前取付具5と後取付具6で車椅子本体2の車輪フレーム37に固定されるものであり、車椅子本体2にアームレスト4を強固に取り付けることができるものである。
また回動受け具76の上方において各車輪フレーム37の背もたれフレーム材57の背面側には補助受け具20が固着して取り付けてある。この補助受け具20には背方へ開口する係合受け凹部21が複数設けてある。係合受け凹部21は、突片8に設けたピン挿入孔11と同じ間隔・個数で、車椅子本体2の幅方向に配置して形成されるものである。
そして、前取付具5の前部治具67へのアームレスト4の前端部の嵌合部17の嵌合を外し、このようにアームレスト4の前部をフリーにした状態でアームレスト4を上方へ引き上げると、回動筒77が回動してアームレスト4を図7(a)から図7(b)へのように上方へ立ち上がらせることができる。アームレスト4が完全に立ち上がった状態では、ストッパー突部79が車輪フレーム37の上横フレーム材53の後端に当接し、立ち上がった状態に保持することができる。アームレスト4をこのように立ち上がらせると、車椅子本体2の座部3の側方からアームレスト4を後方へ退避させることができるので、車椅子に乗り降りする際の動作が容易になるものである。
また図7(b)から図7(a)へと、アームレスト4を前方へ倒して、前取付具5の前部治具67にアームレスト4の前端部の嵌合部17を嵌合させると、図2に示すように、アームレスト4の補助突片18の係合部19が補助受け具20の係合受け凹部21に差し込み係合されるようになっている。従って、上記のようにアームレスト4の前部と後部の下端部をそれぞれ前取付具5と後取付具6で車椅子本体2の車輪フレーム37に固定している他に、アームレスト4の上部も補助突片18と補助受け具20で車椅子本体2の車輪フレーム37に固定することができるものであり、車椅子本体2にアームレスト4をより強固に取り付けることができるものである。
次に、上記のように車椅子本体2の両側に取り付けられるアームレスト4の幅方向の間隔の調整について説明する。まず、前取付具5と後取付具6において、連結ピン13を外すと、受け筒9,10に対して突片7,8が車椅子本体2の幅方向にスライド自在になる。そこで受け筒9,10に対する突片7,8の差し込み深さを調整して、アームレスト4の幅方向の位置を調整した後、この調整位置で合致する受け筒9,10のピン挿入孔12と突片7,8のピン挿入孔11に連結ピン13を挿通し、受け筒9,10に対して突片7,8を固定する。このように左右の各アームレスト4の幅方向の位置を調整することによって、アームレスト4の幅方向の間隔を調整することができるものであり、車椅子本体2の幅を変えることによってアームレスト4の間隔を調整する従来例のような問題が生じることを防ぐことができるものである。
ここで、上記のようにアームレスト4の幅方向の位置を調整する操作は、既述の図7(b)のように、前取付具5の前部治具67に対するアームレスト4の支持フレーム59の前端部の嵌合部17の嵌合を外し、アームレスト4を上方へ立ち上がらせた状態で行なうものである。このように前取付具5において嵌合部17の嵌合を外すことによって、前取付具5において突片7はフリーな状態になり、受け筒9に対する突片7の差し込み深さの調整を容易に行なうことができ、前取付具5の幅方向調整を容易に行なうことができるものである。そしてアームレスト4の幅方向の位置調整を行なったのち、アームレスト4を図7(a)のように前方へ倒して前取付具5の前部治具67に嵌合部17を嵌合させると、補助受け具20の複数の係合受け凹部21のうち、調整したアームレスト4の位置に対応する係合受け凹部21に補助突片18の係合部19が差し込み係合されるものである。
また、上記のようにアームレスト4の幅方向の位置を調整するために、受け筒9,10に対する突片7,8の差し込み深さを調整して、この調整位置で合致する受け筒9,10のピン挿入孔12と突片7,8のピン挿入孔11に連結ピン13を挿通すると、突片7,8に設けた複数のピン挿入孔11のうち連結ピン13を挿通したピン挿入孔11に対応する表示マーク14が、図8(a)(b)に示すように、受け筒9,10のマーク覗き孔15に露出するようになっている。従って、このマーク覗き孔15に露出する表示マーク14を確認することによって、突片7,8のどのピン挿入孔11に連結ピン13を挿通したかを知ることができ、アームレスト4の調整位置を容易に確認することができるものである。また、前取付具5と後取付具6において、それぞれの受け筒9,10のマーク覗き孔15に同じ表示マーク14が露出するように受け筒9,10に対する突片7,8の差し込み深さを調整することによって、アームレスト4を平行に移動させて位置調整をすることができるものである。
アームレスト4のアームレスト本体61は上記のようにアームレストパッド62の下面に支持柱63を下方へ垂下して略T字形に形成されるが、腕に直接接触すると共に使用者の体重を支えるアームレストパッド62は、クッション性と強度が必要である。このため、アームレストパッド62としては、発泡ポリウレタンなど軟質樹脂を成形して形成されるクッション部84内に金属板で形成される芯材85をインサートして作製したものが使用されている。そして芯材85としては一般に金属平板が使用されているが、芯材85の強度を確保しようとすると芯材85として厚みの厚いものを用いる必要があり、これに伴なってアームレストパッド62の厚みも必然的に厚くなり、また重量も重くなるという不具合が生じる。
そこで図13及び図14の実施の形態では、芯材85として金属板の両側部に垂下片86を設けたものを用い、この垂下片86によるリブ効果で強度を確保することによって、芯材85として厚みの薄いものを用いるようにし、アームレストパッド62の厚みが厚くなったり重量が重くなったりしないようにしている。そしてこのアームレストパッド62にあって、芯材85にはナット87が固着してあり、垂下片86の間においてクッション部84の内側寄りの箇所の下面に芯材85に沿って座ぐり凹部88が形成してある。また支持柱63の上端には横向きの連結棒89がT字状に固定してあり、この連結棒89を座ぐり凹部88にはめ込んで、連結棒89に下から通したネジ90を芯材85のナット87に螺合することによって、支持柱63の上端にアームレストパッド62を取り付けてアームレスト本体61を形成することができるものである。尚、芯材85に設ける垂下片86は、図13のように金属板の両側端を屈曲して形成するようにしてもよいが、図15のように金属板の下面に金属線などを溶接等して、垂下片86を形成するようにしてもよい。
また、アームレストパッド62は高さ調整をすることができるようになっているが、車輪1の高さによっては、アームレストパッド62を下げたときに、車輪1の上端に近接することがある。そして上記のように座ぐり凹部88はアームレストパッド62の内側寄りの箇所に設けられており、アームレストパッド62は内側寄り部分で支持柱63の上端に取り付けられているので、アームレストパッド62は外側へ張り出した状態で設けられている。このために、アームレストパッド62に使用者の体重がかかったときに、アームレストパッド62は外側の部分が下方へ傾くように変位するおそれがあり、アームレストパッド62が車輪1の上端に近接した高さにあるときには、アームレストパッド62の下面が車輪1に接触する可能性がある。そこで図13〜図15の実施の形態では、アームレストパッド62の外側寄りの箇所の下面のうち、少なくとも車輪1の上端と対向する部分を切り欠いて切欠部91を形成し、アームレストパッド62が車輪1に接触することを防止するようにしている。この切欠部91は、アームレストパッド62の幅方向での断面形状を、車輪1を横切って切断したときの断面の外形形状と平行なアールを有する形状に形成するのが、車輪1に接触することを避ける上で最も効果的である。
さらに、アームレストパッド62の前端部の上面には手の平に収まる大きさの盛り上がりで膨出部92が突設してあり、使用者が立ち上がるときに、手の平でアームレストパッド62を押えるときに、手の平に膨出部92が収まって、手が滑ることを防ぐことができ、安全に立ち上がることができるようにすることができるものである。
車椅子本体2の前端部の両側には既述のように旋回用車輪となるキャスタ24が設けてある。キャスタ24は、図16に示すように、固定用受け筒94と、固定用受け筒94に水平回動自在に挿着された回動軸95と、回動軸95に垂下して設けられた支持脚25と、支持脚25に外嵌される支持筒27と、支持筒27に装着されるキャスタ車輪28とから形成されるものであり、車輪フレーム37の下横フレーム材54の前端部の外面側に固定用受け筒94を固定することによって、車椅子本体2の前端部の両側にキャスタ24を取り付けるようにしてある。
支持脚25は図17に示すように二股状に一対、平行に垂下しているものであり、各支持脚25の一方の端縁の上下複数箇所に、等間隔で係合凹部26が凹設してある。係合凹部26は円弧状に切り欠いて形成されるものであり、各支持脚25において同じ高さに設けてある。各支持脚25の外側の側面には上下の複数箇所において、係合凹部26の個数と同じ数の高さ表示マーク34が設けてある。この各高さ表示マーク34は相互に識別できる表示で形成してあり、例えば、「1」、「2」…のように数字で表示してある。また各高さ表示マーク34は各係合凹部26に対応して形成されているものであり、図の例では、高さの順に各係合凹部26と各高さ表示マーク34が対応するようにしてある。
また支持筒27は図18に示すように、上下に開口するスライド孔96を設けて形成してあり、その上部の一方の側面に操作用孔97を穿設すると共にこの操作用孔97と対向して他方の側面に軸受け孔98を穿設してある。操作用孔97の近傍において支持筒27の一方の側面にストッパー突部31が突設してあり、また支持筒27の下部に斜め方向に車輪受け99を突設すると共に車輪受け99に車軸受け孔100が穿設してある。そして一対の支持筒27を各操作用孔97が外側になるように平行に配置し、各支持筒27の車輪受け99の間にキャスタ車輪28を配置すると共にキャスタ車輪28の車軸33の両端を各車輪受け99の車軸受け孔100に回転自在に挿着することによって、キャスタ車輪28を一対の支持筒27の間に取り付けてある。
図19はカム体102を示すものであり、円盤状の偏心カム29の一方の側面に中心から偏心した位置に回転軸103を突設すると共に、偏心カム29の他方の側面に中心軸が回転軸103の軸芯と一致する円盤状の操作部104を設けて形成してある。操作部104の偏心カム29と反対側の側面には直径方向に横切るようにレバー溝105が凹設してあり、レバー溝105の両側面に枢支孔106が形成してある。またレバー溝105の溝底には枢支孔106から外れた位置でバネ収納凹部107が凹設してある。レバー溝105には操作レバー30が配置してあり、操作レバー30の一方の端部寄り位置に貫通して設けた枢支ピン109の両端部を枢支孔106に挿着することによって、図21のように操作レバー30を回動自在に取り付けてある。操作レバー30は枢支ピン109を設けた箇所より長い方の部分が操作部110となり、操作部110を支持筒27から離れる方向に回動移動させることができるものである。またバネ収納凹所107にはコイルスプリングなどのバネ32が設けてあって、操作レバー30の操作部110と反対側の端部をバネ32で弾撥してあり、操作部110が支持筒27に近接する方向に回動移動させるように付勢してある。
上記のカム体102は支持筒27の操作用孔97に差し込んで装着されるものであり、図21のように、回転軸103を軸受け孔98に回動自在に挿入すると共に回動軸103が軸受け孔98から突出する先端に抜け止め具108を取り付けることによって、支持筒27に回動自在に保持されるようにしてある。カム体102の偏心カム29はそのカム面がスライド孔96に対向するように支持筒27内に配置されるものであり、操作部104は操作用孔97内に配置されると共に外側面部が支持筒27から突出されるようにしてある。このように支持筒27に装着したカム体102は、操作レバー30を摘まんで操作することによって、操作レバー30が上方を向く位置から下方を向く位置の間で、回動させることができるものである。111は操作レバー30を保護するために支持筒27に突設された円弧状突起である。
このとき、支持筒27にはストッパー突部31が突設してあるので、操作レバー30がストッパー突部31に突き当たるとそれ以上回動させることができないが、操作レバー30を回動操作するときには、操作レバー30の操作部110をバネ32に抗して引き上げるように回動させ、図21(b)のようにストッパー突部31を乗り越える位置まで操作部110を移動させることによって、行なうことができるものである。
そして、支持脚25に支持筒27のスライド孔96を被挿することによって、一対の各支持脚25に一対の各支持筒27の上下スライド自在に挿着する。ここで、カム体102を操作レバー30で回動操作する際に、偏心カム29は偏心回動するので、図20(a)のように、操作レバー30が下向きになるように回動させると偏心カム29の外周部は支持筒27のスライド孔96に突出し、図20(b)のように、操作レバー30が上向きになるように回動させると偏心カム29の外周部はスライド孔96から引っ込む。従って、図20(b)のように偏心カム29をスライド孔96から引っ込ませた状態では、支持脚25と支持筒27は相互に自由にスライドでき、この支持筒27に対する支持脚25の高さ調整をすることができるものであり、キャスタ24の高さ調整を行なうことができるものである。
このようにしてキャスタ24の高さ調整をした後、操作レバー30が下向きになるように回動させて偏心カム29をスライド孔96に突出させると、図20(a)のように偏心カム29の外周部の一部が支持脚25の係合凹部26にはまり込んで係合し、支持脚25と支持筒27を相互に固定することができ、キャスタ24を調整した高さに確実に保持することができるものである。
ここで、偏心カム29を係合凹部26に係合させた状態では、図20(a)のように操作レバー30は下向きになっており、不用意な外力が操作レバー30に作用して操作レバー30が上向きになるように回動すると、図20(b)のように偏心カム29と係合凹部26との係合が外れ、支持脚25と支持筒27の固定関係が解除されて危険である。しかし、支持筒27にはストッパー突部31が突設してあるので、下向きの操作レバー30がストッパー突部31に突き当たるとそれ以上は上方へ回動しないように回動を阻止することができるものであり、偏心カム29と係合凹部26との係合が不用意に外れることを防ぐことができるものである。
上記のように支持筒27と支持脚25を相互にスライドさせて支持脚25の高さ調整を行なうにあたって、支持脚25の側面に設けた高さ表示マーク34によって、高さ調整位置を確認することができるようにしてある。図の実施の形態では、偏心カム29が係合する係合凹部26に対応する高さ表示マーク34が支持筒27の上端開口縁に現われるようにして、高さ調整位置を確認することができるようにしてある。そして、一対の支持筒27に対して一対の支持脚25をそれぞれ高さ調整する場合、各支持脚25の高さ調整位置を高さ表示マーク34で確認することによって、左右の各支持脚25の高さを揃えることが容易になるものである。また、このように一対の支持筒27間にキャスタ車輪28を設けることによって、キャスタ車輪28の取り付けが強固になるものであり、しかも一対の支持筒27のうち、一方の支持筒27において偏心カム29と係合凹部26との係合が外れても、他方の支持筒27で荷重を支えることができ、安全度を高めることができるものである。
車椅子本体2は既述のように、車輪1が取り付けられる左右一対の車輪フレーム37と、座部3を形成するための左右一対の座部フレーム38とから形成されるものであり、一対のリンクバー39からなるクロスバー44を用い、クロスバー44の各リンクバー39の下側の端部を左右の各車輪フレーム37にそれぞれ結合すると共に、各リンクバー39の上側の端部を左右の座部フレーム38にそれぞれ結合することによって、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をクロスバー44で連結するようにしてある。
ここで、一対のリンクバー39は一対の接合具42を介してクロスさせるようにしてある。接合具42は図22(a)に示すように、樹脂成形品などで円盤状に形成してあり、その直径は各リンクバー39の対向する側の面の幅寸法よりも大きく形成してある。各接合具42の片面には直径位置において嵌合溝43が凹設してあり、嵌合溝43の溝底において接合具42の中心に回動孔114が穿設してある。接合具42はリンクバー39の長手方向の中央部に嵌合溝43をはめ合わせてセットされるものであり、接合具42の嵌合溝43と反対側の面はリンクバー39の幅より幅広であるので、この面が幅広部41となっている。そして一対の各リンクバー44に接合具42をセットし、各接合具42の幅広部41同士を当接させてリンクバー44をクロスさせ、各リンクバー44の長手方向中央部に設けた軸孔115と各接合具42の回動孔114に雄ネジで形成される枢支軸40を通し、枢支軸40の先端にナット116を螺合することによって、図22(b)のように一対のリンクバー39を一対の接合具42を介して接合し、クロスバー44を形成するようにしてある。
このように形成されるクロスバー44を用い、既述のように、各リンクバー39の下側の端部を左右の各車輪フレーム37の下横フレーム材54に溶接等で結合すると共に、各リンクバー39の上側の端部を左右の座部フレーム38にそれぞれ溶接等で結合することによって、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をクロスバー44で連結して車椅子本体2を形成することができるものである。そしてクロスバー44の各リンクバー39をそれぞれ縦になる方向へ閉じるように回動させることによって、図23(b)のように、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ近接させるようにして車椅子本体2を折り畳むことができ、またクロスバー44の各リンクバー39をそれぞれ横になる方向へ開くように回動させることによって、図23(a)のように、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ離間させるようにして車椅子本体2を広げて使用状態に組み立てることができるものである。
ここで、各車輪フレーム37の上横フレーム材53の上端には上面が凹部117となった受け具48が取り付けてあり、車椅子本体2を使用状態に組み立てる際に、クロスバー44の各リンクバー39をそれぞれ開くように回動させて、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ離間させるようにすると、図23(a)のように受け具48の凹部117に座部フレーム38がはまり込んで、車輪フレーム37の上に座部フレーム38が支持されるようになっている。このように車輪フレーム37の上に座部フレーム38が支持されるようにすることによって、座部フレーム38間に形成される座部3の上に座った人の体重を車輪フレーム37で安定して支持することができるのである。
そして、クロスバー44は上記のように、一対のリンクバー39を接合具42の幅が広い幅広部41同士を当接させて枢着することによって形成してあり、リンクバー39を回動させる際のがたつきが少なくなるようにすることができるものである。このため、車椅子本体2を使用状態に組み立てるために、クロスバー44の各リンクバー39をそれぞれ開いて、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ広げるにあたって、がたつきなく車輪フレーム37と座部フレーム38を正確に広げて、受け具48に座部フレーム38が正確にはまり込むようにすることができるものである。従って、左右の車輪フレーム37と座部フレーム38をそれぞれ広げた際に、受け具48に座部フレーム38がはまり込まないと、座部フレーム38を車輪フレーム37で支持することができず、座部3の上に座った人の体重が座部フレーム38に作用して変形等するおそれがあるが、このような問題を未然に防ぐことができるものである。
また、上記のクロスバー44において、各リンクバー39の枢支軸40より上側の部分と座部フレーム38の上横フレーム材53との間には、補助リンク119が架設してある。すなわち、図24のように、上横フレーム材53にリンク受け板120を垂下して固定し、補助リンク119の一端をリンク受け板120に、他端を上横フレーム材53に軸ピン121で回動自在に枢着するようにしてある。このように各リンクバー39と座部フレーム38の上横フレーム材53とを補助リンク119で連結することによって、クロスバー44を回動させる際のがたつきをより小さくすることができるものである。このとき、リンク受け板120は図24のように平行な二枚の二股状板で形成してあり、二枚のリンク受け板120の間に補助リンク119の一端を差し込んで枢着するようにしてある。このようにすることによって、リンク受け板120に対する補助リンク119の枢着のがたつきをなくし、クロスバー44を回動させる際のがたつきを一層小さくすることができるものである。
車椅子本体2の前方端部の両側には図28に示すようなレッグレスト124が取り付けてある。レッグレスト124は、車輪フレーム37の前縦フレーム55に固定されるレッグレストフレーム125と、足を載せるレッグ台126からなるものである。レッグ台126はインナー棒127の下端に起倒自在に装着してあり、レッグレストフレーム125の前端の縦のアウターパイプ128にインナー棒127を差し込んで取り付けることによって、レッグレストフレーム125にレッグ台126を取り付けるようにしてある。
アウターパイプ128は内周を六角形など断面多角形状に形成されるものであり、その下端は開口している。アウターパイプ128には、図25に示すように上下複数箇所において内外に開口する固定孔129が設けてある。この固定孔129は所定の一定間隔で形成されるものであり、左右の各レッグレスト124のアウターパイプ128に同じ高さ位置において形成してある。固定孔129を設けた箇所より下側において、アウターパイプ128の下端部には、下端に至る縦方向のスリット130が形成してある。このスリット130を挟む両側においてアウターパイプ128の外面には一対のボス部131が突設してあり、この各ボス部131にスリット130の幅方向に貫通する締付孔132が穿設してある。この各ボス部131の締付孔132に締付ネジ133を通すと共に締付ネジ133の先端にナット134が螺合してあり、締付ネジ133の頭部に設けた締付レバー135を緩めた後、ナット134を回して締め、再度締付レバー135を締めることによって、締付ネジ133とナット134の間に一対のボス部131を圧締して、スリット130の幅を縮めるように締め付けてアウターパイプ128の下端部の内径を縮径させることができるものである。
また、下端にレッグ台126を装着するインナー棒127は、図26に示すように外周がアウターパイプ128の内周と同じ六角形など断面多角形状にしたパイプ状に形成してある。インナー棒127の上端部には内外に開口する横孔137が穿設してあり、横孔137の箇所においてインナー棒127内には固定具138が内装してある。固定具138は先部が球面となった円柱状に形成してあり、ねじりコイルバネで形成したバネ139の一端部の直線部140を固定具138に固定してある。この固定具138とバネ139はインナー棒127内に収容されるものであり、図27のように固定具138の先部を横孔137に臨ませるようにしてある。そしてバネ139の他端部の直線部141がインナー棒127の内面に当接していることによって、バネ139に生じる弾撥力で、固定具138の先部を横孔137を通してインナー棒127の外側へ突出させる方向に付勢するようにしてある。
そして、下端にレッグ台126を装着したインナー棒127をアウターパイプ128に挿着してレッグ台126をレッグレストフレーム125に取り付けるにあたっては、インナー棒127の上部をアウターパイプ128内にその下端の開口から差し込み、図27(a)のようにインナー棒127の横孔137から突出する固定具138の先部をアウターパイプ128の固定孔129に挿入嵌合させる。このようにして固定具138を介してアウターパイプ128にインナー棒127を固定することができる。この後、締付レバー135を締めて締付ネジ133とナット134の間にボス部131を圧締することによって、スリット130の幅を縮めると共にアウターパイプ128の下端部の内径を縮径させ、アウターパイプ128内にインナー棒127を締め付ける。このようにしてインナー棒127をアウターパイプ128に取り付けることができるものである。
上記のようにインナー棒127をアウターパイプ128に取り付けるにあたって、インナー棒127の横孔137から突出する固定具138がアウターパイプ128の固定孔129に挿入嵌合しており、しかも固定孔129に対する固定具138の挿入嵌合状態はバネ139の弾撥力で保持されていて、抜けるようなことはない。しかも、アウターパイプ128の内周とインナー棒127の外周は同じ角型であり、インナー棒127がアウターパイプ128の内周を軸回りに回るようなこともない。従って、インナー棒127がアウターパイプ128内を上下に移動したり、軸回りに回動したりすることがなく、がたつきなくレッグ台126を確実に保持することができるものである。さらに締付レバー135でアウターパイプ128の内径を縮径させてインナー棒127を締め付けて、これによってもインナー棒127をアウターパイプ128に固定しているために、がたつきを一層少なくすることができると共に、固定孔129に対する固定具138の係合が外れても、アウターパイプ128からインナー棒127が抜けて、レッグ台126が脱落することを防ぐことができるものである。尚、レッグ台126の上に載せた足と車椅子本体2との間を仕切るためのヒールループをレッグレスト124に取り付ける場合、このヒールループで締付レバー135やアウターパイプ128の固定孔129を覆うことによって、不用意に締め付けレバー135による締め付けが解除されたり、固定孔129に対する固定具138の係合が外されたりすることを防ぐことができるものである。
次にレッグ台126を装着したインナー棒127の高さ調節を行なうにあたっては、まず締付レバー135を操作して締付ネジ133とナット134による圧締を緩め、アウターパイプ128の復元力でスリット130の幅を広げると共にアウターパイプ128の下端部の内径を広げることによって、インナー棒127に対するアウターパイプ128の圧締を緩める。次に、図27(a)にイ矢印で示すように、アウターパイプ128の固定孔129から突出する固定具138の先端を指などで押さえることによって、バネ139の弾性力に抗して固定具138を固定孔129の内方へ引っ込める。この状態でインナー棒127を上げたり下げたりすることによって、固定孔129から固定具138を抜く。ここで、固定具138の先端面は球面に形成してあるので、インナー棒127に引き上げる力や押し下げる力が働くと、球面の滑りによって、固定具138は容易に固定孔129から抜ける。そして、図27(b)のようにアウターパイプ128の内面に固定具138の先端を弾接させた状態でインナー棒127を上方へあるは下方へ移動させ、他の固定孔129に固定具138をバネ139の弾性力で嵌合させることによって、インナー棒127の高さを変えることができ、レッグ台126の高さを調整することができるものである。このようにインナー棒127の高さを変えた後に、締付レバー135を操作してスリット130の幅を縮め、アウターパイプ128内にインナー棒127を締め付けて固定するものである。
このように、アウターパイプ128の上下複数箇所において設けた任意の固定孔129に固定具138を嵌合させることによって、レッグ台126を装着したインナー棒127の高さ調節を行なうことができるものである。このとき、レッグ台126の高さ調節はアウターパイプ128に設けた固定孔129の間隔に応じた段階調節であり、微調節を行なう必要なく、高さ調節を容易に行なうことができるものである。また、車椅子本体2の前端部に左右一対取り付けられるレッグレスト124の各レッグ台126の高さ調節は、上記の操作でレッグ台126ごとに行なう必要があるが、レッグ台126の高さはアウターパイプ128に設けた上下複数箇所の固定孔129のうちいずれの固定孔129に固定具138を嵌合させるかによって決まるので、アウターパイプ128に設けた上下複数箇所の固定孔129のうち上からあるいは下から何番目かの、同じ高さの固定孔129に固定具138を嵌合させることによって、左右のレッグ台126の高さを正確に揃えることができる。従って、左右のレッグ台126の高さ位置を目視で比べながら高さを微調整するような必要がなくなり、左右のレッグ台126の高さを容易に揃えることができるものである。
車椅子本体2において座部3は、図12のように、左右一対の座部フレーム38,38の間に座シート47を掛け渡すことによって形成されるものである。ここで、座部フレーム38は図29のように、その上部に前後方向の全長に亘ってスライド係止溝144を凹設したパイプ材で形成されるものであり、スライド係止溝144は溝開口幅が奥部の内径より小さい断面円形状に形成してある。また座シート47の端部には縫着等することによってパイピング部145が形成してあり、このパイピング部145に滑り性の良い樹脂で丸棒状に形成したスペーサガイド棒146を挿入した状態で、パイピング部145をスライド係止溝144にその前端の開口から差し込んである。座シート47のパイピング部145をスライド係止溝144に差し込んだ後は、その前端の開口を蓋147で塞ぐようにしてある。このようにパイピング部145にスペーサガイド棒146を挿入した状態では、パイピング部145の外径はスライド係止溝144の溝開口幅より大きいので、パイピング部145がスライド係止溝144から抜け出ることはない。またパイピング部145はスペーサガイド棒146の外周及びスライド係止溝144の内周に沿って、座部フレーム38の前後方向にスライド移動が可能になっている。
図29の実施の形態では、座シート47は長い本体部148と短い連接部149から形成してあり、連接部149の先端に矩形状の連結リング150を取り付け、本体部148の先部148aをこの連結リング150に通すと共に折り返して、この折り返した先部148aを本体部148の下面側に面状ファスナーなどで脱着自在に接合させることによって、本体部148と短い連接部149を連結するようにしてある。このように本体部148と短い連接部149を連結することによって座シート47を形成することができるものであり、座シート47の幅方向での寸法調整を容易に行なうことができるものである。
また、座シート47は図30のように、前部シート152と後部シート153とに前後複数に分割してある。前部シート152は後部シート153より奥行き幅を小さく形成してあり、座部フレーム38のうち後部シート153より前方に突出している部分の長さよりも前部シート152の奥行き幅寸法を小さくしてある。従って、後部シート153より前方に突出している範囲で座部フレーム38に沿って前部シート152を矢印のように前後方向にスライド移動させることができるものであり、座部3に座る人の体格などに合わせて、座シート47の前後方向の奥行き幅寸法を調節することができるものである。ここで、後部シート153の上面のほぼ全面には、相互に係着離脱自在な係着面材154aと被係着面材154bからなる面状ファスナー154の一方(例えば被係着面材154b)が設けてある。また前部シート152の後部縁から連結片155が延設してあり、連結片155の下面に面状ファスナー154の他方(例えば係着面材154a)が設けてある。そして上記のように前部シート152を前後方向にスライド移動させて座シート47の奥行き幅寸法を調節した後、連結片155の係着面材154aを後部シート153の被係着面材154bに係着させて連結片155を後部シート153に結合することによって、前部シート152が移動しないように固定することができる。この後に、前部シート152と後部シート153からなる座シート47の上に座クッション156を載置し、座クッション156の上に座ることができるものである。
ここで、座クッション156が座シート47の上をずれ動くと座り難い。このため、座クッション156の下面には前後方向に亘って面状ファスナー154の他方(例えば係着面材154a)が図31のように設けてある。従って、座シート47の上に座クッション156を載置すると、座クッション156の係着面材154aが後部シート153の被係着面材154bに係着し、座クッション156が後部シート153に結合されることになり、座クッション156が位置ずれしないように固定することができるものである。
また、前部シート152を上記のように連結片155で後部シート153と連結することによって、前部シート152は前方へは移動しないようになっているものの、後方へは移動することが可能である。従って車椅子を長期に使用している間に前部シート152が後方へ移動するおそれがあり、このように前部シート152が後方へ移動すると、座シート47の奥行き幅が変化して、座り心地が悪くなり、場合によっては使用者の健康を害するおそれもある。そこで、図30に示すように、前部シート152の上面にも面状ファスナー154の一方(例えば被係着面材154b)を設けるようにしてあり、座シート47の上に座クッション156を載置した際に、座クッション156の係着面材154aが後部シート153の被係着面材154bに係着すると共に前部シート152の被係着面材154bにも係着するようにしてある。このように前部シート152を座クッション156に結合させることによって、前部シート152が後方へ移動することを防ぐことができるものである。
また、座クッション150の上での座り心地を良くするために、座クッション156の前端縁を前部シート152の前端縁に合わせることが必要であるが、座シート47の奥行き幅寸法を調整するために前部シート152を後方へ移動させると、座シート47の上に載置する座クッション156も後方へ移動させる必要がある。そして座クッション156を後方へ移動させることによって余分になる座クッション156の後端部の部分は、背もたれ部50の左右の背もたれフレーム材57,57間に掛け渡した背シート158の下側に差し込んで、余分な部分を吸収する必要がある。このとき、背シート158の下端と座シート47の後端との間の隙間159(図12に示す)の開口の上下幅が小さいと、この隙間159に座クッション156の後端部を無理に入れなければならず、この場合には、座クッション156の前端部が浮き上がって座り難くなる。このため、背シート158と座シート47の間の隙間159の開口の上下幅は座クッション156の厚みよりも大きく設定するのが好ましいものであり、座クッション156の後端部をこの隙間159に容易に差し込むことができ、座クッション156の前方浮き上がりを防ぐことができるものである。
車椅子において駆動車輪となる車輪1は、上下高さを調整することができるようにしてある。図32は車輪1の上下高さを調整する機構の実施の形態を示すものである。車椅子本体2の車輪フレーム37の後端部の車輪支持フレーム材56には上下複数箇所に等間隔でピン保持孔161が車椅子本体2の幅方向の両面に開口して設けてある。また162は内側片163と外側片164を平行に対向させて断面コ字形に屈曲して形成される車輪保持具であり、外側片164の外面に、車輪1の車軸165を回転自在に枢支する車輪受け166が設けてある。この車輪保持具162の内側片163と外側片164にはそれぞれ対向する位置においてピン通し孔167が穿設してある。
そして車輪支持フレーム材56を内側片163と外側片164の間に被挿するようにして、車輪保持具162を車輪支持フレーム材56に被せて取り付け、内側片163と外側片164の各ピン通し孔167及び、車輪支持フレーム材56の任意のピン保持孔161に固定ピン168を差し込むことによって、車輪保持具162を車輪支持フレーム材56に固定することができるものである。固定ピン168の外側片164から突出する先端のピン孔169に抜け止めピン170を差し込むことによって、固定ピン168がピン通し孔167及びピン保持孔161から抜けないようにしてある。
また車輪保持具162の内側片163と外側片164の先端間には、締付ネジ133が挿通してあり、締付ネジ133の頭部に締付レバー135を回動自在に設けると共に締付ネジ133の先端にナット134が螺合してある。このナット134を締める方向に回すと共に締付レバー135を回動させて締め付けることによって、締付ネジ133で車輪保持具162の内側片163と外側片164の先部間の間隔を狭めるように締めることができるようにしてあり、このように内側片163と外側片164の先部間の間隔を狭めることによってその間に車輪支持フレーム材56を挟み込み、車輪保持具162を車輪支持フレーム材56にがたつきなく固定することができるものである。
上記のようにして、車輪1を車輪保持具162によって車輪フレーム37の車輪支持フレーム材56に取り付けることができるものである。ここで、車輪支持フレーム材56への車輪保持具162の固定は、固定ピン168をピン通し孔167及びピン保持孔161に差し込むことによって行なうことができるものであり、ネジの締め付けによって固定を行なう場合のような、締め付け力が弱いと固定が不十分になったり、締め付け力が強すぎると解除ができなくなるというようなことがなくなるものである。
次に、車輪1の高さ調整を行なうにあたっては、締付ネジ133による締め付けを解除し、ピン通し孔167及びピン保持孔161から固定ピン168を抜き、そして車輪保持具162を車輪支持フレーム材56に沿って上下にスライドさせることによって行なうことができるものであり、調整した位置において合致するピン通し孔167とピン保持孔161に上記と同様に固定ピン168を差し込むと共に締付ネジ133で締め付けることによって、車輪1を高さ調整した位置に固定することができるものである。
また、車輪支持フレーム材56の内側面には上下の複数箇所に高さ表示マーク171が設けてある。この各高さ表示マーク171は相互に識別できる表示で形成してあり、図の例では、「1」、「2」…のように数字で表示してある。そして車輪保持具162の上縁に露出する高さ表示マーク171によって、車輪1の高さ調整位置を確認することができるようにしてある。ここで、車椅子は一般に、前部の高さを後部の高さより若干高く設定して座面角度がやや後ろ下がりになるように調整するが、この座面角度は、駆動輪となる車輪1の高さと、前記の旋回輪となるキャスタ24の高さによって決まってくる。そして既述のようにキャスタ24の高さは高さ表示マーク34で容易に確認することができ、また車輪1の高さは高さ表示マーク171で容易に確認することができるので、座面角度の調整も容易に行なうことができるものである。