JP4042933B2 - Nb3 Al化合物系超電導線およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Nb3 Al化合物系超電導線およびその製造方法に関し、特に、安定化材を良好に接合させたNb3 Al化合物系超電導線とこれを製造するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Nb3 Al化合物系超電導線は、Nb3 Sn、NbTiのような一般的な超電導線と比べ、高磁界における臨界電流密度特性に優れていることから、たとえば、物性研究用高磁界NMRマグネット等の超電導材料として実用化が期待されている。
【0003】
従来のNb3 Al化合物系超電導線の製造方法として、たとえば、NbとAlを所定の組成比率で複合し、相互の拡散距離をサブミクロンオーダまで小さくした状態で600〜1,050℃の温度に加熱し、これにより固相拡散を起こさせてNb3 Alを生成させる製造方法が知られている。
【0004】
しかし、この製造方法によると、1,500℃以上の高温においてのみ安定するNb3 Al化合物にとっては、温度不足下での固相拡散となり、このため、化学量論組成からのずれが発生するようになることから、高い臨界電流密度を得ることが難しい。
【0005】
Nb3 Al系超電導線を得るための他の製造方法として、NbとAlを所定の組成比率で複合し、これを1,500℃以上に加熱して直ちに冷却することにより、Nb‐Al過飽和固溶体を生成させ、その後、これを600〜1,050℃の温度で再加熱し、Nb3 Al相を析出させる方法が知られている。
【0006】
相析出法に基づくこの製造方法は、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱温度が高いために、化学量論組成からのずれによる臨界電流密度の低下がなく、従って、NMRマグネット等への適用を考えた場合に最も適した製造方法とされている。
【0007】
通常、この方法による超電導線の製造は、以下の手順により進められる。
たとえば、ジェリーロール法の場合であれば、まず、NbあるいはNb合金のシートと、AlあるいはAl合金のシートを積層巻きしてNbパイプに詰め、これに伸線加工を施すことによって所定のサイズのシングル線材とする。
【0008】
次に、得られたシングル線材の集合束を外部マトリックスとなるNbパイプに入れ、これに伸線加工を施すことによってNbとAlのマルチ線材を製作し、その後、これを1、500℃以上の高温に加熱して直ちに冷却処理する。
この加熱と冷却処理の結果、NbとAlの複合部にはNb‐Al過飽和固溶体が生成し、次に、この素材を600〜1,050℃の温度で再加熱処理することにより、Nb‐Al過飽和固溶体の部分にNb3 Alを析出させる。
【0009】
この方法によれば、高い臨界電流密度を有する超電導線の製造が可能であり、従って、この方法は、要求性能の厳しいNMRマグネット等に使用される超電導線にとっては唯一とも言える製造方法であり、有望視されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の析出法に基づいたNb3 Al系超電導線によると、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱急冷時の加熱温度が高いため、外部マトリックスの周上への安定化材の形成が難しい。
即ち、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱温度は、多くの場合2,000℃と高く、安定化材を構成する銅あるいは銅合金等の融点を大きく超えてしまうことから、加熱冷却処理の前に安定化材を形成しておくことは不可能である。
【0011】
このため安定化材の形成は、加熱急冷処理後に行うのが普通とされているが、加熱急冷後の外部マトリックスの表面は、強固なNb酸化膜で覆われていることから、安定化材との間に良好な接合状態を作り出しにくく、たとえば、安定化材の形成を電気メッキにより行う場合、メッキ層と外部マトリックス間の電気化学的な接合が阻害され、良好な接合状態を得ることが困難となる。良好な接合状態で安定化材を形成したNb3 Al化合物系超電導線は、いまだに出現していないのが実情である。
【0012】
従って、本発明の目的は、外部マトリックスと安定化材を良好に接合して界面に間隙をなくしたNb3 Al化合物系超電導線とこれを製造するための製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、Nb‐Al過飽和固溶体を加熱することにより析出された複数のNb3Alの超電導線材部と、前記超電導線材部を被覆するNbあるいはNb合金の外部マトリックスと、前記外部マトリックスの上に形成された安定化材とから構成され、前記外部マトリックスと前記安定化材とは、前記Nb‐Al過飽和固溶体を生成させるときの加熱冷却時に使用された冷却用金属材を相互間に介在させ、前記冷却用金属材との間にそれぞれ固溶体を形成しており、前記超電導線材部および前記外部マトリックスとの合計断面に占める前記冷却用金属材の割合が5%以下であることを特徴とするNb3Al化合物系超電導線を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、上記の目的を達成するため、NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度に加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3 Al相を析出させるNb3 Al化合物系超電導線の製造方法において、前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面から前記冷却用金属材を除去し、前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆して前記外部マトリックスおよび前記安定化材が塑性変形する塑性加工を施した後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3 Al化合物系超電導線の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度で加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3 Al相を析出させるNb3 Al化合物系超電導線の製造方法において、前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面に前記外部マトリックスを含んだ前記マルチ線材との合計断面に占める割合が5%以下の前記冷却用金属材を付着させたまゝで前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆した後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3 Al化合物系超電導線の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度で加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3 Al相を析出させるNb3 Al化合物系超電導線の製造方法において、前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面に前記外部マトリックスを含んだ前記マルチ線材との合計断面に占める割合が5%以下の前記冷却用金属材を付着させたまゝで前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆して減面加工を施し、その後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3 Al化合物系超電導線の製造方法を提供するものである。
【0018】
上記の安定化材としては、銅、銅合金、銀、あるいは銀合金などが使用され、その外部マトリックス上への適用形式としては、シート状物の巻き付け、縦添え、あるいは管状体として成型した中にマルチ線材を詰め込む等の方法が採られ、その後、所定の加工が施される。
【0019】
冷却用金属材としては、多くの場合Gaが使用される。Gaは導電性に富み、沸点が高く、そして融点が低いことから、冷却材としては最適である。以下、冷却用金属材をGaに代表させて説明する。
【0020】
冷却処理後に外部マトリックスの表面から付着Ga(多くの場合、酸化物)を除去する製造様式にあっては、安定化材被覆後にマルチ線材と安定化材の双方に塑性変形を起こすような強い塑性加工(クラッド加工)が施される結果、安定化材と外部マトリックスは、この塑性加工とその後に施される再加熱処理との相互作用によって、良好な状態で接合されることになる。
【0021】
一方、表面にGaを付着させたまゝの外部マトリックス上に、安定化材を被覆する製造様式においては、安定化材と外部マトリックス間の接合には、Nb、銅、あるいは銀等に対するGaの固溶体形成の性質を利用することになる。
即ち、Gaには、再加熱処理の際に、外部マトリックスを構成するNbとの間、および安定化材を構成する銅、銀などとの間に固溶体を形成する性質があり、この固溶体が外部マトリックスと安定化材間の接合媒体の作用を果たし、結果として、両者間には強固な接合状態が作り出されることになる。
【0022】
Gaの付着量は、外部マトリックスを含むマルチ線材との合計断面に占める割合が5%以下となるように設定する。Gaの割合が5%を超過すると、安定化材がGaによって汚染されるようになり、安定化材本来の役割を果たせなくなる。
【0023】
外部マトリックスの表面にGaを付着させたまゝ安定化材を形成する製造様式の場合、外部マトリックスと安定化材間の複合化のための手段としては、再加熱処理における加熱作用に依存する方法と、これに減面加工を組み合わせる方法とがあり、いずれの方法によっても外部マトリックスと安定化材間は強固に接合されることになる。
【0024】
後者の場合の減面加工としては、マルチ線材、Gaおよび安定化材のすべてに塑性変形が生ずるような強い減面加工(クラッド加工)と、これら各材間の空隙を除く程度の小さな減面加工(スキンパス加工)と、Gaと安定化材に塑性変形を起こさせ、マルチ線材にはほゞ塑性変形をおこさせない中間的な減面加工とがある。いずれの加工も本発明の目的を達成できるが、塑性変形加工度の高いものほど高い臨界電流特性が得られる傾向にある。
【0025】
本発明の製造方法においては、NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金は、シート状に加工されて積層されるのが普通である。従って、多くの場合これらは、互いに積層巻きされることになるが、たとえば、NbあるいはAlの部材に線状のAlあるいはNbを密巻きすることによって積層体を構成することは可能である。シート状のNbおよびAlを積層巻きするときに、NbあるいはAlの中心材を準備してこれに巻き付けるようにすることは、積層作業が容易になるので有用である。
【0026】
Nb‐Al過飽和固溶体を生成させるための加熱温度としては、少なくとも1,500℃に設定すべきであり、また、Nb‐Al過飽和固溶体からNb3 Al相を析出させるための再加熱処理温度は、600〜1,050℃の範囲内に設定することが望ましい。Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱手段としては、通電加熱が好適である。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるNb3 Al化合物系超電導線と、その製造方法の実施の形態について説明する。
図1は、製造過程における製品の形状を示したものである。
【0028】
図1(イ)において、1は、Nbシート2とAlシート3を積層し、これをNbの中心材4に隙間なく巻き付けることによって構成したジェリーロール形式の積層体を示す。5は、Nbマトリックスを形成するために積層体1上に静水圧押出により形成されたNb被覆を示し、このNb被覆5の上には同様にしてCu被覆6が形成され、これによって複合素線7とされる。
【0029】
図1(ロ)は、複合素線7をダイス伸線により断面六角形に減面加工し、その後、Cu被覆6を除去することによって製造したシングル線材8の構造を示したもので、六角形による密接集合が可能な構造となっている。
【0030】
図1(ハ)は、外部マトリックスとなるべきNb管9とCu‐Ni合金管10を、静水圧押出によりシングル線材8の集合束の上に形成することによって得られた複合線材の構造を示す。この複合線材11は、ダイス伸線によって所定の寸法に減面加工された後、最外周のCu‐Ni合金管10が除去され、所定寸法のマルチ線材とされる。
【0031】
図1(ニ)は、以上により得られたマルチ線材12を所定の温度に加熱した後、これを液体Ga中に浸漬して急冷し、シングル線材8の積層体1の部分にNb‐Al過飽和固溶体を生成させた中間体の構造を示す。図中9′はマルチ線材12の外層部を構成する外部マトリックスを示す。加熱手段としては、マルチ線材12に直接電流を流す通電加熱方式が採用された。
【0032】
図1(ホ)は、Nb‐Al過飽和固溶体を生成させたマルチ線材12の外部マトリックス9′の表面から冷却時に付着したGaを除去し、あるいは除去せずに銅あるいは銀の安定化材13を設けた複合体14を示し、この複合体14は所定の減面加工を施された後、あるいは施されずに所定の温度で再加熱処理をされ、Nb‐Al過飽和固溶体からNb3 Al相を析出させて所定の超電導線材部15を有する超電導線とされる。
図2は、以上の超電導線の製造プロセスをフローチャートにまとめたもので、図中(イ)〜(ホ)は、それぞれ図1の(イ)〜(ホ)に対応するものである。
【0033】
以下、図1、2に基づいた本発明の実施例について説明する。
なお、Nb‐Al過飽和固溶体を生成させるための加熱温度とNb3 Al相析出のための再加熱処理温度とは、それぞれ2,000℃と800℃に一律に設定した。
【0034】
【実施例1】
図1、2において、厚さ75μmの純Nbシート2と、厚さ25μmの純Alシート3と、外径1.5mmのNb中心材4を使用し、外径1.25mmのマルチ線材12を得た。次いで、これにNb‐Al過飽和固溶体を生成させるための加熱冷却処理を施した後、この外部マトリックス9′の表面の付着Gaを塩酸で化学処理し、引き続き、外部マトリックス9′の表面を研磨することによってGa酸化物を除去した。
【0035】
次に、肉厚0.1mm、外径1.5mmの無酸素銅のパイプを安定化材13の構成材として準備し、この中にマルチ線材12を詰め込んだ後、外径が1.35mm、安定化材13の厚さが0.05mmとなるように減面加工(クラッド加工)を施し、次いで、これに再熱処理を施すことにより所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0036】
【実施例2】
実施例1において、安定化材13の構成材として厚さ0.1mm、幅5mmの銀シートを使用し、これをマルチ線材12上に合わせ目に隙間が生じないように縦添えした後、減面加工を施し、他を実施例1と同じにすることにより所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0037】
【実施例3】
図1、2において、厚さ75μmの純Nbシート2と、厚さ25μmのAlシート3と、外径1.5mmのNb中心材4を使用し、外径1.25mmのマルチ線材12を得、次いで、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱冷却を行った後、表面にGaを付着させたまゝ外部マトリックス9′の上に厚さ0.05mm、幅5mmの無酸素銅のシートを合わせ目に隙間が生じないように密接縦添えし、引き続き、これに再加熱処理を施すことにより外径が1.38mmの所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。この実施例におけるGaの、外部マトリックス9′を含んだマルチ線材12との合計断面に占める割合(以下、Ga占有率という)は5%である。
【0038】
【実施例4】
実施例3において、無酸素銅のシートを密接縦添えした後、これに減面加工(スキンパス加工)を施し、その後、再加熱処理を施し、他を同一条件に設定することにより外径が1.37mm、Ga占有率が4%の所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0039】
【実施例5】
実施例3において、無酸素銅のシートとして厚さ0.1mm、幅5mmのシートを使用し、このシートをマルチ線材12に対して合わせ目に隙間が生じないように縦添えした後、これにクラッド加工を施し、引き続き、再加熱処理を施し、他を同一条件とすることにより外径が1.36mm、Ga占有率が2%のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0040】
【実施例6】
実施例3において、無酸素銅のシートとして厚さ0.08mm、幅5mmのシートを使用し、このシートを外部マトリックス9′の上に合わせ目が生じないように縦添えした後、断面寸法が1.19mm×1.19mmの正方形となるようにクラッド加工を施し、次いで、これに再加熱処理を施し、他を実施例3と同じ条件とすることによりGa占有率が3%の所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0041】
【比較例1】
図1、2において、厚さ75μmの純Nbシート2と、厚さ25μmのAlシート3と、外径1.5mmのNb中心材4を使用することにより、外径1.25mmのマルチ線材12を製作し、次いで、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱冷却を行った後、外部マトリックス9′の表面のGa酸化物を塩酸による化学処理と研磨処理とを順次施すことによって除去した。
【0042】
次に、外部マトリックス9′の上に厚さ0.05mm、幅5mmの無酸素銅のシートを合わせ目に隙間が生じないように密接縦添えし、その後、再加熱処理を施すことにより所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0043】
【比較例2】
比較例1において、無酸素銅のシートによる密接縦添えの代わりに、電気メッキを適用し、厚さ0.05mmの銅の安定化材13を形成し、他を比較例1と同一条件に設定することにより所定のNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0044】
【比較例3】
実施例4において、Ga占有率を7%に設定し、他を同じ条件に設定することにより、外径1.39mmのNb3 Al化合物系超電導線を製造した。
【0045】
表1に、以上の実施例と比較例により得られた各超電導線の要部構成と臨界電流特性を示す。表中の臨界電流値は、真空下において各超電導線を800℃に加熱した後、温度4.2Kおよび21〜15Tの各磁場下における臨界電流値を測定したものである。
【0046】
【表1】
【0047】
この表1によれば、本発明による実施例がいずれも優れた臨界電流特性を示しているのに比べ、比較例の場合には、15T〜18Tの磁場において、超電導から常電導へ遷移する時のクエンチ現象を発生させており、両者の間には明白な差が認められる。
【0048】
クエンチの発生は、外部マトリックスと安定化材間の導通不足、即ち、これらの間の接合不足を意味すると同時に、超電導線としての機能喪失をも意味するものであり、従って、表1における特性の差は、本発明の有用性を如実に示している。比較例3におけるクェンチの発生は、Ga占有率の多さに原因があるもので、従って、このことから、本発明におけるGa占有率は5%以下に制限することが望ましい。なお、実施例3の場合、15Tの磁場下においてクエンチを発生させているが、しかし、他の16〜21Tの広い磁場範囲においては、いずれもクエンチを発生させずに優れた臨界特性を示しており、全体特性的には問題なしと判断する。
【0049】
表1に示された実施例1〜6の臨界電流特性は、現状において多用されているNb3 Sn化合物系超電導線の特性の2倍以上であり、さらに、耐歪み特性にも優れていることが確認されていることから、より高性能の超電導線の提供が可能となる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるNb3 Al化合物系超電導線およびその製造方法によれば、Nb‐Al過飽和固溶体生成のための加熱冷却時に使用される冷却用金属材を外部マトリックスの表面から除去するか、あるいは除去しない状態で外部マトリックス上に安定化材を形成し、これにNb‐Al過飽和固溶体からNb3 Al相を析出させるための再加熱処理を施すか、あるいは再加熱処理の前に減面加工を施すことによって、外部マトリックスと安定化材間の接合性に優れた高い臨界電流特性を有するNb3 Al化合物系超電導線を提供するものであり、有用性大である。
【0051】
特に、安定化材の形成に困難をきたしていたこの種Nb3 Al化合物系超電導線にとって、良好な接合状態のもとに安定化材を複合化することができ、そしてこれによりクエンチのない超電導線を構成できたことは、Nb3 Al化合物系超電導線の実用性を高めるうえにおいて極めて有意義であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のNb3 Al化合物系超電導線の製造方法における実施の形態を示す説明図であり、Aは部分拡大図を示す。
【図2】図1の実施の形態の製造プロセスを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 積層体
2 Nbシート
3 Alシート
4 中心材
5 Nb被覆
6 Cu被覆
7 複合素線
8 シングル線材
9 Nb管
9′ 外部マトリックス
10 Cu‐Ni合金管
12 マルチ線材
13 安定化材
15 超電導線材部
Claims (15)
- Nb‐Al過飽和固溶体を加熱することにより析出された複数のNb3Alの超電導線材部と、前記超電導線材部を被覆するNbあるいはNb合金の外部マトリックスと、前記外部マトリックスの上に形成された安定化材とから構成され、
前記外部マトリックスと前記安定化材とは、前記Nb‐Al過飽和固溶体を生成させるときの加熱冷却時に使用された冷却用金属材を相互間に介在させ、前記冷却用金属材との間にそれぞれ固溶体を形成しており、前記超電導線材部および前記外部マトリックスとの合計断面に占める前記冷却用金属材の割合が5%以下であることを特徴とするNb3Al化合物系超電導線。 - 前記安定化材は、銅、銅合金、銀、あるいは銀合金のいずれかであることを特徴とする請求項第1項記載のNb3Al化合物系超電導線。
- 前記冷却用金属材は、Gaであることを特徴とする請求項第1項あるいは第2項記載のNb3Al化合物系超電導線。
- NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度に加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3Al相を析出させるNb3Al化合物系超電導線の製造方法において、
前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面から前記冷却用金属材を除去し、前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆して前記外部マトリックスおよび前記安定化材が塑性変形する塑性加工を施した後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3Al化合物系超電導線の製造方法。 - 前記安定化材は、銅、銅合金、銀、あるいは銀合金のいずれかであることを特徴とする請求項第4項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記冷却用金属材は、Gaであることを特徴とする請求項第4項あるいは第5項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度で加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3Al相を析出させるNb3Al化合物系超電導線の製造方法において、
前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面に前記外部マトリックスを含んだ前記マルチ線材との合計断面に占める割合が5%以下の前記冷却用金属材を付着させたまゝで前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆した後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3Al化合物系超電導線の製造方法。 - 前記冷却用金属材は、Gaであることを特徴とする請求項第7項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記安定化材は、銅、銅合金、銀、あるいは銀合金のいずれかであることを特徴とする請求項第7項あるいは第8項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- NbあるいはNb合金とAlあるいはAl合金から成る積層体の周囲にNbあるいはNb合金のマトリックスを被覆して複数のシングル線材を形成し、前記複数のシングル線材をNbあるいはNb合金の外部マトリックスで被覆してマルチ線材を構成し、前記マルチ線材を所定の温度で加熱した後、冷却用金属材による冷却処理を施すことによりNb‐Al過飽和固溶体を生成させ、これに所定の温度で再加熱処理を施すことによりNb3Al相を析出させるNb3Al化合物系超電導線の製造方法において、
前記冷却処理の後に、前記外部マトリックスの表面に前記外部マトリックスを含んだ前記マルチ線材との合計断面に占める割合が5%以下の前記冷却用金属材を付着させたまゝで前記外部マトリックスの上に安定化材を被覆して減面加工を施し、その後、前記再加熱処理を施すことを特徴とするNb3Al化合物系超電導線の製造方法。 - 前記減面加工は、前記外部マトリックス、前記冷却用金属材、および前記安定化材間の空隙を除く程度のスキンパス加工であることを特徴とする請求項第10項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記減面加工は、前記冷却用金属材と前記安定化材が塑性変形し、前記マルチ線材がほゞ塑性変形しない程度に行うことを特徴とする請求項第10項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記減面加工は、前記マルチ線材、前記冷却用金属材、および前記安定化材がいずれも塑性変形するように行うことを特徴とする請求項第10項記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記冷却用金属材は、Gaであることを特徴とする請求項第10項ないし第13項のいずれかに記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
- 前記安定化材は、銅、銅合金、銀、あるいは銀合金であることを特徴とする請求項第10項ないし第14項のいずれかに記載のNb3Al化合物系超電導線の製造方法。
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JP28749298A JP4042933B2 (ja) | 1998-10-09 | 1998-10-09 | Nb3 Al化合物系超電導線およびその製造方法 |
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